説明

ハイブリッド超伝導体−光量子中継器、これを用いる方法およびシステム

【課題】 ハイブリッド超伝導体−光量子中継器を提供する。
【解決手段】 ハイブリッド超伝導体−光量子中継器は、光チャネルを介して光信号を受信するように構成された光サブシステムと、光サブシステムに結合された超伝導体サブシステムと、を含む。光サブシステムおよび超伝導体サブシステムは、マイクロ波送信媒体を介して相互に結合されている。光サブシステムは、光チャネルを介して光信号を受信し、光信号の光子をマイクロ波出力信号のマイクロ波光子にダウンコンバートするように構成されており、マイクロ波出力信号がマイクロ波送信媒体を介して超伝導体サブシステムに出力される。超伝導体サブシステムは、マイクロ波光子の量子状態を記憶し、マイクロ波光子を超伝導体サブシステムから出力チャネルに沿って送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に改良されたデータ処理装置及び方法に関し、更に具体的には、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器機構、かかるハイブリッド超伝導体−光量子中継器機構を用いた装置/システム、及び、かかるハイブリッド超伝導体−光量子中継器機構を実施し用いるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子コンピュータは、原子より小さいレベルでの粒子の挙動に基づいて計算を実行するコンピューティング・デバイスである。量子コンピュータを用いる場合、データ単位すなわち量子ビットまたは「キュービット(qubit)」は、一度に2つ以上の状態で存在することができるので、量子コンピュータは、全てが同一の粒子セットに関連付けられているとしても相互に無関係に存在する多数の「思考経路」を有することができる。このように量子コンピュータは、既知の非量子コンピューティング・システムに比べ、潜在的に百万命令/秒(MIPS)を達成する可能性がある。
【0003】
キュービットは、従来のコンピュータのものと同様の2進数またはビットであるが、これは同時にいくつかの値を有することができる。本質的に、キュービットは多数の次元を有する粒子として考えることができ、その各々が、例えば論理1状態または論理0状態のようなハイ状態またはロー状態を有することができる。従って、2つのキュービットは4つの同時かつ独立した状態(00、01、10、および11)を有することができる。
【0004】
分散型量子コンピューティング環境においては、遠隔位置間でキュービット・データを転送する能力は重要な要素である。かかる分散型システムを用いる場合、光伝達ファイバ又は他の媒体によって光子を送信することで、1つの量子コンピュータから別の量子コンピュータへと量子情報を伝達することができる。しかしながら、かかる送信では一般に信号損失およびコヒーレンス消失が生じる。例えば、Munro等の「Quantum Repeater」、国際特許出願公開WO2007/021945A2号(2006年8月11日出願)に記載されているように、光信号は、典型的な光ファイバにより10km送信された場合に1.9dBの損失を受けるので、単一の光子は50%の損失確率を有し得る。繰り返しまたは冗長量子状態に対する損失およびデコヒーレンスの影響によって、ノイズの多いエンタングル(entangled)状態が生じる恐れがあり、これは限られた距離では量子情報を信頼性高く伝達し得るが、長距離にわたる送信では概して量子中継器が必要となる。
【0005】
量子中継器は、充分に理解されているデバイスであり(Duan等の「Long-Distance QuantumCommunication with Atomic Ensembles and Linear Optics」、Nature 414、413〜418(2001年)を参照)、ノイズの多いチャネルで送信されているキュービット(光子の形態であると理解される)を、エラー訂正によって元の送信量子状態に概ね復元することができる。中継器は通常、光子を別の物質ベースの形態に変換することでそれらを停止させることによってこれを可能とすることが想定されており(Pellizzari等の「Decoherence Continuous Observation, andQuantum Computing: A Cavity QED Model」、Phys. Rev.Lett. 75、3788(1995年)を参照)、量子メモリ(この実験的な提案ではトラップされたイオンを伴う(Moehring等「Entanglementof Single-Atom Quantum Bits at a Distance」、Nature 449、68〜71(2007年9月6日)を参照))、または半導体量子ドットを構成する(van Loock等、「Hybrid Quantum Repeater Using Bright CoherentLight」、Phys. Rev. Lett. 96、240501(2006年))。
【0006】
これらのキュービットは、メモリ内にある間に、様々な既知の種類の量子パリティ・チェックを行うように機能するいくつかの量子論理動作が行われて、エラーの発生を検出し訂正することができる。これらの訂正ステップの後、復元された量子状態は再び実施形態の変換を受け、量子情報は別のチャネル上を進む。入射チャネルまたは出射チャネルのいずれかはテレポーテーションチャネルとすることができる。つまり、光子は、ベルタイプの量子測定の適用によって伝達される量子情報のものとは逆の方向に進み、この後で従来の情報を順方向に送信される。
【0007】
量子中継器は、量子情報処理システムにおける重要な要素である。その想定される用途は、(1)これを用いて、セキュアな量子暗号が動作することができる距離を延ばし、鍵発生率を上昇させることができる。(2)これは、秘密共有、量子データ秘匿、量子アンロック、および量子デジタル署名を含む他の暗号タスクのために信頼性の高い長距離量子通信を提供することができる。(3)これは、遠隔メモリ割り当て(サンプリング複雑)および遠隔アポイントメント・スケジューリングを含む、量子送信によって効率的に実行可能な他の長距離通信タスクを可能とする。(4)量子中継器を用いてあらゆる形態の量子演算を分散させることができるので、例えば、10のエンタングルしたキュービットを必要とする素因数分解問題は、各々が約105キュービットを含む小さいプロセッサのネットワークを相互接続することによって達成可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際特許出願公開WO2007/021945A2号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Duan等の「Long-Distance Quantum Communication withAtomic Ensembles and Linear Optics」、Nature 414、413~418(2001年)
【非特許文献2】Pellizzari等の「DecoherenceContinuous Observation, and Quantum Computing: A Cavity QED Model」、Phys. Rev. Lett. 75、3788(1995年)
【非特許文献3】Moehring等「Entanglement of Single-Atom Quantum Bits at aDistance」、Nature 449、68〜71(2007年9月6日)
【非特許文献4】vanLoock等、「Hybrid Quantum Repeater UsingBright Coherent Light」、Phys. Rev. Lett. 96、240501(2006年)
【非特許文献5】Sangouard等の「Robust and Efficient Quantum Repeaters withAtomic Ensembles and Linear Optics、http://arxiv.org/PS_cache/arxiv/pdf/0802/1475v1.pdf
【非特許文献6】Majer等、「Coupling Superconducting Qubits via a CavityBus」、Nature 449、443〜447(2007年9月27日)
【非特許文献7】D.P. DiVincenzo、「The Physical Implementation ofQuantum Computation」、Fortschritte der Physik 48、771〜784(2000年)、arxiv/org: quant-ph/0002077
【非特許文献8】C.K. Hong、Z. Y. Ou、およびL. Mandelの「Measurementof Sub-Picosecond Time Intervals Between Two Photons by Interference」、Phys. Rev. Lett. 59、2044〜2046(1987年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
量子中継器の製作を意図したほとんどの以前の研究は、光学的にも操作される静止キュービットを用いたシステムに焦点を当てている。初期の理論的な研究(Pellizzari等に記載されている)は、送信された光子を光共振器内に入れて、トラップされたイオンまたは原子と相互作用させることを想定した。以降の研究では、これを拡大して、トラップされた原子クラウド(Sangouard等の「Robust and Efficient Quantum Repeaters withAtomic Ensembles and Linear Optics」を参照、http://arxiv.org/PS_cache/arxiv/pdf/0802/1475v1.pdfで利用可能)、ならびに光学的にアドレス指定した量子ドット(van Loock等を参照)を含む。この研究では、超伝導キュービットの使用は考えられていない。超伝導キュービットの分野では、GHz周波数範囲における光量子への相互変換が考えられている(Majer等、「Coupling Superconducting Qubits via a CavityBus」、Nature 449、443〜447(2007年9月27日を参照)。しかしながら、これらの研究はどれも、赤外または可視光周波数への相互変換を用いた超伝導キュービットは考えられていない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの例示的な実施形態において、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器が提供される。このハイブリッド超伝導体−光量子中継器は、光チャネルを介して光信号を受信するように構成された光サブシステムと、光サブシステムに結合された超伝導体サブシステムと、を含む。光サブシステムおよび超伝導体サブシステムは、マイクロ波送信媒体を介して相互に結合されている。光サブシステムは、光チャネルを介して光信号を受信し、光信号の光子をマイクロ波出力信号のマイクロ波光子にダウンコンバートするように構成されており、マイクロ波出力信号がマイクロ波送信媒体を介して超伝導体サブシステムに出力される。超伝導体サブシステムは、マイクロ波光子の量子状態を記憶し、マイクロ波光子を超伝導体サブシステムから出力チャネルに沿って送信する。
【0012】
別の例示的な実施形態においては、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器において、量子コンピュータ・サブシステム間でキュービットを送信するための方法を提供する。この方法は、第1の量子コンピュータ・サブシステムから、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器の光サブシステムにおいて光入力信号を受信することを含む。この方法は更に、光入力信号をマイクロ波信号にダウンコンバートし、これによって光入力信号の光波長光子をマイクロ波信号のマイクロ波波長光子にマッピングすることを含む。更に、この方法は、マイクロ波信号をハイブリッド超伝導体−光量子中継器の超伝導体サブシステムに入力することを含む。更に、この方法は、超伝導体サブシステムにマイクロ波波長光子の量子状態を記憶することを含む。加えて、この方法は、マイクロ波波長光子を超伝導体サブシステムから出力チャネルに沿って送信することを含む。
【0013】
更に別の例示的な実施形態においては、量子コンピュータ・サブシステムと、この量子コンピュータ・サブシステムに結合されたハイブリッド超伝導体−光量子中継器と、このハイブリッド超伝導体−光量子中継器に結合された干渉計サブシステムと、を含むシステムを提供する。ハイブリッド超伝導体−光量子中継器は、光チャネルを介して光信号を受信するように構成された光サブシステムと、光サブシステムに結合された超伝導体サブシステムと、を含む。光サブシステムおよび超伝導体サブシステムは、マイクロ波送信媒体を介して相互に結合されている。光サブシステムは、光チャネルを介して光信号を受信し、光信号の光子をマイクロ波出力信号のマイクロ波光子にダウンコンバートするように構成されており、マイクロ波出力信号がマイクロ波送信媒体を介して超伝導体サブシステムに出力される。超伝導体サブシステムは、マイクロ波光子の量子状態を記憶し、マイクロ波光子を超伝導体サブシステムから出力チャネルに沿って送信する。
【0014】
本発明のこれらおよび他の特徴および利点については、本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明において記載され、これを考慮すれば当業者には明らかであろう。
【0015】
本発明は、その好適な使用モードならびに更に別の目的および利点と共に、添付図面と関連付けて例示的な実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって、最良に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】例示的な実施形態のハイブリッド超伝導体−光量子中継器機構を用いた量子コンピューティング・システムの一例の図である。
【図2】1つの例示的な実施形態に従った、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器機構の一例のブロック図である。
【図3】1つの例示的な実施形態に従った、追加の詳細を示すハイブリッド超伝導体−光量子中継器の別のブロック図である。
【図4】1つの例示的な実施形態に従った、時間反転動作モードで動作する場合のハイブリッド超伝導体−光量子中継器の一例の動作の概要を示すフローチャートである。
【図5】1つの例示的な実施形態に従った、直接動作モードで動作する場合のハイブリッド超伝導体−光量子中継器の一例の動作の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
例示的な実施形態は、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器を提供するための機構を提供する。例示的な実施形態のハイブリッド超伝導体−光量子中継器は、長距離離れたステーションすなわち超伝導コンピューティング・システムにおいて量子状態のエンタングルメントを生成するように動作する。更に、例示的な実施形態のハイブリッド超伝導体−光量子中継器は、超伝導キュービット(または光子)に赤外または可視光周波数への変換およびその逆を行うように動作することができる。従って、Munro等の国際特許出願公開WO2007/021945A2号に記載されたもの等の量子中継器は一般的に当技術分野において既知であるが、本明細書に記載するような、光キュービットおよび超伝導キュービット(または光子)の相互変換を実行するハイブリッド超伝導体−光量子中継器は現在、既知でない。
【0018】
図1は、例示的な実施形態のハイブリッド超伝導体−光量子中継器機構を用いた分散型量子コンピューティング・システムまたは量子通信システムの例示的な図である。図1に示すように、分散型量子コンピューティング・システムは、複数の量子コンピュータ・サブシステム110および150を含む。量子コンピュータ・サブシステム110および150は超伝導デバイスの回路を含む超伝導構造である。超伝導デバイスのこれらの回路はジョセフソン接合を含み、これは受信した光子キュービットを回路内に移動させ、これを他のジョセフソン接合キュービットとエンタングルさせ、量子アルゴリズムを実行し、これらのキュービットに対する量子測定を実行し、これらの測定の結果を用いてこのサブシステムまたは他の遠隔サブシステムにおける以降の量子動作に影響を生じることができる。量子コンピュータ・サブシステム110および150の1つ以上として使用可能な、かかる量子コンピュータ・サブシステムの一例が、D. P. DiVincenzo、「The Physical Implementation of QuantumComputation」、Fortschritte der Physik 48、771〜784(2000年)に記載されている。これはarxiv/org: quant-ph/0002077において利用可能であり、引用により本願にも含まれるものとする。
【0019】
量子コンピュータ・サブシステム110および150の間に、干渉計サブシステム130によって分離された1対のハイブリッド超伝導体−光量子中継器120および140が設けられている。量子コンピューティング・サブシステム110および150の間には、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器120および140ならびに干渉計サブシステム130を介して双方向通信チャネルが生成されている。各ハイブリッド超伝導体−光量子中継器120は、直接に、または干渉計サブシステム130および別のハイブリッド超伝導体−光量子中継器140を介して間接的に、上流および下流の量子コンピュータ・サブシステムの双方に結合されている。ハイブリッド超伝導体−光量子中継器120および140の詳細については後に述べる。干渉計サブシステム130は光信号で動作し、2つの異なるハイブリッド超伝導体−光量子中継器によって発生した2つの光子のエンタングルメントの生成を可能とする。干渉計サブシステム130は更に、光子測定を行う。これは量子コンピュータ・サブシステム110および150に送信され、それらによって用いられて、正しいエンタングルメントが生成されたか否か、またはキュービット符号化光子の再送信が必要であるか否かが判定される。
【0020】
ハイブリッド超伝導体−光量子中継器120および140は各々、2つのサブシステム、すなわち光サブシステム122、142および超伝導サブシステム124、144を有する。1つのフロー方向において、光サブシステム122、142は、キュービット符号化光子を有する光入力信号を受信し、これらの光入力信号光子(光学光子)をマイクロ波波長信号光子(マイクロ波光子)にダウンコンバートして、これらが超伝導サブシステム122、144に入力される。超伝導サブシステム124、144では、光子上で符号化されたキュービットをキュービット記憶デバイスに記憶する。超伝導サブシステム124、144は、キュービット記憶デバイスと送信媒体との容量性結合によって、記憶したキュービットでマイクロ波光子を符号化し、このマイクロ波光子を量子コンピュータ・サブシステムに伝播させるために出力する。
【0021】
第2のフロー方向では、超伝導サブシステム124、144は、キュービットで符号化したマイクロ波光子を受信する。キュービットをキュービット記憶デバイスに記憶し、これを用いて出力マイクロ波光子を発生し、これがマイクロ波信号を介して光サブシステム122、142に送信される。次いで、光サブシステム122、142は、マイクロ波光子を光学光子にアップコンバートし、この光学光子を、例えば光学干渉計130のような、量子通信チャネル上の次のステーションに出力する。光学干渉計130は、上流および下流の双方のステーションから、すなわちハイブリッド超伝導体−光量子中継器120および140から光子を受信しており、これらの光子が結合されてエンタングルした光子対を発生することは認められよう。ビーム・スプリッタの対向側で同一周波数の2つの光子が同時に到着すれば、それらをエンタングルさせるのに充分である。これはHong-Ou-Mandel(ホン−オウ−マンデル)干渉測定と呼ばれ、C. K. Hong、Z. Y. Ou、およびL.Mandelの「Measurement of Sub-Picosecond TimeIntervals Between Two Photons by Interference」、Phys. Rev.Lett. 59、2044〜2046(1987年)に記載されている。量子コンピュータ110によって発生させた各エンタングル光子対の半分を第1のフロー方向で(ハイブリッド超伝導体−光量子中継器140へ向けて)送信し、エンタングル光子対の他の半分を第2のフロー方向(ハイブリッド超伝導体−光量子中継器120へ向けて)で送信する。
【0022】
光学干渉計130は、国際特許出願公開WO2007/021945A2号の図5Bの測定ステーション570のものと同様に動作して、適切な光学光子のエンタングルメントが生じたか否かを判定することができる。適切な光学光子のエンタングルメントが生じていない場合は、この情報がハイブリッド超伝導体に戻され、次いでこれが光学光子上で符号化されたキュービットを再送信することができる。他の場合は、エンタングルメントの成功を伝達することができ、再送信は行われない。
【0023】
従って、再び図1を見ると、動作のいわゆる「時間反転」モードの間に、量子通信チャネルに沿った各量子コンピュータ・サブシステム110および150は、量子ゲート又は制御NOT(CNOT:controlled NOT)(これは量子コンピューティングにおける従来のブール論理ゲートである)の使用等によって、1対のエンタングルしたキュービットを発生する。これらの量子コンピューティング・サブシステム110および150は、これらのキュービットをマイクロ波光子として超伝導共振器内に配置し、この共振器がキュービット状態をキュービット記憶デバイスに記憶する。この時点で、単純なエラー・チェックを行って共振器内の光子の存在を確認する際の短い遅延が生じる場合がある。あるいは、これらの光子は次のステップに直接供給することも可能である。量子コンピュータ・サブシステム110、150は各々、上流および下流の双方のハイブリッド超伝導体−光量子中継器にリンクされている。例えば、量子コンピュータ・サブシステム110は上流のハイブリッド超伝導体−光量子中継器160および下流のハイブリッド超伝導体−光量子中継器120に接続されており、量子コンピュータ・サブシステム150は上流のハイブリッド超伝導体−光量子中継器140および下流のハイブリッド超伝導体−光量子中継器170に接続されている。この量子中継器および量子コンピュータ・サブシステムのチェーンにおいて、単一の上流または下流のハイブリッド超伝導体−光量子中継器にのみ接続されたソース量子コンピュータ・サブシステムおよび終端量子コンピュータ・サブシステムがあり得ることに留意すべきである。
【0024】
量子コンピュータ・サブシステム110、150は、エンタングル対を発生させ、これらの半分をマイクロ波光子として双方のハイブリッド超伝導体−光量子中継器に同時に送信する。例えば、量子コンピューティング・システム110はエンタングル対の各半分をハイブリッド超伝導体−光量子中継器160および120に送信する。マイクロ波光子は、例えばハイブリッド超伝導体−光量子中継器120の超伝導体サブシステム124のような、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器の超伝導体サブシステムにおいて受信される。光子のキュービット状態は、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器の超伝導共振器のキュービット記憶デバイスに記憶され、その後でハイブリッド超伝導体−光量子中継器の光サブシステムに送信される。
【0025】
次の動作においては、エンタングル対の各半分の1つのみに焦点を当てると(この動作は量子通信チャネルを含むコンポーネントのチェーンに沿って同時に行われる)、超伝導体サブシステムの超伝導共振器は、同軸ケーブル等のマイクロ波送信媒体に沿って、例えばハイブリッド超伝導体−光量子中継器120の光サブシステム122のような光サブシステムにマイクロ波信号を出力する。光サブシステム122は、マイクロ波信号を、「局部発振器」赤外信号(これは1つの例示的な実施形態において量子通信チャネル上の全てのポイントで利用可能な比較的強い基準レーザ・ビームである)と混合し、これによってマイクロ波光子を赤外波長光子にアップコンバートする。次いで、赤外波長光子を、干渉計サブシステム130等の干渉計サブシステムに送信する。
【0026】
干渉計サブシステム130では、2つの赤外光子(1つは上流のハイブリッド超伝導体−光量子中継器からであり、1つは下流のハイブリッド超伝導体−光量子中継器からである)が、干渉計サブシステム130のミラーにおいて同時に出会う。2つの光子の測定によって、これすなわちミラーで同時に出会うことが行われたと確認された場合は、上流および下流の量子コンピューティング・デバイスのキュービット記憶デバイスに残ったキュービット間でのエンタングルメントの発生は成功している。失敗が検出された場合には動作全体を繰り返す。これらの基本動作を更に繰り返すと、量子コンピュータ・メモリにエンタングル・キュービットが供給され、これは、エンタングル量子ビットがチェーン内の第1および最後の量子コンピューティング・デバイスまたはサブシステム間に存在するまで、エンタングルメント純化およびエンタングルメント・スワッピングを用いて更に処理される。このリソースによって、量子暗号、量子秘密共有、およびセキュアな遠隔量子計算等の適用が可能となる。
【0027】
第2の動作モード、いわゆる「直接」動作モードにおいては、上述した一連の動作を逆の順序で実行する。この場合、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器に対する入力は、符号化光子を有する光信号を受信し、入射光信号の波長をマイクロ波波長にダウンコンバートする。すなわち、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器の光サブシステム122は、赤外光子を有する赤外信号等の光信号を受信し、これを分離させて(demix)、光信号を例えば赤外波長のような可視光波長からマイクロ波波長信号およびマイクロ波光子にダウンコンバートする。このマイクロ波光子を、同軸ケーブル等のマイクロ波送信媒体を介して、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器の超伝導体サブシステム124に送信し、次いで超伝導体サブシステム124のキュービット記憶デバイスにマイクロ波光子のキュービット状態を記憶する。次いで、例えば量子コンピュータ・サブシステム110等、量子通信チャネルに沿った次のステーションに、マイクロ波信号およびマイクロ波光子を出力する。
【0028】
1つの例示的な実施形態において、光信号は、光子またはキュービットを含む約200テラヘルツの電気通信周波数を有し、第2のものは約6ギガヘルツのマイクロ波帯域の波長を有する。光信号は、例示的な実施形態のハイブリッド超伝導体−光量子中継器の光サブシステム122に入力され、これは、元の200テラヘルツ信号の光子/キュービットの状態/属性をマイクロ波帯域波長信号の光子にマッピングする混合領域を有する。光子/キュービットの状態/属性がマッピングされたマイクロ波帯域波長信号は、超伝導体サブシステム124に送信され、これは入力されたマイクロ波帯域波長信号の周波数の電気的振動に対応して、光子/キュービットの状態/属性をキュービット記憶デバイスに記憶するようになっている。すなわち、超伝導体サブシステムが、マイクロ波波長信号光子にマッピングされたキュービットのための量子状態情報を維持する。例えば、キュービット記憶デバイスは、高品質ファクタ送信ライン共振器における電気エネルギとして、マイクロ波帯域波長信号のマイクロ波光子を保持する。
【0029】
従って、例示的な実施形態のハイブリッド超伝導体−光量子中継器は、単一量子光パルスにおいて、入射した放射量子を光周波数範囲すなわち赤外周波数からマイクロ波周波数範囲へ、またはその逆に変換するように動作する。更に、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器は、赤外周波数範囲からマイクロ波周波数範囲へダウンシフトされた光サブシステムから取得した量子情報を記憶する超伝導サブシステム内に光システムが供給を行うという点で超伝導である。逆の動作では、ハイブリッド超伝導体は、超伝導サブシステムから取得した量子情報をマイクロ波周波数から赤外周波数範囲へアップシフトする。ハイブリッド超伝導体−光量子中継器は、ソース量子コンピュータ・サブシステムから宛先量子コンピュータ・サブシステムまでの量子通信チャネルで、次のステーションへの出力に沿って量子情報を途切れさせないように動作することができる。
【0030】
図2は、1つの例示的な実施形態に従ったハイブリッド超伝導体−光量子中継器の一例のブロック図である。例示的な実施形態のハイブリッド超伝導体−光量子中継器200では、2つのサブシステム210および250が設けられている。第1に、光サブシステム200が設けられており、これは光波長の入力信号に対して動作して、これらの光波長入力信号をマイクロ波波長信号にダウンコンバートすると共に、入力マイクロ波波長信号に対して動作して、これらの信号を光波長出力信号にアップコンバートする。1つの例示的な実施形態では、光サブシステム210は赤外周波数で動作する。
【0031】
光サブシステム210は一体型ナノワイヤ導波路212を含み、これは、外部世界すなわち上流の量子コンピュータ・サブシステムから、別のハイブリッド超伝導体−光量子中継器、干渉計サブシステム等を介して、光ファイバ等の送信媒体214を介して送信された200テラヘルツ波長範囲における赤外信号等の電気通信波長赤外光を結合するためのものである。この導波路212上にアンテナ・アーム構造216が配置され、これは赤外周波数電界をナノスケール・トンネル接合218に供給する。このトンネル接合218は非線形の電流−電圧(I−V)特性を有する。現在の実施では、この非線形により、以下の法則に従って、1つの例示的な実施形態における約1.6μm波長(約200THz周波数)の光パワーをDC電流源に変換することができる。
【数1】


ここでIは電流であり、ηは効率係数であり、ω=0は電流源としての出力がDCであることを示し、ωoptは入射光信号についての周波数であり、Eはトンネル接合における電界である。有効電流源は100オームのソース・インピーダンスによって達成されることが観察されている。効率係数ηは、量子限界すなわち原理上かかる光学システムにおいて発生可能な最大電流量の約6%であることが観察されている。すなわち、ηの値は、単位時間当たりの光エネルギの1つの光子が単位時間当たり0.06電子の電流を生成するようになっている。モデル化により、この効率が量子限界の約50%まで大きくなり得ることが示される。
【0032】
図2に戻ると、第2に、光サブシステム210に超伝導サブシステム250が結合されている。1つの例示的な実施形態では、超伝導サブシステム250は、例えば10GHz未満のような約2〜3GHzの動作周波数の信号に対して動作する。例示的な実施形態により、従来技術から光動作モードを変更して、1つの光フィールドの代わりに2つを導入する。これらのフィールドの1つは、上流の赤外線システム(例えば干渉計)からの信号光子である。第2のフィールドは、共通の位置から同一の光ファイバ上で送信される「局部発振器」の強力レーザ・ビームである。信号光子および局部発振器の周波数は異なるので、これらの光フィールドの非線形相互作用により生成された電流源は有限周波数である。
【数2】

【0033】
1つの例示的な実施形態において、Δωは約6GHzであり、超伝導サブシステム250の特性周波数と一致する。ωoptにおける光フィールドは強力な基準発振器(局部発振器)として作用し、ωopt+Δωにおける光フィールドは弱いかまたは光子がほとんどないフィールドであり、通信チャネル214上で量子情報または暗号情報を伝達する。すなわち、非線形トンネル接合218においてダウンコンバージョンが行われた場合、赤外光子で伝達された量子情報は、マイクロ波光子により伝達される量子情報に変換される。このマイクロ波光子が、ボンディング・ワイヤ上でそこから超伝導体サブシステム250まで伝達する。
【0034】
光サブシステム210は、超伝導ジョセフソン・キュービット記憶デバイスが取り付けられた超伝導送信ライン共振器252を含む近接電気接続により連結されている。超伝導送信ライン共振器252の周波数はΔωである。このため、連結されたサブシステム210および250の対の動作は、基準発振器ωoptのヘテロダイン動作により、周波数ωopt+Δωの光学光子を周波数Δωのマイクロ波共振器光子にマッピングする。マッピングの効率が量子の効率限界よりもはるかに低いことは許容できる。この例では、1の量子効率は、全ての信号赤外光子が正確に1つのマイクロ波光子を発生させることに相当する。光子マッピングが正確に行われない場合、別の量子コンピュータ・サブシステムによって直ちに光子の不在が検出される。光子の不在が他の量子コンピュータ・サブシステムによって示された場合、光子の送信を再試行することができる。
【0035】
一例として、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器の「直接」動作モードにおいて、すなわちハイブリッド超伝導体−光量子中継器に対する入力が光信号であり、これが上述の数式(2)で決定されるようにマイクロ波波長にダウンコンバートされる動作モードにおいて、従来の物理学の法則が機能する場合について最初に論じる。安定した信号E(ωopt)が存在すると仮定する。次いで、ある時間間隔ΔTの間、側波帯周波数ωopt+Δωにパワーが存在する。この時間間隔中、光サブシステム210は数式(2)におけるように電流源Iのように作用して、周波数Δωで超伝導サブシステム250を駆動する。Δωは超伝導送信ライン共振器252の共振周波数であると想定されるので、この超伝導送信ライン共振器252は、この励起によって「リング・アップ(rung up)」される。パルスが終了した後、共振器252は周波数Δωにおいてこのモードで一定のエネルギを有する状態のままである。光エネルギの有無によってビット状態0または1を示す従来の信号送信では、このビット状態は共振器のエネルギ状態に記憶され、更にエラー訂正プロトコルを行って従来の信号のための中継器機能が実行される。
【0036】
ここで量子力学用語において述べると、電界E(ωopt+Δω)は量子演算子として扱わなければならない。この演算子の統計特性は、この周波数での赤外光の量子状態を示す。すなわち、これはある方法でスクイーズされている場合があり、またはこれは離散エネルギ・パケット(「光子」)から成る場合がある。従って電流源の動作は、量子力学的であり、超伝導サブシステム250の超伝導送信ライン共振器252を、赤外光の量子統計データを反映する方法で駆動する。従って、理想的な動作では、赤外ビームにおける単一の光子は超伝導送信ライン共振器252において単一の光子として堆積される。
【0037】
第2の動作モード、すなわち「時間反転」動作モードにおいては、マイクロ波光子を出射赤外光子にマッピングする。量子コンピュータ・サブシステムの全体クロックにより決定される時刻で、マイクロ波光子はその量子コンピュータによってハイブリッド中継器の超伝導共振器上に配置され、これによって一時的に記憶される。この共振器の「リング・ダウン(ring down)」によって、この放射量子のマイクロ波周波数電界は非線形トンネル接合デバイス上で衝突する。非線形トンネル接合デバイスは、数式(2)と類似した以下の数式に従って、マイクロ波フィールドを局部発振器フィールドと混合する。
【数3】

【0038】
従って、アップコンバートされた赤外周波数ωopt+Δωで電流が生成される。この電流は量子力学演算子であり、元のマイクロ波放射量子の全ての量子統計データを反映している。電流は放射フィールドのソースである。このように生成された放射は、ハイブリッド中継器からチェーンの次のコンポーネント(すなわち干渉計システム)まで伝達する。2つのこれらの赤外線光子は、干渉計で同時に出会って、上流および下流の量子コンピュータ間でエンタングルメントの生成が起こる。
【0039】
図3は、1つの例示的な実施形態による追加の詳細を示すハイブリッド超伝導体−光量子中継器の別のブロック図である。前述のように、更に図3に再び示すように、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器300は、光サブシステム310および超伝導体サブシステム320を含む。光サブシステム310は光通信チャネル312を有し、これは例えば光ファイバを含むことができ、混合領域314とも称されるアクティブ領域に結合されている。前述のように、混合領域314は、図2におけるナノワイヤ導波路212、アンテナ・アーム構造216、およびナノスケール・トンネル接合218を含むことができる。
【0040】
混合領域314は、赤外波長信号等の光波長信号をマイクロ波波長信号にダウンコンバートするか、またはマイクロ波波長信号を光波長信号にアップコンバートするように動作する。例えば混合領域314は、光通信チャネル312を介して、2つの異なる波長を有する2つの重畳信号を有する光入力信号を受信することができる。第1の波長信号は、例えば200テラヘルツに相当する赤外波長のような可視スペクトル範囲の波長を有する光信号とすることができる。第2の波長信号は、第1のものから6ギガヘルツだけシフトした別の赤外信号とすることができる。混合領域314は、第1の波長信号の光子を異なる波長信号の光子にマッピングし、第2の波長信号の光子を超伝導体サブシステム320に出力する。あるいは、混合領域314は、超伝導体サブシステム320からの入力マイクロ波光子を、例えばレーザ等の局部発振器IRソース316によって供給可能であるもの等の赤外信号の光子上にマッピングし、この赤外信号を、光通信チャネル312を介して出力することができる。混合領域は低温に保持されるので、このシステムに入るのは少数の熱発生マイクロ波光子のみである。しかしながら、この領域の温度は、「混合チャンバ」温度、例えば約30°ミリケルビン(mK)よりも高くすることができ、約4°ケルビン(K)の高さとすることも可能である。
【0041】
マイクロ波信号は、光サブシステム310と超伝導体サブシステム320との間で、マイクロ波送信媒体330を介して送信される。1つの例示的な実施形態では、この媒体330は同軸ケーブル等の半剛性超小型バージョンA(SMA)ケーブルである。マイクロ波送信媒体330は、混合領域314を、キュービット記憶デバイス324を有する超伝導共振器322に結合する。記憶デバイス324は、超伝導体サブシステム320内に延出するマイクロ波送信媒体332に容量性結合されている。マイクロ波送信媒体332は出力マイクロ波送信媒体334に結合し、媒体334はマイクロ波信号を量子コンピュータ・サブシステム等に出力することができる。超伝導体サブシステム320は、冷蔵プレートによってヘリウムの沸点未満すなわち4°k未満の温度に保持される。または、希釈冷凍庫の混合チャンバにおいて達成される30°mKの温度が望ましい場合もある。これらの低動作温度は、物体が室温で放出するランダム放射の影響を低減させる。1つの例示的な実施形態では、超伝導体サブシステム320は約4°Kまたは30°mKに維持される。
【0042】
図4は、1つの例示的な実施形態に従った、時間反転動作モードで動作する場合のハイブリッド超伝導体−光量子中継器の例示的な動作の概要を示すフローチャートである。図5は、1つの例示的な実施形態に従った、直接動作モードで動作する場合のハイブリッド超伝導体−光量子中継器の例示的な動作の概要を示すフローチャートである。図4および図5に示す動作は、量子通信チャネルの他の要素に属しておらず、上述の図1から図3のハイブリッド超伝導体−光量子中継器によって実行することができる。
【0043】
図4に示すように、動作は最初に量子コンピュータ・サブシステムがエンタングル・キュービットを発生し(ステップ410)、このキュービットをマイクロ波光子として超伝導共振器内に配置して、この共振器がキュービット状態をキュービット記憶デバイスに記憶する(ステップ415)。単純なエラー・チェックを実行して共振器内の光子の存在を確認する(ステップ420)。あるいは、これらの光子は次のステップに直接供給することも可能である。量子コンピュータ・サブシステムは、これらのエンタングル・キュービットを、マイクロ波光子として、これに結合されたハイブリッド超伝導体−光量子中継器の双方に同時に送信する(ステップ425)。マイクロ波光子をハイブリッド超伝導体−光量子中継器の超伝導体サブシステムにおいて受信する(ステップ430)。ハイブリッド超伝導体−光量子中継器の光サブシステムに沿って送信する前に、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器の超伝導共振器のキュービット記憶デバイスに、光子のキュービット状態を記憶する(ステップ435)。
【0044】
超伝導体サブシステムの超伝導共振器は、マイクロ波送信媒体に沿ってハイブリッド超伝導体−光量子中継器の光サブシステムにマイクロ波信号を出力する(ステップ440)。光サブシステムは、マイクロ波信号を「局部発振器」赤外信号と混合することにより、マイクロ波光子を赤外波長光子にアップコンバートする(ステップ445)。次いで、赤外波長光子を干渉計サブシステムに送信する(ステップ450)。
【0045】
干渉計サブシステムでは、2つの赤外光子(1つは上流のハイブリッド超伝導体−光量子中継器からであり、1つは下流のハイブリッド超伝導体−光量子中継器からである)が、干渉計サブシステムのミラーにおいて同時に出会う(ステップ455)。2つの光子の測定によって、これが行われたことが確認されると(ステップ460)、クビット間のエンタングルの発生は成功しており、干渉計サブシステムは、キュービットのエンタングルメントが成功していてキュービット再送信の必要がないことを示すメッセージを量子コンピューティング・サブシステムに戻す(ステップ465)。失敗が検出されると、干渉計サブシステムは、失敗を示すと共にキュービットの再送信のために動作の繰り返しを開始するメッセージを戻すことができる(ステップ470)。
【0046】
ここで図5を参照すると、「直接」動作モードでは、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器の光サブシステムは、光ファイバ等の光通信チャネルを介して、赤外光子を有する赤外信号等の光信号を受信する(ステップ510)。光サブシステムは、光信号を分離させて、光信号を可視光波長からマイクロ波波長信号にダウンコンバートし、これによって赤外光子をマイクロ波光子にマッピングする(ステップ520)。このマイクロ波光子を、マイクロ波送信媒体を介してハイブリッド超伝導体−光量子中継器の超伝導サブシステムに送信する(ステップ530)。超伝導体サブシステムは、その超伝導共振器のキュービット記憶デバイスにマイクロ波光子のキュービット状態を記憶する(ステップ540)。次いで、例えば量子コンピュータ・サブシステム等、量子通信チャネルに沿った次のステーションに、マイクロ波信号およびマイクロ波光子を出力する(ステップ550)。
【0047】
本発明の記載は、図示および説明の目的で提示したものであり、網羅的であることも、開示した形態に本発明を限定することも意図していない。当業者には多くの変更および変形が明らかであろう。実施形態は、本発明の原理、実際的な適用を最良に説明するため、および、想定される実際的な用途に適した様々な変更と共に様々な実施形態について当業者が本発明を理解することを可能とするために、選択し記載したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光チャネルを介して光信号を受信するように構成された光サブシステムと、
前記光サブシステムに結合された超伝導体サブシステムであって、前記光サブシステムおよび前記超伝導体サブシステムがマイクロ波送信媒体を介して相互に結合されている、サブシステムと、
を含み、前記光サブシステムが、前記光チャネルを介して光信号を受信し、前記光信号の光子をマイクロ波出力信号のマイクロ波光子にダウンコンバートするように構成されており、前記マイクロ波出力信号が前記マイクロ波送信媒体を介して前記超伝導体サブシステムに出力され、
前記超伝導体サブシステムが前記マイクロ波光子の量子状態を記憶し、前記マイクロ波光子を前記超伝導体サブシステムから出力チャネルに沿って送信する、ハイブリッド超伝導体−光量子中継器。
【請求項2】
前記光信号が、赤外波長を有する第1の信号と、マイクロ波波長に対応する量だけ前記第1の信号からシフトした赤外波長を有する第2の信号と、を含む、請求項1に記載のハイブリッド超伝導体−光量子中継器。
【請求項3】
前記光サブシステムが前記光チャネルに結合された電子デバイスを含み、前記電子デバイスが非線形の電流−電圧特性を有し、前記電子デバイスが光パワーをマイクロ波周波数で動作する電流源に変換する、請求項1または2に記載のハイブリッド超伝導体−光量子中継器。
【請求項4】
前記電子デバイスが、
非ワイヤ導波路と、
前記導波路上に配置されたアンテナ・アーム構造と、
ナノスケール・トンネル接合と、を含み、前記アンテナが前記光信号の赤外周波数電界を前記ナノスケール・トンネル接合に供給し、前記ナノスケール・トンネル接合が前記光パワーをマイクロ波周波数で動作する前記電流源に変換する、請求項3に記載のハイブリッド超伝導体−光量子中継器。
【請求項5】
前記超伝導体サブシステムが、ジョセフソン・キュービット記憶デバイスを有する超伝導送信ライン共振器を含み、前記光サブシステムが、電気接続によって、前記超伝導体サブシステムの前記超伝導送信ライン共振器に連結されている、前出の請求項のいずれか1項に記載のハイブリッド超伝導体−光量子中継器。
【請求項6】
前記超伝導体サブシステムが、マイクロ波入力信号を受信し、前記マイクロ波入力信号のマイクロ波光子の量子状態を記憶し、前記マイクロ波光子を出力マイクロ波信号において出力チャネルに沿って前記光サブシステムに送信するように構成され、
前記光サブシステムが、前記出力マイクロ波信号受信し、前記出力マイクロ波信号の前記マイクロ波光子を赤外光子にアップコンバートし、前記赤外光子を出力赤外信号において出力するように構成され、前記出力赤外信号が光チャネルを介して出力される、前出の請求項のいずれか1項に記載のハイブリッド超伝導体−光量子中継器。
【請求項7】
ハイブリッド超伝導体−光量子中継器において、量子コンピュータ・サブシステム間でキュービットを送信するための方法であって、
第1の量子コンピュータ・サブシステムから、前記ハイブリッド超伝導体−光量子中継器の光サブシステムにおいて、光入力信号を受信することと、
前記光入力信号をマイクロ波信号にダウンコンバートし、これによって前記光入力信号の光波長光子を前記マイクロ波信号のマイクロ波波長光子にマッピングすることと、
前記マイクロ波信号を前記ハイブリッド超伝導体−光量子中継器の超伝導体サブシステムに入力することと、
前記超伝導体サブシステムに前記マイクロ波波長光子の量子状態を記憶することと、
前記マイクロ波波長光子を前記超伝導体サブシステムから出力チャネルに沿って送信することと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記光信号が、赤外波長を有する第1の信号と、マイクロ波波長に対応する量だけ前記第1の信号からシフトした赤外波長を有する第2の信号と、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記光サブシステムが前記光チャネルに結合された電子デバイスを含み、前記電子デバイスが非線形の電流−電圧特性を有し、前記光入力信号をダウンコンバートすることが、前記電子デバイスが光パワーをマイクロ波周波数で動作する電流源に変換することを含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記電子デバイスが、
非ワイヤ導波路と、
前記導波路上に配置されたアンテナ・アーム構造と、
ナノスケール・トンネル接合と、を含み、前記光入力信号をダウンコンバートすることが、前記アンテナが前記光信号の赤外周波数電界を前記ナノスケール・トンネル接合に供給し、前記ナノスケール・トンネル接合が前記光パワーをマイクロ波周波数で動作する前記電流源に変換することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記超伝導体サブシステムが、ジョセフソン・キュービット記憶デバイスを有する超伝導送信ライン共振器を含み、前記光サブシステムが、電気接続によって、前記超伝導体サブシステムの前記超伝導送信ライン共振器に連結されている、請求項7から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記超伝導体サブシステムが、
マイクロ波入力信号を受信し、
前記マイクロ波入力信号のマイクロ波光子の量子状態を記憶し、
前記マイクロ波光子を出力マイクロ波信号において出力チャネルに沿って前記光サブシステムに送信し、前記光サブシステムが、
前記出力マイクロ波信号受信し、
前記出力マイクロ波信号の前記マイクロ波光子を赤外光子にアップコンバートし、
前記赤外光子を出力赤外信号において出力し、前記出力赤外信号が光チャネルを介して出力される、請求項7から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
量子コンピュータ・サブシステムと、
前記量子コンピュータ・サブシステムに結合された、請求項1から6のいずれか1項に記載のハイブリッド超伝導体−光量子中継器と、
前記ハイブリッド超伝導体−光量子中継器に結合された干渉計サブシステムと、
を含む、システム。
【請求項14】
前記超伝導体サブシステムが前記量子コンピュータ・サブシステムに結合され、前記光サブシステムが前記干渉計サブシステムに結合され、
前記光信号が前記干渉計サブシステムから受信され、
前記マイクロ波光子が前記出力チャネルに沿って前記超伝導体サブシステムから前記量子コンピュータ・サブシステムに送信される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記量子コンピュータ・サブシステムが第2のハイブリッド超伝導体−光量子中継器の第2の超伝導サブシステムに結合され、前記第2のハイブリッド超伝導体−光量子中継器の第2の光サブシステムが第2の干渉計に結合されている、請求項14に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−500530(P2013−500530A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522192(P2012−522192)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【特許番号】特許第5079173号(P5079173)
【特許公報発行日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062689
【国際公開番号】WO2011/032825
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】