ハイブリッド静電チャック
デバイス(200)を保持するための静電チャック(230)は、チャック本体(244)、クーロン電極(246)、ジョンソン-ラーベック(J-R)電極(248)、及び制御系(224)を含む。チャック本体(244)は、デバイス(200)と係合する吸着面(250)を含み、チャック本体(244)は、比較的高抵抗を有する誘電体で構成される。J-R電極(248)は、吸着面(250)から離れて配置される。クーロン電極(246)も、吸着面(250)から離れて配置される。制御系(224)は、デバイス(200)を吸着面(250)に向かって引き寄せるJ-R力を発生するために、J-R電極(248)に第一電圧を選択的に印加し、さらにデバイス(200)を吸着面(250)に向かって引き寄せるクーロン力を発生するために、クーロン電極(246)に第二電圧を選択的に印加する。この構成で、J-R力とクーロン力の両方が同時に、吸着面(250)に対してデバイス(200)を引き寄せるために使用される。その結果、静電チャック(230)は、デバイス(200)の非平坦さを低減し、及び/又はデバイス(200)と吸着面(250)との間に位置するパーティクルをクラッシュすることが、より可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年1月5日に出願された米国特許出願第12/652、669号に基づく優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体処理において、レチクルの像を半導体ウェハに転写するために半導体処理用の露光装置が使用される。通常、露光装置は、照明源、レチクルを保持し位置決めするレチクルステージ装置、光学装置、及び半導体ウェハを保持し位置決めするウェハステージ装置を有する。
【0003】
近年、ウェハへの転写トランジスタ数を増加させるために、極紫外光源を使用する極紫外リソグラフィ(EUVL)システムが提案されている。極紫外光は吸収を避けるために真空中を伝搬する必要がある。
【0004】
これらのシステムにおけるレチクルは反射型であり、レチクルを支持し、かつレチクルの非平坦さを除くために静電チャックを用いる必要がある。さらに、レチクルとチャックの間のパーティクルにより、吸着されたレチクルがさらなる非平坦さを引き起こす可能性がある。現在のEUVLの基準は、吸着されたレチクルがPV値(peak−to−valley)で50nm未満を超えないような表面平坦度を持つように規定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
残念ながら、既存の静電チャックは、レチクルとチャックの間に生じるパーティクルを十分に平坦化するための、十分な力を生じることができない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はデバイスを保持するための静電チャックに関する。静電チャックはチャック本体、クーロン電極、ジョンソン−ラーベック(J−R)電極、及び制御系を含む。チャック本体は、デバイスと係合する吸着面を含み、吸着面は比較的高抵抗を有する誘電体で構成される。J―R電極は、吸着面から空間的に離れて配置される。クーロン電極も、吸着面から空間的に離れて配置される。
【0007】
ここで、制御系は、デバイスを吸着面に向かって引き寄せるクーロン力を発生するために、クーロン電極に選択的に第一電圧を印加し、かつデバイスを吸着面に押し付けるJ−R力を発生するために、J―R電極に選択的に第二電圧を印加する。この構成により、J−R力とクーロン力の両方が、デバイスを吸着面に引き寄せるために同時に使用される。その結果、静電チャックは、デバイスの非平坦さを低減する、及び/又はデバイスとチャックの間に位置するパーティクルをクラッシュ、又は平坦にすることができる。従って、静電チャックは、高品質で高密度のウェハを製造するための露光装置に用いることができる。
【0008】
一実施形態において、吸着面は、実質的に組成において均一(均質)である。その結果、吸着面をより厳しい精度で作製することができ、吸着面は、同じ比率で膨張、収縮することになる。吸着面を正確に製造することは、デバイスを平坦な状態に保つために非常に重要である。
【0009】
ある実施形態において、クーロン電極は、J−R電極に比べて吸着面により近い。ここで、電極ギャップは、クーロン電極を吸着面から分離する。例えば、電極ギャップは、約100μmより小さくすることができる。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、静電チャックに加えて照明源を備えた露光装置に関する。さらに、制御系は、デバイスの吸着初期にクーロン電極に第一電圧を、J−R電極に第二電圧を印加する。その後、制御系は、照明源の動作中(例えば、露光処理中)には、クーロン電極に第一電圧を印加しない。従って、吸着初期の後には、J−R電極のみが、デバイスを保持するのに利用される。クーロン電極は、露光処理中に使用されないので、チャックを動作するのに必要とされる電力が低減され、チャックにより発生する熱が低減される。
【0011】
また、本発明は、デバイスを保持する方法に関する。その方法は、(1)高抵抗の誘電体で構成され、デバイスと係合する吸着面を有するチャック本体を供給する工程と、(2)吸着面から離れたJ−R電極を供給する工程と、(3)吸着面から離れたクーロン電極を供給する工程と、(4)デバイスを吸着面に向けて引き寄せるクーロン力を発生するために、制御系によりクーロン電極に選択的に第一電圧を印加する工程と、(5)デバイスを吸着面に押し付けるJ−R力を発生するために、J−R電極に選択的に第二電圧を印加する工程と、を含むことができる。
【0012】
さらに、本発明はウェハや、ウェハ上に物体を製造するための方法にも関する。
【0013】
本発明の特徴は、発明内容はもちろん、その構造と動作のいずれも、同種の特徴が同種の部分として言及された、添付の図面及び以下の説明から最良に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の特徴を有する、露光装置の模式図である。
【図2A】図2Aは、本発明の特徴を有する、デバイスの斜視図、チャックの第一の実施形態、及び制御系の一部の簡略図である。
【図2B】図2Bは、図2Aのチャックの簡略化した上面図である。
【図2C】図2Cは、図2Aのチャックの簡略化した下面図である。
【図2D】図2Dは、図2Aのデバイスとチャックの簡略化した側面図である。
【図2E】図2Eは、図2Dの2E−2E線における、デバイスとチャックの簡略化した断面図、及び制御系の一部の簡略図である。
【図2F】図2Fは、図2Dの2F線における、デバイスの一部とチャックの一部の拡大図である。
【図3】図3A−3Eは、チャックの実施形態の簡略図であり、デバイスのロード、吸着、露光、吸着解除、及びアンロードのサイクル中に、デバイス、クーロン電極、及びJ−R電極の電位を制御するための、スイッチの使用方法を説明したものである。
【図4A】図4Aは、チャックのJ―R電極の活性化後の、図2Eの4A線におけるデバイスの一部とチャックの一部の簡略化した拡大図と、制御系の一部の簡略化した図である。
【図4B】図4Bは、チャックのJ−R電極の活性化に加えてクーロン電極の活性化後の、図4Aのデバイスの一部とチャックの一部の簡略化した拡大図と、制御系の一部の簡略化した図である。
【図4C】図4Cは、J−R電極はまだ活性化された状態で、クーロン電極は非活性化された後の、図4Bのデバイスの一部とチャックの一部の簡略化した拡大図と、制御系の一部の簡略図である。
【図5A】図5Aは、チャックのJ−R電極の活性化後に、図2Eの5A線におけるデバイスの一部とチャックの一部の簡略化した拡大図と、制御系の一部の簡略図である。
【図5B】図5Bは、チャックのJ−R電極の活性化に加えてクーロン電極の活性化後の、図5Aのデバイスの一部とチャックの一部の簡略化した拡大図と、制御系の一部の簡略図である。
【図5C】図5Cは、J−R電極はまだ活性化された状態で、クーロン電極は非活性化された後の、図5Bのデバイスの一部とチャックの一部の簡略化した拡大図と、制御系の一部の簡略図である。
【図6】図6は、J−R電極とクーロン電極の非接触ギャップに対する圧力を示したグラフである。
【図7A】図7Aは、デバイス、及びチャックの別の実施形態の簡略化した側面図である。
【図7B】図7Bは、図7Aのデバイスとチャックの簡略化した断面図である。
【図8】図8は、デバイス、及びチャックの別の実施形態の簡略化した側面図である。
【図9】図9は、デバイス、及びチャックのさらに別の実施形態の簡略化した側面図である。
【図10】図10はデバイス、及びチャックのさらに別の実施形態の簡略化した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、精密装置、すなわち本発明の特徴を有する露光装置10の模式図である。露光装置10は、装置フレーム12、照明系14(照射装置)、光学装置16、レチクルステージ装置18、ウェハステージ装置20、測定系22、及び制御系24を含む。露光装置10の各部品の構成は、露光装置10の設計要求に適合するように変更可能である。
【0016】
図面は、X軸と、X軸に直交するY軸と、X軸とY軸に直交するZ軸を示す方位系を含む。なお、これらの軸は、第一、第二、及び第三軸と呼ばれることもある。
【0017】
露光装置10は、特に、集積回路のパターン(不図示)をレチクル26から半導体ウェハ28に転写するリソグラフィ装置として有用である。
【0018】
全体として、ある実施形態において、レチクルステージ装置18は、繰り返し可能で、かつ改良された平坦さを持ってレチクル26を保持するハイブリッド静電チャック30を含む。代替的に、又は追加的に、ウェハステージ装置20は、繰り返し可能で、かつ改良された平坦さを持って、ウェハ28を保持するハイブリッド静電チャックを含むことができる。このことにより、露光装置10はより高品質で、より高密度のウェハを製造することが可能となる。
【0019】
リソグラフィ装置には多くの異なった型がある。例えば、露光装置10は、スキャン型フォトリソグラフィシステムとして用いることができる。代替的に、露光装置10は、ステップアンドリピート型フォトリソグラフィシステムとして用いることができる。しかしながら、ここで提供される露光装置10の使用は、半導体製造のためのフォトリソグラフィシステムに限定されるものではない。
【0020】
装置フレーム12は、剛体で、露光装置10の部品を支持する。図1に示された装置フレーム12は、搭載ベース32、例えば、地面、台座、建物の床や、この他の支持構造物の上方で、レチクルステージ装置18、光学装置16、及び照明系14を支持する。
【0021】
照明系14は、照明源34と照明光学装置36を含む。照明源34は、光エネルギー束(照射)を放射する。照明光学装置36は、照明源34からレチクル26に光エネルギー束を導く。光束は、レチクル26の異なる部分を選択的に照射し、ウェハ28を露光する。図1において、レチクル26は反射性であり、エネルギー束は、レチクル26の下方から導かれる。
【0022】
静電チャック30は、光束の光路が真空中であることを要求する極紫外リソグラフィ(EUVL)において、特に有用である。EUVLシステムにおいて、照射源34は、約13ナノメートルの波長を持つ光を発生する極紫外照明系である。代替的に、チャック30は、リソグラフィシステムや他のEUVLシステムに用いることができる。代替的な実施形態の例としては、照明源34は、g線源(436nm)、i線源(365nm)、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、又はF2レーザ(157nm)とすることができる。これらの代替的な実施形態において、使用されるレチクルが反射性よりはむしろ透過性であるため、ハイブリッドチャックはパターンされた基板とともに用いることに制限される。
【0023】
EUVLシステムでは、照明光学装置36の構成要素は反射型である。代替的に、非EUVLシステムでは、照明光学装置36の構成要素はレンズとすることができる。
【0024】
光学装置16は、レチクル26からウェハ28に光を投影、及び/又は焦点を合わせる。EUVLシステムでは、光学装置16の構成要素は反射型である。代替的に、非EUVLシステムでは、光学装置16の構成要素はレンズとすることができる。
【0025】
レチクルステージ装置18は、光学装置16及びウェハ28に対してレチクル26を保持し、位置決めする。同様に、ウェハステージ装置20は、レチクル26の照射された部分の投影された像に対して、ウェハ28を保持し位置決めする。各々のステージ装置18、20の構成は、ここで提示された技術に従って様々に変更可能である。一つの実施形態において、各々のステージ装置18、20はチャック30、チャック30を保持するステージ38、ステージ38の動作を導くステージ基部40、及びチャック30とチャック30によって保持されるデバイスを動かすステージ動作装置42を含む。これら各々の部品の大きさ、形、及びデザインは、露光装置10の動作要求に適合するように変更可能である。
【0026】
測定系22は、光学装置16や他の参照物に対する、レチクル26とウェハ28の動作を測定する。この情報により、制御系24は、レチクル26とウェハステージ装置20を精密に位置決めし、また、ウェハ28を精密に位置決めするために、レチクルステージ装置18を制御することができる。例えば、測定系22は、複数のレーザ干渉計、エンコーダ、及び/又は他の測定機器を利用することができる。
【0027】
制御系24は、レチクルステージ装置18、ウェハステージ装置20、及び測定系22と接続されている。制御系24は、測定系22から情報を受け取り、レチクル26とウェハ28を精密に位置決めするために、ステージ動作装置18、20を制御する。さらに、制御系24は、チャック30の活性化と不活性化を制御するために、チャック30に電圧を印加する。制御系24は、一つ以上のプロセッサ及び回路を含むことができる。
【0028】
静電チャックには、クーロン及びジョンソン−ラーベックの2種類の従来型がある。これらは、誘電体の特性と、得られるクランプ力発生のメカニズムによって区別される。クーロンチャックは、第二電極としての役割を果たすレチクルの導電性裏面とともに、標準的な誘電キャパシタのように機能する。クーロンチャックは、比較的長距離にあるチャックとレチクルとの間に引力を発生する。J−R誘電体は、大きいが有限の抵抗を有し、そのため、表面が接触し電圧が加えられた時に、それ自身と基板を通して電流が流れる。電荷は、基板と誘電体の間の境界面に蓄積する。境界領域の厚さは表面荒さと関連しているため、電荷分離は一般的にとても小さく、強い静電力を発生することができる。JRチャック力は本質的に接触力であり、もし2つの表面が接触していないと、その力はほとんどゼロである。しかしながら、表面が互いに近いと、とても強い引力を発生することができる。さらに、強いクランプ圧力を発生するのに必要な電圧は、クーロンチャックに比べJ−Rチャックでは、非常に小さくすることができる。さらに、J―Rチャックは、クーロンチャックに比べ、より簡易で、より堅固である。クーロンチャックとJ−Rチャックの比較研究は、M.Sogardらの、J.Vac.Sci.Technol. B25、 2155(2007)、「Analysis of Coulomb and Johnsen−Rahbek Electrostatic Chuck Performance for EUV Lithography」に説明されており、許される限り、その内容をここに援用する。
【0029】
静電チャックは、1つの電極、又は複数の電極を有することができる。単一の電圧がチャックに印加されると、チャックは単極と呼ばれ、対極の電圧が複数の電極に印加されると、チャックは双極と呼ばれる。チャック表面は、平坦にも、高い突起やピンで覆われた状態にもできる。
【0030】
図2Aは、本発明の特徴を有する、デバイス200(ときどき「ワークピース」とも呼ばれる)、チャック230の第一の実施形態、及び制御系224の一部の斜視図である。例えば、デバイス200は、(図1に示された)レチクル26とすることができ、チャック230は、レチクル26を確実に保持する。代替的に、デバイス200は、(図1に示された)ウェハ28とすることができ、チャック230は、ウェハ28を確実に保持するために使用することができる。さらに代替的に、チャック230は、製造、検査、及び/又は測定動作中に、他の種類のデバイスを保持するのに使用することができる。
【0031】
図2Aにおいて、デバイス200は、全体として矩形形状(例えば、レチクル26の場合)であり、上面200A、下面200B、及び4つの側面200Cを含む。代替的に、デバイス200は、全体として円板形状(例えば、ウェハ28の場合)のような、別の構成を有することができる。ここで開示される実施形態において、デバイス200の上面200A、より一般的にはチャックに面する側は、導電性である。
【0032】
一つの実施形態において、チャック230は、協働してデバイス200を保持する、チャック本体244、クーロン電極246、及びJ−R電極248を含む。これらの部品の大きさ、形、及びデザインは、デバイス200の吸着要求に適合するように変更可能である。
【0033】
図2Aにおいて、チャック本体244は、剛体で、全体として矩形形状であり、最上部の第一面244Aと、反対の最底部の第二面244Bと、4つの側面244C(図2Aでは2つのみが見える)を含む。さらに、チャック本体244は、デバイス200と係合する吸着面250を規定する。図2Aにおいて、吸着面250は最底部の第二面244Bに位置する。代替的に、チャック本体244は、全体として円板形状の構成を有することができる。
【0034】
一つの実施形態において、チャック本体244は、比較的高い(有限の)抵抗を有する誘電体材料で構成される。チャック本体244に適した材料は、約106から1013オーム・cmの範囲の抵抗率を有する。チャック本体244に適した材料の非排他的な例は、窒化アルミニウム、アルミナとチタニアのセラミック混合物、あるいはシリコンカーバイドを含む。
【0035】
クーロン電極246は、デバイス200を吸着面250に引き寄せるクーロン力を発生するために使用される。換言すると、制御系224は、デバイス200を吸着面250に対して引き寄せるクーロン力を選択的に発生するために、クーロン電極246に選択的に電圧を印加する。図2Aにおいて、クーロン電極246は、クーロン電極板246A、及び空間的に離れた(想像線で示された)1つ以上の低抵抗伝送路246Bを含む。
【0036】
一つの実施形態において、クーロン電極板246Aは、全体として矩形形状であり、チャック本体244の最上部244Aに位置する。代替的に、クーロン電極板246Aは、チャック本体244の別の位置に配置することができ、及び/又はクーロン電極板246Aは、図2Aに示されたものとは異なる構成を有することができる。クーロン電極板246Aに適した材料は、クロム、銅、あるいは金のような、導電性の材料を含む。
【0037】
低抵抗伝送路246Bは、クーロン電極面246Aに導かれた電流が、吸着面250の近傍まで流れるための経路を供給する。さらに、低抵抗伝送路は、クーロン電極板246Aに印加された電圧が、吸着面の近傍までほとんど減少することなく伝達されることを可能とする。クーロン電極板246Aに印加された電圧は、吸着面250の近傍まで伝達されるので、かなり大きなクーロン力を発生することができる。
【0038】
低抵抗伝送路246Bの数、及び構成は、チャック230の要求に適合するように、変更可能である。図2Aにおいて、チャック230は、7×7の矩形マトリクスに構成され、空間的に離れた49個の低抵抗伝送路246Bを含む。代替的に、チャック230は49個より多い、又は49個より少ない低抵抗伝送路246Bを含むように構成することができる。低抵抗伝送路246Bの構成は、後でより詳しく説明される。
【0039】
J−R電極248は、デバイス200を吸着面250に対して引き寄せるJ−R力を発生するために使用される。換言すると、制御系224は、デバイス200を吸着面250に対して引き寄せるJ−R力を発生するために、J−R電極248に電圧を印加する。図2Aにおいて、J−R電極248は、J−R電極板248Aを含む。
【0040】
ある実施形態において、J−R電極板248Aは、全体として矩形形状であり、クーロン電極板246Aの下方において、チャック本体244の上面244Aに位置する。代替的に、J−R電極板248Aは、チャック本体244の別の位置に配置することができ、及び/又はJ−R電極板248Aは、図2Aに示されたものとは異なった構成を有することができる。J−R電極板248Aに適した材料は、クロム、銅、あるいは金のような導電性の材料を含む。
【0041】
J−R電極板、及びJ−R電極誘電体はまた、クーロンチャックの電極、及び誘電体と似たように機能する。その結果、J−Rチャックは、J−R力に加え、クーロン力にも寄与する。しかしながら、J−R誘電体は、一般的に比較的厚いために、J−R電極は、誘電体キャパシタの第二電極を形成している基板表面から離れており、そのため、クーロン力はとても微弱で、J−Rチャックを評価する際には、無視されることが多い。
【0042】
制御系224は、(1)デバイス200にクーロン力を発生させるために、クーロン電極246に電圧を選択的、独立的に印加し、(2)デバイス200にJ−R力を発生させるために、J−R電極248に電圧を選択的、独立的に印加する。
【0043】
ここで、ある実施形態では、デバイスの吸着初期に、制御系224は、クーロン力とJ−R力の両方を発生させ、吸着面250に対してデバイス200を確実に引き寄せるために、クーロン電極246とJ−R電極248の両方に電圧を印加する。後でより詳しく説明されるように、クーロン力とJ−R力の両方が、吸着初期に使用されることから、(1)デバイス200の非平坦さを克服/低減するために、及び/又は(2)吸着面250とデバイス200の間に位置するパーティクルをクラッシュするために、吸着面250に対してデバイス200を確実に引き寄せることができる。その結果、チャック230は、デバイス200の非平坦さを低減するために使用することができ、(図1に示された)露光装置10は、(図1に示された)より高品質で、より高機能密度のウェハ28を製造するために使用することができる。より具体的には、EUVLシステム10では、(図1に示された)レチクル26上のパターンの非平坦さ(すなわち、高さの変化量)は、ウェハ28上の像配列誤差をもたらす。この理由から、吸着面250が、非常に平坦であるのと同様、レチクル26の前面及び後面が、平坦であることが不可欠である。
【0044】
さらに、ある実施形態において、デバイス200が吸着面250に対して平坦に引き寄せられた後、制御系224は、クーロン電極246に電圧を印加するのを中止することができる。ここで、デバイス200が、吸着面250に対して平坦に引き寄せられた後、J−R力は単独で、吸着面250に対してデバイス200を平坦に保持するのに十分である。従って、(図1に示された)照明系12の動作中、及びレチクル26からウェハ28への機能の転写中に、電圧は、クーロン電極246に印加されない。その結果、露光装置10の動作中に、電力は低減され、かつチャック230での発熱が低減される。
【0045】
図2Aにおいて、制御系224は、(1)クーロン電極246に選択的に電圧を印加するクーロン回路252、及び(2)J−R電極248に選択的に電圧を印加するJ−R回路254を含む。この実施形態において、クーロン回路252は、クーロン電極246とデバイス200の導電性の上面200Aとの間に電気的に接続され、クーロン電極246に選択的に電圧を印加するために制御することができる、クーロン電圧源252Aとクーロンスイッチ252Bを含む。同様に、J−R回路254は、J−R電極248とデバイス200の導電性の上面200Aとの間に電気的に接続され、J−R電極248に選択的に電圧を印加するために使用することができる、J−R電圧源254AとJ−Rスイッチ254Bを含む。制御系224の動作は、後でさらに説明される。
【0046】
図2Bは、チャック230の簡略化した上面図であり、図2Cは、簡略化した下面図である。図2Aは、この実施形態において、(想像線で示された)低抵抗伝送路246Bが、7×7の矩形マトリクス状に、空間的に等間隔に離れていることを示している。
【0047】
図2Cは、この実施形態において、チャック230が、ピン型チャックであり、吸着面250が、空間的に離れた複数の突起250A(「ピン」)を含むことを示している。突起250Aの数、及び構成は、チャック230の要求に適合するように変更可能である。例えば、突起250Aは、円筒形の構成を有することができる。さらに、図2Cにおいて、チャック230は、7×7の矩形マトリクス状に構成され、空間的に離れた49個の突起250Aを含む。この実施形態において、突起250Aの数は、(図2Bに示された)低抵抗伝送路246Bの数に対応する。代替的に、チャック230は、49個より多い、又は49個より少ない突起250Aを含むように構成することができ、及び/又は突起250Aの数は、低抵抗伝送路246Bの数と異なるようにすることができる。
【0048】
図2Dは、図2Aのデバイス200とチャック230の簡略化した側面図である。図2Eは、図2Aの2E−2E線における、デバイス200とチャック230の簡素化された断面図、及びクーロン回路252とJ−R回路254を含む制御系224の一部の簡略図である。図2Fは、図2Dの2F線における、デバイス200の一部とチャック230の一部の拡大図である。
【0049】
図2D及び2Eは、この実施形態において、絶縁板256が、クーロン電極板246AとJ−R電極板248との間に配置されていることを示している。絶縁板256は、クーロン電極板246AとJ−R電極板248を、互いに電気的に分離する。絶縁板256に適した材料は、アルミナ、低熱膨張ガラス、又はゼロデュア(登録商標)を含む。
【0050】
さらに、図2Eは、J−R電極板248Aが、J−R電極板248Aを貫いて伸び、かつ、低抵抗伝送路246BがJ−R電極板248Aを貫いて伸びるのを可能とする、空間的に離れた複数の面開口248Bを含むことを示している。この実施形態において、J−R電極板248Aは、各々の低抵抗伝送路246Bに対して、個別の面開口248Bを含む。従って、J−R電極板248Aは、7×7の矩形マトリクスに構成され、空間的に離れた49個の開口248Bを含み、開口248Bの数は、低抵抗伝送路246Bの数に対応する。
【0051】
さらに、図2D及び2Eは、低抵抗伝送路246Bが、(1)クーロン電極板246Aから下方に片持ち梁状になり、(2)クーロン電極板246Aと吸着面250の近傍との間に伸びていることを示している。
【0052】
付加的に、図2D、2E、及び2Fは、突起250Aが、空間的に離れた複数の位置で、デバイス200と係合することを示している。
【0053】
図2Fは、比較的狭い電極ギャップ258が、各々の低抵抗伝送路246Bの先端と吸着面250との間に存在することを示している。非排他的な実施形態において、電極ギャップ258は、約200、100、50、20、10又は5ミクロンより小さい。比較的微小な電極ギャップ258が、デバイス200からクーロン電極246を分離するので、クーロン電極板246Aに印加された電圧は、大きなクーロン力を発生することができる。
【0054】
さらに、図2Fは、各々の低抵抗伝送路246Bが、伝送路電極246C、及び(図2Eに示された)J−R電極248と高抵抗の誘電体チャック本体244の大部分から、伝送路電極246Cを分離する伝送路絶縁体246Dを含むことを示している。この実施形態において、各々の伝送路電極246Cは、全体として円筒形状であり、各々の絶縁体246Dは、全体としてチューブ形状で、チャネル電極246Cを取り囲む。代替的に、例えば、各々の伝送路電極246Cは、全体として矩形形状の断面を有することができる。もし、全ての材料の熱膨張係数が、正確に一致していない場合には、熱応力を最小化するために、チャック本体244と絶縁体246Dとの間、及び絶縁体246Dと伝送路電極256Cとの間に、微小ギャップが維持されるべきである。
【0055】
伝送路電極に適した材料は、クロム、銅、金、又はガリウムやガリウムインジウムといった液体金属、のような導電性材料を含む。伝送路電極は、チャック本体の内部から熱を取り除く、熱伝導体としても機能することができる。伝送路絶縁体246Dに適した材料は、アルミナ、低熱膨張ガラス、又はゼロデュア(登録商標)を含む。
【0056】
なお、ここで開示された独特の構成のために、吸着面250全体は、均一で均質な材料で作製することができる。換言すると、本構成は、吸着面250が、組成において十分に均一となることを可能とする。このことは、吸着面250が、より精密に作製されることを可能とし、吸着面250が、非常に平坦であることを可能とする。
【0057】
さらに、本構成により、突起250Aの全領域を、J−R力を発生するために用いることができる。このことは、J−R力が、平坦性が向上した状態で、デバイス200を保持することを可能とする。
【0058】
別の実施形態において、伝送路絶縁体246Dは、伝送路電極246Bの先端と、ギャップ258の中に位置するチャック材料との間まで広げることができる。その結果、伝送路電極246Bは、チャック本体244から電気的に絶縁され、伝送路電極246Bに印加された電圧は、チャック本体を貫いて流れる電流を引き起こさない。従って、電圧がクーロン電極板246Aに印加された時に、チャック本体のオーミック熱が回避される。この実施形態においては、もし望むなら、露光中に、クーロン電極板246Aへの電圧を維持することができるかもしれない。
【0059】
クーロンスイッチ252BとJ−Rスイッチ254Bの調整に関する制御系224の動作が、図3A−3Eを用いてここで説明される。チャック330の一つの特定の実施形態が示され、図9と関連して後ほど説明されるが、制御系224の動作は、他の実施形態と実質的に同一である。図3A−3Eにおいて、各々のスイッチ252B、254Bが、P1、P2、P3と示す、3つの代替的な位置を含むものとして図示されている。
【0060】
図3Aと3Bは、デバイス200の初期ローディングを図示している。ローダ機構(不図示)は、チャック330の吸着面250に対してデバイス200を上昇させる。クーロンスイッチ252Bは、位置P3に設定され、J−Rスイッチ254Bは、位置P3に設定される。各々のスイッチ252B、254Bでは、この実施形態においては、P3が接地302に接続される。したがって、クーロンスイッチ252BのP3スイッチ位置は、クーロン電極246を接地302に電気的に接続し、J−Rスイッチ254BのP3スイッチ位置は、J−R電極248を接地302に電気的に接続する。電気接地302は、アース電位としてもよく、又は他の電位としてもよい。図3Aでは、デバイス200は、ローディング前に、電気接地302と同じ電位に維持され、そのため、デバイス200が、図3Bのクーロン電気接続部304及びJ−R電気接続部306と接触するとき、全ての構成要素は同じ電位であり、電流は流れない。もし、電圧差が生じると、電流サージが引き起こされ、デバイス200への損傷が生じるかもしれない。
【0061】
図3Cでは、制御系224は、クーロンスイッチ252Bを位置P2に設定し、J−Rスイッチ254Bを位置P2に設定し、これにより、クーロン電極246にクーロン電圧源252Aからの電圧を印加し、J−R電極248にJ−R電圧源254Aからの電圧を印加する。いくつかの実施形態では、制御系224は、J−R電極248に電圧を印加する前に、クーロン電極246に電圧を印加する。この段階で、デバイス200の吸着は完了し、露光を開始することができる。
【0062】
図3Dは、別の実施形態を示しており、ここでは、クーロンスイッチ252Bは、位置P1に設定され、これにより電気回路は開放され、クーロン電極246が、チャックの局所電位に浮遊することを可能とする。いくつかの場合では、制御系224は、クーロンスイッチ252Bを位置P2から位置P1に変更する前に、クーロン電圧源252Aを、ほぼチャックの局所電位となるように調整することもある。この段階で、デバイス200の吸着は完了し、露光が始まる。
【0063】
デバイス200を用いた露光が完了したとき、図3D及び3Eに示されるように、アンロード処理が始まる。チャックがデバイス200を解放している間に、デバイス200を支持するためにローダ機構が適切な位置に導入される。制御系224は、図3DにおいてJ−R電圧源254Aを、電気接地302の電位に調整し、クーロンスイッチ252Bを、図3Eの位置P3に設定し、続いて、制御系224は、J−Rスイッチ254Bを位置P3に設定する。
【0064】
解放時間は、基本的には、吸着面250の近傍に位置する電荷が、排出されるのに必要とされる時間によって決定される。クーロン電極板246Aのデバイス200への近接は、放電がさらに距離のあるJ−R電極248を含む、一般的なJ―Rチャックの場合と比べ、放電路の抵抗を低減し、解放時間を低減する。放電の進み具合は、電流計(不図示)で測定されることもある。
【0065】
放電が完了した時、デバイス200は、ローダ機構によって取り外される。
【0066】
図3A−3Eにおいて、クーロンスイッチ252B及びJ−Rスイッチ254Bは、三端子スイッチとして示されているが、その機能は、複数の独立スイッチにより、提供されることもある。ある実施形態では、チャック330の基本動作中に、J−Rスイッチ254Bの位置P1は使用されない。
【0067】
本発明の有益性と特徴は、図4A−5Cを参照して、さらに説明される。特に、図4Aは、チャック230の(図2Aに示された)電極246及び248の活性化前の、図2Eの4A線におけるデバイス200の一部とチャック230の一部の簡略化した拡大図、及び制御系224の一部の簡略化した図である。この時点では、説明のために、制御系224は、(1)J−R電極248が、(図3Aに示された)電気接地302に接続されるように、J−Rスイッチ254Bを位置P3に設定し、(2)クーロン電極246が、(図3Aに示された)電気接地302に接続されるように、クーロンスイッチ252Bを位置P3に設定した。この状態の間、デバイス200は、不図示の機械的デバイスローダ機構により、吸着面に押し付けられている。
【0068】
図4Aは、デバイス200のこの特定の部分は平坦ではなく、湾曲領域459を含んでいることを示している。その結果、デバイス200と吸着面250との間に、非接触ギャップ460が存在する。より具体的には、図4Aで、3つの突起250Aが、図示されている。この例において、説明を容易にするために、突起250Aは、450A、450B、及び450Cと分類されている。さらに、デバイス200の非平坦さのために、突起450A及び450Cのみが、デバイス200に接触し、非接触ギャップ460が、突起450Bとデバイス200との間に存在する。
【0069】
なお、J−R力の発生は、吸着面250と、デバイス200との間の、直接的な物理的接触に大いに依存する。例えば、(図2Aに示された)J−R電極248に電圧が印加された時、吸着面250がデバイス200と直接的に接触し係合する領域で、強いJ−R力が発生し、一方、吸着面250がデバイス200と直接的に接触しない領域では、非常に弱いJ−R力が発生するか、又はJ−R力は発生しない。図3Aに示された例において、(1)J−Rスイッチ254Bが、位置P2に設定された時、デバイス200に直接的に接触する突起450A及び450Cにおいて、非常に強いJ−R力が発生し、(2)突起450Bは、デバイス200に直接的に接触しないため、突起450Bでは、非常に弱いJ−R力が発生するか、又はJ−R力は発生しない。微弱な、又はゼロのJ−R力が、突起450Bで発生するため、J−R力のみの使用は、湾曲領域459を除去又は低減し、デバイス200を完全に平坦化するのに十分ではないことがある。換言すると、J−R力は、単独では、平坦性を向上するために非接触領域を引き寄せるのには、有効ではないこともある。
【0070】
図4Bは、チャック230の(図2Aに示された)クーロン電極246及びJ−R電極248の両方の活性化後の、図4Aのデバイス200の一部とチャック230の一部の簡略化した拡大図、及び制御系224の一部の簡素化された図である。この時点では、説明のために、制御系224は、(1)J−R電圧源254Aが、(図2Aに示された)J−R電極248に電圧を印加するように、J−Rスイッチ254Bを位置P2に設定し、(2)クーロン電圧源252Aが、クーロン電極246に電圧を印加するように、クーロンスイッチ252Bを位置P2に設定した。
【0071】
なお、ある実施形態において、J−R電極248に電圧を印加する前に、クーロン電極246に電圧を印加するのが望ましいことがある。このことは、スイッチ252B、254Bを選択的に制御することによって行うことができる。ここで、レチクルのようなデバイスは、チャック230上にロードされる時、一般的に、厳密に平坦ではない。従って、ここで開示されたチャック230で平坦に引き寄せられた時、レチクルは、突起に対して少しスライドさせる必要があることが多い。平坦化処理の間、J−R力は、レチクルと接触する突起に対して、レチクルのスライドを妨げることがある。従って、ここでは、比較的長距離で、比較的微弱なクーロン力で始めるのが、有益である。クーロン力が、レチクルを平坦化した後、レチクルをさらに平坦化し、適切な位置に保持するために、J−R力を印加することができる。
【0072】
図4Bは、J−R力とクーロン力の両方の印加が、湾曲領域459を平坦化し、デバイス200の平坦性が、著しく改善されたことを示している。その結果、デバイス200と吸着面250との間の(図4Aに示された)非接触ギャップ460は、もはや存在しない。より具体的には、図4Bでは、突起450A、450B及び450Cは、ここでは全てデバイス200と直接的に接触している。
【0073】
なお、吸着面250とデバイス200との間の微小ギャップの存在下で、クーロン力は、事実上影響を受けない。従って、図4Aの、突起450Bとデバイス200との間の非接触ギャップ460は、突起450Bで発生するクーロン力の大きさに影響を与えない。その結果、クーロン力は、デバイス200を突起450Bに引き寄せ、デバイス200の湾曲領域459を平坦化するために使用することができる。
【0074】
さらに、各々の突起450A、450B、450Cは、J−R力とクーロン力の両方を発生することができる。従って、吸着面250上に無駄となる領域は、存在しない。
【0075】
図4Cは、クーロン電極246の非活性化後で、(図2Aに示された)J−R電極248は、制御系224によってまだ活性化されている状態での、図4Bのデバイス200の一部とチャック230の一部の簡略化した拡大図である。この時点では、説明のために、制御系224は、(1)J−R電圧源254Aが、(図2Aに示された)J−R電極248に電圧を印加するように、J−Rスイッチ254Bを位置P2に維持し、(2)クーロン電圧源252Aが、クーロン電極246に電圧を印加しないように、クーロンスイッチ252Bを位置P1に設定した。
【0076】
図4Cは、J−R力のみの印加が、突起450Bに対する湾曲領域459の平坦性、及びデバイス200の平坦性を維持するのに十分あることを示している。その結果、デバイス200と吸着面250との間の(図4Aに示された)非接触ギャップ460は、もはや存在しない。より具体的には、図4Cにおいて、突起450A、450B、及び450Cは、ここでは全てデバイス200と直接的に接触している。
【0077】
上記のように、J−R力の発生は、吸着面250とデバイス200との間の物理的接触に大きく依存している。従って、突起450Bが、デバイス200と直接、物理的に接触された後、平坦化された湾曲領域459を維持するために、突起450Bとデバイス200において非常に強いJ−R力が発生する。従って、この時点において、もはやクーロン電極246に電圧を印加する必要はない。
【0078】
この構成において、制御系224は、デバイス200の吸着初期に、デバイス200を平坦にするために、クーロン電極246とJ−R電極248の両方に電圧を印加する。その後、クーロン電極246は、(図1に示された)露光装置10の動作中に、非活性化することができる。
【0079】
図5Aは、チャック230の(図2Aに示された)電極246、248の活性化前の、図2Eの5A線におけるデバイス200の一部とチャック230の一部の簡略化した拡大図、及び制御系224の一部の簡略図である。この時点で、説明のために、制御系224は、(1)J−R電極248が、(図3Aに示された)電気接地302に接続されるように、J−Rスイッチ254Bを位置P3に設定し、(2)クーロン電極246が、電気接地302に接続されるように、クーロンスイッチ252Bを位置P3に設定した。この状態の間、デバイス200は、不図示の機械的デバイスローダ機構によって、吸着面に押し付けられている。
【0080】
図5Aは、パーティクル562が、デバイス200と吸着面250との間に配置されていることを示している。パーティクル562は、デバイス200が平坦ではなく、デバイス200が湾曲領域559を含む原因となる。さらに、その結果、デバイス200と吸着面250との間に、非接触ギャップ560が存在する。より具体的には、図5Aに、3つの突起250Aが図示されている。この例において、説明を容易にするために、突起250Aは、550A、550B、及び550Cと分類されている。さらに、パーティクル562のために、突起550A及び550Cのみがデバイス200に接触し、非接触ギャップが突起550Bとデバイス200との間に存在する。
【0081】
上記のように、J−R力の発生は、吸着面250とデバイス200との間の、直接的な、物理的接触に大いに依存する。従って、デバイス200と直接接触しないため、突起550Bでは、非常に弱いJ−R力が発生するか、又はJ−R力が発生しない。微弱な、又はゼロのJ−R力が、突起550Bで発生するため、J−R力の使用は、パーティクル562をクラッシュし、デバイス200を完全に平坦化するのに十分ではないこともある。換言すると、J−R力は、単独では、平坦性を改善するために、又はパーティクルをクラッシュ、及び/又は埋め込むために非接触領域を引き寄せるのに、効果がないこともある。
【0082】
図5Bは、チャック230の(図2Aに示された)クーロン電極246とJ−R電極248の両方の活性化後の、図5Aのデバイス200の一部とチャック230の一部の簡略化した拡大図であり、制御系224の一部の簡略図である。この時点で、説明のために、制御系224は、(1)J−R電圧源254Aが、(図2Aに示された)J−R電極248に電圧を印加するように、J−Rスイッチ254Bを位置P2に設定し、(2)クーロン電圧源252Aが、クーロン電極246に電圧を印加するように、クーロンスイッチ252Bを位置P2に設定した。
【0083】
図5Bは、J−R力とクーロン力の両方の印加が、チャック230がパーティクル562をクラッシュ、及び/又は埋め込み、湾曲領域559を平坦化して、デバイス200の平坦性を向上させる原因となることを示している。その結果、デバイス200と吸着面250との間の(図5Aに示された)非接触ギャップ560は、もはや存在しない。より具体的には、図5Bにおいて、突起550A、550B及び550Cは、ここでは全てデバイス200と直接的に接触している。
【0084】
上記のように、吸着面250とデバイス200との間の微小ギャップの存在下で、クーロン力は、事実上影響を受けない。従って、図5Aの、突起550Bとデバイス200との間の非接触ギャップ560は、突起550Bで発生するクーロン力の大きさに影響を与えない。その結果、クーロン力は、パーティクル562をクラッシュ、及び/又は埋め込むために使用することができる。
【0085】
図5Cは、クーロン電極246の非活性化後で、(図2Aに示された)J−R電極248が制御系224によってまだ活性化されている状態での、図5Bのデバイス200の一部とチャック230の一部の簡略化した拡大図である。この時点で、説明のために、制御系224は、(1)J−R電圧源254Aが、(図2Aに示された)J−R電極248に電圧を印加するように、J−Rスイッチ254Bを位置P2に維持し、(2)クーロン電圧源252Aが、クーロン電極246に電圧を印加しないように、クーロンスイッチ252Bを位置P1に設定した。
【0086】
図5Aで、パーティクルの大きさは、説明のために非常に誇張されている。実際には、パーティクルは、突起550Bの寸法に比べて、一般的に非常に小さい。その結果、パーティクルがクラッシュされる、又は埋め込まれる時、突起550Bと関係する吸着面のかなりの割合が、デバイス200と直接的に接触し、そのためJ−R力は、非常に強くなることができる。この理由から、J−R力が、有効になることができる前に、クーロン力は、パーティクルを完全にクラッシュ、及び/又は埋め込む必要はない。クーロン力は、J−R力が有効となることができるように、突起550Bと関係する吸着面のいくらかの割合を、デバイス200と接触させる必要があるだけである。
【0087】
図5Cは、J−R力のみの印加が、突起550Bに対する湾曲領域559の平坦性、及びデバイス200の平坦性を維持するのに、十分であることを示している。その結果、デバイス200と吸着面250との間の(図5Aに示された)非接触ギャップ560は、もはや存在しない。より具体的に、図5Cにおいて、突起550A、550B、及び550Cは、ここでは全てデバイス200と直接的に接触している。
【0088】
上記のように、J−R力の発生は、吸着面250とデバイス200との物理的接触に大きく依存する。従って、突起550Bが、デバイス200と直接、物理的に接触された後、今度は非常に強いJ−R力が突起550B及びデバイス200において発生する。従って、この時点において、もはやクーロン電極246に電圧を印加する必要はない。
【0089】
この構成において、制御系224は、デバイス200の吸着初期に、デバイス200を平坦にするために、クーロン電極246とJ−R電極248の両方に電圧を印加する。その後、クーロン電極246は、(図1に示された)露光装置10の動作中に、非活性化することができる。
【0090】
図6は、図2AのJ−R電極248及びクーロン電極246に関して、ギャップに対する発生圧力の、一つの非排他的な実施形態を示すグラフである。この実施形態において、(1)線670(「o」と実線)は、突起で発生したJ−R力を示し、(2)線672(「x」と実線)は、突起間で発生したJ−R力を示し、(3)線674(短い破線)は、突起で発生したクーロン力を示し、(4)線676(長い破線)は、突起間で発生したクーロン力を示している。このグラフは、(1)突起で発生したJ−R力は、接触がある場合には非常に大きく、ギャップがある量に達するまでは、ギャップが増加するにつれて急速に減少し、(2)突起で発生したクーロン力は、ギャップの増加に対して比較的一定であり、(3)突起間で発生したクーロン力も、ギャップの増加に対して比較的一定であり、(4)突起で発生したJ−R力は、ギャップが比較的小さい時、突起で発生したクーロン力よりも大きいことを示している。
【0091】
図7Aは、デバイス200、及びチャック730の別の実施形態の簡略化した側面図であり、図7Bは、図7Aのデバイス200とチャック730の簡略化した断面図である。この実施形態において、チャック730は、上記で説明され図2Aで示された、対応する構成要素と同様のクーロン電極746及びJ−R電極748を含む。しかしながら、この実施形態では、チャック本体744の吸着面750は平坦で、突起を含まない。従って、吸着面が非常に平坦に作製されることが重要である。上記で説明されたように、本発明の吸着面750は、均一な組成で作製されている。この特徴は、非常に平坦な吸着面750を作製することを容易とする。
【0092】
さらに、図7A及び7Bは、電極ギャップ758が、各々の低抵抗伝送路746Bと吸着面750との間に存在することを示している。
【0093】
この実施形態においては、吸着面750全体は、J−R力を発生するのに使用することができ、一方クーロン力は、低抵抗伝送路746Bの領域に限定される。
【0094】
図8は、デバイス200、及びチャック830の別の実施形態の簡略化した側面図である。この実施形態において、チャック830は、図2Aで示されたチャック本体244と同様、複数の突起850Aを含む吸着面850を有するチャック本体844を含む。さらに、チャック830は、(図2Aに示された)クーロン回路252に電気的に接続されたクーロン電極846、及び(図2Aに示された)J−R回路254に電気的に接続されたJ−R電極848を含む。しかしながら、この実施形態において、クーロン電極846は、吸着面850に非常に近く位置し、かつ電極ギャップ858だけ空間的に離された(チャック本体844中に配置された)クーロン電極板846Aのみを含む。さらに、この実施形態において、J−R電極848は、チャック本体844の中に配置されている。さらに、クーロン電極846は、J−R電極848よりも吸着面850に近い。
【0095】
この実施形態において、クーロン電極板846A全体を、クーロン力を発生するために使用することができ、一方J−R力は、主に突起850Aの領域に限定される。
【0096】
図9は、デバイス200、及びチャック930の別の実施形態の簡略化した側面図である。この実施形態において、クーロン電極946及びJ−R電極948は、上記で説明され図8で示された、対応する構成要素と同様である。しかしながら、この実施形態において、チャック本体944の吸着面950は平坦で、複数の突起を含まない。
【0097】
さらに、図9は、電極ギャップ958が、クーロン電極板946Aと吸着面950との間に存在することを示している。
【0098】
この実施形態において、吸着面950全体は、クーロン力とJ−R力を発生するために使用することができる。
【0099】
図10は、デバイス200、及び図8に示され、上記で説明されたチャック830と同様のチャック1030の、さらに別の実施形態の簡略化した側面図である。この実施形態において、チャック1030は、図8に示されたチャック本体844と同様、複数の突起1050Aを含む吸着面1050を有するチャック本体1044を含む。さらに、チャック1030は、(ボックスとして示された)クーロン回路1052に電気的に接続されたクーロン電極1046、及び(ボックスとして示された)J−R回路1054に電気的に接続されたJ−R電極1048を含む。しかしながら、この実施形態において、チャック1030は、双極性チャックであり、チャック1030の隣接する電極には、反対の極性の電圧が印加される。より具体的に、この実施形態において、(1)クーロン電極1046は、第一クーロン電極1047A、及び第一クーロン電極1047Aから空間的に離れた第二クーロン電極1047Bを含み、(2)クーロン回路1052は、クーロン電極1047A、1047Bの一つが正電荷を有し、クーロン電極1047A、1047Bのもう一つが負電荷を有するように、クーロン電極1047A及び1047Bに電圧を印加し、(3)J−R電極1048は、第一J−R電極1049A、及び第一J−R電極1049Aから空間的に離れた第二J−R電極1049Bを含み、(4)J−R回路1054は、J−R電極1049A、1049Bの一つが正電荷を有し、1049A、1049Bのもう一つが負電荷を有するように、J−R電極1049A及び1049Bに電圧を印加する。電圧は、一般的に、デバイス200の電圧が、電気接地302と近くなるように決められる。
【0100】
ここでは、前述した目的を達成し効果を得るための詳細な特定のチャック30及び方法について可能な限り開示しており、それは本発明の好ましい現時点での実施形態の単なる具体例であって、添付されたクレーム以外に、構造や構成の詳細についてここで示したものに限定する意図はない。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年1月5日に出願された米国特許出願第12/652、669号に基づく優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体処理において、レチクルの像を半導体ウェハに転写するために半導体処理用の露光装置が使用される。通常、露光装置は、照明源、レチクルを保持し位置決めするレチクルステージ装置、光学装置、及び半導体ウェハを保持し位置決めするウェハステージ装置を有する。
【0003】
近年、ウェハへの転写トランジスタ数を増加させるために、極紫外光源を使用する極紫外リソグラフィ(EUVL)システムが提案されている。極紫外光は吸収を避けるために真空中を伝搬する必要がある。
【0004】
これらのシステムにおけるレチクルは反射型であり、レチクルを支持し、かつレチクルの非平坦さを除くために静電チャックを用いる必要がある。さらに、レチクルとチャックの間のパーティクルにより、吸着されたレチクルがさらなる非平坦さを引き起こす可能性がある。現在のEUVLの基準は、吸着されたレチクルがPV値(peak−to−valley)で50nm未満を超えないような表面平坦度を持つように規定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
残念ながら、既存の静電チャックは、レチクルとチャックの間に生じるパーティクルを十分に平坦化するための、十分な力を生じることができない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はデバイスを保持するための静電チャックに関する。静電チャックはチャック本体、クーロン電極、ジョンソン−ラーベック(J−R)電極、及び制御系を含む。チャック本体は、デバイスと係合する吸着面を含み、吸着面は比較的高抵抗を有する誘電体で構成される。J―R電極は、吸着面から空間的に離れて配置される。クーロン電極も、吸着面から空間的に離れて配置される。
【0007】
ここで、制御系は、デバイスを吸着面に向かって引き寄せるクーロン力を発生するために、クーロン電極に選択的に第一電圧を印加し、かつデバイスを吸着面に押し付けるJ−R力を発生するために、J―R電極に選択的に第二電圧を印加する。この構成により、J−R力とクーロン力の両方が、デバイスを吸着面に引き寄せるために同時に使用される。その結果、静電チャックは、デバイスの非平坦さを低減する、及び/又はデバイスとチャックの間に位置するパーティクルをクラッシュ、又は平坦にすることができる。従って、静電チャックは、高品質で高密度のウェハを製造するための露光装置に用いることができる。
【0008】
一実施形態において、吸着面は、実質的に組成において均一(均質)である。その結果、吸着面をより厳しい精度で作製することができ、吸着面は、同じ比率で膨張、収縮することになる。吸着面を正確に製造することは、デバイスを平坦な状態に保つために非常に重要である。
【0009】
ある実施形態において、クーロン電極は、J−R電極に比べて吸着面により近い。ここで、電極ギャップは、クーロン電極を吸着面から分離する。例えば、電極ギャップは、約100μmより小さくすることができる。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、静電チャックに加えて照明源を備えた露光装置に関する。さらに、制御系は、デバイスの吸着初期にクーロン電極に第一電圧を、J−R電極に第二電圧を印加する。その後、制御系は、照明源の動作中(例えば、露光処理中)には、クーロン電極に第一電圧を印加しない。従って、吸着初期の後には、J−R電極のみが、デバイスを保持するのに利用される。クーロン電極は、露光処理中に使用されないので、チャックを動作するのに必要とされる電力が低減され、チャックにより発生する熱が低減される。
【0011】
また、本発明は、デバイスを保持する方法に関する。その方法は、(1)高抵抗の誘電体で構成され、デバイスと係合する吸着面を有するチャック本体を供給する工程と、(2)吸着面から離れたJ−R電極を供給する工程と、(3)吸着面から離れたクーロン電極を供給する工程と、(4)デバイスを吸着面に向けて引き寄せるクーロン力を発生するために、制御系によりクーロン電極に選択的に第一電圧を印加する工程と、(5)デバイスを吸着面に押し付けるJ−R力を発生するために、J−R電極に選択的に第二電圧を印加する工程と、を含むことができる。
【0012】
さらに、本発明はウェハや、ウェハ上に物体を製造するための方法にも関する。
【0013】
本発明の特徴は、発明内容はもちろん、その構造と動作のいずれも、同種の特徴が同種の部分として言及された、添付の図面及び以下の説明から最良に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の特徴を有する、露光装置の模式図である。
【図2A】図2Aは、本発明の特徴を有する、デバイスの斜視図、チャックの第一の実施形態、及び制御系の一部の簡略図である。
【図2B】図2Bは、図2Aのチャックの簡略化した上面図である。
【図2C】図2Cは、図2Aのチャックの簡略化した下面図である。
【図2D】図2Dは、図2Aのデバイスとチャックの簡略化した側面図である。
【図2E】図2Eは、図2Dの2E−2E線における、デバイスとチャックの簡略化した断面図、及び制御系の一部の簡略図である。
【図2F】図2Fは、図2Dの2F線における、デバイスの一部とチャックの一部の拡大図である。
【図3】図3A−3Eは、チャックの実施形態の簡略図であり、デバイスのロード、吸着、露光、吸着解除、及びアンロードのサイクル中に、デバイス、クーロン電極、及びJ−R電極の電位を制御するための、スイッチの使用方法を説明したものである。
【図4A】図4Aは、チャックのJ―R電極の活性化後の、図2Eの4A線におけるデバイスの一部とチャックの一部の簡略化した拡大図と、制御系の一部の簡略化した図である。
【図4B】図4Bは、チャックのJ−R電極の活性化に加えてクーロン電極の活性化後の、図4Aのデバイスの一部とチャックの一部の簡略化した拡大図と、制御系の一部の簡略化した図である。
【図4C】図4Cは、J−R電極はまだ活性化された状態で、クーロン電極は非活性化された後の、図4Bのデバイスの一部とチャックの一部の簡略化した拡大図と、制御系の一部の簡略図である。
【図5A】図5Aは、チャックのJ−R電極の活性化後に、図2Eの5A線におけるデバイスの一部とチャックの一部の簡略化した拡大図と、制御系の一部の簡略図である。
【図5B】図5Bは、チャックのJ−R電極の活性化に加えてクーロン電極の活性化後の、図5Aのデバイスの一部とチャックの一部の簡略化した拡大図と、制御系の一部の簡略図である。
【図5C】図5Cは、J−R電極はまだ活性化された状態で、クーロン電極は非活性化された後の、図5Bのデバイスの一部とチャックの一部の簡略化した拡大図と、制御系の一部の簡略図である。
【図6】図6は、J−R電極とクーロン電極の非接触ギャップに対する圧力を示したグラフである。
【図7A】図7Aは、デバイス、及びチャックの別の実施形態の簡略化した側面図である。
【図7B】図7Bは、図7Aのデバイスとチャックの簡略化した断面図である。
【図8】図8は、デバイス、及びチャックの別の実施形態の簡略化した側面図である。
【図9】図9は、デバイス、及びチャックのさらに別の実施形態の簡略化した側面図である。
【図10】図10はデバイス、及びチャックのさらに別の実施形態の簡略化した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、精密装置、すなわち本発明の特徴を有する露光装置10の模式図である。露光装置10は、装置フレーム12、照明系14(照射装置)、光学装置16、レチクルステージ装置18、ウェハステージ装置20、測定系22、及び制御系24を含む。露光装置10の各部品の構成は、露光装置10の設計要求に適合するように変更可能である。
【0016】
図面は、X軸と、X軸に直交するY軸と、X軸とY軸に直交するZ軸を示す方位系を含む。なお、これらの軸は、第一、第二、及び第三軸と呼ばれることもある。
【0017】
露光装置10は、特に、集積回路のパターン(不図示)をレチクル26から半導体ウェハ28に転写するリソグラフィ装置として有用である。
【0018】
全体として、ある実施形態において、レチクルステージ装置18は、繰り返し可能で、かつ改良された平坦さを持ってレチクル26を保持するハイブリッド静電チャック30を含む。代替的に、又は追加的に、ウェハステージ装置20は、繰り返し可能で、かつ改良された平坦さを持って、ウェハ28を保持するハイブリッド静電チャックを含むことができる。このことにより、露光装置10はより高品質で、より高密度のウェハを製造することが可能となる。
【0019】
リソグラフィ装置には多くの異なった型がある。例えば、露光装置10は、スキャン型フォトリソグラフィシステムとして用いることができる。代替的に、露光装置10は、ステップアンドリピート型フォトリソグラフィシステムとして用いることができる。しかしながら、ここで提供される露光装置10の使用は、半導体製造のためのフォトリソグラフィシステムに限定されるものではない。
【0020】
装置フレーム12は、剛体で、露光装置10の部品を支持する。図1に示された装置フレーム12は、搭載ベース32、例えば、地面、台座、建物の床や、この他の支持構造物の上方で、レチクルステージ装置18、光学装置16、及び照明系14を支持する。
【0021】
照明系14は、照明源34と照明光学装置36を含む。照明源34は、光エネルギー束(照射)を放射する。照明光学装置36は、照明源34からレチクル26に光エネルギー束を導く。光束は、レチクル26の異なる部分を選択的に照射し、ウェハ28を露光する。図1において、レチクル26は反射性であり、エネルギー束は、レチクル26の下方から導かれる。
【0022】
静電チャック30は、光束の光路が真空中であることを要求する極紫外リソグラフィ(EUVL)において、特に有用である。EUVLシステムにおいて、照射源34は、約13ナノメートルの波長を持つ光を発生する極紫外照明系である。代替的に、チャック30は、リソグラフィシステムや他のEUVLシステムに用いることができる。代替的な実施形態の例としては、照明源34は、g線源(436nm)、i線源(365nm)、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、又はF2レーザ(157nm)とすることができる。これらの代替的な実施形態において、使用されるレチクルが反射性よりはむしろ透過性であるため、ハイブリッドチャックはパターンされた基板とともに用いることに制限される。
【0023】
EUVLシステムでは、照明光学装置36の構成要素は反射型である。代替的に、非EUVLシステムでは、照明光学装置36の構成要素はレンズとすることができる。
【0024】
光学装置16は、レチクル26からウェハ28に光を投影、及び/又は焦点を合わせる。EUVLシステムでは、光学装置16の構成要素は反射型である。代替的に、非EUVLシステムでは、光学装置16の構成要素はレンズとすることができる。
【0025】
レチクルステージ装置18は、光学装置16及びウェハ28に対してレチクル26を保持し、位置決めする。同様に、ウェハステージ装置20は、レチクル26の照射された部分の投影された像に対して、ウェハ28を保持し位置決めする。各々のステージ装置18、20の構成は、ここで提示された技術に従って様々に変更可能である。一つの実施形態において、各々のステージ装置18、20はチャック30、チャック30を保持するステージ38、ステージ38の動作を導くステージ基部40、及びチャック30とチャック30によって保持されるデバイスを動かすステージ動作装置42を含む。これら各々の部品の大きさ、形、及びデザインは、露光装置10の動作要求に適合するように変更可能である。
【0026】
測定系22は、光学装置16や他の参照物に対する、レチクル26とウェハ28の動作を測定する。この情報により、制御系24は、レチクル26とウェハステージ装置20を精密に位置決めし、また、ウェハ28を精密に位置決めするために、レチクルステージ装置18を制御することができる。例えば、測定系22は、複数のレーザ干渉計、エンコーダ、及び/又は他の測定機器を利用することができる。
【0027】
制御系24は、レチクルステージ装置18、ウェハステージ装置20、及び測定系22と接続されている。制御系24は、測定系22から情報を受け取り、レチクル26とウェハ28を精密に位置決めするために、ステージ動作装置18、20を制御する。さらに、制御系24は、チャック30の活性化と不活性化を制御するために、チャック30に電圧を印加する。制御系24は、一つ以上のプロセッサ及び回路を含むことができる。
【0028】
静電チャックには、クーロン及びジョンソン−ラーベックの2種類の従来型がある。これらは、誘電体の特性と、得られるクランプ力発生のメカニズムによって区別される。クーロンチャックは、第二電極としての役割を果たすレチクルの導電性裏面とともに、標準的な誘電キャパシタのように機能する。クーロンチャックは、比較的長距離にあるチャックとレチクルとの間に引力を発生する。J−R誘電体は、大きいが有限の抵抗を有し、そのため、表面が接触し電圧が加えられた時に、それ自身と基板を通して電流が流れる。電荷は、基板と誘電体の間の境界面に蓄積する。境界領域の厚さは表面荒さと関連しているため、電荷分離は一般的にとても小さく、強い静電力を発生することができる。JRチャック力は本質的に接触力であり、もし2つの表面が接触していないと、その力はほとんどゼロである。しかしながら、表面が互いに近いと、とても強い引力を発生することができる。さらに、強いクランプ圧力を発生するのに必要な電圧は、クーロンチャックに比べJ−Rチャックでは、非常に小さくすることができる。さらに、J―Rチャックは、クーロンチャックに比べ、より簡易で、より堅固である。クーロンチャックとJ−Rチャックの比較研究は、M.Sogardらの、J.Vac.Sci.Technol. B25、 2155(2007)、「Analysis of Coulomb and Johnsen−Rahbek Electrostatic Chuck Performance for EUV Lithography」に説明されており、許される限り、その内容をここに援用する。
【0029】
静電チャックは、1つの電極、又は複数の電極を有することができる。単一の電圧がチャックに印加されると、チャックは単極と呼ばれ、対極の電圧が複数の電極に印加されると、チャックは双極と呼ばれる。チャック表面は、平坦にも、高い突起やピンで覆われた状態にもできる。
【0030】
図2Aは、本発明の特徴を有する、デバイス200(ときどき「ワークピース」とも呼ばれる)、チャック230の第一の実施形態、及び制御系224の一部の斜視図である。例えば、デバイス200は、(図1に示された)レチクル26とすることができ、チャック230は、レチクル26を確実に保持する。代替的に、デバイス200は、(図1に示された)ウェハ28とすることができ、チャック230は、ウェハ28を確実に保持するために使用することができる。さらに代替的に、チャック230は、製造、検査、及び/又は測定動作中に、他の種類のデバイスを保持するのに使用することができる。
【0031】
図2Aにおいて、デバイス200は、全体として矩形形状(例えば、レチクル26の場合)であり、上面200A、下面200B、及び4つの側面200Cを含む。代替的に、デバイス200は、全体として円板形状(例えば、ウェハ28の場合)のような、別の構成を有することができる。ここで開示される実施形態において、デバイス200の上面200A、より一般的にはチャックに面する側は、導電性である。
【0032】
一つの実施形態において、チャック230は、協働してデバイス200を保持する、チャック本体244、クーロン電極246、及びJ−R電極248を含む。これらの部品の大きさ、形、及びデザインは、デバイス200の吸着要求に適合するように変更可能である。
【0033】
図2Aにおいて、チャック本体244は、剛体で、全体として矩形形状であり、最上部の第一面244Aと、反対の最底部の第二面244Bと、4つの側面244C(図2Aでは2つのみが見える)を含む。さらに、チャック本体244は、デバイス200と係合する吸着面250を規定する。図2Aにおいて、吸着面250は最底部の第二面244Bに位置する。代替的に、チャック本体244は、全体として円板形状の構成を有することができる。
【0034】
一つの実施形態において、チャック本体244は、比較的高い(有限の)抵抗を有する誘電体材料で構成される。チャック本体244に適した材料は、約106から1013オーム・cmの範囲の抵抗率を有する。チャック本体244に適した材料の非排他的な例は、窒化アルミニウム、アルミナとチタニアのセラミック混合物、あるいはシリコンカーバイドを含む。
【0035】
クーロン電極246は、デバイス200を吸着面250に引き寄せるクーロン力を発生するために使用される。換言すると、制御系224は、デバイス200を吸着面250に対して引き寄せるクーロン力を選択的に発生するために、クーロン電極246に選択的に電圧を印加する。図2Aにおいて、クーロン電極246は、クーロン電極板246A、及び空間的に離れた(想像線で示された)1つ以上の低抵抗伝送路246Bを含む。
【0036】
一つの実施形態において、クーロン電極板246Aは、全体として矩形形状であり、チャック本体244の最上部244Aに位置する。代替的に、クーロン電極板246Aは、チャック本体244の別の位置に配置することができ、及び/又はクーロン電極板246Aは、図2Aに示されたものとは異なる構成を有することができる。クーロン電極板246Aに適した材料は、クロム、銅、あるいは金のような、導電性の材料を含む。
【0037】
低抵抗伝送路246Bは、クーロン電極面246Aに導かれた電流が、吸着面250の近傍まで流れるための経路を供給する。さらに、低抵抗伝送路は、クーロン電極板246Aに印加された電圧が、吸着面の近傍までほとんど減少することなく伝達されることを可能とする。クーロン電極板246Aに印加された電圧は、吸着面250の近傍まで伝達されるので、かなり大きなクーロン力を発生することができる。
【0038】
低抵抗伝送路246Bの数、及び構成は、チャック230の要求に適合するように、変更可能である。図2Aにおいて、チャック230は、7×7の矩形マトリクスに構成され、空間的に離れた49個の低抵抗伝送路246Bを含む。代替的に、チャック230は49個より多い、又は49個より少ない低抵抗伝送路246Bを含むように構成することができる。低抵抗伝送路246Bの構成は、後でより詳しく説明される。
【0039】
J−R電極248は、デバイス200を吸着面250に対して引き寄せるJ−R力を発生するために使用される。換言すると、制御系224は、デバイス200を吸着面250に対して引き寄せるJ−R力を発生するために、J−R電極248に電圧を印加する。図2Aにおいて、J−R電極248は、J−R電極板248Aを含む。
【0040】
ある実施形態において、J−R電極板248Aは、全体として矩形形状であり、クーロン電極板246Aの下方において、チャック本体244の上面244Aに位置する。代替的に、J−R電極板248Aは、チャック本体244の別の位置に配置することができ、及び/又はJ−R電極板248Aは、図2Aに示されたものとは異なった構成を有することができる。J−R電極板248Aに適した材料は、クロム、銅、あるいは金のような導電性の材料を含む。
【0041】
J−R電極板、及びJ−R電極誘電体はまた、クーロンチャックの電極、及び誘電体と似たように機能する。その結果、J−Rチャックは、J−R力に加え、クーロン力にも寄与する。しかしながら、J−R誘電体は、一般的に比較的厚いために、J−R電極は、誘電体キャパシタの第二電極を形成している基板表面から離れており、そのため、クーロン力はとても微弱で、J−Rチャックを評価する際には、無視されることが多い。
【0042】
制御系224は、(1)デバイス200にクーロン力を発生させるために、クーロン電極246に電圧を選択的、独立的に印加し、(2)デバイス200にJ−R力を発生させるために、J−R電極248に電圧を選択的、独立的に印加する。
【0043】
ここで、ある実施形態では、デバイスの吸着初期に、制御系224は、クーロン力とJ−R力の両方を発生させ、吸着面250に対してデバイス200を確実に引き寄せるために、クーロン電極246とJ−R電極248の両方に電圧を印加する。後でより詳しく説明されるように、クーロン力とJ−R力の両方が、吸着初期に使用されることから、(1)デバイス200の非平坦さを克服/低減するために、及び/又は(2)吸着面250とデバイス200の間に位置するパーティクルをクラッシュするために、吸着面250に対してデバイス200を確実に引き寄せることができる。その結果、チャック230は、デバイス200の非平坦さを低減するために使用することができ、(図1に示された)露光装置10は、(図1に示された)より高品質で、より高機能密度のウェハ28を製造するために使用することができる。より具体的には、EUVLシステム10では、(図1に示された)レチクル26上のパターンの非平坦さ(すなわち、高さの変化量)は、ウェハ28上の像配列誤差をもたらす。この理由から、吸着面250が、非常に平坦であるのと同様、レチクル26の前面及び後面が、平坦であることが不可欠である。
【0044】
さらに、ある実施形態において、デバイス200が吸着面250に対して平坦に引き寄せられた後、制御系224は、クーロン電極246に電圧を印加するのを中止することができる。ここで、デバイス200が、吸着面250に対して平坦に引き寄せられた後、J−R力は単独で、吸着面250に対してデバイス200を平坦に保持するのに十分である。従って、(図1に示された)照明系12の動作中、及びレチクル26からウェハ28への機能の転写中に、電圧は、クーロン電極246に印加されない。その結果、露光装置10の動作中に、電力は低減され、かつチャック230での発熱が低減される。
【0045】
図2Aにおいて、制御系224は、(1)クーロン電極246に選択的に電圧を印加するクーロン回路252、及び(2)J−R電極248に選択的に電圧を印加するJ−R回路254を含む。この実施形態において、クーロン回路252は、クーロン電極246とデバイス200の導電性の上面200Aとの間に電気的に接続され、クーロン電極246に選択的に電圧を印加するために制御することができる、クーロン電圧源252Aとクーロンスイッチ252Bを含む。同様に、J−R回路254は、J−R電極248とデバイス200の導電性の上面200Aとの間に電気的に接続され、J−R電極248に選択的に電圧を印加するために使用することができる、J−R電圧源254AとJ−Rスイッチ254Bを含む。制御系224の動作は、後でさらに説明される。
【0046】
図2Bは、チャック230の簡略化した上面図であり、図2Cは、簡略化した下面図である。図2Aは、この実施形態において、(想像線で示された)低抵抗伝送路246Bが、7×7の矩形マトリクス状に、空間的に等間隔に離れていることを示している。
【0047】
図2Cは、この実施形態において、チャック230が、ピン型チャックであり、吸着面250が、空間的に離れた複数の突起250A(「ピン」)を含むことを示している。突起250Aの数、及び構成は、チャック230の要求に適合するように変更可能である。例えば、突起250Aは、円筒形の構成を有することができる。さらに、図2Cにおいて、チャック230は、7×7の矩形マトリクス状に構成され、空間的に離れた49個の突起250Aを含む。この実施形態において、突起250Aの数は、(図2Bに示された)低抵抗伝送路246Bの数に対応する。代替的に、チャック230は、49個より多い、又は49個より少ない突起250Aを含むように構成することができ、及び/又は突起250Aの数は、低抵抗伝送路246Bの数と異なるようにすることができる。
【0048】
図2Dは、図2Aのデバイス200とチャック230の簡略化した側面図である。図2Eは、図2Aの2E−2E線における、デバイス200とチャック230の簡素化された断面図、及びクーロン回路252とJ−R回路254を含む制御系224の一部の簡略図である。図2Fは、図2Dの2F線における、デバイス200の一部とチャック230の一部の拡大図である。
【0049】
図2D及び2Eは、この実施形態において、絶縁板256が、クーロン電極板246AとJ−R電極板248との間に配置されていることを示している。絶縁板256は、クーロン電極板246AとJ−R電極板248を、互いに電気的に分離する。絶縁板256に適した材料は、アルミナ、低熱膨張ガラス、又はゼロデュア(登録商標)を含む。
【0050】
さらに、図2Eは、J−R電極板248Aが、J−R電極板248Aを貫いて伸び、かつ、低抵抗伝送路246BがJ−R電極板248Aを貫いて伸びるのを可能とする、空間的に離れた複数の面開口248Bを含むことを示している。この実施形態において、J−R電極板248Aは、各々の低抵抗伝送路246Bに対して、個別の面開口248Bを含む。従って、J−R電極板248Aは、7×7の矩形マトリクスに構成され、空間的に離れた49個の開口248Bを含み、開口248Bの数は、低抵抗伝送路246Bの数に対応する。
【0051】
さらに、図2D及び2Eは、低抵抗伝送路246Bが、(1)クーロン電極板246Aから下方に片持ち梁状になり、(2)クーロン電極板246Aと吸着面250の近傍との間に伸びていることを示している。
【0052】
付加的に、図2D、2E、及び2Fは、突起250Aが、空間的に離れた複数の位置で、デバイス200と係合することを示している。
【0053】
図2Fは、比較的狭い電極ギャップ258が、各々の低抵抗伝送路246Bの先端と吸着面250との間に存在することを示している。非排他的な実施形態において、電極ギャップ258は、約200、100、50、20、10又は5ミクロンより小さい。比較的微小な電極ギャップ258が、デバイス200からクーロン電極246を分離するので、クーロン電極板246Aに印加された電圧は、大きなクーロン力を発生することができる。
【0054】
さらに、図2Fは、各々の低抵抗伝送路246Bが、伝送路電極246C、及び(図2Eに示された)J−R電極248と高抵抗の誘電体チャック本体244の大部分から、伝送路電極246Cを分離する伝送路絶縁体246Dを含むことを示している。この実施形態において、各々の伝送路電極246Cは、全体として円筒形状であり、各々の絶縁体246Dは、全体としてチューブ形状で、チャネル電極246Cを取り囲む。代替的に、例えば、各々の伝送路電極246Cは、全体として矩形形状の断面を有することができる。もし、全ての材料の熱膨張係数が、正確に一致していない場合には、熱応力を最小化するために、チャック本体244と絶縁体246Dとの間、及び絶縁体246Dと伝送路電極256Cとの間に、微小ギャップが維持されるべきである。
【0055】
伝送路電極に適した材料は、クロム、銅、金、又はガリウムやガリウムインジウムといった液体金属、のような導電性材料を含む。伝送路電極は、チャック本体の内部から熱を取り除く、熱伝導体としても機能することができる。伝送路絶縁体246Dに適した材料は、アルミナ、低熱膨張ガラス、又はゼロデュア(登録商標)を含む。
【0056】
なお、ここで開示された独特の構成のために、吸着面250全体は、均一で均質な材料で作製することができる。換言すると、本構成は、吸着面250が、組成において十分に均一となることを可能とする。このことは、吸着面250が、より精密に作製されることを可能とし、吸着面250が、非常に平坦であることを可能とする。
【0057】
さらに、本構成により、突起250Aの全領域を、J−R力を発生するために用いることができる。このことは、J−R力が、平坦性が向上した状態で、デバイス200を保持することを可能とする。
【0058】
別の実施形態において、伝送路絶縁体246Dは、伝送路電極246Bの先端と、ギャップ258の中に位置するチャック材料との間まで広げることができる。その結果、伝送路電極246Bは、チャック本体244から電気的に絶縁され、伝送路電極246Bに印加された電圧は、チャック本体を貫いて流れる電流を引き起こさない。従って、電圧がクーロン電極板246Aに印加された時に、チャック本体のオーミック熱が回避される。この実施形態においては、もし望むなら、露光中に、クーロン電極板246Aへの電圧を維持することができるかもしれない。
【0059】
クーロンスイッチ252BとJ−Rスイッチ254Bの調整に関する制御系224の動作が、図3A−3Eを用いてここで説明される。チャック330の一つの特定の実施形態が示され、図9と関連して後ほど説明されるが、制御系224の動作は、他の実施形態と実質的に同一である。図3A−3Eにおいて、各々のスイッチ252B、254Bが、P1、P2、P3と示す、3つの代替的な位置を含むものとして図示されている。
【0060】
図3Aと3Bは、デバイス200の初期ローディングを図示している。ローダ機構(不図示)は、チャック330の吸着面250に対してデバイス200を上昇させる。クーロンスイッチ252Bは、位置P3に設定され、J−Rスイッチ254Bは、位置P3に設定される。各々のスイッチ252B、254Bでは、この実施形態においては、P3が接地302に接続される。したがって、クーロンスイッチ252BのP3スイッチ位置は、クーロン電極246を接地302に電気的に接続し、J−Rスイッチ254BのP3スイッチ位置は、J−R電極248を接地302に電気的に接続する。電気接地302は、アース電位としてもよく、又は他の電位としてもよい。図3Aでは、デバイス200は、ローディング前に、電気接地302と同じ電位に維持され、そのため、デバイス200が、図3Bのクーロン電気接続部304及びJ−R電気接続部306と接触するとき、全ての構成要素は同じ電位であり、電流は流れない。もし、電圧差が生じると、電流サージが引き起こされ、デバイス200への損傷が生じるかもしれない。
【0061】
図3Cでは、制御系224は、クーロンスイッチ252Bを位置P2に設定し、J−Rスイッチ254Bを位置P2に設定し、これにより、クーロン電極246にクーロン電圧源252Aからの電圧を印加し、J−R電極248にJ−R電圧源254Aからの電圧を印加する。いくつかの実施形態では、制御系224は、J−R電極248に電圧を印加する前に、クーロン電極246に電圧を印加する。この段階で、デバイス200の吸着は完了し、露光を開始することができる。
【0062】
図3Dは、別の実施形態を示しており、ここでは、クーロンスイッチ252Bは、位置P1に設定され、これにより電気回路は開放され、クーロン電極246が、チャックの局所電位に浮遊することを可能とする。いくつかの場合では、制御系224は、クーロンスイッチ252Bを位置P2から位置P1に変更する前に、クーロン電圧源252Aを、ほぼチャックの局所電位となるように調整することもある。この段階で、デバイス200の吸着は完了し、露光が始まる。
【0063】
デバイス200を用いた露光が完了したとき、図3D及び3Eに示されるように、アンロード処理が始まる。チャックがデバイス200を解放している間に、デバイス200を支持するためにローダ機構が適切な位置に導入される。制御系224は、図3DにおいてJ−R電圧源254Aを、電気接地302の電位に調整し、クーロンスイッチ252Bを、図3Eの位置P3に設定し、続いて、制御系224は、J−Rスイッチ254Bを位置P3に設定する。
【0064】
解放時間は、基本的には、吸着面250の近傍に位置する電荷が、排出されるのに必要とされる時間によって決定される。クーロン電極板246Aのデバイス200への近接は、放電がさらに距離のあるJ−R電極248を含む、一般的なJ―Rチャックの場合と比べ、放電路の抵抗を低減し、解放時間を低減する。放電の進み具合は、電流計(不図示)で測定されることもある。
【0065】
放電が完了した時、デバイス200は、ローダ機構によって取り外される。
【0066】
図3A−3Eにおいて、クーロンスイッチ252B及びJ−Rスイッチ254Bは、三端子スイッチとして示されているが、その機能は、複数の独立スイッチにより、提供されることもある。ある実施形態では、チャック330の基本動作中に、J−Rスイッチ254Bの位置P1は使用されない。
【0067】
本発明の有益性と特徴は、図4A−5Cを参照して、さらに説明される。特に、図4Aは、チャック230の(図2Aに示された)電極246及び248の活性化前の、図2Eの4A線におけるデバイス200の一部とチャック230の一部の簡略化した拡大図、及び制御系224の一部の簡略化した図である。この時点では、説明のために、制御系224は、(1)J−R電極248が、(図3Aに示された)電気接地302に接続されるように、J−Rスイッチ254Bを位置P3に設定し、(2)クーロン電極246が、(図3Aに示された)電気接地302に接続されるように、クーロンスイッチ252Bを位置P3に設定した。この状態の間、デバイス200は、不図示の機械的デバイスローダ機構により、吸着面に押し付けられている。
【0068】
図4Aは、デバイス200のこの特定の部分は平坦ではなく、湾曲領域459を含んでいることを示している。その結果、デバイス200と吸着面250との間に、非接触ギャップ460が存在する。より具体的には、図4Aで、3つの突起250Aが、図示されている。この例において、説明を容易にするために、突起250Aは、450A、450B、及び450Cと分類されている。さらに、デバイス200の非平坦さのために、突起450A及び450Cのみが、デバイス200に接触し、非接触ギャップ460が、突起450Bとデバイス200との間に存在する。
【0069】
なお、J−R力の発生は、吸着面250と、デバイス200との間の、直接的な物理的接触に大いに依存する。例えば、(図2Aに示された)J−R電極248に電圧が印加された時、吸着面250がデバイス200と直接的に接触し係合する領域で、強いJ−R力が発生し、一方、吸着面250がデバイス200と直接的に接触しない領域では、非常に弱いJ−R力が発生するか、又はJ−R力は発生しない。図3Aに示された例において、(1)J−Rスイッチ254Bが、位置P2に設定された時、デバイス200に直接的に接触する突起450A及び450Cにおいて、非常に強いJ−R力が発生し、(2)突起450Bは、デバイス200に直接的に接触しないため、突起450Bでは、非常に弱いJ−R力が発生するか、又はJ−R力は発生しない。微弱な、又はゼロのJ−R力が、突起450Bで発生するため、J−R力のみの使用は、湾曲領域459を除去又は低減し、デバイス200を完全に平坦化するのに十分ではないことがある。換言すると、J−R力は、単独では、平坦性を向上するために非接触領域を引き寄せるのには、有効ではないこともある。
【0070】
図4Bは、チャック230の(図2Aに示された)クーロン電極246及びJ−R電極248の両方の活性化後の、図4Aのデバイス200の一部とチャック230の一部の簡略化した拡大図、及び制御系224の一部の簡素化された図である。この時点では、説明のために、制御系224は、(1)J−R電圧源254Aが、(図2Aに示された)J−R電極248に電圧を印加するように、J−Rスイッチ254Bを位置P2に設定し、(2)クーロン電圧源252Aが、クーロン電極246に電圧を印加するように、クーロンスイッチ252Bを位置P2に設定した。
【0071】
なお、ある実施形態において、J−R電極248に電圧を印加する前に、クーロン電極246に電圧を印加するのが望ましいことがある。このことは、スイッチ252B、254Bを選択的に制御することによって行うことができる。ここで、レチクルのようなデバイスは、チャック230上にロードされる時、一般的に、厳密に平坦ではない。従って、ここで開示されたチャック230で平坦に引き寄せられた時、レチクルは、突起に対して少しスライドさせる必要があることが多い。平坦化処理の間、J−R力は、レチクルと接触する突起に対して、レチクルのスライドを妨げることがある。従って、ここでは、比較的長距離で、比較的微弱なクーロン力で始めるのが、有益である。クーロン力が、レチクルを平坦化した後、レチクルをさらに平坦化し、適切な位置に保持するために、J−R力を印加することができる。
【0072】
図4Bは、J−R力とクーロン力の両方の印加が、湾曲領域459を平坦化し、デバイス200の平坦性が、著しく改善されたことを示している。その結果、デバイス200と吸着面250との間の(図4Aに示された)非接触ギャップ460は、もはや存在しない。より具体的には、図4Bでは、突起450A、450B及び450Cは、ここでは全てデバイス200と直接的に接触している。
【0073】
なお、吸着面250とデバイス200との間の微小ギャップの存在下で、クーロン力は、事実上影響を受けない。従って、図4Aの、突起450Bとデバイス200との間の非接触ギャップ460は、突起450Bで発生するクーロン力の大きさに影響を与えない。その結果、クーロン力は、デバイス200を突起450Bに引き寄せ、デバイス200の湾曲領域459を平坦化するために使用することができる。
【0074】
さらに、各々の突起450A、450B、450Cは、J−R力とクーロン力の両方を発生することができる。従って、吸着面250上に無駄となる領域は、存在しない。
【0075】
図4Cは、クーロン電極246の非活性化後で、(図2Aに示された)J−R電極248は、制御系224によってまだ活性化されている状態での、図4Bのデバイス200の一部とチャック230の一部の簡略化した拡大図である。この時点では、説明のために、制御系224は、(1)J−R電圧源254Aが、(図2Aに示された)J−R電極248に電圧を印加するように、J−Rスイッチ254Bを位置P2に維持し、(2)クーロン電圧源252Aが、クーロン電極246に電圧を印加しないように、クーロンスイッチ252Bを位置P1に設定した。
【0076】
図4Cは、J−R力のみの印加が、突起450Bに対する湾曲領域459の平坦性、及びデバイス200の平坦性を維持するのに十分あることを示している。その結果、デバイス200と吸着面250との間の(図4Aに示された)非接触ギャップ460は、もはや存在しない。より具体的には、図4Cにおいて、突起450A、450B、及び450Cは、ここでは全てデバイス200と直接的に接触している。
【0077】
上記のように、J−R力の発生は、吸着面250とデバイス200との間の物理的接触に大きく依存している。従って、突起450Bが、デバイス200と直接、物理的に接触された後、平坦化された湾曲領域459を維持するために、突起450Bとデバイス200において非常に強いJ−R力が発生する。従って、この時点において、もはやクーロン電極246に電圧を印加する必要はない。
【0078】
この構成において、制御系224は、デバイス200の吸着初期に、デバイス200を平坦にするために、クーロン電極246とJ−R電極248の両方に電圧を印加する。その後、クーロン電極246は、(図1に示された)露光装置10の動作中に、非活性化することができる。
【0079】
図5Aは、チャック230の(図2Aに示された)電極246、248の活性化前の、図2Eの5A線におけるデバイス200の一部とチャック230の一部の簡略化した拡大図、及び制御系224の一部の簡略図である。この時点で、説明のために、制御系224は、(1)J−R電極248が、(図3Aに示された)電気接地302に接続されるように、J−Rスイッチ254Bを位置P3に設定し、(2)クーロン電極246が、電気接地302に接続されるように、クーロンスイッチ252Bを位置P3に設定した。この状態の間、デバイス200は、不図示の機械的デバイスローダ機構によって、吸着面に押し付けられている。
【0080】
図5Aは、パーティクル562が、デバイス200と吸着面250との間に配置されていることを示している。パーティクル562は、デバイス200が平坦ではなく、デバイス200が湾曲領域559を含む原因となる。さらに、その結果、デバイス200と吸着面250との間に、非接触ギャップ560が存在する。より具体的には、図5Aに、3つの突起250Aが図示されている。この例において、説明を容易にするために、突起250Aは、550A、550B、及び550Cと分類されている。さらに、パーティクル562のために、突起550A及び550Cのみがデバイス200に接触し、非接触ギャップが突起550Bとデバイス200との間に存在する。
【0081】
上記のように、J−R力の発生は、吸着面250とデバイス200との間の、直接的な、物理的接触に大いに依存する。従って、デバイス200と直接接触しないため、突起550Bでは、非常に弱いJ−R力が発生するか、又はJ−R力が発生しない。微弱な、又はゼロのJ−R力が、突起550Bで発生するため、J−R力の使用は、パーティクル562をクラッシュし、デバイス200を完全に平坦化するのに十分ではないこともある。換言すると、J−R力は、単独では、平坦性を改善するために、又はパーティクルをクラッシュ、及び/又は埋め込むために非接触領域を引き寄せるのに、効果がないこともある。
【0082】
図5Bは、チャック230の(図2Aに示された)クーロン電極246とJ−R電極248の両方の活性化後の、図5Aのデバイス200の一部とチャック230の一部の簡略化した拡大図であり、制御系224の一部の簡略図である。この時点で、説明のために、制御系224は、(1)J−R電圧源254Aが、(図2Aに示された)J−R電極248に電圧を印加するように、J−Rスイッチ254Bを位置P2に設定し、(2)クーロン電圧源252Aが、クーロン電極246に電圧を印加するように、クーロンスイッチ252Bを位置P2に設定した。
【0083】
図5Bは、J−R力とクーロン力の両方の印加が、チャック230がパーティクル562をクラッシュ、及び/又は埋め込み、湾曲領域559を平坦化して、デバイス200の平坦性を向上させる原因となることを示している。その結果、デバイス200と吸着面250との間の(図5Aに示された)非接触ギャップ560は、もはや存在しない。より具体的には、図5Bにおいて、突起550A、550B及び550Cは、ここでは全てデバイス200と直接的に接触している。
【0084】
上記のように、吸着面250とデバイス200との間の微小ギャップの存在下で、クーロン力は、事実上影響を受けない。従って、図5Aの、突起550Bとデバイス200との間の非接触ギャップ560は、突起550Bで発生するクーロン力の大きさに影響を与えない。その結果、クーロン力は、パーティクル562をクラッシュ、及び/又は埋め込むために使用することができる。
【0085】
図5Cは、クーロン電極246の非活性化後で、(図2Aに示された)J−R電極248が制御系224によってまだ活性化されている状態での、図5Bのデバイス200の一部とチャック230の一部の簡略化した拡大図である。この時点で、説明のために、制御系224は、(1)J−R電圧源254Aが、(図2Aに示された)J−R電極248に電圧を印加するように、J−Rスイッチ254Bを位置P2に維持し、(2)クーロン電圧源252Aが、クーロン電極246に電圧を印加しないように、クーロンスイッチ252Bを位置P1に設定した。
【0086】
図5Aで、パーティクルの大きさは、説明のために非常に誇張されている。実際には、パーティクルは、突起550Bの寸法に比べて、一般的に非常に小さい。その結果、パーティクルがクラッシュされる、又は埋め込まれる時、突起550Bと関係する吸着面のかなりの割合が、デバイス200と直接的に接触し、そのためJ−R力は、非常に強くなることができる。この理由から、J−R力が、有効になることができる前に、クーロン力は、パーティクルを完全にクラッシュ、及び/又は埋め込む必要はない。クーロン力は、J−R力が有効となることができるように、突起550Bと関係する吸着面のいくらかの割合を、デバイス200と接触させる必要があるだけである。
【0087】
図5Cは、J−R力のみの印加が、突起550Bに対する湾曲領域559の平坦性、及びデバイス200の平坦性を維持するのに、十分であることを示している。その結果、デバイス200と吸着面250との間の(図5Aに示された)非接触ギャップ560は、もはや存在しない。より具体的に、図5Cにおいて、突起550A、550B、及び550Cは、ここでは全てデバイス200と直接的に接触している。
【0088】
上記のように、J−R力の発生は、吸着面250とデバイス200との物理的接触に大きく依存する。従って、突起550Bが、デバイス200と直接、物理的に接触された後、今度は非常に強いJ−R力が突起550B及びデバイス200において発生する。従って、この時点において、もはやクーロン電極246に電圧を印加する必要はない。
【0089】
この構成において、制御系224は、デバイス200の吸着初期に、デバイス200を平坦にするために、クーロン電極246とJ−R電極248の両方に電圧を印加する。その後、クーロン電極246は、(図1に示された)露光装置10の動作中に、非活性化することができる。
【0090】
図6は、図2AのJ−R電極248及びクーロン電極246に関して、ギャップに対する発生圧力の、一つの非排他的な実施形態を示すグラフである。この実施形態において、(1)線670(「o」と実線)は、突起で発生したJ−R力を示し、(2)線672(「x」と実線)は、突起間で発生したJ−R力を示し、(3)線674(短い破線)は、突起で発生したクーロン力を示し、(4)線676(長い破線)は、突起間で発生したクーロン力を示している。このグラフは、(1)突起で発生したJ−R力は、接触がある場合には非常に大きく、ギャップがある量に達するまでは、ギャップが増加するにつれて急速に減少し、(2)突起で発生したクーロン力は、ギャップの増加に対して比較的一定であり、(3)突起間で発生したクーロン力も、ギャップの増加に対して比較的一定であり、(4)突起で発生したJ−R力は、ギャップが比較的小さい時、突起で発生したクーロン力よりも大きいことを示している。
【0091】
図7Aは、デバイス200、及びチャック730の別の実施形態の簡略化した側面図であり、図7Bは、図7Aのデバイス200とチャック730の簡略化した断面図である。この実施形態において、チャック730は、上記で説明され図2Aで示された、対応する構成要素と同様のクーロン電極746及びJ−R電極748を含む。しかしながら、この実施形態では、チャック本体744の吸着面750は平坦で、突起を含まない。従って、吸着面が非常に平坦に作製されることが重要である。上記で説明されたように、本発明の吸着面750は、均一な組成で作製されている。この特徴は、非常に平坦な吸着面750を作製することを容易とする。
【0092】
さらに、図7A及び7Bは、電極ギャップ758が、各々の低抵抗伝送路746Bと吸着面750との間に存在することを示している。
【0093】
この実施形態においては、吸着面750全体は、J−R力を発生するのに使用することができ、一方クーロン力は、低抵抗伝送路746Bの領域に限定される。
【0094】
図8は、デバイス200、及びチャック830の別の実施形態の簡略化した側面図である。この実施形態において、チャック830は、図2Aで示されたチャック本体244と同様、複数の突起850Aを含む吸着面850を有するチャック本体844を含む。さらに、チャック830は、(図2Aに示された)クーロン回路252に電気的に接続されたクーロン電極846、及び(図2Aに示された)J−R回路254に電気的に接続されたJ−R電極848を含む。しかしながら、この実施形態において、クーロン電極846は、吸着面850に非常に近く位置し、かつ電極ギャップ858だけ空間的に離された(チャック本体844中に配置された)クーロン電極板846Aのみを含む。さらに、この実施形態において、J−R電極848は、チャック本体844の中に配置されている。さらに、クーロン電極846は、J−R電極848よりも吸着面850に近い。
【0095】
この実施形態において、クーロン電極板846A全体を、クーロン力を発生するために使用することができ、一方J−R力は、主に突起850Aの領域に限定される。
【0096】
図9は、デバイス200、及びチャック930の別の実施形態の簡略化した側面図である。この実施形態において、クーロン電極946及びJ−R電極948は、上記で説明され図8で示された、対応する構成要素と同様である。しかしながら、この実施形態において、チャック本体944の吸着面950は平坦で、複数の突起を含まない。
【0097】
さらに、図9は、電極ギャップ958が、クーロン電極板946Aと吸着面950との間に存在することを示している。
【0098】
この実施形態において、吸着面950全体は、クーロン力とJ−R力を発生するために使用することができる。
【0099】
図10は、デバイス200、及び図8に示され、上記で説明されたチャック830と同様のチャック1030の、さらに別の実施形態の簡略化した側面図である。この実施形態において、チャック1030は、図8に示されたチャック本体844と同様、複数の突起1050Aを含む吸着面1050を有するチャック本体1044を含む。さらに、チャック1030は、(ボックスとして示された)クーロン回路1052に電気的に接続されたクーロン電極1046、及び(ボックスとして示された)J−R回路1054に電気的に接続されたJ−R電極1048を含む。しかしながら、この実施形態において、チャック1030は、双極性チャックであり、チャック1030の隣接する電極には、反対の極性の電圧が印加される。より具体的に、この実施形態において、(1)クーロン電極1046は、第一クーロン電極1047A、及び第一クーロン電極1047Aから空間的に離れた第二クーロン電極1047Bを含み、(2)クーロン回路1052は、クーロン電極1047A、1047Bの一つが正電荷を有し、クーロン電極1047A、1047Bのもう一つが負電荷を有するように、クーロン電極1047A及び1047Bに電圧を印加し、(3)J−R電極1048は、第一J−R電極1049A、及び第一J−R電極1049Aから空間的に離れた第二J−R電極1049Bを含み、(4)J−R回路1054は、J−R電極1049A、1049Bの一つが正電荷を有し、1049A、1049Bのもう一つが負電荷を有するように、J−R電極1049A及び1049Bに電圧を印加する。電圧は、一般的に、デバイス200の電圧が、電気接地302と近くなるように決められる。
【0100】
ここでは、前述した目的を達成し効果を得るための詳細な特定のチャック30及び方法について可能な限り開示しており、それは本発明の好ましい現時点での実施形態の単なる具体例であって、添付されたクレーム以外に、構造や構成の詳細についてここで示したものに限定する意図はない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスを保持するための静電チャックであって、
高抵抗を有する誘電体で構成され、デバイスと係合する吸着面、を含むチャック本体と、
前記吸着面から離れて配置されたJ−R電極と、
前記吸着面から離れて配置されたクーロン電極と、
前記デバイスを前記吸着面に引き寄せるJ−R力を発生するために、前記J−R電極に選択的に第一電圧を印加し、
かつ前記デバイスを前記吸着面に引き寄せるクーロン力を発生するために、前記クーロン電極に選択的に第二電圧を印加する制御系と、
を備える静電チャック。
【請求項2】
前記吸着面は、組成において均一である、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記吸着面は、平坦である、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記吸着面は、複数の突起を含む、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記クーロン電極は、前記J−R電極よりも前記吸着面に近い、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項6】
電極ギャップが、クーロン電極を前記吸着面から分離し、かつ前記電極ギャップは、約100ミクロンより小さい、請求項5に記載の静電チャック。
【請求項7】
照明源と、
前記デバイスを保持する、請求項1に記載の前記静電チャックと、を備える露光装置。
【請求項8】
前記制御系は、前記デバイスの吸着初期に、前記J−R電極に前記第一電圧を、かつ前記クーロン電極に前記第二電圧を印加し、続いて、
前記制御系は、前記照明源の動作中に、前記クーロン電極に前記第二電圧を印加しない、
請求項7に記載の露光装置。
【請求項9】
前記静電チャックは、レチクルを保持する、請求項7に記載の露光装置。
【請求項10】
像をレチクルからウェハに転写するための露光装置であって、
選択的に光束を前記レチクルに導く照明源と、
前記レチクルを保持する静電チャックであって、(1)前記デバイスと係合する吸着面を有するチャック本体と、(2)前記吸着面から離れて配置されたJ−R電極と、(3)前記吸着面から電極ギャップだけ離れて配置されたクーロン電極であって、前記J−R電極よりも前記吸着面に近い前記クーロン電極と、(4)前記デバイスを前記吸着面に引き寄せるJ−R力を発生するために、前記J−R電極に第一電圧を選択的に印加し、かつ前記デバイスを前記吸着面に引き寄せるクーロン力を発生するために、前記クーロン電極に第二電圧を選択的に印加する制御系と、を備える前記静電チャックと、
を備える露光装置。
【請求項11】
前記吸着面は、組成において均一である、請求項10に記載の露光装置。
【請求項12】
電極ギャップが、前記クーロン電極を前記吸着面から分離し、前記電極ギャップは、約100ミクロンより小さい、請求項10に記載の露光装置。
【請求項13】
前記制御系は、前記レチクルの吸着初期に、前記J−R電極に前記第一電圧を、かつ前記クーロン電極に前記第二電圧を印加し、続いて、
前記制御系は、前記照明源が前記光束を前記レチクルに導いている時には、前記クーロン電極に前記第二電圧を印加しない、
請求項10に記載の露光装置。
【請求項14】
デバイスを保持するための方法であって、
高抵抗を有する誘電体で構成され、前記デバイスと係合する吸着面を含むチャック本体を供給する工程と、
前記吸着面から離れたJ−R電極を配置する工程と、
前記吸着面から電極ギャップだけ離れたクーロン電極を配置する工程と、
前記デバイスを前記吸着面に向かって引き寄せるJ−R力を発生するために、制御系を用いて前記J−R電極に第一電圧を選択的に印加する工程と、
前記デバイスを前記吸着面に向かって引き寄せるクーロン力を発生するために、前記クーロン電極に第二電圧を選択的に印加する工程と、
を備える方法。
【請求項15】
前記吸着面は、組成において均一である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記クーロン電極は、前記J−R電極よりも前記吸着面に近い、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記J−R電極に前記第一電圧を印加している間に、前記クーロン電極への前記第二電圧を中断する工程をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
照明源を供給する工程と、
レチクルを供給する工程と、
請求項14に記載された前記方法により、前記レチクルを保持する工程と、
を備える露光装置を製造するための方法。
【請求項19】
基板を供給する工程と、
請求項18に記載の前記方法により製造された前記露光装置を用いて、前記基板上に像を形成する工程と、を備えるウェハの製造方法。
【請求項1】
デバイスを保持するための静電チャックであって、
高抵抗を有する誘電体で構成され、デバイスと係合する吸着面、を含むチャック本体と、
前記吸着面から離れて配置されたJ−R電極と、
前記吸着面から離れて配置されたクーロン電極と、
前記デバイスを前記吸着面に引き寄せるJ−R力を発生するために、前記J−R電極に選択的に第一電圧を印加し、
かつ前記デバイスを前記吸着面に引き寄せるクーロン力を発生するために、前記クーロン電極に選択的に第二電圧を印加する制御系と、
を備える静電チャック。
【請求項2】
前記吸着面は、組成において均一である、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記吸着面は、平坦である、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記吸着面は、複数の突起を含む、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記クーロン電極は、前記J−R電極よりも前記吸着面に近い、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項6】
電極ギャップが、クーロン電極を前記吸着面から分離し、かつ前記電極ギャップは、約100ミクロンより小さい、請求項5に記載の静電チャック。
【請求項7】
照明源と、
前記デバイスを保持する、請求項1に記載の前記静電チャックと、を備える露光装置。
【請求項8】
前記制御系は、前記デバイスの吸着初期に、前記J−R電極に前記第一電圧を、かつ前記クーロン電極に前記第二電圧を印加し、続いて、
前記制御系は、前記照明源の動作中に、前記クーロン電極に前記第二電圧を印加しない、
請求項7に記載の露光装置。
【請求項9】
前記静電チャックは、レチクルを保持する、請求項7に記載の露光装置。
【請求項10】
像をレチクルからウェハに転写するための露光装置であって、
選択的に光束を前記レチクルに導く照明源と、
前記レチクルを保持する静電チャックであって、(1)前記デバイスと係合する吸着面を有するチャック本体と、(2)前記吸着面から離れて配置されたJ−R電極と、(3)前記吸着面から電極ギャップだけ離れて配置されたクーロン電極であって、前記J−R電極よりも前記吸着面に近い前記クーロン電極と、(4)前記デバイスを前記吸着面に引き寄せるJ−R力を発生するために、前記J−R電極に第一電圧を選択的に印加し、かつ前記デバイスを前記吸着面に引き寄せるクーロン力を発生するために、前記クーロン電極に第二電圧を選択的に印加する制御系と、を備える前記静電チャックと、
を備える露光装置。
【請求項11】
前記吸着面は、組成において均一である、請求項10に記載の露光装置。
【請求項12】
電極ギャップが、前記クーロン電極を前記吸着面から分離し、前記電極ギャップは、約100ミクロンより小さい、請求項10に記載の露光装置。
【請求項13】
前記制御系は、前記レチクルの吸着初期に、前記J−R電極に前記第一電圧を、かつ前記クーロン電極に前記第二電圧を印加し、続いて、
前記制御系は、前記照明源が前記光束を前記レチクルに導いている時には、前記クーロン電極に前記第二電圧を印加しない、
請求項10に記載の露光装置。
【請求項14】
デバイスを保持するための方法であって、
高抵抗を有する誘電体で構成され、前記デバイスと係合する吸着面を含むチャック本体を供給する工程と、
前記吸着面から離れたJ−R電極を配置する工程と、
前記吸着面から電極ギャップだけ離れたクーロン電極を配置する工程と、
前記デバイスを前記吸着面に向かって引き寄せるJ−R力を発生するために、制御系を用いて前記J−R電極に第一電圧を選択的に印加する工程と、
前記デバイスを前記吸着面に向かって引き寄せるクーロン力を発生するために、前記クーロン電極に第二電圧を選択的に印加する工程と、
を備える方法。
【請求項15】
前記吸着面は、組成において均一である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記クーロン電極は、前記J−R電極よりも前記吸着面に近い、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記J−R電極に前記第一電圧を印加している間に、前記クーロン電極への前記第二電圧を中断する工程をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
照明源を供給する工程と、
レチクルを供給する工程と、
請求項14に記載された前記方法により、前記レチクルを保持する工程と、
を備える露光装置を製造するための方法。
【請求項19】
基板を供給する工程と、
請求項18に記載の前記方法により製造された前記露光装置を用いて、前記基板上に像を形成する工程と、を備えるウェハの製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2013−516759(P2013−516759A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546651(P2012−546651)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/JP2010/073898
【国際公開番号】WO2011/083751
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/JP2010/073898
【国際公開番号】WO2011/083751
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]