説明

ハニカムフィルタの製造方法

【課題】連続再生性をより高めることのできるハニカムフィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】ハニカムフィルタ20は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセル23を形成する多孔質の隔壁部22の上に流体に含まれる固体成分を捕集除去する層である捕集層24が形成されている。また、隔壁部22及び捕集層24のうち少なくとも捕集層24は触媒を有している。本発明では、捕集層を形成する捕集層原料と、触媒成分を有する触媒材と、を含むスラリーを接触させて、隔壁部22に捕集層原料と触媒材とを同時に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハニカムフィルタとしては、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセルと一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口されたセルとが交互に配設されるよう形成された多孔質の隔壁部と、この隔壁部上に形成され排ガスに含まれる粒子状物質(以下PMとも称する)を捕集する層である捕集層と、を備えたものが知られている。また、このようなものにおいて、触媒を担持し、排ガス浄化性能をより高めたものが知られている。
【0003】
このようなハニカムフィルタの製造方法としては、ハニカム構造体の隔壁上に、捕集層を形成し結合させ、その後、ディッピング或いは吸引等の方法により触媒成分をコートし、乾燥、熱処理する製造方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−214335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなハニカムフィルタでは、例えば、捕集したPMを燃焼させることによりフィルタの機能を回復させる「再生処理」を行うことがある。しかしながら、上述した製造方法で得られたハニカムフィルタを用いた場合、再生処理においてフィルタの機能を回復させる性能がまだ十分でないことがあり、連続再生性をより高めることが望まれていた。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、連続再生性をより高めることのできるハニカムフィルタの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明のハニカムフィルタの製造方法は、
流体に含まれる固体成分を捕集するハニカムフィルタの製造方法であって、
一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部を備えたハニカム構造体に、流体に含まれる固体成分を捕集する層である捕集層を形成する捕集層原料と、触媒成分を有する触媒材と、を含むスラリーを接触させて、前記隔壁部に捕集層原料と触媒材とを同時に形成する捕集層原料−触媒材同時形成工程、
を含むものである。
【0009】
このハニカムフィルタの製造方法では、隔壁部に捕集層原料と触媒材とを同時に形成する。この製造方法では、ハニカムフィルタにおける連続再生性をより高めることができる。この理由は明らかではないが、以下のように考えられる。予め捕集層原料を形成した隔壁部に触媒材を含むスラリーを接触させた場合、触媒材を接触させる際に捕集層の細孔内や捕集層と隔壁との境界部分に触媒材が凝集したり、凝集した触媒材によってガスの流路が閉塞されることがある。これに対して、本発明の製造方法では、隔壁部に捕集層原料と触媒材とを同時に形成するため、触媒材の凝集やガス流路の閉塞を抑制できる。そして、触媒材の凝集を抑制できるため、触媒材の表面積が大きくなり、触媒機能をより効率よく発揮させることができると考えらる。また、ガスの流路の閉塞をより抑制できるため、再生処理に際して高温のガスをより効率よく流通させるなどして、PMをより効率よく燃焼することができると考えられる。なお、ここでは、連続再生性とは、再生処理において、ハニカムフィルタに堆積しているスート(すす)を連続的に減少させて、ハニカムフィルタを再生する能力をいう。
【0010】
本発明のハニカムフィルタの製造方法において、前記捕集層原料は、平均粒径が2μm以上7μm以下であるものとしてもよい。こうすれば、ハニカムフィルタにおける圧力損失の上昇をより抑制することができる。ここで、平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、水を分散媒として原料粒子を測定したメディアン径(D50)をいうものとする。
【0011】
本発明のハニカムフィルタの製造方法において、前記隔壁部の材質は、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウムのうちのいずれか一種以上であり、前記捕集層原料は、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウムのうちのいずれか一種以上を含むものとしてもよい。
【0012】
本発明のハニカムフィルタの製造方法において、前記捕集層原料は、前記隔壁部の材質と同種のものであるものとしてもよい。こうすれば、捕集層と隔壁部との熱膨張率を同等とすることができ、熱膨張収縮による隔壁部と捕集層との剥離などをより抑制することができると考えられる。ここで、同種とは、例えば、同一の成分系に分類されるものとしてもよい。このような成分系としては、例えば、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウムなどに分類することができる。
【0013】
本発明のハニカムフィルタの製造方法において、前記捕集層原料−触媒材同時形成工程では、前記捕集層原料と触媒材とを含むスラリーに前記ハニカム構造体の一方の端部を接触させ、前記ハニカム構造体の他方の端部から吸引して、前記隔壁部に捕集層原料と触媒材とを同時に形成するものとしてもよい。こうすれば、捕集層原料の形成と触媒材の形成とを同時に行うことにより製作コストを抑制できる。また、捕集層の骨材となる捕集層原料に効率的に触媒材を担持することができる。さらに、捕集原料と触媒材とを含むスラリーの形成量をより容易に調整できる。さらにまた、隔壁部の内部にも触媒材を効率よく形成できる。なお、捕集原料と触媒材とを含むスラリーにハニカム構造体の一方の端部を接触させるに際して、ハニカム構造体の端部をスラリーに浸漬させてもよいし、ハニカム構造体の端部からスラリーを流し込んでもよいし、ハニカム構造体の端部にスラリーを吹き付けてもよい。
【0014】
本発明のハニカムフィルタの製造方法において、前記捕集層原料−触媒材同時形成工程では、前記捕集層原料と触媒材とを含むスラリーに前記ハニカム構造体を浸漬させて、前記隔壁部に捕集層原料と触媒材とを同時に形成するものとしてもよい。こうすれば、より容易にハニカム構造体の隔壁部に捕集層原料と触媒材とを形成することができる。
【0015】
本発明のハニカムフィルタの製造方法は、上述したハニカムフィルタの製造方法であって、前記形成した捕集層原料と触媒材とを前記隔壁部に定着させる熱処理を行う熱処理工程、を含むものであることが好ましい。こうすれば、形成した捕集層原料と触媒材とをより強固にハニカム構造体の隔壁部に定着させることができる。ここで、定着させるとは、捕集層原料や触媒材がハニカムフィルタから分離しない程度にハニカム構造体の隔壁部に保持されている状態にすることをいう。なお、捕集層原料や触媒材は、ハニカム構造体の隔壁部に直接的又は間接的に固定されていてもよい。こうしても、形成した捕集層原料と触媒材とをより強固にハニカム構造体の隔壁部に定着させることができる。
【0016】
このような本発明のハニカムフィルタの製造方法において、前記熱処理工程では、500℃以上750℃以下の熱処理温度で熱処理を行うものとしてもよい。500℃以上であれば、ハニカム構造体の隔壁部に捕集層原料や触媒材をより安定的に定着させることができる。また、750℃以下であれば、捕集層の密度をより適切なものとすることができ、また、触媒の凝集をより抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図。
【図2】ハニカムフィルタ40の構成の概略の一例を示す説明図。
【図3】捕集層原料−触媒材同時形成装置50の構成の概略を示す説明図。
【図4】捕集層原料の粒子径と圧損および再生効率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。本発明の製造法方法で得られるハニカムフィルタ(以下、本発明のハニカムフィルタとも称する)は、例えば、自動車のエンジンの排気浄化用にエンジンの排気管に配設されるものであり、排気中に含まれる固体成分(粒子状物質、以下PMとも称する)を捕集し除去するものである。このハニカムフィルタでは、PMの捕集量が所定値に達すると、燃料濃度を高めて捕集したPMを燃焼する処理(再生処理)を実行する。
【0019】
本発明のハニカムフィルタの一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図である。本実施形態のハニカムフィルタ20は、図1に示すように、隔壁部22を有する2以上のハニカムセグメント21の外周面同士が接合層27によって接合された形状を有し、その外周に外周保護部28が形成されている。このハニカムフィルタ20は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止部26により目封止され、流体としての排ガスの流路となる複数のセル23を形成する多孔質の隔壁部22と、隔壁部22上に形成され流体(排ガス)に含まれる固体成分(PM)を捕集する層である捕集層24と、を備えている。また、隔壁部22及び捕集層24のうち少なくとも捕集層24は触媒を有している。ハニカムセグメント21では、隔壁部22は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセル23と一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口したセル23とが交互に配置されるよう形成されている。また、ハニカムフィルタ20では、入口側が開口しているセル23(入口側セルとも称する)へ入った排ガスが捕集層24及び隔壁部22を介して出口側が開口しているセル23(出口側セルとも称する)を通過して排出され、このとき、排ガスに含まれるPMが捕集層24上に捕集される。
【0020】
このハニカムフィルタ20の外形は、特に限定されないが、円柱状、四角柱状、楕円柱状、六角柱状などの形状とすることができる。ハニカムセグメント21の外形は、特に限定されないが、接合しやすい平面を有していることが好ましく、断面が多角形の角柱状(四角柱状、六角柱状など)の形状とすることができる。セルは、その断面の形状として3角形、4角形、6角形、8角形などの多角形の形状や円形、楕円形などの流線形状、及びそれらの組み合わせとすることができる。例えば、セル23は排ガスの流通方向に垂直な断面が4角形に形成されているものとしてもよい。ここでは、ハニカムフィルタ20の外形が円柱状に形成され、ハニカムセグメント21の外形が矩形柱状に形成され、セル23が矩形状に形成されている場合について主として説明する。
【0021】
隔壁部22は、多孔質であり、例えば、コージェライト、Si結合SiC、再結晶SiC、チタン酸アルミニウム、ムライト、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ及びシリカのうちのいずれか一種以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このうち、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウムのうちのいずれか一種以上が好ましく、コージェライトやSi結合SiC、再結晶SiCなどがより好ましい。隔壁部22は、その気孔率が30体積%以上85体積%以下であることが好ましく、35体積%以上65体積%以下であることがより好ましい。この隔壁部22は、その平均細孔径が10μm以上60μm以下の範囲であることが好ましい。この気孔率や平均細孔径は、水銀圧入法により測定した結果をいうものとする。また、隔壁部22は、その厚さが150μm以上600μm以下であることが好ましく、200μm以上400μm以下であることがより好ましい。厚さが150μm以上であれば、機械的強度を高めることができ、600μm以下であれば、圧力損失をより低減することができる。このような気孔率、平均細孔径、厚さで隔壁部22を形成すると、排ガスが通過しやすく、PMを捕集しやすい。
【0022】
捕集層24は、排ガスに含まれるPMを捕集する層であり、隔壁部22の平均細孔径よりも小さい平均粒径で構成された粒子群により隔壁部22上に形成されているものとしてもよい。捕集層24は、平均細孔径が、0.2μm以上10μm以下であることが好ましく、気孔率が40体積%以上95体積%以下であることが好ましく、捕集層を構成する粒子の平均粒径が0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。平均細孔径が0.2μm以上であればPMが堆積していない初期の圧力損失が過大になるのを抑制することができ、10μm以下であればPM捕集効率が良好なものとなり、捕集層24を通り抜け細孔内部にPMが到達するのを抑制可能であり、PM堆積時の圧力損失の悪化を抑制することができる。また、気孔率が40体積%以上であると、PMが堆積していない初期の圧力損失が過大となるのを抑制することができ、95体積%以下では耐久性のある捕集層24としての表層を作製することができる。また、捕集層を構成する粒子の平均粒径が0.5μm以上であれば捕集層を構成する粒子の粒子間の空間のサイズを十分に確保可能であるため捕集層の透過性を維持でき急激な圧力損失の上昇を抑制することができ、15μm以下であれば粒子同士の接触点が十分に存在するから粒子間の結合強度を十分に確保可能であり捕集層の剥離強度を確保することができる。このように、良好なPM捕集効率の維持、PM捕集開始直後の急激な圧力損失上昇防止、PM堆積時の圧力損失低減、捕集層の耐久性を実現することができる。
【0023】
この捕集層24は、排ガスの入口側セル及び出口側セルの隔壁部22に形成されているものとしてもよいが、図1に示すように、入口側セルの隔壁部22上に形成されており、出口側セルには形成されていないものとするのが好ましい。こうすれば、圧力損失をより低減して流体に含まれているPMをより効率よく除去することができる。また、ハニカムフィルタ20の作製が容易となる。
【0024】
この捕集層24は、コージェライト、炭化珪素、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカのうちのいずれか一種以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このうち、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウムのうちのいずれか一種以上が好ましい。このとき、捕集層24は、隔壁部22の材質と同種の材料により形成されているものとすることが好ましい。また、捕集層24は、セラミック又は金属の無機繊維を10重量%以上含有しているものとするのがより好ましい。こうすれば、捕集層の強度を高めることができる。また、繊維質によりPMを捕集しやすい。また、捕集層24は、無機繊維がアルミノシリケート、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びムライトから選択される1以上の材料を含んで形成されているものとすることができる。なお、捕集層24の粒子群の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で捕集層24を観察し、撮影した画像に含まれる捕集層24の各粒子を計測して求めた平均値をいうものとする。
【0025】
ハニカムフィルタ20において、隔壁部22及び捕集層24のうち少なくとも捕集層24は触媒を有している。この触媒は、排ガスに含まれる未燃焼ガス(HCやCOなど)を酸化する触媒、捕集されたPMの燃焼を促進する触媒及びNOXを吸蔵、吸着又は分解する触媒のうち少なくとも1種以上としてもよい。こうすれば、未燃焼ガスを効率よく酸化することやPMを効率よく除去することやNOXを効率よく分解することなどができる。
【0026】
接合層27は、ハニカムセグメント21を接合する層であり、無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。無機粒子は、上述した無機材料の粒子とすることができ、その平均粒径は0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。無機繊維は、上述したものとしてもよく、例えば平均径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であることが好ましい。結合材としてはコロイダルシリカや粘土などとすることができる。接合層27は、0.5mm以上2mm以下の範囲で形成されていることが好ましい。なお、平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、水を分散媒として測定したメディアン径(D50)をいうものとする。外周保護部28は、ハニカムフィルタ20の外周を保護する層であり、上述した無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。
【0027】
次に、このハニカムフィルタ20の製造方法について説明する。このハニカムフィルタ20の製造方法は、例えば、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する多孔質の隔壁部22を形成する隔壁部形成工程と、隔壁部22を備えたハニカム構造体29に、流体に含まれる固体成分を捕集する層である捕集層24を形成する捕集層原料と、触媒成分を有する触媒材と、を含むスラリーを接触させて、隔壁部22に捕集層原料と触媒材とを同時に形成する捕集層原料−触媒材同時形成工程と、形成した捕集層原料と触媒材とを前記隔壁部に定着させる熱処理を行う熱処理工程と、を含むものとしてもよい。
【0028】
[隔壁部形成工程]
この工程では、隔壁部22の原料を混合し、所定の成形方法で隔壁部22を成形する。ここでは、隔壁部22は、捕集層24の形成前且つ焼成前の成形体であるハニカム成形体の成形に伴い成形される。隔壁部22の原料としては、例えば基材と造孔材と分散媒とを混合して坏土やスラリーを調製してもよい。基材としては、上述した無機材料を用いることができる。例えば、炭化珪素を基材とするものにおいては炭化珪素粉末及び金属珪素粉末を80:20の質量割合で混合し、水等の分散媒、造孔材を加えて、更に、これに有機バインダ等を添加して混練し、可塑性の坏土を形成することができる。炭化珪素粉末及び金属珪素粉末原料(成形原料)を混練して坏土を調製する手段は、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。造孔材としては、のちの焼成により燃焼するものが好ましく、例えば澱粉、コークス、発泡樹脂などを用いることができる。この坏土には、適宜、バインダーや分散剤などを添加してもよい。バインダーとしては、例えばセルロース系などの有機系バインダを用いることが好ましい。分散剤としては、エチレングリコールなど界面活性剤を用いることができる。この隔壁部22は、例えば、セル23が並んで配設される形状の金型を用いて上述した任意の形状に押出成形することによりハニカム成形体として形成するものとしてもよい。続いて、ハニカム成形体に目封止部26を形成する処理を行う。この目封止部26は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセル23と、一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口されたセル23と、が交互に配置されるよう形成することが好ましい。目封止に用いる原料は、上述した隔壁部22を形成する原料を用いるものとしてもよい。また、得られたハニカム成形体は、乾燥処理・仮焼処理・焼成処理を行うことが好ましい。仮焼処理は、焼成温度よりも低い温度でハニカム成形体に含まれる有機物成分を燃焼除去する処理である。焼成温度は、コージェライト原料では、1400℃〜1450℃とし、Si結合SiCでは、1450℃とすることができる。このような工程を経て、捕集層24を形成する前のハニカム構造体を得ることができる。なお、ここでいうハニカム構造体とは、ハニカムセグメント21を形成するものであってもよいし、複数のハニカムセグメント21を接合したハニカムフィルタ20を形成するものであってもよい。
【0029】
[捕集層原料−触媒材同時形成工程]
この工程では、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部を備えたハニカム構造体に、流体に含まれる固体成分を捕集する層である捕集層を形成する捕集層原料と、触媒成分を有する触媒材と、を含むスラリーを接触させて、隔壁部22に捕集層原料と触媒材とを同時に形成する。この捕集層原料及び触媒材は、後述する乾燥又は熱処理によって、捕集層24および触媒としてハニカムフィルタ20を構成する。
【0030】
本発明のハニカムフィルタの製造方法において、捕集層原料と触媒材とを有するスラリーは、捕集層原料と触媒材とを分散媒に分散させたものとしてもよい。また、捕集層原料を分散媒に分散させた捕集層スラリーに触媒材を分散させたものとしてもよいし、触媒材を分散媒に分散させた触媒スラリーに捕集層を分散させたものとしてもよい。分散媒としては、水、アルコールなどを好適に用いることができる。
【0031】
捕集層原料は、コージェライト、炭化珪素、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカのうちのいずれか一種以上の無機材料を含むものが好ましく、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウムのうちのいずれか一種以上であることが好ましい。また、捕集層原料は、隔壁部の材質と同種のものであることが好ましい。こうすれば、捕集層と隔壁部との熱膨張率を同等とすることができ、熱膨張収縮による隔壁部と捕集層との剥離などをより抑制することができると考えられるからである。無機材料は、繊維状のものでもよいし、粒子状のものでもよい。この無機材料は、セラミック又は金属の無機繊維を10重量%以上含有しているものとするのがより好ましい。こうすれば、捕集層の強度を高めることができる。また、繊維質によりPMを捕集しやすい。また、捕集層原料のほかに、結合材やバインダー、分散剤等を含むものとしてもよい。結合材としては、コロイダルシリカや粘土などを用いることができる。バインダーとしては、例えばセルロース系の有機系バインダを用いることが好ましい。分散剤としては、エチレングリコールなど界面活性剤を用いることができる。
【0032】
捕集層原料の平均粒径は、特に限定されないが、30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、7μm以下がさらに好ましい。30μm以下であれば、PMを捕集するのに十分な捕集層24が得られからである。また、連続再生性を高めることができるからである。また、捕集層原料の平均粒径が0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましい。特に、捕集層原料の平均粒径が2μm以上7μm以下であることが好ましい。こうすれば、連続再生性をより高め、ハニカムフィルタにおける圧力損失の上昇をより抑制することができる。
【0033】
触媒材は、触媒成分を有するものである。触媒成分としては、例えば、貴金属元素、遷移金属元素を1種以上含むものとするのがより好ましい。また、他の触媒成分や浄化材成分を含むものでもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)などを含むNOX吸蔵触媒、少なくとも1種の希土類金属、遷移金属、三元触媒、セリウム(Ce),ジルコニウム(Zr),チタン(Ti)の少なくとも一種以上の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が挙げられる。具体的には、貴金属としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)や、イリジウム(Ir)、金(Au)及び銀(Ag)などが挙げられる。触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sc,Ti,V,Cr等が挙げられる。また、希土類金属としては、例えば、Sm,Gd,Nd,Y,La,Pr等が挙げられる。また、アルカリ土類金属としては、例えば、Mg,Ca,Sr,Ba等が挙げられる。このうち、白金及びパラジウムがより好ましい。PMの燃焼を促進する触媒成分を有するものとすれば、捕集層24上に捕集されたPMをより容易に除去することができるし、未燃焼ガスを酸化する触媒(以下、DOC;Diesel Oxidation Catalystとも称する)やNOXを分解する触媒成分を有するものとすれば、排ガスをより浄化することができる。
【0034】
触媒成分は、これらのうち、DOCを含むものが好ましい。こうすれば、連続再生性をより高めることができるからである。この理由は、以下のように推察される。上述したように、本発明の製造方法では、隔壁部に捕集層原料と触媒材とを同時に形成するため、触媒材の凝集やガス流路の閉塞を抑制できる。このため、触媒材の凝集を抑制して捕集層を形成するセラミック原料の周りに効率的に触媒をコート可能であり、PMが堆積している捕集層表面に近い領域で効率的にNOを酸化させることができる。このため、以下に示すようにNO2バックディフュージョンが促進され、連続再生性が向上すると思われる。ここで、NO2バックディフュージョンによる連続再生性の向上メカニズムについて説明する。再生処理において、排ガスに含まれるNOは、DOCによりNO2に酸化されるが、このNO2が隔壁部22の表面に堆積していているPMと反応し、PMを燃焼させる。このPMとの反応によりNO2はNOに変換されるが、隔壁に担持されている触媒により酸化されて再度NO2となる。これにより、隔壁部22の厚さ方向に対してNO−NO2の濃度分布ができ、NO2濃度が低下したPM層付近でNO−NO2濃度をバランスさせるために、入口側セルから出口側セルに向けて隔壁部23内を流れたNO2がNO2の濃度の低いPMが堆積した入口側セルに向けて移動し(逆拡散)、そのNO2が再度PMと反応してPMを減少させる。このようにして、PMを効率よく減少させることにより、連続再生性をより高めることができると考えられる。触媒成分となる貴金属及び遷移金属、助触媒などは、比表面積の大きな担体に担持してもよい。担体としては、例えば、Al酸化物、Ti酸化物、Ce酸化物、Zr酸化物、Si酸化物のうちのいずれか一種以上であることが好ましく、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、セリア、ジルコニアのうちの一種以上を含むものであることがより好ましい。
【0035】
この工程では、捕集層原料と触媒材とを含むスラリーにハニカム構造体29の一方の端部を接触させ、ハニカム構造体29の他方の端部から吸引して、隔壁部22に捕集層原料と触媒材とを同時に形成するものとしてもよい。こうすれば、捕集層原料の形成と触媒材の形成とを同時に行うことにより製作コストを抑制できる。また、捕集層の骨材となる捕集層原料に効率的に触媒材を担持することができる。さらに、捕集原料と触媒材とを含むスラリーの形成量をより容易に調整できる。さらにまた、隔壁部の内部にも触媒材を効率よく形成できる。このとき、セル23の出口側から吸引することが好ましい。こうすれば、連通した細孔を隔壁部22や捕集層24に確保することがより効率的にでき、また、捕集層原料と触媒材との凝集体の生成を抑制できるため、圧力損失をより抑制できる。また、入口側のセルの隔壁部に捕集層を形成することができ、入口側のセルでPMを捕集可能なため、圧力損失をより抑制できる。なお、捕集層原料と触媒材とを含むスラリーにハニカム構造体29の一方の端部を接触させるに際して、ハニカム構造体の端部をスラリーに浸漬させてもよいし、ハニカム構造体の端部からスラリーを流し込んでもよいし、ハニカム構造体の端部にスラリーを吹き付けてもよい。また、スラリーを形成したのち、余剰のスラリーを除去して乾燥させることが好ましい。こうすることで、所望量の捕集層を形成することができる。乾燥方法は特に限定されないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の、従来公知の乾燥法を用いることができる。なかでも、成形体全体を迅速且つ均一に乾燥することが出来る点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。
【0036】
[熱処理工程]
この工程では、上述のように形成した捕集層原料と触媒材とを隔壁部22に定着させる熱処理を行う。こうすれば、形成した捕集層原料と触媒材とをより強固にハニカム構造体の隔壁部に定着させることができる。ここで、定着させるとは、捕集層原料や触媒材がハニカムフィルタから分離しない程度にハニカム構造体の隔壁部に保持されている状態にすることをいう。なお、捕集層原料や触媒材は、ハニカム構造体の隔壁部に直接的又は間接的に固定されていてもよい。こうしても、形成した捕集層原料と触媒材とをハニカム構造体の隔壁部に、より強固に定着させることができる。
【0037】
この工程では、200℃以上900℃以下の熱処理温度で熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度が200℃以上では含まれている有機物を十分除去することができ、900℃以下では細孔の減少を抑制することができる。このうち、500℃以上750℃以下の熱処理温度で熱処理を行うことがより好ましい。500℃以上であれば、ハニカム構造体の隔壁部に捕集層原料や触媒材をより安定的に定着させることができる。また、750℃以下であれば、捕集層の密度をより適切なものとすることができ、また、触媒の凝集をより抑制できる。
【0038】
以上説明した実施形態の製造方法によって製造したハニカムフィルタによれば、隔壁部22に捕集層原料と触媒材とを同時に形成するため、連続再生性をより高めることができる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、ハニカムセグメント21を接合層27により接合したハニカムフィルタ20としたが、図2に示すように、一体成形されたハニカムフィルタ40としてもよい。ハニカムフィルタ40において、隔壁部42、セル43、捕集層44、目封止部46及び外周保護部48などは、ハニカムフィルタ20の隔壁部22、セル23、捕集層24、目封止部26及び外周保護部28と同様の構成とすることができる。このようにしても、連続再生性をより高めることができる。
【0041】
上述した実施形態では、自動車用のハニカムフィルタ20として説明したが、流体に含まれる固体成分を捕集するものであれば特にこれに限定されず、発電エンジン用のハニカムフィルタとしてもよいし、建設機器用のハニカムフィルタとしてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、捕集層原料−触媒材同時形成工程では、捕集層原料と触媒材とを含むスラリーにハニカム構造体29の一方の端部を接触させ、ハニカム構造体29の他方の端部から吸引して、隔壁部22に捕集層原料と触媒材とを同時に形成するものとしたが、捕集層原料と触媒材とを含むスラリーにハニカム構造体29を浸漬させて、隔壁部22に捕集層原料と触媒材とを同時に形成するものとしてもよい。こうすれば、より容易にハニカム構造体の隔壁部に捕集層原料と触媒材とを形成することができる。また、セル23の入口側からスラリーを圧送することにより隔壁部22上捕集層原料と触媒材とを同時に形成するものとしてもよい。こうしても、ハニカム構造体の隔壁部に捕集層原料と触媒材とを形成することができる。
【0043】
上述した実施形態では、隔壁部形成工程を含むものとしたが、隔壁部形成工程を含まなくてもよい。例えば、あらかじめ準備したハニカム構造体を用いてもよい。また、上述した実施形態では、熱処理工程を含むものとしたが、熱処理工程を省略してもよい。
【実施例】
【0044】
以下には、ハニカムフィルタを具体的に製造した例を実施例として説明する。ここでは、複数のハニカムセグメントを接合した構造のハニカムフィルタを作製した。
【0045】
[実施例1〜6]
(1)ハニカムセグメントの作製
炭化珪素粉末及び金属珪素粉末を80:20の質量割合で混合し、これにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して混練し、可塑性の坏土を得、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、所望形状のハニカムセグメント成形体を成形した。ここでは、隔壁部の厚さが305μm、セルピッチが1.47mm、断面が35mm×35mm、長さが152mmの形状に成形した。次に、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波により乾燥させ、更に熱風にて乾燥させた後、目封止をして、酸化雰囲気において550℃、3時間で仮焼きした後に、不活性雰囲気下にて1400℃、2時間の条件で本焼成を行った。目封止部の形成は、セグメント成形体の一方の端面のセル開口部に交互にマスクを施し、マスクした端面を炭化珪素原料を含有する目封止スラリーに浸漬し、開口部と目封止部とが交互に配設されるように行った。また、他方の端面にも同様にマスクを施し、一方が開口し他方が目封止されたセルと一方が目封止され他方が開口したセルとが交互に配設されるように目封止部を形成した。
【0046】
(2)接合、外周加工、外周コート
ハニカムセグメントの側面に、アルミナシリケートファイバ、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、炭化珪素、および水を混練してなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、熱風乾燥して、全体形状が四角形状のハニカムセグメント接合体を得た。さらに、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周囲を、接合用スラリーと同等の材料からなる外周コート用スラリーで被覆し、乾燥した。さらに、700℃、30分間の熱処理で硬化させることにより所望の形状、セグメント形状、セル構造を有する円柱形状のハニカム構造体を得た。ここでは、ハニカム構造体は、断面の直径が144mm、長さが152mmの形状とした。
【0047】
(3)捕集層原料−触媒材同時形成
触媒成分としてのPtを担持した触媒基材としてのアルミナと、触媒助剤(助触媒)としての酸化Ceと硝酸とを水に混合して触媒スラリーを準備し、そこに捕集層原料として、平均粒径が1μm(実施例1),2μm(実施例2),4μm(実施例3),6μm(実施例4),7μm(実施例5),8μm(実施例6)の炭化珪素を投入して、捕集層原料と触媒材とを含むスラリー(以下では混合スラリーとも称する)を得た。次に、図3に示す形成装置50を用いて隔壁部に捕集層原料と触媒材とを形成したハニカム構造体29を作製した。まず、作製したハニカム構造体29の一端を治具51に固定すると共に、ハニカム構造体29の他端に供給固定筒54を固定した。治具51の中央には貫通孔52が形成されている。また、供給固定筒54の先端には、スラリー供給用の供給口53が形成されている。供給固定筒54とハニカム構造体29との間には、スラリーの供給量を調整する供給量調整板56が配設されている。次に、所定の膜厚が形成されるよう予め経験的に得た位置に供給量調整板56を固定し、供給口53から混合スラリーを圧送し供給口53側に目封止部26が形成されていないハニカム構造体のセル内部に混合スラリーを供給した(図3の左図)。次に、治具51の貫通孔52を吸引し、混合スラリーの溶媒である水を隔壁部22を介して排出させた(図3の中央図)。このとき、供給固定筒54側に開口部を有するセル23の内部に混合スラリーの固体分が残留し隔壁部上に捕集層原料と触媒材とが形成された。なお、このとき、Pt成分がハニカムフィルタに対し1.06g/Lとなるようにした。
【0048】
(4)乾燥・熱処理
エアーブローにて余剰スラリーを除去し、150℃で1時間乾燥を行ってから、650℃で2時間熱処理を行い、捕集層原料および触媒材をハニカム構造体に定着させた(図13右図)。このようにして、実施例1〜6のハニカムフィルタを得た。
【0049】
[比較例1]
(1)ハニカムセグメントの作製
上述した実施例1〜6についてのハニカムセグメントの作製と同様のため、説明を省略する。
【0050】
(2)接合、外周加工
ハニカムセグメントの側面に、アルミナシリケートファイバ、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、炭化珪素、および水を混練してなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、熱風乾燥して、全体形状が四角形状のハニカムセグメント接合体を得た。さらに、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した。
【0051】
(3)捕集層原料単独形成
無機粒子としての炭化珪素(平均粒径2μm)を2.5質量%、有機バインダとしてのカルボキシメチルセルロースを0.5質量%、結合材としてのコロイダルシリカを2質量%、分散媒としての水を95質量%となるように混合し、捕集層形成用のスラリー(以下では捕集層スラリーとも称する)を得た。次に、図3に示す形成装置50を用いて隔壁部に捕集層原料を形成したハニカム構造体29を作製した。ハニカム構造体にかえてハニカムセグメントを用い、混合スラリーに変えて捕集層スラリーを用いたこと以外は、実施例1〜6の捕集層原料及び触媒材の形成と同様にして隔壁部上に捕集層原料を形成した。
【0052】
(4)外周コート
エアブローにて余剰スラリーを除去し、熱風乾燥した。さらに、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周囲を、接合用スラリーと同等の材料からなる外周コート用スラリーで被覆し、乾燥した。さらに、700℃、30分間の熱処理で硬化させることにより所望の形状、セグメント形状、セル構造を有する円柱形状のハニカム構造体を得た。ここでは、ハニカム構造体は、断面の直径が144mm、長さが152mmの形状とした。
【0053】
(5)触媒材単独形成
触媒成分としてのPtを担持した触媒基材としてのアルミナ(Al23)と、触媒助剤(助触媒)としての酸化Ceと硝酸とを水に混合して触媒スラリーを準備した。次いで、Pt成分がハニカムフィルタに対し1.06g/Lとなるように担持した。触媒の担持は、ハニカムフィルタの排ガス流出側の端部から触媒スラリーをセル(出口側セル)内に流入させ、隔壁に多くの触媒が存在するように担持した。
【0054】
(6)乾燥・熱処理
エアーブローにて余剰スラリーを除去し、150℃で1時間乾燥を行ってから、650℃で2時間熱処理を行い、捕集層原料および触媒材をハニカム構造体に定着させた。このようにして、比較例1のハニカムフィルタを得た。
【0055】
[圧力損失評価試験]
上述のようにして作製したハニカムフィルタを、エンジンベンチにて2.2Lディーゼルエンジンの排気系に取り付け、トルクはフルロード状態で回転数を1000rpmから4000rpmまで、500rpmずつ変化させ各回転数で3分間保持した。そして、各回転数に対するフルロード時の圧力損失性能(圧損性能)を評価した。そして、4000rpmの回転数で3分間保持した後の圧力損失値(圧損値,kPa)を求めた。
【0056】
[連続再生性評価試験]
上述のようにして作製したハニカムフィルタを、エンジンベンチにて2.2Lディーゼルエンジンの排気系に取り付け、8g/Lのスート(すす)を堆積させた後、回転数を2000rpm一定に保ちながらDPF入口ガス温度が400℃の状態にて20分間保持した。そして、試験前後のハニカムフィルタの重量を測定して重量差を求め、スートの堆積量8g/Lに対する燃焼量(重量減)の割合を算出し、これを連続再生試験における再生効率(%)とした。
【0057】
[実験結果]
図4は、捕集層原料の粒子径と圧損および再生効率との関係を示すグラフである。また、この結果を表1に示した。表1および図4に示すように、捕集層原料−触媒材同時形成を行った実施例1〜6では、捕集層原料と触媒材とを別々に形成した比較例1よりも再生効率が良好であった。このことから、捕集層原料−触媒材同時形成によって、連続再生性をより高めることができることが分かった。また、このとき、捕集層原料の平均粒径が2μm以上7μm以下であれば、圧力損失をより低減できることが分かった。
【0058】
【表1】

【符号の説明】
【0059】
20,40 ハニカムフィルタ、21 ハニカムセグメント、22,42 隔壁部、23,43 セル、24,44 捕集層、26,46 目封止部、27 接合層、28,48 外周保護部、29 ハニカム構造体、50 捕集層原料−触媒材同時形成装置、51 治具、52 貫通孔、53 供給孔、54 供給固定筒、56 供給量調整板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体に含まれる固体成分を捕集するハニカムフィルタの製造方法であって、
一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部を備えたハニカム構造体に、流体に含まれる固体成分を捕集する層である捕集層を形成する捕集層原料と、触媒成分を有する触媒材と、を含むスラリーを接触させて、前記隔壁部に捕集層原料と触媒材とを同時に形成する捕集層原料−触媒材同時形成工程、
を含む、ハニカムフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記捕集層原料は、平均粒径が2μm以上7μm以下である、請求項1に記載のハニカムフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記隔壁部の材質は、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウムのうちのいずれか一種以上であり、
前記捕集層原料は、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウムのうちのいずれか一種以上を含むものである、
請求項1又は2に記載のハニカムフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記捕集層原料は、前記隔壁部の材質と同種のものである、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカムフィルタの製造方法。
【請求項5】
前記捕集層原料−触媒材同時形成工程では、前記捕集層原料と触媒材とを含むスラリーに前記ハニカム構造体の一方の端部を接触させ、前記ハニカム構造体の他方の端部から吸引して、前記隔壁部に捕集層原料と触媒材とを同時に形成する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカムフィルタの製造方法。
【請求項6】
前記捕集層原料−触媒材同時形成工程では、前記捕集層原料と触媒材とを含むスラリーに前記ハニカム構造体を浸漬させて、前記隔壁部に捕集層原料と触媒材とを同時に形成する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカムフィルタの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のハニカムフィルタの製造方法であって、
前記形成した捕集層原料と触媒材とを前記隔壁部に定着させる熱処理を行う熱処理工程、
を含む、ハニカムフィルタの製造方法。
【請求項8】
前記熱処理工程では、500℃以上750℃以下の熱処理温度で熱処理を行う、請求項7に記載のハニカムフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−200612(P2012−200612A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64257(P2011−64257)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】