説明

ハイブリッド車両

【課題】エンジンに取り付けられたセンサ等の機器の故障判定の正確性を向上することができるハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】燃料供給により駆動する内燃機関12と、内燃機関の回転要素と同期回転するように接続される回転体を有する発電機29と、発電機の電力を蓄えるバッテリ17と、バッテリの電力で駆動し車両を走行させる走行用モータ11と、内燃機関と車両の駆動輪との間に設けられ駆動力の伝達を断接する摩擦クラッチ31と、燃料供給による内燃機関の駆動後、摩擦クラッチが駆動力の伝達を切断しているのを確認し、内燃機関の燃料供給を停止させて発電機により内燃機関の回転要素を回転させて、内燃機関の排気系に取り付けられた機器の故障判定を行う故障判定手段51とを備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動源としてモータとエンジン(内燃機関)とを備えたハイブリッド車両の制御装置に関し、特に、エンジンに取り付けられた機器の故障判定に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータの駆動力とエンジンの駆動力とを組み合わせて車両を走行させるハイブリッド車両が開発され、実用化が進んでいる。さらにモータに給電を行うバッテリを外部の商用電源で充電可能なプラグインハイブリッド車両の開発、実用化も進んできている。
【0003】
このようなハイブリッド車両としては、例えば、モータの駆動力により車両を走行させると共にエンジンを発電機の動力源として用いるシリーズ方式を採用したものや、エンジンとモータとの両方の駆動力により車両を走行させるパラレル方式を採用したものがある。さらにプラグインハイブリッド車両の場合、モータのみの駆動力によって車両を走行させるEV走行モードと、上記シリーズ方式を適用したシリーズ走行モード、或いは上記パラレル方式を適用したパラレル走行モードとを、車両の運転状況に応じて切り替えるようにしたものもある。
【0004】
ところで、従来、エンジンを備えた車両においては、エンジンに取り付けられた機器、例えば、排気通路の触媒後方に設けられる酸素(O)センサや、EGR装置等、の故障判定(診断)が所定のタイミングで実施されている。このような機器の故障判定は、一般的に、アクセルオフ等によりエンジンへの燃料供給が停止(燃料カット)された際に実施されている。例えば、排気通路の酸素センサの故障判定を行う場合、燃料カットが開始されてから所定期間内におけるセンサの出力値の変化量から故障か否かが判定される。
【0005】
そしてこのようなエンジンに取り付けられた機器の故障判定(診断)は、ハイブリッド車両においても実施されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に係る発明では、エンジンとモータと発電機とが常に一緒に連れ回るパワートレインを構成したハイブリッド車両において、燃料カット時にモータの駆動力によって車両を走行させつつ、モータによってエンジンを所定回転数に維持した状態で故障判定を行っている。このようにモータによってエンジンの回転を維持させることで、ハイブリッド車両においてもエンジンに取り付けられた機器の故障判定を頻繁に実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−179712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に係るハイブリッド車両は、モータ及びエンジンが共に連れ回ることによって走行するものであり、燃料カット時のエンジン回転数や、空燃比等のエンジンの運転条件は、車両の走行状態に依存する。つまり燃料カットが開始されてから所定期間中のセンサの出力値の変化量は、車両の走行状態によって変化する。したがって、車両の走行状態によっては、故障判定を正確に行うことができない虞がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、エンジンに取り付けられたセンサ等の機器の故障判定の正確性を向上することができるハイブリッド車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、燃料供給により駆動する内燃機関と、該内燃機関の回転要素と同期回転するように接続される回転体を有する発電機と、前記発電機の電力を蓄えるバッテリと、前記バッテリの電力で駆動し車両を走行させる走行用モータと、前記内燃機関と前記車両の駆動輪との間に設けられ駆動力の伝達を断接する摩擦クラッチと、前記内燃機関の駆動後、前記摩擦クラッチが駆動力の伝達を切断しているのを確認し、前記内燃機関への燃料供給を停止させて前記発電機により前記内燃機関の回転要素を回転させて、当該内燃機関の排気系に取り付けられた機器の故障判定を行う故障判定手段とを備えることを特徴とするハイブリッド車両にある。
【0010】
かかる第1の態様では、摩擦クラッチの断状態において、エンジンの回転数等の運転条件は、車両の走行状態に依存しない。したがって、エンジンを一定の条件又は任意の条件で回転させながら機器の故障判定を行うことができる。これにより、機器の故障判定の正確性を向上することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記故障判定手段は、前記内燃機関の回転要素の回転速度を当該故障判定の対象となる機器の種類に応じて変動させるよう前記発電機を制御する
ことを特徴とする第1の態様のハイブリッド車両にある。
【0012】
かかる第2の態様では、機器の種類に応じた最適なエンジンの運転条件で、各種機器の故障判定を行うことができる。したがって故障判定の正確性がさらに向上する。
【0013】
本発明の第3の態様は、前記故障判定手段は、燃料供給量を変動させて前記内燃機関の駆動後、燃料供給を停止時は前記内燃機関の回転数を一定に保持するように前記発電機を制御することを特徴とする第1又は2の態様のハイブリッド車両にある。
【0014】
かかる第3の態様は、エンジンを所望の回転数で回転させながら故障判定を行うことで、故障判定の正確性がより確実に向上する。
【0015】
本発明の第4の態様は、前記故障判定手段は、排気通路に設けられた酸素センサの故障判定を行う場合に、前記内燃機関への燃料供給が停止される前に当該内燃機関に供給される燃料供給量を一時的に増加させることを特徴とする第1〜3の何れか一つの態様のハイブリッド車両にある。
【0016】
かかる第4の態様では、燃料カット前に酸素センサ周辺の排気ガスをリッチにすることで、酸素センサの故障検出を確実に実施できる。なお「確実に実施できる」とは、正確という意味ではなく、頻度のことである。排ガスがリーンであると故障検出を実施できずに終了してしまうリスクがある。
【発明の効果】
【0017】
かかる本発明では、摩擦クラッチが断状態であって、車両が走行中にエンジンへの燃料供給が停止された場合に、機器の故障判定を実施するようにしているため、一定の条件又は任意の条件で、機器の故障判定を実施することができる。したがって、故障判定の正確性を向上することができる。また正確性の向上に伴い、故障判定の条件を厳しく設定することが可能となる。例えば、故障判定時間の短縮を図ることができ、ドライバビリティの向上を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るハイブリッド車両の概略図である。
【図2】故障判定におけるOセンサの出力値の変化の一例を示すグラフである。
【図3】本発明に係るOセンサの故障判定制御の一例を示すフローチャートである。
【図4】故障判定における圧力センサの出力値の変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るハイブリッド車両(以下、単に「車両」ともいう)10は、フロントモータ(走行用モータ)11と、エンジン(内燃機関)12とを、車両走行用の駆動源として備えている。フロントモータ11の駆動力は前駆動伝達機構13、車軸14を介して車輪15に伝達される。フロントモータ11には、インバータ16を介してバッテリ17が接続されており、運転者のペダル操作に応じて、バッテリ17からインバータ16を介して所定の電力が供給される。またバッテリ17には、DC/DCコンバータ18を介して補機類に電力を供給するためのサブバッテリ(12Vバッテリ)19が接続されている。
【0021】
エンジン12は一般的な内燃機関として構成され、燃料タンク20から供給される燃料が燃焼されることにより駆動する。またエンジン12は、吸気マニホールド21および排気マニホールド22を備えている。これら吸気マニホールド21と排気マニホールド22とはEGR通路23により接続されており、EGR通路23の吸気マニホールド21との接続部分にはEGR弁24が設けられている。すなわちエンジン12は、排気マニホールド(排気通路)22内の排ガスの一部を、EGR通路23を介して吸気マニホールド(吸気通路)21に還流させるEGR装置25を備えている。なお排ガスの環流量はEGR弁24の開閉動作により調節される。また排気マニホールド22に接続された排気管26には、排ガス浄化のための触媒27が設けられている。
【0022】
このようなエンジン12は、出力系28を介してジェネレータ(発電機)29に接続されている。ジェネレータ29は、ジェネレータインバータ30を介してバッテリ17(及びフロントモータ11)に接続されている。また出力系28は、ジェネレータ29に接続される一方で、摩擦クラッチ31を介して前駆動伝達機構13にも接続されている。
【0023】
そして車両10の運転状態に応じてエンジン12が始動されると、エンジン12の駆動力が出力系28を介してまずはジェネレータ29に伝達される。ジェネレータ29は、エンジン12の駆動力により作動し、ジェネレータ29で発電された電力が、フロントモータ11及びバッテリ17に適宜供給される。また車両10の運転状態に応じて走行モードが切り替えられて摩擦クラッチ31が接続されると、エンジン12の駆動力が前駆動伝達機構13、車軸14を介して車輪15にも伝達されるようになっている。
【0024】
また車両10には、各種装置を総括的に制御する制御装置50が備えられている。制御装置50は各種センサからの信号に基づいてエンジン12の制御も行っている。例えば、排気管26には、触媒27の上流側及び下流側に設けられる排気の空燃比(酸素濃度)を検出するOセンサ(酸素センサ)32,33が設けられている。これらのOセンサ32,33により排ガスの酸素濃度を検出することで、触媒27の状態(空燃比)を監視している。なお、Oセンサに代えてリニア空燃比センサ(LAFS)を設けることも可能である。また例えば、吸気マニホールド21内の圧力(インマニ圧)を検出する圧力センサ34が設けられている。制御装置50は、これらOセンサ32,33、圧力センサ34を含む各種センサからの信号に基づいてエンジン12を適宜制御している。
【0025】
本実施形態に係る車両10は、制御装置50によってフロントモータ11やエンジン12等が適宜制御されることで、車両10の走行状態に応じて、走行モードが適宜切り替えられるようになっている。具体的には、摩擦クラッチ31を断状態にすると共にフロントモータ11を駆動源として車両10を走行させるEV走行モードと、摩擦クラッチ31を断状態にすると共にフロントモータ11を駆動源として車両10を走行させつつ、エンジン12によってジェネレータ29を作動させてバッテリ17等の充電を行うシリーズ走行モードと、摩擦クラッチ31を接状態としてフロントモータ11及びエンジン12の両方を駆動源として車両10を走行させるパラレル走行モードとが、車両10の走行状態に応じて適宜切り替えられるようになっている。
【0026】
また制御装置50は、エンジン12に取り付けられた各種機器、例えば、上述の各種センサ、EGR装置25、触媒27等、の故障判定を所定のタイミングで実施する故障判定手段51を備えている。故障判定手段51は、シリーズ走行モードで車両10が走行中にエンジン12への燃料供給が停止されると、ジェネレータ29を動力源としてエンジン12を回転させた状態で、エンジン12に取り付けられた機器の故障判定を行う。例えば、本実施形態では、故障判定手段51は、シリーズ走行モードからEV走行モードに切り替わる際に、触媒27の下流側に設けられたOセンサ33の故障判定を行っている。なおシリーズ走行モード中は、通常、燃料カットが一時的に実施されることはない。
【0027】
ここでシリーズ走行モードからEV走行モードに切り替わる際、燃料カットされるとエンジン12は停止する。しかしながら故障判定が実施される場合には、ジェネレータ29が駆動されてエンジン12の回転は維持される。このため、燃料カットされた後もエンジン12には新気が供給され、燃料カット後は空燃比(排気空燃比)が急激にリーン方向に変化することになる。
【0028】
したがって、Oセンサ33の機能が正常であれば、図2中に実線で示すように、Oセンサ33の出力値(電圧)は燃料カット後に急激に低下する。一方、Oセンサ33の機能が低下している(故障している)と、図2中に点線で示すように、Oセンサ33の出力値は緩やかに低下する。
【0029】
本実施形態では、このようなOセンサ33の出力値の変化の違いから故障判定を行っている。すなわち燃料カットから一定時間(故障判定時間)におけるOセンサ33の出力値の変化量に基づいてOセンサ33の故障判定を行っている。具体的には、燃料カットが実施されると、Oセンサ33の出力値(の変化)のモニタを開始する。そして、故障判定時間T1が経過するまでにOセンサ33の出力値が第1の閾値V1以下になると、Oセンサ33は正常であると判定している。一方、故障判定時間T1が経過してもOセンサ33の出力値が第1の閾値V1よりも大きければ、Oセンサ33は故障(劣化)していると判定している。
【0030】
ところで、エンジンの駆動力により車両を走行させている場合、故障判定が実施される直前のエンジンの運転状況、例えば、エンジンの回転数は車両の走行状態によって決まり、常に一定にはならない。また燃料カット実施後にエンジンに供給される新気の量は、エンジンの回転数に依存する。つまり故障判定時間中のOセンサの出力値は、エンジンの運転状況によっても変化する。したがって、車両の走行状態によっては、Oセンサの故障判定を正確に行うことができない虞がある。
【0031】
しかしながら本発明では、シリーズ走行モードで車両10が走行中にエンジン12への燃料供給が停止される際に、故障判定手段51が機器の故障判定を行う。シリーズ走行モードでは、エンジンの回転数は車両の走行状態に依存しないため、故障判定が実施される直前のエンジン12の回転数を常に一定とすることができる。また、例えば、故障判定が実施される直前のエンジン12の回転数を所望の回転数に設定することもできる。
【0032】
したがって、シリーズ走行モードで車両10が走行中にエンジン12への燃料供給が停止された際に、一定又は所望の条件でOセンサ33の故障判定を行うことができ、故障判定の正確性が大幅に向上する。また、正確性の向上に伴い、故障判定の条件を厳しく設定することが可能となる。例えば、故障判定時間を短縮してドライバビリティの向上を図ることもできる。
【0033】
図3は、Oセンサの故障判定制御の一例を示すフローチャートである。以下、図3を参照してOセンサの故障判定手順の一例について説明する。
【0034】
上述したように本実施形態では、車両10がシリーズ走行モードで走行中に、燃料カットの指示(エンジン12の停止指示)があり、走行モードがシリーズ走行モードからEV走行モードに切り替わる際に、故障判定手段51によるOセンサ33の故障判定が実施される。なおエンジン12の停止指示は、例えば、ジェネレータ29による充電によってバッテリ17が満充電になった場合、または車速が低下した場合、ドライバーがEV走行モードを選択した場合などに出される。
【0035】
図3に示すように、エンジン12の停止指示がONになると、エンジン12への燃料供給が継続されている状態で、まずはOセンサ33の出力値から空燃比(筒内空燃比)が所定の閾値以下(リッチ側)であるか否かが判定される(ステップS1)。すなわちOセンサ33の出力値が第2の閾値V2以上であるか否かが判定される。なお車両10がシリーズ走行モードで走行している場合、エンジン12は、通常、理論空燃比(ストイキ)を目標空燃比としてフィードバック制御されている。したがってエンジン12の空燃比は、理論空燃比を中心としてリーン側とリッチ側とに変動している。
【0036】
ここで、空燃比が所定の閾値以下(リッチ側)、すなわちOセンサ33の出力値が第2の閾値V2以上であると判定されると(ステップS1:YES)、ステップS2に進んでエンジン12への燃料タンク20からの燃料供給がカットされる。このとき、車両10の走行モードがシリーズ走行モードであれば、そのまま燃料カットが実施される。車両10の走行モードがパラレル走行モードである場合には、パラレル走行モードからシリーズ走行モードに切り替えられ、一定時間経過後に燃料カットが実施される。また燃料カットと同時にバッテリ17からジェネレータ29に電力が供給されてジェネレータ29が始動される。ジェネレータ29が回転することで、エンジン12の回転はそのときの回転数のまま維持される。
【0037】
このとき、エンジン12の回転数(ジェネレータ29の回転数)は、Oセンサ33の故障判定に適した回転数に設定される。また燃料カットが実施される前に、予めエンジン12の回転数を、Oセンサ33の故障判定に適した回転数に変更するようにしてもよい。
【0038】
次に、エンジン12の回転が継続された状態で、Oセンサ33のレスポンスモニタを開始する(ステップS3)。具体的には、Oセンサ33の出力値のモニタを開始する。
【0039】
なお上述のステップ1とステップ2とは順序が逆であってもよい。すなわち燃料カットを実施し、その瞬間のOセンサ33の出力値の大きさに応じて、レスポンスモニタを開始するか否かを決定するようにしてもよい。
【0040】
次いでステップS4でOセンサ33の出力値から空燃比が所定の閾値以上(リーン側)となっているか否かが判定される。具体的には、Oセンサ33の出力値が第1の閾値V1以下であるか否かが判定される(図2参照)。
【0041】
例えば、燃料カット開始直後等で、Oセンサ33の出力値が第1の閾値V1よりも大きい場合には(ステップS4:NO)、ステップS5に進んで燃料カット継続時間が一定時間(故障判定時間T1)よりも短いか否かを判定する。つまり燃料カット開始から故障判定時間T1が経過したか否かを判定する。ここで、燃料カット継続時間が故障判定時間T1よりも短い場合には(ステップS5:YES)、ステップS4に戻る。
【0042】
ステップS4ではOセンサ33の出力値が第1の閾値V1以下であるか否かが再度判定され、Oセンサ33の出力値が第1の閾値V1以下となっている場合には(ステップS4:YES)、Oセンサ33のレスポンスは正常であると判定される(ステップS6)。つまり燃料カット継続時間が故障判定時間T1を経過するまでに、Oセンサ33の出力値が第1の閾値V1以下となれば、Oセンサ33のレスポンスは正常であると判定される。
【0043】
一方、ステップS4でOセンサ33の出力値が第1の閾値V1以下であるか否かが再判定された際にも、Oセンサ33の出力値が第1の閾値V1よりも大きい場合には、再度ステップS5に進む。つまりステップS4においてOセンサ33の出力値が第1の閾値V1よりも大きいと判定された場合、燃料カット継続時間が故障判定時間T1を経過するまで、Oセンサ33の出力値の判定が繰り返される。そして、Oセンサ33の出力値が第1の閾値V1よりも大きい状態で(ステップS4:NO)、燃料カット継続時間が故障判定時間T1を経過した場合には(ステップS5:NO)、ステップS7に進み、Oセンサ33のレスポンス故障が発生していると判定される。
【0044】
その後は、ステップS8に進んで、Oセンサ33のレスポンスモニタを終了する。すなわちOセンサ33の出力値のモニタを終了する。またステップS9でジェネレータ29の駆動を終了させて、エンジン12の回転を停止させる。これにより、Oセンサ33の故障判定制御が終了する。
【0045】
以上のようにシリーズ走行モード中に燃料カットが実施された際にOセンサ33の故障判定を行うことで、一定又は任意の条件(例えば、エンジンの回転数)で故障判定を実施することができる。したがって故障判定の正確性を大幅に向上することができる。
【0046】
また故障判定を実施する際、故障判定手段51が、エンジン12への燃料供給が停止される前に燃料供給量を一時的に増加させるようにしてもよい。すなわち目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定して一時的に燃料噴射量を増加させ、空燃比を確実にリッチにした状態(Oセンサの出力値を第2の閾値V2以上とした状態)で故障判定を実行するようにしてもよい。先にリッチ状態を作り出してから、燃料カットを実施することにより、Oセンサの故障検出を確実(頻度)に実施することができる。
【0047】
また本実施形態では、Oセンサ33を一例として機器の故障判定について説明したが、故障判定の対象となる機器は、Oセンサ33に限定されず、例えば、EGR装置25や触媒27であってもよい。これらEGR装置25や触媒27の故障判定も、シリーズ走行モード中に燃料カットされた際に実施することで、その正確性を向上することができる。
【0048】
なおEGR装置25の故障判定は、例えば、圧力センサ34の出力値(吸気マニホールド21内の圧力)に基づいて行われる。具体的には、燃料カット実施後、EGR弁24を閉じた状態で所定時間だけエンジン12を回転させた後にEGR弁24を開き、その間の圧力センサ34の出力値をモニタする。
【0049】
EGR装置25が正常に機能している場合、例えば、図4中に実線で示すように、圧力センサ34の出力値(インマニ圧)は、急激に上昇する。一方、EGR装置25に異常があり所定量の排気が環流されていない場合、図4中に点線で示すように、圧力センサ34の出力値は緩やかに上昇する。したがってOセンサ33同様、この出力値の変化の違いからEGR装置25の故障判定を行うことができる。すなわち故障判定時間T1中に圧力センサ34の出力値が第1の閾値P1以上となったか否かによってEGR装置25の故障判定を行うことができる。なおこの場合にも、圧力センサ34の出力値が第1の閾値P1よりも小さい第2の閾値P2以下である場合に、故障判定を行う。
【0050】
また触媒27の故障判定(劣化判定)は、例えば、触媒27の上流側に設けられたOセンサ32と、下流側に設けられたOセンサ33の出力値とに基づいて行われる。具体的には、Oセンサ32の出力値が一定量変化するまでの時間と、Oセンサ33の出力値が一定量変化するまでの時間との差を求め、この時間差が所定時間よりも短い場合に、触媒27の故障(劣化)ありと判定することができる。
【0051】
そして、これらEGR装置25や触媒27の故障判定も、シリーズ走行モード中に燃料カットされた際に実施することで、エンジン12を任意の一定の回転数で回転させた状態で故障判定を実施できる。したがって、故障判定の正確性が大幅に向上する。
【0052】
なおこのような異なる種類の機器について異なるタイミングで故障判定を行う場合、故障判定におけるエンジン12の回転数を、故障判定の対象となる機器の種類に応じて変動させるようにするのが好ましい。またこの場合も、上述のようにエンジン12への燃料供給が停止される前にエンジン12の回転数を変動させ、故障判定中はエンジン12の回転数を一定に保持することが好ましい。これにより故障判定の正確性をさらに向上することができる。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態では、EV走行モードとシリーズ走行モードとパラレル走行モードとの切り替えが可能なハイブリッド車両を一例として本発明を説明したが、本発明は、シリーズ走行モードでの走行が可能なハイブリッド車両であれば適用することができる。
【0054】
また上述の実施形態では、一つの制御装置50によってフロントモータ11とエンジン12を含む各種機器が制御されるようになっているが、制御装置50の構成は特に限定されるものではない。例えば、制御装置50は、フロントモータ11を制御するモータ制御部と、エンジン12を制御するエンジン制御部とをそれぞれ独立して備え、これらモータ制御部とエンジン制御部とが相互に通信可能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 車両
11 フロントモータ
12 エンジン
13 前駆動伝達機構
14 車軸
15 車輪
16 インバータ
17 バッテリ
18 DC/DCコンバータ
19 サブバッテリ(12Vバッテリ)
20 燃料タンク
21 吸気マニホールド
22 排気マニホールド
23 EGR通路
24 EGR弁
25 EGR装置
26 排気管
27 触媒
28 出力系
29 ジェネレータ
30 ジェネレータインバータ
31 摩擦クラッチ
32,33 Oセンサ
34 圧力センサ
50 制御装置
51 故障判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給により駆動する内燃機関と、
該内燃機関の回転要素と同期回転するように接続される回転体を有する発電機と、
前記発電機の電力を蓄えるバッテリと、
前記バッテリの電力で駆動し車両を走行させる走行用モータと、
前記内燃機関と前記車両の駆動輪との間に設けられ駆動力の伝達を断接する摩擦クラッチと、
前記内燃機関の駆動後、前記摩擦クラッチが駆動力の伝達を切断しているのを確認し、前記内燃機関への燃料供給を停止させて前記発電機により前記内燃機関の回転要素を回転させて、当該内燃機関の排気系に取り付けられた機器の故障判定を行う故障判定手段と、を備える
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
前記故障判定手段は、前記内燃機関の回転要素の回転速度を当該故障判定の対象となる機器の種類に応じて変動させるよう前記発電機を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記故障判定手段は、燃料供給量を変動させて前記内燃機関の駆動後、燃料供給を停止時は前記内燃機関の回転数を一定に保持するように前記発電機を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記故障判定手段は、排気通路に設けられた酸素センサの故障判定を行う場合に、前記内燃機関への燃料供給が停止される前に当該内燃機関に供給される燃料供給量を一時的に増加させる
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−183866(P2012−183866A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46731(P2011−46731)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】