説明

ハイブリッド自動車の制御装置、ハイブリッド自動車およびハイブリッド自動車の制御方法、並びにプログラム

【課題】クランキングによる盗難を防止すること。
【解決手段】エンジン10と電動機13と電動機13に電力を供給するバッテリ15とを有し、電動機13によるエンジン10のクランキングによりエンジン10が始動され、エンジン10もしくは電動機13により走行可能であり、またはエンジン10と電動機13とが協働して走行可能であり、キー24に内蔵される送信器25から送信される認証情報に基づいて、エンジン10の始動を許可または禁止するハイブリッド自動車1のハイブリッドECU18において、ハイブリッドECU18がエンジン10の始動を禁止しているときに、ハイブリッド自動車1の車速が検出されたときには、電動機13によるエンジン10のクランキングを禁止するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車の制御装置、ハイブリッド自動車およびハイブリッド自動車の制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
盗難を防止するために、イモビライザを備える車両が普及している(たとえば特許文献1参照)。イモビライザは、車両のキーなどに内蔵されている送信器から送信される認証情報を車両側の受信器で受信し、イモビライザECU(Electronic Control Unit)などが、受信した認証情報を解析してその正当性を確認する。ここで認証情報の正当性が確認されると、イモビライザECUは、エンジンECUに対し、その旨を伝達する。エンジンECUは、イモビライザECUから認証情報が正当である旨を伝達されると、エンジンを始動できるように、燃料の噴射が可能な状態にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−30873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、イモビライザを有する車両では、認証情報の正当性が確認されるまでは、エンジンの燃料噴射については禁止するが、エンジンのクランキングまでは禁止していない。これは、エンジンのクランキングまでも禁止してしまうと、認証情報が不正のためにエンジンが始動しないのか、それともスタータなどに故障が発生してエンジンが始動しないのかの区別がつかなくなるためである。
【0005】
一方、ハイブリッド自動車では、エンジンの始動には、スタータの代わりに電動機が使用される。電動機はスタータと比較して長い時間大きなトルクを発生することができる。このため、ハイブリッド自動車では、クランキングのみでも一定の距離(たとえば2km(キロメートル)〜3km)の走行が可能である。
【0006】
これによれば、ハイブリッド自動車では、単に、盗難防止のためにエンジンの燃料の噴射を禁止してもクランキングにより盗難が可能である。
【0007】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、クランキングによる盗難を防止することができるハイブリッド自動車の制御装置、ハイブリッド自動車およびハイブリッド自動車の制御方法、並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの観点は、ハイブリッド自動車の制御装置としての観点である。本発明のハイブリッド自動車の制御装置は、エンジンと電動機と電動機に電力を供給するバッテリとを有し、電動機によるエンジンのクランキングによりエンジンが始動され、エンジンもしくは電動機により走行可能であり、またはエンジンと電動機とが協働して走行可能であり、キーに内蔵される送信器から送信される認証情報に基づいて、エンジンの始動を許可または禁止するハイブリッド自動車の制御装置において、エンジンの始動を禁止しているときに、ハイブリッド自動車の車速が検出されたときには、電動機によるエンジンのクランキングを禁止する制御手段を有するものである。
【0009】
さらに、制御手段は、エンジンの始動を禁止しているときに、ハイブリッド自動車の車速が検出されていなくても、バッテリの充電状態を示す値が所定値未満であるときには、電動機によるエンジンのクランキングを禁止することができる。
【0010】
本発明の他の観点は、本発明のハイブリッド自動車の制御装置を有することを特徴とするハイブリッド自動車である。
【0011】
本発明のさらに他の観点は、ハイブリッド自動車の制御方法としての観点である。本発明のハイブリッド自動車の制御方法は、エンジンと電動機と電動機に電力を供給するバッテリとを有し、電動機によるエンジンのクランキングによりエンジンが始動され、エンジンもしくは電動機により走行可能であり、またはエンジンと電動機とが協働して走行可能であり、キーに内蔵される送信器から送信される認証情報に基づいて、エンジンの始動を許可または禁止するハイブリッド自動車の制御方法において、エンジンの始動を禁止しているときに、ハイブリッド自動車の車速が検出されたときには、電動機によるエンジンのクランキングを禁止するステップを有するものである。
【0012】
本発明のさらに他の観点は、プログラムとしての観点である。本発明のプログラムは、コンピュータ装置に、エンジンと電動機と電動機に電力を供給するバッテリとを有し、電動機によるエンジンのクランキングによりエンジンが始動され、エンジンもしくは電動機により走行可能であり、またはエンジンと電動機とが協働して走行可能であり、キーに内蔵される送信器から送信される認証情報に基づいて、エンジンの始動を許可または禁止するハイブリッド自動車の制御機能を実現させるプログラムにおいて、エンジンの始動を禁止しているときに、ハイブリッド自動車の車速が検出されたときには、電動機によるエンジンのクランキングを禁止する制御機能を実現させるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クランキングによる盗難を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態のハイブリッド自動車の構成の例を示すブロック図である。
【図2】図1のハイブリッドECUにおいて実現される機能の構成の例を示すブロック図である。
【図3】図2の認証制御部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態のハイブリッド自動車について、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0016】
(概要について)
図1は、ハイブリッド自動車1の構成の例を示すブロック図である。ハイブリッド自動車1は、車両の一例である。ハイブリッド自動車1は、半自動トランスミッションの変速機を介したエンジン(内燃機関)10および/または電動機13によって駆動される。ハイブリッド自動車1は、キー24に内蔵されたイモビライザの送信器25から送信される認証情報を解析し、認証情報が不当であるときには、エンジン10の始動を禁止する。さらにエンジン10の始動が禁止されている状態で、ハイブリッド自動車1の車速が検出されると、電動機13によるエンジン10のクランキングについても禁止する。ここで車速は、不図示の車速センサにより検出され得る最低の車速とすることが好ましい。
【0017】
なお、クランキングとは、エンジン10を始動させるために、電動機13によって、エンジン10の回転軸を回転させることである。従来は、このようなクランキングを行っているときに、クラッチ12を接状態にすると、エンジン10が始動していなくても電動機13が発生する動力がトランスミッション16を介して車輪19に伝わり、ハイブリッド自動車1は、低速走行を行うことができる状態になる。本実施の形態のハイブリッド自動車1では、このようなクランキングを利用した低速走行を禁止し、クランキングが盗難に利用されることを回避する。
【0018】
また、バッテリ15のSOCが所定値未満のときには、エンジン10の始動が禁止されている状態での電動機13によるエンジン10のクランキングも同時に禁止する。なお、半自動トランスミッションとは、マニュアルトランスミッションと同じ構成を有しながら自動化されたクラッチ12と協働して変速操作を自動的に行うことができるトランスミッションである。
【0019】
(ハイブリッド自動車1の構成について)
ハイブリッド自動車1は、エンジン10、エンジンECU(Electronic Control Unit)11、クラッチ12、電動機13、インバータ14、バッテリ15、トランスミッション16、電動機ECU17、ハイブリッドECU18(請求項でいう制御装置)、車輪19、受信器20、イモビライザECU21、シフト部22、およびキースイッチ23を有して構成される。なお、トランスミッション16は、上述した半自動トランスミッションを有し、ドライブレンジ(以下では、D(Drive)レンジと記す)を有するシフト部22により操作される。シフト部22がDレンジにあるときには、半自動トランスミッションの変速操作が自動化される。
【0020】
エンジン10は、内燃機関の一例であり、エンジンECU11によって制御され、ガソリン、軽油、CNG(Compressed Natural Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、または代替燃料等を内部で燃焼させて、軸を回転させる動力を発生させ、発生した動力を、電動機13を介してクラッチ12に伝達する。
【0021】
エンジンECU11は、ハイブリッドECU18からの指示に従うことにより、電動機ECU17と連携動作するコンピュータであり、燃料噴射量やバルブタイミングなど、エンジン10を制御する。たとえば、エンジンECU11は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSP(Digital Signal Processor)などにより構成され、内部に、演算部、メモリ、およびI/O(Input/Output)ポートなどを有する。
【0022】
クラッチ12は、ハイブリッドECU18からの変速指示信号に基づき電動機13の回転軸とトランスミッション16の入力軸とを接状態または断状態にするものである。なお、クラッチ12の機構自体は、運転者がクラッチペダルを操作して電動機13の回転軸とトランスミッション16の入力軸とを接状態または断状態に操作するものと同じものである。また、運転者が不図示のクラッチペダルを操作することにより、ハイブリッドECU18による制御の他に、電動機13の回転軸とトランスミッション16の入力軸とを接状態または断状態に操作できるようにしてもよい。
【0023】
電動機13は、いわゆる、モータジェネレータであり、インバータ14から供給された電力により、軸を回転させる動力を発生させて、その軸出力をクラッチ12を介してトランスミッション16に供給するか、またはトランスミッション16からクラッチ12を介して供給された軸を回転させる動力によって発電し、その電力をインバータ14に供給する。たとえば、ハイブリッド自動車1が加速しているとき、または定速で走行しているときにおいて、電動機13は、軸を回転させる動力を発生させて、その軸出力をクラッチ12を介してトランスミッション16に供給し、エンジン10と協働してハイブリッド自動車1を走行させる。また、たとえば、電動機13がエンジン10によって駆動されているとき、またはハイブリッド自動車1が減速しているとき、もしくは下り坂を走行しているときなどにおいて、電動機13は、発電機として動作し、この場合、トランスミッション16からクラッチ12を介して供給された軸を回転させる動力によって発電して、電力をインバータ14に供給し、バッテリ15が充電される。このとき、電動機13は、回生電力に応じた大きさの回生トルクを発生する。
【0024】
インバータ14は、電動機ECU17によって制御され、バッテリ15からの直流電圧を交流電圧に変換するか、または電動機13からの交流電圧を直流電圧に変換する。電動機13が動力を発生させる場合、インバータ14は、バッテリ15の直流電圧を交流電圧に変換して、電動機13に電力を供給する。電動機13が発電する場合、インバータ14は、電動機13からの交流電圧を直流電圧に変換する。すなわち、この場合、インバータ14は、バッテリ15に直流電圧を供給するための整流器および電圧調整装置としての役割を果たす。
【0025】
バッテリ15は、充放電可能な二次電池であり、電動機13が動力を発生させるとき、電動機13にインバータ14を介して電力を供給するか、または電動機13が発電しているとき、電動機13が発電する電力によって充電される。バッテリ15には、適切なSOCの範囲が決められており、SOCがその範囲を外れないように管理されている。
【0026】
トランスミッション16は、ハイブリッドECU18からの変速指示信号に従って、複数のギア比(変速比)のいずれかを選択する半自動トランスミッション(図示せず)を有し、変速比を切り換えて、変速されたエンジン10の動力および/または電動機13の動力を車輪19に伝達する。また、減速しているとき、もしくは下り坂を走行しているときなど、トランスミッション16は、車輪19からの動力をクラッチ12を介して電動機13に伝達する。また、トランスミッション16が変速する際には、クラッチ12がいったん断状態に制御される。このように、ハイブリッドECU18は、トランスミッション16とクラッチ12とを協働させてハイブリッド自動車1の自動変速を実施する。なお、半自動トランスミッションは、運転者がシフト部22を操作して手動で任意のギア段にギア位置を変更することもできる。
【0027】
電動機ECU17は、ハイブリッドECU18からの指示に従うことにより、エンジンECU11と連携動作するコンピュータであり、インバータ14を制御することによって電動機13を制御する。たとえば、電動機ECU17は、CPU、ASIC、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSPなどにより構成され、内部に、演算部、メモリ、およびI/Oポートなどを有する。
【0028】
ハイブリッドECU18は、コンピュータの一例であり、ハイブリッド走行のために、アクセル開度情報、ブレーキ操作情報、クーラスイッチ情報、サーモスタット動作情報、ギア位置情報、エンジン回転速度情報、SOC情報、および認証結果通知情報を取得する。取得したこれらの情報に基づいて、ハイブリッドECU18は、変速指示信号を供給することでクラッチ12およびトランスミッション16を制御し、電動機ECU17に対して電動機13およびインバータ14の制御指示を与え、エンジンECU11に対してエンジン10の制御指示を与え、イモビライザECU21に対して認証制御指示を与える。たとえば、ハイブリッドECU18は、CPU、ASIC、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSPなどにより構成され、内部に、演算部、メモリ、およびI/Oポートなどを有する。
【0029】
なお、ハイブリッドECU18によって実行されるプログラムは、ハイブリッドECU18の内部の不揮発性のメモリにあらかじめ記憶しておくことで、コンピュータであるハイブリッドECU18にあらかじめインストールしておくことができる。
【0030】
エンジンECU11、電動機ECU17、ハイブリッドECU18、およびイモビライザECU21は、CAN(Control Area Network)などの規格に準拠したバスなどにより相互に接続されている。
【0031】
車輪19は、路面に駆動力を伝達する駆動輪である。なお、図1において、1つの車輪19のみが図示されているが、実際には、ハイブリッド自動車1は、複数の車輪19を有する。
【0032】
受信器20は、キー24に内蔵されているイモビライザの送信器25から送信される認証情報を含む無線信号を受信するものである。
【0033】
イモビライザECU21は、受信器20が受信した認証情報を解析し、認証情報の正当性を確認するためのコンピュータである。たとえばイモビライザECU21を構成するコンピュータが有する不揮発性メモリに、予め正当な認証コードなどの認証情報を記憶させておき、イモビライザECU21は、受信器20が受信した認証情報と、予め不揮発性メモリが記憶している認証情報とが一致するか否かを照合する。なお、認証情報は、複数の数字、文字、または記号などから構成される固定的なコードでもよいし、あるいは特許文献1にあるように、所定のキーワードを含む可変的なコードであってもよい。本発明の実施の形態におけるイモビライザに係る技術は、周知または公知のあらゆる技術が適用可能である。イモビライザECU21が認証情報の正当性を確認すると、その旨をハイブリッドECU18に伝達するための認証結果通知情報がイモビライザECU21からハイブリッドECU18に送出される。
【0034】
シフト部22は、既に説明したように、トランスミッション16の半自動トランスミッションに運転者からの指示を与えるものであり、シフト部22がDレンジにあるときには、半自動トランスミッションの変速操作が自動化される。
【0035】
キースイッチ23は、運転を開始するときにユーザにより、たとえばキーが差し込まれてON/OFFされるスイッチであり、これがON状態になることによってハイブリッド自動車1の各部は起動し、キースイッチ23がOFF状態になることによってハイブリッド自動車1の各部は停止する。
【0036】
キー24は、キースイッチ23に差し込んでハイブリッド自動車1の電源をON状態にすると共に、エンジン10を始動させるキーであり、その内部に、認証情報を送信する送信器25を有する。図1では、説明の便宜上、キー24がキースイッチ23に差し込まれていない状態を図示しているが、キー24がキースイッチ23に差し込まれて「ACC」の位置に回されることにより、ハイブリッド自動車1の電源がON状態になる。したがって、送信器25からの無線信号を受信器20で受信するためには、キー24がキースイッチ23に差し込まれて「ACC」または「ON」の位置にあることが必要である。
【0037】
送信器25は、認証情報を含む無線信号を送信するものである。送信器25は、小型の電池を内蔵し、その電力によって無線信号を能動的に送信するものであってもよいし、あるいは、受信器20が発生する電界に対して受動的に反応するトランスポンダであってもよい。
【0038】
図2は、プログラムを実行するハイブリッドECU18において実現される機能の構成の例を示すブロック図である。すなわち、ハイブリッドECU18がプログラムを実行すると、ハイブリッドECU18に、認証制御部30(請求項でいう制御手段)の機能が実現される。
【0039】
認証制御部30は、認証結果通知情報、車速情報、およびSOC情報に基づいてエンジンECU11にエンジン制御指示を行い、電動機ECU17に電動機制御指示を行い、イモビライザECU21に認証制御指示を行う機能である。
【0040】
(ハイブリッドECU18の動作について)
次に、図3のフローチャートを参照して、プログラムを実行するハイブリッドECU18において行われるエンジン制御、電動機制御、および認証制御の処理を説明する。なお、図3のステップS1〜S7の手続きによる処理は1周期分の処理であり、キースイッチ23がON状態である限り処理は繰り返し実行されるものとする。
【0041】
図3の「START」では、キースイッチ23がON状態であり、ハイブリッドECU18がプログラムを実行し、ハイブリッドECU18に認証制御部30の機能が実現されている状態である。このような状態であるときに、手続きはステップS1に進む。
【0042】
ステップS1において、認証制御部30は、受信器20からの認証情報を受信したか否かを判定する。ステップS1において、認証情報を受信したと判定されると、手続きはステップS2に進む。一方、ステップS1において、認証情報を受信していないと判定されると、手続きはステップS1を繰り返す。
【0043】
ステップS2において、認証制御部30は、受信した認証情報が正当か否かを判定する。ステップS2において、認証情報は正当でないと判定されると、手続きはステップS3に進む。一方、ステップS2において、認証情報は正当であると判定されると、手続きはステップS7に進む。
【0044】
ステップS3において、認証制御部30は、SOC情報に基づいて、バッテリ15のSOCは所定値以上か否かを判定する。ステップS3において、SOCが所定値以上であると判定されると、手続きはステップS4に進む。一方、ステップS3において、SOCが所定値未満であると判定されると、手続きはステップS9に進む。なお、ここでSOCの所定値とは、たとえばSOCの変動範囲が下限30%〜上限90%としたときに、所定値は、50%程度である。
【0045】
ステップS4において、認証制御部30は、エンジンECU11に対してエンジン10への燃料の噴射は禁止するが、電動機13によるエンジン10のクランキングについては禁止せずに、手続きはステップS5に進む。
【0046】
ステップS5において、認証制御部30は、車速情報に基づいて、ハイブリッド自動車1の車速を検出したか否かを判定する。ステップS5において、ハイブリッド自動車1の車速が検出されたと判定されると、手続きはステップS6に進む。一方、ステップS5において、ハイブリッド自動車1の車速が検出されていないと判定されると、1周期分の処理を終了する(END)。
【0047】
ステップS6において、認証制御部30は、電動機ECU17に対してエンジン10のクランキングを禁止して1周期分の処理を終了する(END)。
【0048】
ステップS7において、認証制御部30は、エンジンECU10に対して燃料の噴射を許可して処理を終了する(END)。
【0049】
(効果について)
認証制御部30の制御によれば、イモビライザの認証情報が不当である場合、燃料の噴射を禁止するが、クランキングは禁止しない。これにより、エンジン10が始動しないのは、電動機13などの故障ではないことを判別することができる。しかしながら、燃料の噴射が禁止されている状況下において、ハイブリッド自動車1の車速が検出されたときには、クランキングについても禁止することにより、クランキングを利用した盗難を防止することができる。また、イモビライザの認証情報が不当であり、バッテリ15のSOCが所定値未満であるときには、燃料の噴射を禁止すると共に、クランキングについても禁止する。これにより、バッテリ15のSOCが低下することを回避することができる。
【0050】
(その他の実施の形態)
図3のフローチャートの説明において、「以上」は、「超える」とし、「未満」は、「以下」とするなど、判定の境界値については様々に変更してもよい。
【0051】
エンジン10は、内燃機関であると説明したが、外燃機関を含む熱機関であってもよい。
【0052】
また、ハイブリッドECU18によって実行されるプログラムは、ハイブリッドECU18にあらかじめインストールされると説明したが、プログラムが記録されている(プログラムを記憶している)リムーバブルメディアを図示せぬドライブなどに装着し、リムーバブルメディアから読み出したプログラムをハイブリッドECU18の内部の不揮発性のメモリに記憶することにより、または、有線または無線の伝送媒体を介して送信されてきたプログラムを、図示せぬ通信部で受信し、ハイブリッドECU18の内部の不揮発性のメモリに記憶することで、コンピュータであるハイブリッドECU18にインストールすることができる。
【0053】
また、各ECUは、これらを1つにまとめたECUにより実現してもよいし、あるいは、各ECUの機能をさらに細分化したECUを新たに設けてもよい。
【0054】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。
【0055】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…ハイブリッド自動車、10…エンジン、11…エンジンECU、12…クラッチ、13…電動機、14…インバータ、15…バッテリ、16…トランスミッション、17…電動機ECU、18…ハイブリッドECU(制御装置)、19…車輪、21…イモビライザECU、30…認証制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと電動機と前記電動機に電力を供給するバッテリとを有し、前記電動機による前記エンジンのクランキングにより前記エンジンが始動され、前記エンジンもしくは前記電動機により走行可能であり、または前記エンジンと前記電動機とが協働して走行可能であり、キーに内蔵される送信器から送信される認証情報に基づいて、前記エンジンの始動を許可または禁止するハイブリッド自動車の制御装置において、
前記エンジンの始動を禁止しているときに、前記ハイブリッド自動車の車速が検出されたときには、前記電動機による前記エンジンのクランキングを禁止する制御手段を有する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の制御装置であって、
前記制御手段は、前記エンジンの始動を禁止しているときに、前記ハイブリッド自動車の車速が検出されていなくても、前記バッテリの充電状態を示す値が所定値未満であるときには、前記電動機による前記エンジンのクランキングを禁止する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の制御装置を有することを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項4】
エンジンと電動機と前記電動機に電力を供給するバッテリとを有し、前記電動機による前記エンジンのクランキングにより前記エンジンが始動され、前記エンジンもしくは前記電動機により走行可能であり、または前記エンジンと前記電動機とが協働して走行可能であり、キーに内蔵される送信器から送信される認証情報に基づいて、前記エンジンの始動を許可または禁止するハイブリッド自動車の制御方法において、
前記エンジンの始動を禁止しているときに、前記ハイブリッド自動車の車速が検出されたときには、前記電動機による前記エンジンのクランキングを禁止するステップを有する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項5】
コンピュータ装置に、
エンジンと電動機と前記電動機に電力を供給するバッテリとを有し、前記電動機による前記エンジンのクランキングにより前記エンジンが始動され、前記エンジンもしくは前記電動機により走行可能であり、または前記エンジンと前記電動機とが協働して走行可能であり、キーに内蔵される送信器から送信される認証情報に基づいて、前記エンジンの始動を許可または禁止するハイブリッド自動車の制御機能を実現させるプログラムにおいて、
前記エンジンの始動を禁止しているときに、前記ハイブリッド自動車の車速が検出されたときには、前記電動機による前記エンジンのクランキングを禁止する制御機能を実現させる、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−236567(P2012−236567A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108313(P2011−108313)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】