説明

ハニカム構造体およびハニカム構造体の製造方法

【課題】隔壁によって被捕集物を捕集し流体を濾過するフィルターとして使用した場合、隔壁の一部の箇所が濾過機能をいち早く損なうことが防止でき、隔壁が広い面積で被捕集物の捕集を継続できるハニカム構造体を提供する。
【解決手段】多孔質の隔壁2と、流体Gの流路となる複数のセル3と、前記セル3に目封止部6とを有するハニカム構造体1であって、第2端面5の側に目封止部6を設けられているセル3の一部または全部においてセル3の軸方向Xでの中間部分において流体Gの流れに抵抗を与えつつ第2端面5の側に流体Gの一部を通過させる抵抗部11を備えるハニカム構造体1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスなどの浄化に用いられる濾過機能を備える隔壁と、隔壁に区画形成される複数のセルとを有するハニカム構造体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカム構造体は、隔壁および隔壁により区画形成され一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルから構成され、隔壁が多孔質である場合には、ディーゼルエンジン等による排気ガスを浄化するための排ガスフィルターとして使用される。例えば、排ガス中に含まれるパティキュレートマター(以下、「PM」:微粒子物質)を多孔質の隔壁により捕集する、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)には、ハニカム構造体を使用する。
【0003】
排ガスフィルターとして使用するハニカム構造体では、多孔質の隔壁を排ガスが必ず通過する構成を備える。このようなハニカム構造体の代表的な実施形態では、セルの両端部のいずれか一方が目封止部によって目封止されている。これよって、排ガスは、目封止部のないセルの端部よりセル内に流入しても、反対側のセル端部にある目封止部に行き当たり、必ず多孔質の隔壁を通過して隣のセルに流れ込む。そして、排ガスが多孔質の隔壁を通過する際、排ガス中に含まるPMは、隔壁の細孔を通過できずそのまま隔壁に捕集される。よって、排ガスは、ハニカム構造体の外部に排出される際、PMを含まず浄化されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、上述のようなハニカム構造体のフィルター機能を向上させるために、目封止を配置する位置、あるいは1つのセル内に配置する目封止部の数などを工夫したハニカム構造体が、以下の特許文献2〜5に開示されている。
【0005】
特許文献2、3に記載のハニカム構造体では、排ガスを流入する側において、目封止部が、端面に露出せず、セルの奥に設けられている。このハニカム構造体では、排ガスが流入する流入側端面で全てのセルを開口するため、流入側端面における排ガスの流入抵抗が小さくなる。これにより、流入側端面の近傍のセル内での排ガスの澱みを低減する。
【0006】
特許文献4、5に記載のハニカム構造体では、目封止部をいずれか一方のセル端部に1つ備え、さらにセルの貫通方向におけるセルの中間部分にもう1つの目封止部を備える。そのため、このハニカム構造体では、排ガスが必ず2回以上隔壁を通過して排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−269585号公報
【特許文献2】特開2004−251137号公報
【特許文献3】特開2006−272156号公報
【特許文献4】特開2005−262210号公報
【特許文献5】特開2007−289926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のハニカム構造体では、セル内の一部の箇所の隔壁に集中して多量のPMが堆積してしまう。具体的に述べると、排ガスを流入させるために開口するセルの端部の近傍、およびその反対側のセル端部の目封止部の近傍では、セルの中間部分に比べ、PMの堆積量が非常に多い。
【0009】
特許文献2、3のハニカム構造体では、排ガスが外部より流入する側のセルの端部の近傍において排ガスが澱むことが低減されるものの、PMの堆積量の偏在を解消できていない。
【0010】
また、特許文献2〜5のハニカム構造体では、開口するセルの端部から流入した排ガスが、セルの中間部分にある目封止部に行き当たる。よって、これらのハニカム構造体では、排ガスが流入する側のセルの端部から目封止部が設けられている中間部分までの短い流路部分において最初の排ガス浄化を強いられる。すなわち、開口するセル端部からセルの中間部分までを構成する、小さい面積の隔壁は、多量のPMを含有する未処理の排ガスの濾過を強いられ、PMの堆積が集中しやすい。
【0011】
上記の問題に鑑みて、本発明の課題は、被捕集物(例えばPM)を隔壁によって捕集するフィルターとして使用した場合、隔壁の一部の箇所で集中的に被捕集物を捕集しないハニカム構造体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明者等は、鋭意検討して本発明を完成するに至った。すなわち、本発明によれば、以下に示すハニカム構造体が提供される。
【0013】
[1] 多孔質の隔壁と、前記隔壁によって区画形成されて第1端面から第2端面への軸方向に通じる流体の流路となる複数のセルと、各々の前記セルの前記第1端面の側または前記第2端面の側の少なくともいずれかを目封止する目封止部とを有するハニカム構造体であって、前記第2端面の側に前記目封止部を設けられている前記セルの一部または全部において前記セルの前記軸方向での中間部分に設けられて、前記セル内に前記第1端面から前記第2端面の方向へ前記流体を流すときに前記第2端面の方向に向かう前記流体の流れに抵抗を与えつつ前記第2端面の側に前記流体の一部を通過させる抵抗部を備えるハニカム構造体。
【0014】
[2] 前記抵抗部は、前記流体の流路となる貫通孔が設けられている前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0015】
[3] 前記貫通孔は、前記第1端面の側からの前記第2端面側に向かって連続的または断続的に減少する流路断面積を有する前記[2]に記載のハニカム構造体。
【0016】
[4] 前記抵抗部は、多数の細孔を有する多孔質体からなり、前記細孔が前記セルにおける前記抵抗部を設けられている箇所での前記流体の流路となる前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0017】
[5] 前記抵抗部は、前記軸方向における厚さが1〜3mmの壁状の構造を有する前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0018】
[6] 前記抵抗部が設けられている各々の前記セルにおいて、前記セルを区画形成する前記隔壁の気孔率が、前記抵抗部を境に前記第1端面の側と前記第2端面の側とで異なる前記[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0019】
[7] 前記軸方法に垂直な断面において、隣接する前記セルの間で断面積が異なっている前記[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0020】
[8] 前記セルの前記第1端面の側を目封止する前記目封止部が、前記第1端面に露出せず前記セルの内部に設けられている前記[1]〜[7]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0021】
[9] 共に多孔質の隔壁と前記隔壁によって区画形成されて一方の端面から他方の端面に向かう軸方向に通じて流体の流路となる複数のセルとを有する第1のハニカム構造体および第2のハニカム構造体の前記端面同士を合わせて一体化して、接合ハニカム構造体を形成するハニカム構造体の製造方法であって、前記第1のハニカム構造体の前記端面のいずれか1つの前記端面における一部または全部の前記セルの端部に、前記流体の前記流路の流路断面積を小さくする抵抗部を設ける抵抗部配設工程と、前記第1のハニカム構造体の前記抵抗部を設けた側の前記端面と、前記第2のハニカム構造体の前記端面とを合わせて互いの前記セルを連通させて、前記軸方向における中間部分に前記抵抗部を備える前記セルを有する前記接合ハニカム構造体を形成する接合工程と、前記接合ハニカム構造体における各々の前記セルが前記軸方向で少なくともいずれか一方の端部の側を目封止されるように、前記第1のハニカム構造体および前記第2のハニカム構造体の前記セルに目封止部を設ける目封止工程と、を有するハニカム構造体の製造方法。
【0022】
[10] 前記抵抗部配設工程は、前記第1のハニカム構造体のいずれか1つの前記端面に一部または全部の前記セルの開口に対応するように開口したマスクを設け、そのマスクの上またはマスクの表面上と同一平面上に前記抵抗部材料を供給し、前記マスクの表面上にて、その表面に対して鋭角に配置されて前記抵抗部材料を加圧するための加圧面を有する加圧部材を移動させることにより、前記加圧面にて前記抵抗部材料を加圧して前記端面における前記セルの端部に前記抵抗部材料を充填し、次いで前記セルの端部に充填されている前記抵抗部材料が流動性を有する間に、前記抵抗部材料が充填されている前記セル内を陽圧または陰圧にして、前記セルの端部に充填されている前記抵抗部材料に前記セルの内部と前記セルの外部とを通じさせる貫通孔を形成する工程を有する前記[9]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0023】
[11] 抵抗部配設工程は、前記セルの端部に前記抵抗部材料を充填してから所定時間を経過後に、前記抵抗部材料が充填されている前記セル内を陰圧にして前記貫通孔を形成する前記[10]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0024】
[12] 前記第1のハニカム構造体と前記第2のハニカム構造体とは、前記隔壁の気孔率が異なる前記[9]〜[11]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明のハニカム構造体は、被捕集物を隔壁によって捕集するフィルターとして使用した場合、隔壁の一部の箇所で集中的に捕集物を捕集しなくなくなる。そのため、本発明のハニカム構造体では、隔壁の一部の箇所がいち早く濾過機能を損なうことを防止でき、長時間のフィルターとして使用しても、隔壁のほぼ全面積によって被捕集物の捕集を継続できる。
【0026】
また、本発明のハニカム構造体の製造方法は、上記のように、フィルターとして継続的に使用しても、隔壁の一部の箇所がいち早く濾過機能を損なわず、隔壁のほぼ全面積によって被捕集物の捕集を継続できるハニカム構造体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のハニカム構造体の一実施形態を表す縦面図である。
【図2】図1に示す縦断面図を一部拡大し、セル内における流体の流れを模式的に表す説明図である。
【図3】図2に示す流体の流れによって流体に含まれる被捕集物が隔壁に捕集された様子を模式的に表す本発明のハニカム構造体の一実施形態の縦断面図である。
【図4】従来のハニカム構造体の一実施形態を一部拡大し、セル内における流体の流れを模式的に表す縦断面図である。
【図5】図4に示す流体の流れによって流体に含まれる被捕集物が隔壁に捕集された様子を模式的に表す従来のハニカム構造体の縦断面図である。
【図6】貫通孔を有する抵抗部を設けているハニカム構造体の一部の縦断面図であり、貫通孔の内壁の一部が隔壁から構成されている実施形態におけるセル内での流体の流れを模式的に表す説明図である。
【図7】多数の細孔を有する多孔質体からなる抵抗部がセル内に設けられているハニカム構造体の一部の縦断面図であり、セル内における流体の流れを模式的に表す説明図である。
【図8】貫通孔を有する抵抗部および多孔質体からなる抵抗部が同一のセル内に設けられているハニカム構造体の一部の縦断面図であり、セル内における流体の流れを模式的に表す説明図である。
【図9】本発明のハニカム構造体の一実施形態の一部断面図であり、抵抗部が配置されている箇所を境に第1端面側と第2端面側との間で気孔率の異なる隔壁を表している図である。
【図10A】本発明のハニカム構造体の一実施形態において抵抗部が設けられている箇所を拡大したハニカム構造体の断面図である。
【図10B】本発明のハニカム構造体の一実施形態において抵抗部が設けられている箇所を拡大したハニカム構造体の断面図である。
【図10C】本発明のハニカム構造体の一実施形態において抵抗部が設けられている箇所を拡大したハニカム構造体の断面図である。
【図11】本発明のハニカム構造体の一実施形態において目封止部が第1端面に露出せずセルの内部に設けられている様子を表しているハニカム構造体の一部の縦断面図である。
【図12A】本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態に用いる第1のハニカム構造体の断面図である。
【図12B】図12Aに示す第1のハニカム構造体に対して、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態における抵抗部配設工程によって抵抗部を設けた第1のハニカム構造体の断面図である。
【図12C】図12Bに示す抵抗部を設けられている第1のハニカム構造体と、第2のハニカム構造体とを合わせる、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態における接合工程を説明するための図である。
【図12D】図12Cに続いて、接合工程によって第1のハニカム構造体と第2のハニカム構造体とを合わせて形成された接合ハニカム構造体の断面図である。
【図12E】図12Eに続いて、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態における目封止工程によって目封止部が設けられている接合ハニカム構造体の断面図である。
【図13A】本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態における目封止工程によって目封止部を設けられている第1のハニカム構造体の断面図である。
【図13B】図13Bに示す第1のハニカム構造体に対して、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態における抵抗部配設工程によって抵抗部を設けた第1のハニカム構造体の断面図である。
【図13C】図13Bに示す目封止部および抵抗部を設けられている第1のハニカム構造体と、別途の目封止工程によって目封止部を設けた第2のハニカム構造体とを合わせる、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態における接合工程を説明するための図である。
【図13D】図13Cに続いて、接合工程によって第1のハニカム構造体と第2のハニカム構造体とを合わせて形成された接合ハニカム構造体の断面図である。
【図14】本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態の抵抗部配設工程において、加圧部材を用いてセルの端部に抵抗部材料を充填し、セルの端部に充填されている抵抗部材料に貫通孔を形成する様子を説明するための図である。
【図15】本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態の抵抗部配設工程において、加圧部材を用いてセルの端部に抵抗部材料を充填された直後の状態を模式的に表す図である。
【図16】図15に続いて、抵抗部配設工程において、セルの端部に充填されている抵抗部材料に貫通孔を形成する様子を説明するための図である。
【図17】図16中の丸枠A内の拡大したハニカム構造体の端面近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0029】
1.ハニカム構造体:
1−1.本発明のハニカム構造体の基本的な実施形態:
図1は、本発明の技術的範囲に属するハニカム構造体1の断面図であり、第1の端面4から第2の端面5までセル3を縦断する断面にて表す。本発明のハニカム構造体1は、多孔質の隔壁2と、隔壁2によって区画形成されて第1端面4から第2端面5まで通じる流体Gの流路となる複数のセル3とを有する。また、各セル3には、第1端面4の側または第2端面5の側の少なくともいずれかを目封止する目封止部6が設けられている。
【0030】
多孔質の隔壁2には、例えばDPFとして用いられるハニカム構造体のように、セラミックスを主成分として形成されているものを挙げることができる。もちろん、本発明のハニカム構造体1では、隔壁2が多数の細孔を有する多孔質からなるものである限り、セラミックスを主成分として形成されるものに限定されない。
【0031】
さらに、本発明のハニカム構造体1では、目封止部6が第2端面5の側に設けられているセル3の一部または全部には、軸方向Xにおけるセル3の中間部分に、抵抗部11が設けられている。
【0032】
図2は、図1に示すハニカム構造体1の縦断面図を一部拡大し、セル3内における流体Gの流れを模式的に表す。抵抗部11は、セル3内に第1端面4から第2端面5の方向へ流体Gを流すとき、第2端面5の方向に向かう流体Gの流れに抵抗を与えつつ流体Gの一部を同じセル3内の第2端面5の側に通過させるものである。
【0033】
抵抗部11には、セル3の流路断面積を局所的に小さくするものが挙げられる。抵抗部11の具体的な実施形態には、図2に示す、貫通孔12を有してセル3を仕切る壁状の構造物がある。
【0034】
以下、特に言及のない場合、流体Gの流れついては、第1端面4の側が開口しているセル3内に流体Gを流入させ、このセル3内において第1端面4から第2端面5の方向へ流体Gを流す一具体例を取り上げて説明しているものとする。
【0035】
「抵抗部11が軸方向Xにおけるセル3の中間部分に設けられる」とは、対象の抵抗部11の位置と、この抵抗部11を有するセル3の近傍にあるセル3に配置される第1端面4の側の目封止部21の位置とを比較したとき、抵抗部11の位置の方が、軸方向Xにおいてより第2端面5の側にあることをいう。なお、抵抗部11を設ける位置については、1つのセル3内に設ける抵抗部11の数、および抵抗部11が流体Gに及ぼす抵抗の大きさなどによって、適宜定めることができる。
【0036】
「抵抗部11を流体Gが通過する」とは、流体Gが、セル3内の抵抗部11が設けられている箇所を通り抜けて同一セル3内を一方の端面の側から他方の端面の側に流れることをいう。
【0037】
「第2端面5の方向に向かう流体Gの流れに抵抗を与える」とは、抵抗部11が設けられている箇所の近傍において、セル3内を第1端面4から第2端面5の方向へ流れてくる流体Gの一部が、図2中の流体G、Gのように隔壁2を通過し隣のセル3内へ流れ込むように作用することをいう。なお、抵抗部11より第1端面4側のみ、あるいは抵抗部11より第2端面5側のみにおいて隔壁2を通過し隣のセル3内へ流れ込むように作用する場合でも、流体Gの流れに抵抗を与えることに該当する。
【0038】
図2に示す実施形態の抵抗部11では、第1端面4から抵抗部11に至ると流路断面積が縮小するため、抵抗部11が設けられている箇所までセル3内を流れてきた流体Gの一部は、抵抗部11を通過できず、流体Gのように隔壁2を通過して隣のセル3内に流れ込む。
【0039】
そして、対抗部11の貫通孔12を抜けて第2端面5の側に行くとき、流路断面積が再び大きくなるため、貫通孔12を抜けた流体Gの一部は、抵抗部11の第2端面5側の壁面42の近傍で渦を巻いて逆流し、流体Gのように隔壁2を通過して隣接するセル3内に流れ込む。
【0040】
また、流体Gが第1端面4からハニカム構造体1の内部に流入する際には、第1端面4の近傍において流体Gに対する流入抵抗が生じ、第1端面4の近傍では隔壁2を通過して隣接するセル3内に流れ込む流体Gの流れが発生する(図2、流体Gを参照)。
【0041】
加えて、突き当たりの目封止部22まで到達した流体Gは、行く手を阻まれ、隔壁2を通過して隣接するセル3内に流れ込む(図2、流体Gを参照)。
【0042】
したがって、隔壁2を通過して隣接するセル3内に流れ込む流体Gの流れは、図2中のG〜Gに示されるように、軸方向Xに沿って分散する。
【0043】
図3は、図2に示すものと同じハニカム構造体1の縦断面図であり、図2に示す流体Gの流れによって、流体Gに含まれる被捕集物が隔壁2に捕集された様子を表す。本発明のハニカム構造体1では、図3中のPM〜PMに示すように、軸方向Xに沿って被捕集物が隔壁2上に散在する。
【0044】
図4は、セル3内に抵抗部11が設けられていない従来のハニカム構造体1の縦断面図である。従来のハニカム構造体1では、軸方向Xにおけるセル3の中間部分において第1端面4から第2端面5への方向の流体Gの流れが整い、この中間部分では隔壁2を通過する流体Gの流れが顕著でない。よって、従来のハニカム構造体1では、隔壁2を通過する流体Gの流れは、流体Gにて示す第1端面4近傍、および流体Gにて示す第2端面5の側の目封止部22近傍でのみ顕著になる。
【0045】
図5は、従来のハニカム構造体1の縦断面図であり、流体Gに含まれる被捕集物が隔壁2に捕集された様子を表す。上述の流体Gの流れに対応し、被捕集物が隔壁2によって多く捕集される箇所は、図4中のPM示す第1端面4近傍およびPM示す第2端面5の側の目封止部22近傍に偏在する。時には、図4中のPMにて示すように、セル3の実質的な流路長が、被捕集物の堆積により第2端面5側から減少することもある。
【0046】
これとは対照的に、本発明のハニカム構造体1では、隔壁2のほぼ全面積による被捕集物の捕集を長時間継続できるため、隔壁2に捕集された被捕集物を燃焼除去するまでの時間、いわゆる燃焼再生期間を長くできる。
【0047】
本発明のハニカム構造体1は、上述の基本的実施形態の構成を備えつつ、以下に述べるような実施形態も適用できる。
【0048】
1−2.貫通孔を有する抵抗部が設けられている実施形態:
図6は、本発明の技術的範囲に属するハニカム構造体1の一実施形態である。この実施形態では、貫通孔12を有する抵抗部11が、軸方向Xにおけるセル3の中間部分に設けられている。この図に示すように、貫通孔12は、貫通孔12を形成する内壁41の一部がセル3を区画形成する隔壁2から構成されていてもよい。
【0049】
貫通孔12を有する抵抗部11では、第1端面4側の貫通孔12の縁および/または第2端面5側の貫通孔12の縁に丸みを帯びると好ましい。このような貫通孔12の形態とすることにより、貫通孔12の縁に角がある場合に比べて、抵抗部11を通過して第2端面5に流れる流体Gの圧力損失を小さくできる。
【0050】
1−3.多孔質体からなる抵抗部が設けられている実施形態:
図7に示すハニカム構造体1では、抵抗部11が多孔質の壁状構造を備えてセル3を仕切っている。このように、抵抗部11は、多数の細孔を有する多孔質体から構成され、細孔から流体Gの一部を第2端面5の側に通過させる実施形態にもできる。
【0051】
抵抗部11が多孔質体から構成される場合、流体Gは、対抗部11内部で網目状に連結した細孔内を流れ、第2端面5側の壁面42全面から流出する。そのため、壁面42から流出した流体Gが渦を巻くこともなく、壁面42近傍で流体Gが隔壁2を通過することも少ない。
【0052】
多孔質体から構成される抵抗部11では、この抵抗部11自身が流体Gに含まれる被捕集物を捕集することもできる。これにより、被捕集物の捕集効率を高められる。
【0053】
抵抗部11が多孔質体から構成される場合、抵抗部11を構成する多孔質体の平均細孔径は、セル3を区画形成する隔壁2の平均細孔径よりも大きいことが好ましく、隔壁2の平均細孔径の2倍以上であることがより好ましい。これにより、抵抗部11を流体Gが通過する際の圧力損失を小さくできる。
【0054】
1−4.厚さ1〜3mmの壁状の構造を有する抵抗部が設けられている実施形態:
本発明のハニカム構造体1において、抵抗部11は、軸方向Xにおける厚さが1〜3mmの壁状の構造を有することが好ましい。ここでいう壁状の構造を有する抵抗部11には、貫通孔12を有する抵抗部11や多孔質体から構成される抵抗部11も含まれる。
【0055】
このような実施形態の抵抗部11では、抵抗部11を流体Gが通過する際の圧力損失を小さくできる。また、隔壁2と抵抗部11との接続部分が小さくなるため、セル3内の流体Gに対して隔壁2の表面がより広くさらされ、被捕集物の捕集効率が高まる。例えば、抵抗部11の厚さが3mmの場合と抵抗部11の厚さが30mmの場合を比較すると、前者の方が、27mm流路長が長くなり、流路長が長い分だけセル3内の流体Gにさらされる隔壁2の表面積も広くなる。
【0056】
1−5.同一のセル内に複数の抵抗部が設けられている実施形態:
図8は、同一セル3内に2つの抵抗部11が設けられているハニカム構造体1の一部の断面を表す。この図に示すように、本発明のハニカム構造体1では、同一セル内3に複数の抵抗部11を設け、隔壁2を通過して隣接するセル3に流れ込む流体Gの流れを更に分散させることも可能である。
【0057】
図8に示す実施形態では、第2端面5の側が目封止部6により目封止されている同一のセル3内において、第1端面4の側に貫通孔12を有する抵抗部11a、第2端面5の側に多孔質体から構成される抵抗部11bと、2つの抵抗部11を設ける。この実施形態では、抵抗部11aの第2端面5側には隔壁2を通過する流体G4の流れが生じ易いのに対し、抵抗部11bの第2端面5側には隔壁2を通過する流体Gの流れが生じにくい。このように、抵抗部11の形態を選択することによって、流体Gの流れを適宜調節できる。
【0058】
1−6:同一面上において抵抗部を境に気孔率が異なる隔壁を有する実施形態:
図9は、本発明の技術的範囲に属するハニカム構造体1の断面図である。図9に示す実施形態では、抵抗部11を境として、第1端面4側の隔壁51と第2端面5側の隔壁52とは、気孔率が異なる。
【0059】
このように抵抗部11を境に隔壁51、52の気孔率の差を生じさせて、抵抗部11を境に第1端面4の側と第2端面5の側との間のセル3内の圧力差を調整し、ひいては抵抗部11を通過する際に流体Gに対して生じる抵抗を調整できる。
【0060】
例えば、抵抗部11の通過時に流体Gの圧力が過剰に損失するような実施形態の場合には、この抵抗部11から第2端面側の隔壁52の気孔率を大きくすると、隔壁52でも圧力を失った流体Gが依然通過しやすい状態にできる。
【0061】
図10A〜10Cは、セル3における抵抗部11が設けられている箇所を拡大した断面図である。気孔率が異なる第1端面側の隔壁51と第2端面側の隔壁52との界面53の位置は、抵抗部11の中間の位置(図10A)、抵抗部11の第1端面4側の端の位置(図10B)、または抵抗部11の第2端面5側の端の位置(図10C)のいずれであってもよい。
【0062】
1−7.第1端面において全てのセルが開口している実施形態:
図11は、本発明の技術的範囲に属するハニカム構造体1の一部の断面図である。図11に示す実施形態では、セル3の第1端面4の側を目封止する目封止部21が、第1端面4に露出せず、セル3の内部に設けられている。
【0063】
この実施形態では、第1端面4において全てセル3が開口しており、第1端面4から全てのセル3の内部に流体Gが流入する。これにより、ハニカム構造体1全体からみると第1端面4での流体Gの流路断面積の減少が無くなり、流体Gを流入させる第1端面4の側のセル3の端部では、流体Gの流入抵抗が低減する。
【0064】
1−8.隣接セルの間で断面積が異なる実施形態:
本発明のハニカム構造体1では、軸方向Xに垂直な断面において、隣接するセル3の間で断面積が異なっていると好ましい。隣接するセル3の断面積が異なる場合、そのうちの断面積が広いセル3に外部より流体Gを流入すると、流体Gの流入抵抗を一層確実に低減できる。
【0065】
1−9:目封止部の配置の形態:
本発明のハニカム構造体1において、第1端面4の側および第2端面5の側のいずれにおいても、共通の隔壁2により隔てられて隣接するセル3のうち、目封止部6が一方のセル3に設けられかつ他方のセル3に設けられていない実施形態であることが好ましい。具体例としては、ハニカム構造体1を第1端面4または第2端面5の平面図において、目封止部6を設けるセル3が互い違いに市松模様状に現れる実施形態がある。
【0066】
2.ハニカム構造体の製造方法:
上述の本発明のハニカム構造体1の製造には、従来の技術に基づいて当業者が用いうるあらゆる方法を適用可能であるが、具体的な実施形態として、次に述べるハニカム構造体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」)を適用できる。
【0067】
2−1.本発明の製造方法の基本的な実施形態:
概要を述べると、本発明の製造方法は、2つのハニカム構造体を用意し、そのうちの一方のハニカム構造体の1つの端面において所定のセルの端部に抵抗部を設けた後、このハニカム構造体の抵抗部を設けた側の端面と、もう一方のハニカム構造体の端面とを合わせ、接合ハニカム構造体を作製する。接合ハニカム構造体では、2つのハニカム構造体のセル同士が軸方向にて連通し、1つの連通したセルの中間部分に抵抗部を備える。
【0068】
本発明の製造方法は、抵抗部を設ける抵抗部配設工程、2つのハニカム構造体を合わせて1つの接合ハニカム構造体を形成する接合工程、およびセルに目封止部を設ける目封止工程、という3つの工程を有する。以下、本発明の製造方法の一実施形態の概略を示す図12A〜12Eを参照し、順を追って説明する。
【0069】
2−1−1.抵抗部配設工程:
図12Aは、本発明の製造方法の一実施形態で抵抗部配設工程に用いる、第1のハニカム構造体61の断面図である。抵抗部配設工程では、図12Bに示すように、第1のハニカム構造体61の端面65における一部または全部のセル3の端部に、流体の流路の流路断面積を小さくする抵抗部11を設ける。図12Bに示す実施形態では、貫通孔12を有する抵抗部11を設けている。
【0070】
ここでは図示しないが、抵抗部配設工程は、例えば、所定の端面65において所定のセル3の開口面積を小さくするように、セル3内部でなく端面65上に、1個のセル3の開口面積より小さい孔の開いたフィルムを付ける工程でも良い。
【0071】
2−1−2.接合工程:
図12Cは、接合工程の一実施形態を表す。この図に示すように、接合工程では、第1のハニカム構造体の抵抗部11を設けた側の端面66と、第2のハニカム構造体62の端面65とを合わせる。その結果、図12Dに示す、接合ハニカム構造体71を形成する。
【0072】
接合ハニカム構造体71には、第1のハニカム構造体61のセル63と第2のハニカム構造体62のセル64とが連通したセル72が構築される。そして、セル72には、抵抗部11が軸方向Xの中間部分に設けられる。
【0073】
セル22を構築する際には、第1のハニカム構造体61の隔壁67と第2のハニカム構造体62の隔壁68とを一体にする。この場合、第1のハニカム構造体61の隔壁67の縁部81と第2のハニカム構造体62の隔壁68の縁部82とを接合材を介して連結させてもよい。
【0074】
接合材としては、第1のハニカム構造体61および/または第2のハニカム構造体62の隔壁2と同じ材質のものを用いることができる。
【0075】
2−1−3.目封止工程:
目封止工程は、セル72に目封止部6を設ける工程であり、従来の目封止ハニカム構造体の製造方法での目封止工程を適用できる。
【0076】
図12A〜12Dに示す工程に続き、目封止工程を経て、図12Eに示すように、接合ハニカム構造体71の各々セル72には、軸方向Xにおける少なくともいずれか一方の端部の側に目封止部6が設けられる。
【0077】
図13A〜13Dは、上記とは異なる、本発明の製造方法の一実施形態の概略を示す図である。図13A〜13Dに示す実施形態では、抵抗配設工程および接合工程に先立ち、第1のハニカム構造体61および第2のハニカム構造体62の所定のセル3のいずれか1つの端面65の側に目封止部6を設けておく(図13A、13Cを参照)。
【0078】
なお、図13A〜13Dに示す実施形態では、第1のハニカム構造体61における目封止部6を設ける側の端面65とは反対側の端面66に、抵抗部11を設けている(図13B参照)。
【0079】
本発明の製造方法では、目封止工程を行う時期は、抵抗部配設工程および/または接合工程の前あっても後であってもよい。
【0080】
本発明の製造方法では、上述の基本的な実施形態を備えつつ、次に述べる実施形態も採用できる。以下に幾つか実施形態を示すが、これら複数の実施形態より任意に2以上の実施形態を選択し、これら選択された実施形態の構成を組み合わせたものも、本発明の製造方法の技術的範囲に含まれる。
【0081】
2−2.加圧部材を用いて抵抗部材料をセルの端部に充填する実施形態:
図14は、抵抗部配設工程の一実施形態を模式的に表し、流動性を有する抵抗部材料85を用いて、貫通孔12を有する抵抗部11を設ける様子を示す。まず、この実施形態の抵抗部配設工程では、第1のハニカム構造体の61の端面66に一部または全部のセル63の開口に対応するように開口したマスク87を設ける。
【0082】
続いて、マスク87の上またはマスク87の表面上と同一平面上に流動性を有する抵抗部材料85を供給し、マスク87の表面上にて、その表面に対して鋭角に配置されて抵抗部材料85を加圧するための加圧面90を有する加圧部材88を移動させ、加圧面90にて抵抗部材料85を加圧して端面66におけるセル63の端部に抵抗部材料85を充填する。
【0083】
この実施形態では、抵抗部材料85を、軸方向Xにおいて厚さ3mm以下にてセル63に充填することができる。よって、この実施形態により設けた抵抗部11は、非常に薄いため、流体Gに対して過剰な抵抗を与えない利点がある。
【0084】
次いで、図14に示すように、セル63の端部に充填されている抵抗部材料85が流動性を有する間に、抵抗部材料85が充填されているセル63内を陽圧または陰圧にする。
【0085】
セル63内を陽圧または陰圧にすることにより、セル63の端部に充填されている抵抗部材料85の一部がセル63外に流出またはセル63のさらに奥へ流入し、残余の抵抗部材料85がほぼ同じ場所で隔壁67に付着したまま留まる。そのため、セル63の内部とセル63の外部とを貫通させる貫通孔12を有する抵抗部11が形成される。
【0086】
図14に示す実施形態では、吸引手段86によって、対抗部材料85の固化の程度に応じてセル63を1つずつ、抵抗部材料85を充填する側とは反対側の端部65から吸引している。図示しないが、吸引手段86による吸引は、全てのセル63を一斉に行ってもよい。
【0087】
2−3.貫通孔の端が丸みを帯びている抵抗部を設ける実施形態:
図15は、第1のハニカム構造体61のセル63の端部に流動性を有する抵抗部材料85を充填した後、セル63内の圧力を人為的には変化させずにそのまま所定時間保持している様子を表す。抵抗部材料85は流動性を有するため、抵抗部材料85を充填後そのまま放置すると、端面66に露出する抵抗部材料85の表面は、中心付近が凹む。
【0088】
続いて、図16に示すように、抵抗部材料85を充填する側とは反対側の端部65から吸引手段86によってセル63内を吸引して、貫通孔12を形成する。
【0089】
図17は、図16中の枠A内の拡大図である。この実施形態では、端面66に現れている側の貫通孔12の縁は、丸みを帯びて形成される。
【0090】
本発明の製造方法では、第1のハニカム構造体61および/または第2のハニカム構造体62にセラミックスを主成分とするものを用いることができる。この場合、第1のハニカム構造体61と第2のハニカム構造体62とは、隔壁67、68の気孔率が異なるようにもできる。
【0091】
また、流動性を有する抵抗部材料85は、セラミックスを主成分とするものを用いることが可能である。この場合、抵抗部11を、多数の細孔を有する多孔質体から構成されるものにできる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
(実施例1)
(1)ハニカム構造体
焼成後にコージェライトとなるように調整されたタルク、カオリン、アルミナ、シリカを、その化学組成が、SiO42〜56質量%、Al30〜45質量%、およびMgO12〜16質量%となるように所定の割合で調合し、これに造孔材、バインダー、界面活性剤、混合水を添加し、混合、混錬を実施した後に押出成形を行うことでハニカム成形体を得た。
【0094】
次に、得られたハニカム成形体を、180℃で3分間乾燥させ、その後、1420℃で5時間焼成して、ハニカム構造体を得た。ハニカム構造体は、隔壁厚さが1mm、セル密度が300セル/inch、水銀ポロシメータによって測定された気孔率(隔壁の気効率)45%、平均細孔径(隔壁の平均細孔径)25μmであった。なお、同じハニカム構造体を2体作製した。
【0095】
(2)目封止工程
目封止部材料としては、平均粒径5μmのカオリン40質量%、平均粒径40μmのタルク40質量%、平均粒径10μmの酸化アルミニウム15質量%、平均粒径5μmのシリカ5質量を主たる無機成分として用いた。目封止材料の粘度は、25℃で250dPa・sであった。この目封止材料を、2体のハニカム構造体それぞれの片側の端面に充填した。なお、目封止材料の充填は、特開2009−40046号公報に記載される、加圧部材を使用する方法を用いた。目封止材料を充填する条件は、加圧部材からの圧力0.4MPa、加圧部材駆動速50mm/sec、ハニカム構造体と加圧面との角度15°とした。充填された目封止部は、厚みの平均3mm、目封止部の厚みの平均値に対する標準偏差0.3mmであった。
【0096】
(3)抵抗部配設工程
2体のハニカム構造体のうち、1体には、目封止部とは反対の端面に抵抗部を形成した。ハニカム構造体と同じ材料のセラミックススラリーを抵抗部材料とし、図15に示されるように、端面にマスクを設け、次いで加圧部材によって抵抗部材料をセル端部に充填し、抵抗部材料を充填した側とは反対側の端面からセル内を吸引することにより、貫通孔を有する抵抗部を形成した。抵抗部材料を充填する際の条件は、加圧部材からの圧力0.4MPa、加圧部材駆動速度100mm/sec、ハニカム構造体と加圧面がなす角度30°とした。このようにして形成された抵抗部は、厚みの平均1.0mm、抵抗部の厚みの平均値に対する標準偏差0.3mmであった。
【0097】
(4)接合工程
抵抗部を形成したハニカム構造体の抵抗部のある端面と、もう一方のハニカム構造体の目封止をしていない端面とを接合した。両端面の接合は、接合させる2つの端面のうち、一方の端面の隔壁の縁部に抵抗部と同じ材質の接着剤を塗布し、隔壁の縁部同士を接着、さらに加圧後、焼成して行った。以上により、軸方向におけるセルの中間部分に抵抗部を設けたハニカム構造体を得た。
【0098】
(実施例2)
抵抗部材料を充填する際の条件を、加圧部材からの圧力0.3MPa、加圧部材駆動速度50mm/sec、ハニカム構造体と加圧面がなす角度30°とした以外は、実施例1と同じ方法によってハニカム構造体を得た。なお、抵抗部は、厚みの平均2.0mm、抵抗部の厚みの平均値に対する標準偏差0.3mmであった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、排ガスなどの浄化に用いられる濾過機能を備える隔壁と隔壁に区画形成される複数のセルとを有するハニカム構造体、およびその製造方法として利用できる。
【符号の説明】
【0100】
1:ハニカム構造体、2:隔壁、3:セル、4:第1端面、5:第2端面、6:目封止部、11:抵抗部、11a、抵抗部、11b:抵抗部、12:貫通孔、13:多孔質体、21:目封止部、22:目封止部、41:内壁、42:第2端面側の壁面、51:隔壁、52:隔壁、53:界面、61:第1のハニカム構造体、62:第2のハニカム構造体、63:セル、64:セル、65:端面、66:端面、67:隔壁、68:隔壁、69:端面、71:接合ハニカム構造体、79:端面、80:端面、81:隔壁の縁部、82:隔壁の縁部、85:抵抗部材料、86:吸引手段、87:マスク、88:加圧部材、90:加圧面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の隔壁と、前記隔壁によって区画形成されて第1端面から第2端面への軸方向に通じる流体の流路となる複数のセルと、各々の前記セルの前記第1端面の側または前記第2端面の側の少なくともいずれかを目封止する目封止部とを有するハニカム構造体であって、
前記第2端面の側に前記目封止部を設けられている前記セルの一部または全部において前記セルの前記軸方向での中間部分に設けられて、前記セル内に前記第1端面から前記第2端面の方向へ前記流体を流すときに前記第2端面の方向に向かう前記流体の流れに抵抗を与えつつ前記第2端面の側に前記流体の一部を通過させる抵抗部を備えるハニカム構造体。
【請求項2】
前記抵抗部は、前記流体の流路となる貫通孔が設けられている請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記第1端面の側からの前記第2端面側に向かって連続的または断続的に減少する流路断面積を有する請求項2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記抵抗部は、多数の細孔を有する多孔質体からなり、前記細孔が前記セルにおける前記抵抗部を設けられている箇所での前記流体の流路となる請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記抵抗部は、前記軸方向における厚さが1〜3mmの壁状の構造を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記抵抗部が設けられている各々の前記セルにおいて、前記セルを区画形成する前記隔壁の気孔率が、前記抵抗部を境に前記第1端面の側と前記第2端面の側とで異なる請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記軸方法に垂直な断面において、隣接する前記セルの間で断面積が異なっている請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記セルの前記第1端面の側を目封止する前記目封止部が、前記第1端面に露出せず前記セルの内部に設けられている請求項1〜7のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
共に多孔質の隔壁と前記隔壁によって区画形成されて一方の端面から他方の端面に向かう軸方向に通じて流体の流路となる複数のセルとを有する第1のハニカム構造体および第2のハニカム構造体の前記端面同士を合わせて一体化して、接合ハニカム構造体を形成するハニカム構造体の製造方法であって、
前記第1のハニカム構造体の前記端面のいずれか1つの前記端面における一部または全部の前記セルの端部に、前記流体の前記流路の流路断面積を小さくする抵抗部を設ける抵抗部配設工程と、
前記第1のハニカム構造体の前記抵抗部を設けた側の前記端面と、前記第2のハニカム構造体の前記端面とを合わせて互いの前記セルを連通させて、前記軸方向における中間部分に前記抵抗部を備える前記セルを有する前記接合ハニカム構造体を形成する接合工程と、
前記接合ハニカム構造体における各々の前記セルが前記軸方向で少なくともいずれか一方の端部の側を目封止されるように、前記第1のハニカム構造体および前記第2のハニカム構造体の前記セルに目封止部を設ける目封止工程と、を有するハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
前記抵抗部配設工程は、前記第1のハニカム構造体のいずれか1つの前記端面に一部または全部の前記セルの開口に対応するように開口したマスクを設け、そのマスクの上またはマスクの表面上と同一平面上に前記抵抗部材料を供給し、前記マスクの表面上にて、その表面に対して鋭角に配置されて前記抵抗部材料を加圧するための加圧面を有する加圧部材を移動させることにより、前記加圧面にて前記抵抗部材料を加圧して前記端面における前記セルの端部に前記抵抗部材料を充填し、次いで前記セルの端部に充填されている前記抵抗部材料が流動性を有する間に、前記抵抗部材料が充填されている前記セル内を陽圧または陰圧にして、前記セルの端部に充填されている前記抵抗部材料に前記セルの内部と前記セルの外部とを通じさせる貫通孔を形成する工程を有する請求項9に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項11】
抵抗部配設工程は、前記セルの端部に前記抵抗部材料を充填してから所定時間を経過後に、前記抵抗部材料が充填されている前記セル内を陰圧にして前記貫通孔を形成する請求項10に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項12】
前記第1のハニカム構造体と前記第2のハニカム構造体とは、前記隔壁の気孔率が異なる請求項9〜11のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−194320(P2011−194320A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63965(P2010−63965)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】