説明

ハイブリッド車用の表示デバイス

【課題】ハイブリッド車用の表示デバイスを提供する。
【解決手段】ハイブリッド車用の表示デバイス(1)であって、ハイブリッド車が、運転者による動力要求に従ってハイブリッド車の少なくとも1つの車輪を駆動するために、内燃機関と、電動機として作動させることができる少なくとも1つの電気機械とを有するドライブトレインを備え、表示デバイスが、ハイブリッド車の現在のドライブトレイン関連値を表示する表示ユニット(2)を有する表示デバイス(1)が、さらに、追加の表示ユニット(5、6、7)を有し、追加の表示ユニット(5、6、7)が、ハイブリッド車が純粋に電気的なモードで走行しているとき、すなわちドライブトレインが電動機のみによって作動されているときに、運転者による最大可能動力要求に対応するドライブトレイン関連値を表示することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載のハイブリッド車用の表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車と呼ばれるものが、内燃機関を有する車両の代替として知られている。そのようなハイブリッド車は、少なくとも2つの異なるエネルギー変換器と、2つの異なるエネルギー貯蔵機構とを有するドライブトレインを備える。エネルギー変換器は通常、内燃機関と電気機械とであり、エネルギー貯蔵機構は通常、可燃性燃料と、例えば電池などの電気エネルギーの貯蔵機構である。そのようなドライブトレインは、例えばシリーズ、パラレル、あるいはパワースプリット・ドライブトレインとして、様々な構成で知られている。この文脈では、一般に、純粋に電気的な走行モードも可能である。その際、ハイブリッド車は、電動機として作動される少なくとも1つの電気機械のみによるドライブトレインによって駆動され、これは、ほぼ無音であり局所排気を伴わない走行モードを可能にする。
【0003】
この文脈では、通常、電気エネルギー貯蔵機構には比較的少量のエネルギーしか貯蔵することができず、および/または電気機械は、内燃機関に比べると弱い構成を与えられる。その結果、ハイブリッド車の加速度が比較的高いまたはその速度が比較的高い場合には、内燃機関が作動されなければならない。その際、この作動は、ドライブトレインの制御ユニットによって自動的に行われ、運転者は、意図的な制御という面では、この作動に対して大きな影響力を持たない。運転者は、単に、例えばアクセル・ペダルを作動させることによって、ハイブリッド車における所望の加速度または速度を予め規定するのみである。
【0004】
これは、純粋に電気的な走行中に何時内燃機関が作動され、それにより純粋に電気的な走行モードが終了されるかを、ハイブリッド車の運転者が推定するのはほぼ不可能であるという問題をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、この問題を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、特許請求項1の特徴によって実現される。従属請求項は、本発明の有利な実施形態および発展形態に関する。
【0007】
本発明によれば、ハイブリッド車用の表示デバイスであって、さらに、追加の表示ユニットを有し、追加の表示ユニットが、ハイブリッド車が純粋に電気的なモードで走行しているとき、すなわちドライブトレインが電動機のみによって作動されているときに、運転者による最大可能動力要求に対応するドライブトレイン関連値を表示する、表示デバイスが提供される。本発明は、ハイブリッド車の運転者が、純粋に電気的なモードで運転したい時間の長さを自ら決定することを、初めて可能にする。この目的のため、表示デバイスは、現在のドライブトレイン関連値のみならず、最大可能ドライブトレイン関連値も有する。この最大可能ドライブトレイン関連値は、ドライブトレインを純粋に電気的なモードで作動させることができる上限の瞬時「限界(リミット)」に対応する。このようにすると、運転者は、もし望むなら、自分の動力要求について最大可能ドライブトレイン関連値よりも小さい値を選択する、すなわちこの限界未満を保つことにより、純粋に電気的な走行モードに留まることができる。追加の表示ユニットが、従来のドライブトレイン関連表示デバイスに追加的に一体化されるので、電気的走行モードの限界を運転者はすぐに直感的に把握することができる。さらに、本発明による追加の表示ユニットは、従来のドライブトレイン関連表示デバイスを変更することによる最小限の構造面での費用しか必要としない。したがって、わずかな構造変更が、ハイブリッド車の運転者に良好な情報ベースをもたらす。
【0008】
1つの好ましい実施形態では、表示デバイスは、円形計器として具現化され、表示ユニットは、割り振られた目盛りを有する指針(ポインタ)として具現化され、追加の表示ユニットは、割り振られた目盛りの領域内に設けられる。ここで、従来の円形計器を基準に考えると、目盛りまたは指針機構への修正を行うだけで済むので、構造面での費用をさらに削減することができる。この文脈では、円形計器は、例えば回転コイルによってアナログ様式で具現化されても、デジタル様式で具現化されてもよい。当然、表示デバイスは、円形計器らとして、何らかの他の形態で具現化することもできる。
【0009】
好ましくは、追加の表示ユニットは、割り振られた目盛り上で運転者による最大可能動力要求の位置を表示する、円形計器内の別個の指針(ポインタ)として提供される。運転者は、そのような様式での第2の指針または回転可能なディスクの使用に慣れており、したがってそのような使用により、電気的走行モードの限界を単純に表現することができる。さらに、従来の円形計器の目盛りまたは目盛り板への構造上の修正の必要が全くなく、これは、特に費用対効果の高い解決を可能にする。
【0010】
また、好ましくは、追加の表示ユニットは、円形計器内で弓形領域または扇形領域として提供され、それの1つの半径または半径区間が、運転者による最大可能動力要求の範囲内に、割り振られた目盛り上に配置される。例えば、ドライブトレイン関連値の関連目盛りのゼロ値から運転者による最大可能動力要求の値まで緑色の領域として延びるような平面表示は、電気的走行モードの限界をハイブリッド車の運転者が特に良く把握できるようにする。当然、弓形領域または扇形領域はまた、例えば、運転者による最大可能動力要求の値からドライブトレイン関連値の関連目盛りの最終値まで赤色の領域として延びていてもよい。さらに、別個の第2の指針と弓形領域または扇形領域との組合せも、例えばこの指針をドラッグ指示針として具現化することによって可能である。構造面で多少多くのコストがかかるこの解決策は、運転者にとって最適な様式で把握することができる表現を可能にし、この場合、弓形領域または扇形領域は、最大可能動力要求の範囲内で終了する。
【0011】
その代わりに、またはそれに加えて、追加の表示ユニットを、円形計器の割り振られた目盛りの領域内に提供することができる。これは、従来の円形計器を出発点として考えると、割り振られた目盛りを修正するだけで済む、構造の面で特に単純な解決策をもたらす。この目的で、例えば、それぞれ運転者による最大可能動力要求に対応する位置まで、割り振られた目盛りの領域内に扇形セグメントを提供することができ、または通常の色とは変えられた、割り振られた目盛りの色を提供することができる。
【0012】
本発明の第1の特に好ましい実施形態では、表示デバイスは、現在の回転速度と、純粋に電気的な走行モードでの最大可能回転速度とを表示するハイブリッド車の回転速度計として提供される。第2の特に好ましい実施形態では、表示デバイスは、現在の速度と、純粋に電気的なモードで走行することが可能である上限の最大可能速度とを表示するハイブリッド車の速度計として提供される。この文脈では、回転速度および速度は、自動車の運転者が慣れており、したがって運転者が簡単に解釈することができるドライブトレイン関連値である。さらに、実質的に全ての自動車が回転速度計および速度計を有し、それらを用いて、表示に関しては、ハイブリッド型の自動車を容易に実現することができる。
【0013】
さらなる実施形態では、表示デバイスは、自動車のドライブトレインによって現在出力されている動力を表示し、およびドライブトレインが純粋に電動機によって作動されているときにドライブトレインによって出力することができる最大動力を表示する動力計として提供される。そのような動力計は、自動車の運転者には従来あまり馴染みがなく一般的でないが、表示デバイスのそのような実施形態は、パワースプリット・ハイブリッド構成、すなわち状況に応じて内燃機関と電動機との回転速度の差が提供されるときにも適している。
【0014】
次に、本発明を、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1によれば、表示デバイス1が、円形計器として、この例では回転速度計として提供される。ハイブリッド車の現在の回転速度を表示する指針2と、割り振られた目盛り3とが使用される。割り振られた目盛り3は、ここでは、円形計器の目盛り板4上に構成され、目盛り板4はまた、様々な車両情報項目を表示するための表示領域10と、様々な制御ライト11a、11b、11cとを備える。
【0016】
さらに、表示デバイスは、ドラッグ指示針(インジケータ)5として具現化される追加の表示ユニットを備える。このドラッグ指示針は、純粋に電気的な走行モードで電気的に走行を続けることが可能である上限の回転速度(最大回転速度)を表示する。この文脈では、ドラッグ指示針は、さらに弓形領域6を有し、弓形領域6は、ドラッグ指示針(すなわち最大回転速度)から、割り振られた目盛りのゼロ領域まで延びる。ここで、この弓形領域の全領域内で、純粋に電気的なモードで走行することが可能である。すなわち、運転者は、例えばアクセル・ペダルを用いて、純粋に電気的な走行モードから出ることなく、ゼロとドラッグ指示針5によって表示される回転速度との間の任意の所望の回転速度を設定することができる。選択された表現形態は、ハイブリッド車の電気的走行モードの限界の単純な表現を与え、これは、運転者が直感的に把握することができる。
【0017】
ドラッグ指示針5および弓形領域6の過度に速く頻繁な動きを回避するために、最大回転速度の対応する前処理および/または平滑化が提供される。抑制または平均化された最大回転速度の表示が提供されるので、ドラッグ指示針および弓形領域の比較的遅い動きにより、表現を運転者がより良く把握することができる。
【0018】
当然、最大回転速度の対応する表示は、予測要素を含むこともでき、例えば、勾配を有し、ハイブリッド車のそれに対応する加速トルクを必要とする、前方の経路区間のデータを考慮することが可能である。この場合、勾配を有する経路区間がない場合よりも低い最大回転速度が表示され、そのようなデータは、例えば車内のナビゲーション・システムのデジタル地図から供給される。
【0019】
図2によれば、本発明の第2の実施形態が提供され、例示の表示デバイス1’が、やはり回転速度計として提供されている。また、ここで、図1における要素と同じ要素は同じ参照符号を与えられている。この実施形態では、追加の表示ユニットが、円形計器の目盛り3の領域内で扇形領域(セグメント)7として提供される。この例では、扇形領域7は、目盛り3のゼロ値から、電気的走行モードで実現することができる最大可能回転速度値まで延びる。ここで、扇形領域7の上限は、矢印によって示されるように、各場合の走行状況に応じて変化する。この変化は、例えば、運転者の要求される加速トルク、負荷状態または現在の勾配に依存する。
【0020】
本発明による追加の表示ユニットは、ハイブリッド車の純粋に電気的な走行モードのみに関係するので、非電気的走行の場合にはそのような表示を提供しないことが有利である。したがって、内燃機関が作動している場合、当該の追加の表示ユニットは、割り振られた目盛りのゼロ位置に提供されるか、あるいは表示から完全に消される。
【0021】
好ましい表示計器は、ハイブリッド車の速度計および回転速度計である。どちらのドライブトレイン関連値も運転者に知られており、したがって簡単に把握することができる。しかし、これらの値は、パワースプリット・ハイブリッド駆動の場合には使用することができない。なぜなら、そのような場合には、通常は遊星歯車機構によって、内燃機関と電動機との回転速度の差が提供されるからである。したがって、パワースプリット・ハイブリッド車での使用の際は、ドライブトレインに加えられる動力を表示するための動力表示が提供される。したがって、このハイブリッド車構成に関しても、ハイブリッド車の運転者による最大可能動力要求の表示が可能である。
【0022】
図示した2つの例は、あくまで例示として理解すべきである。本発明はまた、他のドライブトレイン関連表示で使用することもできる。したがって、例えば棒状タコメータの場合、すなわち速度目盛りが直線状に付けられているとき、この直線状に付けられた速度目盛りの隣に、比較的小さいバーとして追加の表示ユニットを提供することが可能である。
【0023】
この文脈では、追加の表示ユニット、すなわち例えばドラッグ指示針5と、形成された弓形領域6とは、現在の車両関連値に応じて制御される。この文脈では、要求される加速トルクに応じて、純粋に電気的なモードで車両を駆動することができる可能な上限速度が降下する。言い換えれば、運転者がアクセル・ペダルをより速く踏めば踏むほど、追加の表示ユニットによって表示される速度は低くなる。これにより、運転者がハイブリッド駆動をよく理解できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1、1’ 表示デバイス
2 指針、表示ユニット
3 目盛り
4 目盛り板
5 ドラッグ指示針、表示ユニット
6 弓形領域、表示ユニット
7 扇形領域、表示ユニット
10 表示領域
11a、11b、11c 制御灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車用の表示デバイスであって、前記ハイブリッド車が、運転者による動力要求に従って前記ハイブリッド車の少なくとも1つの車輪を駆動するために、内燃機関と、電動機として作動させることができる少なくとも1つの電気機械とを有するドライブトレインを備え、前記表示デバイスが、前記ハイブリッド車の現在のドライブトレイン関連値を表示する表示ユニットを有する表示デバイスにおいて、
さらに、前記ドライブトレインが電動機のみによって作動されて前記ハイブリッド車が純粋に電気的なモードで走行しているときに、前記運転者による最大可能動力要求に対応するドライブトレイン関連値を表示する追加の表示ユニットを有することを特徴とする表示デバイス。
【請求項2】
前記表示デバイスが、円形計器として具現化され、前記表示ユニットが、割り振られた目盛りを有する指針として具現化され、前記追加の表示ユニットが、前記割り振られた目盛りの領域内に提供される請求項1に記載の表示デバイス。
【請求項3】
前記追加の表示ユニットが、前記割り振られた目盛り上で前記運転者による前記最大可能動力要求の位置を表示する別個の指針として具現化される請求項2に記載の表示デバイス。
【請求項4】
前記追加の表示ユニットが、弓形領域または扇形領域として提供され、それの1つの半径または半径区間が、前記運転者による前記最大可能動力要求の範囲内に、前記割り振られた目盛り上に提供される請求項2または3に記載の表示デバイス。
【請求項5】
前記弓形領域または扇形領域が、前記ドライブトレイン関連値のゼロ値から、前記運転者による前記最大可能動力要求の値まで延びる請求項4に記載の表示デバイス。
【請求項6】
前記扇形セグメントが、前記円形計器の前記割り振られた目盛りの領域内に提供される請求項4または5に記載の表示デバイス。
【請求項7】
前記割り振られた目盛りの色が、区間毎に切り替えることができるように提供される請求項2〜6のいずれか一項に記載の表示デバイス。
【請求項8】
前記表示デバイスが、現在の回転速度と、前記ハイブリッド車の純粋に電気的な走行における最大可能回転速度とを表示する回転速度計として具現化される請求項1〜7のいずれか一項に記載の表示デバイス。
【請求項9】
前記表示デバイスが、現在の速度と、前記ハイブリッド車の純粋に電気的な走行における最大可能速度とを表示する速度計として具現化される請求項1〜7のいずれか一項に記載の表示デバイス。
【請求項10】
前記表示デバイスが、現在の動力値と、前記ハイブリッド車の純粋に電気的な走行における最大可能動力値とを表示する動力計として具現化される請求項1〜7のいずれか一項に記載の表示デバイス。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の表示デバイスを有するハイブリッド車。
【請求項12】
ハイブリッド車のドライブトレイン関連値を表示するための方法であって、前記ハイブリッド車が、運転者による動力要求に従って前記ハイブリッド車の少なくとも1つの車輪を駆動するために、内燃機関と、電動機として作動させることができる少なくとも1つの電気機械とを有するドライブトレインを備え、
前記ドライブトレインが電動機のみによって作動されて前記ハイブリッド車が純粋に電気的に走行するときに、前記運転者による最大可能動力要求を決定するステップと、
前記最大可能動力要求をドライブトレイン関連値に変換するステップと、
前記運転者による前記最大可能動力要求に対応する前記ドライブトレイン関連値を、現在のドライブトレイン関連値と共に表示するステップと
を含むドライブトレイン関連値の表示方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−143553(P2009−143553A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292111(P2008−292111)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】