説明

ハイブリッド車の空調制御装置

【課題】本発明は、バッテリの電池残量が少なくても、電動エアコンを作動させることのできるハイブリッド車の空調制御装置を提供する。
【解決手段】高電圧バッテリが充電中でなければ(S22)、高電圧バッテリのSOCが第1の所定残量以下か、否かを判別し(S24)、第1の所定残量以下であれば、エンジンを始動させ発電機を作動させる(S28)。そして、ドライバによって設定された車室内温度となるように電動エアコンを作動させ(S26)、空調終了タイマが空調終了時間以上となると(S30)、電動エアコンの作動を停止させ、空調制御を終了する(S32)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車の空調制御装置に係り、詳しくは、プラグインハイブリッド車におけるプレ空調制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリより電力供給を受けモータを駆動し動力を得る電気自動車では、運転者が予め電動エアコンの作動開始時間を任意に設定し、設定された作動開始時間となると車載されたバッテリより電動エアコンに電力を供給して電動エアコンを作動させ、運転者が乗車前に予め車室の空調、所謂プレ空調を行う空調制御装置が知られている。
しかしながら、当該空調制御装置では、バッテリより電力を電動エアコンに供給しており、プレ空調を行うとバッテリの電力を消費することとなり、ひいては電気自動車の走行可能距離を短くしてしまう問題がある。
【0003】
そこで、電気自動車の走行可能距離の短縮を抑制するために、バッテリの電池残量(state of charge:以下、SOCという)に応じて、プレ空調時における電動エアコンの作動を制御するようにしている(特許文献1)。詳しくは、特許文献1の空調制御装置では、バッテリのSOCが所定値より低い場合には、電動エアコンの作動を規制して、プレ空調よりも走行可能距離の確保を優先する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−83567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような上記特許文献1の空調制御装置を、外部電源或いは車両に搭載されるエンジンにより駆動される発電機により車両に搭載するバッテリに充電し、当該バッテリの電力で駆動されるモータ及びエンジンの出力で走行する動力を得ることができるプラグインハイブリッド車に適用しても、モータによる走行可能距離を極力確保するために、外部電源からの充電時には電気自動車と同様に所定のSOCより低くなると電動エアコンの作動を停止させることとなる。
【0006】
しかしながら、このようなプラグインハイブリッド車であっても、走行可能距離を確保しつつもプレ空調を極力実施して快適性を高めたいといった要求がある。
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、バッテリの電池残量が少なくても、電動エアコンを作動させることのできるハイブリッド車の空調制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1のハイブリッド車の空調制御装置では、車両に搭載された内燃機関により駆動される発電機から供給される電力によって充電されるバッテリと、前記バッテリの電池残量を検出する残量検出手段と、前記バッテリから供給される電力により作動されて、車室内の温度を調整する電動エアコンと、前記車両の駐車中に、前記電動エアコンの作動が開始される空調開始時刻を設定可能な空調開始時刻設定手段と、前記空調開始時刻に前記電動エアコンが作動するように制御する制御手段と、を備えるハイブリッド車の空調制御装置であって、前記電動エアコンが前記空調開始時刻後に作動される際に、前記バッテリの電池残量が前記車両の走行に必要な第1の所定残量以下である場合は、前記内燃機関で前記発電機を駆動して前記バッテリを充電することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2のハイブリッド車の空調制御装置では、請求項1において、前記バッテリは、外部電源から供給される電力により充電可能であって、前記バッテリが前記外部電源によって充電されている際は、前記バッテリの電池残量が前記第1の所定残量より多い第2の所定残量以上に維持されるように前記電動エアコンの作動を制御することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3のハイブリッド車の空調制御装置では、請求項2において、前記バッテリの電池残量が前記第2の所定残量となった際に、前記電動エアコンを停止させることを特徴とする。
また、請求項4のハイブリッド車の空調制御装置では、請求項2或いは3において、前記第2の所定残量は、前記車両の運転者によって任意に変更可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、車両が駐車中であると判定すると、設定された空調開始時刻に電動エアコンが作動するように制御するとともに、この制御をする際にバッテリの電池残量が車両の走行に必要な電池残量である第1の所定残量以下である場合には内燃機関で発電機を駆動してバッテリを充電するようにしている。
従って、電動エアコンを作動させても、バッテリの電池残量が第1の所定残量を下回ることがないので、車両の走行に支障をきたすことなく電動エアコンを作動させ車室内の空調を行うことができる。
【0011】
また、請求項2の発明によれば、外部電源によりバッテリの充電を行っている場合には、バッテリの電池残量が、第1の所定残量より多い第2の所定残量以上に維持されるように電動エアコンの作動を制御している。
従って、外部電源によるバッテリの充電中は、運転者が多くのバッテリの電池残量を必要としており、車室内の空調を行っても、バッテリの電池残量を多く維持することができ、運転者の要求を満たすことができる。
【0012】
また、請求項3の発明によれば、外部電源によりバッテリの充電を行っている場合に、バッテリの電池残量が第2の所定残量となった際に電動エアコンの作動を停止するようにしている。
従って、車室内の空調を行っても、確実にバッテリの電池残量を多くすることができ、運転者の要求を満たすことができる。
【0013】
また、請求項4の発明によれば、第2の所定残量を運転者によって任意に変更可能としているので、バッテリの電池残量を運転者が必要とする電池残量とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド車の空調制御装置を備える車両の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプレ空調制御の制御ルーチンを示すフローチャートの一部である。
【図3】本発明の実施形態に係るプレ空調制御の制御ルーチンを示すフローチャートの残部である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るハイブリッド車の空調制御装置を備える車両の概略構成図である。
図1に示すように、本発明に係る車両1は、当該車両1の走行装置として、エンジン(内燃機関)2と、高電圧バッテリ(バッテリ)3より高電圧回路4を介して高電圧の電力が供給されインバータDC/DC5により作動を制御されるモータ6とを備え、充電リッド7に外部電源30より延びる充電ケーブル31を接続し、充電器8にて高電圧バッテリ3を充電することができるプラグインハイブリット自動車である。
【0016】
また、車両1には、車室内の冷房或いは暖房を行う機能を有する電動エアコン9と、車両1の補助電源としての12Vバッテリ10と、車両の総合的な制御を行うための制御装置である電子コントロールユニット(以下、ECUという)(制御手段)11が備えられている。
エンジン1は、燃料タンク12より燃料配管13を介して燃料が供給される。また、エンジン1は、変速機14を介して、発電し高電圧バッテリ3を充電する発電機15に接続されている。更にエンジン1は、変速機14と駆動軸16とを介してタイヤ17に接続されている。そして、エンジン1は、エンジン1の駆動力で発電機15を駆動して発電し、またタイヤ17を駆動して車両1を走行させる。
【0017】
インバータDC/DC5は、モータ6の作動を制御する機能に加えて、高電圧バッテリ3より供給される高電圧を低電圧(例えば12V)に変換、或いは低電圧を高電圧に変換するコンバータとしての機能も有している。
モータ6は、変速機14と駆動軸16を介して、タイヤ17に接続されている。そして、モータ6は、モータ6の駆動力でタイヤ17を駆動して車両1を走行させる。
【0018】
ECU11は、車両の総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)及びタイマ等を含んで構成される。
ECU11の入力側には、上記エンジン2、高電圧バッテリ3、インバータDC/DC5、充電器8、変速機14、エンジン1の始動或いは停止を行うイグニッションスイッチ18及び車室内の空調の作動を調整する入力装置としてのナビゲーションシステム(空調開始時刻設定手段)19が接続されており、これらの機器からの検出情報が入力される。
【0019】
一方、ECU11の出力側には、上記エンジン2、インバータDC/DC5、電動エアコン9、変速機14及び発電機15が接続されている。
ECU11は、高電圧バッテリ3からの高電圧バッテリ3の電池残量(state of charge:以下、SOCという)情報を検出する残量検出手段と、充電器8からの充電状態情報と、イグニッションスイッチ18からのイグニッションスイッチ状態情報と、ナビゲーションシステム19を使用してドライバによって入力される車室内の空調作動開始時刻及び終了時刻と車室内温度とに基づいて、イグニッションスイッチ18がOFF、所謂車両1の駐車中に電動エアコン9の作動による空調制御及びエンジン2の作動による発電機15での発電制御する機能を有している。
【0020】
次に、プレ空調制御の制御要領について説明する。
図2は、本発明に係るプレ空調制御の制御ルーチンを示すフローチャートの一部であり、図3は、プレ空調制御の制御ルーチンを示すフローチャートの残部である。
図2及び3に示すように、ステップS10では、ドライバがナビゲーションシステム19を使用して空調設定(車室内温度、空調開始・終了時間の設定)を行い、ステップS12に進む。空調開始時間は、イグニッションスイッチオフからプレ空調を開始するまでの時間であって、空調開始時刻に相当する。空調終了時間は、プレ空調の開始から終了するまでの時間であって、空調終了時刻に相当する。
【0021】
ステップS12では、ドライバによりイグニッションスイッチ18が操作され、OFFにされたか、否かを判別する。即ち、車両1が駐車されたか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)でドライバによりイグニッションスイッチ18がOFFにされ、車両1が駐車されていれば、ステップS14に進む。判別結果が偽(No)でドライバによりイグニッションスイッチ18がOFFにされておらず、車両1が駐車されていなければ、再度ステップS12の処理を行う。
【0022】
ステップS14では、空調開始タイマのカウントを開始する。そして、ステップS16に進む。
ステップS16では、空調開始タイマが予めドライバによって設定された空調開始時間以上であるか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で空調開始タイマが予めドライバによって設定された空調開始時間以上であれば、ステップS18に進み、判別結果が偽(No)で空調開始タイマが予めドライバによって設定された空調開始時間以上でなければ、再度ステップS16の処理を行う。
【0023】
ステップS18では、車室内の空調を行う空調制御を開始する。そして、ステップS20に進む。
ステップS20では、空調終了タイマのカウントを開始する。そして、ステップS22に進む。
ステップS22では、充電器8からの充電状態情報に基づいて、高電圧バッテリ3が外部電源30により充電中であるか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で高電圧バッテリ3が充電中であれば、ステップS34に進む。判別結果が偽(No)で高電圧バッテリ3が充電中でなければ、ステップS24に進む。
【0024】
ステップS24では、高電圧バッテリ3からの高電圧バッテリ3の電池残量情報に基づいて、車両1が走行に必要な高電圧バッテリ3の最少のSOCである第1の所定残量以下か、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で高電圧バッテリ3のSOCが第1の所定残量以下であれば、ステップS28に進み、エンジン1を始動させ、発電機15を作動させる。そして、ステップS26に進む。判別結果が偽(No)で高電圧バッテリ3のSOCが第1の所定残量より多ければ、ステップS26に進む。
【0025】
ステップS26では、予めドライバによって設定された車室内温度となるように電動エアコン9を作動させる。そして、ステップS30に進む。
ステップS30では、空調終了タイマが予めドライバによって設定された空調終了時間以上であるか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で空調終了タイマが予めドライバによって設定された空調終了時間以上であれば、ステップS32に進み、判別結果が偽(No)で空調終了タイマが予めドライバによって設定された空調終了時間以上でなければ、ステップS24へ戻る。
【0026】
ステップS32では、電動エアコン9の作動を停止させ、空調制御を終了し、リターンする。
一方、ステップS34では、高電圧バッテリ3からの高電圧バッテリ3の電池残量情報に基づいて、SOCが第1の所定残量より残量の多い第2の所定残量以上か、否かを判別する。判別結果が真(Yes)でSOCが第2の所定残量より大きければ、ステップS36に進む。判別結果が偽(No)でSOCが第2の所定残量以下であれば、ステップS38に進み、電動エアコン9の作動を停止させ、空調を停止し、そして、ステップS34へ戻る。
【0027】
ステップS36では、予めドライバによって設定された車室内温度となるように電動エアコン9を作動させる。また、電動エアコン9の強弱を制御して、高電圧バッテリ3の電池残量が第2の所定残量以上に制御される。そして、ステップS40に進む。
ステップS40では、空調終了タイマが予めドライバによって設定された空調終了時間以上であるか、否かを判別する。判別結果が真(Yes)で空調終了タイマが予めドライバによって設定された空調終了時間以上であれば、ステップS32に進み、判別結果が偽(No)で空調終了タイマが予めドライバによって設定された空調終了時間以上でなければ、ステップS34へ戻る。
【0028】
このように、本発明に係るハイブリッド車の空調制御装置では、充電器8からの充電状態情報に基づいて、高電圧バッテリ3が外部電源30により充電中でないと判定されると、高電圧バッテリ3からの高電圧バッテリ3の電池残量情報に基づいて、車両1が走行に必要な高電圧バッテリ3の最少のSOCである第1の所定残量以下であれば、エンジン1を始動させて発電機15を作動させ、高電圧バッテリ3を充電し、予めドライバによって設定された車室内温度となるように電動エアコン9を作動させるようにしている。
【0029】
従って、電動エアコン9を作動させても、高電圧バッテリ3のSOCが第1の所定残量を下回ることがないので、車両1の走行に支障をきたすことなく電動エアコン9を作動させ車室内の空調を行うことができる。
また、外部電源30により高電圧バッテリ3の充電を行っている場合には、高電圧バッテリ3の電池残量が第1の所定残量以上である第2の所定残量以上に維持されるように電動エアコン9の作動を制御するようにしている。
【0030】
更に、高電圧バッテリ3の電池残量が第2の所定残量となった際に電動エアコン9の作動を停止するようにしている。
従って、外部電源30により高電圧バッテリ3の充電を行っている場合は、ドライバが多くの高電圧バッテリのSOCを必要としているので、車室内の空調を行っても高電圧バッテリ3のSOCを多くすることができ、ドライバの要求を満たすことができる。
【0031】
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の形態は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、第2の所定残量は、第1の所定残量以上と予め設定しているが、これに限定されるものではなく、例えば、第2の所定残量をドライバによって第1の所定残量以上で任意に変更可能としてもよく、この場合には、高電圧バッテリ3のSOCをドライバが必要とするSOCとすることができる。
【0032】
また、上記実施形態では、プレ空調の開始時刻をイグニッションスイッチオフからの経過時間で設定し、またプレ空調の終了時刻を開始からの経過時間で設定しているが、これらを直接に時刻で設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 車両
2 エンジン(内燃機関)
3 高電圧バッテリ(バッテリ)
6 モータ
8 充電器
9 電動エアコン
11 ECU(制御手段)
15 発電機
19 ナビゲーションシステム(空調開始時刻設定手段)
30 外部電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関により駆動される発電機から供給される電力によって充電されるバッテリと、
前記バッテリの電池残量を検出する残量検出手段と、
前記バッテリから供給される電力により作動されて、車室内の温度を調整する電動エアコンと、
前記車両の駐車中に、前記電動エアコンの作動が開始される空調開始時刻を設定可能な空調開始時刻設定手段と、
前記空調開始時刻に前記電動エアコンが作動するように制御する制御手段と、を備えるハイブリッド車の空調制御装置であって、
前記電動エアコンが前記空調開始時刻後に作動される際に、前記バッテリの電池残量が前記車両の走行に必要な第1の所定残量以下である場合は、前記内燃機関で前記発電機を駆動して前記バッテリを充電することを特徴とする、ハイブリッド車の空調制御装置。
【請求項2】
前記バッテリは、外部電源から供給される電力により充電可能であって、
前記バッテリが前記外部電源によって充電されている際は、前記バッテリの電池残量が前記第1の所定残量より多い第2の所定残量以上に維持されるように前記電動エアコンの作動を制御することを特徴とする、請求項1に記載のハイブリッド車の空調制御装置。
【請求項3】
前記バッテリの電池残量が前記第2の所定残量となった際に、前記電動エアコンを停止させることを特徴とする、請求項2に記載のハイブリッド車の空調制御装置。
【請求項4】
前記第2の所定残量は、前記車両の運転者によって任意に変更可能であることを特徴とする、請求項2或いは3に記載のハイブリッド車の空調制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate