ハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体
【課題】コート層全体の強度が均一で、しかもコート層の表面強度が高いハニカム構造体を容易に実現できるハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】本発明のハニカム構造体の製造方法は、型枠内に複数のハニカム焼成体を固定する固定工程と、上記型枠とハニカム焼成体との隙間及びハニカム焼成体間の隙間にシール材ペーストを充填する充填工程と、上記シール材ペーストを乾燥固化させて接着材層及びコート層を形成する乾燥工程とを備え、上記シール材ペーストは、無機粒子及び/又は無機繊維を含み、上記型枠、上記型枠の内面、又は、上記型枠の内面側に配置された部材には、空気透過性を有する通気部が設けられており、上記乾燥工程では、上記シール材ペーストを上記通気部の少なくとも一部に接触させて上記シール材ペーストの乾燥固化を行うことを特徴とする。
【解決手段】本発明のハニカム構造体の製造方法は、型枠内に複数のハニカム焼成体を固定する固定工程と、上記型枠とハニカム焼成体との隙間及びハニカム焼成体間の隙間にシール材ペーストを充填する充填工程と、上記シール材ペーストを乾燥固化させて接着材層及びコート層を形成する乾燥工程とを備え、上記シール材ペーストは、無機粒子及び/又は無機繊維を含み、上記型枠、上記型枠の内面、又は、上記型枠の内面側に配置された部材には、空気透過性を有する通気部が設けられており、上記乾燥工程では、上記シール材ペーストを上記通気部の少なくとも一部に接触させて上記シール材ペーストの乾燥固化を行うことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス浄化用フィルタ又は触媒担体として、長手方向に多数のセルが並設された柱状のハニカム焼成体を複数個組み合わせてなるハニカム構造体が知られている。ハニカム構造体は、ハニカム焼成体からなるセラミックブロックと、その外周に配置されたコート層とを有する。セラミックブロックは、複数の柱状のハニカム焼成体が側面に形成された接着材層を介して固定されることにより形成される。
【0003】
ハニカム構造体の製造方法としては、接着材層とコート層とを別々の工程で形成する方法が知られている。この方法では、まず、複数のハニカム焼成体をシール材ペーストを用いて接着し、このシール材ペーストを乾燥固化させることにより接着材層を形成する。これによりハニカム焼成体同士が強固に接着されたセラミックブロックが得られる。次いで、セラミックブロックの周囲にシール材ペーストを塗布して乾燥固化させることによりコート層が形成され、ハニカム構造体となる。
【0004】
しかしながら上記の方法では、接着材層とコート層とが別々の工程で形成されるため、接着材層とコート層との間に両者を区分けする境界面が形成される。このようなハニカム構造体を、例えば、車両用の排ガス浄化フィルタとして使用すると、運転開始時の急激な温度上昇に曝されたり、車両の運転からフィルタの再生処理という熱サイクルが長期間にわたって繰り返されること等によって、接着材層とコート層との間の界面に剥離又は破壊が生じる。
【0005】
そこで、特許文献1〜3には、接着材層とコート層とを、両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成する手法が開示されている。具体的には、特許文献1、2に記載の方法では、まず、組み立て装置を用いて複数のハニカム焼成体を一定の間隔を保持して所定の形状に組み立て、この形状を型枠を用いて固定する。次いで、ハニカム焼成体の間隙及びハニカム焼成体と型枠との間にシール材ペーストを注入する。そして、このシール材ペーストを乾燥して固化することにより、接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成している。特許文献3では、ハニカム焼成体を所定の形状に組み立てる際に、間隔保持部材を用いてハニカム焼成体を一定の間隔に保持し、型枠を用いて接着材層とコート層とを一体的に形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/126334A1号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/139608A1号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/047210A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成したハニカム構造体は、コート層自体の強度やコート層の表面強度にやや劣る傾向がある。そのために、コート層自体の強度やコート層の表面強度に優れたハニカム構造体が求められている。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、コート層全体の強度が均一で、しかもコート層の表面強度が高いハニカム構造体を容易に製造することができるハニカム構造体の製造方法、及び、コート層全体の強度が均一で、しかもコート層の表面強度が高いハニカム構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にコート層が設けられたハニカム構造体の製造方法であって、外周部にセル壁が形成されたハニカム成形体を押出成形する成形工程と、上記ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を形成する焼成工程と、型枠内に複数のハニカム焼成体を固定する固定工程と、上記型枠とハニカム焼成体との隙間及びハニカム焼成体間の隙間にシール材ペーストを充填する充填工程と、上記シール材ペーストを乾燥固化させて上記接着材層及び上記コート層を形成する乾燥工程とを備え、上記シール材ペーストは、無機粒子及び/又は無機繊維を含み、上記型枠、上記型枠の内面、又は、上記型枠の内面側に配置された部材には、空気透過性を有する通気部が設けられており、上記乾燥工程では、上記シール材ペーストを上記通気部の少なくとも一部に接触させて上記シール材ペーストの乾燥固化を行うことを特徴とする。
【0010】
上記製造方法によると、乾燥工程において、シール材ペーストに含まれる水分が水蒸気となると、水蒸気を含む空気は、ハニカム焼成体に形成された気孔を通って外部へ排出されるだけでなく、通気部を通って外部へ排出される。すなわち、コート層を形成するシール材ペーストに含まれる水分は、ハニカム焼成体の側だけでなく通気部の側にも移動するため、ハニカム焼成体側へ偏っていた水分の移動を緩和でき、これによりシール材ペーストに含まれる無機繊維及び/又は無機粒子のマイグレーションの発生を抑制できる。得られたコート層は、コート層全体の強度が均一で、しかもコート層の表面強度にも優れたものとなる。
【0011】
請求項2に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記型枠は、緻密質金属にて形成された型枠、多孔質金属にて形成された型枠、内面に複数の凹部及び/又は凸部が成形された緻密質金属からなる型枠のいずれかである。
緻密質金属にて形成された型枠の内面側には、空気透過性を有する通気部を含む部材が設けられている。
多孔質金属にて形成された型枠は、型枠そのものが通気部を含み、空気透過性を有する。本発明のハニカム構造体の製造方法においては、多孔質金属にて形成された型枠の内面側に更に空気透過性を有する通気部を含む部材を設けた構成としてもよい。
内面に複数の凹部及び/又は凸部が成形された緻密質金属からなる型枠は、型枠自体には空気透過性はないが、ハニカム焼成体と型枠との間にシール材ペーストを注入した際に、凹部及び/又は凸部によって隙間が生じると、この隙間を通気部として利用できる。すなわち、内面に複数の凹部及び/又は凸部が成形された緻密質金属からなる型枠は、型枠の内面が空気透過性を有する通気部を含むとも言える。この場合、型枠の内面側に更に空気透過性を有する通気部を含む部材を設けた構成としてもよい。
【0012】
請求項3に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記型枠の内面側に配置された部材は、紙部材、不織布部材、メッシュ部材、多孔性樹脂層、及び、ポーラスカーボン層から選ばれる少なくとも一種からなる。これらは単独で用いて通気部としてもよいし、複数組み合わせて通気部を構成してもよい。
【0013】
請求項4に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記通気部は、0.1μm〜50μmの平均気孔径を有する。
通気部がこのような平均気孔径を有すると、シール材ペースト中に含まれる無機粒子及び/又は無機繊維の移動を抑制しつつ、空気透過性を確保することができる。
【0014】
請求項5に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記型枠又は上記型枠の内面側に配置された部材の空気透過性は、0.05cc/cm2/sec以上である。
型枠又は通気部を含む部材がこのような空気透過性を有すると、シール材ペースト中に含まれる無機粒子及び/又は無機繊維のマイグレーションを充分に解消できる。
【0015】
請求項6に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記型枠と上記型枠の内面側に配置された部材とは、通気部を含み、上記型枠は、多孔質金属からなり、上記部材は、紙部材又は不織布部材からなる。これによると、多孔質金属及び紙部材又は不織布部材によって空気透過性を付与できるとともに、紙部材又は不織布部材とシール材ペーストとが接触することで、ハニカム構造体を離型する際に良好な離型性が得られる。また、シール材ペーストの付着等によって紙部材又は不織布部材の空気透過性又は離型性が低下した場合には、容易に紙部材又は不織布部材を交換できる。
【0016】
請求項7に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記型枠の内面側に配置された部材は、通気部を含み、上記部材は、紙部材又は不織布部材からなり、上記型枠は、緻密質金属からなる。これによると、紙部材又は不織布部材によって空気透過性を付与できるとともに、紙部材又は不織布部材とシール材ペーストとが接触することで、ハニカム構造体を離型する際に良好な離型性が得られる。また、シール材ペーストの付着等によって紙部材又は不織布部材の空気透過性及び離型性が低下した場合には、容易に紙部材又は不織布部材を交換できる。
【0017】
請求項8に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記紙部材は、シリコン加工が施された紙部材である。
本明細書においてシリコン加工が施された紙部材とは、クラフト紙又はグラシン紙等の表面にシリコン樹脂材料をコーティング処理したものや、クラフト紙又はグラシン紙等にシリコン樹脂材料を含浸させたものをいう。シリコン加工が施されたクラフト紙又はグラシン紙等の紙部材は、乾燥固化したシール材ペーストから容易に剥離することができる。
【0018】
請求項9に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記シリコン加工が施された部分に設けられた通気部の平均気孔径は、20μm〜50μmである。
【0019】
請求項10に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記型枠を構成する多孔質金属又は緻密質金属は、銅、ニッケル、ステンレス、又は、これらの金属の少なくとも一種を用いてなる合金である。
【0020】
請求項11に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記不織布部材は、ポリエステル繊維を含むポリエステル不織布部材である。
【0021】
請求項12に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記多孔性樹脂層は、フッ素樹脂、及び、ポリプロピレンから選ばれる少なくとも一種からなる。
【0022】
請求項13に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記型枠は、複数の部材に分離可能であって、上記固定工程では、複数の各部材を一体に組み合わせて使用する。
【0023】
請求項14に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記固定工程では、ハニカム焼成体同士を一定の間隔で保持する間隔保持部材を更に用いて複数の上記ハニカム焼成体を固定する。
【0024】
請求項15に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記固定工程では、ハニカム焼成体の両端面を保持することによりハニカム焼成体を固定する。これによると、ハニカム焼成体を所定の形状に容易に保持できる。
【0025】
請求項16に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記シール材ペーストは、上記乾燥工程では、無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とが、それぞれ、上記コート層の表面側と上記コート層のセラミックブロック側とで、略同一になるように、上記シール材ペーストを乾燥固化する。これによると、コート層の全体にわたって強度が均一で、コート層の表面に無機粒子及び/又は無機繊維の分散ムラによる凹凸がないため表面強度が高く、しかもコート層の表面に粉っぽさのないハニカム構造体が得られる。
なお、本明細書において、「無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とが、それぞれ、コート層の表面側とコート層のセラミックブロック側とで、略同一になる」とは、以下のことをいうこととする。
シール材ペースト中に、無機粒子と無機繊維とのうち無機粒子のみが含まれている場合、「無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とが、それぞれ、コート層の表面側とコート層のセラミックブロック側とで、略同一になる」とは、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のセラミックブロック側における無機粒子の存在割合とが、略同一になることをいうこととする。
また、シール材ペースト中に、無機粒子と無機繊維とのうち無機繊維のみが含まれている場合、「無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とが、それぞれ、コート層の表面側とコート層のセラミックブロック側とで、略同一になる」とは、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のセラミックブロック側における無機繊維の存在割合とが、略同一になることをいうこととする。
また、シール材ペースト中に無機粒子と無機繊維の両方が含まれている場合、「無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とが、それぞれ、コート層の表面側とコート層のセラミックブロック側とで、略同一になる」とは、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のセラミックブロック側における無機粒子の存在割合とが、略同一になり、且つ、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のセラミックブロック側における無機繊維の存在割合とが、略同一になることをいうこととする。
コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のセラミックブロック側における無機粒子の存在割合とが、「略同一」になるとは、「コート層の表面側における無機粒子の存在割合」が「コート層のセラミックブロック側における無機粒子の存在割合」の80%〜120%であることをいうこととする。「コート層の表面側における無機粒子の存在割合」は、「コート層のセラミックブロック側における無機粒子の存在割合」の90%〜110%であることがより望ましく、95%〜105%であることがさらに望ましく、99%〜101%であることが一層望ましい。
コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のセラミックブロック側における無機繊維の存在割合とが、「略同一」になるとは、「コート層の表面側における無機繊維の存在割合」が「コート層のセラミックブロック側における無機繊維の存在割合」の80%〜120%であることをいうこととする。「コート層の表面側における無機繊維の存在割合」は、「コート層のセラミックブロック側における無機繊維の存在割合」の90%〜110%であることがより望ましく、95%〜105%であることがさらに望ましく、99%〜101%であることが一層望ましい。
また、本明細書において、「コート層の表面側」とは、コート層のうち、セラミックブロックまでの距離よりもコート層の表面までの距離の方が近い部分をいうこととする。「コート層のセラミックブロック側」とは、コート層のうち、コート層の表面までの距離よりもセラミックブロックまでの距離の方が近い部分をいうこととする。
【0026】
請求項17に記載のハニカム構造体では、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にコート層が設けられたハニカム構造体であって、上記接着材層及び上記コート層は、無機粒子及び/又は無機繊維を含み、上記接着材層と上記コート層とは一体的に形成されており、両者を区分けする境界面が存在せず、無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とは、それぞれ、上記コート層の表面側と上記コート層のセラミックブロック側とで、略同一である。
【0027】
このような構成を有するハニカム構造体は、コート層に含まれる無機粒子及び/又は無機繊維が、表面側とセラミックブロック側においてほぼ均一に分散しているため、コート層の全体にわたって均一な強度が得られる。また、コート層の表面には、無機粒子及び/又は無機繊維の分散ムラによる凹凸が生じていないため、表面強度が高く、粉っぽさのないハニカム構造体となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図2】図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図3】図3は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造工程を説明するフローチャート図である。
【図4】図4は、本発明の第一実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
【図5】図5(a)は、本発明の第一実施形態において、供給装置を装着した型枠の状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。図5(b)は、本発明の第一実施形態において、供給装置を装着した型枠の状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に平行な方向に沿う断面図である。
【図6】図6(a)は、本発明の第一実施形態において、型枠内にシール材ペーストを充填した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。図6(b)は、本発明の第一実施形態において、型枠内にシール材ペーストを充填した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に平行な方向に沿う断面図である。
【図7】図7(a)は、本発明の第一実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。図7(b)は、本発明の第一実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
【図8】図8(a)は、比較例1の乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。図8(b)は、比較例1の乾燥工程(S5)において型枠の内面と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
【図9】図9(a)は、本発明の第二実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。図9(b)は、本発明の第二実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
【図10】図10(a)は、本発明の第三実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。図10(b)は、本発明の第三実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。
【図11】図11(a)は、本発明の第三実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。図11(b)は、本発明の第四実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。図11(c)は、本発明の第五実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
【図12】図12は、本発明の第六実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
【図13】図13(a)は、本発明の第六実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。図13(b)は、本発明の第六実施形態において、型枠の内面と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
【図14】図14(a)、図14(b)、図14(c)、図14(d)、及び、図14(e)は、本発明の第七実施形態に係るハニカム焼成体の固定工程を説明する工程図であり、型枠内におけるハニカム焼成体の配置について、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う状態を模式的に示した断面図である。
【図15】図15は、本発明の第八実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
【図16】図16は、本発明の第九実施形態において、2個の型枠部材に分割可能な型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成した従来のハニカム構造体は、接着材層とコート層とを別々に形成した従来のハニカム構造体に比べて、コート層自体の強度及びコート層の表面強度にやや劣る傾向がある。本発明者らは、接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成したハニカム構造体について種々検討したところ、コート層における上記のような傾向は、コート層となるシール材ペーストの乾燥処理に起因することを見いだした。
【0030】
接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成したハニカム構造体を製造するに際し、接着材層及びコート層は、型枠内に組み上げた複数のハニカム焼成体の間及びハニカム焼成体と型枠との間にシール材ペーストを充填して、このシール材ペーストを加熱して乾燥することで形成される。
接着材層を形成するためにハニカム焼成体の間に充填されたシール材ペースト中の水分は、加熱により水蒸気となって、シール材ペーストの両側に設けられた多孔質体であるハニカム焼成体へと移動する。これにより、シール材ペーストに含まれる無機粒子及び無機繊維も両側に設けられたハニカム焼成体の側へと移動する。
一方で、コート層を形成するためにハニカム焼成体と型枠との間に充填されたシール材ペースト中の水分は、加熱により水蒸気となると、ハニカム焼成体の側へは移動できるものの、型枠の側へは移動できない。これは、接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成する従来のハニカム構造体の製造方法においては、型枠として緻密質金属にて形成された緻密質金属型枠、又は、この緻密質金属型枠の内面側に、ハニカム構造体の離型性の向上を目的としてフッ素樹脂層が形成された型枠等が使用されているためである。
【0031】
上記した従来の型枠は、空気透過性がなく、加熱により発生した水蒸気を含む空気を透過させることができないため、コート層となるシール材ペースト中の水分は、必然的に、型枠の側からハニカム焼成体の側へと移動する。この水分の移動に伴って、シール材ペーストに含まれる無機繊維又は無機粒子等は、型枠の側からハニカム焼成体の側へと移動する。これにより、シール材ペースト中において無機粒子及び無機繊維に分散ムラが生じ、無機粒子及び無機繊維がそれぞれ偏って存在する、いわゆるマイグレーションが発生する。
マイグレーションが発生すると、得られたコート層は、無機粒子及び無機繊維が、表面側とセラミックブロック側において均一に分散していないために、コート層の全体の強度にばらつきが生じる。また、コート層の表面には無機粒子及び無機繊維の分散ムラによって微細な凹凸が生じ、これによりコート層の表面が削れやすくなったり剥離しやすくなって、コート層の表面が粉っぽい状態となる。コート層がこのような状態であると、ハニカム構造体を排気ガス浄化用フィルタ又は触媒担体として利用した場合に、再生処理等の高温に曝された際にハニカム構造体の膨張及び収縮によるクラックの発生に繋がることが考えられる。
【0032】
上記現象を考慮して、本発明者らは、ハニカム焼成体の側に向かって移動するシール材ペースト中の水分を型枠の側にも移動させることで、無機粒子及び無機繊維をコート層の表面に均一に分散できると考えた。そこで、型枠及び/又は型枠の内面側(型枠の内面を含む部分)が水蒸気を含んだ空気を透過できる空気透過性を有するように構成したところ、コート層となるシール材ペースト中の水分を、ハニカム焼成体の側だけでなく型枠の側へも移動させることができることを見いだし、本発明に到達した。
【0033】
なお、上記説明では、シール材ペーストに無機繊維及び無機粒子が含まれる場合について説明したが、無機繊維又は無機粒子のいずれか一方のみが含まれる場合も、マイグレーションが発生する理由は同様である。
また、マイグレーションの発生を抑制するためには、型枠を外した後にシール材ペーストを乾燥固化させることも考えられるが、シール材ペーストが未硬化の状態で型枠を外すとシール材ペーストの表面に窪み又は変形が生じて、やはり得られたコート層の表面には凹凸が生じるため望ましくない。
【0034】
本発明において空気透過性とは、コート層を形成するシール材ペーストに含まれた水分(水蒸気)を含む空気を透過できる性質をいう。
空気透過性(通気度ともいう)は、JIS L1096(A法)に記載の測定方法に準じて測定する。本発明における通気部は、水分(水蒸気)を含む空気を透過できればよく、空気透過性について特に限定されるものではないが、空気透過性は、0.05cc/cm2/sec以上であることが望ましい。空気透過性の上限は特に設ける必要はないが、空気透過性は、0.05cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることがより望ましく、1cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることがさらに望ましく、5cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることが特に望ましい。ただし、空気透過性が100cc/cm2/secを超えたとしても、その効果が損なわれるものではない。
空気透過性を有する通気部とは、上記したコート層を形成するシール材ペーストに含まれた水分(水蒸気)を含む空気が透過できる部分をさす。「型枠、型枠の内面、又は、型枠の内面側に配置された部材には、空気透過性を有する通気部が設けられている」とは、型枠自体が空気透過性を有すること、型枠自体が空気透過性を有し、かつ、型枠の内面側に更に空気透過性を有する別の部材が配置されていること、型枠自体には空気透過性はないが、型枠の内面側に空気透過性を有する別の部材が配置されていること、型枠自体には空気透過性はないが、内面に凹部及び/又は凸部が形成されていることで、シール材ペーストを注入した際に空気透過性を有する隙間が形成されることのいずれかをいう。
型枠の内面とは、型枠のハニカム焼成体側の面であり、型枠の内面側に部材が配置されるとは、型枠の内面側に一体に又は分離可能に空気透過性を有する部材が配置されていることをいう。
【0035】
通気部としては、例えば、以下のような態様のものが挙げられる。
【0036】
本発明の第1の態様としては、型枠自体には空気透過性はないが、型枠の内面側に空気透過性を有する別の部材がさらに配置されている態様が挙げられる。
このような態様の一例としては、型枠が緻密質金属にて形成された型枠であって、この型枠の内面側に空気透過性を有する別の部材が設けられた例が挙げられる。型枠の内面側に設けられる部材は、型枠と一体的に形成されていてもよいし、分離可能に構成されていてもよい。
本発明の第1の態様において、型枠と型枠の内面側に配置された部材とが分離可能に形成された例としては、型枠が緻密質金属にて形成され、その内面側に紙部材又は不織布部材を配置したものが挙げられる。
本発明の第1の態様において、型枠と型枠の内面側に配置された部材とが一体的に形成された例としては、型枠が緻密質金属にて形成され、その内面上に多孔質樹脂層、ポーラスカーボン層等が形成されたものが挙げられる。
【0037】
本発明の第2の態様としては、型枠自体(型枠の全体)が空気透過性を有し、かつ、この型枠の内面側に別の部材が設けられた態様が挙げられる。すなわち、型枠が多孔質金属にて形成された空気透過性を有する型枠であって、この型枠の内面側に、更に空気透過性を有する部材を設けた態様である。型枠の内面側に配置された部材は、型枠と一体的に形成されていてもよいし、分離可能に構成されていてもよい。
本発明の第2の態様において、型枠と型枠の内面側に配置された部材とが分離可能に形成された例としては、型枠が多孔質金属にて形成され、その内面側に紙部材、不織布部材、メッシュ部材(例えば、ステンレスメッシュ)のいずれかを配置したものが挙げられる。
本発明の第2の態様において、型枠と型枠の内面側に配置された部材とが一体的に形成された例としては、型枠が多孔質金属にて形成され、その内面上に多孔質樹脂層又はポーラスカーボン層等が形成されたものが挙げられる。
【0038】
本発明の第3の態様としては、型枠自体(型枠の全体)が空気透過性を有し、型枠そのものが通気部を含む態様が挙げられる。このような態様の一例としては、型枠が多孔質金属にて形成されたものが挙げられる。
【0039】
上記本発明の第2の態様及び第3の態様は、いずれも型枠自体が空気透過性を有しているので好適に使用できるが、コート層の剥離性(ハニカム構造体の離型性)を考慮すると、本発明の第2の態様が望ましい。本発明の第2の態様の中でも、型枠と型枠の内面側に配置された部材とが分離可能である態様は、コート層を形成するシール材ペーストの付着等に起因して、型枠の内面側に配置された部材の空気透過性が低下した時等に、この部材を容易に交換できるため、作業性の観点からも望ましい。
【0040】
上記本発明の第1の態様及び第2の態様において、型枠の内面側に配置された部材の厚さは、型枠の厚みの1/10〜3/4であることが望ましく、1/5〜1/2であることがより望ましい。部材の厚みは、必要とする空気透過性又は型枠の強度等を勘案して、型枠の材質又は部材の気孔率等に応じて適宜設定される。
【0041】
本発明において、多孔質金属にて形成された型枠(以下、多孔質金属型枠とも称す)とは、空気透過性を有し、銅、ニッケル、ステンレス又はこれらの少なくとも一種を用いてなる合金にて形成された型枠をいう。
本発明において、緻密質金属にて形成された型枠(以下、緻密質金属型枠とも称す)とは、空気透過性がなく、銅、ニッケル、ステンレス又はこれらの少なくとも一種を用いてなる合金にて形成された型枠をいう。なかでも、多孔質金属又は緻密質金属にて形成された型枠は、ステンレスにて形成された型枠が望ましい。
【0042】
多孔質金属型枠及び緻密質金属型枠には、内面上にコート層の剥離性(ハニカム構造体の離型性)を考慮して、フッ素樹脂層等が形成されていてもよい。
【0043】
上記のように通気部を使用して、接着材層とコート層とを一体的に形成する方法により得られたハニカム構造体は、接着材層とコート層との間に両者を区分けする境界面が存在しないため、車両用の排ガス浄化フィルタとして使用しても、接着材層とコート層との間で剥離等が生じにくいだけでなく、コート層の強度が全体にわたって均一になることから、コート層にクラックが発生しにくくなり、耐久性にも優れたものとなる。
【0044】
以下、通気部を用いて接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成する、本発明に係るハニカム構造体の製造方法について具体的に説明する。また、マイグレーションの発生が抑制され、コート層に無機繊維及び無機粒子が均一に分散した、本発明に係るハニカム構造体についても具体的に説明する。
【0045】
(第一実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第一実施形態について説明する。
本実施形態では、緻密質金属型枠の内面側に配置された、通気部を含む部材を用いて接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成するハニカム構造体の製造方法について説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
図1において、ハニカム構造体100は、円柱形状のセラミックブロック101と、セラミックブロック101の周囲に設けられたコート層102とを備える。セラミックブロック101は、柱状のハニカム焼成体110が接着材層103を介して複数個結束されてなる。
【0046】
柱状のハニカム焼成体110は、多孔質セラミックからなる。ここでは、ハニカム焼成体110として、長手方向に垂直な断面を見たときにその断面形状がそれぞれ異なる3種類のハニカム焼成体111、112、113が用いられる。以下に、図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)を用いて、ハニカム焼成体111、112、113の詳細を説明する。
【0047】
図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)は、図1に示した本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示した斜視図である。図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)において、両矢印Aで示したセルに平行な方向を長手方向といい、セルが露出した面を端面といい、端面以外の面を側面という。
【0048】
図2(a)に示したハニカム焼成体111の側面は、2つの平面と1つの曲面により構成される。ハニカム焼成体111は、多数のセル111aがセル壁111bを隔てて長手方向(両矢印A方向)に並設された構成を有する。ハニカム焼成体111は、セル111aのいずれか一方の端部が封止材111cによって封止されている。
図2(b)に示したハニカム焼成体112の側面は、3つの平面と1つの曲面により構成される。ハニカム焼成体112もハニカム焼成体111と同様に、多数のセル112aがセル壁112bを隔てて長手方向(両矢印A方向)に並設された構成を有する。また、ハニカム焼成体112は、セル112aのいずれか一方の端部が封止材112cによって封止されている。
更に、図2(c)に示すハニカム焼成体113の側面は、4つの平面により構成される。ハニカム焼成体113もハニカム焼成体111と同様に、多数のセル113aがセル壁113bを隔てて長手方向(両矢印A方向)に並設された構成を有する。また、ハニカム焼成体113は、セル113aのいずれか一方の端部が封止材113cによって封止されている。
【0049】
上記のようにセル111a、112a、113aのいずれか一方の端部が封止材111c、112c、113cによって封止されたハニカム焼成体111、112、113を用いてなるハニカム構造体100は、排ガス浄化用のハニカムフィルタとして使用できる。例えば、セル111aに流入した排ガスは、必ずセル壁111bを通過した後に、他のセル111aから流出する。排ガスがこのセル壁111bを通過する際には、排ガス中に含まれるパティキュレートがセル壁111bで捕捉される。これにより、排ガスを浄化することができる。他のセル112a、113aについても同様である。
上記したハニカム焼成体111、112、113は、接着材層103を介して複数個が結束され、円柱形状のセラミックブロック101となる。
【0050】
ここで、図1に示した本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体100は、接着材層103及びコート層102が同一のシール材ペーストによって一体的に形成されており、両者を区分けする境界面が存在しない。このような構成を有するハニカム構造体100を排ガス浄化用のフィルタとして用いた場合には、高温雰囲気下で利用しても接着材層103とコート層102との間で剥離又はクラック等が生じることがなくなる。
【0051】
また、接着材層103及びコート層102は、無機繊維及び無機粒子を含む。接着材層103及びコート層102は、無機繊維又は無機粒子のいずれか一方を含めばよいが、無機繊維及び無機粒子の両方を含んでいることが、強度の観点から望ましい。
本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体100においては、コート層102の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層102のセラミックブロック101側における無機繊維の存在割合とが、略同一であり、且つ、コート層102の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層102のセラミックブロック101側における無機粒子の存在割合とが、略同一である。このような構成を有するハニカム構造体100は、コート層102自体の強度が均一で、しかもコート層102の表面強度が高く、粉っぽさのない状態となる。
【0052】
接着材層103及びコート層102に含まれる無機粒子としては、例えば、炭化ケイ素等の炭化物、窒化ケイ素又は窒化ホウ素等の窒化物等からなる無機粉末等が挙げられる。中でも、熱伝導性に優れることから、炭化ケイ素からなる粉末が望ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機粒子の平均粒子径は、0.1μm〜50μmであることが望ましく、0.1μm〜1.0μmであることがより望ましい。
接着材層103及びコート層102に含まれる無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバが挙げられる。中でも、アルミナからなる無機繊維が望ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機繊維の平均繊維径は、1μm〜50μmの範囲であることが望ましく、5μm〜40μmの範囲であることがより望ましい。無機繊維の平均繊維長は、10μm〜200μmの範囲であることが望ましく、20μm〜100μmの範囲であることがより望ましい。
【0053】
以下に、上記のように構成された本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体100の製造方法について説明する。
図3は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造工程を説明するフローチャート図である。
図3に示すように、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体100の製造工程は、ハニカム成形体を形成する成形工程(ステップS1)、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を形成する焼成工程(ステップS2)、ハニカム焼成体を型枠内に配置して固定する固定工程(ステップS3)、型枠内にシール材ペーストを充填する充填工程(ステップS4)、及び、充填したシール材ペーストを乾燥固化させる乾燥工程(ステップS5)を備える。これらの工程により、切削加工等の後加工等を行うことなく、図1に示した円柱形状のハニカム構造体100を製造できる。
【0054】
以下に各工程の詳細について説明する。
まず、成形工程(S1)では、ハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体の形状は柱状であれば特に限定されるものではないが、本実施形態では、図1に示した円柱形状のハニカム構造体100を製造するために、図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)に示した3種類のハニカム焼成体111、112、113を作製することから、熱収縮等を考慮しつつ、これらのハニカム焼成体とほぼ同じ形状の3種類のハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体は、セラミック粉末及びバインダを含む原料組成物を用いて押出成形により作製する。
【0055】
原料組成物には、例えば、以下のように調製した湿潤混合物、すなわち、セラミック粉末として平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末を用い、バインダには有機バインダを用いて、炭化ケイ素粉末、有機バインダ、液状の可塑剤、潤滑剤、及び、水を混合した湿潤混合物が適用できる。
【0056】
セラミック粉末は特に限定されるものではないが、例えば、1.0μm〜50μmの平均粒子径を有する炭化ケイ素粉末100重量部と、0.1μm〜1.0μmの平均粒子径を有する炭化ケイ素粉末5重量部〜65重量部とを組み合わせたものが挙げられる。
【0057】
上記のように調製した原料組成物としての湿潤混合物は、押出成形機を用いて押出成形することで各種形状のハニカム成形体となる。押出成形されたハニカム成形体は、乾燥機を用いて乾燥する。
乾燥処理には、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、又は、凍結乾燥機等を用いることができる。
乾燥させたハニカム成形体は、切断装置を用いて所望の長さに切断する。
そして、セルのいずれか一方の端部に、所定量の封止材ペーストを充填してセルを目封じする。セルの目封じに際しては、例えば、ハニカム成形体の端面(切断した切断面)に目封じ用のマスクを当てて、目封じの必要なセルにのみ封止材ペーストを充填する方法を用いることができる。
目封じしたハニカム成形体は、脱脂炉中で加熱して脱脂する。脱脂条件は特に限定されるものではなく、ハニカム成形体に含まれる有機物の種類や量によって適宜選択する。例えば、約400℃の温度で、約2時間の脱脂処理が挙げられる。
【0058】
次いで、焼成工程(S2)では、成形工程(S1)で作製したハニカム成形体を焼成炉内で焼成して、3種類のハニカム焼成体111、112、113を作製する。
焼成条件は、特に限定されるものではないが、焼成温度は、2000℃〜2200℃の範囲であることが望ましい。
これにより、図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)に示したように、多数のセル111a、112a、113aがセル壁111b、112b、113bを隔てて長手方向に並設された各種形状の柱状のハニカム焼成体111、112、113が得られる。
なお、ハニカム焼成体111、112、113の気孔径等は、原料組成物に含まれるセラミック粉末の粒径を調節することで所望の値とすることができる。
【0059】
次いで、固定工程(S3)では、得られた3種類のハニカム焼成体111、112、113を円柱形状となるように組み上げて、型枠(筒状治具)内に配置して固定する。具体的には、筒状治具の底面と上面とに蓋をして、シール材ペーストを充填しても、型枠からシール材ペーストが漏れないようにする。また、筒状治具と底面又は上面の板材とからなる治具の上面又は底面に蓋をしてもよい。
図4は、本発明の第一実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
【0060】
図4において、型枠411は、空気透過性のない緻密質金属型枠である。
型枠411は、銅、ニッケル、ステンレス、又は、これらの金属の少なくとも一種を用いてなる合金等にて形成される。したがって、ハニカム焼成体を固定するために充分な強度を有する。
型枠411は、内部にハニカム焼成体110(111、112、113)を配置するための空間が形成された円筒形状である。
型枠411の内面には、離型性の向上等を目的としてフッ素樹脂等のコーティング処理が施されていることが望ましい。
【0061】
型枠411の内面411a側には、通気部を含む部材が設けられている。
通気部を含む部材は、上記のようにコート層の表面における無機繊維又は無機粒子等のマイグレーションを抑制するために設けるものである。したがって、通気部を含む部材は、コート層となるシール材ペーストと接触する全面に設けることが望ましい。型枠の内面側にこのような部材を有することで、後述する乾燥工程(S5)において、シール材ペースト中に含まれる無機繊維及び無機粒子のマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0062】
本実施形態において、部材は紙412(紙部材ともいう)で構成されている。紙412は、空気透過性を有するものであれば特に限定されるものではないが、JIS L 1096(A法)で測定した空気透過性(通気度)が0.05cc/cm2/sec以上であることが望ましく、0.05cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることがより望ましく、1cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることが更に望ましく、5cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることが特に望ましい。
また、紙412は、型枠411の内面側に配置することを考慮すると、作業性がよく、好適に使用できることから、厚みが0.06mm〜0.12mmであることが望ましく、0.08mm〜0.10mmであることがより望ましい。
また、紙412は、平均気孔径が0.1μm〜50μmであることが望ましく、0.1μm〜5μmであることがより望ましい。
【0063】
また、後述する乾燥工程(S5)後のハニカム構造体の離型性を考慮すると、紙部材の表面にはコーティング処理等が施されていることが望ましい。
コーティング処理等が施された紙としては、シリコン加工が施されたクラフト紙又はグラシン紙等が挙げられる。シリコン加工が施されたクラフト紙又はグラシン紙とは、クラフト紙又はグラシン紙の表面にシリコン樹脂材料をコーティング処理したもの、又は、クラフト紙又はグラシン紙にシリコン樹脂材料を含浸させたものである。本明細書においては、クラフト紙又はグラシン紙の表面に、シリコンを含む剥離層が形成された紙が好適に使用できる。コーティング処理等が施された紙は、剥離性が良いため、離型時におけるハニカム構造体の離型性の向上が図れる。
【0064】
シリコン加工が施された紙部材は、本体部とシリコンコート部とを有する。
本体部は、紙基材の存在する部分であり、シリコンコート部は、コーティングされたシリコン樹脂材料の存在する部分である。
コーティング処理の方法は、特に限定されず、例えば、エアーナイフ、ロールコーター、バーコーター、コンマコーター、ブレードコーター等の従来公知の方法を用いて行うことができる。
【0065】
本体部は、通気部を有しており、また、シリコンコート部も、通気部を有している。通気部とは、コート層を形成するシール材ペーストに含まれた水分(水蒸気)を含む空気が透過することができる部分(孔)をさす。
本体部の有する通気部は、本体部に存在する孔(気孔)であり、シリコンコート部の有する通気部は、シリコンコート部に存在する孔(気孔)である。
【0066】
本体部の有する通気部の平均気孔径は、0.1〜50μmであることが望ましく、1〜50μmであることがより望ましく、1〜30μmであることがさらに望ましい。本体部の有する通気部の平均気孔径が0.1μm未満であると、空気透過性を確保しにくくなる。
シリコンコート部(シリコン加工が施されている部分)の有する通気部は、20〜50μmの平均気孔径を有することが望ましく、30〜40μmの平均気孔径を有することがより望ましい。
気孔径は、気孔(通気部)内で直線を引いたときの最大の長さのことをいう。気孔は、紙を厚さ方向に沿って切断した断面を撮影したSEM写真を得ることによって、観察することができる。SEM写真中の気孔のうち、適切な大きさの気孔に対して上記最大の長さを測定することにより、平均気孔径が求められる。
【0067】
紙412は、型枠411に対して着脱自在に取り付けられている。紙412を型枠411の内面411a側に取り付ける方法としては、両面テープを用いて紙412を型枠411の内面411a側に貼る方法等が挙げられる。
上記のように、紙412を型枠411に対して着脱自在に取り付けた構成であると、型枠411の内面側に紙を容易に装着することができ、また、ハニカム構造体100を離型した後における紙の交換又は廃棄等を容易に行うことができる。したがって、例えば、シール材ペーストの付着等によって紙412が汚れた場合に、型枠411の洗浄を行うことなく、紙412を交換するだけで容易に次のハニカム構造体100の製造を行うことができる。
【0068】
なお、紙は、後述する乾燥工程(S5)を経てハニカム構造体を離型した後に、廃棄してもよいし、再利用してもよい。
【0069】
図4において、内面411a側に紙412が設けられた型枠411の内部には、複数のハニカム焼成体110(111、112、113)が円筒状になるようにスペーサ405を介して組み上げられている。
スペーサ405の厚さd1は、後工程で形成する接着材層103の厚さとほぼ同じ厚さであり、組み上げられたハニカム焼成体110の側面間の隙間210の間隔d2とほぼ同じである。
円筒状に組み上げられたハニカム焼成体110と紙412との間の隙間220の間隔d3は、後工程で形成するコート層102の厚みとほぼ同じである。
スペーサ405の材質は特に限定されるものではないが、ボール紙、繊維紙、不織布又は無機充填紙等からなるものが挙げられる。なお、ボール紙、繊維紙、不織布又は無機充填紙等は、ボール紙部材、繊維紙部材、不織布部材又は無機充填紙部材等ともいう。
【0070】
次いで、充填工程(S4)では、ハニカム焼成体110の側面間の隙間210及び紙412とハニカム焼成体110の側面との間の隙間220にシール材ペーストを充填する。シール材ペーストの充填方法は特に限定されるものではないが、本実施形態では、型枠411にシール材ペーストの供給装置を装着して行う例を挙げて説明する。
【0071】
図5(a)は、本発明の第一実施形態において、供給装置を装着した型枠の状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。図5(b)は、本発明の第一実施形態において、供給装置を装着した型枠の状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に平行な方向に沿う断面図である。
図5(a)及び図5(b)に示すように、型枠411には、シール材ペーストを充填するための供給装置500が装着されている。供給装置500は、シール材ペーストを収容するためのペースト室510と、シール材ペーストをペースト室510から型枠411内に押し出すための押出機構520とを備える。
型枠411には、供給装置500との接続部分にシール材ペーストの注入口401が形成されており、この注入口401を介してシール材ペーストの充填が行われる。また、型枠411には、ハニカム焼成体110の両端面側に複数の開口部470が形成されている。
【0072】
図6(a)は、本発明の第一実施形態において、型枠内にシール材ペーストを充填した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。図6(b)は、本発明の第一実施形態において、型枠内にシール材ペーストを充填した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に平行な方向に沿う断面図である。
図5(a)及び図5(b)に示した供給装置500のペースト室510にシール材ペーストが供給され、図6(a)及び図6(b)に示したように、シール材ペースト600が押出機構520により矢印B方向に加圧されると、注入口401を介してペースト室510から型枠411の内部へと供給される。これにより、型枠411の内面411a側に配置された紙412とハニカム焼成体110との隙間220及びハニカム焼成体110同士の隙間210にシール材ペースト600が充填される。
以下、紙412とハニカム焼成体110との隙間220に充填された、コート層となるシール材ペースト600をシール材ペースト600aとも称す。また、ハニカム焼成体110同士の隙間210の間に充填された、接着材層となるシール材ペースト600をシール材ペースト600bとも称す。
【0073】
本発明の第一実施形態において、シール材ペースト600には、上記した無機粒子及び無機繊維を含むものが用いられる。無機粒子及び無機繊維を含むシール材ペースト600は、シール材ペースト600中に多くの水分を含ませることによって粘度を低下させている。これにより、シール材ペースト600の流動性が高くなり、ハニカム焼成体110間の隙間210及びハニカム焼成体110と型枠411の内面411aとの隙間220にシール材ペースト600を良好に充填することができる。
【0074】
シール材ペースト600に含まれる水分としては、有機バインダに由来するもの等が挙げられる。有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、又は、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機バインダのなかでは、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
【0075】
続く乾燥工程(S5)では、シール材ペースト600が充填された状態の型枠411を加熱する。乾燥条件は、特に限定されるものではないが、例えば、100℃〜150℃の温度で、約1時間の加熱を行う。これにより、シール材ペースト600aは固化してコート層102となり、シール材ペースト600bは、固化して接着材層103となる。
ここで、シール材ペースト600aの加熱は、シール材ペースト600aが紙412に接触した状態で行われる。このような構成とすることで、シール材ペースト600に含まれる無機繊維等のマイグレーションが抑制されて、シール材ペースト600aが固化してなるコート層102は、表面側における無機粒子の存在割合と、セラミックブロック側における無機粒子の存在割合とが、略同一になり、且つ、表面側における無機繊維の存在割合と、セラミックブロック側における無機繊維の存在割合とが、略同一になる。この理由について、図7(a)及び図7(b)を用いて以下に説明する。
【0076】
図7(a)は、本発明の第一実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。図7(b)は、本発明の第一実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。図7(b)において、型枠411の内面411a側には、紙412が配置されている。
図7(a)において、矢印Pは、シール材ペースト600(600a、600b)に含まれる水分の移動方向を示し、矢印Sは、シール材ペースト600aに含まれる水分の移動方向を示す。
図7(b)において、矢印Q及び矢印Rは、シール材ペースト600aに含まれる水分の移動方向を示す。また、図7(b)において、シール材ペースト600aに含まれる水分710は模式的に黒色の丸で示しており、この黒色の丸が多い部分は水分量が多く、少ない部分は水分量が少ないことを示す。
【0077】
乾燥工程(S5)においてシール材ペースト600の加熱が行われると、シール材ペースト600に含まれる水分が水蒸気となる。
ハニカム焼成体110同士の隙間210の間に充填されたシール材ペースト600bに含まれる水分は、水蒸気となると、ハニカム焼成体110の側へと移動する。そして、水蒸気を含む空気は、多孔質体であるハニカム焼成体110を通って、図7(a)において矢印Pで示したように、ハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される。なお、ここでは図示されていないが、型枠411には、図6(b)に示したように、ハニカム焼成体110の端面側に、水蒸気を含む空気を外部に排出するための開口部470が形成されている。
一方、型枠411の内面411a側に配置された紙412とハニカム焼成体110との隙間220に充填されたシール材ペースト600aに含まれる水分については、図7(b)に示したように、水蒸気となった水分710が紙412の側及びハニカム焼成体110の側へと移動する。ハニカム焼成体110の側へ移動した水蒸気710aは、矢印Rで示すようにハニカム焼成体110を通って、図7(a)において矢印Pで示すように、ハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される。
紙412の側へ移動した水蒸気710bは、紙412に保持される、又は、図7(a)において矢印Sで示すように、水蒸気710bを含む空気とともに紙412の端面から外部へと放出される。
【0078】
ここで、シール材ペースト600a中には、水分710だけでなく、無機繊維720及び無機粒子730が含まれている。
上記のようにシール材ペースト600aに含まれる水分710が水蒸気710aとなって、矢印Rで示したようにハニカム焼成体110の側へ移動すると、それに伴って無機繊維720及び無機粒子730の一部はハニカム焼成体110の側へと移動する。
また、シール材ペースト600aに含まれる水分710が水蒸気710bとなって、矢印Qで示した紙412の側へ移動すると、それに伴って無機繊維720及び無機粒子730の一部も型枠411の側へと移動する。
このように本実施形態においては、シール材ペースト600a中の水分710がハニカム焼成体110の側だけでなく、紙412の側へも移動することで、シール材ペースト600a中に含まれる無機繊維720及び無機粒子730がハニカム焼成体110の側へ偏る、いわゆるマイグレーションを緩和できる。
また、シール材ペースト600a中に含まれる無機繊維720及び無機粒子730は、紙412の側においても偏りなく分散しやすくなることから、離型後に得られるコート層の全体にわたって均一な強度が得られるとともに、コート層の表面を平滑にすることができる。
【0079】
なお、シール材ペースト600a中に含まれる無機繊維720及び無機粒子730は、均一に分散していることが望ましいが、無機繊維720又は無機粒子730のいずれか一方のみのハニカム焼成体側への偏りを抑制することによっても、コート層における強度の均一化を図ることができ、また、コート層の表面平滑性を高めることができる。
【0080】
更に、紙部材に設けられた通気部の平均気孔径がシール材ペースト600a中に含まれる無機粒子の平均粒子径よりも小さいものであると、水蒸気710bを含んだ無機粒子の移動に伴って無機粒子がコート層の表面に飛び出すことを防止でき、より表面が平滑なコート層を得ることができる。
【0081】
なお、両面テープを用いて紙412を型枠411に固定する場合には、型枠411の内面側に紙412を固定するための両面テープの粘着層が存在することがあるが、この粘着層は、上記のように100℃〜150℃の温度で加熱されることで溶融して、揮発するため、紙の空気透過性を損なうことはない。しかしながら、紙412の空気透過性を考慮すると、紙412を型枠411に固定するための両面テープは、できるだけ少ない範囲に設けることが望ましい。
【0082】
上記乾燥工程が終了すると、ハニカム構造体100を離型し、紙412を剥離する。これにより、コート層102の表面側において無機繊維720及び無機粒子730が均一に分散されたハニカム構造体100が得られる。このハニカム構造体100は、コート層102の強度が全体にわたって均一で、しかもコート層102の表面に粉ふき等のない表面強度に優れたものとなる。
また、ハニカム構造体100は、接着材層103とコート層102とが、両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成されているため、再生処理のような熱サイクルを長期間に渡って繰り返した場合であっても、接着材層103とコート層102との間での破壊(剥離又はクラック等)を防止することができる。
上記特徴を有することから、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体100は、排気ガス浄化用フィルタとして好適に使用できる。
【0083】
なお、上記説明では、乾燥工程(S5)において、シール材ペーストの乾燥処理のみを行ったが、乾燥工程の後に、乾燥処理よりも高温での脱脂処理及び焼成処理等を更に行ってもよい。
【0084】
以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体の作用効果について列挙する。
(1)本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、外周部にセル壁が形成されたハニカム成形体を押出成形する成形工程と、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を形成する焼成工程と、型枠内に複数のハニカム焼成体を固定する固定工程と、型枠とハニカム焼成体との隙間及びハニカム焼成体間の隙間にシール材ペーストを充填する充填工程と、シール材ペーストを乾燥固化させて接着材層及びコート層を形成する乾燥工程とを備え、型枠、型枠の内面、又は、型枠の内面側に配置された部材には、空気透過性を有する通気部が設けられており、乾燥工程では、シール材ペーストを通気部に接触させて上記シール材ペーストの乾燥固化を行う。
【0085】
このようなハニカム構造体の製造方法であると、乾燥工程において、シール材ペーストに含まれる水分は、水蒸気となってハニカム焼成体に形成された気孔を通って外部へ排出されるだけでなく、型枠の内面側に設けられた部材の側へと移動する。このようにシール材ペーストに含まれる水分は、型枠の内面側に設けられた部材の側及びハニカム焼成体の側へ向かって移動することから、シール材ペーストに含まれる無機繊維及び無機粒子のマイグレーションの発生を抑制できる。これにより、コート層全体の強度が均一で、しかもコート層の表面強度にも優れたハニカム構造体を容易に製造することができる。
【0086】
(2)また、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、型枠自体には空気透過性はないが、型枠の内面側に配置された部材が紙部材からなるため、この紙部材によって空気透過性を付与できる。
【0087】
(3)また、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における固定工程では、ハニカム焼成体同士を一定の間隔で保持する間隔保持部材を更に用いて複数のハニカム焼成体を固定する。
【0088】
このような固定を行うと、位置決めしたハニカム焼成体の間の空間に充填工程において接着材ペーストを注入するため、接着材ペーストの厚みは、ハニカム焼成体の間の空間の幅と略同一になる。そのため、接着材ペーストの厚みばらつきを小さくすることができ、寸法精度の高いハニカム構造体を製造することができる。
また、接着材ペーストの充填工程前にハニカム焼成体を所定の位置に位置決めしているため、一つのハニカム焼成体の位置がずれた場合であっても他のハニカム焼成体の位置はそのずれの影響を受けることがない。そのため、ハニカム構造体全体としても寸法精度の高いハニカム構造体を製造することができる。
【0089】
(4)また、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にコート層が設けられたハニカム構造体であって、接着材層及びコート層は、無機繊維及び無機粒子を含み、接着材層とコート層とは、両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成されており、無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とは、それぞれ、コート層の表面側とコート層のセラミックブロック側とで、略同一である。
【0090】
このような構成を有するハニカム構造体は、コート層に含まれる無機繊維及び無機粒子が、表面側とセラミックブロック側においてほぼ均一に分散しているため、コート層の全体にわたって均一な強度が得られる。また、コート層の表面には、無機繊維及び無機粒子の分散ムラによる凹凸が生じていないため、表面強度が高く、粉っぽさのないハニカム構造体となる。
なお、コート層に含まれる無機繊維及び無機粒子の両方についてハニカム焼成体側への偏りが抑制されている例に限らず、コート層に無機繊維又は無機粒子のいずれか一方のみが含まれる場合においても、無機繊維又は無機粒子のハニカム焼成体側への偏りを抑制することによって、上記したコート層における強度の均一化及び表面平滑性の向上を図ることができる。
【0091】
以下に、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。実施例1及び比較例1では、図1に示した円柱形状のハニカム構造体を製造し、得られたハニカム構造体について、以下の手順によりマイグレーションの有無、コート層の表面における粉ふきの有無を評価した。
コート層におけるマイグレーションの有無は、作製したハニカム構造体を長手方向に垂直な方向に切断したサンプルを作製し、コート層の表面側及びハニカム焼成体側の状態を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することにより確認した。
また、コート層の表面における粉ふきの有無は、コート層の表面を目視にて観察するとともに、コート層の表面を指で触れて、粉の付着の有無を目視にて観察した。
【0092】
(実施例1)
(ハニカム成形体の作製)
平均粒子径が22μmである炭化ケイ素の粗粉末52.8重量%と、平均粒子径が0.5μmである炭化ケイ素の微粉末22.6重量%とを混合した。得られた混合物に対して、アクリル樹脂2.1重量%、有機バインダ(メチルセルロース)4.6重量%、潤滑剤(日油社製 ユニルーブ)2.8重量%、グリセリン1.3重量%、及び、水13.8重量%を加えて混練して混合組成物を得た。この混合組成物を用いて押出成形を行い、図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)に示したハニカム焼成体111、112、113と同じ形状であって、セルの目封じをしていない、生のハニカム成形体をそれぞれ作製した。
【0093】
(ハニカム焼成体の作製)
マイクロ波乾燥機を用いて生のハニカム成形体を乾燥させ、ハニカム成形体の乾燥体とした。このハニカム成形体の乾燥体に、上記混合組成物と同様の組成のペーストを所定のセルに目封じをした。そして、再びマイクロ波乾燥機を用いて乾燥処理を行った。
【0094】
乾燥したハニカム成形体を400℃で脱脂し、常圧のアルゴン雰囲気下で、2200℃、3時間の条件で焼成処理を行うことにより、図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)に示す形状のハニカム焼成体を作製した。得られたハニカム焼成体は、気孔率が45%、平均気孔径が15μm、セルの数(セル密度)が300個/inch2、セル壁の厚さが0.25mm(10mil)であり、炭化ケイ素焼結体からなるハニカム焼成体であった。
【0095】
(ハニカム焼成体の組み上げと固定)
実施例1では、型枠として、図4に示す形状であって、ステンレスの緻密体からなる型枠を用いた。型枠の内面側には、紙部材が配置された。紙部材は、両面テープにて型枠の内面に取り付けた。
ステンレスの緻密体からなる型枠は、外径158mm×内径142.8mm×厚さ7.6mmである。紙部材としては、シリコン加工が施されたグラシン紙を用いた。この紙部材は、グラシン紙の表面に、シリコンを含む剥離層が形成された紙であり、6.0cc/cm2/secの空気透過性を有し、厚みが0.075mmである。
【0096】
そして、型枠の内部に、図4に示したように、16個のハニカム焼成体をスペーサを介して円柱形状に組み上げた。組み上げた16個のハニカム焼成体は、長手方向に平行で、かつ、両端面が同じ平面を構成するように整列させた。組み上げたハニカム焼成体と型枠の内面との間隔は、1.0mmであり、組み上げたハニカム焼成体と紙部材との間隔(図4中のd3)は、0.925mmであった。
【0097】
(シール材ペーストの充填)
図5(a)及び図5(b)に示すシール材ペーストの供給装置を型枠に装着して、充填装置のペースト室にシール材ペーストを投入した。そして、図6(a)及び図6(b)に示したように、型枠とハニカム焼成体との隙間及びハニカム焼成体間の隙間にシール材ペーストを充填した。
シール材ペーストには、平均繊維長が20μmのアルミナ繊維30重量%、平均粒子径0.6μmの炭化ケイ素粒子21重量%、シリカゾル(固形分30重量%)15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び、水28.4重量%を含む耐熱性のシール材ペーストを用いた。
【0098】
(シール材ペーストの乾燥)
次いで、シール材ペーストが充填された型枠を120℃で加熱処理して、シール材ペーストを乾燥した。シール材ペーストが固化した後、型枠を分離した。これにより、円柱形状のハニカム構造体(図1参照)が得られた。
【0099】
得られたハニカム構造体について、コート層の表面を目視にて観察し、また、指で触れて確認したところ、コート層の表面における粉ふきは観察されなかった。更に、コート層をSEMにより観察したところ、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機粒子の存在割合とが、略同一であり、且つ、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機繊維の存在割合とが、略同一であり、コート層内のマイグレーションの発生は見られなかった。
【0100】
(比較例1)
比較例1では、型枠の内面側に紙部材を配置しなかった。全体がステンレスの緻密体からなる型枠を用いた。ただし、離型性が良くなるように、型枠の内面にフッ素樹脂加工が施されているものを用いた。そしてそれ以外は、上記実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。
得られたハニカム構造体のコート層を観察したところ、コート層の表面側における無機粒子の存在割合は、コート層のセラミックブロック側における無機粒子の存在割合よりも少なく、また、コート層の表面側における無機繊維の存在割合は、コート層のセラミックブロック側における無機繊維の存在割合よりも少なく、マイグレーションが生じていた。また、コート層の表面には粉ふきが生じていた。この理由について、図8(a)及び図8(b)を用いて以下に説明する。なお、図7(a)及び図7(b)と同一の構成をなすものについては、同一の符号を付けて説明を省略する。
【0101】
図8(a)は、比較例1の乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。図8(b)は、比較例1の乾燥工程(S5)において型枠の内面と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。図8(b)において、矢印R1及び矢印R2は、シール材ペースト600aに含まれる水分の移動方向を示す。
【0102】
本比較例1では、全体がステンレスの緻密体にて形成された型枠800を用いており、型枠800の内面側に紙部材が配置されていないので、型枠800の全体及び型枠800の内面側が空気透過性のない構成となっている。
乾燥工程(S5)において、ハニカム焼成体110同士の隙間210の間に充填されたシール材ペースト600bに含まれる水分は、上記本発明の第一実施形態と同様にハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される(矢印P方向)。
しかしながら、型枠800の内面とハニカム焼成体110との隙間に充填されたシール材ペースト600aに含まれる水分は、以下のように移動する。図8(b)に示したように、ハニカム焼成体110の側へと移動した水蒸気710aは、矢印R1で示すようにハニカム焼成体110を通って外部へ放出される。一方で、型枠800の側へ移動しようとした水蒸気710bは、矢印R2で示すように、型枠800を通過できないため、ハニカム焼成体110の側へと移動する。したがって、シール材ペースト600aに含まれる水分は、全体がハニカム焼成体110の側へと移動する。そして、これに伴って無機繊維720及び無機粒子730がハニカム焼成体110の側へと移動し、シール材ペースト600a中における無機繊維720及び無機粒子730に偏りが生じるため、得られたコート層内にマイグレーションが発生する。
【0103】
以上の結果から、シール材ペーストの乾燥時において、シール材ペーストと当接する型枠の内面側に通気部を含む部材を設けることで、シール材ペースト中の水分をハニカム焼成体の側だけでなく通気部からも外部へ放出することができ、これにより、マイグレーションの発生を抑え、表面強度にも優れたハニカム構造体を得られることが明らかとなった。
【0104】
(第二実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第二実施形態について説明する。
本実施形態では、上記本発明の第一実施形態において通気部を含む部材を構成する紙に代えて、通気部を含む部材として不織布を配置した例を挙げて説明する。
なお、本実施形態で製造するハニカム構造体は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。また、上記本発明の第一実施形態と同一の構成をなすものについては同一の符号を付けて説明を省略する。
【0105】
図9(a)は、本発明の第二実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
図9(a)において、上記第一実施形態と同様の構成を有する型枠411の内面側には、通気部を含む部材としての不織布413が配置されている。不織布413は、型枠411の内面側に両面テープで固定されている。
【0106】
不織布413は、寸法安定性に優れ、吸水(吸湿)しても伸び縮みしにくく、しわになりにくい部材である。したがって、得られたコート層の表面には、凹凸が生じにくい。また、不織布413は、大きな気孔径と高い気孔率とを兼ね備えた部材であり、また、閉塞した気孔が少なく連通する開気孔を有するため、高い空気透過性(通気度)が得られることから、本発明に係る通気部を含む部材として好適である。
不織布413の空気透過性は、0.05cc/cm2/sec以上であることが望ましく、0.05cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることがより望ましく、1cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることが更に望ましく、5cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることが特に望ましい。
不織布413の平均気孔径は、0.1μm〜50μmであることが望ましく、0.1μm〜5μmであることがより望ましい。平均気孔径は、気孔が円形の場合は直径を意味し、円形以外の場合は気孔の最大径を意味する。
【0107】
不織布413を構成する繊維材料としては、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、アラミド、ビニロン、又は、レーヨン等が挙げられる。
本実施形態においては、ポリエステル繊維からなるポリエステル繊維不織布が通気部を含む部材として好適に使用できる。
【0108】
図9(b)は、本発明の第二実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
図9(b)において、加熱によりシール材ペースト600a中の水分710が水蒸気となると、その一部の水蒸気710aは、矢印Rで示すように、ハニカム焼成体110の側へと移動して、ハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される。また、一部の水蒸気710bは、矢印Qで示すように、不織布413の側へ移動し、不織布413に保持される、又は、水蒸気を含む空気とともに不織布413の端面から外部へと放出される。
したがって、本発明の第二実施形態においても、シール材ペースト600aに含まれる水分710の移動方向が偏ることがないため、上記本発明の第一実施形態と同様にシール材ペーストの乾燥処理時におけるマイグレーションの発生を抑制できる。
【0109】
本実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)〜(4)を発揮することができる。
【0110】
以下に、本発明の第二実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例2)
本実施例2では、図9(a)に示した型枠において、通気部を含む部材を構成する不織布として、6.0cc/cm2/secの空気透過性を有し、厚さ0.09mm、平均気孔径14.2μm、平均繊維径28μmであるポリエステル繊維100%の湿式不織布(阿波製紙社製、品番PY120−03)を配置した。
組み上げたハニカム焼成体と型枠の内面との間隔は、1.0mmであり、組み上げたハニカム焼成体と不織布との間隔(図9(a)中のd3で示す長さに対応)は、0.91mmであった。
そして、それ以外は実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。
【0111】
得られたハニカム構造体について、コート層の表面を目視にて観察し、また、指で触れて確認したところ、コート層の表面における粉ふきは、観察されなかった。また、コート層をSEMにより観察したところ、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機粒子の存在割合とが、略同一であり、且つ、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機繊維の存在割合とが、略同一であり、コート層内のマイグレーションの発生は見られなかった。
【0112】
(第三実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第三実施形態について説明する。
本実施形態では、空気透過性を有する多孔質金属にて形成された型枠の内面側に、更に通気部を含む部材としての紙を配置した例を挙げて説明する。すなわち、本実施形態では、型枠全体及びその内面側に配置された紙部材の両方が空気透過性を有する。また、型枠の内面側に配置された紙部材は、コート層に含まれる無機粒子及び無機繊維の移動を抑制して、コート層の表面平滑性を高める役割も果たす。
なお、型枠の全体が通気部を含むとは、組み上げたハニカム構造体を保持する型枠の本体部分が空気透過性を有するということであり、例えば、シール材ペーストの供給装置との接続部分等のように、本実施形態の効果を妨げない限りにおいて、空気透過性のない部分があってもよい。
本実施形態で製造するハニカム構造体は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。また、上記各実施形態と同一の構成をなすものについては同一の符号を付けて説明を省略する。
【0113】
図10(a)は、本発明の第三実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
図10(a)において型枠421は、全体が多孔質金属にて形成された多孔質金属型枠である。
多孔質金属としては、例えば発泡金属又は金属不織布等が挙げられる。ここでは、発泡金属にて形成された型枠を例に挙げて説明する。なお、金属不織布は、複数枚を積層して、スポット溶接することで型枠形状とすることができるとともに、型枠としての強度を有することができる。
多孔質金属の孔径は、50μm〜600μmであることが望ましく、300μm〜600μmであることがより望ましい。多孔質金属は、このような微細な孔(連続した孔)を有し、その気孔率は、80%〜97%が望ましく、94%〜97%であることがより望ましい。
多孔質金属の具体的な材質としては、銅、ニッケル、ステンレス、又は、これらの金属の少なくとも一種を用いてなる合金が挙げられる。
型枠421は、上記のように微細な孔を有するため、型枠421の内面421a側を含めて型枠421の全体が空気透過性を有する。また、このような構成を有する型枠421は、多孔質金属にて形成されているため、ハニカム焼成体を固定するために充分な強度を有する。したがって、本発明の第三実施形態に係る型枠421は、空気透過性と強度とを兼ね備えたものとなる。
【0114】
型枠421の内面側には、紙412が配置されている。紙412は、上記した本発明の第一実施形態と同様のものが適用でき、例えば、両面テープにて、型枠421の内面421aに貼り付けられる。
【0115】
図10(b)は、本発明の第三実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。図11(a)は、本発明の第三実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
【0116】
図10(b)、図11(a)に示すように、加熱によりシール材ペースト600a中の水分710が水蒸気となると、その一部の水蒸気710aは、矢印Rで示すように、ハニカム焼成体110の側へと移動して、矢印Pで示すように、ハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される。また、一部の水蒸気710bは、紙412及び型枠421を通って、矢印Qで示すように外部へ放出される。また、紙412の側へ移動した一部の水蒸気710bは、矢印Sで示すように紙412の端面から外部へ放出される。
したがって、本発明の第三実施形態に係る型枠421を用いても、シール材ペースト600aに含まれる水分710の移動方向が偏ることがないため、上記本発明の第一実施形態と同様にシール材ペーストの乾燥処理時におけるマイグレーションの発生を抑制できる。
【0117】
本発明の第三実施形態においては、多孔質金属にて形成された型枠421がハニカム焼成体を固定するための型枠としての強度を有する一方で、空気透過性を有する通気部を含む。したがって、型枠421のみであっても、上記した本発明の第一実施形態及び第二実施形態と同様にコート層におけるマイグレーションの発生を抑制できる。
しかしながら、多孔質金属の孔径は、通常は、コート層に含まれる無機粒子の平均粒子径及び無機繊維の平均繊維径よりもかなり大きくなる。したがって、上記したシール材ペーストの乾燥時に、コート層に含まれる水分の移動によって無機粒子及び無機繊維がコート層の表面側に移動した際に、コート層の表面に若干の凹凸が生じる。
ここで、本実施形態では、多孔質金属からなる型枠の内面側に、多孔質金属の孔径よりも比較的小さな平均気孔径を有する通気部を含む紙部材を配置している。これにより、シール材ペーストの乾燥時において、紙412は、その気孔径よりも小さい空気(水蒸気)は透過させて型枠の側へと移動させるが、無機粒子及び無機繊維は透過させにくくしてその移動を抑制することができる。
したがって、本実施形態においては、無機粒子及び/又は無機繊維による表面凹凸が解消され、表面平滑性に優れたコート層を実現できる。
更に、紙412は、剥離性も良いものであるため、離型した際に、容易にハニカム構造体から剥離することができ、ハニカム構造体の離型性を高めることもできる。
【0118】
本実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)、(3)、及び(4)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
【0119】
(5)本発明の第三実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、多孔質金属からなる型枠と、型枠の内面側に配置された紙部材とが、ともに通気部を有するため、多孔質金属型枠及び紙部材によって空気透過性を付与できる。
【0120】
以下に、本発明の第三実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例3)
本実施例3では、型枠として、図10(a)に示す形状であって、全体が多孔質金属製の型枠を用いた。多孔質金属は、ステンレス製の発泡金属(三菱マテリアル社製、標準気孔率95%〜97%)である。型枠は、外形158mm×内径142.8mm×厚さ7.6mmであり、6.0cc/cm2/secの空気透過性を有するものである。
型枠の内面側に配置される紙部材は、実施例1と同様のものを用いた。
組み上げたハニカム焼成体と型枠の内面との間隔は、1.0mmであり、組み上げたハニカム焼成体と紙との間隔(図10(a)中のd3で示す長さに対応)は、0.925mmであった。
そして、それ以外の条件については実施例1と同様にして、図1に示した形状のハニカム構造体を作製した。
【0121】
得られたハニカム構造体について、コート層の表面を目視にて観察し、また、指で触れて確認したところ、コート層の表面における粉ふきは、観察されなかった。また、コート層をSEMにより観察したところ、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機粒子の存在割合とが、略同一であり、且つ、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機繊維の存在割合とが、略同一であり、コート層内のマイグレーションの発生は見られなかった。
【0122】
(第四実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第四実施形態について説明する。
本実施形態は、上記本発明の第三実施形態における紙部材を不織布部材に変更した構成である。それ以外の構成については、上記本発明の第三実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。また、上記各実施形態と同一の構成をなすものについては同一の符号を付けて説明を省略する。
不織布部材は、上記した本発明の第二実施形態と同様である。不織布部材は、両面テープにて、型枠の内面側に貼り付けられている。
【0123】
本発明の第四実施形態においては、多孔質金属にて形成された型枠がハニカム焼成体を固定するための型枠としての強度を有する一方で、空気透過性を有する通気部を含む。すなわち、本実施形態では、型枠と不織布部材とがともに通気部を含む。
また、型枠の内面側に配置された不織布部材は、通気部を含むとともに、離型性を向上させるという効果を奏する。更に、不織布部材に含まれる通気部は、多孔質金属の孔径よりも比較的小さな平均気孔径を有する。これにより、シール材ペーストの乾燥時において、不織布部材は、その気孔径よりも小さい空気(水蒸気)は透過させて型枠の側へと移動させるが、無機粒子及び無機繊維は透過させにくくしてその移動を抑制することができる。
したがって、本実施形態においては、無機粒子及び/又は無機繊維による表面凹凸が解消され、表面平滑性に優れたコート層を実現できる。
更に、不織布部材は、剥離性も良いものであるため、離型した際に、容易にハニカム構造体から剥離することができ、ハニカム構造体の離型性を高めることもできる。
【0124】
図11(b)は、本発明の第四実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
図11(b)において、加熱によりシール材ペースト600a中の水分710が水蒸気となると、その一部の水蒸気710aは、矢印Rで示すように、ハニカム焼成体110の側へと移動して、ハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される。また、一部の水蒸気710bは、不織布432及び型枠421を通って、矢印Q方向へと移動して外部へと放出される。また、不織布432の側へ移動した一部の水蒸気710bは、上記本発明の第三実施形態に係る紙部材の端面から放出される水蒸気と同様に、不織布432の端面から外部へ放出される。
したがって、本発明の第四実施形態においても、シール材ペースト600aに含まれる水分710の移動方向が偏ることがないため、上記本発明の第三実施形態と同様にシール材ペーストの乾燥処理時におけるマイグレーションの発生を抑制できる。
【0125】
本実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)、(3)、及び(4)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
【0126】
(6)本発明の第四実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、多孔質金属からなる型枠と、型枠の内面側に配置された不織布部材とが、ともに通気部を有するため、多孔質金属型枠及び不織布部材によって空気透過性を付与できる。
【0127】
以下に、本発明の第四実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例4)
本実施例4では、型枠として、実施例3と同様の多孔質金属型枠を用いた。
型枠の内面側に配置される不織布部材は、実施例2と同様のものを用いた。
組み上げたハニカム焼成体と型枠の内面との間隔は、1.0mmであり、組み上げたハニカム焼成体と不織布部材との間隔(図10(a)中のd3で示す長さに対応)は、0.91mmであった。
そして、それ以外は実施例1と同様にして図1に示した形状のハニカム構造体を作製した。
【0128】
得られたハニカム構造体について、コート層の表面を目視にて観察し、また、指で触れて確認したところ、コート層の表面における粉ふきは、観察されなかった。また、コート層をSEMにより観察したところ、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機粒子の存在割合とが、略同一であり、且つ、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機繊維の存在割合とが、略同一であり、コート層内のマイグレーションの発生は見られなかった。
【0129】
(第五実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第五実施形態について説明する。
本実施形態では、上記本発明の第三実施形態において紙部材をメッシュ部材に変更した構成である。それ以外の構成については、上記本発明の第三実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。また、上記各実施形態と同一の構成をなすものについては同一の符号を付けて説明を省略する。
【0130】
通気部を含む部材としてのメッシュ部材としては、金属メッシュ部材又は樹脂メッシュ部材等が挙げられる。
金属メッシュ部材としては、ステンレス、ニッケル、チタン、銅、亜鉛等のメッシュを含む部材が挙げられる。これらの中でも、サビにくく、入手しやすいことから、ステンレスメッシュ部材が望ましい。
樹脂メッシュ部材としては、PA(ポリアミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、フッ素系樹脂等のメッシュを含む部材が挙げられる。本実施形態においては、コート層の乾燥温度よりも高い耐熱性を備えた樹脂メッシュ部材を用いることが望ましい。
【0131】
メッシュ部材の空気透過性は、0.05cc/cm2/sec以上であることが望ましく、0.05cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることがより望ましく、1cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることが更に望ましく、5cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることが特に望ましい。
メッシュ部材としては、目開きが小さいものが望ましく、例えば、325メッシュ〜795メッシュのものが使用できる。一例として、ステンレスメッシュ部材の場合には、綾織又は平織のいずれであっても良く、線径0.015mm〜0.035mm、目開き0.016mm〜0.062mm、開口率24.9%〜60.0%のものが好適に使用できる。
なお、本明細書においてメッシュ部材には、パンチングメタル部材も含まれることとする。
パンチングメタル部材は、金属板に一定の配列で多数の孔を開けた部材であり、上記した空気透過性を有するものであれば、孔の形状、ピッチ、開口径等は特に限定されるものではない。
【0132】
以下、メッシュ部材としてステンレスメッシュ部材を用いる場合を例に挙げて説明する。
ステンレスメッシュ部材は、型枠の内面側に配置した際に型枠の内面と接するように、その厚みを考慮して型枠の内径よりもやや小さい内径の略円筒形状に形成されている。このような形状のステンレスメッシュ部材は、自立性を有するため、型枠の内面に配置するだけで通気部を構成することができる。
【0133】
本発明の第五実施形態においては、多孔質金属にて形成された型枠がハニカム焼成体を固定するための型枠としての強度を有する一方で、空気透過性を有する通気部を含む。すなわち、本実施形態では、型枠とステンレスメッシュ部材とがともに通気部を含む。
また、型枠の内面側に配置されたステンレスメッシュ部材は、通気部を含むとともに、離型性を向上させるという効果を奏する。更に、ステンレスメッシュ部材の目開きが多孔質金属の孔径よりも比較的小さいものであると、シール材ペーストの乾燥時において、空気(水蒸気)は透過させて型枠の側へと移動させるが、無機粒子及び無機繊維は透過させにくくしてその移動を抑制することができる。
したがって、本実施形態においては、無機粒子及び/又は無機繊維による表面凹凸が解消され、表面平滑性に優れたコート層を実現できる。
【0134】
図11(c)は、本発明の第五実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
図11(c)において、加熱によりシール材ペースト600a中の水分710が水蒸気となると、その一部の水蒸気710aは、矢印Rで示すように、ハニカム焼成体110の側へと移動して、ハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される。また、一部の水蒸気710bは、ステンレスメッシュ442及び型枠421を通って、矢印Q方向へと移動して外部へと放出される。
したがって、本発明の第五実施形態に係る型枠421とステンレスメッシュ442を用いても、シール材ペースト600aに含まれる水分710の移動方向が偏ることがないため、上記本発明の第一実施形態と同様にシール材ペーストの乾燥処理時におけるマイグレーションの発生を抑制できる。
【0135】
本実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)、(3)、及び(4)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
【0136】
(7)本発明の第五実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、多孔質金属からなる型枠と、型枠の内面側に配置されたメッシュ部材とが、ともに通気部を有するため、多孔質金属型枠及びメッシュ部材によって空気透過性を付与できる。
【0137】
以下に、本発明の第五実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例5)
本実施例では、型枠として、実施例3と同様の多孔質金属型枠を用いた。
型枠の内面側には、ステンレスメッシュ部材を配置した。ステンレスメッシュ部材は、795メッシュ、線径0.016mm、目開き0.016mm、開口率24.9%、空気透過性0.05cc/cm2/sec以上である。
組み上げたハニカム焼成体と型枠の内面との間隔は、1.0mmであり、組み上げたハニカム焼成体とステンレスメッシュ部材との間隔(図9(a)中のd3で示す長さに対応)は、0.984mmであった。
そして、それ以外は実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。
【0138】
得られたハニカム構造体について、コート層の表面を目視にて観察し、また、指で触れて確認したところ、コート層の表面における粉ふきは、観察されなかった。また、コート層をSEMにより観察したところ、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機粒子の存在割合とが、略同一であり、且つ、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機繊維の存在割合とが、略同一であり、コート層内のマイグレーションの発生は見られなかった。
【0139】
(第六実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第六実施形態について説明する。
上記本発明の第三〜第五実施形態では、多孔質金属からなる型枠と、その内面側に配置された紙部材、不織布部材、又は、ステンレスメッシュ部材とが、通気部を有していたが、本実施形態では、多孔質金属からなる型枠のみが通気部を有する例を挙げて説明する。それ以外の構成については、上記本発明の第三〜第五実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。また、上記各実施形態と同一の構成をなすものについては同一の符号を付けて説明を省略する。
【0140】
図12は、本発明の第六実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
図12において型枠421は、全体が多孔質金属にて形成された多孔質金属型枠である。
【0141】
本発明の第六実施形態においては、多孔質金属にて形成された型枠421がハニカム焼成体を固定するための型枠としての強度を有する一方で、空気透過性を有する通気部を含む。
【0142】
図13(a)は、本発明の第六実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。図13(b)は、本発明の第六実施形態において、型枠の内面と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
図13(a)、図13(b)に示すように、加熱によりシール材ペースト600a中の水分710が水蒸気となると、その一部の水蒸気710aは、矢印Rで示すように、ハニカム焼成体110の側へと移動して、ハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される。また、一部の水蒸気710bは、型枠421を通って矢印Q方向へと移動して外部へと放出される。
したがって、本発明の第六実施形態においても、シール材ペースト600aに含まれる水分710の移動方向が偏ることがないため、上記本発明の第一実施形態と同様にシール材ペーストの乾燥処理時におけるマイグレーションの発生を抑制できる。
【0143】
本実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)、(3)、及び(4)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
【0144】
(8)本発明の第六実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、多孔質金属型枠によって空気透過性を付与できる。
【0145】
以下に、本発明の第六実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例6)
本実施例6では、型枠として、内径が異なる以外は実施例3と同様の構成を有する発泡金属製の型枠を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして図1に示した形状のハニカム構造体を作製した。組み上げたハニカム焼成体と型枠の間隔(図12中のd3に対応)は、0.925mmであった。
【0146】
得られたハニカム構造体について、コート層の表面を目視にて観察し、また、指で触れて確認したところ、コート層の表面における粉ふきは、観察されなかった。また、コート層をSEMにより観察したところ、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機粒子の存在割合とが、略同一であり、且つ、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機繊維の存在割合とが、略同一であり、コート層内のマイグレーションの発生は見られなかった。
【0147】
(第七実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第七実施形態について説明する。
本実施形態では、固定工程(S3)において、ハニカム焼成体の両端面を保持することによりハニカム焼成体を固定する。
本実施形態で製造するハニカム構造体は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。また、上記本発明の第一実施形態と同一の構成をなすものについては同一の符号を付けて説明を省略する。
【0148】
上記本発明の第一実施形態では、ハニカム焼成体110を円柱形状に組み上げるに際し、図4に示したようにスペーサ405を用いてハニカム焼成体110を固定したが、本実施形態では、ハニカム焼成体110の両端面を固定ピンを用いて固定する。
【0149】
図14(a)、図14(b)、図14(c)、図14(d)、及び、図14(e)は、本発明の第七実施形態に係るハニカム焼成体の固定工程を説明する工程図であり、型枠内におけるハニカム焼成体の配置について、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う状態を模式的に示した断面図である。型枠は、上記本発明の第一実施形態に係る型枠411であって、その内面側に紙412が配置されている。
【0150】
図14(a)において、内面411a側に紙412が配置された型枠411の内側に、2個のハニカム焼成体111と2個のハニカム焼成体112とを、ハニカム焼成体112がハニカム焼成体111で挟まれるように配置する。ハニカム焼成体111とハニカム焼成体112との間、ハニカム焼成体111、112と型枠411の内面411aとの間は、後工程においてシール材ペーストを充填できるように、一定の間隔を空けておく。
ハニカム焼成体111、112の搬送及び配置は、例えば、ロボットアーム、又は、一度に4個のハニカム焼成体110を載置できる載置面を備えた搬送部材等を用いて行われる。
【0151】
次いで、図14(b)に示したように、型枠411内に配置されたハニカム焼成体111、112の両端面を保持部材としての固定ピン700で固定する。固定ピン700は、ハニカム焼成体111、112の端面が同一平面上に揃うように、ハニカム焼成体111、112を保持する。
【0152】
次いで、図14(c)に示したように、型枠411の内面側に、2個のハニカム焼成体112と2個のハニカム焼成体113とを、ハニカム焼成体113がハニカム焼成体112で挟まれるように配置する。そして、上記と同様に、各ハニカム焼成体112、113の両端面を固定ピン700で固定する。
【0153】
次いで、図14(d)に示したように、2個のハニカム焼成体112と2個のハニカム焼成体113を、上記と同様に配置して固定ピン700で固定する。更に、図14(e)に示したように、2個のハニカム焼成体111と2個のハニカム焼成体112を、上記と同様に配置して固定ピン700で固定する。
【0154】
このようにして、ハニカム構造体を構成する16個のハニカム焼成体111、112、113を、長さ方向に平行で、かつ、両端面が同じ平面を構成するように配置することができる。
【0155】
上記説明では、複数のハニカム焼成体110を所定の位置に位置決めし、その両端面を保持部材としての固定ピン700で挟んで保持する方法等について説明したが、組み上げられたハニカム焼成体111の保持の方法は、保持部材で挟んで保持する方法に限定されるものではなく、ハニカム焼成体110の両端面を保持部材で引っ掛けて保持する方法も適用できる。
また、上記説明では、型枠及び通気部を含む部材として、本発明の第一実施形態に係る型枠及び通気部を含む部材を例に挙げて説明したが、他の実施形態に係る型枠及び/又は通気部を含む部材についても本実施形態は適用できる。
【0156】
本発明の第七実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)〜(4)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
(9)本発明の第七実施形態に係るハニカム構造体の製造方法においては、固定工程において、ハニカム焼成体の両端面を保持することによりハニカム焼成体を固定するため、ハニカム焼成体を所定の形状に容易に保持できる。
【0157】
なお、上記した本発明の第七実施形態においては、それぞれのハニカム焼成体を保持することが可能なように構成された保持部材を使用していたが、保持部材は、複数のハニカム焼成体の端面に当接して、上記複数のハニカム焼成体を一括して保持することが可能なように構成されていてもよい。
【0158】
(第八実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第八実施形態について説明する。
上記本発明の第一〜第六の実施形態では、通気部の具体例を挙げて各実施形態を説明したが、これらの他、複数の凹部及び/又は凸部が成形された金属部材によって形成される通気部も、本発明における通気部として利用できる。本実施形態では、内面に複数の凹部が形成された型枠の内面が通気部を有する場合を例に挙げて説明する。
本実施形態で製造するハニカム構造体は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。また、上記本発明の第一実施形態と同一の構成をなすものについては同一の符号を付けて説明を省略する。
【0159】
図15は、本発明の第八実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
図15において、緻密質金属からなる型枠461の内面461aには、複数の凹部462が形成されている。凹部462の深さや幅は特に限定されるものではなく、所望の空気透過性に応じて適宜設定できる。型枠461を構成する金属材料としては、銅、ニッケル、ステンレス、又は、これらの金属の少なくとも一種を用いてなる合金等が適用できる。
型枠461は、空気透過性のない緻密質金属からなるが、内面に複数の凹部462が形成されていることで、シール材ペーストを乾燥する際には、この凹部462に水蒸気を逃がすことができる。すなわち、複数の凹部462は、通気部を形成することができる。
上記のように構成された型枠460を用いても、シール材ペーストに含まれる水分の移動方向が偏ることがないため、上記本発明の第一〜第六実施形態と同様にシール材ペーストの乾燥処理時におけるマイグレーションの発生を抑制できる。
【0160】
なお、上記説明では型枠の内面に凹部が形成された例を挙げて説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、型枠の内面に凹部に代えて凸部が形成されていてもよい。また、型枠の内面に凹部と凸部の両方が形成されていてもよい。このような構成によっても、コート層を形成するためのシール材ペーストと型枠の内面との間に凹部や凸部によって空間が生じるため、この空間を通じてシール材ペースト中に含まれる水分の移動に寄与できる。
【0161】
本発明の第八実施形態に係る型枠は、内面側に凹部及び/又は凸部が形成されているため、得られたハニカム構造体は、コート層の表面に凹凸が形成されやすくなる。
ハニカム構造体を排ガス浄化装置に用いるときには、例えば、コート層の外周面に保持シール材(無機繊維からなるマット)を巻き付けて金属ケースに挿入して使用する。このとき、上記のようにコート層の表面に凹凸が形成されていると、凹部に保持シール材がはまり込む又は凸部に保持シール材が嵌まるため、使用時にハニカム構造体が金属ケースから抜けにくくなるようにすることができる。
また、コート層の表面に凸部が形成された場合には、研磨処理等を行ってコート層の表面を平坦化してもよい。
【0162】
本発明の第八実施形態においては、上記のように内面に凹凸が形成された型枠の内面側に、本発明の上記第一〜第五実施形態と同様に、紙部材、不織布部材、又は、メッシュ部材等を配置してもよい。
【0163】
本実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)〜(4)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
(10)本発明の第八実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、内面に複数の凹部及び/又は凸部が成形された金属部材によって、通気部が形成されるため、複数の凹部及び/又は凸部によって空気透過性を付与できる。
【0164】
(第九実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第九実施形態について説明する。
上記各実施形態では、組み上げたハニカム焼成体を固定する型枠として、一体的に形成された型枠を用いたが、本発明の第九実施形態においては、2個に分割可能な型枠について説明する。
【0165】
図16は、本発明の第九実施形態において、2個の型枠部材に分割可能な型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
図16において、型枠470は、一対の型枠部材470a及び型枠部材470bで構成される。
固定工程(S3)では、型枠部材470aの内部にハニカム焼成体を所望の形状に汲み上げる。そして、型枠部材470aに型枠部材470bを組み合わせて、ボルト471及びナット472を用いて両者を固定する。
このような構成を有する型枠470を用いることで、加熱処理等により、シール材ペーストがある程度固まった後に、型枠部材470aと型枠部材470bを分割することができるため、ハニカム構造体100を容易に取り出すことができる。そして、取り出したハニカム構造体を他の場所に移動させて、所定の温度で更にシール材ペーストの乾燥を行うことができる。
【0166】
なお、上記説明では、2個に分割できる型枠を例に挙げて説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、型枠は、組み上げたハニカム焼成体を内部に保持できるものであれば特に限定されるものではなく、必要に応じて複数の部材に分割できる型枠等、各種のものが適用できる。また、型枠の分割の仕方も特に限定されるものではなく、ハニカム構造体の長手方向に垂直な方向に複数分割されていてもよいし、長手方向に平行な方向に複数分割されていてもよい。また、型枠を構成する材質は、緻密質金属であってもよいし、多孔質金属であってもよい。
【0167】
本実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)〜(4)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
(11)本発明の第九実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、型枠が、複数の部材に分離可能であるため、この型枠を分離して、シール材ペーストが完全に硬化する前に、作製したハニカム構造体を型枠から取り出すことができるため、加熱したハニカム構造体の冷却を短時間で行うことができる。これにより、シール材ペーストの硬化時間を短縮でき、ハニカム構造体の生産性を高めることができる。
【0168】
(その他の実施形態)
本発明において型枠は、上記した緻密質金属からなる型枠又は多孔質金属からなる金属型枠のいずれにおいても、内面上に、フッ素樹脂等のコーティング層が形成されていることが望ましい。このようなコーティング層が形成されていると、ハニカム構造体の離型性を高めることができる。また、コーティング層は、剥離性が良いため、型枠の内面側に更に通気部を含む部材が設けられている場合には、目詰まり等によって通気部を含む部材の交換が必要な場合に、容易に通気部を含む部材を剥離することができ、作業性を高めることができる。
また、コーティング層は、多孔質金属の気孔を全部埋めないように、部分的に形成されていてもよい。
【0169】
また、本発明において型枠は、上記した緻密質金属からなる型枠又は多孔質金属からなる金属型枠のみに限定されるものではなく、外面側が緻密質金属にて形成された緻密質金属層からなり、内面側が多孔質金属にて形成された多孔質金属層からなり、両者が一体的に構成された型枠等も適用できる。緻密質金属層と多孔質金属層との割合は、型枠としての強度と通気部を含む多孔質金属層の通気度とを勘案して、適宜設定すればよい。
【0170】
また、本発明において通気部を含む部材は、上記各実施形態で説明した通気部を含む部材に限定されるものではなく、各種のものが適用できる。例えば、型枠の内面側に、紙部材、不織布部材、又は、メッシュ部材を配置するだけでなく、型枠の内面側に多孔性樹脂層を形成する、又は、ポーラスカーボン層を形成すること等によっても通気部を含む部材を構成できる。更に、紙部材、不織布部材、メッシュ部材、多孔性樹脂層、又は、ポーラスカーボン層を複数組み合わせて通気部を含む部材を構成することもできる。これらの組み合わせや配置は特に限定されるものではなく、空気透過性、剥離性、気孔径等を考慮して適宜設定すればよい。
【0171】
多孔性樹脂層は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化エチレン、四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、及び、ポリプロピレンから選ばれる少なくとも一種にて形成される。また、多孔性樹脂層の気孔率や孔径等は適宜設定される。
多孔性樹脂層の一例として、平均気孔径が0.3μmであるポリプロピレン製フィルム(住友スリーエム社製、マイクロポーラスフィルム)が挙げられる。このポリプロピレン製フィルムは、ポリプロピレンと有機フィラーで構成された多孔質フィルムであり、空気透過性と防水性とを兼ね備えるものである。また、平均気孔径が0.6μmである四フッ化エチレン樹脂多孔膜(日東電工社製、商品名テミッシュ)が挙げられる。
多孔性樹脂層は、例えば、上記した樹脂を多孔質金属からなる型枠の内面に塗布することで形成できる。この場合、型枠の内面上に多孔性樹脂層が一体的に形成されていることから、多孔質金属からなる型枠と多孔性樹脂層とを合わせて型枠といえる。
【0172】
本発明の製造方法により得られるハニカム構造体の形状は、図1に示した円柱状に限定されるものではなく、楕円柱状、長円柱状、多角柱状等の任意の柱の形状であればよい。
また、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の数は、上記本発明の実施形態のように、16個に限定されるものではなく、16個よりも多くても少なくてもよい。
【0173】
また、上記本発明の各実施形態では、型枠の内部でハニカム焼成体を組み上げる例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数のハニカム焼成体を所定の形に組み上げて、更に、ハニカム焼成体の両端面を保持部材等で保持して固定した状態で、型枠の内部に配置してもよい。
【0174】
本発明のハニカム構造体の製造方法により得られるハニカム焼成体の気孔率は、ハニカムフィルタとして使用する場合は、30%〜70%であることが望ましい。このような気孔率を有することで、ハニカム構造体の強度を維持することができるとともに、排ガスがセル壁を通過する際の抵抗を低く保つことができる。ハニカム焼成体の気孔率が30%未満であると、セル壁が早期に目詰まりを起こすことがあり、一方、ハニカム焼成体の気孔率が70%を超えるとハニカム焼成体の強度が低下して容易に破壊されることがある。
なお、上記ハニカム焼成体の気孔率は、水銀圧入法により測定することができる。
【0175】
上記ハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面におけるセル密度は特に限定されないが、望ましい下限は、31.0個/cm2(200個/in2)、望ましい上限は、93.0個/cm2(600個/in2)、より望ましい下限は、38.8個/cm2(250個/in2)、より望ましい上限は、77.5個/cm2(500個/in2)である。
【0176】
上記ハニカム焼成体の構成材料の主成分は、炭化ケイ素に限定されるわけではなく、他のセラミック原料として、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、金属と窒化物セラミックの複合体、金属と炭化物セラミックの複合体等であってもよい。
また、上述したセラミックに金属ケイ素を配合したケイ素含有セラミック、ケイ素又はケイ酸塩化合物で結合されたセラミック等のセラミック原料も構成材料として挙げられる。上記ハニカム焼成体の構成材料としては、これらの中で、機械的強度に優れる炭化ケイ素又はケイ素含有セラミックが望ましい。
【0177】
また、上記本発明の各実施形態では、いずれか一端のセルがシール材で封止された排ガス浄化用のフィルタとして使用するハニカム構造体の製造方法について説明したが、本発明に係るハニカム構造体はこれに限定されるものではない。ハニカム構造体は、セルの端部がいずれも封止材で封止されていないハニカム構造体であってもよい。このようなハニカム構造体は、セル壁に触媒を担持させる触媒担体として用いることができる。
【符号の説明】
【0178】
100 ハニカム構造体
101 セラミックブロック
102 コート層
103 接着材層
110(111、112、113) ハニカム焼成体
111a(112a、113a) セル
111b(112b、113b) セル壁
210(220) 隙間
411(420、421、431、441、451、460、461) 型枠
411a(420a、421a、431a、441a、460a、461a、470、470a、470b) 型枠の内面
600(600a、600b) シール材ペースト
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス浄化用フィルタ又は触媒担体として、長手方向に多数のセルが並設された柱状のハニカム焼成体を複数個組み合わせてなるハニカム構造体が知られている。ハニカム構造体は、ハニカム焼成体からなるセラミックブロックと、その外周に配置されたコート層とを有する。セラミックブロックは、複数の柱状のハニカム焼成体が側面に形成された接着材層を介して固定されることにより形成される。
【0003】
ハニカム構造体の製造方法としては、接着材層とコート層とを別々の工程で形成する方法が知られている。この方法では、まず、複数のハニカム焼成体をシール材ペーストを用いて接着し、このシール材ペーストを乾燥固化させることにより接着材層を形成する。これによりハニカム焼成体同士が強固に接着されたセラミックブロックが得られる。次いで、セラミックブロックの周囲にシール材ペーストを塗布して乾燥固化させることによりコート層が形成され、ハニカム構造体となる。
【0004】
しかしながら上記の方法では、接着材層とコート層とが別々の工程で形成されるため、接着材層とコート層との間に両者を区分けする境界面が形成される。このようなハニカム構造体を、例えば、車両用の排ガス浄化フィルタとして使用すると、運転開始時の急激な温度上昇に曝されたり、車両の運転からフィルタの再生処理という熱サイクルが長期間にわたって繰り返されること等によって、接着材層とコート層との間の界面に剥離又は破壊が生じる。
【0005】
そこで、特許文献1〜3には、接着材層とコート層とを、両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成する手法が開示されている。具体的には、特許文献1、2に記載の方法では、まず、組み立て装置を用いて複数のハニカム焼成体を一定の間隔を保持して所定の形状に組み立て、この形状を型枠を用いて固定する。次いで、ハニカム焼成体の間隙及びハニカム焼成体と型枠との間にシール材ペーストを注入する。そして、このシール材ペーストを乾燥して固化することにより、接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成している。特許文献3では、ハニカム焼成体を所定の形状に組み立てる際に、間隔保持部材を用いてハニカム焼成体を一定の間隔に保持し、型枠を用いて接着材層とコート層とを一体的に形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/126334A1号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/139608A1号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/047210A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成したハニカム構造体は、コート層自体の強度やコート層の表面強度にやや劣る傾向がある。そのために、コート層自体の強度やコート層の表面強度に優れたハニカム構造体が求められている。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、コート層全体の強度が均一で、しかもコート層の表面強度が高いハニカム構造体を容易に製造することができるハニカム構造体の製造方法、及び、コート層全体の強度が均一で、しかもコート層の表面強度が高いハニカム構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にコート層が設けられたハニカム構造体の製造方法であって、外周部にセル壁が形成されたハニカム成形体を押出成形する成形工程と、上記ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を形成する焼成工程と、型枠内に複数のハニカム焼成体を固定する固定工程と、上記型枠とハニカム焼成体との隙間及びハニカム焼成体間の隙間にシール材ペーストを充填する充填工程と、上記シール材ペーストを乾燥固化させて上記接着材層及び上記コート層を形成する乾燥工程とを備え、上記シール材ペーストは、無機粒子及び/又は無機繊維を含み、上記型枠、上記型枠の内面、又は、上記型枠の内面側に配置された部材には、空気透過性を有する通気部が設けられており、上記乾燥工程では、上記シール材ペーストを上記通気部の少なくとも一部に接触させて上記シール材ペーストの乾燥固化を行うことを特徴とする。
【0010】
上記製造方法によると、乾燥工程において、シール材ペーストに含まれる水分が水蒸気となると、水蒸気を含む空気は、ハニカム焼成体に形成された気孔を通って外部へ排出されるだけでなく、通気部を通って外部へ排出される。すなわち、コート層を形成するシール材ペーストに含まれる水分は、ハニカム焼成体の側だけでなく通気部の側にも移動するため、ハニカム焼成体側へ偏っていた水分の移動を緩和でき、これによりシール材ペーストに含まれる無機繊維及び/又は無機粒子のマイグレーションの発生を抑制できる。得られたコート層は、コート層全体の強度が均一で、しかもコート層の表面強度にも優れたものとなる。
【0011】
請求項2に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記型枠は、緻密質金属にて形成された型枠、多孔質金属にて形成された型枠、内面に複数の凹部及び/又は凸部が成形された緻密質金属からなる型枠のいずれかである。
緻密質金属にて形成された型枠の内面側には、空気透過性を有する通気部を含む部材が設けられている。
多孔質金属にて形成された型枠は、型枠そのものが通気部を含み、空気透過性を有する。本発明のハニカム構造体の製造方法においては、多孔質金属にて形成された型枠の内面側に更に空気透過性を有する通気部を含む部材を設けた構成としてもよい。
内面に複数の凹部及び/又は凸部が成形された緻密質金属からなる型枠は、型枠自体には空気透過性はないが、ハニカム焼成体と型枠との間にシール材ペーストを注入した際に、凹部及び/又は凸部によって隙間が生じると、この隙間を通気部として利用できる。すなわち、内面に複数の凹部及び/又は凸部が成形された緻密質金属からなる型枠は、型枠の内面が空気透過性を有する通気部を含むとも言える。この場合、型枠の内面側に更に空気透過性を有する通気部を含む部材を設けた構成としてもよい。
【0012】
請求項3に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記型枠の内面側に配置された部材は、紙部材、不織布部材、メッシュ部材、多孔性樹脂層、及び、ポーラスカーボン層から選ばれる少なくとも一種からなる。これらは単独で用いて通気部としてもよいし、複数組み合わせて通気部を構成してもよい。
【0013】
請求項4に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記通気部は、0.1μm〜50μmの平均気孔径を有する。
通気部がこのような平均気孔径を有すると、シール材ペースト中に含まれる無機粒子及び/又は無機繊維の移動を抑制しつつ、空気透過性を確保することができる。
【0014】
請求項5に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記型枠又は上記型枠の内面側に配置された部材の空気透過性は、0.05cc/cm2/sec以上である。
型枠又は通気部を含む部材がこのような空気透過性を有すると、シール材ペースト中に含まれる無機粒子及び/又は無機繊維のマイグレーションを充分に解消できる。
【0015】
請求項6に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記型枠と上記型枠の内面側に配置された部材とは、通気部を含み、上記型枠は、多孔質金属からなり、上記部材は、紙部材又は不織布部材からなる。これによると、多孔質金属及び紙部材又は不織布部材によって空気透過性を付与できるとともに、紙部材又は不織布部材とシール材ペーストとが接触することで、ハニカム構造体を離型する際に良好な離型性が得られる。また、シール材ペーストの付着等によって紙部材又は不織布部材の空気透過性又は離型性が低下した場合には、容易に紙部材又は不織布部材を交換できる。
【0016】
請求項7に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記型枠の内面側に配置された部材は、通気部を含み、上記部材は、紙部材又は不織布部材からなり、上記型枠は、緻密質金属からなる。これによると、紙部材又は不織布部材によって空気透過性を付与できるとともに、紙部材又は不織布部材とシール材ペーストとが接触することで、ハニカム構造体を離型する際に良好な離型性が得られる。また、シール材ペーストの付着等によって紙部材又は不織布部材の空気透過性及び離型性が低下した場合には、容易に紙部材又は不織布部材を交換できる。
【0017】
請求項8に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記紙部材は、シリコン加工が施された紙部材である。
本明細書においてシリコン加工が施された紙部材とは、クラフト紙又はグラシン紙等の表面にシリコン樹脂材料をコーティング処理したものや、クラフト紙又はグラシン紙等にシリコン樹脂材料を含浸させたものをいう。シリコン加工が施されたクラフト紙又はグラシン紙等の紙部材は、乾燥固化したシール材ペーストから容易に剥離することができる。
【0018】
請求項9に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記シリコン加工が施された部分に設けられた通気部の平均気孔径は、20μm〜50μmである。
【0019】
請求項10に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記型枠を構成する多孔質金属又は緻密質金属は、銅、ニッケル、ステンレス、又は、これらの金属の少なくとも一種を用いてなる合金である。
【0020】
請求項11に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記不織布部材は、ポリエステル繊維を含むポリエステル不織布部材である。
【0021】
請求項12に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記多孔性樹脂層は、フッ素樹脂、及び、ポリプロピレンから選ばれる少なくとも一種からなる。
【0022】
請求項13に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記型枠は、複数の部材に分離可能であって、上記固定工程では、複数の各部材を一体に組み合わせて使用する。
【0023】
請求項14に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記固定工程では、ハニカム焼成体同士を一定の間隔で保持する間隔保持部材を更に用いて複数の上記ハニカム焼成体を固定する。
【0024】
請求項15に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記固定工程では、ハニカム焼成体の両端面を保持することによりハニカム焼成体を固定する。これによると、ハニカム焼成体を所定の形状に容易に保持できる。
【0025】
請求項16に記載のハニカム構造体の製造方法では、上記シール材ペーストは、上記乾燥工程では、無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とが、それぞれ、上記コート層の表面側と上記コート層のセラミックブロック側とで、略同一になるように、上記シール材ペーストを乾燥固化する。これによると、コート層の全体にわたって強度が均一で、コート層の表面に無機粒子及び/又は無機繊維の分散ムラによる凹凸がないため表面強度が高く、しかもコート層の表面に粉っぽさのないハニカム構造体が得られる。
なお、本明細書において、「無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とが、それぞれ、コート層の表面側とコート層のセラミックブロック側とで、略同一になる」とは、以下のことをいうこととする。
シール材ペースト中に、無機粒子と無機繊維とのうち無機粒子のみが含まれている場合、「無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とが、それぞれ、コート層の表面側とコート層のセラミックブロック側とで、略同一になる」とは、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のセラミックブロック側における無機粒子の存在割合とが、略同一になることをいうこととする。
また、シール材ペースト中に、無機粒子と無機繊維とのうち無機繊維のみが含まれている場合、「無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とが、それぞれ、コート層の表面側とコート層のセラミックブロック側とで、略同一になる」とは、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のセラミックブロック側における無機繊維の存在割合とが、略同一になることをいうこととする。
また、シール材ペースト中に無機粒子と無機繊維の両方が含まれている場合、「無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とが、それぞれ、コート層の表面側とコート層のセラミックブロック側とで、略同一になる」とは、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のセラミックブロック側における無機粒子の存在割合とが、略同一になり、且つ、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のセラミックブロック側における無機繊維の存在割合とが、略同一になることをいうこととする。
コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のセラミックブロック側における無機粒子の存在割合とが、「略同一」になるとは、「コート層の表面側における無機粒子の存在割合」が「コート層のセラミックブロック側における無機粒子の存在割合」の80%〜120%であることをいうこととする。「コート層の表面側における無機粒子の存在割合」は、「コート層のセラミックブロック側における無機粒子の存在割合」の90%〜110%であることがより望ましく、95%〜105%であることがさらに望ましく、99%〜101%であることが一層望ましい。
コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のセラミックブロック側における無機繊維の存在割合とが、「略同一」になるとは、「コート層の表面側における無機繊維の存在割合」が「コート層のセラミックブロック側における無機繊維の存在割合」の80%〜120%であることをいうこととする。「コート層の表面側における無機繊維の存在割合」は、「コート層のセラミックブロック側における無機繊維の存在割合」の90%〜110%であることがより望ましく、95%〜105%であることがさらに望ましく、99%〜101%であることが一層望ましい。
また、本明細書において、「コート層の表面側」とは、コート層のうち、セラミックブロックまでの距離よりもコート層の表面までの距離の方が近い部分をいうこととする。「コート層のセラミックブロック側」とは、コート層のうち、コート層の表面までの距離よりもセラミックブロックまでの距離の方が近い部分をいうこととする。
【0026】
請求項17に記載のハニカム構造体では、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にコート層が設けられたハニカム構造体であって、上記接着材層及び上記コート層は、無機粒子及び/又は無機繊維を含み、上記接着材層と上記コート層とは一体的に形成されており、両者を区分けする境界面が存在せず、無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とは、それぞれ、上記コート層の表面側と上記コート層のセラミックブロック側とで、略同一である。
【0027】
このような構成を有するハニカム構造体は、コート層に含まれる無機粒子及び/又は無機繊維が、表面側とセラミックブロック側においてほぼ均一に分散しているため、コート層の全体にわたって均一な強度が得られる。また、コート層の表面には、無機粒子及び/又は無機繊維の分散ムラによる凹凸が生じていないため、表面強度が高く、粉っぽさのないハニカム構造体となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図2】図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図3】図3は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造工程を説明するフローチャート図である。
【図4】図4は、本発明の第一実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
【図5】図5(a)は、本発明の第一実施形態において、供給装置を装着した型枠の状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。図5(b)は、本発明の第一実施形態において、供給装置を装着した型枠の状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に平行な方向に沿う断面図である。
【図6】図6(a)は、本発明の第一実施形態において、型枠内にシール材ペーストを充填した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。図6(b)は、本発明の第一実施形態において、型枠内にシール材ペーストを充填した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に平行な方向に沿う断面図である。
【図7】図7(a)は、本発明の第一実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。図7(b)は、本発明の第一実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
【図8】図8(a)は、比較例1の乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。図8(b)は、比較例1の乾燥工程(S5)において型枠の内面と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
【図9】図9(a)は、本発明の第二実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。図9(b)は、本発明の第二実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
【図10】図10(a)は、本発明の第三実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。図10(b)は、本発明の第三実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。
【図11】図11(a)は、本発明の第三実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。図11(b)は、本発明の第四実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。図11(c)は、本発明の第五実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
【図12】図12は、本発明の第六実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
【図13】図13(a)は、本発明の第六実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。図13(b)は、本発明の第六実施形態において、型枠の内面と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
【図14】図14(a)、図14(b)、図14(c)、図14(d)、及び、図14(e)は、本発明の第七実施形態に係るハニカム焼成体の固定工程を説明する工程図であり、型枠内におけるハニカム焼成体の配置について、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う状態を模式的に示した断面図である。
【図15】図15は、本発明の第八実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
【図16】図16は、本発明の第九実施形態において、2個の型枠部材に分割可能な型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成した従来のハニカム構造体は、接着材層とコート層とを別々に形成した従来のハニカム構造体に比べて、コート層自体の強度及びコート層の表面強度にやや劣る傾向がある。本発明者らは、接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成したハニカム構造体について種々検討したところ、コート層における上記のような傾向は、コート層となるシール材ペーストの乾燥処理に起因することを見いだした。
【0030】
接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成したハニカム構造体を製造するに際し、接着材層及びコート層は、型枠内に組み上げた複数のハニカム焼成体の間及びハニカム焼成体と型枠との間にシール材ペーストを充填して、このシール材ペーストを加熱して乾燥することで形成される。
接着材層を形成するためにハニカム焼成体の間に充填されたシール材ペースト中の水分は、加熱により水蒸気となって、シール材ペーストの両側に設けられた多孔質体であるハニカム焼成体へと移動する。これにより、シール材ペーストに含まれる無機粒子及び無機繊維も両側に設けられたハニカム焼成体の側へと移動する。
一方で、コート層を形成するためにハニカム焼成体と型枠との間に充填されたシール材ペースト中の水分は、加熱により水蒸気となると、ハニカム焼成体の側へは移動できるものの、型枠の側へは移動できない。これは、接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成する従来のハニカム構造体の製造方法においては、型枠として緻密質金属にて形成された緻密質金属型枠、又は、この緻密質金属型枠の内面側に、ハニカム構造体の離型性の向上を目的としてフッ素樹脂層が形成された型枠等が使用されているためである。
【0031】
上記した従来の型枠は、空気透過性がなく、加熱により発生した水蒸気を含む空気を透過させることができないため、コート層となるシール材ペースト中の水分は、必然的に、型枠の側からハニカム焼成体の側へと移動する。この水分の移動に伴って、シール材ペーストに含まれる無機繊維又は無機粒子等は、型枠の側からハニカム焼成体の側へと移動する。これにより、シール材ペースト中において無機粒子及び無機繊維に分散ムラが生じ、無機粒子及び無機繊維がそれぞれ偏って存在する、いわゆるマイグレーションが発生する。
マイグレーションが発生すると、得られたコート層は、無機粒子及び無機繊維が、表面側とセラミックブロック側において均一に分散していないために、コート層の全体の強度にばらつきが生じる。また、コート層の表面には無機粒子及び無機繊維の分散ムラによって微細な凹凸が生じ、これによりコート層の表面が削れやすくなったり剥離しやすくなって、コート層の表面が粉っぽい状態となる。コート層がこのような状態であると、ハニカム構造体を排気ガス浄化用フィルタ又は触媒担体として利用した場合に、再生処理等の高温に曝された際にハニカム構造体の膨張及び収縮によるクラックの発生に繋がることが考えられる。
【0032】
上記現象を考慮して、本発明者らは、ハニカム焼成体の側に向かって移動するシール材ペースト中の水分を型枠の側にも移動させることで、無機粒子及び無機繊維をコート層の表面に均一に分散できると考えた。そこで、型枠及び/又は型枠の内面側(型枠の内面を含む部分)が水蒸気を含んだ空気を透過できる空気透過性を有するように構成したところ、コート層となるシール材ペースト中の水分を、ハニカム焼成体の側だけでなく型枠の側へも移動させることができることを見いだし、本発明に到達した。
【0033】
なお、上記説明では、シール材ペーストに無機繊維及び無機粒子が含まれる場合について説明したが、無機繊維又は無機粒子のいずれか一方のみが含まれる場合も、マイグレーションが発生する理由は同様である。
また、マイグレーションの発生を抑制するためには、型枠を外した後にシール材ペーストを乾燥固化させることも考えられるが、シール材ペーストが未硬化の状態で型枠を外すとシール材ペーストの表面に窪み又は変形が生じて、やはり得られたコート層の表面には凹凸が生じるため望ましくない。
【0034】
本発明において空気透過性とは、コート層を形成するシール材ペーストに含まれた水分(水蒸気)を含む空気を透過できる性質をいう。
空気透過性(通気度ともいう)は、JIS L1096(A法)に記載の測定方法に準じて測定する。本発明における通気部は、水分(水蒸気)を含む空気を透過できればよく、空気透過性について特に限定されるものではないが、空気透過性は、0.05cc/cm2/sec以上であることが望ましい。空気透過性の上限は特に設ける必要はないが、空気透過性は、0.05cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることがより望ましく、1cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることがさらに望ましく、5cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることが特に望ましい。ただし、空気透過性が100cc/cm2/secを超えたとしても、その効果が損なわれるものではない。
空気透過性を有する通気部とは、上記したコート層を形成するシール材ペーストに含まれた水分(水蒸気)を含む空気が透過できる部分をさす。「型枠、型枠の内面、又は、型枠の内面側に配置された部材には、空気透過性を有する通気部が設けられている」とは、型枠自体が空気透過性を有すること、型枠自体が空気透過性を有し、かつ、型枠の内面側に更に空気透過性を有する別の部材が配置されていること、型枠自体には空気透過性はないが、型枠の内面側に空気透過性を有する別の部材が配置されていること、型枠自体には空気透過性はないが、内面に凹部及び/又は凸部が形成されていることで、シール材ペーストを注入した際に空気透過性を有する隙間が形成されることのいずれかをいう。
型枠の内面とは、型枠のハニカム焼成体側の面であり、型枠の内面側に部材が配置されるとは、型枠の内面側に一体に又は分離可能に空気透過性を有する部材が配置されていることをいう。
【0035】
通気部としては、例えば、以下のような態様のものが挙げられる。
【0036】
本発明の第1の態様としては、型枠自体には空気透過性はないが、型枠の内面側に空気透過性を有する別の部材がさらに配置されている態様が挙げられる。
このような態様の一例としては、型枠が緻密質金属にて形成された型枠であって、この型枠の内面側に空気透過性を有する別の部材が設けられた例が挙げられる。型枠の内面側に設けられる部材は、型枠と一体的に形成されていてもよいし、分離可能に構成されていてもよい。
本発明の第1の態様において、型枠と型枠の内面側に配置された部材とが分離可能に形成された例としては、型枠が緻密質金属にて形成され、その内面側に紙部材又は不織布部材を配置したものが挙げられる。
本発明の第1の態様において、型枠と型枠の内面側に配置された部材とが一体的に形成された例としては、型枠が緻密質金属にて形成され、その内面上に多孔質樹脂層、ポーラスカーボン層等が形成されたものが挙げられる。
【0037】
本発明の第2の態様としては、型枠自体(型枠の全体)が空気透過性を有し、かつ、この型枠の内面側に別の部材が設けられた態様が挙げられる。すなわち、型枠が多孔質金属にて形成された空気透過性を有する型枠であって、この型枠の内面側に、更に空気透過性を有する部材を設けた態様である。型枠の内面側に配置された部材は、型枠と一体的に形成されていてもよいし、分離可能に構成されていてもよい。
本発明の第2の態様において、型枠と型枠の内面側に配置された部材とが分離可能に形成された例としては、型枠が多孔質金属にて形成され、その内面側に紙部材、不織布部材、メッシュ部材(例えば、ステンレスメッシュ)のいずれかを配置したものが挙げられる。
本発明の第2の態様において、型枠と型枠の内面側に配置された部材とが一体的に形成された例としては、型枠が多孔質金属にて形成され、その内面上に多孔質樹脂層又はポーラスカーボン層等が形成されたものが挙げられる。
【0038】
本発明の第3の態様としては、型枠自体(型枠の全体)が空気透過性を有し、型枠そのものが通気部を含む態様が挙げられる。このような態様の一例としては、型枠が多孔質金属にて形成されたものが挙げられる。
【0039】
上記本発明の第2の態様及び第3の態様は、いずれも型枠自体が空気透過性を有しているので好適に使用できるが、コート層の剥離性(ハニカム構造体の離型性)を考慮すると、本発明の第2の態様が望ましい。本発明の第2の態様の中でも、型枠と型枠の内面側に配置された部材とが分離可能である態様は、コート層を形成するシール材ペーストの付着等に起因して、型枠の内面側に配置された部材の空気透過性が低下した時等に、この部材を容易に交換できるため、作業性の観点からも望ましい。
【0040】
上記本発明の第1の態様及び第2の態様において、型枠の内面側に配置された部材の厚さは、型枠の厚みの1/10〜3/4であることが望ましく、1/5〜1/2であることがより望ましい。部材の厚みは、必要とする空気透過性又は型枠の強度等を勘案して、型枠の材質又は部材の気孔率等に応じて適宜設定される。
【0041】
本発明において、多孔質金属にて形成された型枠(以下、多孔質金属型枠とも称す)とは、空気透過性を有し、銅、ニッケル、ステンレス又はこれらの少なくとも一種を用いてなる合金にて形成された型枠をいう。
本発明において、緻密質金属にて形成された型枠(以下、緻密質金属型枠とも称す)とは、空気透過性がなく、銅、ニッケル、ステンレス又はこれらの少なくとも一種を用いてなる合金にて形成された型枠をいう。なかでも、多孔質金属又は緻密質金属にて形成された型枠は、ステンレスにて形成された型枠が望ましい。
【0042】
多孔質金属型枠及び緻密質金属型枠には、内面上にコート層の剥離性(ハニカム構造体の離型性)を考慮して、フッ素樹脂層等が形成されていてもよい。
【0043】
上記のように通気部を使用して、接着材層とコート層とを一体的に形成する方法により得られたハニカム構造体は、接着材層とコート層との間に両者を区分けする境界面が存在しないため、車両用の排ガス浄化フィルタとして使用しても、接着材層とコート層との間で剥離等が生じにくいだけでなく、コート層の強度が全体にわたって均一になることから、コート層にクラックが発生しにくくなり、耐久性にも優れたものとなる。
【0044】
以下、通気部を用いて接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成する、本発明に係るハニカム構造体の製造方法について具体的に説明する。また、マイグレーションの発生が抑制され、コート層に無機繊維及び無機粒子が均一に分散した、本発明に係るハニカム構造体についても具体的に説明する。
【0045】
(第一実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第一実施形態について説明する。
本実施形態では、緻密質金属型枠の内面側に配置された、通気部を含む部材を用いて接着材層とコート層とを両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成するハニカム構造体の製造方法について説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
図1において、ハニカム構造体100は、円柱形状のセラミックブロック101と、セラミックブロック101の周囲に設けられたコート層102とを備える。セラミックブロック101は、柱状のハニカム焼成体110が接着材層103を介して複数個結束されてなる。
【0046】
柱状のハニカム焼成体110は、多孔質セラミックからなる。ここでは、ハニカム焼成体110として、長手方向に垂直な断面を見たときにその断面形状がそれぞれ異なる3種類のハニカム焼成体111、112、113が用いられる。以下に、図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)を用いて、ハニカム焼成体111、112、113の詳細を説明する。
【0047】
図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)は、図1に示した本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示した斜視図である。図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)において、両矢印Aで示したセルに平行な方向を長手方向といい、セルが露出した面を端面といい、端面以外の面を側面という。
【0048】
図2(a)に示したハニカム焼成体111の側面は、2つの平面と1つの曲面により構成される。ハニカム焼成体111は、多数のセル111aがセル壁111bを隔てて長手方向(両矢印A方向)に並設された構成を有する。ハニカム焼成体111は、セル111aのいずれか一方の端部が封止材111cによって封止されている。
図2(b)に示したハニカム焼成体112の側面は、3つの平面と1つの曲面により構成される。ハニカム焼成体112もハニカム焼成体111と同様に、多数のセル112aがセル壁112bを隔てて長手方向(両矢印A方向)に並設された構成を有する。また、ハニカム焼成体112は、セル112aのいずれか一方の端部が封止材112cによって封止されている。
更に、図2(c)に示すハニカム焼成体113の側面は、4つの平面により構成される。ハニカム焼成体113もハニカム焼成体111と同様に、多数のセル113aがセル壁113bを隔てて長手方向(両矢印A方向)に並設された構成を有する。また、ハニカム焼成体113は、セル113aのいずれか一方の端部が封止材113cによって封止されている。
【0049】
上記のようにセル111a、112a、113aのいずれか一方の端部が封止材111c、112c、113cによって封止されたハニカム焼成体111、112、113を用いてなるハニカム構造体100は、排ガス浄化用のハニカムフィルタとして使用できる。例えば、セル111aに流入した排ガスは、必ずセル壁111bを通過した後に、他のセル111aから流出する。排ガスがこのセル壁111bを通過する際には、排ガス中に含まれるパティキュレートがセル壁111bで捕捉される。これにより、排ガスを浄化することができる。他のセル112a、113aについても同様である。
上記したハニカム焼成体111、112、113は、接着材層103を介して複数個が結束され、円柱形状のセラミックブロック101となる。
【0050】
ここで、図1に示した本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体100は、接着材層103及びコート層102が同一のシール材ペーストによって一体的に形成されており、両者を区分けする境界面が存在しない。このような構成を有するハニカム構造体100を排ガス浄化用のフィルタとして用いた場合には、高温雰囲気下で利用しても接着材層103とコート層102との間で剥離又はクラック等が生じることがなくなる。
【0051】
また、接着材層103及びコート層102は、無機繊維及び無機粒子を含む。接着材層103及びコート層102は、無機繊維又は無機粒子のいずれか一方を含めばよいが、無機繊維及び無機粒子の両方を含んでいることが、強度の観点から望ましい。
本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体100においては、コート層102の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層102のセラミックブロック101側における無機繊維の存在割合とが、略同一であり、且つ、コート層102の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層102のセラミックブロック101側における無機粒子の存在割合とが、略同一である。このような構成を有するハニカム構造体100は、コート層102自体の強度が均一で、しかもコート層102の表面強度が高く、粉っぽさのない状態となる。
【0052】
接着材層103及びコート層102に含まれる無機粒子としては、例えば、炭化ケイ素等の炭化物、窒化ケイ素又は窒化ホウ素等の窒化物等からなる無機粉末等が挙げられる。中でも、熱伝導性に優れることから、炭化ケイ素からなる粉末が望ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機粒子の平均粒子径は、0.1μm〜50μmであることが望ましく、0.1μm〜1.0μmであることがより望ましい。
接着材層103及びコート層102に含まれる無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバが挙げられる。中でも、アルミナからなる無機繊維が望ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機繊維の平均繊維径は、1μm〜50μmの範囲であることが望ましく、5μm〜40μmの範囲であることがより望ましい。無機繊維の平均繊維長は、10μm〜200μmの範囲であることが望ましく、20μm〜100μmの範囲であることがより望ましい。
【0053】
以下に、上記のように構成された本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体100の製造方法について説明する。
図3は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造工程を説明するフローチャート図である。
図3に示すように、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体100の製造工程は、ハニカム成形体を形成する成形工程(ステップS1)、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を形成する焼成工程(ステップS2)、ハニカム焼成体を型枠内に配置して固定する固定工程(ステップS3)、型枠内にシール材ペーストを充填する充填工程(ステップS4)、及び、充填したシール材ペーストを乾燥固化させる乾燥工程(ステップS5)を備える。これらの工程により、切削加工等の後加工等を行うことなく、図1に示した円柱形状のハニカム構造体100を製造できる。
【0054】
以下に各工程の詳細について説明する。
まず、成形工程(S1)では、ハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体の形状は柱状であれば特に限定されるものではないが、本実施形態では、図1に示した円柱形状のハニカム構造体100を製造するために、図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)に示した3種類のハニカム焼成体111、112、113を作製することから、熱収縮等を考慮しつつ、これらのハニカム焼成体とほぼ同じ形状の3種類のハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体は、セラミック粉末及びバインダを含む原料組成物を用いて押出成形により作製する。
【0055】
原料組成物には、例えば、以下のように調製した湿潤混合物、すなわち、セラミック粉末として平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末を用い、バインダには有機バインダを用いて、炭化ケイ素粉末、有機バインダ、液状の可塑剤、潤滑剤、及び、水を混合した湿潤混合物が適用できる。
【0056】
セラミック粉末は特に限定されるものではないが、例えば、1.0μm〜50μmの平均粒子径を有する炭化ケイ素粉末100重量部と、0.1μm〜1.0μmの平均粒子径を有する炭化ケイ素粉末5重量部〜65重量部とを組み合わせたものが挙げられる。
【0057】
上記のように調製した原料組成物としての湿潤混合物は、押出成形機を用いて押出成形することで各種形状のハニカム成形体となる。押出成形されたハニカム成形体は、乾燥機を用いて乾燥する。
乾燥処理には、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、又は、凍結乾燥機等を用いることができる。
乾燥させたハニカム成形体は、切断装置を用いて所望の長さに切断する。
そして、セルのいずれか一方の端部に、所定量の封止材ペーストを充填してセルを目封じする。セルの目封じに際しては、例えば、ハニカム成形体の端面(切断した切断面)に目封じ用のマスクを当てて、目封じの必要なセルにのみ封止材ペーストを充填する方法を用いることができる。
目封じしたハニカム成形体は、脱脂炉中で加熱して脱脂する。脱脂条件は特に限定されるものではなく、ハニカム成形体に含まれる有機物の種類や量によって適宜選択する。例えば、約400℃の温度で、約2時間の脱脂処理が挙げられる。
【0058】
次いで、焼成工程(S2)では、成形工程(S1)で作製したハニカム成形体を焼成炉内で焼成して、3種類のハニカム焼成体111、112、113を作製する。
焼成条件は、特に限定されるものではないが、焼成温度は、2000℃〜2200℃の範囲であることが望ましい。
これにより、図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)に示したように、多数のセル111a、112a、113aがセル壁111b、112b、113bを隔てて長手方向に並設された各種形状の柱状のハニカム焼成体111、112、113が得られる。
なお、ハニカム焼成体111、112、113の気孔径等は、原料組成物に含まれるセラミック粉末の粒径を調節することで所望の値とすることができる。
【0059】
次いで、固定工程(S3)では、得られた3種類のハニカム焼成体111、112、113を円柱形状となるように組み上げて、型枠(筒状治具)内に配置して固定する。具体的には、筒状治具の底面と上面とに蓋をして、シール材ペーストを充填しても、型枠からシール材ペーストが漏れないようにする。また、筒状治具と底面又は上面の板材とからなる治具の上面又は底面に蓋をしてもよい。
図4は、本発明の第一実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
【0060】
図4において、型枠411は、空気透過性のない緻密質金属型枠である。
型枠411は、銅、ニッケル、ステンレス、又は、これらの金属の少なくとも一種を用いてなる合金等にて形成される。したがって、ハニカム焼成体を固定するために充分な強度を有する。
型枠411は、内部にハニカム焼成体110(111、112、113)を配置するための空間が形成された円筒形状である。
型枠411の内面には、離型性の向上等を目的としてフッ素樹脂等のコーティング処理が施されていることが望ましい。
【0061】
型枠411の内面411a側には、通気部を含む部材が設けられている。
通気部を含む部材は、上記のようにコート層の表面における無機繊維又は無機粒子等のマイグレーションを抑制するために設けるものである。したがって、通気部を含む部材は、コート層となるシール材ペーストと接触する全面に設けることが望ましい。型枠の内面側にこのような部材を有することで、後述する乾燥工程(S5)において、シール材ペースト中に含まれる無機繊維及び無機粒子のマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0062】
本実施形態において、部材は紙412(紙部材ともいう)で構成されている。紙412は、空気透過性を有するものであれば特に限定されるものではないが、JIS L 1096(A法)で測定した空気透過性(通気度)が0.05cc/cm2/sec以上であることが望ましく、0.05cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることがより望ましく、1cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることが更に望ましく、5cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることが特に望ましい。
また、紙412は、型枠411の内面側に配置することを考慮すると、作業性がよく、好適に使用できることから、厚みが0.06mm〜0.12mmであることが望ましく、0.08mm〜0.10mmであることがより望ましい。
また、紙412は、平均気孔径が0.1μm〜50μmであることが望ましく、0.1μm〜5μmであることがより望ましい。
【0063】
また、後述する乾燥工程(S5)後のハニカム構造体の離型性を考慮すると、紙部材の表面にはコーティング処理等が施されていることが望ましい。
コーティング処理等が施された紙としては、シリコン加工が施されたクラフト紙又はグラシン紙等が挙げられる。シリコン加工が施されたクラフト紙又はグラシン紙とは、クラフト紙又はグラシン紙の表面にシリコン樹脂材料をコーティング処理したもの、又は、クラフト紙又はグラシン紙にシリコン樹脂材料を含浸させたものである。本明細書においては、クラフト紙又はグラシン紙の表面に、シリコンを含む剥離層が形成された紙が好適に使用できる。コーティング処理等が施された紙は、剥離性が良いため、離型時におけるハニカム構造体の離型性の向上が図れる。
【0064】
シリコン加工が施された紙部材は、本体部とシリコンコート部とを有する。
本体部は、紙基材の存在する部分であり、シリコンコート部は、コーティングされたシリコン樹脂材料の存在する部分である。
コーティング処理の方法は、特に限定されず、例えば、エアーナイフ、ロールコーター、バーコーター、コンマコーター、ブレードコーター等の従来公知の方法を用いて行うことができる。
【0065】
本体部は、通気部を有しており、また、シリコンコート部も、通気部を有している。通気部とは、コート層を形成するシール材ペーストに含まれた水分(水蒸気)を含む空気が透過することができる部分(孔)をさす。
本体部の有する通気部は、本体部に存在する孔(気孔)であり、シリコンコート部の有する通気部は、シリコンコート部に存在する孔(気孔)である。
【0066】
本体部の有する通気部の平均気孔径は、0.1〜50μmであることが望ましく、1〜50μmであることがより望ましく、1〜30μmであることがさらに望ましい。本体部の有する通気部の平均気孔径が0.1μm未満であると、空気透過性を確保しにくくなる。
シリコンコート部(シリコン加工が施されている部分)の有する通気部は、20〜50μmの平均気孔径を有することが望ましく、30〜40μmの平均気孔径を有することがより望ましい。
気孔径は、気孔(通気部)内で直線を引いたときの最大の長さのことをいう。気孔は、紙を厚さ方向に沿って切断した断面を撮影したSEM写真を得ることによって、観察することができる。SEM写真中の気孔のうち、適切な大きさの気孔に対して上記最大の長さを測定することにより、平均気孔径が求められる。
【0067】
紙412は、型枠411に対して着脱自在に取り付けられている。紙412を型枠411の内面411a側に取り付ける方法としては、両面テープを用いて紙412を型枠411の内面411a側に貼る方法等が挙げられる。
上記のように、紙412を型枠411に対して着脱自在に取り付けた構成であると、型枠411の内面側に紙を容易に装着することができ、また、ハニカム構造体100を離型した後における紙の交換又は廃棄等を容易に行うことができる。したがって、例えば、シール材ペーストの付着等によって紙412が汚れた場合に、型枠411の洗浄を行うことなく、紙412を交換するだけで容易に次のハニカム構造体100の製造を行うことができる。
【0068】
なお、紙は、後述する乾燥工程(S5)を経てハニカム構造体を離型した後に、廃棄してもよいし、再利用してもよい。
【0069】
図4において、内面411a側に紙412が設けられた型枠411の内部には、複数のハニカム焼成体110(111、112、113)が円筒状になるようにスペーサ405を介して組み上げられている。
スペーサ405の厚さd1は、後工程で形成する接着材層103の厚さとほぼ同じ厚さであり、組み上げられたハニカム焼成体110の側面間の隙間210の間隔d2とほぼ同じである。
円筒状に組み上げられたハニカム焼成体110と紙412との間の隙間220の間隔d3は、後工程で形成するコート層102の厚みとほぼ同じである。
スペーサ405の材質は特に限定されるものではないが、ボール紙、繊維紙、不織布又は無機充填紙等からなるものが挙げられる。なお、ボール紙、繊維紙、不織布又は無機充填紙等は、ボール紙部材、繊維紙部材、不織布部材又は無機充填紙部材等ともいう。
【0070】
次いで、充填工程(S4)では、ハニカム焼成体110の側面間の隙間210及び紙412とハニカム焼成体110の側面との間の隙間220にシール材ペーストを充填する。シール材ペーストの充填方法は特に限定されるものではないが、本実施形態では、型枠411にシール材ペーストの供給装置を装着して行う例を挙げて説明する。
【0071】
図5(a)は、本発明の第一実施形態において、供給装置を装着した型枠の状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。図5(b)は、本発明の第一実施形態において、供給装置を装着した型枠の状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に平行な方向に沿う断面図である。
図5(a)及び図5(b)に示すように、型枠411には、シール材ペーストを充填するための供給装置500が装着されている。供給装置500は、シール材ペーストを収容するためのペースト室510と、シール材ペーストをペースト室510から型枠411内に押し出すための押出機構520とを備える。
型枠411には、供給装置500との接続部分にシール材ペーストの注入口401が形成されており、この注入口401を介してシール材ペーストの充填が行われる。また、型枠411には、ハニカム焼成体110の両端面側に複数の開口部470が形成されている。
【0072】
図6(a)は、本発明の第一実施形態において、型枠内にシール材ペーストを充填した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。図6(b)は、本発明の第一実施形態において、型枠内にシール材ペーストを充填した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に平行な方向に沿う断面図である。
図5(a)及び図5(b)に示した供給装置500のペースト室510にシール材ペーストが供給され、図6(a)及び図6(b)に示したように、シール材ペースト600が押出機構520により矢印B方向に加圧されると、注入口401を介してペースト室510から型枠411の内部へと供給される。これにより、型枠411の内面411a側に配置された紙412とハニカム焼成体110との隙間220及びハニカム焼成体110同士の隙間210にシール材ペースト600が充填される。
以下、紙412とハニカム焼成体110との隙間220に充填された、コート層となるシール材ペースト600をシール材ペースト600aとも称す。また、ハニカム焼成体110同士の隙間210の間に充填された、接着材層となるシール材ペースト600をシール材ペースト600bとも称す。
【0073】
本発明の第一実施形態において、シール材ペースト600には、上記した無機粒子及び無機繊維を含むものが用いられる。無機粒子及び無機繊維を含むシール材ペースト600は、シール材ペースト600中に多くの水分を含ませることによって粘度を低下させている。これにより、シール材ペースト600の流動性が高くなり、ハニカム焼成体110間の隙間210及びハニカム焼成体110と型枠411の内面411aとの隙間220にシール材ペースト600を良好に充填することができる。
【0074】
シール材ペースト600に含まれる水分としては、有機バインダに由来するもの等が挙げられる。有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、又は、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機バインダのなかでは、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
【0075】
続く乾燥工程(S5)では、シール材ペースト600が充填された状態の型枠411を加熱する。乾燥条件は、特に限定されるものではないが、例えば、100℃〜150℃の温度で、約1時間の加熱を行う。これにより、シール材ペースト600aは固化してコート層102となり、シール材ペースト600bは、固化して接着材層103となる。
ここで、シール材ペースト600aの加熱は、シール材ペースト600aが紙412に接触した状態で行われる。このような構成とすることで、シール材ペースト600に含まれる無機繊維等のマイグレーションが抑制されて、シール材ペースト600aが固化してなるコート層102は、表面側における無機粒子の存在割合と、セラミックブロック側における無機粒子の存在割合とが、略同一になり、且つ、表面側における無機繊維の存在割合と、セラミックブロック側における無機繊維の存在割合とが、略同一になる。この理由について、図7(a)及び図7(b)を用いて以下に説明する。
【0076】
図7(a)は、本発明の第一実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。図7(b)は、本発明の第一実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。図7(b)において、型枠411の内面411a側には、紙412が配置されている。
図7(a)において、矢印Pは、シール材ペースト600(600a、600b)に含まれる水分の移動方向を示し、矢印Sは、シール材ペースト600aに含まれる水分の移動方向を示す。
図7(b)において、矢印Q及び矢印Rは、シール材ペースト600aに含まれる水分の移動方向を示す。また、図7(b)において、シール材ペースト600aに含まれる水分710は模式的に黒色の丸で示しており、この黒色の丸が多い部分は水分量が多く、少ない部分は水分量が少ないことを示す。
【0077】
乾燥工程(S5)においてシール材ペースト600の加熱が行われると、シール材ペースト600に含まれる水分が水蒸気となる。
ハニカム焼成体110同士の隙間210の間に充填されたシール材ペースト600bに含まれる水分は、水蒸気となると、ハニカム焼成体110の側へと移動する。そして、水蒸気を含む空気は、多孔質体であるハニカム焼成体110を通って、図7(a)において矢印Pで示したように、ハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される。なお、ここでは図示されていないが、型枠411には、図6(b)に示したように、ハニカム焼成体110の端面側に、水蒸気を含む空気を外部に排出するための開口部470が形成されている。
一方、型枠411の内面411a側に配置された紙412とハニカム焼成体110との隙間220に充填されたシール材ペースト600aに含まれる水分については、図7(b)に示したように、水蒸気となった水分710が紙412の側及びハニカム焼成体110の側へと移動する。ハニカム焼成体110の側へ移動した水蒸気710aは、矢印Rで示すようにハニカム焼成体110を通って、図7(a)において矢印Pで示すように、ハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される。
紙412の側へ移動した水蒸気710bは、紙412に保持される、又は、図7(a)において矢印Sで示すように、水蒸気710bを含む空気とともに紙412の端面から外部へと放出される。
【0078】
ここで、シール材ペースト600a中には、水分710だけでなく、無機繊維720及び無機粒子730が含まれている。
上記のようにシール材ペースト600aに含まれる水分710が水蒸気710aとなって、矢印Rで示したようにハニカム焼成体110の側へ移動すると、それに伴って無機繊維720及び無機粒子730の一部はハニカム焼成体110の側へと移動する。
また、シール材ペースト600aに含まれる水分710が水蒸気710bとなって、矢印Qで示した紙412の側へ移動すると、それに伴って無機繊維720及び無機粒子730の一部も型枠411の側へと移動する。
このように本実施形態においては、シール材ペースト600a中の水分710がハニカム焼成体110の側だけでなく、紙412の側へも移動することで、シール材ペースト600a中に含まれる無機繊維720及び無機粒子730がハニカム焼成体110の側へ偏る、いわゆるマイグレーションを緩和できる。
また、シール材ペースト600a中に含まれる無機繊維720及び無機粒子730は、紙412の側においても偏りなく分散しやすくなることから、離型後に得られるコート層の全体にわたって均一な強度が得られるとともに、コート層の表面を平滑にすることができる。
【0079】
なお、シール材ペースト600a中に含まれる無機繊維720及び無機粒子730は、均一に分散していることが望ましいが、無機繊維720又は無機粒子730のいずれか一方のみのハニカム焼成体側への偏りを抑制することによっても、コート層における強度の均一化を図ることができ、また、コート層の表面平滑性を高めることができる。
【0080】
更に、紙部材に設けられた通気部の平均気孔径がシール材ペースト600a中に含まれる無機粒子の平均粒子径よりも小さいものであると、水蒸気710bを含んだ無機粒子の移動に伴って無機粒子がコート層の表面に飛び出すことを防止でき、より表面が平滑なコート層を得ることができる。
【0081】
なお、両面テープを用いて紙412を型枠411に固定する場合には、型枠411の内面側に紙412を固定するための両面テープの粘着層が存在することがあるが、この粘着層は、上記のように100℃〜150℃の温度で加熱されることで溶融して、揮発するため、紙の空気透過性を損なうことはない。しかしながら、紙412の空気透過性を考慮すると、紙412を型枠411に固定するための両面テープは、できるだけ少ない範囲に設けることが望ましい。
【0082】
上記乾燥工程が終了すると、ハニカム構造体100を離型し、紙412を剥離する。これにより、コート層102の表面側において無機繊維720及び無機粒子730が均一に分散されたハニカム構造体100が得られる。このハニカム構造体100は、コート層102の強度が全体にわたって均一で、しかもコート層102の表面に粉ふき等のない表面強度に優れたものとなる。
また、ハニカム構造体100は、接着材層103とコート層102とが、両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成されているため、再生処理のような熱サイクルを長期間に渡って繰り返した場合であっても、接着材層103とコート層102との間での破壊(剥離又はクラック等)を防止することができる。
上記特徴を有することから、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体100は、排気ガス浄化用フィルタとして好適に使用できる。
【0083】
なお、上記説明では、乾燥工程(S5)において、シール材ペーストの乾燥処理のみを行ったが、乾燥工程の後に、乾燥処理よりも高温での脱脂処理及び焼成処理等を更に行ってもよい。
【0084】
以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体の作用効果について列挙する。
(1)本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、外周部にセル壁が形成されたハニカム成形体を押出成形する成形工程と、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を形成する焼成工程と、型枠内に複数のハニカム焼成体を固定する固定工程と、型枠とハニカム焼成体との隙間及びハニカム焼成体間の隙間にシール材ペーストを充填する充填工程と、シール材ペーストを乾燥固化させて接着材層及びコート層を形成する乾燥工程とを備え、型枠、型枠の内面、又は、型枠の内面側に配置された部材には、空気透過性を有する通気部が設けられており、乾燥工程では、シール材ペーストを通気部に接触させて上記シール材ペーストの乾燥固化を行う。
【0085】
このようなハニカム構造体の製造方法であると、乾燥工程において、シール材ペーストに含まれる水分は、水蒸気となってハニカム焼成体に形成された気孔を通って外部へ排出されるだけでなく、型枠の内面側に設けられた部材の側へと移動する。このようにシール材ペーストに含まれる水分は、型枠の内面側に設けられた部材の側及びハニカム焼成体の側へ向かって移動することから、シール材ペーストに含まれる無機繊維及び無機粒子のマイグレーションの発生を抑制できる。これにより、コート層全体の強度が均一で、しかもコート層の表面強度にも優れたハニカム構造体を容易に製造することができる。
【0086】
(2)また、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、型枠自体には空気透過性はないが、型枠の内面側に配置された部材が紙部材からなるため、この紙部材によって空気透過性を付与できる。
【0087】
(3)また、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における固定工程では、ハニカム焼成体同士を一定の間隔で保持する間隔保持部材を更に用いて複数のハニカム焼成体を固定する。
【0088】
このような固定を行うと、位置決めしたハニカム焼成体の間の空間に充填工程において接着材ペーストを注入するため、接着材ペーストの厚みは、ハニカム焼成体の間の空間の幅と略同一になる。そのため、接着材ペーストの厚みばらつきを小さくすることができ、寸法精度の高いハニカム構造体を製造することができる。
また、接着材ペーストの充填工程前にハニカム焼成体を所定の位置に位置決めしているため、一つのハニカム焼成体の位置がずれた場合であっても他のハニカム焼成体の位置はそのずれの影響を受けることがない。そのため、ハニカム構造体全体としても寸法精度の高いハニカム構造体を製造することができる。
【0089】
(4)また、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にコート層が設けられたハニカム構造体であって、接着材層及びコート層は、無機繊維及び無機粒子を含み、接着材層とコート層とは、両者を区分けする境界面が存在しないように一体的に形成されており、無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とは、それぞれ、コート層の表面側とコート層のセラミックブロック側とで、略同一である。
【0090】
このような構成を有するハニカム構造体は、コート層に含まれる無機繊維及び無機粒子が、表面側とセラミックブロック側においてほぼ均一に分散しているため、コート層の全体にわたって均一な強度が得られる。また、コート層の表面には、無機繊維及び無機粒子の分散ムラによる凹凸が生じていないため、表面強度が高く、粉っぽさのないハニカム構造体となる。
なお、コート層に含まれる無機繊維及び無機粒子の両方についてハニカム焼成体側への偏りが抑制されている例に限らず、コート層に無機繊維又は無機粒子のいずれか一方のみが含まれる場合においても、無機繊維又は無機粒子のハニカム焼成体側への偏りを抑制することによって、上記したコート層における強度の均一化及び表面平滑性の向上を図ることができる。
【0091】
以下に、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。実施例1及び比較例1では、図1に示した円柱形状のハニカム構造体を製造し、得られたハニカム構造体について、以下の手順によりマイグレーションの有無、コート層の表面における粉ふきの有無を評価した。
コート層におけるマイグレーションの有無は、作製したハニカム構造体を長手方向に垂直な方向に切断したサンプルを作製し、コート層の表面側及びハニカム焼成体側の状態を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することにより確認した。
また、コート層の表面における粉ふきの有無は、コート層の表面を目視にて観察するとともに、コート層の表面を指で触れて、粉の付着の有無を目視にて観察した。
【0092】
(実施例1)
(ハニカム成形体の作製)
平均粒子径が22μmである炭化ケイ素の粗粉末52.8重量%と、平均粒子径が0.5μmである炭化ケイ素の微粉末22.6重量%とを混合した。得られた混合物に対して、アクリル樹脂2.1重量%、有機バインダ(メチルセルロース)4.6重量%、潤滑剤(日油社製 ユニルーブ)2.8重量%、グリセリン1.3重量%、及び、水13.8重量%を加えて混練して混合組成物を得た。この混合組成物を用いて押出成形を行い、図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)に示したハニカム焼成体111、112、113と同じ形状であって、セルの目封じをしていない、生のハニカム成形体をそれぞれ作製した。
【0093】
(ハニカム焼成体の作製)
マイクロ波乾燥機を用いて生のハニカム成形体を乾燥させ、ハニカム成形体の乾燥体とした。このハニカム成形体の乾燥体に、上記混合組成物と同様の組成のペーストを所定のセルに目封じをした。そして、再びマイクロ波乾燥機を用いて乾燥処理を行った。
【0094】
乾燥したハニカム成形体を400℃で脱脂し、常圧のアルゴン雰囲気下で、2200℃、3時間の条件で焼成処理を行うことにより、図2(a)、図2(b)、及び、図2(c)に示す形状のハニカム焼成体を作製した。得られたハニカム焼成体は、気孔率が45%、平均気孔径が15μm、セルの数(セル密度)が300個/inch2、セル壁の厚さが0.25mm(10mil)であり、炭化ケイ素焼結体からなるハニカム焼成体であった。
【0095】
(ハニカム焼成体の組み上げと固定)
実施例1では、型枠として、図4に示す形状であって、ステンレスの緻密体からなる型枠を用いた。型枠の内面側には、紙部材が配置された。紙部材は、両面テープにて型枠の内面に取り付けた。
ステンレスの緻密体からなる型枠は、外径158mm×内径142.8mm×厚さ7.6mmである。紙部材としては、シリコン加工が施されたグラシン紙を用いた。この紙部材は、グラシン紙の表面に、シリコンを含む剥離層が形成された紙であり、6.0cc/cm2/secの空気透過性を有し、厚みが0.075mmである。
【0096】
そして、型枠の内部に、図4に示したように、16個のハニカム焼成体をスペーサを介して円柱形状に組み上げた。組み上げた16個のハニカム焼成体は、長手方向に平行で、かつ、両端面が同じ平面を構成するように整列させた。組み上げたハニカム焼成体と型枠の内面との間隔は、1.0mmであり、組み上げたハニカム焼成体と紙部材との間隔(図4中のd3)は、0.925mmであった。
【0097】
(シール材ペーストの充填)
図5(a)及び図5(b)に示すシール材ペーストの供給装置を型枠に装着して、充填装置のペースト室にシール材ペーストを投入した。そして、図6(a)及び図6(b)に示したように、型枠とハニカム焼成体との隙間及びハニカム焼成体間の隙間にシール材ペーストを充填した。
シール材ペーストには、平均繊維長が20μmのアルミナ繊維30重量%、平均粒子径0.6μmの炭化ケイ素粒子21重量%、シリカゾル(固形分30重量%)15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び、水28.4重量%を含む耐熱性のシール材ペーストを用いた。
【0098】
(シール材ペーストの乾燥)
次いで、シール材ペーストが充填された型枠を120℃で加熱処理して、シール材ペーストを乾燥した。シール材ペーストが固化した後、型枠を分離した。これにより、円柱形状のハニカム構造体(図1参照)が得られた。
【0099】
得られたハニカム構造体について、コート層の表面を目視にて観察し、また、指で触れて確認したところ、コート層の表面における粉ふきは観察されなかった。更に、コート層をSEMにより観察したところ、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機粒子の存在割合とが、略同一であり、且つ、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機繊維の存在割合とが、略同一であり、コート層内のマイグレーションの発生は見られなかった。
【0100】
(比較例1)
比較例1では、型枠の内面側に紙部材を配置しなかった。全体がステンレスの緻密体からなる型枠を用いた。ただし、離型性が良くなるように、型枠の内面にフッ素樹脂加工が施されているものを用いた。そしてそれ以外は、上記実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。
得られたハニカム構造体のコート層を観察したところ、コート層の表面側における無機粒子の存在割合は、コート層のセラミックブロック側における無機粒子の存在割合よりも少なく、また、コート層の表面側における無機繊維の存在割合は、コート層のセラミックブロック側における無機繊維の存在割合よりも少なく、マイグレーションが生じていた。また、コート層の表面には粉ふきが生じていた。この理由について、図8(a)及び図8(b)を用いて以下に説明する。なお、図7(a)及び図7(b)と同一の構成をなすものについては、同一の符号を付けて説明を省略する。
【0101】
図8(a)は、比較例1の乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。図8(b)は、比較例1の乾燥工程(S5)において型枠の内面と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。図8(b)において、矢印R1及び矢印R2は、シール材ペースト600aに含まれる水分の移動方向を示す。
【0102】
本比較例1では、全体がステンレスの緻密体にて形成された型枠800を用いており、型枠800の内面側に紙部材が配置されていないので、型枠800の全体及び型枠800の内面側が空気透過性のない構成となっている。
乾燥工程(S5)において、ハニカム焼成体110同士の隙間210の間に充填されたシール材ペースト600bに含まれる水分は、上記本発明の第一実施形態と同様にハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される(矢印P方向)。
しかしながら、型枠800の内面とハニカム焼成体110との隙間に充填されたシール材ペースト600aに含まれる水分は、以下のように移動する。図8(b)に示したように、ハニカム焼成体110の側へと移動した水蒸気710aは、矢印R1で示すようにハニカム焼成体110を通って外部へ放出される。一方で、型枠800の側へ移動しようとした水蒸気710bは、矢印R2で示すように、型枠800を通過できないため、ハニカム焼成体110の側へと移動する。したがって、シール材ペースト600aに含まれる水分は、全体がハニカム焼成体110の側へと移動する。そして、これに伴って無機繊維720及び無機粒子730がハニカム焼成体110の側へと移動し、シール材ペースト600a中における無機繊維720及び無機粒子730に偏りが生じるため、得られたコート層内にマイグレーションが発生する。
【0103】
以上の結果から、シール材ペーストの乾燥時において、シール材ペーストと当接する型枠の内面側に通気部を含む部材を設けることで、シール材ペースト中の水分をハニカム焼成体の側だけでなく通気部からも外部へ放出することができ、これにより、マイグレーションの発生を抑え、表面強度にも優れたハニカム構造体を得られることが明らかとなった。
【0104】
(第二実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第二実施形態について説明する。
本実施形態では、上記本発明の第一実施形態において通気部を含む部材を構成する紙に代えて、通気部を含む部材として不織布を配置した例を挙げて説明する。
なお、本実施形態で製造するハニカム構造体は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。また、上記本発明の第一実施形態と同一の構成をなすものについては同一の符号を付けて説明を省略する。
【0105】
図9(a)は、本発明の第二実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
図9(a)において、上記第一実施形態と同様の構成を有する型枠411の内面側には、通気部を含む部材としての不織布413が配置されている。不織布413は、型枠411の内面側に両面テープで固定されている。
【0106】
不織布413は、寸法安定性に優れ、吸水(吸湿)しても伸び縮みしにくく、しわになりにくい部材である。したがって、得られたコート層の表面には、凹凸が生じにくい。また、不織布413は、大きな気孔径と高い気孔率とを兼ね備えた部材であり、また、閉塞した気孔が少なく連通する開気孔を有するため、高い空気透過性(通気度)が得られることから、本発明に係る通気部を含む部材として好適である。
不織布413の空気透過性は、0.05cc/cm2/sec以上であることが望ましく、0.05cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることがより望ましく、1cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることが更に望ましく、5cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることが特に望ましい。
不織布413の平均気孔径は、0.1μm〜50μmであることが望ましく、0.1μm〜5μmであることがより望ましい。平均気孔径は、気孔が円形の場合は直径を意味し、円形以外の場合は気孔の最大径を意味する。
【0107】
不織布413を構成する繊維材料としては、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、アラミド、ビニロン、又は、レーヨン等が挙げられる。
本実施形態においては、ポリエステル繊維からなるポリエステル繊維不織布が通気部を含む部材として好適に使用できる。
【0108】
図9(b)は、本発明の第二実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
図9(b)において、加熱によりシール材ペースト600a中の水分710が水蒸気となると、その一部の水蒸気710aは、矢印Rで示すように、ハニカム焼成体110の側へと移動して、ハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される。また、一部の水蒸気710bは、矢印Qで示すように、不織布413の側へ移動し、不織布413に保持される、又は、水蒸気を含む空気とともに不織布413の端面から外部へと放出される。
したがって、本発明の第二実施形態においても、シール材ペースト600aに含まれる水分710の移動方向が偏ることがないため、上記本発明の第一実施形態と同様にシール材ペーストの乾燥処理時におけるマイグレーションの発生を抑制できる。
【0109】
本実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)〜(4)を発揮することができる。
【0110】
以下に、本発明の第二実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例2)
本実施例2では、図9(a)に示した型枠において、通気部を含む部材を構成する不織布として、6.0cc/cm2/secの空気透過性を有し、厚さ0.09mm、平均気孔径14.2μm、平均繊維径28μmであるポリエステル繊維100%の湿式不織布(阿波製紙社製、品番PY120−03)を配置した。
組み上げたハニカム焼成体と型枠の内面との間隔は、1.0mmであり、組み上げたハニカム焼成体と不織布との間隔(図9(a)中のd3で示す長さに対応)は、0.91mmであった。
そして、それ以外は実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。
【0111】
得られたハニカム構造体について、コート層の表面を目視にて観察し、また、指で触れて確認したところ、コート層の表面における粉ふきは、観察されなかった。また、コート層をSEMにより観察したところ、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機粒子の存在割合とが、略同一であり、且つ、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機繊維の存在割合とが、略同一であり、コート層内のマイグレーションの発生は見られなかった。
【0112】
(第三実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第三実施形態について説明する。
本実施形態では、空気透過性を有する多孔質金属にて形成された型枠の内面側に、更に通気部を含む部材としての紙を配置した例を挙げて説明する。すなわち、本実施形態では、型枠全体及びその内面側に配置された紙部材の両方が空気透過性を有する。また、型枠の内面側に配置された紙部材は、コート層に含まれる無機粒子及び無機繊維の移動を抑制して、コート層の表面平滑性を高める役割も果たす。
なお、型枠の全体が通気部を含むとは、組み上げたハニカム構造体を保持する型枠の本体部分が空気透過性を有するということであり、例えば、シール材ペーストの供給装置との接続部分等のように、本実施形態の効果を妨げない限りにおいて、空気透過性のない部分があってもよい。
本実施形態で製造するハニカム構造体は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。また、上記各実施形態と同一の構成をなすものについては同一の符号を付けて説明を省略する。
【0113】
図10(a)は、本発明の第三実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
図10(a)において型枠421は、全体が多孔質金属にて形成された多孔質金属型枠である。
多孔質金属としては、例えば発泡金属又は金属不織布等が挙げられる。ここでは、発泡金属にて形成された型枠を例に挙げて説明する。なお、金属不織布は、複数枚を積層して、スポット溶接することで型枠形状とすることができるとともに、型枠としての強度を有することができる。
多孔質金属の孔径は、50μm〜600μmであることが望ましく、300μm〜600μmであることがより望ましい。多孔質金属は、このような微細な孔(連続した孔)を有し、その気孔率は、80%〜97%が望ましく、94%〜97%であることがより望ましい。
多孔質金属の具体的な材質としては、銅、ニッケル、ステンレス、又は、これらの金属の少なくとも一種を用いてなる合金が挙げられる。
型枠421は、上記のように微細な孔を有するため、型枠421の内面421a側を含めて型枠421の全体が空気透過性を有する。また、このような構成を有する型枠421は、多孔質金属にて形成されているため、ハニカム焼成体を固定するために充分な強度を有する。したがって、本発明の第三実施形態に係る型枠421は、空気透過性と強度とを兼ね備えたものとなる。
【0114】
型枠421の内面側には、紙412が配置されている。紙412は、上記した本発明の第一実施形態と同様のものが適用でき、例えば、両面テープにて、型枠421の内面421aに貼り付けられる。
【0115】
図10(b)は、本発明の第三実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。図11(a)は、本発明の第三実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
【0116】
図10(b)、図11(a)に示すように、加熱によりシール材ペースト600a中の水分710が水蒸気となると、その一部の水蒸気710aは、矢印Rで示すように、ハニカム焼成体110の側へと移動して、矢印Pで示すように、ハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される。また、一部の水蒸気710bは、紙412及び型枠421を通って、矢印Qで示すように外部へ放出される。また、紙412の側へ移動した一部の水蒸気710bは、矢印Sで示すように紙412の端面から外部へ放出される。
したがって、本発明の第三実施形態に係る型枠421を用いても、シール材ペースト600aに含まれる水分710の移動方向が偏ることがないため、上記本発明の第一実施形態と同様にシール材ペーストの乾燥処理時におけるマイグレーションの発生を抑制できる。
【0117】
本発明の第三実施形態においては、多孔質金属にて形成された型枠421がハニカム焼成体を固定するための型枠としての強度を有する一方で、空気透過性を有する通気部を含む。したがって、型枠421のみであっても、上記した本発明の第一実施形態及び第二実施形態と同様にコート層におけるマイグレーションの発生を抑制できる。
しかしながら、多孔質金属の孔径は、通常は、コート層に含まれる無機粒子の平均粒子径及び無機繊維の平均繊維径よりもかなり大きくなる。したがって、上記したシール材ペーストの乾燥時に、コート層に含まれる水分の移動によって無機粒子及び無機繊維がコート層の表面側に移動した際に、コート層の表面に若干の凹凸が生じる。
ここで、本実施形態では、多孔質金属からなる型枠の内面側に、多孔質金属の孔径よりも比較的小さな平均気孔径を有する通気部を含む紙部材を配置している。これにより、シール材ペーストの乾燥時において、紙412は、その気孔径よりも小さい空気(水蒸気)は透過させて型枠の側へと移動させるが、無機粒子及び無機繊維は透過させにくくしてその移動を抑制することができる。
したがって、本実施形態においては、無機粒子及び/又は無機繊維による表面凹凸が解消され、表面平滑性に優れたコート層を実現できる。
更に、紙412は、剥離性も良いものであるため、離型した際に、容易にハニカム構造体から剥離することができ、ハニカム構造体の離型性を高めることもできる。
【0118】
本実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)、(3)、及び(4)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
【0119】
(5)本発明の第三実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、多孔質金属からなる型枠と、型枠の内面側に配置された紙部材とが、ともに通気部を有するため、多孔質金属型枠及び紙部材によって空気透過性を付与できる。
【0120】
以下に、本発明の第三実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例3)
本実施例3では、型枠として、図10(a)に示す形状であって、全体が多孔質金属製の型枠を用いた。多孔質金属は、ステンレス製の発泡金属(三菱マテリアル社製、標準気孔率95%〜97%)である。型枠は、外形158mm×内径142.8mm×厚さ7.6mmであり、6.0cc/cm2/secの空気透過性を有するものである。
型枠の内面側に配置される紙部材は、実施例1と同様のものを用いた。
組み上げたハニカム焼成体と型枠の内面との間隔は、1.0mmであり、組み上げたハニカム焼成体と紙との間隔(図10(a)中のd3で示す長さに対応)は、0.925mmであった。
そして、それ以外の条件については実施例1と同様にして、図1に示した形状のハニカム構造体を作製した。
【0121】
得られたハニカム構造体について、コート層の表面を目視にて観察し、また、指で触れて確認したところ、コート層の表面における粉ふきは、観察されなかった。また、コート層をSEMにより観察したところ、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機粒子の存在割合とが、略同一であり、且つ、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機繊維の存在割合とが、略同一であり、コート層内のマイグレーションの発生は見られなかった。
【0122】
(第四実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第四実施形態について説明する。
本実施形態は、上記本発明の第三実施形態における紙部材を不織布部材に変更した構成である。それ以外の構成については、上記本発明の第三実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。また、上記各実施形態と同一の構成をなすものについては同一の符号を付けて説明を省略する。
不織布部材は、上記した本発明の第二実施形態と同様である。不織布部材は、両面テープにて、型枠の内面側に貼り付けられている。
【0123】
本発明の第四実施形態においては、多孔質金属にて形成された型枠がハニカム焼成体を固定するための型枠としての強度を有する一方で、空気透過性を有する通気部を含む。すなわち、本実施形態では、型枠と不織布部材とがともに通気部を含む。
また、型枠の内面側に配置された不織布部材は、通気部を含むとともに、離型性を向上させるという効果を奏する。更に、不織布部材に含まれる通気部は、多孔質金属の孔径よりも比較的小さな平均気孔径を有する。これにより、シール材ペーストの乾燥時において、不織布部材は、その気孔径よりも小さい空気(水蒸気)は透過させて型枠の側へと移動させるが、無機粒子及び無機繊維は透過させにくくしてその移動を抑制することができる。
したがって、本実施形態においては、無機粒子及び/又は無機繊維による表面凹凸が解消され、表面平滑性に優れたコート層を実現できる。
更に、不織布部材は、剥離性も良いものであるため、離型した際に、容易にハニカム構造体から剥離することができ、ハニカム構造体の離型性を高めることもできる。
【0124】
図11(b)は、本発明の第四実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
図11(b)において、加熱によりシール材ペースト600a中の水分710が水蒸気となると、その一部の水蒸気710aは、矢印Rで示すように、ハニカム焼成体110の側へと移動して、ハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される。また、一部の水蒸気710bは、不織布432及び型枠421を通って、矢印Q方向へと移動して外部へと放出される。また、不織布432の側へ移動した一部の水蒸気710bは、上記本発明の第三実施形態に係る紙部材の端面から放出される水蒸気と同様に、不織布432の端面から外部へ放出される。
したがって、本発明の第四実施形態においても、シール材ペースト600aに含まれる水分710の移動方向が偏ることがないため、上記本発明の第三実施形態と同様にシール材ペーストの乾燥処理時におけるマイグレーションの発生を抑制できる。
【0125】
本実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)、(3)、及び(4)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
【0126】
(6)本発明の第四実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、多孔質金属からなる型枠と、型枠の内面側に配置された不織布部材とが、ともに通気部を有するため、多孔質金属型枠及び不織布部材によって空気透過性を付与できる。
【0127】
以下に、本発明の第四実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例4)
本実施例4では、型枠として、実施例3と同様の多孔質金属型枠を用いた。
型枠の内面側に配置される不織布部材は、実施例2と同様のものを用いた。
組み上げたハニカム焼成体と型枠の内面との間隔は、1.0mmであり、組み上げたハニカム焼成体と不織布部材との間隔(図10(a)中のd3で示す長さに対応)は、0.91mmであった。
そして、それ以外は実施例1と同様にして図1に示した形状のハニカム構造体を作製した。
【0128】
得られたハニカム構造体について、コート層の表面を目視にて観察し、また、指で触れて確認したところ、コート層の表面における粉ふきは、観察されなかった。また、コート層をSEMにより観察したところ、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機粒子の存在割合とが、略同一であり、且つ、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機繊維の存在割合とが、略同一であり、コート層内のマイグレーションの発生は見られなかった。
【0129】
(第五実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第五実施形態について説明する。
本実施形態では、上記本発明の第三実施形態において紙部材をメッシュ部材に変更した構成である。それ以外の構成については、上記本発明の第三実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。また、上記各実施形態と同一の構成をなすものについては同一の符号を付けて説明を省略する。
【0130】
通気部を含む部材としてのメッシュ部材としては、金属メッシュ部材又は樹脂メッシュ部材等が挙げられる。
金属メッシュ部材としては、ステンレス、ニッケル、チタン、銅、亜鉛等のメッシュを含む部材が挙げられる。これらの中でも、サビにくく、入手しやすいことから、ステンレスメッシュ部材が望ましい。
樹脂メッシュ部材としては、PA(ポリアミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、フッ素系樹脂等のメッシュを含む部材が挙げられる。本実施形態においては、コート層の乾燥温度よりも高い耐熱性を備えた樹脂メッシュ部材を用いることが望ましい。
【0131】
メッシュ部材の空気透過性は、0.05cc/cm2/sec以上であることが望ましく、0.05cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることがより望ましく、1cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることが更に望ましく、5cc/cm2/sec〜100cc/cm2/secの範囲であることが特に望ましい。
メッシュ部材としては、目開きが小さいものが望ましく、例えば、325メッシュ〜795メッシュのものが使用できる。一例として、ステンレスメッシュ部材の場合には、綾織又は平織のいずれであっても良く、線径0.015mm〜0.035mm、目開き0.016mm〜0.062mm、開口率24.9%〜60.0%のものが好適に使用できる。
なお、本明細書においてメッシュ部材には、パンチングメタル部材も含まれることとする。
パンチングメタル部材は、金属板に一定の配列で多数の孔を開けた部材であり、上記した空気透過性を有するものであれば、孔の形状、ピッチ、開口径等は特に限定されるものではない。
【0132】
以下、メッシュ部材としてステンレスメッシュ部材を用いる場合を例に挙げて説明する。
ステンレスメッシュ部材は、型枠の内面側に配置した際に型枠の内面と接するように、その厚みを考慮して型枠の内径よりもやや小さい内径の略円筒形状に形成されている。このような形状のステンレスメッシュ部材は、自立性を有するため、型枠の内面に配置するだけで通気部を構成することができる。
【0133】
本発明の第五実施形態においては、多孔質金属にて形成された型枠がハニカム焼成体を固定するための型枠としての強度を有する一方で、空気透過性を有する通気部を含む。すなわち、本実施形態では、型枠とステンレスメッシュ部材とがともに通気部を含む。
また、型枠の内面側に配置されたステンレスメッシュ部材は、通気部を含むとともに、離型性を向上させるという効果を奏する。更に、ステンレスメッシュ部材の目開きが多孔質金属の孔径よりも比較的小さいものであると、シール材ペーストの乾燥時において、空気(水蒸気)は透過させて型枠の側へと移動させるが、無機粒子及び無機繊維は透過させにくくしてその移動を抑制することができる。
したがって、本実施形態においては、無機粒子及び/又は無機繊維による表面凹凸が解消され、表面平滑性に優れたコート層を実現できる。
【0134】
図11(c)は、本発明の第五実施形態において、型枠の内面側と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
図11(c)において、加熱によりシール材ペースト600a中の水分710が水蒸気となると、その一部の水蒸気710aは、矢印Rで示すように、ハニカム焼成体110の側へと移動して、ハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される。また、一部の水蒸気710bは、ステンレスメッシュ442及び型枠421を通って、矢印Q方向へと移動して外部へと放出される。
したがって、本発明の第五実施形態に係る型枠421とステンレスメッシュ442を用いても、シール材ペースト600aに含まれる水分710の移動方向が偏ることがないため、上記本発明の第一実施形態と同様にシール材ペーストの乾燥処理時におけるマイグレーションの発生を抑制できる。
【0135】
本実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)、(3)、及び(4)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
【0136】
(7)本発明の第五実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、多孔質金属からなる型枠と、型枠の内面側に配置されたメッシュ部材とが、ともに通気部を有するため、多孔質金属型枠及びメッシュ部材によって空気透過性を付与できる。
【0137】
以下に、本発明の第五実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例5)
本実施例では、型枠として、実施例3と同様の多孔質金属型枠を用いた。
型枠の内面側には、ステンレスメッシュ部材を配置した。ステンレスメッシュ部材は、795メッシュ、線径0.016mm、目開き0.016mm、開口率24.9%、空気透過性0.05cc/cm2/sec以上である。
組み上げたハニカム焼成体と型枠の内面との間隔は、1.0mmであり、組み上げたハニカム焼成体とステンレスメッシュ部材との間隔(図9(a)中のd3で示す長さに対応)は、0.984mmであった。
そして、それ以外は実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。
【0138】
得られたハニカム構造体について、コート層の表面を目視にて観察し、また、指で触れて確認したところ、コート層の表面における粉ふきは、観察されなかった。また、コート層をSEMにより観察したところ、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機粒子の存在割合とが、略同一であり、且つ、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機繊維の存在割合とが、略同一であり、コート層内のマイグレーションの発生は見られなかった。
【0139】
(第六実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第六実施形態について説明する。
上記本発明の第三〜第五実施形態では、多孔質金属からなる型枠と、その内面側に配置された紙部材、不織布部材、又は、ステンレスメッシュ部材とが、通気部を有していたが、本実施形態では、多孔質金属からなる型枠のみが通気部を有する例を挙げて説明する。それ以外の構成については、上記本発明の第三〜第五実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。また、上記各実施形態と同一の構成をなすものについては同一の符号を付けて説明を省略する。
【0140】
図12は、本発明の第六実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
図12において型枠421は、全体が多孔質金属にて形成された多孔質金属型枠である。
【0141】
本発明の第六実施形態においては、多孔質金属にて形成された型枠421がハニカム焼成体を固定するための型枠としての強度を有する一方で、空気透過性を有する通気部を含む。
【0142】
図13(a)は、本発明の第六実施形態において、乾燥工程(S5)における型枠の状態を模式的に示した斜視図である。図13(b)は、本発明の第六実施形態において、型枠の内面と接するシール材ペーストに含まれる水分の移動を模式的に示すためのハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う一部の断面図である。
図13(a)、図13(b)に示すように、加熱によりシール材ペースト600a中の水分710が水蒸気となると、その一部の水蒸気710aは、矢印Rで示すように、ハニカム焼成体110の側へと移動して、ハニカム焼成体110の端面から外部へと放出される。また、一部の水蒸気710bは、型枠421を通って矢印Q方向へと移動して外部へと放出される。
したがって、本発明の第六実施形態においても、シール材ペースト600aに含まれる水分710の移動方向が偏ることがないため、上記本発明の第一実施形態と同様にシール材ペーストの乾燥処理時におけるマイグレーションの発生を抑制できる。
【0143】
本実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)、(3)、及び(4)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
【0144】
(8)本発明の第六実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、多孔質金属型枠によって空気透過性を付与できる。
【0145】
以下に、本発明の第六実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例6)
本実施例6では、型枠として、内径が異なる以外は実施例3と同様の構成を有する発泡金属製の型枠を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして図1に示した形状のハニカム構造体を作製した。組み上げたハニカム焼成体と型枠の間隔(図12中のd3に対応)は、0.925mmであった。
【0146】
得られたハニカム構造体について、コート層の表面を目視にて観察し、また、指で触れて確認したところ、コート層の表面における粉ふきは、観察されなかった。また、コート層をSEMにより観察したところ、コート層の表面側における無機粒子の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機粒子の存在割合とが、略同一であり、且つ、コート層の表面側における無機繊維の存在割合と、コート層のハニカム焼成体側における無機繊維の存在割合とが、略同一であり、コート層内のマイグレーションの発生は見られなかった。
【0147】
(第七実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第七実施形態について説明する。
本実施形態では、固定工程(S3)において、ハニカム焼成体の両端面を保持することによりハニカム焼成体を固定する。
本実施形態で製造するハニカム構造体は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。また、上記本発明の第一実施形態と同一の構成をなすものについては同一の符号を付けて説明を省略する。
【0148】
上記本発明の第一実施形態では、ハニカム焼成体110を円柱形状に組み上げるに際し、図4に示したようにスペーサ405を用いてハニカム焼成体110を固定したが、本実施形態では、ハニカム焼成体110の両端面を固定ピンを用いて固定する。
【0149】
図14(a)、図14(b)、図14(c)、図14(d)、及び、図14(e)は、本発明の第七実施形態に係るハニカム焼成体の固定工程を説明する工程図であり、型枠内におけるハニカム焼成体の配置について、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う状態を模式的に示した断面図である。型枠は、上記本発明の第一実施形態に係る型枠411であって、その内面側に紙412が配置されている。
【0150】
図14(a)において、内面411a側に紙412が配置された型枠411の内側に、2個のハニカム焼成体111と2個のハニカム焼成体112とを、ハニカム焼成体112がハニカム焼成体111で挟まれるように配置する。ハニカム焼成体111とハニカム焼成体112との間、ハニカム焼成体111、112と型枠411の内面411aとの間は、後工程においてシール材ペーストを充填できるように、一定の間隔を空けておく。
ハニカム焼成体111、112の搬送及び配置は、例えば、ロボットアーム、又は、一度に4個のハニカム焼成体110を載置できる載置面を備えた搬送部材等を用いて行われる。
【0151】
次いで、図14(b)に示したように、型枠411内に配置されたハニカム焼成体111、112の両端面を保持部材としての固定ピン700で固定する。固定ピン700は、ハニカム焼成体111、112の端面が同一平面上に揃うように、ハニカム焼成体111、112を保持する。
【0152】
次いで、図14(c)に示したように、型枠411の内面側に、2個のハニカム焼成体112と2個のハニカム焼成体113とを、ハニカム焼成体113がハニカム焼成体112で挟まれるように配置する。そして、上記と同様に、各ハニカム焼成体112、113の両端面を固定ピン700で固定する。
【0153】
次いで、図14(d)に示したように、2個のハニカム焼成体112と2個のハニカム焼成体113を、上記と同様に配置して固定ピン700で固定する。更に、図14(e)に示したように、2個のハニカム焼成体111と2個のハニカム焼成体112を、上記と同様に配置して固定ピン700で固定する。
【0154】
このようにして、ハニカム構造体を構成する16個のハニカム焼成体111、112、113を、長さ方向に平行で、かつ、両端面が同じ平面を構成するように配置することができる。
【0155】
上記説明では、複数のハニカム焼成体110を所定の位置に位置決めし、その両端面を保持部材としての固定ピン700で挟んで保持する方法等について説明したが、組み上げられたハニカム焼成体111の保持の方法は、保持部材で挟んで保持する方法に限定されるものではなく、ハニカム焼成体110の両端面を保持部材で引っ掛けて保持する方法も適用できる。
また、上記説明では、型枠及び通気部を含む部材として、本発明の第一実施形態に係る型枠及び通気部を含む部材を例に挙げて説明したが、他の実施形態に係る型枠及び/又は通気部を含む部材についても本実施形態は適用できる。
【0156】
本発明の第七実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)〜(4)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
(9)本発明の第七実施形態に係るハニカム構造体の製造方法においては、固定工程において、ハニカム焼成体の両端面を保持することによりハニカム焼成体を固定するため、ハニカム焼成体を所定の形状に容易に保持できる。
【0157】
なお、上記した本発明の第七実施形態においては、それぞれのハニカム焼成体を保持することが可能なように構成された保持部材を使用していたが、保持部材は、複数のハニカム焼成体の端面に当接して、上記複数のハニカム焼成体を一括して保持することが可能なように構成されていてもよい。
【0158】
(第八実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第八実施形態について説明する。
上記本発明の第一〜第六の実施形態では、通気部の具体例を挙げて各実施形態を説明したが、これらの他、複数の凹部及び/又は凸部が成形された金属部材によって形成される通気部も、本発明における通気部として利用できる。本実施形態では、内面に複数の凹部が形成された型枠の内面が通気部を有する場合を例に挙げて説明する。
本実施形態で製造するハニカム構造体は、本発明の第一実施形態に係るハニカム構造体と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。また、上記本発明の第一実施形態と同一の構成をなすものについては同一の符号を付けて説明を省略する。
【0159】
図15は、本発明の第八実施形態において、型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
図15において、緻密質金属からなる型枠461の内面461aには、複数の凹部462が形成されている。凹部462の深さや幅は特に限定されるものではなく、所望の空気透過性に応じて適宜設定できる。型枠461を構成する金属材料としては、銅、ニッケル、ステンレス、又は、これらの金属の少なくとも一種を用いてなる合金等が適用できる。
型枠461は、空気透過性のない緻密質金属からなるが、内面に複数の凹部462が形成されていることで、シール材ペーストを乾燥する際には、この凹部462に水蒸気を逃がすことができる。すなわち、複数の凹部462は、通気部を形成することができる。
上記のように構成された型枠460を用いても、シール材ペーストに含まれる水分の移動方向が偏ることがないため、上記本発明の第一〜第六実施形態と同様にシール材ペーストの乾燥処理時におけるマイグレーションの発生を抑制できる。
【0160】
なお、上記説明では型枠の内面に凹部が形成された例を挙げて説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、型枠の内面に凹部に代えて凸部が形成されていてもよい。また、型枠の内面に凹部と凸部の両方が形成されていてもよい。このような構成によっても、コート層を形成するためのシール材ペーストと型枠の内面との間に凹部や凸部によって空間が生じるため、この空間を通じてシール材ペースト中に含まれる水分の移動に寄与できる。
【0161】
本発明の第八実施形態に係る型枠は、内面側に凹部及び/又は凸部が形成されているため、得られたハニカム構造体は、コート層の表面に凹凸が形成されやすくなる。
ハニカム構造体を排ガス浄化装置に用いるときには、例えば、コート層の外周面に保持シール材(無機繊維からなるマット)を巻き付けて金属ケースに挿入して使用する。このとき、上記のようにコート層の表面に凹凸が形成されていると、凹部に保持シール材がはまり込む又は凸部に保持シール材が嵌まるため、使用時にハニカム構造体が金属ケースから抜けにくくなるようにすることができる。
また、コート層の表面に凸部が形成された場合には、研磨処理等を行ってコート層の表面を平坦化してもよい。
【0162】
本発明の第八実施形態においては、上記のように内面に凹凸が形成された型枠の内面側に、本発明の上記第一〜第五実施形態と同様に、紙部材、不織布部材、又は、メッシュ部材等を配置してもよい。
【0163】
本実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)〜(4)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
(10)本発明の第八実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、内面に複数の凹部及び/又は凸部が成形された金属部材によって、通気部が形成されるため、複数の凹部及び/又は凸部によって空気透過性を付与できる。
【0164】
(第九実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第九実施形態について説明する。
上記各実施形態では、組み上げたハニカム焼成体を固定する型枠として、一体的に形成された型枠を用いたが、本発明の第九実施形態においては、2個に分割可能な型枠について説明する。
【0165】
図16は、本発明の第九実施形態において、2個の型枠部材に分割可能な型枠の内部にハニカム焼成体を配置した状態を模式的に示した、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
図16において、型枠470は、一対の型枠部材470a及び型枠部材470bで構成される。
固定工程(S3)では、型枠部材470aの内部にハニカム焼成体を所望の形状に汲み上げる。そして、型枠部材470aに型枠部材470bを組み合わせて、ボルト471及びナット472を用いて両者を固定する。
このような構成を有する型枠470を用いることで、加熱処理等により、シール材ペーストがある程度固まった後に、型枠部材470aと型枠部材470bを分割することができるため、ハニカム構造体100を容易に取り出すことができる。そして、取り出したハニカム構造体を他の場所に移動させて、所定の温度で更にシール材ペーストの乾燥を行うことができる。
【0166】
なお、上記説明では、2個に分割できる型枠を例に挙げて説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、型枠は、組み上げたハニカム焼成体を内部に保持できるものであれば特に限定されるものではなく、必要に応じて複数の部材に分割できる型枠等、各種のものが適用できる。また、型枠の分割の仕方も特に限定されるものではなく、ハニカム構造体の長手方向に垂直な方向に複数分割されていてもよいし、長手方向に平行な方向に複数分割されていてもよい。また、型枠を構成する材質は、緻密質金属であってもよいし、多孔質金属であってもよい。
【0167】
本実施形態では本発明の第一実施形態において説明した効果(1)〜(4)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
(11)本発明の第九実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、型枠が、複数の部材に分離可能であるため、この型枠を分離して、シール材ペーストが完全に硬化する前に、作製したハニカム構造体を型枠から取り出すことができるため、加熱したハニカム構造体の冷却を短時間で行うことができる。これにより、シール材ペーストの硬化時間を短縮でき、ハニカム構造体の生産性を高めることができる。
【0168】
(その他の実施形態)
本発明において型枠は、上記した緻密質金属からなる型枠又は多孔質金属からなる金属型枠のいずれにおいても、内面上に、フッ素樹脂等のコーティング層が形成されていることが望ましい。このようなコーティング層が形成されていると、ハニカム構造体の離型性を高めることができる。また、コーティング層は、剥離性が良いため、型枠の内面側に更に通気部を含む部材が設けられている場合には、目詰まり等によって通気部を含む部材の交換が必要な場合に、容易に通気部を含む部材を剥離することができ、作業性を高めることができる。
また、コーティング層は、多孔質金属の気孔を全部埋めないように、部分的に形成されていてもよい。
【0169】
また、本発明において型枠は、上記した緻密質金属からなる型枠又は多孔質金属からなる金属型枠のみに限定されるものではなく、外面側が緻密質金属にて形成された緻密質金属層からなり、内面側が多孔質金属にて形成された多孔質金属層からなり、両者が一体的に構成された型枠等も適用できる。緻密質金属層と多孔質金属層との割合は、型枠としての強度と通気部を含む多孔質金属層の通気度とを勘案して、適宜設定すればよい。
【0170】
また、本発明において通気部を含む部材は、上記各実施形態で説明した通気部を含む部材に限定されるものではなく、各種のものが適用できる。例えば、型枠の内面側に、紙部材、不織布部材、又は、メッシュ部材を配置するだけでなく、型枠の内面側に多孔性樹脂層を形成する、又は、ポーラスカーボン層を形成すること等によっても通気部を含む部材を構成できる。更に、紙部材、不織布部材、メッシュ部材、多孔性樹脂層、又は、ポーラスカーボン層を複数組み合わせて通気部を含む部材を構成することもできる。これらの組み合わせや配置は特に限定されるものではなく、空気透過性、剥離性、気孔径等を考慮して適宜設定すればよい。
【0171】
多孔性樹脂層は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化エチレン、四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、及び、ポリプロピレンから選ばれる少なくとも一種にて形成される。また、多孔性樹脂層の気孔率や孔径等は適宜設定される。
多孔性樹脂層の一例として、平均気孔径が0.3μmであるポリプロピレン製フィルム(住友スリーエム社製、マイクロポーラスフィルム)が挙げられる。このポリプロピレン製フィルムは、ポリプロピレンと有機フィラーで構成された多孔質フィルムであり、空気透過性と防水性とを兼ね備えるものである。また、平均気孔径が0.6μmである四フッ化エチレン樹脂多孔膜(日東電工社製、商品名テミッシュ)が挙げられる。
多孔性樹脂層は、例えば、上記した樹脂を多孔質金属からなる型枠の内面に塗布することで形成できる。この場合、型枠の内面上に多孔性樹脂層が一体的に形成されていることから、多孔質金属からなる型枠と多孔性樹脂層とを合わせて型枠といえる。
【0172】
本発明の製造方法により得られるハニカム構造体の形状は、図1に示した円柱状に限定されるものではなく、楕円柱状、長円柱状、多角柱状等の任意の柱の形状であればよい。
また、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の数は、上記本発明の実施形態のように、16個に限定されるものではなく、16個よりも多くても少なくてもよい。
【0173】
また、上記本発明の各実施形態では、型枠の内部でハニカム焼成体を組み上げる例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数のハニカム焼成体を所定の形に組み上げて、更に、ハニカム焼成体の両端面を保持部材等で保持して固定した状態で、型枠の内部に配置してもよい。
【0174】
本発明のハニカム構造体の製造方法により得られるハニカム焼成体の気孔率は、ハニカムフィルタとして使用する場合は、30%〜70%であることが望ましい。このような気孔率を有することで、ハニカム構造体の強度を維持することができるとともに、排ガスがセル壁を通過する際の抵抗を低く保つことができる。ハニカム焼成体の気孔率が30%未満であると、セル壁が早期に目詰まりを起こすことがあり、一方、ハニカム焼成体の気孔率が70%を超えるとハニカム焼成体の強度が低下して容易に破壊されることがある。
なお、上記ハニカム焼成体の気孔率は、水銀圧入法により測定することができる。
【0175】
上記ハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面におけるセル密度は特に限定されないが、望ましい下限は、31.0個/cm2(200個/in2)、望ましい上限は、93.0個/cm2(600個/in2)、より望ましい下限は、38.8個/cm2(250個/in2)、より望ましい上限は、77.5個/cm2(500個/in2)である。
【0176】
上記ハニカム焼成体の構成材料の主成分は、炭化ケイ素に限定されるわけではなく、他のセラミック原料として、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、金属と窒化物セラミックの複合体、金属と炭化物セラミックの複合体等であってもよい。
また、上述したセラミックに金属ケイ素を配合したケイ素含有セラミック、ケイ素又はケイ酸塩化合物で結合されたセラミック等のセラミック原料も構成材料として挙げられる。上記ハニカム焼成体の構成材料としては、これらの中で、機械的強度に優れる炭化ケイ素又はケイ素含有セラミックが望ましい。
【0177】
また、上記本発明の各実施形態では、いずれか一端のセルがシール材で封止された排ガス浄化用のフィルタとして使用するハニカム構造体の製造方法について説明したが、本発明に係るハニカム構造体はこれに限定されるものではない。ハニカム構造体は、セルの端部がいずれも封止材で封止されていないハニカム構造体であってもよい。このようなハニカム構造体は、セル壁に触媒を担持させる触媒担体として用いることができる。
【符号の説明】
【0178】
100 ハニカム構造体
101 セラミックブロック
102 コート層
103 接着材層
110(111、112、113) ハニカム焼成体
111a(112a、113a) セル
111b(112b、113b) セル壁
210(220) 隙間
411(420、421、431、441、451、460、461) 型枠
411a(420a、421a、431a、441a、460a、461a、470、470a、470b) 型枠の内面
600(600a、600b) シール材ペースト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にコート層が設けられたハニカム構造体の製造方法であって、
外周部にセル壁が形成されたハニカム成形体を押出成形する成形工程と、
前記ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を形成する焼成工程と、
型枠内に複数のハニカム焼成体を固定する固定工程と、
前記型枠とハニカム焼成体との隙間及びハニカム焼成体間の隙間にシール材ペーストを充填する充填工程と、
前記シール材ペーストを乾燥固化させて前記接着材層及び前記コート層を形成する乾燥工程とを備え、
前記シール材ペーストは、無機粒子及び/又は無機繊維を含み、
前記型枠、前記型枠の内面、又は、前記型枠の内面側に配置された部材には、空気透過性を有する通気部が設けられており、
前記乾燥工程では、前記シール材ペーストを前記通気部の少なくとも一部に接触させて該シール材ペーストの乾燥固化を行うことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記型枠は、緻密質金属にて形成された型枠、多孔質金属にて形成された型枠、内面に複数の凹部及び/又は凸部が成形された緻密質金属からなる型枠のいずれかである請求項1記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記型枠の内面側に配置された部材は、紙部材、不織布部材、メッシュ部材、多孔性樹脂層、及び、ポーラスカーボン層から選ばれる少なくとも一種からなる請求項1又は2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記通気部は、0.1μm〜50μmの平均気孔径を有する請求項3記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記型枠又は前記型枠の内面側に配置された部材の空気透過性は、0.05cc/cm2/sec以上である請求項1〜4のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記型枠と前記型枠の内面側に配置された部材とは、通気部を含み、
前記型枠は、多孔質金属からなり、
前記部材は、紙部材又は不織布部材からなる請求項1記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記型枠の内面側に配置された部材は、通気部を含み、
前記部材は、紙部材又は不織布部材からなり、
前記型枠は、緻密質金属からなる請求項1記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
前記紙部材は、シリコン加工が施された紙部材である請求項3、6、7のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
前記シリコン加工が施された部分に設けられた通気部の平均気孔径は、20μm〜50μmである請求項8に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
前記型枠を構成する多孔質金属又は緻密質金属は、銅、ニッケル、ステンレス、又は、これらの金属の少なくとも一種を用いてなる合金である請求項2、6、7のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項11】
前記不織布部材は、ポリエステル繊維を含むポリエステル不織布部材である請求項3、6、7のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項12】
前記多孔性樹脂層は、フッ素樹脂、及び、ポリプロピレンから選ばれる少なくとも一種からなる請求項3記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項13】
前記型枠は、複数の部材に分離可能であって、前記固定工程では、複数の各部材を一体に組み合わせて使用する請求項1〜12のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項14】
前記固定工程では、ハニカム焼成体同士を一定の間隔で保持する間隔保持部材を更に用いて複数の前記ハニカム焼成体を固定する請求項1〜13のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項15】
前記固定工程では、ハニカム焼成体の両端面を保持することによりハニカム焼成体を固定する請求項1〜13のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項16】
前記乾燥工程では、無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とが、それぞれ、前記コート層の表面側と前記コート層のセラミックブロック側とで、略同一になるように、前記シール材ペーストを乾燥固化する請求項1〜15のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項17】
多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にコート層が設けられたハニカム構造体であって、
前記接着材層及び前記コート層は、無機粒子及び/又は無機繊維を含み、
前記接着材層と前記コート層とは一体的に形成されており、両者を区分けする境界面が存在せず、
無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とは、
それぞれ、前記コート層の表面側と前記コート層のセラミックブロック側とで、略同一であることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項1】
多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にコート層が設けられたハニカム構造体の製造方法であって、
外周部にセル壁が形成されたハニカム成形体を押出成形する成形工程と、
前記ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を形成する焼成工程と、
型枠内に複数のハニカム焼成体を固定する固定工程と、
前記型枠とハニカム焼成体との隙間及びハニカム焼成体間の隙間にシール材ペーストを充填する充填工程と、
前記シール材ペーストを乾燥固化させて前記接着材層及び前記コート層を形成する乾燥工程とを備え、
前記シール材ペーストは、無機粒子及び/又は無機繊維を含み、
前記型枠、前記型枠の内面、又は、前記型枠の内面側に配置された部材には、空気透過性を有する通気部が設けられており、
前記乾燥工程では、前記シール材ペーストを前記通気部の少なくとも一部に接触させて該シール材ペーストの乾燥固化を行うことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記型枠は、緻密質金属にて形成された型枠、多孔質金属にて形成された型枠、内面に複数の凹部及び/又は凸部が成形された緻密質金属からなる型枠のいずれかである請求項1記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記型枠の内面側に配置された部材は、紙部材、不織布部材、メッシュ部材、多孔性樹脂層、及び、ポーラスカーボン層から選ばれる少なくとも一種からなる請求項1又は2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記通気部は、0.1μm〜50μmの平均気孔径を有する請求項3記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記型枠又は前記型枠の内面側に配置された部材の空気透過性は、0.05cc/cm2/sec以上である請求項1〜4のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記型枠と前記型枠の内面側に配置された部材とは、通気部を含み、
前記型枠は、多孔質金属からなり、
前記部材は、紙部材又は不織布部材からなる請求項1記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記型枠の内面側に配置された部材は、通気部を含み、
前記部材は、紙部材又は不織布部材からなり、
前記型枠は、緻密質金属からなる請求項1記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
前記紙部材は、シリコン加工が施された紙部材である請求項3、6、7のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
前記シリコン加工が施された部分に設けられた通気部の平均気孔径は、20μm〜50μmである請求項8に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
前記型枠を構成する多孔質金属又は緻密質金属は、銅、ニッケル、ステンレス、又は、これらの金属の少なくとも一種を用いてなる合金である請求項2、6、7のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項11】
前記不織布部材は、ポリエステル繊維を含むポリエステル不織布部材である請求項3、6、7のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項12】
前記多孔性樹脂層は、フッ素樹脂、及び、ポリプロピレンから選ばれる少なくとも一種からなる請求項3記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項13】
前記型枠は、複数の部材に分離可能であって、前記固定工程では、複数の各部材を一体に組み合わせて使用する請求項1〜12のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項14】
前記固定工程では、ハニカム焼成体同士を一定の間隔で保持する間隔保持部材を更に用いて複数の前記ハニカム焼成体を固定する請求項1〜13のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項15】
前記固定工程では、ハニカム焼成体の両端面を保持することによりハニカム焼成体を固定する請求項1〜13のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項16】
前記乾燥工程では、無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とが、それぞれ、前記コート層の表面側と前記コート層のセラミックブロック側とで、略同一になるように、前記シール材ペーストを乾燥固化する請求項1〜15のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項17】
多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体が、接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックの周囲にコート層が設けられたハニカム構造体であって、
前記接着材層及び前記コート層は、無機粒子及び/又は無機繊維を含み、
前記接着材層と前記コート層とは一体的に形成されており、両者を区分けする境界面が存在せず、
無機粒子の存在割合と無機繊維の存在割合とは、
それぞれ、前記コート層の表面側と前記コート層のセラミックブロック側とで、略同一であることを特徴とするハニカム構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−245854(P2011−245854A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97581(P2011−97581)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]