説明

ハイブリッド車両用冷却システム

【課題】ハイブリッド車両における冷却システムを提供する。
【解決手段】エンジン冷却回路と、エンジン冷却回路の第1分岐点からエンジン冷却水を分岐させて、低水温ラジエータとインバータにエンジン冷却水を循環させてエンジン冷却回路に帰還させるハイブリッド冷却回路とを具備するハイブリッド車両用冷却システムであって、ハイブリッド冷却回路において、第1分岐点からのエンジン冷却水を、第1流路と第2流路に分流させ、かつ、第1流路と第2流路のそれぞれの流量をインバータ入口水温によって調整できるようにした3方弁を設け、第1流路は低水温ラジエータを通ってインバータに接続し、第2流路は低水温ラジエータをバイパスしてインバータに接続したハイブリッド車両用冷却システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両におけるエンジン及び電子部品を冷却するラジエータを有する冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、ハイブリッド車両には、エンジンと走行用モータとの2つの駆動源が設けられ、また車載された2次電池の直流電流を交流に変換して走行用モータに供給するインバータが搭載されている。こうしたハイブリッド車両では、エンジンの冷却に加え、ハイブリッドシステムの走行用モータやインバータの冷却も必要となる。そのため、ハイブリッド車両には、エンジン冷却用の冷却回路(エンジン冷却回路)とハイブリッドシステム用の冷却回路(ハイブリッド冷却回路)との2つの冷却回路が設けられ、各冷却回路に冷却水を循環させることでエンジンやハイブリッドシステムの冷却を行うようにしている。
【0003】
エンジン冷却回路とハイブリッド冷却回路とでは、冷却水の適温が異なっている。また許容可能な冷却水の最大温度も冷却回路間で異なっている。例えばエンジン冷却回路の冷却水(エンジン冷却水)は、エンジンの運転状況によっては100℃を超えることがあるが、ハイブリッド冷却回路の冷却水(ハイブリッド冷却水)は、それよりも大幅に低い温度(例えば65℃)以下に保つ必要がある。そのため、ハイブリッド車両では、エンジン冷却回路とハイブリッド冷却回路とを各々独立した冷却回路として設けることが一般的となっている。
【0004】
特許文献1においては、走行用モータ及びインバータを通過したハイブリッド冷却水をエンジン冷却回路に導入するEV冷却モードと、エンジン冷却回路とハイブリッド冷却回路との間の冷却水の流通のないノーマルモードとを切り替える水路切替弁を設けるようにして1系統と2系統に流路を切り替えることができるが、ウォータポンプや、リザーブタンクなど部品の重複が発生してコストダウンにならなかった。
【0005】
一方、特許文献2においては、エンジン冷却回路とハイブリッド冷却回路を同一の系で冷却を行う熱交換器が開示されている。しかしながら、この場合にはインバータに流す冷却水は常に低水温ラジエータを通して放熱を行わなければならない。そのため、エンジン暖機が必要なときに、インバータを冷やすために低水温ラジエータで過剰な放熱を行うことになってしまい、ヒートマネジメント上不都合であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−98628号公報
【特許文献2】特開2001−59420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、ハイブリッド車両におけるエンジン及び電子電機部品を冷却するラジエータを有する冷却システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、エンジン用の高水温ラジエータ(9)とエンジン(1)を通ってエンジン冷却水を循環させるエンジン冷却回路(100)と、該エンジン冷却回路(100)の第1分岐点(10)から前記エンジン冷却水を分岐させて、低水温ラジエータ(8)と走行用モータ用インバータ(3)を含む電子部品に、エンジン冷却水を循環させて前記エンジン冷却回路(100)に帰還させるハイブリッド冷却回路(200)を具備するハイブリッド車両用冷却システムにおいて、前記ハイブリッド冷却回路(200)において、前記第1分岐点(10)からの前記エンジン冷却水を、第1流路と第2流路に分流させ、かつ、第1流路(7)と第2流路(5)のそれぞれの流量を前記インバータ(3)入口水温によって調整できるようにした制御弁(6)を設け、前記第1流路(7)は前記低水温ラジエータ(8)を通って前記インバータ(3)に接続し、前記第2流路(7)は前記低水温ラジエータ(8)をバイパスして前記インバータ(3)に接続したハイブリッド車両用冷却システムである。
【0009】
これにより、低水温ラジエータで放熱して走行用モータ用インバータを含む電子部品に流れる流量と、低水温ラジエータに流さないで電子部品に流れる流量とを調整し、インバータ冷却水の流量と冷却水水温を制御することができる。そして、エンジン冷却水のうちで、低水温ラジエータをバイパスする熱流量を活用する(その分低水温ラジエータ通過量減少)ので、低水温ラジエータで過剰な放熱が行われることを防ぎ、走行用モータ用インバータを含む電子部品及びエンジンを最適な温度で使用することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記インバータ(3)入口水温が目標温度(T0)未満のときには、前記制御弁(6)は、前記エンジン冷却水の全量を第2流路(5)に流し、前記インバータ(3)入口水温が目標温度(T0)以上のときには、前記制御弁(6)は、前記インバータ(3)内のインバータ素子を耐熱温度以下に保ち、かつ、前記低水温ラジエータ(8)での過剰な放熱を防ぐように、前記第1流路(7)と第2流路(5)のそれぞれの流量を制御することを特徴とする。これにより、請求項1の発明と同様に、インバータ素子を耐熱温度以下に保ち、低水温ラジエータでの過剰な放熱を防ぐことができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記インバータ(3)入口水温をエンジン出口水温によって補償したことを特徴とする。流量調整のための3方弁の開度の制御において、インバータ水温だけでなくエンジン出口水温も補助的に入力し、より最適な開度に調整することができる。これにより、低水温ラジエータの放熱量の制御性、応答性を向上させることができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の発明において、前記エンジン冷却回路(100)には、サーモスタット弁(12)が設けられており、サーモスタット弁(12)は、エンジン暖機が完了したことを検知して、前記エンジン冷却回路(100)にエンジン冷却水を流すように制御することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1項記載の発明において、前記制御弁(6)が、3方弁であることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1から4のいずれか1項記載の発明において、前記制御弁(6)が、前記第1分岐点(10)の下流において前記エンジン冷却水を分流させた後の第1流路(7)と第2流路(5)に、それぞれ設けられた流量調整弁であることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、エンジン用の高水温ラジエータ(9)とエンジンを通ってエンジン冷却水を循環させるエンジン冷却回路(100)と、該エンジン冷却回路(100)の第1分岐点(10)から前記エンジン冷却水を分岐させて、低水温ラジエータ(8)と走行用モータ用インバータ(3)を含む電子部品に、エンジン冷却水を循環させて前記エンジン冷却回路(100)に帰還させるハイブリッド冷却回路(200)を具備するハイブリッド車両用冷却システムにおいて、前記第1分岐点(10)を前記高水温ラジエータ(9)下流に設けて、前記エンジン冷却水を、前記第1分岐点(10)から低水温ラジエータ(8)を通って前記インバータ(3)に接続する第1流路(7)を構成し、さらに、前記エンジン冷却回路(100)の第2分岐点(10’)を前記高水温ラジエータ(9)上流に設けて、前記エンジン冷却水を、前記第2分岐点(10’)から低水温ラジエータ(8)をバイパスして前記インバータ(3)に接続する第2流路(5)を構成し、前記第1流路(7)と第2流路(5)からの流量を混合させ、かつ、前記第1流路(7)と第2流路(5)のそれぞれの流量を、前記インバータ(3)入口水温によって調整できるようにした制御弁(6)を設け、該制御弁(6)の出口を前記インバータ(3)に接続させたハイブリッド車両用冷却システムである。これにより、これにより、請求項1の発明と同様な効果が生じる。
【0016】
なお、上記に付した符号は、後述する実施形態に記載の具体的実施態様との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の冷却システムを説明する説明図である。
【図2】インバータ入口温度による制御について説明する回路図であり、(a)は、インバータ入口水温が目標温度未満のときを示し、(b)は、インバータ入口水温が目標温度以上で、エンジン暖機が出来ていないときを示し、(c)は、インバータ入口水温が目標温度以上で、エンジン暖機が出来ているときを示し、(d)は、ラジエータの放熱量を最大限利用したいときを示す回路図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明の一実施形態の変形例の冷却システムを説明する説明図である。
【図4】本発明の別の実施形態の冷却システムを説明する説明図である。
【図5】本発明の別の実施形態の冷却システムを説明する説明図である。
【図6】本発明の別の実施形態の冷却システムを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態の冷却システムを説明する説明図である。一般的なセダン型車両で例示すれば、エンジンルームに相当する空間内の前端部に、車両進行方向の後方から前方に向って、冷却ファン20、エンジン冷却水のエンジンラジエータ9、インバータなどの電子部品を冷却するハイブリッドラジエータ8、エアコンコンデンサ13の順に配置されている。エンジンラジエータ9は、ハイブリッドラジエータ8より高水温に設定されているから、以下において、エンジンラジエータ9、ハイブリッドラジエータ8を、それぞれ、高水温ラジエータ9、低水温ラジエータ8と呼ぶ。
【0020】
本発明の一実施形態の冷却システムは、ハイブリッド車両において用いられ、エンジン冷却用のエンジン冷却回路100と、ハイブリッドシステム用のハイブリッド冷却回路200との2つの冷却回路が設けられている。各冷却回路に冷却水を循環させることでエンジンや、インバータなどの電子部品・電機部品からなるハイブリッドシステムの冷却が行われる。本発明の一実施形態の冷却システムは、エンジン冷却回路とハイブリッド冷却回路を同一の系で冷却を行い、更にそれぞれ個別の冷却温度を有している(これを、1系統2温度冷却システムと呼ぶ)。
【0021】
図1に一例として示すように、エンジン冷却回路100は、エンジン用電動ウォータポンプ11より吐出された冷却水を、第1分岐点10を通過させ、高水温ラジエータ9で冷却させ、サーモスタット弁12を経由して、エンジン用電動ウォータポンプ11に戻す回路である。21はリザーバタンクである。
【0022】
一方、ハイブリッド冷却回路200は、エンジン冷却回路100と共通部分を持ち、第1分岐点10から、分流形の3方弁6で第1流路7と第2流路5に分流させ、第1流路7と第2流路5の分流流量をインバータ3入口水温によって調整できるようにしている。なお、第1分岐点10の位置は、図1の場合に限定されない(図5、6の場合については、後述する)。第1流路7は、低水温ラジエータ8を通ってインバータ3に接続し、第2流路5は、低水温ラジエータ8をバイパスしてインバータ3に接続している。3方弁6は、低水温ラジエータ8に流す流量と、それをバイパスさせる流量とを調整し、インバータ入口水温と流量を制御する。冷却水は、インバータ3など電気部品を冷却した後、場合によっては走行用モータなどを冷却して、エンジン冷却回路100に帰還する。
【0023】
ここで、エンジン1の冷却水の適切な作動水温は80〜90℃程度であって、インバータ3に比べ、適正な作動水温は高い。また、作動水温が低くなると、燃費悪化やエミッション悪化につながるため、むやみに水温を下げることはできない。インバータには、入口水温を検出する水温検出センサ2が設けられている。通常はインバータ3に内部にある場合が多いが入口に設けても構わない。インバータ3に流れる冷却水は、インバータ素子を耐熱温度以下に保つことができる水温以下に制御する必要がある。適切な作動水温は約60〜70℃とエンジンの適正な作動水温に比べて低い。
【0024】
ECU4は、水温検出センサ2によってインバータ入口水温を検出し、冷却水に必要な水温と流量を計算し、第1流路7で低水温ラジエータに流す流量と、第2流路5でバイパスさせる流量を、3方弁の開閉度で調整して、インバータ素子を耐熱温度以下に保ち、低水温ラジエータ8での過剰な放熱を防ぐように制御する。
【0025】
本実施形態では、3方弁は分流形であり、分流側の2ポート(第1流路7と第2流路5)に対して流量調整ができるタイプを使用する。流量調整は、ロータリー形やスプール形で連続的に比例制御しても良いが、断続的にON・OFFする電磁弁で流量調整するものであっても良い。一例としての3方弁を挙げるとすれば、下方にINのポートを持ち、左右にOUTの2ポートを持ったボール型のプラグよるものなどを使用すれば良い。
【0026】
また、制御弁6は、必ずしも3方弁を使用する必要はなく、第1分岐点10からエンジン冷却水を分流させた後の第1流路7と第2流路5に、それぞれ個別に流量調整弁(OFF位置ありの流量調整弁)を設けても良い。図3(a)、(b)は、このような本発明の一実施形態の変形例の冷却システムを説明する説明図である。図3(a)においては、バルブ13、14に流量調整弁を使用しており、また、ON・OFF弁と流量調整弁とをセットにしたものの使用も可能である。図3(a)においては、バルブ13は低水温ラジエータの下流に設けられているが、その上流であっても良い。図3(b)のように、サーモスタット弁12−1で代用することも可能である。
【0027】
第2流路5は、低水温ラジエータバイパス流路であり、低水温ラジエータをバイパスさせて、インバータに流れる流路である。第1流路7の低水温ラジエータ流路は、低水温ラジエータ8に流れた後に、インバータ3に流れる。低水温ラジエータ8は、第1分岐点10から分岐し第1流路7で流れてきたエンジン冷却回路の温水を冷却する。この第1流路7の冷却水(低温)と、第2流路5からの低水温ラジエータ8をバイパスさせた冷却水(高温)とを混合して、インバータ冷却用として適温・適量となった低温水を作る。
【0028】
一方、エンジン冷却回路100において、高水温ラジエータ9は、エンジン出口の温水を冷却し、エンジンを適切な温度に保つ。エンジン冷却回路100には、サーモスタット弁12が設けられており、サーモスタット弁12は、エンジン暖機が完了したことを検知して、エンジン冷却回路100にエンジン冷却水を流すように制御する。エンジン冷却回路100における第1分岐点10は、エンジン冷却回路100と、ハイブリッド冷却回路200との2つの冷却回路に流す流量を分岐させる。エンジン用のウォータポンプ11は、ベルト駆動ウォータポンプであるとエンジン停止時にインバータに冷却水が流れなくなるため、電動ウォータポンプにすることが必要である。
【0029】
以上説明したように、本実施形態においては、1系統2温度冷却でインバータ3とエンジン1を適正な作動温度に保つことができる。低水温ラジエータ8で放熱してインバータ3に流れる流量と、低水温ラジエータ8に流さないでインバータ3に流れる流量とを調整し、インバータ冷却水の流量と冷却水水温を制御する。これにより、低水温ラジエータ8で過剰な放熱が行われることを防ぎ、インバータ3とエンジン1を最適な温度で使用することができる。
【0030】
次に、本実施形態におけるインバータ入口温度による制御について説明する。
図2は、インバータ入口温度による制御について説明する回路図であり、(a)は、インバータ入口水温が目標温度未満のときを示し、(b)は、インバータ入口水温が目標温度以上で、エンジン暖機が出来ていないときを示し、(c)は、インバータ入口水温が目標温度以上で、エンジン暖機が出来ているときを示し、(d)は、ラジエータの放熱量を最大限利用したいときを示す回路図である。
【0031】
(1)図2(a)のインバータ入口水温が目標温度T0未満のとき
エンジン1も暖機ができておらず、インバータ入口水温が目標温度T0以下なので、両方のラジエータ9、8に冷却水を流さない。図2(a)の太線に示すような回路で3方弁6が流路を構成するので、このときインバータ温度がエンジン温度よりも高ければ、インバータ発熱をエンジン暖機に利用できる。サーモスタット弁12は閉じているため、高水温ラジエータ9には流れない。
【0032】
(2)図2(b)のインバータ入口水温が目標温度T0以上で、エンジン暖機が出来ていないとき
インバータ入口水温が目標温度T0以上であることを検知して、3方弁6を用いて低水温ラジエータ8に流す第1流路7の流量と低水温ラジエータ8をバイパスさせる第2流路5の流量を調整し、インバータ入口水温を目標温度T0にする。これにより、インバータ素子を耐熱温度以下に保ち、低水温ラジエータ8での過剰な放熱を防ぐことができる。エンジン暖機が出来ていないため、サーモスタット弁12が閉となっているので、高水温ラジエータ9には冷却水を通さない。
【0033】
(3)図2(c)のインバータ入口水温が目標温度T0以上で、エンジン暖機が出来ているとき
インバータ入口水温を検知して、3方弁6を用いて低水温ラジエータ8に流す第1流路7流量と低水温ラジエータ8をバイオパスさせる第2流路5の流量を調整し、インバータ入口水温を目標温度T0にする。これにより、インバータ素子を耐熱温度以下に保ち、低水温ラジエータ8での過剰な放熱を防ぐことができる。エンジン暖機が出来ているため、サーモスタット弁12は開となって、高水温ラジエータ9には冷却水を通し、放熱を行う。
【0034】
(4)図2(d)のラジエータの放熱量を最大限利用したいとき
高水温ラジエータ9と低水温ラジエータ8の放熱性能を最大限利用するために、バイパス流路である第2流路5には冷却水を流さず、インバータ3へ流れる冷却水は全て低水温ラジエータ8を通り放熱を行う。これらラジエータの放熱性能は、高水温ラジエータ9と低水温ラジエータ8の放熱性能を最大限利用すれば、インバータ素子を耐熱温度以下に保つことができるようにされている。このように、インバータの耐熱温度等を考慮してラジエータは設計されていなければならない。また、インバータ冷却水水温が一定の水温を超えた場合、走行制限をかけて出力を強制的に落としてインバータを保護するような制御も行っても良いことは、言うまでもない。
【0035】
以上説明したように、本実施形態においては、低水温ラジエータ8で放熱してインバータ3に流れる流量と、低水温ラジエータ8に流さないでインバータ3に流れる流量とを調整し、インバータ冷却水の流量と冷却水水温を制御する。このため、特許文献2のように、インバータを冷やすために低水温ラジエータで過剰な放熱を行う(エネルギーロス)ことはなく、インバータの入口水温を検知して、インバータを耐熱温度以下に保ちつつラジエータの過剰放熱を防ぐことができる。そのための手段として、新たにセンサを増設することなく、インバータの水温を検知利用して、3方弁6による制御を行うものである。
【0036】
本発明の別の実施形態として、次のようなものが考えられる。
図4〜6は、本発明の別の実施形態の冷却システムを説明する説明図である。
図4の場合は、分流側の流量調整のための3方弁6の開度の制御の入力に、インバータ水温だけでなく、エンジン出口水温も補助的に入力し、より最適な開度に調整することができる。この場合には、エンジン1とインバータ水温を測定し3方弁の開閉に利用することで、低水温ラジエータ8の放熱量の制御性、応答性を向上させることができる。
【0037】
図5の場合は、エンジン冷却回路とハイブリッド冷却回路と並列に連結した場合であり、図6は直列に連結した場合である。
図5の場合については、第1分岐点10が、エンジン冷却回路のエンジン入口手前にあって、エンジン冷却回路とハイブリッド冷却回路とに冷却水を分岐する。図5はウォータポンプ11から分岐した図であるが、これに限らずエンジン入口側付近ならどこでも良い。図5の場合には、図1、2の実施形態と異なり、ハイブリッド冷却回路の冷却水が、エンジン出口側ではなく入口側から取出している。このため、エンジンをエンジン冷却水が通る前に、ハイブリッド冷却回路に取り入れているので、インバータ入口水温をより下げることができる。
【0038】
図6の場合は、3方弁を混合形で使用したものであり、第1流路7と第2流路5の混合比率を制御して、インバータの入口水温を検知して、インバータを耐熱温度以下に保ちつつラジエータの過剰放熱を防ぐものである。図6の場合も、エンジン用の高水温ラジエータ9とエンジンを通ってエンジン冷却水を循環させるエンジン冷却回路100と、エンジン冷却回路100の第1分岐点10からエンジン冷却水を分岐させて、低水温ラジエータ8と走行用モータ用インバータ3を含む電子部品に、エンジン冷却水を循環させてエンジン冷却回路100に帰還させるハイブリッド冷却回路200を具備するハイブリッド車両用冷却システムである。
【0039】
そして、第1分岐点10(図1の場合の第1分岐点10とは異なる位置)は、高水温ラジエータ9下流に設けて、エンジン冷却水を、低水温ラジエータ8を通ってインバータ3に接続する第1流路7を構成し、エンジン冷却回路100における第2分岐点10’を高水温ラジエータ9上流に設けて、エンジン冷却水を、低水温ラジエータ8をバイパスしてインバータ3に接続する第2流路5を構成し、第1流路7からの冷却水と第2流路5からのエンジン冷却水とを混合させ、かつ、第1流路7と第2流路5のそれぞれの流量(第1流路7と第2流路5の混合比率)を、インバータ3入口水温によって調整できるようにした制御弁6を設け、制御弁6の出口をインバータ3に接続させたものである。(ここで、図6の場合には、第2分岐点10’が、図1の場合の第1分岐点10である点に留意すべきである。)
【0040】
図6の場合には、高水温ラジエータ9とインバータラジエータ8が直列に連結しているので、冷却水は、低水温ラジエータ8と高水温ラジエータ9に共に流れるため、水温を下げ易い。
【符号の説明】
【0041】
1 エンジン
2 水温検出センサ
3 インバータ
4 ECU
5 第2流路
7 第1流路
8 低水温ラジエータ
9 高水温ラジエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン用の高水温ラジエータ(9)とエンジン(1)を通ってエンジン冷却水を循環させるエンジン冷却回路(100)と、
該エンジン冷却回路(100)の第1分岐点(10)から前記エンジン冷却水を分岐させて、低水温ラジエータ(8)と走行用モータ用インバータ(3)を含む電子部品に、エンジン冷却水を循環させて前記エンジン冷却回路(100)に帰還させるハイブリッド冷却回路(200)を具備するハイブリッド車両用冷却システムにおいて、
前記ハイブリッド冷却回路(200)において、前記第1分岐点(10)からの前記エンジン冷却水を、第1流路と第2流路に分流させ、かつ、第1流路(7)と第2流路(5)のそれぞれの流量を前記インバータ(3)入口水温によって調整できるようにした制御弁(6)を設け、前記第1流路(7)は前記低水温ラジエータ(8)を通って前記インバータ(3)に接続し、前記第2流路(7)は前記低水温ラジエータ(8)をバイパスして前記インバータ(3)に接続したハイブリッド車両用冷却システム。
【請求項2】
前記インバータ(3)入口水温が目標温度(T0)未満のときには、前記制御弁(6)は、前記エンジン冷却水の全量を第2流路(5)に流し、前記インバータ(3)入口水温が目標温度(T0)以上のときには、前記制御弁(6)は、前記インバータ(3)内のインバータ素子を耐熱温度以下に保ち、かつ、前記低水温ラジエータ(8)での過剰な放熱を防ぐように、前記第1流路(7)と第2流路(5)のそれぞれの流量を制御することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両用冷却システム。
【請求項3】
前記インバータ(3)入口水温をエンジン出口水温によって補償したことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両用冷却システム。
【請求項4】
前記エンジン冷却回路(100)には、サーモスタット弁(12)が設けられており、サーモスタット弁(12)は、エンジン暖機が完了したことを検知して、前記エンジン冷却回路(100)にエンジン冷却水を流すように制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両用冷却システム。
【請求項5】
前記制御弁(6)が、3方弁であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両用冷却システム。
【請求項6】
前記制御弁(6)が、前記第1分岐点(10)の下流において前記エンジン冷却水を分流させた後の第1流路(7)と第2流路(5)に、それぞれ設けられた流量調整弁であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両用冷却システム。
【請求項7】
エンジン用の高水温ラジエータ(9)とエンジンを通ってエンジン冷却水を循環させるエンジン冷却回路(100)と、
該エンジン冷却回路(100)の第1分岐点(10)から前記エンジン冷却水を分岐させて、低水温ラジエータ(8)と走行用モータ用インバータ(3)を含む電子部品に、エンジン冷却水を循環させて前記エンジン冷却回路(100)に帰還させるハイブリッド冷却回路(200)を具備するハイブリッド車両用冷却システムにおいて、
前記第1分岐点(10)を前記高水温ラジエータ(9)下流に設けて、前記エンジン冷却水を、前記第1分岐点(10)から低水温ラジエータ(8)を通って前記インバータ(3)に接続する第1流路(7)を構成し、
さらに、前記エンジン冷却回路(100)の第2分岐点(10’)を前記高水温ラジエータ(9)上流に設けて、前記エンジン冷却水を、前記第2分岐点(10’)から低水温ラジエータ(8)をバイパスして前記インバータ(3)に接続する第2流路(5)を構成し、前記第1流路(7)と第2流路(5)からの流量を混合させ、かつ、前記第1流路(7)と第2流路(5)のそれぞれの流量を、前記インバータ(3)入口水温によって調整できるようにした制御弁(6)を設け、該制御弁(6)の出口を前記インバータ(3)に接続させたハイブリッド車両用冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−86717(P2013−86717A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230799(P2011−230799)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】