説明

ハイブリッド金属酸化物材料の合成方法及びその使用方法

本発明は、種々の基板表面上で薄膜被膜として用いることができる金属酸化物被膜材料に関するものである。本発明は、スピンオン堆積のような液相スピンオン堆積により基板上に堆積させうる水相で安定な金属酸化物材料の形成方法にも関するものである。これら新規な材料は、リソグラフ処理により又はリソグラフ処理によらずパターン化することができ、反射防止層、IC用の高k値中間層及びゲート酸化膜構造体、エッチング停止層、CMP停止層、太陽電池、OLEDパッケージ、光学薄膜フィルタ、光学回析格子用途及びハイブリッド薄膜回析格子構造体のような種々の電子及び光電子装置構造体の形成に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、薄膜被膜として使用しうる金属酸化物被膜材料、及び種々の基板表面上でリソグラフ処理により若しくはリソグラフ処理によらずパターン化可能な薄膜被膜に関するものである。更に、本発明は、種々の電子及び光電子装置構造体を構成するのに用いることができる材料に関するものでもある。本発明は、金属酸化物材料を形成する方法も取扱う。
【0002】
関連技術の説明
当該技術分野において知られているように、有機修飾二酸化ケイ素は、これらを「ゾル−ゲルポリマー」としても知られる有機シロキサンポリマーとして使用することにより、光透過性で電気絶縁性の層を形成するのに用いることができる。例えば、最も簡単な場合では、ケイ素テトラエトキシド又は四塩化ケイ素を加水分解し、この加水分解したモノマーを縮合重合させることにより、熱処理により二酸化ケイ素材料に変換しうるシロキサンポリマーを得る。更に、有機シロキサンは、酸化ケイ素の骨格鎖に共有結合性に光架橋部分を取り付けることによりリソグラフ処理でパターン化可能なものとすることができる。しかし、純粋な二酸化ケイ素又は有機修飾二酸化ケイ素であってもこれを主成分としたケイ素酸化物材料の屈折率は比較的低くなる。これら材料では、その構造及びケイ素に結合させた部分に応じて、代表的には、屈折率が約1.5となり、誘電率が約4.2〜2.5となる。ケイ素を、より多くの電子を有する元素、例えばゲルマニウム、チタン、スズ、アンチモン、タンタル、ハフニウム又はジルコニウムのような周期律表の他の元素と置き換えれば、屈折率及び誘電率を極めて高くすることができる。
【0003】
発明の開示
本発明の目的は、従来技術の欠点の少なく幾つかを解消し、基板に被着してこの基板上に金属酸化物被膜材料を形成しうる組成物の製造方法を提供することである。
【0004】
本発明の他の目的は、水又は有機溶剤に安定して溶解したモノマーを有する被膜組成物を提供することである。
【0005】
本発明の第3の目的は、基板上に薄膜を形成する方法を提供することである。
【0006】
これらの及び他の目的は、既知の方法及び組成物に対する利点とあわせて以下に説明する特許請求の範囲及び明細書に記載した本発明により達成される。
【0007】
本発明は、液相で処理しうる複合金属酸化物前駆体の組成物を提供するという考え方基づくものである。
【0008】
基板上に金属酸化膜を形成するのに使用する金属酸化物材料の前駆体は、この前駆体と反応しうる有機化合物と反応させて化学化合物又は化学錯体を形成させることにより安定させることができる。この形成された化学錯体は、低沸点溶剤、好ましくは水に溶解しうるものであり、水溶液の形態で回収することができる。必要に応じて、処理溶剤は、沸点がより高いなどより好適な特性を有する溶剤と溶剤交換することができる。
【0009】
本発明では、複合金属酸化物前駆体の組成物を、金属酸化物材料の前駆体として使用する。このような複合組成物は、代表的には少なくとも2種の異なる金属酸化物前駆体を含んでおり、これらは、異なる金属又は同じ金属を有しているが、この金属又は金属の組合せに結合した有機又は無機残基は異なっている。この複合組成物は、少なくとも2種類の無機又は有機残基を含む前駆体分子も有しうる。このような前駆体材料を、液相に溶解する重合可能な中間生成物に変換する。
【0010】
ここではまた、金属酸化物前駆体と、この前駆体の金属元素と反応しうる少なくとも1つの官能基を有する有機化合物との間の反応生成物を有する被膜組成物についても説明する。この組成物を液体に溶解され、例えば水性液相から材料を堆積させることができる。しかし、ハイブリッド金属酸化物材料を溶液中で安定して保持する条件(例えば溶液のpH)を設定して安定させれば、他の種々の処理溶剤から材料を堆積させることができる。
【0011】
この組成物は、基板上に薄膜を形成する方法において利用することができる。この薄膜の形成方法では、基板の表面に、金属酸化物前駆体を液相に溶解する重合可能な中間生成物に変換することで得られた組成物を被着させる。
【0012】
詳細には、この薄膜を形成する方法は、請求項1の特徴部分に記載されたものである。
【0013】
複合金属酸化物前駆体組成物の形成方法は、請求項25の特徴部分の記載を特徴とするものである。
【0014】
本発明により顕著な利点が得られる。つまり、比較的低い温度(例えば150℃又は最低で50℃及びそれ以上)で高屈折率及び高誘電率の被膜及び構造体を製造することができるため、これらは、種々の基板、プラスチックや紙の上であっても利用することができるのである。材料の屈折率は、合成に用いる金属酸化物前駆体を選択することで調整することができる。合成処理は、単一の金属酸化物前駆体を用いて行うこともできるが、材料に対して2種以上の異なる金属酸化物前駆体を利用することもできる。このことによっても、製造される膜の光学特性並びに電気及び熱伝導度特性を調整することができる。複数の金属酸化物前駆体を使用する以外にも、金属酸化物プレポリマーに有機成分を導入することができる。この有機部分を用いて、例えば、最終的に堆積された材料膜のホトパターン化を促進することができる。この導入される有機部分は、最終的な合成材料の加工性及び安定性を調整するのに用いることもできる。また、ここに説明した被膜は、非常に高い耐摩耗性を有する被膜に形成することもできる。
【0015】
この材料は、種々のパターン化方法により容易に処理することができる。本発明によれば、水溶液から金属酸化膜を処理しうるようになる。結合させた有機部分により、紫外線で架橋させうる材料が得られる。
【0016】
次に、本発明を、添付の図面及び詳細な説明を参照してより詳細に説明する。
【0017】
発明の詳細な説明
前述したように、本発明の目的は、高品質で高屈折率及び高誘電率のハイブリッド金属酸化物材料、被膜及び構造体の合成及び製造方法を提供することにある。
【0018】
一例によれば、金属酸化物前駆体材料を、液相で溶解する重合可能な中間生成物に変換する方法は、代表的には、
−単一の金属元素を含む少なくとも1つの前駆体、又は2種以上の金属元素の組合せを含む予調製前駆体を有する複合金属酸化物前駆体組成物を調製するステップと、
−この前駆体の金属元素又は少なくとも1つの金属元素と反応しうる少なくとも1つの官能基を有する有機化合物を調製するステップと、
−前駆体又は少なくとも1つの前駆体を、この有機化合物と好ましくは液媒中で反応させて反応生成物を得るステップと、
−この反応生成物を回収するステップと
を有する。
【0019】
本発明の範囲において、「前駆体」の用語は、金属原子が以降の処理段階中に反応して金属酸化物網状構造を形成しうるような形態で金属酸化物材料中に金属を有するいかなる化合物を示すのにも用いられるものである。この前駆体は、式I〜IIIを用いて更に詳細に説明する「複合金属酸化物前駆体組成物」に含まれる。
【0020】
代表的には、前駆体及び有機化合物を液媒体中で共に混合するか、或いは前駆体を有機化合物に溶解させて反応混合物を得、この反応混合物において0.1〜24時間の反応時間に亘り反応を続行させる。この反応は、1ステップで実施することもできるし、又は複数のステップとして実行することもできる。後者の変形例では、まず、例えば強く攪拌しながら約0.05〜5時間に亘り反応を進行させる。次に、反応混合物を残りの所定反応時間に亘り放置する。反応温度は、通常は環境温度又は高温とし、好ましくは10〜80℃とする。
【0021】
反応生成物は、少なくとも一部加水分解された前駆体と、この前駆体と結合又は配位した有機化合物とにより形成された中間生成物を含む。このように、反応生成物の合成は、加水分解及び縮合化学合成技術に基づくものである。前駆体の少なくとも一部を加水分解させるために、前駆体を充分な量の水の存在下で有機化合物と反応させるのが好ましい。
【0022】
好適例によれば、反応は水相で行い、例えば、前駆体を水中で有機化合物と混合し水溶液を形成する。この反応は、充分な量の水を含む有機溶剤中で行うこともできる。この有機溶剤には、反応生成物を形成するのに使用する有機化合物を含ませることができる。この場合、任意ではあるが、過剰量の有機化合物を使用する。水の量は、代表的には、金属酸化物前駆体の加水分解性基に基づく当量に対して少なくとも4倍、好ましくは少なくとも10倍とする。加水分解に必要な水は、金属塩から遊離した結晶水により供給することもできる。
【0023】
多くの場合において金属酸化物前駆体は水に対する反応性が非常に高いため、この金属酸化物前駆体を有機化合物及び水の双方又はいずれか一方と接触させる前に、有機溶剤に溶解させるか又はこれにより希釈して反応性を低減させておくのが有利となりうる。反応性を低減させうる代表的な有機溶剤には、クロロ置換アルカン(クロロホルム、ジクロロメタン及びジクロロエタン)のような塩化及びフッ素化炭化水素がある。また、トルエン及びキシレンを溶剤として使用することもできる。
【0024】
本発明による中間化合物の好適な形成方法は、
−少なくとも2つの出発反応物であって、これらのうちの1つが金属酸化物前駆体を有する当該出発反応物を調製するステップと、
−これら反応物を互いに反応させて、修飾金属酸化物前駆体を含む反応生成物を形成するステップと、
−この反応生成物を回収するステップと、
−この反応生成物を、有機化合物からなる群ら選択した化合物、水及び水溶液と反応させ、この反応生成物を液相処理に適した中間生成物に変換するステップと
を有する。
【0025】
任意であるが、この反応生成物を、有機化合物及び水若しくは水溶液の双方と反応させて、順次に又は同時に前駆体の加水分解とともに変換及び安定化を行うことができる。
【0026】
この中間生成物を重合させて薄膜を形成することができる。特に、中間生成物は、熱を加えながら、任意には溶剤を蒸発させながら重合させることができる。中間生成物(プレポリマー)を重合させる他の方法としては、放射線及び光重合開始剤を使用する方法がある。熱開始剤を使用することもできる。
【0027】
中間生成物を重合させて、5000グラム/モル〜250000グラム/モルの(重量平均)分子量を有する架橋ポリマーを形成することができる。この場合、反応生成物は、代表的には、200〜5000グラム/モルの(重量平均)分子量を有するプレポリマーを含んでいる。
【0028】
本発明によれば、金属酸化物前駆体は「複合金属酸化物前駆体の組成物」であり、これは好ましくは、
式Iの金属ハロゲン化物と、
MeXm (I)
(式I中で、Meは金属を表し、Xはハロゲン化物を表し、mは金属の価数を表す)
式IIの金属アルコキシドと
MeOR1m (II)
(式II中、R1は、線鎖若しくは分枝、脂肪族又は脂環式アルキル基であって、ヒドロキシ、カルボキシ、無水物、オキソ、ニトロ及びアミド基からなる群から選択した1〜3の置換基により随意的に置換されたものであり、Me及びmは上記したものと同じ意味である)
とからなる群から選択した少なくとも2種の化合物を有する。
【0029】
Meは、ゲルマニウム、チタン、スズ、アンチモン、タンタル、ハフニウム、ジルコニウム及びケイ素からなる群から選択するのが好ましい。Xは塩化物とするのが好ましい。いかなるアルコキシドも好適だが、反応性の観点からメトキシド又はエトキシドを使用するのが好ましい。
【0030】
金属酸化物前駆体は、2種以上の式Iの金属ハロゲン化物又は異なる金属元素Meを有する式IIの金属アルコキシドを有しうる。後の変形例では、金属酸化物前駆体が、例えば、式I又はIIの第2金属酸化物前駆体であって、金属がランタン、インジウム又は鉛である当該金属酸化物前駆体を有する。ゲルマニウム、チタン、スズ、アンチモン、タンタル、ハフニウム、ジルコニウム及びケイ素からなる上述した群の金属酸化物ハロゲン化物/アルコキシドの混合物も使用しうること勿論である。金属酸化物前駆体は、それ自体に2種の異なる金属原子を含む金属ハロゲン化物又は金属アルコキシドを有するものとすることもできる。
【0031】
更に、金属酸化物前駆体には、窒化物又はケイ化物基を有する第2金属酸化物前駆体を含ませることができる。
【0032】
他の変形例では、式IIIの金属酸化物前駆体を有する。
nMeOR1p (III)
(式III中で、Me、X及びR1は上記したものと同じ意味であり、nは0〜mの整数であり、pは0〜mの整数であり、n+pの合計はmに等しく、mは上記したものと同じ意味である)
【0033】
複合金属酸化物前駆体組成物は、式IおよびIIの少なくとも一方による化合物の混合物を、少なくとも1つの式IIIの化合物と共に有するものとすることもできる。
【0034】
式IおよびIIによる2つ以上の化合物と任意的に式IIIの化合物とを含む複合金属酸化物前駆体の組成物においては、これら種々の化合物間のモル比は広い範囲で変化させることができる。代表的には、2種類の異なる分子のモル比は、約1:1000〜1000:1であり、好ましくは約1:100〜100:1であり、特には約1:10〜10:1である。等モル量とするのが通常は都合がよい。
【0035】
本発明によれば、有機化合物を用いることで、少なくとも1種の、好ましくは全ての金属酸化物前駆体を安定させることができる。有機化合物は、金属酸化物前駆体が完全に架橋してしまい水性又は有機溶剤に溶解し得ないポリマーマトリクスを形成しない程度にこの金属酸化物前駆体を安定させうるようなものを選択する。
【0036】
一般に、有機化合物は、合成に使用する金属元素と反応性のものとして、金属酸化物前駆体が完全に架橋した「ゼリー」型のポリマーマトリクスを形成してしまい水性又は有機溶剤に溶解し得ないようなことのようこの金属酸化物前駆体を安定させるものとする必要がある。本発明において、「反応性」の用語は、有機化合物が金属酸化物前駆体と共に化合物又は化学錯体を成形しうることを意味する。このために、有機化合物は、金属酸化物前駆体と反応しうる官能基を少なくとも1個、好ましくは1〜3個有するようにする必要がある。このような官能基の例としては、カルボキシ、カルボン酸無水物、オキソ、アミド及びニトロ基がある。他の特徴として、有機化合物は、アニール又は重合処理中に架橋反応を引き起こしうる官能基を含むものとしうる。例えば、有機化合物が炭素−炭素二重結合を有するようにしうる。
【0037】
下記の例では、メタアクリル酸を使用するが、本発明はこのような安定化及び錯化有機化合物に限定されるものではない。好ましくは、有機化合物は、有機酸、酸無水物、アルコキシド、ケトン、ベータ−ジケトン、アセチルアセトン、ベンジルアセトン、アリール酸化物、ベータ−ケト−エステル、アルカノールアミン、グリコール、オキシム、アルキルヒドロキシルアミン、ベータ−ケト−アミン、シフト−ベース、チオール及びアルデヒドからなる群から選択される任意の有機化合物とすることができる。好適な有機化合物の例としては、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロ酢酸が挙げられるが、これに限定されるものではない。他の例としては、アセトン及びベータ−ジケトンのようなケトン及びアルデヒドがある。
【0038】
反応中、金属酸化物前駆体及び有機化合物間のモル比は、約10:1〜1:10とし、好ましくは約5:1〜1:5とする。好ましくは、有機化合物のモル量は、金属酸化物前駆体の金属の価数と少なくとも同等になるようにする。
【0039】
反応後、反応生成物を回収する。反応生成物は、通常、反応媒体に溶解しうるため、溶液、例えば水溶液で回収される。反応生成物を、有機溶剤により形成した溶液で回収し、その後溶剤置換により水相に溶解させることもできる。反応生成物を水溶液として回収し、それを水より高い沸点の有機溶剤に溶剤置換により溶解させることもできる。このような溶剤の例として、ガンマブチロラクトンのような環状エーテルを挙げることができる。また、処理溶剤として混合溶剤を使用することができる。
【0040】
図13は、金属酸化物ハイブリッドポリマーの合成方法を示す線図である。この合成方法は、上述した金属酸化物前駆体に関して使用しうるものであり、1つ若しくは2つの金属元素Meの前駆体(同じ若しくは異なる金属)、純粋なハロゲン化物若しくはアルコキシド、又はリガンドとしてハロゲン化物及びアルコキシドの双方を有する複合前駆体を用いる。従って、この方法は、単一の金属酸化物前駆体の組成物又は複合複数金属酸化物前駆体の組成物の調製に適用しうる。この合成方法は、使用する前駆体(溶解性、反応性)や、材料の中和処理の必要性や、使用する有機化合物や、材料の最終的な処理溶剤の選択(水性、有機)により場合に応じて変形させる。
【0041】
以下では、例として酸化チタンを使用する合成方法の流れを、図13を参照して一般的に説明する。以下の3つの詳細な例が挙げられる。
【0042】
ステップA:
ステップAにおいては出発反応物を互いに反応させる。反応物R1及びR2の双方とも、異なる又は同じ金属元素Meを有する金属酸化物前駆体とすることができる。これらは、純粋なハロゲン化物若しくはアルコキシド、又はリガンドとしてハロゲン化物及びアルコキシドの双方を有する複合前駆体とすることができる。好適な場合には、反応を不活性溶剤中で実行させることができる。場合によっては、反応物R1として金属元素前駆体を使用し、反応物R2として反応性溶剤(例えばアルコール)を使用して反応を実行させることができる。このような場合、反応物R1を、例えばエタノール(EtOH、R2)と反応する四塩化チタン(TiCl4)とすれば、この反応から得られる生成物1(P1)は、「複合」置換チタン前駆体、例えばTiC12(OEt)2となる。この反応は、副生成物として塩酸HCl(S1)も発生する。
【0043】
ステップAにおいて不活性溶剤を使用する場合、代表的には、反応物R1及びR2が反応したら(ステップBの前に)これを除去する。
【0044】
ステップB:
代表的には、この合成段階の生成物1(P1)は、一般式XmMeOR1m又はXmMeOMeOm1m(X、Me及びRは上述したのと同じものを意味する)。
【0045】
ここで、予反応させた出発前駆体を溶剤に溶解させることができ、任意ではあるが、既にこの段階で有機化合物と反応させておいたり(種々の錯体の形成)、水又は酸性水と反応させておいたり(金属酸化物前駆体の加水分解及び縮合の促進)することができる。材料を完全に中和させるのが好ましい場合や、生成物1(PI)がなおハロゲン化物リガンドを含む場合には、P1の反応を更に継続させるのが好ましい。このことは、例えば、反応混合物に化学量論の蒸留水を加えることにより行うことができる。ステップAで説明した材料については、この反応により、以下の式に基づき反応生成物(P2)と、例えばHClである副生成物(S2)とが得られる。

Ti(OH)2(OEt)2(TiCl2(OEt)2+2H20 → Ti(OH)2(OEt)2+HCl
【0046】
ステップC:
ハロゲン化物金属前駆体(例えば塩化物)を反応に使用する場合、ステップA及びBの後の反応生成物(P2及びP3)は通常強い酸性になる。これは、合成中に形成される副生成物(S1及びS2、例えばHCl)が原因である。この時点において、例えばトリエチルアミン(NEt3)を反応に用いて材料を中和させることができる。他の中和処理を適用することもできる。NEt3はHClと反応してEt3N・HCl(副生成物S)を形成する。この反応を適切な溶剤中で行うと、Et3N・HClは沈殿し、ろ過により除去しうるようになる。
【0047】
ステップD:
例えば、加圧ろ過又は循環ろ過を用いて材料を濾過する。
【0048】
ステップE:
ある場合においては、この段階でいかなる他の添加剤も必要とせず材料が使用可能な状態になる。合成中に使用した溶剤を処理により適した溶剤に変更する必要が生じる場合もある。これは、溶剤交換法を用いて行うことができる。
【0049】
ある場合には、材料の処理特性や安定性といった理由から、金属酸化物材料を、有機化合物と反応させたり(種々の錯体の形成及び材料の安定化)、酸性水と反応させたり(金属酸化物前駆体の加水分解及び縮合の促進)するのが好ましい。最終ステップとして有機化合物及び酸性水を加えた場合には、通常、蒸留により材料から酸性水を除去する。また、合成溶剤は処理目的により適した溶剤に変更することができる。
【0050】
上述したところから明らかなように、一例によれば、本発明による被膜組成物は、金属酸化物前駆体と、前駆体の金属元素と反応しうる少なくとも1つの官能基を有する有機化合物との間の反応生成物を有する。被膜組成物は、約0.001〜10mol/lの反応生成物を含む。通常、液組成物中の反応生成物の濃度は、約0.1〜60重量%であり、特には5〜50重量%である。回収された生成物の溶剤/液体を蒸発させて乾燥又は半乾燥した生成物を得ることもでき、それを以降の薄膜形成処理ステップに適した溶剤に溶解させることができる。
【0051】
得られた(水性又は有機溶剤の)溶液は、例えば液相スピンオン堆積や、浸漬コーティングや、スプレーコーティングや、メニスカスコーティングや、グラビア及びフレキソ印刷コーティングの双方又はいずれか一方を用いて、それ自体で堆積処理に使用することができる。
【0052】
この薄膜形成方法は、
−基板の表面に被膜組成物を被着させるステップと、
−この表面上に薄膜層を形成するステップと、
−溶液中の溶剤を除去するステップと、
−中間生成物を重合させて固体薄膜にするステップと
を有する。
【0053】
基板は、代表的には、ガラス、プラスチック、紙、セラミック及びラミネート体からなる群から選択する。
【0054】
通常、液相から反応生成物を処理して、1回の堆積工程により1nm〜1000nmの厚さの膜を得ることができる。高い加工温度が必要な場合には、クラックによる薄膜欠陥を防止するため500nmより小さな膜厚にるするのが好ましい。
【0055】
被着処理中の組成物の濃度は、薄膜の目標厚さに応じたものとする。組成物を希釈すれば、より薄肉の膜を形成することができる。通常、約5〜30重量%の濃度が好ましい。
【0056】
1回の堆積処理により厚い膜を得ることが必要な場合には、材料中の溶剤の量及び種類を変えることができる。更に、必要に応じて、水性溶剤を好適な有機溶剤に置き換えることができる。例えば、ガンマ−ブチロラクトンが、本発明の金属酸化物ハイブリッドポリマーと共に使用するのに適した溶剤である。ガンマ−ブチロラクトン自体を使用することもできるし、或いは水との混合物を使用することもできる。
【0057】
処理溶剤の量を変化させることにより、例えば1000nmを上回る厚さの酸化チタンハイブリッドポリマー薄膜を製造することができる。但し、高い処理温度(350℃以上)が必要とされる場合には、1回のスピン処理で得られる膜厚は300〜600nmである。複数回の堆積工程を実行すれば、より厚肉の膜を得ることができる。
【0058】
このようにして形成された薄膜層を低温でアニール処理して高屈折率で高誘電率の被膜を得ることができる。ここで酸化チタンハイブリッド材料について例をあげると、150℃の温度において屈折率1.94(代表的には1.9以上)を達成することができ、温度を350℃まで上昇させると屈折率2.03(代表的には2.0以上)を達成することができる。
【0059】
通常、薄膜層を80〜350℃の温度でアニール処理すると、少なくとも有機化合物の残基を含む金属酸化物膜が形成される。しかし、有機化合物が放射反応性の炭素を含む場合には、上述したように光−架橋反応により中間生成物の二重結合重合を行うことができる。
【0060】
用途によっては、成形した薄膜を極めて高温(500〜1000℃以上)でアニール処理して、金属酸化物薄膜を形成するための薄膜から有機化合物(例えばメタアクリル酸)を完全に除去することもできる。
【0061】
本願明細書において説明したハイブリッド金属酸化物材料は、UV−リソグラフ処理、エンボス処理、加熱エンボス処理、UVエンボス処理、フラッシュ及び印刷処理、ナノ−刷り込み処理、ロールツーロール印刷処理並びにグラビア印刷処理を用いてパターン化することができる。
【0062】
材料は処理中に低温で硬化させうるため、プラスチック及び紙のような種々の基板を使用することができる。
【0063】
本発明の種々の用途について以下に記載する。まとめると、本発明による被膜(薄膜形成)組成物は、基板上への光学的又は電気的薄膜被膜の形成や、格子構造体上への高屈折率薄膜の形成や、高誘電率薄膜(k値が3.9より高い)の形成や、反射防止膜の形成や、リソグラフ処理における化学及びドライエッチングの停止層の形成や、有機発光装置の保護膜の形成や、太陽電池の効率向上層の形成に使用することができることに注意されたい。更に、本発明は、前記薄膜のエンボス処理、ホログラフリソグラフ処理及びナノ刷り込み処理により光回析格子及びハイブリッド薄膜回析格子の形成や、光学薄膜フィルタの高屈折率材料の形成に用いることができる。
【0064】
本発明の材料によれば、優れた高屈折率耐摩耗性被膜も形成される。
【0065】
以下の実施例により新規な被膜組成物の調製方法を開示するが、これら実施例は本発明を限定するものではない。
【0066】
実施例1.チタンハイブリッドポリマー
合成:
ハイブリッドチタン酸化物薄膜に用いる液相材料を、塩化チタン前駆体に対する加水分解及び縮合化学反応により合成した。ここでは、0.4molの四塩化チタンを0.1molのメタクリル酸により安定化させ錯化させた。
【0067】
この溶液を、不純物が10ppm未満で(チタンに結合した塩化物イオンに対して)10倍の過剰なモル量の超純水により加水分解した。この際有機溶剤リザーバ及び反応安定剤としてジクロロメタンを使用した。この溶液を、強く攪拌しながら2時間反応させ、更にこの溶液を攪拌せずに更に12時間放置した。最後に、抽出漏斗により溶剤から水相を抽出し、スピンオン堆積に利用しうる安定した水性液体形態の材料を得た。
【0068】
処理(スピンオン堆積の例):
試験を行うために上述した酸化チタンハイブリッドポリマーを光学薄膜として使用するものとしし、この薄膜をスピンオン処理を用いてp型の4”及び6”ケイ素基板上に堆積した。溶液を静止した基板上に注ぎ、その後、以下の2段階の処理でウェーハ上にスピンオン堆積させた。まず、溶液を300rpmの速度で5秒間に亘り基板上に広げ、その後、2秒以内に速度を2000rpmに加速して30秒間に亘りスピンさせた。エッジの泡の除去(ウエハエッジからの5mmに亘り除去する)と、背面のリンス処理とは、リンス溶剤として2−プロパノールを用いて手動で行った。薄膜のアニール処理は、通常の屋外研究室用ホットプレートを用いてこのプレートの温度を±2℃の均一な温度として実行した。最初の薄膜プリベーク処理を60℃で5分間に亘り行った。その後、この薄膜に、各々5分に亘るアニール処理を順次の温度(85℃、105℃、150℃、200℃、250℃及び350℃)で行った。これら各ステップの間には薄膜を冷却し、反射計を使用して光学的測定を行った。更に、分光測光により特性を計測するために、2つの6”シリコンウエハを150℃及び350℃のアニール処理を交換可能に行って製造した。ポリプロピレンプラスチック基板に対する接着及び濡れ性を試験したところ、プラスチック型の基板に対する濡れ性及び接着が良好であることが確かめられた。最後に、薄膜の屈折率安定性を「圧力クッキング試験」(120℃、2気圧で2時間)により試験したところ、屈折率変化なしというものは観察されなかった。
【0069】
薄膜特性評価:
薄膜の膜厚、屈折率及び吸光係数は、Filmetrics 20反射計と、スペクトル測光に基づく計量器具であるSCI Film Tek 4000とを用いて行った。200nm〜1700nmのスペクトル光データを得た。堆積した薄膜の面微細形状及び平方2乗平均表面粗さは、光学式非接触表面プロファイラ(WYKO NT-3300)を用いて評価した。
【0070】
合成された材料は、高温での処理に対して極めてよく反応した。5分間に亘り105℃でアニール処理した薄膜は、既に安定した薄膜であり、一般の有機溶剤や酸性及び塩基性水溶液に対して耐性があり光学特性にいかなる変化もなかった。また、実際の硬度値は得られなかったが、105℃でアニール処理した薄膜の引っかき抵抗性は優れたものであった。105℃で処理したサンプルは、ポリプロピレン及びp型シリコンの双方の基板に対する接着性が良好であることが確かめられ、標準「スコッチテープ試験」をパスした。150℃及び350℃でアニール処理した薄膜の安定性を、これらサンプルを2気圧超臨界水圧において120℃で2時間に亘り処理する「圧力クッキング試験」により試験した。この試験により、150℃以下でアニール処理した薄膜は、632.8nmの波長における屈折率が1%又は2.1×10-2を越えて低下するため、これら薄膜が完全に緻密化されておらず極めて攻撃的(アグレッシブ)な環境には耐えられないことが示された。しかし、350℃でアニール処理した薄膜は、「圧力クッキング試験」に対して良好な安定性を呈し、632.8nmにおける屈折率の変化は±2×10-4程度であった。
【0071】
アニール温度の関数として吸光係数(k)が僅かに増加することが示された。これは薄膜がより緻密化するためである。UV領域(<400nm)では吸光係数が急速に増大し、測定範囲の終わり(250nm)では最大値に到達した。150℃及び350℃でアニール処理したサンプルの250nm域のk値は、それぞれ0.0125nm-1及び0.0215nm-1であった。分光吸光係数を図1に示す。双方のサンプルについてk値は390nmにおいて測定の精度(約1.0×10-4)の観点で「0レベル」になり、可視領域及び1700nmまでの近赤外領域(図1に挿入)において変化することはなかった。
【0072】
図2は、250〜1700nmにおけるスペクトル屈折率を示す。アニール温度は薄膜の屈折率に対して、吸光係数値の場合と同様の作用をもたらす。従って、350℃で処理したサンプルについて高い屈折率が得られた。150℃及び350℃で処理したサンプルのアニール温度間の屈折率差は、632.8nmにおいて0.0928であり、それぞれの対応する屈折率値は1.9407及び2.0336であった。屈折率は、低い温度で処理したサンプルでは290nmで最大に達し、高い温度で処理したサンプルでは285nmで最大に達し、その後は徐々に減少した。150℃及び350℃で処理したサンプルの屈折率の最大値は、それぞれ2.5892及び2.8464であった。
【0073】
4”及び6”のシリコンウエハ上に形成した薄膜の均一性は、0.5%及び0.9%(ウェーハ上で5点について測定)よりも良好なものであった。これらの薄膜均一性は、薄膜処理技術に基づく標準的な化学気相堆積又は物理堆積処理に匹敵するものである。150℃で処理した薄膜では、表面から傾斜を除去した後における400μm×400μmの方形領域中の平方2乗平均表面粗さは1.43nmであった(図3aを参照)。350℃で処理した薄膜では、表面から傾斜を除去した後における400μm×400μmの方形領域中の平方2乗平均表面粗さは0.97nmであった(図3bを参照)。
【0074】
60℃でベークした薄膜と、350℃でアニール処理した薄膜との間である程度の薄膜の収縮が確かめられた。350℃でアニール処理した薄膜が殆ど50%も収縮することは、高温でのアニール処理中のヒドロキシル及びメタクリル酸基の縮合/開裂反応並びに水溶剤(抽出処理で除去されなかった部分)の蒸発除去により説明することができる。同じ反応は、表面リフロー及び焼結の原因ともなり、これにより高温でアニール処理した場合に平坦性のより良好な薄膜が得られる。収縮の影響は、薄膜の比較的高い複屈折としても観察されるが、これは薄膜の応力により形成されるものである。150℃及び350℃で処理した薄膜の光学複屈折率は、それぞれ1×10-3及び9×10-3であった。膜厚を温度の関数として表1に示す。表1には、対応する処理温度における屈折率も示している。
【0075】
【表1】

【0076】
350℃でアニール処理した薄膜の誘電率も水銀プローブ法により試験した。得られた値は72であった。
【0077】
実施例2:酸化チタンハイブリッドポリマー1
Ti(iOPr)4(0.05277mol)を丸底フラスコ内に配置した。TiCl4(0.05277mol)を、シリンジ及びニードルにより加えた。白色固体を含む溶液を、室温(RT)で10分間に亘り撹拌した。125.04gの2−イソプロポキシエタノールを加え、澄んだ黄色い溶液を30分に亘り室温で攪拌した(Nd=1.4332)。3.80gのH2O(0.21099mol)を加え、反応溶液を更に5分間に亘り室温で攪拌した(Nd=1.4322)。21.36gのTEA(0.211088mol)を加えて反応混合物を中和させた。得られた白色の懸濁液を室温で2時間に亘り撹拌した。白色の反応懸濁液を、加圧濾過(濾紙サイズ0.45μm)を利用して濾過したところ、Nd=1.4235及びpH=6.5〜7(測定のためにpH紙を使用した)であった。ろ過後の材料の量は92.71gであった。酸性水溶液(硝酸HNO3、0.0652mol)を反応混合物に加えた。数分後にメタクリル酸(MAA、0.1304mol)を滴下した。この反応混合物を室温で一晩中撹拌した。最後に、回転蒸発器[蒸発、圧力=77mbar、t(バス温度)=48℃、t=10分、pH=5.01、Nd=1.4255]を使用して酸性水を取り除いた。このようにして得られた材料は堆積処理に利用可能なものであった。
【0078】
実施例3:タンタル酸化物ハイブリッドポリマー1
TaCl5(0.007342mol)を丸底フラスコに配置し、メタノール(メタノール)(26ml)を加えた。これに対して、透明な反応溶液Ta(OEt)5(0.007342mol)を加えた。得られた透明の懸濁液を室温で2時間に亘り撹拌した。回転蒸発器(p=200〜51mbar、t(バス)=40℃)を用いて、メタノールから2−イソプロポキシエタノール(5×)への溶剤交換を行った。透明な反応溶液を室温で数分間撹拌した、その後TEAを用いてこの反応溶液を中和させた(m=4.62g、0.04566mol)。この白色の懸濁液を室温で2時間に亘り撹拌し、その後加圧ろ過器(0.45μm)を用いて濾過した。得られた透明な溶液を、冷凍器に入れて一晩置いた。その後懸濁液を濾過した。回転蒸発器(p=100〜1mbar、t(バス)=40℃、1mbarで10分間)により、合成中に使用した溶剤を除去した。処理溶剤として、IPA:MEOH:1−ブタノール溶液(6:3:1)を6.82g加えた。透明な反応溶液のpHは7.14であった。この材料は堆積処理に使用しうるものである。
【0079】
実施例4:タンタル酸化物ハイブリッドポリマー2
TaCl5(0.04218mol)を丸底フラスコに配置し、メタノール(151.1ml)を加えた。得られた透明の懸濁液を室温で2時間に亘り撹拌した。回転蒸発器(p=200〜50mbar、t(バス)=40℃)を用いて、メタノールから2−イソプロポキシエタノール(5×)への溶剤交換を行った。透明な反応溶液を室温で数分間撹拌した。この反応溶液を、TEAを用いて中和させた(m=14.82g、0.14646mol)。この白色の懸濁液を室温で2時間に亘り撹拌し、その後加圧ろ過器(0.45μm)を用いて濾過した。このようにして得らた僅かに濁った溶液を、シリンジ及びフィルタ(0.45μm)を用いて再度濾過した。得られた透明な溶液を、冷凍器に配置し一晩そこに保持した。その後、シリンジフィルタ(0.45μm)を使用してこの懸濁液を再度濾過した。回転蒸発器(p=100〜1mbar、t(バス)=40℃、1mbarで10分間)により溶剤を除去した。処理溶剤として、240重量%のMEOH:1−ブタノール溶液(1:1)を加えた。澄んだ反応溶液が得られた(pH=7.1)。この材料は堆積処理に利用可能なものであった。
【0080】
材料処理及び特性評価
処理(スピンオン堆積の例):
金属酸化物高屈折率ポリマー
特性評価のために、上述した金属酸化物ポリマー(実施例1、2及び3のポリマー)を光学的薄膜として使用した。ここでは、スピンオン処理法を利用してp型4”ケイ素基板上に薄膜を堆積した。溶液を静止した基板上に注ぎ、その後、以下の3段階でウェーハ上にスピンオン堆積させた。まず、50rpmの速度で10秒間に亘り溶液を基板上に広げ、その後100rpmの速度で10秒間に亘り溶液を広げ、最後に1500rpmで30秒間に亘り溶液を広げる処理を行った。エッジの泡の除去(ウエハエッジから5mmに亘り除去する)及び背面のリンス処理は、リンス溶剤として2−プロパノールを用いて手動で行った。スピンコーティング後の薄膜硬化処理を2段階のステップで行った。最初の薄膜プリベーク処理は、通常の屋外研究室用ホットプレートを用いて130℃で5分間に亘り行い、この際このプレート上の温度を±2℃の均一な温度にした。その後に、以下の温度サイクルを使用して、薄膜をオーブン(窒素雰囲気)で硬化させた。このサイクルは、A)30分間に亘り250℃まで勾配をなす温度で行う処理と、B)60分間に亘り250℃でベークする処理と、C)30分間に亘り400℃まで勾配をなす温度で行う処理と、D)60分間に亘り400℃でベークする処理と、E)90分間に亘り室温まで下降勾配をなす温度で行う処理とからなる。硬化した薄膜の光学特性の測定はエリプソメータを使用して行った。
【0081】
薄膜特性評価:
薄膜の膜厚、屈折率及び吸光係数(k)を、スペクトル測光に基づく計量器具であるSCI FilmTek 4000を用いて行った(表2にデータをまとめてある)。450nm〜1700nmのスペクトル光データを得た。
【0082】
硬化した薄膜の安定性は、50℃の水酸化カリウム(KOH)10重量パーセント溶液で5分間に亘りエッチング試験を行うことで評価した。全ての薄膜がKOH溶液に対して良好なエッチング耐性を有しており、薄膜の光学特性又はモフォロジのいかなる変化も見られなかった。基板、例えばp型ケイ素、ガラス及びプラスチック(ポリプロピレン、PMMA、ポリカーボネート)に対する接着性も良好であることが確かめられた。
【0083】
表2は、上述した金属酸化物ポリマー(実施例2〜4)の屈折率及びk値をまとめたものである。
【0084】
【表2】

【0085】
代替的材料及び処理方法
上述したように、これらのハイブリッド材料の合成に他の(四塩化チタン以外の)金属塩及びアルコキシド前駆体の双方又はいずれか一方を使用することができる。更に、(メタアクリル酸の以外の)他の有機前駆体を選択して合成を行い、得られるハイブリッド材料の特性を変更させることもできる。
【0086】
例えば金属前駆体分子として四塩化スズを用いた場合、極めて類似した光学薄膜の形成挙動が観察された。0.1molの塩化スズ(IV)を、上述した合成方法を用いて0.1molのメタクリル酸と反応させた。合成された酸化スズのハイブリッドポリマーを、スピンコーティング処理(3000rpm、30秒)を用いて水相から堆積させた。この薄膜を、200℃で4時間に亘りアニール処理した。薄膜は85nmの厚さとなり、約632.8nm域における屈折率は約2.0であった。これらの薄膜はある程度の導電性を有し、その光学特性及び導電率は、酸化アンチモンのような他の金属酸化物成分をマトリクスに共ドーピングすることで調整することができる。
【0087】
上述したように、これら材料は光学的又は電気的被膜として使用しうるだけでなく、例えば、リソグラフ処理、エンボス処理、ロールツーロール印刷及びグラビア印刷を用いることによりパターン化することもできる。より具体的には、炭素の二重結合が存在する材料を、UV又は遠UV光に露光させて、それにより炭素二重結合を反応及び架橋させ、露光した部分が有機溶剤(イソプロパノールのような現像剤)に溶解しないようにすることができる。従って、この材料はリソグラフ処理ではネガ型レジストとして作用する。
【0088】
これら材料の適用可能な用途
簡単に前述したように、本発明の材料には多くの関連する新規な用途がある。以下の例が挙げられる。
A.光学的及び電気的被膜
B.高誘電率(高k値)ゲート酸化膜及び高k値の中間誘電体層
C.ARC(反射防止)被膜
D.エッチング及びCMP停止層
E.保護層及び封止層(OLEDその他)
F.有機太陽電池
G.光学薄膜フィルタ
H.光回析格子及びハイブリッド薄膜回析格子構造体
I.高屈折率の耐摩耗性被膜
【0089】
これらの用途を、添付の図面を参照してより詳細に説明する。図面中、種々の基板を示すのに参照番号100、200、300、400、500、525、600、800及び900を使用する。
【0090】
リソグラフ処理の例
ネガ式フォトリソグラフ処理:
金属酸化物前駆体を、アクリレートのような放射感応性の炭素二重結合を含む有機部分により修飾すると、有機化合物の光架橋反応により材料を重合させることができる。
【0091】
図4は、ネガ調の材料の代表的なリソグラフ処理の種々のステップを示す。
【0092】
基板(ウェーハ)100上に、光学材料を形成する薄膜層105をスピンオン処理により堆積させることができる。その後、この薄膜の表面にフォトマスク110を整列/配置する。このフォトマスク層には開口が設けられており、この開口により薄膜層を露出して、代表的には、紫外線(UV)、遠UV又はe−放射のような強い放射により重合を行わしめ連続金属酸化物骨格鎖(図4の「露光」)が最終的に形成されるようになっている。従って、複雑なマスキング(一般的にはフォトレジストにより行う)及びエッチングステップを行う必要なく、光マスク110を介して単一のリソグラフステップでウェーハ面上の材料に直接的に光学的及び光電子的構造体105が形成される。
【0093】
その後、露光されなかった領域は、化学現像ステップ(図4の「現像」)中に除去される。その理由は、これらの領域は、露光させて光重合させた領域より現像剤に対して溶解しやすいためである。従って、この材料はネガ調の材料として機能すると言える。
【0094】
現像ステップに用いる代表的な現像化学製品には、2−プロパノール、アセトン、メチルイソブチルケトン又は希薄酸及び塩基のような有機溶剤或いはこれら化合物の種々の組合せがある。現像処理後、代表的には高温でサンプルをアニール処理する(図4の「ポストベーク」)ことによりパターン化した構造体を完成させる。このアニール処理においては、アニール温度を有機高分子化合物の分解温度より高くすれば、既に形成された有機高分子マトリクスを「バーンオフ」させることもできる。この「バーンオフ」アニール処理は、酸素含有雰囲気で行うことにより、完全に化学量論的な金属酸化物マトリクスが形成されうるようにするのが好ましい。しかし、N2O、CO及びCO2のような他の酸化性ガスを利用することもできる。
【0095】
A.光学的及び電気的被膜
上述したところに基づいて、本発明の組成物から形成された薄膜は、ガラス、ケイ素、プラスチック、セラミック及び(例えばFR4である印刷回路基板材料のような)ラミネート体といった種々の基板表面上に光学的又は電気的薄膜被膜105として使用することができる。これら薄膜は、UV及びDUV波長域(即ち400nm未満)での反射防止特性及び比較的高い吸収特性といった光学的機能を有するか、熱若しくは電気伝導性、高い絶縁破壊強さ及び高い誘電率並びにこれらの組合せといった熱的及び電気的機能の双方又はいずれか一方を有するか、或いはこれらの双方を有する。ある種の金属酸化物組成物によれば材料は伝導性ともなる。これは、金属酸化物マトリクスを形成するのにスズ(Sn)を使用した場合に特に当てはまる。
【0096】
被膜の膜厚は、材料の組成、希釈率及び堆積方法並びに処理温度に応じて1nm〜2.0μmの範囲で変化させることができる。
【0097】
材料は、合成されると、金属酸化物と有機官能基とを含むようになる。処理温度により、薄膜を非晶質にすることも、結晶質にすることもできる。処理温度を低くすると、非晶質の材料及び薄膜中に有機官能基が残る。アニール温度を上昇させると(約300〜350℃より高い温度)、材料の薄膜から有機残基がバーンオフされ、二酸化金属のみが薄膜に残るが、材料はなお非晶質のままとなる。アニール温度を更に上昇させると(代表的には600℃より高い温度)、材料は結晶化を始め、合成に使用した金属酸化物に関して結晶構造特性を構成するようになる。
【0098】
この材料は、格子構造体のような光学微細構造体上の高屈折率の上塗り被膜として使用して、格子回折特性を向上させることもできる。この被膜は同時に耐摩耗性被膜としても作用するため、この材料により光学微細構造体の損傷を防止することができる。更に、薄膜は、平面光ガイド(すなわち二次元導波路)、又はパターン化した光ガイド(すなわちチャネル型導波路)として使用することができる。
【0099】
光ガイド部材において低屈折率の材料と高屈折率の材料とを組み合わせて使用すると、高屈折率の光ガイドと周囲のクラッディング材料との間の屈折率差が大きくなるため、この光ガイド部材の寸法を著しく小さくしたり、非常に高い曲げ半径を利用したりすることかできるという利点がある。
【0100】
これら材料は液相から被覆又は堆積させることができため、ファイバ上又はファイバの先端や、プラスチック薄膜のような可撓性/湾曲表面上といった種々の形状に対して、様々な堆積方法により光学的及び電気的被膜を形成することができる。
【0101】
B.高誘電率(高k値)材料
次世代トランジスタでは、二酸化ケイ素のゲート誘電体の薄肉化が間断なく行われてきたたため電流漏洩の制御がますます困難になっており、二酸化ケイ素に代わりうる材料を用いるのが有利とされている。「高k値」として知られるより厚肉のこの種の材料は、高性能な装置において一般的に用いられる二酸化ケイ素技術を置き換えるであろうものである。「高k値」とは、材料がどの程度電荷を保持しうるかを示す測定値である誘電率が高いことを表している。異なる材料では、電荷を保持する能力が異なる。空気は誘電率に対する基準点であり、「k」値は1になる。高k値の材料、例えば二酸化ハフニウム(HfO2)や、二酸化ジルコニウム(ZrO2)や、二酸化チタン(TiO2)は、当初から二酸化ケイ素のk値である3.9を越える誘電率「k」を有する。誘電率はトランジスタ性能にも直接関係する。k値が高くなるほど、トランジスタのキャパシタンスが大きくなり、このことは、トランジスタが「オン」及び「オフ」状態間のスイッチを適切に行うことができ、「オフ」状態では極めて低い電流しか流れないが、ターンオンすると極めて高い電流が流れることを意味する。代表的には、これらの高k値材料の厚さは約数nm〜約10nmまでの範囲とするが、二酸化ケイ素を使用する場合には、厚さを90nmの技術ノード寸法において1nmもの薄さにする必要があり、その処理及び制御が困難であることは明らかである。
【0102】
本発明により得られる材料を用いることで、高k値材料を、種々の表面及び微細構造上に有利な低い処理温度で簡単に被着させることができ、また直接リソグラフパターン化処理により簡単にパターン化することができる。
【0103】
従来、高k値の材料は、高価な機器や複雑なマスキング及びエッチング処理が必要なCVD(化学気相堆積)及びALD(原子層堆積)により処理されてきた。
【0104】
C.ARC(反射防止)被膜
図5及び6は、本発明の材料を、装置構造体の処理中に及び完成した装置構造体上に適用して反射防止膜(ARC)として薄膜の形態にした状態を示す。より具体的には、図5は、いかにしてリソグラフ処理中に材料をBARC及びTARCとして被着させうるかを示しており、図6は、いかにして材料を光学部材表面のARC層として被着させるかを示している。
【0105】
この場合、材料は、リソグラフ処理において使用される底部反射防止205及び頂部反射防止215の双方又はいずれか一方として被着させることができる。図5の参照番号210は、レジスト材料の薄膜を表している。
【0106】
材料を、反射防止被膜層として機能させるために光学構造体305の上部310に用いることもできる。所望の膜厚が得られるように処理を調整することができる。ARC層である膜310の厚さは、各構造体及び使用する波長に対して最適化する必要がある。
【0107】
D.エッチング及びCMP停止層
この材料は、リソグラフ処理における湿式化学及びドライエッチング停止層として被着させることもできる。この材料は、化学機械研摩処理に使用することもできる。
【0108】
E.保護層及び封止層(OLEDその他)
この材料は、例えば有機発光装置の保護被膜として使用することもできる。図7は、この材料を、基板400上に堆積されたアノード層405、少なくとも1層の有機層410及びカソード層415を具える3層構造を有する有機発光装置の上塗り被膜/封止部420として被着させうる態様を示したものである。
【0109】
F.有機太陽電池及び能動ウィンドウ
この新規な材料は、例えばチタン−染料−感応部(Titanium-Dye-Sensitized)(TDS)電池として既知の太陽電池の効率増大層又は太陽エネルギー能動層510(図8参照)として使用することもできる。
【0110】
TDS電池は、導電被膜を具える2つの透明ガラスシート500、525と、これらの間に挟まれた電解質505、510、515、520とを使用しており、これによりウインドウ型太陽電池パネルとして使用しうるようになっている。参照番号505はアノード層を表わし、参照番号515は有機層を表わし、参照番号520はカソード層を表わす。図8は、この材料を、アノード505及び有機材料515間の効率増大層510として使用しうる態様を示している。現在のところTDSは、商業的には約10%の効率で電気を発生するものであり、1平方メートルあたり約50ワットを発生する。TDSをウインドウとして使用すると、建物内へのヒートゲインが低減されると共に更に建物に電力を供給しうるようにもなる。この種の電池の魅力の一部は、低コスト化しうること、構造が比較的簡単なことにある。これはアナターゼ結晶構造を有しており、白色〜半透明である。電極は導電被膜で挟まれたガラスシートにより設けられ、光に対する露出もこれにより行われる。光入射面上では二酸化チタンが合成ルテニウムビピリジルを主成分とする染料により処理されており、ヨウ化物/三ヨウ化物の電解質と関連して働き他方の導電表面に対する電位を発生する。「背面」層は、SnO2層上に炭素などの触媒被膜を具える。光励起された染料がTiO2層を介して電子を放出し、これがSnO2表面に向かい外部回路へ流れる。このSnO2層は、供与体として作用する酸素空孔の存在のため導電性である。ヨウ化物電解質において、ヨウ化物/三ヨウ化物は染料の部分で酸化され、反対側にある触媒被覆SnO2電極で再生され、それにより電解質のバランスが維持され回路が完成する。
【0111】
この種の太陽電池は、特には低い光レベルにおいて代表的なPV「半導体」型よりも優れた性能を発揮する。その理由は、この種の太陽電池では、PV電池の効率に深刻な影響を及ぼす半導体内の電子−正孔再結合の欠点がないためである。
【0112】
G.光学薄膜フィルタ
これら材料は、スタック薄膜フィルタ構造に適用することができる。図9は、薄膜フィルタの実施例を示す。この薄膜フィルタの製造には2種の材料が必要とされる。即ち、高屈折率材料605(本発明による得られる材料)と、低屈折率材料610(例えばSiO2、メチルシルセスキオキサン及びフッ化物ポリマー)とである。
【0113】
図10a及び10bは、スタックフィルタを加熱することにより変性させうる方法を示す。これら図においては、次の参照番号を使用している。
600 基板
605 高屈折率層
610 低屈折率数層
700 底部電極
705 頂部電極
710 導体パッド
【0114】
図11は、この薄膜フィルタの考え方を利用した他の例を示す。図10a及び10bに示したように、この構造体は熱的に調整することもできる。参照番号805は本発明による高屈折率層を表しており、参照番号810及び815は低屈折率層及び厚肉材料層を表している。
【0115】
図12は、基板900上に堆積させた高屈折率層905、低屈折率層910、アノード915、有機層920及び反射性カソード925を有するOLED(図8参照)用の共振空胴を示すものである。
【0116】
H.エンボス処理、ホログラフリソグラフ処理及びナノ刷り込み処理による光回析格子及びハイブリッド薄膜回析格子構造体
被覆した薄膜は、完全には硬化させてない状態では、エンボス(熱エンボス及びUVエンボスが適用可能)、ホログラフリソグラフ処理又はナノ刷り込み処理により極めて微細な解像度でパターン化することができる。薄膜の構造化は、エンボス及びナノ刷り込み処理中に、パターン化したスタンプ又はシムを薄膜表面に機械的にプレスして、スタンプ又はシムのネガ像を薄膜に複写することにより行う。その後、機械的スタンプ/シムがまだ所定位置に存在する間に又は機械的スタンプ/シムを取外した直後に、複写された構造を、熱及びUV処理の双方又はいずれか一方により「フリーズ」させる。複写ステップを完了した後で、溶剤洗浄といった追加処置を行うことができる。ホログラフリソグラフ処理によるパターン化のためには、薄膜に、リソグラフ処理中に反応、即ち架橋する光架橋性成分を含ませる必要がある。ホログラフリソグラフ処理の後、代表的には、薄膜の露光されてない領域を除去するために追加の化学処理を用いる必要がある。
【0117】
I.高屈折率の耐摩耗性被膜
金属酸化物骨格鎖(例えばTi−O−Ti)により、極めて丈夫で堅固な薄膜構造体が得られる。その一方で、本発明において説明した材料の有機物の特性により、プラスチック表面に対する優れた接着性が得られる。比較的壊れやすいプラスチック表面上の薄膜により耐摩耗性挙動として知られる特性を達成するには、堅さ、丈夫さ、良好な接着性が要求される。また、この耐摩耗性薄膜は一般に熱的に不安定な基板上に堆積させるため、処理温度及びアニール温度を低くする必要があるが、このことは本発明で説明した用途において得られる重要な成果の一つである。この耐摩耗性薄膜は、高屈折率も有するようにして、保護膜として用いるのと同時に反射防止膜としても使用しうるようにするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、150℃及び350℃でアニール処理したチタン酸化物薄膜の吸光係数を線図的に示すグラフである。
【図2】図2は、150℃(実線)及び350℃(破線)でアニール処理したチタン酸化物薄膜の屈折率を波長の関数として線図的に示すグラフである。
【図3】図3a及び3bは、堆積した薄膜の表面微細構造の測定結果を示しており、図3aは150℃で処理した薄膜の3D画像を示しており、図3bは350℃で処理した薄膜の3D画像を示す。
【図4】図4は、ネガ調の材料のリソグラフ処理の種々のステップを示す線図である。
【図5】図5は、リソグラフ処理により形成したBARC層又はTARC層を有するリソグラフ多層構造体を示す側方断面図である。
【図6】図6は、ARC層を有する光学部材の構造を示す側方断面図である。
【図7】図7は、本発明の材料の上塗り被膜/封止部を有する有機発光構造体を示す側方断面図である。
【図8】図8は、アノード及び有機材料間に効率増大層として形成された材料層を有する多層太陽電池を示す断面図である。
【図9】図9は、薄膜フィルタの例を示す側方断面図である。
【図10】図10a及び10bは、それぞれ、スタックフィルタ構造体を示す側方側面図及び頂面図である。
【図11】図11は、薄膜フィルタの他の例の構造を示す側方断面図である。
【図12】図12は、OLED用の多層共振空胴の構造を示す側方断面図である。
【図13】図13は、金属酸化物ハイブリッドポリマーの合成を示す線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上への薄膜の形成方法であって、
−この基板の表面に、複合金属酸化物前駆体を重合可能な中間生成物に変換してこれら液相に溶解させることにより得られた組成物を被着させるステップと、
−この表面上に薄膜層を形成するステップと、
−溶液中の溶剤を除去するステップと、
−中間生成物を重合させて架橋した薄膜にするステップと
を有する薄膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の薄膜の形成方法において、
前記複合金酸化物前駆体の組成物は、
式Iの金属ハロゲン化物と、
MeXm (I)
(式I中、Meは金属を表し、Xはハロゲン化物を表し、mは金属の価数を表している)
式IIの金属アルコキシドと
MeOR1m (II)
(式II中、R1は、線鎖若しくは分枝、脂肪族又は脂環式のアルキル基であって、ヒドロキシ、カルボキシ、無水物、オキソ、ニトロ及びアミド基からなる群から選択した1〜3の置換基により随意的に置換されたものであり、Me及びmは上記したものと同じ意味である)
からなる群から選択した少なくとも2種の金属酸化物前駆体を有するか、又は
この複合金酸化物前駆体の組成物は、式IIIの化合物から選択した少なくとも1種の化合物を有するか、又は
nMeOR1p (III)
(式III中で、Me、X及びR1は上記したものと同じ意味であり、nは0〜mの整数であり、pは0〜mの整数であり、n+pの合計はmに等しく、mは上記したものと同じ意味である)
この複合金属酸化物前駆体の組成物は、式IおよびIIの少なくとも一方の化合物の混合物を、少なくとも1種の式IIIの化合物と共に有する
薄膜の形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薄膜の形成方法において、
前記複合金酸化物前駆体組成物のうちの少なくとも1つの金属酸化物前駆体を、この前駆体の金属元素と反応しうる少なくとも1つの官能基を具える有機化合物と反応させて、液相に溶解する重合可能な中間生成物を生成する薄膜の形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
前記中間生成物を、水性液相から処理する薄膜の形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
前記中間生成物を液相から処理して1回の堆積工程により1nm〜1000nmの膜厚の薄膜を生成する薄膜の形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の薄膜の形成方法において、
クラックによる薄膜欠陥を防止するために、前記中間生成物を500℃を越える温度で処理して、500nmより薄い厚さの薄膜を生成する薄膜の形成方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
前記中間生成物を処理して高屈折率の被膜を得る薄膜の形成方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において
前記薄膜層を80〜350℃の温度でアニール処理して、少なくとも有機化合物の残基を含む金属酸化物膜を形成する薄膜の形成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の薄膜の形成方法において、
前記中間生成物を、約150℃の温度で処理して薄膜に1.9以上の屈折率を付与するか、約350℃で処理して薄膜に2.0以上の屈折率を付与する薄膜の形成方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
前記有機化合物が、放射反応性の炭素二重結合を有しており、光架橋反応により中間生成物を重合させうるようになっている薄膜の形成方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
この形成方法は、ガラス、プラスチック、紙、セラミック及びラミネート体からなる群から選択した基板上に薄膜を形成するステップを有する薄膜の形成方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
この形成方法は、基板上に光学的又は電気的薄膜被膜を形成するステップを有する薄膜の形成方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
前記薄膜により、格子構造体上に高屈折率薄膜を形成するか、又はこの薄膜を格子構造体上の保護層として作用させる薄膜の形成方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
この形成方法は、高誘電率の薄膜を形成するステップを有する薄膜の形成方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
この形成方法は、反射防止被膜を形成するステップを有する薄膜の形成方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
この形成方法は、リソグラフ処理における化学及びドライエッチング停止層を形成するステップを有する薄膜の形成方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
この形成方法は、有機発光装置の保護被膜を形成するステップを有している薄膜の形成方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
この形成方法は、太陽電池の効率増大層を形成するステップを有する薄膜の形成方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
この形成方法は、光学薄膜フィルタの高屈折率材料を形成するステップを有する薄膜の形成方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
この形成方法は、前記薄膜を、エンボス処理、ホログラフリソグラフ処理及びナノ刷り込み処理することにより光回析格子及びハイブリッド薄膜回析格子を形成するステップを有する薄膜の形成方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
この形成方法は、高屈折率の耐摩耗性被膜を形成するステップを有している薄膜の形成方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
前記薄膜は、スピンオン堆積により前記基板上に堆積させる薄膜の形成方法。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
中間生成物は、熱を加えながら、任意には溶剤を蒸発させながら重合させることができるものとする薄膜の形成方法。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の薄膜の形成方法において、
前記中間生成物は重合させて、5000グラム/モル〜250000グラム/モルの分子量を有する架橋ポリマーを重合形成しうるものである薄膜の形成方法。
【請求項25】
金属酸化物前駆体の組成物の形成方法であって、
−少なくとも2つの出発反応物であって、これらのうちの1つが金属酸化物前駆体を有する当該出発反応物を調製するステップと、
−これら反応物を互いに反応させて、修飾金属酸化物前駆体を含む反応生成物を形成するステップと、
−この反応生成物を回収するステップと
−この反応生成物を、有機化合物からなる群から選択した化合物、水及び水溶液と反応させ、この反応生成物を液相処理に適した中間生成物に変換するステップと
を有する形成方法。
【請求項26】
請求項25に記載の形成方法において、
前記反応物は、異なる又は同じ金属元素を有する金属酸化物前駆体を有しており、前記金属酸化物前駆体は、ハロゲン化物若しくはアルコキシド又はリガンドとしてハロゲン化物及びアルコキシドの双方を有する複合前駆体により形成されるものである形成方法。
【請求項27】
請求項25又は26に記載の形成方法において、
前記反応を不活性溶剤中で実行させ、反応後に随意的にこの溶剤を除去する形成方法。
【請求項28】
請求項25に記載の形成方法において、
前記反応物は、少なくとも1つの金属元素前駆体及び反応性溶剤を有する形成方法。
【請求項29】
請求項25〜28のいずれか一項に記載の形成方法において、
前記反応生成物を有機化合物と反応させて種々の錯体を形成するか、又は水又は酸性水により金属酸化物前駆体の加水分解及び縮合を引き起こさせる形成方法。
【請求項30】
請求項25〜29のいずれか一項に記載の形成方法において、
前記反応生成物を中和させる形成方法。
【請求項31】
請求項25〜30のいずれか一項に記載の形成方法において、
いかなる酸性副生成物も中和して除去する形成方法。
【請求項32】
請求項25〜31のいずれか一項に記載の形成方法において、
中間反応生成物を、例えば加圧ろ過又は循環ろ過を用いて濾過する形成方法。
【請求項33】
請求項25〜32のいずれか一項に記載の形成方法において、
前記反応生成物を水溶液において回収する形成方法。
【請求項34】
請求項25〜33のいずれか一項に記載の形成方法において、
前記反応生成物を、有機溶剤により形成した溶液で回収し、溶剤置換により水相に溶解させる形成方法。
【請求項35】
請求項25〜34のいずれか一項に記載の形成方法において、
前記反応生成物を水溶液で回収し、これを水より高い沸点の有機溶剤に溶剤置換により溶解させる形成方法。
【請求項36】
請求項35に記載の形成方法において、
前記反応生成物をガンマブチロラクトンのような環状エーテルに溶解させる形成方法。
【請求項37】
請求項25〜36のいずれか一項に記載の形成方法において、
前記有機化合物は、金属酸化物前駆体が完全に架橋してしまい水性又は有機溶剤に溶解し得ないポリマーマトリクスを形成することのない程度にこの金属酸化物前駆体を安定させうるものである形成方法。
【請求項38】
請求項25〜37のいずれか一項に記載の形成方法において、
前記有機化合物を、有機酸、酸無水物、アルコキシド、ケトン、ベータ−ジケトン、アセチルアセトン、ベンジルアセトン、アリール酸化物、ベータ−ケト−エステル、アルカノールアミン、グリコール、オキシム、アルキルヒドロキシルアミン、ベータ−ケトアミン、シフト−ベース、チオール及びアルデヒドからなる群から選択する形成方法。
【請求項39】
請求項25〜38のいずれか一項に記載の形成方法において、
前記有機化合物は炭素二重結合を有する形成方法。
【請求項40】
請求項39に記載の形成方法において、
前記有機化合物を、アクリル酸、(アルカ)アクリル酸、酢酸、トリフルオロ酢酸及びベータ−ジケトンからなる群から選択する形成方法。
【請求項41】
請求項25〜40のいずれか一項に記載の形成方法において、
前記金属酸化物前駆体及び前記有機化合物間のモル比は、約5:1〜1:5とするのが好ましい約10:1〜1:10である形成方法。
【請求項42】
請求項25〜41のいずれか一項に記載の形成方法において、
この形成方法は、単一の金属酸化物前駆体の組成物又は複合複数金属酸化物前駆体の組成物を調製するステップを有する形成方法。
【請求項43】
基板上に被着させてその基板上に金属酸化膜を形成させうる薄膜成形組成物の生成方法であって、
−金属元素を具える金属酸化物材料の前駆体を得るステップと、
−この前駆体の金属元素と反応しうる少なくとも1つの官能基を有する有機化合物を得るステップと、
−前記前駆体を前記有機化合物と反応させて反応生成物を得るステップと、
−この反応生成物を回収するステップと
を有しており、
前記前駆体は、
式Iの金属ハロゲン化物を2種以上有するか、
MeXm (I)
(式I中でMeは金属を表し、Xはハロゲン化物を表し、mは金属の価数を表している)
式IIの金属アルコキシドを2種以上有するか、
MeOR1m (II)
(式II中、R1は、線鎖若しくは分枝、脂肪族又は脂環式のアルキル基であって、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、ニトロ及びアミド基からなる群から選択した1〜3の置換基により随意的に置換されたものであり、Me及びmは上記したものと同じ意味である)
異なる金属元素Meを有する前記ハロゲン化物若しくはアルコキシドを有するか、
式I若しくはIIの金属酸化物ハロゲン化物/アルコキシドの混合物を有するか、或いは
それ自体に2種の異なる金属原子を含む金属ハロゲン化物又は金属アルコキシドを有する
形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−503331(P2008−503331A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515975(P2007−515975)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/FI2005/000280
【国際公開番号】WO2005/123595
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506415126)
【Fターム(参考)】