ハイブリッド式プレス装置
【課題】ラムの昇降手段と加圧手段とを分けたハイブリッド式プレス装置において、昇降手段としてボールネジ機構を利用しながら、クラウンを廃して装置の小型化及び軽量化を図ると共に、加圧手段によりラムにプレス圧を加える際、僅かにラムが下降して昇降手段に加わる負荷による損耗を抑制又は防止する対策をボールネジ機構に付加する。
【解決手段】昇降手段は、正逆に自転する雄ネジ軸4をラム1から下方に向けて降ろし、ベッド2に対して位置固定された雌ネジ部5に前記雄ネジ軸4を螺合させたボールネジ機構である。
【解決手段】昇降手段は、正逆に自転する雄ネジ軸4をラム1から下方に向けて降ろし、ベッド2に対して位置固定された雌ネジ部5に前記雄ネジ軸4を螺合させたボールネジ機構である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラムの昇降手段と加圧手段とを分けたハイブリッド式プレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス装置は、例えばベースに立設したポストにクラウンを支持し、プレス圧力に応じた油圧シリンダのチューブを前記クラウンに固定してロッドを垂下し、ラムを前記ロッドに吊り下げた構成である。ポストは、ラムの昇降ガイドを兼ねる場合もある。プレス型は、上型を前記ラムの下面に、同下型をベッドの上面に固定し、油圧シリンダのロッドの伸縮によるラムの昇降によって、上型及び下型を接近又は離反させる。このように、一般的なプレス装置は、油圧シリンダはラムの昇降手段と加圧手段とを兼用する構成が通例であった。これは、ラムの加圧手段として求められ油圧シリンダの大きなプレス圧力が、ラムの昇降手段として過剰能力を有する原因になっていた。
【0003】
近年、環境保護の観点から、使用する油が少ないほど好ましいとされるようになり、プレス装置においても油の使用量を減らす努力が続けられている。こうした背景事情から、ラムの昇降手段と加圧手段とを分けたハイブリッド式プレス装置が提案されるようになってきている。最も簡易には、昇降手段と加圧手段共に油圧シリンダを用いながら、加圧手段は従来同様のプレス圧力を出力する大きな油圧シリンダを用い、昇降手段はラムの昇降を満足する程度に小さな能力の油圧シリンダを用いる構成を例示できる。この場合、プレス装置全体として油の使用量を減らすことができる。
【0004】
しかし、ラムを昇降させるだけであれば、別段油圧シリンダを用いる必要がないことから、ハイブリッド式プレス装置は、加圧手段に油圧シリンダを用いながら、昇降手段に電気モータを用いてボールネジ機構を構成する場合が多い(特許文献1)。特許文献1が開示するハイブリッド式プレス装置は、加圧手段の油圧シリンダ(液圧アクチュエータ)と昇降手段の電気モータ(サーボモータ)とをクラウンに設け、電気モータの回転動力を受けて自転する雄ネジ軸(スクリュー、線形アクチュエータ)によりラムを下降させて予備プレスし、油圧シリンダの伸縮するロッドによりラムを押し下げて本プレスする(特許文献1・[0015]〜[0017])。四方のポストは、ラムの昇降ガイドである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004-517733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示するハイブリッド式プレス装置は、昇降手段としてボールネジ機構を利用している。特許文献1は、具体的な構造を明らかにしていない(肝心な雄ネジ軸(スクリュー)に符号が付されていない)が、回転駆動源である電気モータがクラウンに設けられていることから、前記クラウンに軸支された雄ネジ軸を降ろし、ラムに固定した雌ネジ部を前記雄ネジ軸に螺合させていると考えられる。これにより、電気モータで雄ネジ軸を正転又は逆転させると、前記雄ネジ軸に螺合した雌ネジ部が昇降する、すなわち雌ネジ部を固定したラムが昇降する。
【0007】
ところが、ボールネジ機構を利用した昇降手段は、次のような問題を有する。まず、ラムの昇降量以上に長い雄ネジ軸を降ろす上方部分の基礎として、クラウンが必須となるが、クラウンの存在はプレス装置を大型化及び重量化する。クラウンは、油圧シリンダによりラムを昇降及び加圧する従来一般のプレス装置にも見られるが、やはりプレス装置の大型化及び重量化を招いており、問題であった。クラウンは、上面を作業足場として利用することもできるが、プレス装置の小型化及び軽量化の観点から、省略できることが望ましいとされている。作業足場は、別途必要に応じて後付けすればよいからである。
【0008】
また、ハイブリッド式プレス装置は、昇降手段によりラムが所定位置(例えばラムによる加圧開始点)まで下降した後、ラムにプレス圧を加えるため、加圧手段がラムを僅かに下降させる。例えば、特許文献1が開示するハイブリッド式プレス装置は、昇降手段により「最終的縁取りポジションの上方約5mmにプレスラム30を下げる」と記載していることから、加圧手段がラムを5mmほど下降させる(特許文献1・[0015])。こうした加圧手段によるラムの下降は、昇降手段にプレス圧相当の負荷を与えるため、前記負荷による損耗を抑制又は防止する対策が、昇降手段に要求される。特許文献1は、こうした対策についての言及がない。
【0009】
このように、ハイブリッド式プレス装置においては、昇降手段にボールネジ機構が利用されるところ、クラウンから雄ネジ軸を降ろし、ラムに固定した雌ネジ部を螺合させる構成にすると、プレス装置の大型化及び重量化を招く問題がある。また、加圧手段によりラムにプレス圧を加える際、僅かにラムが下降して昇降手段に加わる負荷による損耗を抑制又は防止する対策が必要である。そこで、昇降手段としてボールネジ機構を利用しながら、クラウンを廃して装置の小型化及び軽量化を図ると共に、加圧手段によりラムにプレス圧を加える際、僅かにラムが下降して昇降手段に加わる負荷による損耗を抑制又は防止する対策をボールネジ機構に付加するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
検討の結果開発したものが、ラムの昇降手段と加圧手段とを分けたハイブリッド式プレス装置において、昇降手段は、正逆に自転する雄ネジ軸をラムから下方に向けて降ろし、ベッドに対して位置固定された雌ネジ部に前記雄ネジ軸を螺合させたボールネジ機構であることを特徴とするハイブリッド式プレス装置である。本発明の加圧手段は、ラムから降ろした雄ネジ軸を、ベッドに対して位置固定された雌ネジ部に螺合させてボールネジ機構を構成する。ラムは、雌ネジ部に対する雄ネジ軸の螺合量を増減させて昇降する。換言すると、雌ネジ部から突出する雄ネジ軸の長さに応じてラムが昇降するので、雄ネジ軸を降ろすクラウンが省略できる。
【0011】
「ベッドに対して位置固定された雌ネジ部」とは、ベッドを基準として雌ネジ部の位置、特にベッドに対する垂直方向の位置が変わらないように前記雌ネジ部が固定されていることを意味し、雌ネジ部がベッドに直接固定されているほか、何か介在部材を介して間接的に固定されている場合を含む。雄ネジ軸は、ラムが下降すると、雌ネジ部から下方に突出させる長さが増えるため、雌ネジ部は、ベッドの上面からラムの昇降量以上の空間(雄ネジ軸の収納空間)を設けていることが望ましい。雌ネジ部がベッドの上面からラムの昇降量以上の空間を設けていない場合、ベッド、更には床面を鉛直方向に開口し、雄ネジ軸の収納空間を形成する。
【0012】
雄ネジ軸の収納空間をベッドの上面に設ける観点から、雌ネジ部は、ベッドから雄ネジ軸に向けて突出するロッド収納部の上方に位置固定される構成にするとよい。ロッド収納部は、雌ネジ部から下方に突出する雄ネジ軸の収納空間をベッドの上面に設ける部分で、前記収納空間をベッドに対して垂直方向に形成すればよいため、閉空間を構成する箱体(パイプを含む)でも、雌ネジ部を固定する上面板とベッドの上面に固定する下面板とを鉛直方向に延びる柱部材で接続した開空間を構成する枠体でもよい。このほか、ロッド収納部は、雌ネジ部を高い位置に配置して、雄ネジ軸を降ろすラムが雌ネジ部より下方に落下しないようにする安全装置の働きも有する。
【0013】
加圧手段によりラムにプレス圧を加える際、僅かにラムが下降して昇降手段に加わる負荷による損耗を抑制又は防止する対策として、ロッド収納部は、垂直方向に弾性変形する緩衝装置を介してベッドに対して位置固定された構成にするとよい。これにより、プレス圧を加える際のラムの下降による負荷は、緩衝装置が圧縮され、ロッド収納部及び雌ネジ部が一体に下降することにより吸収される。加圧手段によりラムにプレス圧が加えられなくなれば、緩衝装置が復元し、ロッド収納部及び雌ネジ部が一体に上昇して元の状態に復帰する。緩衝装置は、ゴムブロックやスプリング等の弾性部材をそのまま介装する構成や、前記弾性部材を組み込んだ弾性機構からなる構成を例示できる。
【0014】
また、ラムが下降して昇降手段に加わる負荷による損耗を抑制又は防止する別の対策として、雌ネジ部は、垂直方向に弾性変形する緩衝装置を介してロッド収納部の上方に位置固定された構成にするとよい。これにより、プレス圧を加える際のラムの下降による負荷は、緩衝装置が圧縮され、雌ネジ部が下降することにより吸収される。加圧手段によりラムにプレス圧が加えられなくなれば、緩衝装置が復元し、雌ネジ部が上昇して元の状態に復帰する。ロッド収納部と雌ネジ部との間に介装する緩衝装置は、上述同様、弾性部材をそのまま介装する構成や弾性機構からなる構成が利用できる。また、ロッド収納部と雌ネジ部との間に介装する緩衝装置は、上述したベッドとロッド収納部との間に介装する緩衝装置と併用してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、ハイブリッド式プレス装置の昇降手段としてボールネジ機構を利用しながら、ベッドに対して位置固定した雌ネジ部から突出する雄ネジ軸を増減して前記雄ネジ軸が支持するラムを昇降さることにより、クラウンを廃して装置の小型化及び軽量化を図ることができる。ハイブリッド式プレス装置は、ラムの加圧手段を昇降手段と別に備えるため、昇降手段は純粋にラムの昇降を担うだけで済み、本発明のように、雌ネジ部をベッドに対して位置固定としながら、前記雌ネジ部に対する雄ネジ軸の螺合量を加減することによりラムを昇降させる構成を採用できる。
【0016】
また、加圧手段によりラムにプレス圧を加える際、僅かにラムが下降して昇降手段に加わる負荷は、ベッドとロッド収納部との間に介装する緩衝装置やロッド収納部と雌ネジ部との間に介装する緩衝装置の弾性変形により吸収し、前記負荷による雄ネジ軸又は雌ネジ部の損耗を抑制又は防止する。これは、雌ネジ部をベッドに対して位置固定とし、前記雌ネジ部に対する雄ネジ軸の螺合量を加減するボールネジ機構を採用したことで、ロッド収納部と雌ネジ部との間やベッドとロッド収納部との間に緩衝装置を介装しやすくなり、雌ネジ部が前記緩衝装置に直接又は間接に弾支されたことによる効果である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用したハイブリッド式プレス装置の正面図である。
【図2】本例のハイブリッド式プレス装置の要部拡大部分正面図である。
【図3】加圧手段を構成するラム連結部及びシリンダ連結部を表す斜視図である。
【図4】下降してきたラムがブロック貫通孔にシリンダ側係合ブロック及びカムブロックを突入させた段階を表す図2相当正面図である。
【図5】ブロック貫通孔にシリンダ側係合ブロック及びカムブロックが突入した段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部を表す部分拡大断面図である。
【図6】ブロック貫通孔にシリンダ側係合ブロック及びカムブロックが完全に突入した段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部を表す図5相当断面図である。
【図7】ブロック貫通孔にシリンダ側係合ブロック及びカムブロックが完全に突入した段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部を表す図3相当斜視図である。
【図8】シリンダ側係合ブロック及びカムブロックがブロック貫通孔を突き抜けた段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部を表す図5相当断面図である。
【図9】ラムにプレス圧が加えられている段階を表す図2相当正面図である。
【図10】ラムにプレス圧が加えられている段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部を表す図5相当断面図である。
【図11】ラムにプレス圧が加えられている段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部を表す図3相当斜視図である。
【図12】ロッド収納部と雌ネジ部との間に空気バネ(緩衝装置)を介装したハイブリッド式プレス装置の図2相当正面図である。
【図13】ベッドとロッド収納部との間とロッド収納部と雌ネジ部との間に空気バネ(緩衝装置)を介装したハイブリッド式プレス装置の図2相当正面図である。
【図14】別例の加圧手段を構成するラム連結部及びシリンダ連結部を表す斜視図である。
【図15】別例の加圧手段を構成するラム連結部及びシリンダ連結部の位置関係を表す部分破断正面図である。
【図16】シリンダ側係合ブロック及びカムブロックが係合した段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部を表す図14相当斜視図である。
【図17】シリンダ側係合ブロック及びカムブロックが係合した段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部の位置関係を表す図16相当部分破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明は、ラム1の昇降手段と加圧手段とを分けたハイブリッド式プレス装置に適用される。本例のハイブリッド式プレス装置は、図1及び図2に見られるように、クラウンを省略している。このため、本例のハイブリッド式プレス装置は、上層面及び下層面の二層構造なっているラム1の前記上層面の上面周囲に落下防止柵15を設け、作業足場を構成している。ラム1の下層面の下面に固定したプレス上型11から下方に向けてガイドパイプ111を突出させ、ベッド2の上層面の上面に固定したプレス下型21から上方に向けてガイドロッド211を突出させて、前記ガイドパイプ111に前記ガイドロッド211を挿入して、プレス上型11及びプレス下型21の水平方向の位置ズレをなくす点は、従来通りである。これは、本発明のハイブリッド式プレス装置が既存のプレス型を利用できることを意味する。
【0019】
本例の昇降手段は、ラム1から下方に向けて降ろした雄ネジ軸4と、ベッド2に対して位置固定された雌ネジ部5とから構成されるボールネジ機構である。雄ネジ軸4は、平面視略正方形であるラム1の四隅にそれぞれ割り当てられ、計4本降ろされている。雌ネジ部5は、前記各雄ネジ軸4に対応した平面視位置関係で、上層面及び下層面の二層構造なっているベッド2の前記上層面の上面から上方に向けて突出する4基のロッド収納部51それぞれの上端面に設けられ、各雄ネジ軸4を常に螺合させている。本例の昇降手段であるボールネジ機構は、雄ネジ軸4が回転動力を受けて自転しない限り、雌ネジ部5に対する螺合量を変化させることができないため、前記雄ネジ軸4が停止している状態ではラム1の高さを安定して維持できる。
【0020】
雄ネジ軸4は、ラム1の上層面の上面に固定された減速機43に軸支され、ラム1の下層面の下面に設けられた雄ネジ軸貫通部14を貫通して下方に降ろされている。各雄ネジ軸4は、ラム1の上層面の上面中央に設けられた電気モータ41の回転軸に接続される伝達シャフト42及び減速機43を経て伝達される回転動力により、正逆に自転する。例えば雄ネジ軸4が正転(又は右回転)すると、雌ネジ部5に捩じ込んでロッド収納部51内に突出させる長さを伸ばしてラム1を下降させ、逆に雄ネジ軸4が逆転(又は左回転)すると、雌ネジ部5から抜けてロッド収納部51内に突出させる長さを縮めてラム1を上昇させる。ロッド収納部51は、雌ネジ部5から下方に突出する雄ネジ軸4を外部から隠して保護する働きを有する。
【0021】
雄ネジ軸貫通部14は、雄ネジ軸4と同心で、雄ネジ軸4より半径の大きな円形開口を設けた枠体で、ラム1の上層面から下層面を抜けて下方に向けて延びる雄ネジ軸4を貫通させる開口を前記下層面に設けることにより低下するラム1の強度を補う補強部材であると共に、昇降手段によりラム1が過剰に下降した際、雌ネジ部5を弾支する雌ネジ部支持ブッシュ54に最初に当接し、ラム1の下降を抑制又は防止する安全部材である。雌ネジ部支持ブッシュ54は、雌ネジ部5が上下方向にのみ変位自在としたオイルレスブッシュである。本例のハイブリッド式プレス装置は、後述するように、ロッド収納部51が空気バネ(緩衝装置)52により支持されているため、雄ネジ軸貫通部14及び雌ネジ部支持ブッシュ54が衝突しても、前記衝撃が前記空気バネ52に吸収され、雄ネジ軸貫通部14及び雌ネジ部支持ブッシュ54それぞれが破損しない。
【0022】
雌ネジ部5は、ベッド2に固定された空気バネ52から上方に向けて突設するパイプ状のロッド収納部51の上端に固定されている。つまり、雌ネジ部5は、空気バネ52及びロッド収納部51を介してベッド2に対して位置固定されている。このため、ラム1が加圧開始点まで下降してきた後、加圧手段により僅かに下降する際、空気バネ52を圧縮させ、雌ネジ部5及びロッド収納部51が一体に下降させて、前記ラム1の微小な下降を吸収する。圧縮手段によるラム1の下降がなくなると、空気バネ52は復元し、雌ネジ部5及びロッド収納部51を元の位置に復帰させる。
【0023】
円筒状の雌ネジ部支持ブッシュ54は、雌ネジ部5を弾支するように、圧縮手段を構成するシリンダ3のチューブ31を支持するチューブ固定部22の上端面に固定され、前記ラム1の微小な変動に際して雌ネジ部5が下降しても、雌ネジ部5に対して相対的に位置固定されている。これにより、圧縮手段による過剰なラム1の下降が、ラム1の雄ネジ軸貫通部14が雌ネジ部支持ブッシュ54に当接することにより、抑制又は防止される。また、雌ネジ部支持ブッシュ54は、上述したとおり、昇降手段によるラム1の過剰な下降を抑制又は防止する働きも有する。このほか、雌ネジ部支持ブッシュ54は、直接的に雌ネジ部5を外部から保護する働きも有する。
【0024】
本例の加圧手段は、ベッド2に対してチューブ31が位置固定され、上方のラム1に向けてシリンダロッド32(各図中、シリンダ3が有する本来のロッドに接続した延長部材を指している)を突出させたシリンダ3の前記シリンダロッド32にシリンダ側連結部を設け、ラム1に設けたラム側連結部と前記シリンダ側連結部とを係合解除自在にして構成される。ラム側連結部は、ラム1の下層面に設けられたブロック貫通孔12と、前記ブロック貫通孔12の上方で前記ブロック貫通孔12の中心(水平断面における重心)に向けて進退するラム側係合ブロック13とから構成される。シリンダ側連結部は、シリンダロッド32端に設けたシリンダ側係合ブロック33と、ベッド2に対して位置固定され、前記シリンダ側係合ブロック33に設けたスリ割り溝の対向面であるガイド面331に添わせたカムブロック34とから構成される。ブロック貫通孔12とシリンダ側係合ブロック13とは平面視同形の円形で、中心が一致している。
【0025】
ラム側連結部を構成するラム側係合ブロック13は、図3に見られるように、、ブロック貫通孔12の水平断面半径方向に対向して一対設けられている。各ラム側係合ブロック13は、ラム1に設けたブロック貫通孔12に等しい円形開口を有する平面視長方形のベース部材136と、断面L字状のブロックガイド131のフランジ部分に挟まれて保持され、前記ベース部材136を水平断面半径方向に挟んで位置するストッパ部材135に当接するまでの範囲で進退自在としながら、前記ストッパ部材135に固定した付勢ピン132により進退方向内向きに付勢されている。これにより、各ラム側係合ブロック13は、カムブロック34がブロック貫通孔12を通過する前又は後ではブロック貫通孔12の水平断面半径方向内向きに突出してシリンダ側係合ブロック33がブロック貫通孔12を通過することを防ぎ、カムブロック34がブロック貫通孔12を通過する途中では前記進退方向外向きに押し広げられてシリンダ側係合ブロック33がブロック貫通孔12を通過することを許す。
【0026】
ラム側係合ブロック13の半径方向内側の端縁は、ブロック貫通孔12の内周縁に等しい円弧状であり、カムブロック34の上傾斜縁343、中間縁344及び下傾斜縁345が当接する前記端縁中間位置に、回動面がラム側係合ブロック13の進退方向に一致して上下方向に回動する当接ローラを設けている。これにより、ラム側係合ブロック13は、水平断面円形であるブロック貫通孔12に等しい円盤状であるシリンダ側係合ブロック33に対し、進退方向内側の端縁がどの部分でも同じだけ隙間を形成する。これは、ラム側係合ブロック13が前進すると、前記端縁に続く平面部分がシリンダ側係合ブロック33と同時に係合し、逆にラム側係合ブロック13が後退すると、前記端縁に続く平面部分がシリンダ側係合ブロック33から同時に外れることを意味する。
【0027】
このほか、本例のラム側連結部は、ラム側係合ブロック13やブロックガイド131が露出して、外部部材との接触等により破損しないように、ベース部材136にブロック保護カバー134を被せてラム側係合ブロック13を前記ブロック保護カバー134で覆っている(図3は、説明の便宜上、ブロック保護カバー134を図示略)。これにより、ラム側連結部を、ブロック保護カバー134、ベース部材136及びストッパ部材135に囲まれた一体のモジュールとして取り扱えるようになり、ラム1に対する取り付けも容易になる。付勢ピン132は、ラム側係合ブロック13の後退規制を担うストッパ部材135に保持され、前記ストッパ部材135の側面から付勢力の調整ノブを突出させている(各図中、突出する調整ノブを指して付勢ピン132としている)。
【0028】
シリンダ側連結部を構成するシリンダ3は、ベッド2の上層面の上面に設けた枠体状のチューブ固定部22にチューブ31を固定させた両ロッド式の油圧シリンダであり、シリンダロッド32に、シリンダロッド32の進退方向に延びるロッド内貫通孔321を設けている。シリンダ側係合ブロック33は、水平断面がブロック貫通孔12に等しい円形である扁平な円盤状で、シリンダロッド32の上端に設けられている。これにより、シリンダ側係合ブロック33は、ラム側係合ブロック13がブロック貫通孔12から進退方向外側に後退すれば前記ブロック貫通孔12を通過でき、ブロック貫通孔12から進退方向内向きに突出するラム側係合ブロック13に上方(ブロック貫通孔12通過前)又は下方(ブロック貫通孔12通過後)から係合する。
【0029】
本例のシリンダ側係合ブロック33は、ラム側係合ブロック13に対向する側面を含み、平面視中心を通過する半径方向に延びるスリ割り溝の対向面であるガイド面331を形成し、前記ガイド面331,331の間に差し込まれるように、カムブロック34を添わせている。本例は、シリンダロッド32に従って昇降するシリンダ側係合ブロック33に対し、カムブロック34をベッド2に対して位置固定するため、チューブ31下方でチューブ固定部22に支持させた固定棒342から上方に向けて突出する支持棒341をシリンダロッド32のロッド内貫通孔321に貫通させ、カムブロック34のみを前記支持棒341に支持させている。
【0030】
カムブロック34は、平面視中心を通る鉛直線に線対称な側面視八角形の細幅な板状のブロックで、シリンダ側係合ブロック33のガイド面331からはみ出す一対の両側縁それぞれが、上から順に上傾斜縁343、中間縁344及び下傾斜縁345を有している。中間縁344は、シリンダ側係合ブロック33の側面より僅かに突出した垂直方向の延在部分である。上傾斜縁343は、中間縁344上端から上方に向けて徐変にシリンダ側係合ブロック33の側面から引っ込む傾斜部分である。下傾斜縁345は、中間縁344下端から下方に向けて徐変にシリンダ側係合ブロック33の側面から引っ込む傾斜部分である。本例のカムブロック34は、上傾斜縁343及び下傾斜縁345を形成した上下部分がシリンダ側係合ブロック33の上端面及び下端面から突出している。
【0031】
本例のハイブリッド式プレス装置によるプレス加工処理を説明する。処理開始前は、図1及び図2に見られるように、ラム1は上方の待避位置まで上昇しており、圧縮手段を構成するラム側連結部とシリンダ側連結部とは離れ、ラム側係合ブロック13はブロック貫通孔12から進退方向内向きに突出して、対向する端縁の間隔をシリンダ側係合ブロック33より狭めている(図3参照)。ラム1は、昇降手段を構成する4本の雄ネジ軸4のみで支持されている。ラム1は、各雄ネジ軸4が雌ネジ部5と常に螺合しており、それぞれが自転しない限り昇降できないので、安定して上方の待避位置を維持できる。
【0032】
ラム1は、例えば雄ネジ軸4を正転させ、前記雄ネジ軸4の雌ネジ部5との螺合位置を上方に移動させ、前記雄ネジ軸4がロッド収納部51内に突出させる長さを伸ばして下降させる。本例のハイブリッド式プレス装置は、クラウンがないため、ラム1が下降すると、装置全体の全高が低くなる(図2及び図4を比較対照)。これから、ラム1の上層面の上面を作業足場として作業する場合、ラム1を下降させた状態で前記上面に作業者が乗り、作業させると、安全性を高めることができる。こうしてラム1を加圧開始点近傍まで下降させると、図5に見られるように、シリンダ側連結部を構成するシリンダ側係合ブロック33及びカムブロック34が、下降してくるラム1のブロック貫通孔12に下方から一体に突入する。
【0033】
ブロック貫通孔12に突入したカムブロック34は、シリンダ側係合ブロック33に先行して、ラム側係合ブロック13の当接ローラ131に上傾斜縁343を当て、前記当接ローラ133を介して各ラム側係合ブロック13を進退方向外向きに後退させていく。そして、ラム1が下降し続けて前記当接ローラ133が中間縁344に達すると、図6及び図7に見られるように、係合ローラ33の側面より進退方向外向きにはみ出した中間縁344が、付勢ピン132による進退方向内向きの付勢に抗してラム側係合ブロック13を完全にブロック貫通孔12から進退方向外側に追いやり、シリンダ側係合ブロック33が前記ブロック貫通孔12を通過できるようにする。中間縁344の垂直方向長さは、シリンダ側係合ブロック33の厚みより長いので、シリンダ側係合ブロック33がブロック貫通孔12を通過している間、ラム側係合ブロック13はブロック貫通孔12からの後退した状態を維持する。
【0034】
更にラム1が下降して加圧開始点(加圧手段を作動させてラム1にプレス圧を加え始めるラム1の高さ)に達すると、シリンダ側係合ブロック33及びカムブロック34は一体としてブロック貫通孔12を完全に通過し、図8に見られるように、付勢ピン132の付勢により当接ローラ133を下傾斜縁345に沿って転動させながら、ラム側係合ブロック13を再びブロック貫通孔12から進退方向内側に突出させる。このとき、ラム側係合ブロック13は、対向する端縁から続く平面部分をシリンダ側係合ブロック33の直下に位置させる。このように、カムブロック34は、ラム側係合ブロック13を一時的に後退させ、シリンダ側係合ブロック33がブロック貫通孔12を通過できるようにしながら、ブロック貫通孔12を通過したシリンダ側係合ブロック33直下にラム側係合ブロック13を突出させる。
【0035】
ラム1が加圧開始点に到達した後、雄ネジ軸4の正転を停止し、今度は加圧手段を構成するシリンダ3のシリンダロッド32を縮めて、図9〜図11に見られるように、ラム側係合ブロック13にシリンダ側係合ブロック33を上方から係合させて、ラム1を下降させる。雄ネジ軸4の停止とシリンダ3の作動との連携は、上方の待避位置からラム1が下降を始めてから加圧開始点に達するまでの時間が決まっているので、例えばラム1が加圧開始点まで下降したタイミングで、雄ネジ軸4の停止とシリンダ3の作動とを自動的に制御装置が切り換えるようにするとよい。このほか、ラム1が加圧開始点まで下降したことを、従来公知の各種センサにより検知させ、前記センサがラム1を検知したら、制御装置が雄ネジ軸4の停止とシリンダ3の作動とを切り換えるようにしてもよい。
【0036】
このように、本発明は、例えば特許文献1が開示するハイブリッド式プレス装置と異なり、ラム1が加圧開始点にまで下降した後、加圧手段を作動させるために必要な前処理が必要なく、ラム1が加圧開始点に達するタイミングさえ分かれば、昇降手段と加圧手段とを円滑に切り換えできる利点がある。これは、プレス加工処理の作業時間から前記前処理に要する時間を省略できることを意味し、作業時間の時短の効果をもたらす。また、圧縮手段に置けるラム側連結部とシリンダ側連結部との係合及び解除が自動的にできる点は、昇降手段と加圧手段との切換作業の省力化と言う利点をもたらす。
【0037】
本例のハイブリッド式プレス装置は、雌ネジ部5及びロッド収納部51が一体として空気バネ52に支持されているため、シリンダ3の作動によるラム1の下降を前記空気バネ52の圧縮により吸収し、雄ネジ軸4及び雌ネジ部5が一体に下降することで両者の螺合部分に、ラム1の下降による負荷が加わらないようにする(図10中、ロッド収納部51に図示した破線白抜矢印参照)。これは、シリンダ3によるラム1の下降に際し、雄ネジ軸4が突っ張ってラム1を上方に押し上げないこと、つまりシリンダ3の加圧力ほとんどすべてがラム1のプレス圧として利用できることを意味する(シリンダ3の加圧力は一部空気バネ52の圧縮に使われる)。
【0038】
ラム1にプレス圧を加える際の緩衝装置は、例えば図12に見られるように、ロッド収納部51と雌ネジ部5との間に介装する空気バネ53としても構成できる。この場合、シリンダ3によるラム1の下降を空気バネ53の圧縮により吸収し、雄ネジ軸4及び雌ネジ部5が一体に下降することで両者の螺合部分に、ラム1の下降による負荷が加わらないようにする。空気バネ53は、雌ネジ部4を抜けてロッド収納部51に向けて延びる雄ネジ軸4を貫通させる必要から、平面視ドーナツ状である。更に、図13に見られるように、ロッド収納部51の上端及び下端にそれぞれ空気バネ52,53を配してもよい。
【0039】
プレス加工処理後のラム1の上昇は、基本的に上述までの手順の逆になる。まず、シリンダ3がシリンダロッド32を伸ばしてシリンダ側係合ブロック33をカムブロック34に一致する加圧開始点まで上昇させる。ラム側係合ブロック13がシリンダ側係合ブロック33を避けるためには、シリンダ側係合ブロック33とカムブロック34とが加圧開始点で高さ方向の位置関係が一致している必要がある。こうして、シリンダ側係合ブロック33とカムブロック34とが同じ加圧開始点に揃ったところで、今度は雄ネジ軸4を逆転させるとラム1が前記雄ネジ軸4の逆転に従って上昇を始めると、上述までと逆に下傾斜縁345、中間縁344及び上傾斜縁343の順に摺接する過程で押し広げられてシリンダ側係合ブロック33を超え、ラム1を上昇させることができる。
【0040】
シリンダ3によるシリンダロッド32の伸長から雄ネジ軸4の逆転開始までは、予め制御装置により設定したタイミングに従って連続させることができる。すなわち、本例のハイブリッド式プレス装置は、シリンダ3が作動してラム1にプレス圧を加え始めるタイミングから、プレス加工処理を終えてラム1を再び上方の待避位置まで上昇させるタイミングまでが決まっているので、例えばラム1が加圧開始点まで下降したタイミングから計って、シリンダ3の停止と雄ネジ時軸5の逆転とを自動的に制御装置が切り換えるようにするとよい。既述したように、ラム1の下降に際する雄ネジ軸5の停止とシリンダ3の作動との切換もタイミングに従って自動的に切り換えることができるので、本例のハイブリッド式プレス装置は、すべての手順をタイミングに従って円滑に切り換えることができる。
【0041】
加圧手段は、図14及び図15に見られるように、上記例示と異なる構成にすることもできる。別例の加圧手段は、上記例示同様のラム側連結部とシリンダ側連結部とから構成されるが、ラム側連結部を構成するラム側係合ブロック16が常態として進退方向外向きに付勢されている点が相違する。このため、シリンダ側連結部を構成するカムブロック35は、係合鉤ローラ161に係合して前記ラム側係合ブロック16を進退方向内向きに引き寄せることができるように、前記係合鉤ローラ161を挟み込む一対の突起部を有する正面視U字状になっている(図15参照)。
【0042】
ラム側連結部は、ラム1に設けた垂直方向のブロック貫通孔12(図14中、ブロック貫通孔12に連通するベース部材164の開口167を図示)と、前記ブロック貫通孔12の中心に向けて進退自在で、離反スプリング162(図15及び図17中図示略)により前記進退方向外向きに付勢された左右一対のラム側係合ブロック16,16とから構成される。ラム側係合ブロック16は、側縁から進退方向内向きに2本のアームを突出した平面視U字状で、各アーム先端に係合鉤ローラ161を設けて、前記係合鉤ローラ161及びアームにより平面視L字状の係合鉤を構成している。各ラム側係合ブロック16は、側方(図15中紙面直交方向)、上方(図15中紙面上方)及び進退方向背面方向(図15中右方又は左方)への移動を規制する保持部材163に囲まれ、ブロック貫通孔12に等しい平面視形状の開口167を設けたベース部材164に載せられ、互いが接近離反するように左右方向へ進退する。
【0043】
別例のラム側係合ブロック16は、圧縮状態にある離反スプリング162により連結され、互いが離反する方向、すなわち進退方向外向きに付勢されている。また、離反スプリング162の伸縮に連動して一端から突出する長さを増減させる中心軸に検知板166を取り付け、離反スプリング162の伸縮をラム側係合ブロック16の移動として、前記検知板166を挟む一対の近接センサ165により検知板166を検知できるようにしている。これにより、ラム側係合ブロック16が離れているか、接近しているかを、左右いずれの近接センサ165が信号を出力するかにより容易に知ることができる。
【0044】
シリンダ側連結部は、シリンダロッド32端に設けたシリンダ側係合ブロック33と、前記シリンダ側係合ブロック33のガイド面331に添わせるカムブロック35とから構成される。シリンダ側係合ブロック33は、シリンダロッド32と同じ水平断面方形であり、シリンダロッド32端に設けたシリンダ側係合ブロック33の前後側面をガイド面331としている。カムブロック35は、ベッド2(図1参照)に固定したチューブ固定部22に対して位置固定し、前記シリンダ側係合ブロック33を加圧手段の加圧開始点に位置させたときの前記ガイド面331に添わせている。ガイド面331を構成するシリンダ側係合ブロック33の前後面は、シリンダロッド32の前後面に連続し、ラム側係合ブロック16に係合するシリンダ側係合ブロック33の部位は、シリンダロッド32の左右側面から張り出して構成されている。
【0045】
カムブロック35は、シリンダロッド32及びシリンダ側係合ブロック33にわたって連続する前後のガイド面331に摺接する板状ブロックで、左右対称な突起部を有する正面視U字状である。各突起部は、対向する内縁に、垂直方向に延在する係合縁352と、前記係合縁352上端から上方に向けて徐変に開くガイド傾斜縁353とを形成している。ガイド傾斜縁353の上端354は、進退方向に後退したラム側係合ブロック16の係合鉤ローラ161の間隔より広くなっており、ラム1が下降してくると確実に係合鉤ローラ161がガイド傾斜縁353に上方から当接するようにしている。このように、ラム側係合ブロック16の係合鉤ローラ161は、上方からまずガイド傾斜縁353に当接し、前記ガイド傾斜縁353に沿って進退方向内側に移動して係合縁352に係合し、前記進退方向内向きの前進状態が保持される。
【0046】
別例のラム側連結部及びシリンダ側連結部は、次のように作動する。ラム1が上方に待避している段階では、図14及び図15に見られるように、ラム側係合ブロック16は、離反スプリング162の働きにより、互いが遠ざかるように進退方向外向きに後退している。ここで、ラム側係合ブロック16の対向する前縁の間隔Lrは、シリンダ側係合ブロック35の左右方向長さLsに等しくしているため、ラム1が下降してくると、シリンダ側係合ブロック33がブロック貫通孔12を通過する。ラム側係合ブロック16の対向する前縁の間隔Lrは、シリンダ側係合ブロック35の左右方向長さLs以上であればよい。
【0047】
シリンダ側係合ブロック33がブロック貫通孔12を通過すると同時又は直後の段階では、ラム側係合ブロック16の係合鉤ローラ161がカムブロック35のガイド傾斜縁353に当接し、ラム1の下降に合わせて前記ガイド傾斜縁353から係合縁352に移って係合し、図16及び図17に見られるように、ラム側係合ブロック16が離反スプリング162に抗して接近する。この段階に至ると、ラム側係合ブロック16の対向する前縁の間隔Lrは、シリンダ側係合ブロック35の左右方向長さLsより小さくなり、シリンダ3がシリンダロッド32を縮めると、シリンダ側係合ブロック33がラム側係合ブロック16に上方から係合できるようなり、ラム1にプレス圧を加えることができる。
【0048】
このとき、カムブロック35は、取付フランジ351によりチューブ固定部22に固着され、ベッド2に対して位置固定されているので、シリンダ側係合ブロック33に従って下降するラム側係合ブロック16の係合鉤ローラ161に対して相対的に移動しない。このため、前記ラム側係合ブロック16の係合鉤ローラ161の移動を妨げないように、カムブロック35の係合縁352は、シリンダロッド32の伸縮範囲より長くして、前記ラム側係合ブロック16の係合鉤ローラ161が係合縁352に係合したまま昇降できるようにしている。係合鉤ローラ161は、こうした係合縁352に沿った昇降に際して、移動抵抗を小さくする働きを有する。
【0049】
ラム1による加圧を終えた後、概ね上述までの逆の手順を辿る。シリンダロッド32を伸ばしてシリンダ側係合ブロック33を加圧開始点まで上昇させた後、ラム1を上昇させ始めると、係合鉤ローラ161が係合縁352からガイド傾斜縁353に沿って上昇する過程で、ラム側係合ブロック16は、離反スプリング162の働きにより徐々に進退方向外向きに後退して、ラム側係合ブロック16の対向する前縁の間隔Lrを、シリンダ側係合ブロック35の左右方向長さLsに再び等しくし、ブロック貫通孔12を通じてシリンダ側係合ブロック33が下方に抜け出せるようにする。別例では、近接センサ165を利用してラム側係合ブロック16の移動を監視しているので、万一ラム側係合ブロック16が進退方向外向きに後退していない場合は、前記近接センサ165が検知板166を検知して信号を発し、外部に報知することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ラム
11 プレス上型
12 ブロック貫通孔
13 ラム側係合ブロック
14 雄ネジ軸貫通部
15 落下防止柵
16 ラム側係合ブロック
2 ベッド
21 プレス下型
22 チューブ固定部
3 シリンダ
31 チューブ
32 シリンダロッド
33 シリンダ側係合ブロック
34 カムブロック
35 カムブロック
4 雄ネジ軸
41 電気モータ
42 伝達シャフト
43 減速機
5 雌ネジ部
51 ロッド収納部
52 空気バネ
53 空気バネ
54 雌ネジ部支持ブッシュ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラムの昇降手段と加圧手段とを分けたハイブリッド式プレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス装置は、例えばベースに立設したポストにクラウンを支持し、プレス圧力に応じた油圧シリンダのチューブを前記クラウンに固定してロッドを垂下し、ラムを前記ロッドに吊り下げた構成である。ポストは、ラムの昇降ガイドを兼ねる場合もある。プレス型は、上型を前記ラムの下面に、同下型をベッドの上面に固定し、油圧シリンダのロッドの伸縮によるラムの昇降によって、上型及び下型を接近又は離反させる。このように、一般的なプレス装置は、油圧シリンダはラムの昇降手段と加圧手段とを兼用する構成が通例であった。これは、ラムの加圧手段として求められ油圧シリンダの大きなプレス圧力が、ラムの昇降手段として過剰能力を有する原因になっていた。
【0003】
近年、環境保護の観点から、使用する油が少ないほど好ましいとされるようになり、プレス装置においても油の使用量を減らす努力が続けられている。こうした背景事情から、ラムの昇降手段と加圧手段とを分けたハイブリッド式プレス装置が提案されるようになってきている。最も簡易には、昇降手段と加圧手段共に油圧シリンダを用いながら、加圧手段は従来同様のプレス圧力を出力する大きな油圧シリンダを用い、昇降手段はラムの昇降を満足する程度に小さな能力の油圧シリンダを用いる構成を例示できる。この場合、プレス装置全体として油の使用量を減らすことができる。
【0004】
しかし、ラムを昇降させるだけであれば、別段油圧シリンダを用いる必要がないことから、ハイブリッド式プレス装置は、加圧手段に油圧シリンダを用いながら、昇降手段に電気モータを用いてボールネジ機構を構成する場合が多い(特許文献1)。特許文献1が開示するハイブリッド式プレス装置は、加圧手段の油圧シリンダ(液圧アクチュエータ)と昇降手段の電気モータ(サーボモータ)とをクラウンに設け、電気モータの回転動力を受けて自転する雄ネジ軸(スクリュー、線形アクチュエータ)によりラムを下降させて予備プレスし、油圧シリンダの伸縮するロッドによりラムを押し下げて本プレスする(特許文献1・[0015]〜[0017])。四方のポストは、ラムの昇降ガイドである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004-517733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示するハイブリッド式プレス装置は、昇降手段としてボールネジ機構を利用している。特許文献1は、具体的な構造を明らかにしていない(肝心な雄ネジ軸(スクリュー)に符号が付されていない)が、回転駆動源である電気モータがクラウンに設けられていることから、前記クラウンに軸支された雄ネジ軸を降ろし、ラムに固定した雌ネジ部を前記雄ネジ軸に螺合させていると考えられる。これにより、電気モータで雄ネジ軸を正転又は逆転させると、前記雄ネジ軸に螺合した雌ネジ部が昇降する、すなわち雌ネジ部を固定したラムが昇降する。
【0007】
ところが、ボールネジ機構を利用した昇降手段は、次のような問題を有する。まず、ラムの昇降量以上に長い雄ネジ軸を降ろす上方部分の基礎として、クラウンが必須となるが、クラウンの存在はプレス装置を大型化及び重量化する。クラウンは、油圧シリンダによりラムを昇降及び加圧する従来一般のプレス装置にも見られるが、やはりプレス装置の大型化及び重量化を招いており、問題であった。クラウンは、上面を作業足場として利用することもできるが、プレス装置の小型化及び軽量化の観点から、省略できることが望ましいとされている。作業足場は、別途必要に応じて後付けすればよいからである。
【0008】
また、ハイブリッド式プレス装置は、昇降手段によりラムが所定位置(例えばラムによる加圧開始点)まで下降した後、ラムにプレス圧を加えるため、加圧手段がラムを僅かに下降させる。例えば、特許文献1が開示するハイブリッド式プレス装置は、昇降手段により「最終的縁取りポジションの上方約5mmにプレスラム30を下げる」と記載していることから、加圧手段がラムを5mmほど下降させる(特許文献1・[0015])。こうした加圧手段によるラムの下降は、昇降手段にプレス圧相当の負荷を与えるため、前記負荷による損耗を抑制又は防止する対策が、昇降手段に要求される。特許文献1は、こうした対策についての言及がない。
【0009】
このように、ハイブリッド式プレス装置においては、昇降手段にボールネジ機構が利用されるところ、クラウンから雄ネジ軸を降ろし、ラムに固定した雌ネジ部を螺合させる構成にすると、プレス装置の大型化及び重量化を招く問題がある。また、加圧手段によりラムにプレス圧を加える際、僅かにラムが下降して昇降手段に加わる負荷による損耗を抑制又は防止する対策が必要である。そこで、昇降手段としてボールネジ機構を利用しながら、クラウンを廃して装置の小型化及び軽量化を図ると共に、加圧手段によりラムにプレス圧を加える際、僅かにラムが下降して昇降手段に加わる負荷による損耗を抑制又は防止する対策をボールネジ機構に付加するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
検討の結果開発したものが、ラムの昇降手段と加圧手段とを分けたハイブリッド式プレス装置において、昇降手段は、正逆に自転する雄ネジ軸をラムから下方に向けて降ろし、ベッドに対して位置固定された雌ネジ部に前記雄ネジ軸を螺合させたボールネジ機構であることを特徴とするハイブリッド式プレス装置である。本発明の加圧手段は、ラムから降ろした雄ネジ軸を、ベッドに対して位置固定された雌ネジ部に螺合させてボールネジ機構を構成する。ラムは、雌ネジ部に対する雄ネジ軸の螺合量を増減させて昇降する。換言すると、雌ネジ部から突出する雄ネジ軸の長さに応じてラムが昇降するので、雄ネジ軸を降ろすクラウンが省略できる。
【0011】
「ベッドに対して位置固定された雌ネジ部」とは、ベッドを基準として雌ネジ部の位置、特にベッドに対する垂直方向の位置が変わらないように前記雌ネジ部が固定されていることを意味し、雌ネジ部がベッドに直接固定されているほか、何か介在部材を介して間接的に固定されている場合を含む。雄ネジ軸は、ラムが下降すると、雌ネジ部から下方に突出させる長さが増えるため、雌ネジ部は、ベッドの上面からラムの昇降量以上の空間(雄ネジ軸の収納空間)を設けていることが望ましい。雌ネジ部がベッドの上面からラムの昇降量以上の空間を設けていない場合、ベッド、更には床面を鉛直方向に開口し、雄ネジ軸の収納空間を形成する。
【0012】
雄ネジ軸の収納空間をベッドの上面に設ける観点から、雌ネジ部は、ベッドから雄ネジ軸に向けて突出するロッド収納部の上方に位置固定される構成にするとよい。ロッド収納部は、雌ネジ部から下方に突出する雄ネジ軸の収納空間をベッドの上面に設ける部分で、前記収納空間をベッドに対して垂直方向に形成すればよいため、閉空間を構成する箱体(パイプを含む)でも、雌ネジ部を固定する上面板とベッドの上面に固定する下面板とを鉛直方向に延びる柱部材で接続した開空間を構成する枠体でもよい。このほか、ロッド収納部は、雌ネジ部を高い位置に配置して、雄ネジ軸を降ろすラムが雌ネジ部より下方に落下しないようにする安全装置の働きも有する。
【0013】
加圧手段によりラムにプレス圧を加える際、僅かにラムが下降して昇降手段に加わる負荷による損耗を抑制又は防止する対策として、ロッド収納部は、垂直方向に弾性変形する緩衝装置を介してベッドに対して位置固定された構成にするとよい。これにより、プレス圧を加える際のラムの下降による負荷は、緩衝装置が圧縮され、ロッド収納部及び雌ネジ部が一体に下降することにより吸収される。加圧手段によりラムにプレス圧が加えられなくなれば、緩衝装置が復元し、ロッド収納部及び雌ネジ部が一体に上昇して元の状態に復帰する。緩衝装置は、ゴムブロックやスプリング等の弾性部材をそのまま介装する構成や、前記弾性部材を組み込んだ弾性機構からなる構成を例示できる。
【0014】
また、ラムが下降して昇降手段に加わる負荷による損耗を抑制又は防止する別の対策として、雌ネジ部は、垂直方向に弾性変形する緩衝装置を介してロッド収納部の上方に位置固定された構成にするとよい。これにより、プレス圧を加える際のラムの下降による負荷は、緩衝装置が圧縮され、雌ネジ部が下降することにより吸収される。加圧手段によりラムにプレス圧が加えられなくなれば、緩衝装置が復元し、雌ネジ部が上昇して元の状態に復帰する。ロッド収納部と雌ネジ部との間に介装する緩衝装置は、上述同様、弾性部材をそのまま介装する構成や弾性機構からなる構成が利用できる。また、ロッド収納部と雌ネジ部との間に介装する緩衝装置は、上述したベッドとロッド収納部との間に介装する緩衝装置と併用してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、ハイブリッド式プレス装置の昇降手段としてボールネジ機構を利用しながら、ベッドに対して位置固定した雌ネジ部から突出する雄ネジ軸を増減して前記雄ネジ軸が支持するラムを昇降さることにより、クラウンを廃して装置の小型化及び軽量化を図ることができる。ハイブリッド式プレス装置は、ラムの加圧手段を昇降手段と別に備えるため、昇降手段は純粋にラムの昇降を担うだけで済み、本発明のように、雌ネジ部をベッドに対して位置固定としながら、前記雌ネジ部に対する雄ネジ軸の螺合量を加減することによりラムを昇降させる構成を採用できる。
【0016】
また、加圧手段によりラムにプレス圧を加える際、僅かにラムが下降して昇降手段に加わる負荷は、ベッドとロッド収納部との間に介装する緩衝装置やロッド収納部と雌ネジ部との間に介装する緩衝装置の弾性変形により吸収し、前記負荷による雄ネジ軸又は雌ネジ部の損耗を抑制又は防止する。これは、雌ネジ部をベッドに対して位置固定とし、前記雌ネジ部に対する雄ネジ軸の螺合量を加減するボールネジ機構を採用したことで、ロッド収納部と雌ネジ部との間やベッドとロッド収納部との間に緩衝装置を介装しやすくなり、雌ネジ部が前記緩衝装置に直接又は間接に弾支されたことによる効果である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用したハイブリッド式プレス装置の正面図である。
【図2】本例のハイブリッド式プレス装置の要部拡大部分正面図である。
【図3】加圧手段を構成するラム連結部及びシリンダ連結部を表す斜視図である。
【図4】下降してきたラムがブロック貫通孔にシリンダ側係合ブロック及びカムブロックを突入させた段階を表す図2相当正面図である。
【図5】ブロック貫通孔にシリンダ側係合ブロック及びカムブロックが突入した段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部を表す部分拡大断面図である。
【図6】ブロック貫通孔にシリンダ側係合ブロック及びカムブロックが完全に突入した段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部を表す図5相当断面図である。
【図7】ブロック貫通孔にシリンダ側係合ブロック及びカムブロックが完全に突入した段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部を表す図3相当斜視図である。
【図8】シリンダ側係合ブロック及びカムブロックがブロック貫通孔を突き抜けた段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部を表す図5相当断面図である。
【図9】ラムにプレス圧が加えられている段階を表す図2相当正面図である。
【図10】ラムにプレス圧が加えられている段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部を表す図5相当断面図である。
【図11】ラムにプレス圧が加えられている段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部を表す図3相当斜視図である。
【図12】ロッド収納部と雌ネジ部との間に空気バネ(緩衝装置)を介装したハイブリッド式プレス装置の図2相当正面図である。
【図13】ベッドとロッド収納部との間とロッド収納部と雌ネジ部との間に空気バネ(緩衝装置)を介装したハイブリッド式プレス装置の図2相当正面図である。
【図14】別例の加圧手段を構成するラム連結部及びシリンダ連結部を表す斜視図である。
【図15】別例の加圧手段を構成するラム連結部及びシリンダ連結部の位置関係を表す部分破断正面図である。
【図16】シリンダ側係合ブロック及びカムブロックが係合した段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部を表す図14相当斜視図である。
【図17】シリンダ側係合ブロック及びカムブロックが係合した段階におけるラム連結部及びシリンダ連結部の位置関係を表す図16相当部分破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明は、ラム1の昇降手段と加圧手段とを分けたハイブリッド式プレス装置に適用される。本例のハイブリッド式プレス装置は、図1及び図2に見られるように、クラウンを省略している。このため、本例のハイブリッド式プレス装置は、上層面及び下層面の二層構造なっているラム1の前記上層面の上面周囲に落下防止柵15を設け、作業足場を構成している。ラム1の下層面の下面に固定したプレス上型11から下方に向けてガイドパイプ111を突出させ、ベッド2の上層面の上面に固定したプレス下型21から上方に向けてガイドロッド211を突出させて、前記ガイドパイプ111に前記ガイドロッド211を挿入して、プレス上型11及びプレス下型21の水平方向の位置ズレをなくす点は、従来通りである。これは、本発明のハイブリッド式プレス装置が既存のプレス型を利用できることを意味する。
【0019】
本例の昇降手段は、ラム1から下方に向けて降ろした雄ネジ軸4と、ベッド2に対して位置固定された雌ネジ部5とから構成されるボールネジ機構である。雄ネジ軸4は、平面視略正方形であるラム1の四隅にそれぞれ割り当てられ、計4本降ろされている。雌ネジ部5は、前記各雄ネジ軸4に対応した平面視位置関係で、上層面及び下層面の二層構造なっているベッド2の前記上層面の上面から上方に向けて突出する4基のロッド収納部51それぞれの上端面に設けられ、各雄ネジ軸4を常に螺合させている。本例の昇降手段であるボールネジ機構は、雄ネジ軸4が回転動力を受けて自転しない限り、雌ネジ部5に対する螺合量を変化させることができないため、前記雄ネジ軸4が停止している状態ではラム1の高さを安定して維持できる。
【0020】
雄ネジ軸4は、ラム1の上層面の上面に固定された減速機43に軸支され、ラム1の下層面の下面に設けられた雄ネジ軸貫通部14を貫通して下方に降ろされている。各雄ネジ軸4は、ラム1の上層面の上面中央に設けられた電気モータ41の回転軸に接続される伝達シャフト42及び減速機43を経て伝達される回転動力により、正逆に自転する。例えば雄ネジ軸4が正転(又は右回転)すると、雌ネジ部5に捩じ込んでロッド収納部51内に突出させる長さを伸ばしてラム1を下降させ、逆に雄ネジ軸4が逆転(又は左回転)すると、雌ネジ部5から抜けてロッド収納部51内に突出させる長さを縮めてラム1を上昇させる。ロッド収納部51は、雌ネジ部5から下方に突出する雄ネジ軸4を外部から隠して保護する働きを有する。
【0021】
雄ネジ軸貫通部14は、雄ネジ軸4と同心で、雄ネジ軸4より半径の大きな円形開口を設けた枠体で、ラム1の上層面から下層面を抜けて下方に向けて延びる雄ネジ軸4を貫通させる開口を前記下層面に設けることにより低下するラム1の強度を補う補強部材であると共に、昇降手段によりラム1が過剰に下降した際、雌ネジ部5を弾支する雌ネジ部支持ブッシュ54に最初に当接し、ラム1の下降を抑制又は防止する安全部材である。雌ネジ部支持ブッシュ54は、雌ネジ部5が上下方向にのみ変位自在としたオイルレスブッシュである。本例のハイブリッド式プレス装置は、後述するように、ロッド収納部51が空気バネ(緩衝装置)52により支持されているため、雄ネジ軸貫通部14及び雌ネジ部支持ブッシュ54が衝突しても、前記衝撃が前記空気バネ52に吸収され、雄ネジ軸貫通部14及び雌ネジ部支持ブッシュ54それぞれが破損しない。
【0022】
雌ネジ部5は、ベッド2に固定された空気バネ52から上方に向けて突設するパイプ状のロッド収納部51の上端に固定されている。つまり、雌ネジ部5は、空気バネ52及びロッド収納部51を介してベッド2に対して位置固定されている。このため、ラム1が加圧開始点まで下降してきた後、加圧手段により僅かに下降する際、空気バネ52を圧縮させ、雌ネジ部5及びロッド収納部51が一体に下降させて、前記ラム1の微小な下降を吸収する。圧縮手段によるラム1の下降がなくなると、空気バネ52は復元し、雌ネジ部5及びロッド収納部51を元の位置に復帰させる。
【0023】
円筒状の雌ネジ部支持ブッシュ54は、雌ネジ部5を弾支するように、圧縮手段を構成するシリンダ3のチューブ31を支持するチューブ固定部22の上端面に固定され、前記ラム1の微小な変動に際して雌ネジ部5が下降しても、雌ネジ部5に対して相対的に位置固定されている。これにより、圧縮手段による過剰なラム1の下降が、ラム1の雄ネジ軸貫通部14が雌ネジ部支持ブッシュ54に当接することにより、抑制又は防止される。また、雌ネジ部支持ブッシュ54は、上述したとおり、昇降手段によるラム1の過剰な下降を抑制又は防止する働きも有する。このほか、雌ネジ部支持ブッシュ54は、直接的に雌ネジ部5を外部から保護する働きも有する。
【0024】
本例の加圧手段は、ベッド2に対してチューブ31が位置固定され、上方のラム1に向けてシリンダロッド32(各図中、シリンダ3が有する本来のロッドに接続した延長部材を指している)を突出させたシリンダ3の前記シリンダロッド32にシリンダ側連結部を設け、ラム1に設けたラム側連結部と前記シリンダ側連結部とを係合解除自在にして構成される。ラム側連結部は、ラム1の下層面に設けられたブロック貫通孔12と、前記ブロック貫通孔12の上方で前記ブロック貫通孔12の中心(水平断面における重心)に向けて進退するラム側係合ブロック13とから構成される。シリンダ側連結部は、シリンダロッド32端に設けたシリンダ側係合ブロック33と、ベッド2に対して位置固定され、前記シリンダ側係合ブロック33に設けたスリ割り溝の対向面であるガイド面331に添わせたカムブロック34とから構成される。ブロック貫通孔12とシリンダ側係合ブロック13とは平面視同形の円形で、中心が一致している。
【0025】
ラム側連結部を構成するラム側係合ブロック13は、図3に見られるように、、ブロック貫通孔12の水平断面半径方向に対向して一対設けられている。各ラム側係合ブロック13は、ラム1に設けたブロック貫通孔12に等しい円形開口を有する平面視長方形のベース部材136と、断面L字状のブロックガイド131のフランジ部分に挟まれて保持され、前記ベース部材136を水平断面半径方向に挟んで位置するストッパ部材135に当接するまでの範囲で進退自在としながら、前記ストッパ部材135に固定した付勢ピン132により進退方向内向きに付勢されている。これにより、各ラム側係合ブロック13は、カムブロック34がブロック貫通孔12を通過する前又は後ではブロック貫通孔12の水平断面半径方向内向きに突出してシリンダ側係合ブロック33がブロック貫通孔12を通過することを防ぎ、カムブロック34がブロック貫通孔12を通過する途中では前記進退方向外向きに押し広げられてシリンダ側係合ブロック33がブロック貫通孔12を通過することを許す。
【0026】
ラム側係合ブロック13の半径方向内側の端縁は、ブロック貫通孔12の内周縁に等しい円弧状であり、カムブロック34の上傾斜縁343、中間縁344及び下傾斜縁345が当接する前記端縁中間位置に、回動面がラム側係合ブロック13の進退方向に一致して上下方向に回動する当接ローラを設けている。これにより、ラム側係合ブロック13は、水平断面円形であるブロック貫通孔12に等しい円盤状であるシリンダ側係合ブロック33に対し、進退方向内側の端縁がどの部分でも同じだけ隙間を形成する。これは、ラム側係合ブロック13が前進すると、前記端縁に続く平面部分がシリンダ側係合ブロック33と同時に係合し、逆にラム側係合ブロック13が後退すると、前記端縁に続く平面部分がシリンダ側係合ブロック33から同時に外れることを意味する。
【0027】
このほか、本例のラム側連結部は、ラム側係合ブロック13やブロックガイド131が露出して、外部部材との接触等により破損しないように、ベース部材136にブロック保護カバー134を被せてラム側係合ブロック13を前記ブロック保護カバー134で覆っている(図3は、説明の便宜上、ブロック保護カバー134を図示略)。これにより、ラム側連結部を、ブロック保護カバー134、ベース部材136及びストッパ部材135に囲まれた一体のモジュールとして取り扱えるようになり、ラム1に対する取り付けも容易になる。付勢ピン132は、ラム側係合ブロック13の後退規制を担うストッパ部材135に保持され、前記ストッパ部材135の側面から付勢力の調整ノブを突出させている(各図中、突出する調整ノブを指して付勢ピン132としている)。
【0028】
シリンダ側連結部を構成するシリンダ3は、ベッド2の上層面の上面に設けた枠体状のチューブ固定部22にチューブ31を固定させた両ロッド式の油圧シリンダであり、シリンダロッド32に、シリンダロッド32の進退方向に延びるロッド内貫通孔321を設けている。シリンダ側係合ブロック33は、水平断面がブロック貫通孔12に等しい円形である扁平な円盤状で、シリンダロッド32の上端に設けられている。これにより、シリンダ側係合ブロック33は、ラム側係合ブロック13がブロック貫通孔12から進退方向外側に後退すれば前記ブロック貫通孔12を通過でき、ブロック貫通孔12から進退方向内向きに突出するラム側係合ブロック13に上方(ブロック貫通孔12通過前)又は下方(ブロック貫通孔12通過後)から係合する。
【0029】
本例のシリンダ側係合ブロック33は、ラム側係合ブロック13に対向する側面を含み、平面視中心を通過する半径方向に延びるスリ割り溝の対向面であるガイド面331を形成し、前記ガイド面331,331の間に差し込まれるように、カムブロック34を添わせている。本例は、シリンダロッド32に従って昇降するシリンダ側係合ブロック33に対し、カムブロック34をベッド2に対して位置固定するため、チューブ31下方でチューブ固定部22に支持させた固定棒342から上方に向けて突出する支持棒341をシリンダロッド32のロッド内貫通孔321に貫通させ、カムブロック34のみを前記支持棒341に支持させている。
【0030】
カムブロック34は、平面視中心を通る鉛直線に線対称な側面視八角形の細幅な板状のブロックで、シリンダ側係合ブロック33のガイド面331からはみ出す一対の両側縁それぞれが、上から順に上傾斜縁343、中間縁344及び下傾斜縁345を有している。中間縁344は、シリンダ側係合ブロック33の側面より僅かに突出した垂直方向の延在部分である。上傾斜縁343は、中間縁344上端から上方に向けて徐変にシリンダ側係合ブロック33の側面から引っ込む傾斜部分である。下傾斜縁345は、中間縁344下端から下方に向けて徐変にシリンダ側係合ブロック33の側面から引っ込む傾斜部分である。本例のカムブロック34は、上傾斜縁343及び下傾斜縁345を形成した上下部分がシリンダ側係合ブロック33の上端面及び下端面から突出している。
【0031】
本例のハイブリッド式プレス装置によるプレス加工処理を説明する。処理開始前は、図1及び図2に見られるように、ラム1は上方の待避位置まで上昇しており、圧縮手段を構成するラム側連結部とシリンダ側連結部とは離れ、ラム側係合ブロック13はブロック貫通孔12から進退方向内向きに突出して、対向する端縁の間隔をシリンダ側係合ブロック33より狭めている(図3参照)。ラム1は、昇降手段を構成する4本の雄ネジ軸4のみで支持されている。ラム1は、各雄ネジ軸4が雌ネジ部5と常に螺合しており、それぞれが自転しない限り昇降できないので、安定して上方の待避位置を維持できる。
【0032】
ラム1は、例えば雄ネジ軸4を正転させ、前記雄ネジ軸4の雌ネジ部5との螺合位置を上方に移動させ、前記雄ネジ軸4がロッド収納部51内に突出させる長さを伸ばして下降させる。本例のハイブリッド式プレス装置は、クラウンがないため、ラム1が下降すると、装置全体の全高が低くなる(図2及び図4を比較対照)。これから、ラム1の上層面の上面を作業足場として作業する場合、ラム1を下降させた状態で前記上面に作業者が乗り、作業させると、安全性を高めることができる。こうしてラム1を加圧開始点近傍まで下降させると、図5に見られるように、シリンダ側連結部を構成するシリンダ側係合ブロック33及びカムブロック34が、下降してくるラム1のブロック貫通孔12に下方から一体に突入する。
【0033】
ブロック貫通孔12に突入したカムブロック34は、シリンダ側係合ブロック33に先行して、ラム側係合ブロック13の当接ローラ131に上傾斜縁343を当て、前記当接ローラ133を介して各ラム側係合ブロック13を進退方向外向きに後退させていく。そして、ラム1が下降し続けて前記当接ローラ133が中間縁344に達すると、図6及び図7に見られるように、係合ローラ33の側面より進退方向外向きにはみ出した中間縁344が、付勢ピン132による進退方向内向きの付勢に抗してラム側係合ブロック13を完全にブロック貫通孔12から進退方向外側に追いやり、シリンダ側係合ブロック33が前記ブロック貫通孔12を通過できるようにする。中間縁344の垂直方向長さは、シリンダ側係合ブロック33の厚みより長いので、シリンダ側係合ブロック33がブロック貫通孔12を通過している間、ラム側係合ブロック13はブロック貫通孔12からの後退した状態を維持する。
【0034】
更にラム1が下降して加圧開始点(加圧手段を作動させてラム1にプレス圧を加え始めるラム1の高さ)に達すると、シリンダ側係合ブロック33及びカムブロック34は一体としてブロック貫通孔12を完全に通過し、図8に見られるように、付勢ピン132の付勢により当接ローラ133を下傾斜縁345に沿って転動させながら、ラム側係合ブロック13を再びブロック貫通孔12から進退方向内側に突出させる。このとき、ラム側係合ブロック13は、対向する端縁から続く平面部分をシリンダ側係合ブロック33の直下に位置させる。このように、カムブロック34は、ラム側係合ブロック13を一時的に後退させ、シリンダ側係合ブロック33がブロック貫通孔12を通過できるようにしながら、ブロック貫通孔12を通過したシリンダ側係合ブロック33直下にラム側係合ブロック13を突出させる。
【0035】
ラム1が加圧開始点に到達した後、雄ネジ軸4の正転を停止し、今度は加圧手段を構成するシリンダ3のシリンダロッド32を縮めて、図9〜図11に見られるように、ラム側係合ブロック13にシリンダ側係合ブロック33を上方から係合させて、ラム1を下降させる。雄ネジ軸4の停止とシリンダ3の作動との連携は、上方の待避位置からラム1が下降を始めてから加圧開始点に達するまでの時間が決まっているので、例えばラム1が加圧開始点まで下降したタイミングで、雄ネジ軸4の停止とシリンダ3の作動とを自動的に制御装置が切り換えるようにするとよい。このほか、ラム1が加圧開始点まで下降したことを、従来公知の各種センサにより検知させ、前記センサがラム1を検知したら、制御装置が雄ネジ軸4の停止とシリンダ3の作動とを切り換えるようにしてもよい。
【0036】
このように、本発明は、例えば特許文献1が開示するハイブリッド式プレス装置と異なり、ラム1が加圧開始点にまで下降した後、加圧手段を作動させるために必要な前処理が必要なく、ラム1が加圧開始点に達するタイミングさえ分かれば、昇降手段と加圧手段とを円滑に切り換えできる利点がある。これは、プレス加工処理の作業時間から前記前処理に要する時間を省略できることを意味し、作業時間の時短の効果をもたらす。また、圧縮手段に置けるラム側連結部とシリンダ側連結部との係合及び解除が自動的にできる点は、昇降手段と加圧手段との切換作業の省力化と言う利点をもたらす。
【0037】
本例のハイブリッド式プレス装置は、雌ネジ部5及びロッド収納部51が一体として空気バネ52に支持されているため、シリンダ3の作動によるラム1の下降を前記空気バネ52の圧縮により吸収し、雄ネジ軸4及び雌ネジ部5が一体に下降することで両者の螺合部分に、ラム1の下降による負荷が加わらないようにする(図10中、ロッド収納部51に図示した破線白抜矢印参照)。これは、シリンダ3によるラム1の下降に際し、雄ネジ軸4が突っ張ってラム1を上方に押し上げないこと、つまりシリンダ3の加圧力ほとんどすべてがラム1のプレス圧として利用できることを意味する(シリンダ3の加圧力は一部空気バネ52の圧縮に使われる)。
【0038】
ラム1にプレス圧を加える際の緩衝装置は、例えば図12に見られるように、ロッド収納部51と雌ネジ部5との間に介装する空気バネ53としても構成できる。この場合、シリンダ3によるラム1の下降を空気バネ53の圧縮により吸収し、雄ネジ軸4及び雌ネジ部5が一体に下降することで両者の螺合部分に、ラム1の下降による負荷が加わらないようにする。空気バネ53は、雌ネジ部4を抜けてロッド収納部51に向けて延びる雄ネジ軸4を貫通させる必要から、平面視ドーナツ状である。更に、図13に見られるように、ロッド収納部51の上端及び下端にそれぞれ空気バネ52,53を配してもよい。
【0039】
プレス加工処理後のラム1の上昇は、基本的に上述までの手順の逆になる。まず、シリンダ3がシリンダロッド32を伸ばしてシリンダ側係合ブロック33をカムブロック34に一致する加圧開始点まで上昇させる。ラム側係合ブロック13がシリンダ側係合ブロック33を避けるためには、シリンダ側係合ブロック33とカムブロック34とが加圧開始点で高さ方向の位置関係が一致している必要がある。こうして、シリンダ側係合ブロック33とカムブロック34とが同じ加圧開始点に揃ったところで、今度は雄ネジ軸4を逆転させるとラム1が前記雄ネジ軸4の逆転に従って上昇を始めると、上述までと逆に下傾斜縁345、中間縁344及び上傾斜縁343の順に摺接する過程で押し広げられてシリンダ側係合ブロック33を超え、ラム1を上昇させることができる。
【0040】
シリンダ3によるシリンダロッド32の伸長から雄ネジ軸4の逆転開始までは、予め制御装置により設定したタイミングに従って連続させることができる。すなわち、本例のハイブリッド式プレス装置は、シリンダ3が作動してラム1にプレス圧を加え始めるタイミングから、プレス加工処理を終えてラム1を再び上方の待避位置まで上昇させるタイミングまでが決まっているので、例えばラム1が加圧開始点まで下降したタイミングから計って、シリンダ3の停止と雄ネジ時軸5の逆転とを自動的に制御装置が切り換えるようにするとよい。既述したように、ラム1の下降に際する雄ネジ軸5の停止とシリンダ3の作動との切換もタイミングに従って自動的に切り換えることができるので、本例のハイブリッド式プレス装置は、すべての手順をタイミングに従って円滑に切り換えることができる。
【0041】
加圧手段は、図14及び図15に見られるように、上記例示と異なる構成にすることもできる。別例の加圧手段は、上記例示同様のラム側連結部とシリンダ側連結部とから構成されるが、ラム側連結部を構成するラム側係合ブロック16が常態として進退方向外向きに付勢されている点が相違する。このため、シリンダ側連結部を構成するカムブロック35は、係合鉤ローラ161に係合して前記ラム側係合ブロック16を進退方向内向きに引き寄せることができるように、前記係合鉤ローラ161を挟み込む一対の突起部を有する正面視U字状になっている(図15参照)。
【0042】
ラム側連結部は、ラム1に設けた垂直方向のブロック貫通孔12(図14中、ブロック貫通孔12に連通するベース部材164の開口167を図示)と、前記ブロック貫通孔12の中心に向けて進退自在で、離反スプリング162(図15及び図17中図示略)により前記進退方向外向きに付勢された左右一対のラム側係合ブロック16,16とから構成される。ラム側係合ブロック16は、側縁から進退方向内向きに2本のアームを突出した平面視U字状で、各アーム先端に係合鉤ローラ161を設けて、前記係合鉤ローラ161及びアームにより平面視L字状の係合鉤を構成している。各ラム側係合ブロック16は、側方(図15中紙面直交方向)、上方(図15中紙面上方)及び進退方向背面方向(図15中右方又は左方)への移動を規制する保持部材163に囲まれ、ブロック貫通孔12に等しい平面視形状の開口167を設けたベース部材164に載せられ、互いが接近離反するように左右方向へ進退する。
【0043】
別例のラム側係合ブロック16は、圧縮状態にある離反スプリング162により連結され、互いが離反する方向、すなわち進退方向外向きに付勢されている。また、離反スプリング162の伸縮に連動して一端から突出する長さを増減させる中心軸に検知板166を取り付け、離反スプリング162の伸縮をラム側係合ブロック16の移動として、前記検知板166を挟む一対の近接センサ165により検知板166を検知できるようにしている。これにより、ラム側係合ブロック16が離れているか、接近しているかを、左右いずれの近接センサ165が信号を出力するかにより容易に知ることができる。
【0044】
シリンダ側連結部は、シリンダロッド32端に設けたシリンダ側係合ブロック33と、前記シリンダ側係合ブロック33のガイド面331に添わせるカムブロック35とから構成される。シリンダ側係合ブロック33は、シリンダロッド32と同じ水平断面方形であり、シリンダロッド32端に設けたシリンダ側係合ブロック33の前後側面をガイド面331としている。カムブロック35は、ベッド2(図1参照)に固定したチューブ固定部22に対して位置固定し、前記シリンダ側係合ブロック33を加圧手段の加圧開始点に位置させたときの前記ガイド面331に添わせている。ガイド面331を構成するシリンダ側係合ブロック33の前後面は、シリンダロッド32の前後面に連続し、ラム側係合ブロック16に係合するシリンダ側係合ブロック33の部位は、シリンダロッド32の左右側面から張り出して構成されている。
【0045】
カムブロック35は、シリンダロッド32及びシリンダ側係合ブロック33にわたって連続する前後のガイド面331に摺接する板状ブロックで、左右対称な突起部を有する正面視U字状である。各突起部は、対向する内縁に、垂直方向に延在する係合縁352と、前記係合縁352上端から上方に向けて徐変に開くガイド傾斜縁353とを形成している。ガイド傾斜縁353の上端354は、進退方向に後退したラム側係合ブロック16の係合鉤ローラ161の間隔より広くなっており、ラム1が下降してくると確実に係合鉤ローラ161がガイド傾斜縁353に上方から当接するようにしている。このように、ラム側係合ブロック16の係合鉤ローラ161は、上方からまずガイド傾斜縁353に当接し、前記ガイド傾斜縁353に沿って進退方向内側に移動して係合縁352に係合し、前記進退方向内向きの前進状態が保持される。
【0046】
別例のラム側連結部及びシリンダ側連結部は、次のように作動する。ラム1が上方に待避している段階では、図14及び図15に見られるように、ラム側係合ブロック16は、離反スプリング162の働きにより、互いが遠ざかるように進退方向外向きに後退している。ここで、ラム側係合ブロック16の対向する前縁の間隔Lrは、シリンダ側係合ブロック35の左右方向長さLsに等しくしているため、ラム1が下降してくると、シリンダ側係合ブロック33がブロック貫通孔12を通過する。ラム側係合ブロック16の対向する前縁の間隔Lrは、シリンダ側係合ブロック35の左右方向長さLs以上であればよい。
【0047】
シリンダ側係合ブロック33がブロック貫通孔12を通過すると同時又は直後の段階では、ラム側係合ブロック16の係合鉤ローラ161がカムブロック35のガイド傾斜縁353に当接し、ラム1の下降に合わせて前記ガイド傾斜縁353から係合縁352に移って係合し、図16及び図17に見られるように、ラム側係合ブロック16が離反スプリング162に抗して接近する。この段階に至ると、ラム側係合ブロック16の対向する前縁の間隔Lrは、シリンダ側係合ブロック35の左右方向長さLsより小さくなり、シリンダ3がシリンダロッド32を縮めると、シリンダ側係合ブロック33がラム側係合ブロック16に上方から係合できるようなり、ラム1にプレス圧を加えることができる。
【0048】
このとき、カムブロック35は、取付フランジ351によりチューブ固定部22に固着され、ベッド2に対して位置固定されているので、シリンダ側係合ブロック33に従って下降するラム側係合ブロック16の係合鉤ローラ161に対して相対的に移動しない。このため、前記ラム側係合ブロック16の係合鉤ローラ161の移動を妨げないように、カムブロック35の係合縁352は、シリンダロッド32の伸縮範囲より長くして、前記ラム側係合ブロック16の係合鉤ローラ161が係合縁352に係合したまま昇降できるようにしている。係合鉤ローラ161は、こうした係合縁352に沿った昇降に際して、移動抵抗を小さくする働きを有する。
【0049】
ラム1による加圧を終えた後、概ね上述までの逆の手順を辿る。シリンダロッド32を伸ばしてシリンダ側係合ブロック33を加圧開始点まで上昇させた後、ラム1を上昇させ始めると、係合鉤ローラ161が係合縁352からガイド傾斜縁353に沿って上昇する過程で、ラム側係合ブロック16は、離反スプリング162の働きにより徐々に進退方向外向きに後退して、ラム側係合ブロック16の対向する前縁の間隔Lrを、シリンダ側係合ブロック35の左右方向長さLsに再び等しくし、ブロック貫通孔12を通じてシリンダ側係合ブロック33が下方に抜け出せるようにする。別例では、近接センサ165を利用してラム側係合ブロック16の移動を監視しているので、万一ラム側係合ブロック16が進退方向外向きに後退していない場合は、前記近接センサ165が検知板166を検知して信号を発し、外部に報知することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ラム
11 プレス上型
12 ブロック貫通孔
13 ラム側係合ブロック
14 雄ネジ軸貫通部
15 落下防止柵
16 ラム側係合ブロック
2 ベッド
21 プレス下型
22 チューブ固定部
3 シリンダ
31 チューブ
32 シリンダロッド
33 シリンダ側係合ブロック
34 カムブロック
35 カムブロック
4 雄ネジ軸
41 電気モータ
42 伝達シャフト
43 減速機
5 雌ネジ部
51 ロッド収納部
52 空気バネ
53 空気バネ
54 雌ネジ部支持ブッシュ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラムの昇降手段と加圧手段とを分けたハイブリッド式プレス装置において、
昇降手段は、正逆に自転する雄ネジ軸をラムから下方に向けて降ろし、ベッドに対して位置固定された雌ネジ部に前記雄ネジ軸を螺合させたボールネジ機構であることを特徴とするハイブリッド式プレス装置。
【請求項2】
雌ネジ部は、ベッドから雄ネジ軸に向けて突出するロッド収納部の上方に位置固定された請求項1記載のハイブリッド式プレス装置。
【請求項3】
ロッド収納部は、垂直方向に弾性変形する緩衝装置を介してベッドに対して位置固定された請求項2記載のハイブリッド式プレス装置。
【請求項4】
雌ネジ部は、垂直方向に弾性変形する緩衝装置を介してロッド収納部の上方に位置固定された請求項2又は3いずれか記載のハイブリッド式プレス装置。
【請求項1】
ラムの昇降手段と加圧手段とを分けたハイブリッド式プレス装置において、
昇降手段は、正逆に自転する雄ネジ軸をラムから下方に向けて降ろし、ベッドに対して位置固定された雌ネジ部に前記雄ネジ軸を螺合させたボールネジ機構であることを特徴とするハイブリッド式プレス装置。
【請求項2】
雌ネジ部は、ベッドから雄ネジ軸に向けて突出するロッド収納部の上方に位置固定された請求項1記載のハイブリッド式プレス装置。
【請求項3】
ロッド収納部は、垂直方向に弾性変形する緩衝装置を介してベッドに対して位置固定された請求項2記載のハイブリッド式プレス装置。
【請求項4】
雌ネジ部は、垂直方向に弾性変形する緩衝装置を介してロッド収納部の上方に位置固定された請求項2又は3いずれか記載のハイブリッド式プレス装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−152768(P2012−152768A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12165(P2011−12165)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【特許番号】特許第4815019号(P4815019)
【特許公報発行日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(503145062)享栄エンジニアリング株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【特許番号】特許第4815019号(P4815019)
【特許公報発行日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(503145062)享栄エンジニアリング株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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