説明

ハニカム構造体

【課題】小断面セルに起因する熱ショックによるクラックや封口不良を防ぐことができるハニカム構造体を提供する。
【解決手段】内燃機関から排出される排ガスを浄化するフィルタに使用される、複数の貫通孔を有するハニカム構造体1であって、筒状に形成された外殻2と、外殻2内面よりも内方に位置する筒状の内隔壁11を備えており、内隔壁11よりも内方では、貫通孔10hを形成する内部セル隔壁12が設けられており、内隔壁12と外殻2との間では、両者の間に貫通孔13hを形成する外部セル隔壁13が設けられており、内隔壁11近傍には、内隔壁11と内部セル隔壁12によって囲まれた貫通孔10hを形成し得る境界部分21と、境界部分21と内隔壁11および/または内部セル隔壁12を共有する貫通孔10h,13hを形成し得る連結部分22と、を結合して形成された連結貫通孔20が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。さらに詳しくは、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中のすす等の微粒子を捕集することにより、排ガスの浄化を達成するフィルタに使用されるハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、内燃機関であるディーゼルエンジンでは、排ガスに含まれるすすを捕集するフィルタ(Diesel Particulate Filter:DPF)として、筒状に形成されたセラミックス製のハニカム構造体が一般的に使用されている。かかるDPFでは、ハニカム構造体の両軸端部の開口部を交互に封口することにより、すすを捕集する機能をハニカム構造体に付与している(特許文献1)。
【0003】
具体的には、図2(B)に示すように、セラミックス製のハニカム構造体100は、ハニカムを形成する壁面101を気体が通過できるように形成されており、ハニカム構造体100の各貫通孔105(以下、セルという)はいずれか一方の軸端の開口が封口材106によって封口されている。そして、ハニカム構造体100における同じ軸端では、一のセルが封口されている場合には、このセル105aと隣接する他のセル105bは開口状態となるように、各セルが形成されている。つまり、ハニカム構造体100を軸端側から見ると、封口されているセル105aが、千鳥配置となるように配設されているのである(図2(A)参照)。
【0004】
かかる構成となっているので、以下のようにDPFが機能して排ガスが清浄化される。
まず、清浄化したい排ガスは、DPFに対してその軸方向の一端(図2(B)では左端)から供給される。すると、排ガスは、封口されていないセル105b(流入側セル105b)からDPFに流入する。これらの流入側セル105bの他端は封口されているため、壁面101を通って、排ガスは隣接するセル105a(排出側セル)に流入する。この排出側セル105aはDPFの軸方向の他端が開口しているので、排ガスは、排出側セル105aの軸方向の他端(図2(B)では右端)から流出する。つまり、DPFでは、隣接するセルを区切る壁面101がフィルタとして機能し、排ガスに含まれている、例えば、微細粒子等の有害物質を壁面101によって捕捉できるので、排ガスを清浄化することができるのである。
【0005】
しかるに、セラミックス製のハニカム構造体は、一般的には、セラミックスを押出し成形して、その成形体をそのまま焼成して形成されるのであるが、図2に示すように、外径が筒状であって各セルの断面形状が正方形のハニカム構造体では、その外周面近傍のセルは他のセルに比べて断面積の小さい異形セル(例えば、断面が台形や三角形のセル、以下、小断面セルという)になる。
【0006】
かかる小断面セルが存在する場合、ハニカム構造体の各セルを封口する際に、封口が適切に行われない可能性がある。上述したように、DPFの各セルは、いずれか一方の端部は封口されているのであるが、小断面セルでは、その両端がともに封口されない可能性がある。かかる封口不良が生じると、DPFに供給された排ガスのうち、上記のごとき小断面セルに流入した排ガスは、壁面を透過せずに、そのままDPFの一端から他端に通り抜けてしまう。つまり、排ガスが清浄化されずに排出されてしまうことになる。
【0007】
また、小断面セルは押出し成形時や焼成時に潰れやすく、小断面セルが潰れると、ハニカム構造体の外周面にスジ状の凹みが形成されてしまう。かかるスジ状の凹みが形成されたハニカム構造体をDPFとして使用すると、凹みが熱ショックによるクラックの起点となりやすく、ハニカム構造体が熱ショックにより損傷する可能性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−270755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、小断面セルに起因する、封口不良や熱ショックによるクラックの発生を防ぐことができるハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明のハニカム構造体は、内燃機関から排出される排ガスを浄化するフィルタに使用される、複数の貫通孔を有するハニカム構造体であって、筒状に形成された外殻と、該外殻内部に形成された、該外殻の軸方向に沿って貫通する複数の貫通孔を備えたセル部とからなり、該セル部が、前記外殻内面よりも内方に位置する筒状の内隔壁を備えており、該内隔壁よりも内方では、前記貫通孔を形成する内部セル隔壁が設けられており、該内隔壁と前記外殻との間では、前記貫通孔を形成する外部セル隔壁が設けられており、前記内隔壁近傍には、前記内隔壁と前記内部セル隔壁によって囲まれた貫通孔を形成し得る境界部分と、該境界部分と内隔壁および/または内部セル隔壁を共有する貫通孔を形成し得る連結部分と、を結合して形成された連結貫通孔が設けられていることを特徴とする。
第2発明のハニカム構造体は、第1発明において、前記連結貫通孔は、前記外殻の軸方向と直交する直交断面が略三角形状または略台形状となる境界部分を前記連結部分と連結させて形成されていることを特徴とする。
第3発明のハニカム構造体は、第1または第2発明において、前記セル部の貫通孔は、前記直交断面において、最小の開口面積を有する貫通孔が、全貫通孔の平均開口面積の40%以上の開口面積を有するように形成されていることを特徴とする。
第4発明のハニカム構造体は、第1、第2または第3発明において、前記複数の貫通孔は、前記直交断面において、該貫通孔を形成し互いに連結された隔壁同士のなす内角が、全て30度以上となるように形成されていることを特徴とする。
第5発明のハニカム構造体は、第1、第2、第3または第4発明において、前記外部セル隔壁は、前記外殻内面に沿った方向において隣接する貫通孔同士を分割する外周隔壁を備えており、該外周隔壁は、前記外殻内面と略直交するように形成されていることを特徴とする。
第6発明のハニカム構造体は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記外殻と前記内隔壁との間に形成されている貫通孔は、その少なくとも一方の端が封口されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、境界部分の断面積が小さい場合、境界部分と隣接する連結部分とを連結すれば、比較的断面積が大きい連結貫通孔を形成することができる。すると、内隔壁を設けても、内隔壁近傍に断面積が小さい貫通孔が形成されることを防ぐことができる。
第2発明によれば、他の境界部分に比べて断面積が小さくなりやすい境界部分を、その近傍に位置する連結部分と連結して比較的断面積が大きい貫通孔にすることができるから、断面積が小さい貫通孔が形成されることを防ぐことができる。
第3発明によれば、全ての貫通孔が所定の大きさ以上の断面積を有しているので、封口不良の発生を防ぐことができる。
第4発明によれば、貫通孔を形成する隔壁同士のなす内角が全て30度以上であるから、貫通孔を封口する際に、隔壁同士が交わる部分の近傍であっても、封口する材料を確実に充填することができる。すると、ハニカム構造体を内燃機関から排出される排ガスを浄化するフィルタとするために封口したときに、封口不良が発生することを防ぐことができる。
第5発明によれば、外殻を構成要素とする貫通孔の断面積をある程度の大きさに維持できるので、ハニカム構造体を成形する際に、外殻を構成要素とする貫通孔が潰れる可能性を低くすることができる。よって、ハニカム構造体の外周面を所定の精度に維持することができる。そして、ハニカム構造体の外周面にスジ状の凹みが形成される可能性も低くできるので、熱ショック等によるハニカム構造体の損傷が発生する可能性も低くできる。さらに、外周隔壁が外殻内面と略直交するように形成されているので、ハニカム構造体の外周面に力が加わっても、その力を外周隔壁によって支持させることができ、外力に対するハニカム構造体の耐久性を高くすることができる。
第6発明によれば、封口されている端部を流入端とすると、これらの貫通孔には保温効果を期待することができる。しかも、外殻に加わる力を封口する材料にも支持させることができるから、ハニカム構造体の外殻の強度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のハニカム構造体1の概略説明図であって、(A)は正面図であり、(B)は部分拡大図である。
【図2】従来例のハニカム構造体100の概略説明図であって、(A)は正面図であり、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明のハニカム構造体は、内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガスフィルタの製造に使用されるものであり、排ガスフィルタを製造する際に、封口不良が発生しない構造としたことに特徴を有している。
【0014】
なお、封口とは、ハニカム構造体に設けられている貫通孔(セル)の開口している端部を、セラミックス等の材料によって封じることである。この封口に使用される材料には、通気性を有するがすすは通さない材料、例えば、ハニカム構造体の壁(図2の2,11,12,13)を構成する材料と同じ材料が使用される。つまり、封口することによって、その貫通孔には、封口されている端部からすすが流入できないようにすることができるのである。
また、封口には、ハニカム構造体の壁を構成する材料とは異なる材料(通気性を有するがすすは通さない性質を有するもの)を使用してもよいし、通気性を有しない材料を使用してもよい。
【0015】
また、本発明のハニカム構造体から製造される排ガスフィルタは、例えば、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンの排ガス中に含まれるすすを捕捉するフィルタ(例えば、DPF)などであるが、とくに限定されない。
また、本発明のハニカム構造体の素材中に白金等の触媒を担持させておけば、本発明のハニカム構造体を用いて、排ガス中の有害物質を浄化する触媒も製造することができる。
【0016】
(ハニカム構造体の説明)
まず、本発明のハニカム構造体1について、概略を説明する。
以下では、ハニカム構造体1の断面が円形の場合、つまり、ハニカム構造体1が円筒状の場合を説明するが、本発明のハニカム構造体1は円筒状のものに限られず、断面が略三角形状(頂点が尖っていない形状、いわゆるおむずび形)のものや、楕円形状、陸上競技のトラックのような直線と半円とが組み合わされた形状等でもよく、とくに限定されない。
また、以下では、貫通孔の断面(ハニカム構造体の軸方向と直交する断面)の基本形状、つまり、貫通孔の開口断面の基本形状が方形(正方形または長方形)の場合を説明する。しかし、本発明のハニカム構造体における貫通孔の開口断面の形状は正確な方形に限られず、概ね方形であってもよく、また、五角形や六角形、八角形、円形等でもよく、とくに限定されない。
さらに、以下では、隣接する貫通孔の開口断面の断面積がほぼ同じとなるように形成されたハニカム構造体、いわゆる対象セルのハニカム構造体の場合を説明する。しかし、本発明のハニカム構造体は、隣接する貫通孔の開口断面の断面積が異なるように形成されたハニカム構造体、つまり、非対称セルのハニカム構造体でも同様の作用効果を奏する。
【0017】
図1に示すように、本発明のハニカム構造体1は、軸方向(図1では紙面と直交する方向)に沿って伸びた円筒状の構造体であり、その軸方向に沿って両軸端間を貫通する複数の貫通孔10hを備えたものである。
本発明のハニカム構造体1は、原料粉末と成形助剤と水、必要に応じて造孔剤からなる坏土を押出し成形して形成された後焼成されて形成されており、複数の貫通孔10hを形成する壁面(各隔壁11〜13や外殻2)は平均細孔径が20μm以下の孔を有する多孔質となっている。
【0018】
図1に示すように、このハニカム構造体1は、円筒状の外殻2と、この外殻2の内部に設けられた複数の隔壁を有しており、外殻2と複数の隔壁によって複数の貫通孔10hを形成している。
なお、外殻2内において、複数の貫通孔10hや後述する貫通孔13hが形成されている部分が、特許請求の範囲にいうセル部に相当する。
【0019】
本発明のハニカム構造体1では、外殻2内の複数の隔壁として、内隔壁11と、内部セル隔壁12と、外部セル隔壁13とを備えている。
【0020】
まず、内隔壁11は、外殻2の内面よりも内方に位置するように設けられた円筒状の隔壁である。この内隔壁11は、その中心軸が外殻2と同軸であって、外殻2の軸方向と直交する直交断面(以下、単に直交断面という)が外殻2と相似形となるように形成されている。
【0021】
この内隔壁11の内部には、内隔壁11内の空間を分割する複数の内部セル隔壁12が設けられている。この複数の内部セル隔壁12は、いずれもその表面が外殻2の軸方向と平行となるように形成されており、互いに接続されている内部セル隔壁12同士が互いに直交するように配設されている。つまり、複数の内部セル隔壁12は、複数の内部セル隔壁12によって囲まれる空間が貫通孔10hとなり、この貫通孔10hの直交断面が方形かつ軸方向が外殻2の軸方向と平行となるように配設されているのである。
【0022】
また、内隔壁11と外殻2との間には、貫通孔13hを形成する複数の外部セル隔壁13が設けられている。この複数の外部セル隔壁13は、いずれもその表面が外殻2の軸方向と平行となるように形成されている。
この外部セル隔壁13は、外殻2の内面に沿って隣接する貫通孔13h同士を分割する外周隔壁13aを備えている。この外周隔壁13aは、外殻2の内面と略直交するように形成されている。言い換えれば、外部セル隔壁13は、外殻2の内面の中心軸を中心とする円C1と外部セル隔壁13が交差する位置では、その位置における円C1の接線と外部セル隔壁13の表面とが互いに直交するように形成されているのである。
【0023】
以上のごとき構成であるので、本発明のハニカム構造体1において、全ての貫通孔10hや全ての貫通孔13hについて、いずれか一方の端部を封口すれば、ハニカム構造体1を排ガスフィルタとすることができる(図2参照)。
すると、ハニカム構造体1の一端側から排ガスなどの浄化すべきガスを供給すれば、そのガスは、必ずいずれかの隔壁を通過しなければハニカム構造体1の他端側には流出できないので、すす等を隔壁によって浄化することができるのである。
【0024】
そして、本発明のハニカム構造体1では、内隔壁11を設け、内隔壁11と外殻2との間に外部セル隔壁13を設けている。すると、外殻2と内隔壁11との間に形成される貫通孔13hを内隔壁11内の貫通孔10hとは独立した形状の貫通孔13hとすることができるから、外殻2を構成要素とする貫通孔13hの断面積をある程度の大きさに維持できる。
よって、ハニカム構造体1を押し出し成形などによって形成する際に、外殻2を構成要素とする貫通孔13hが潰れる可能性を低くすることができるから、ハニカム構造体1の外周面を所定の精度に維持することができる。
そして、外殻2を構成要素とする貫通孔13hが潰れないので、ハニカム構造体1の外周面にスジ状の凹みが形成される可能性も低くできる。すると、スジ状の凹みに起因する熱ショック等によるハニカム構造体1の損傷が発生する可能性も低くできる。
【0025】
また、この外部セル隔壁13は、外殻2の内面と略直交するように形成された外周隔壁13aを有しているので、外殻2の外周面に対し、外殻2を内方に圧縮するような力が加わっても、その力を外周隔壁13aによって支持させることができる。よって、外力に対するハニカム構造体1の耐久性を高くすることができ、外力によってハニカム構造体1が損傷する可能性も低くできる。
【0026】
そして、外殻2を構成要素とする貫通孔13hの場合、封口をした部分では、封口した材料にハニカム構造体1に加わる力を支持させることも可能となるから、外殻2の強度を高くすることができ、ハニカム構造体1の損傷を防ぐことができる。
具体的には、本発明のハニカム構造体1を内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガスフィルタとして使用する場合には、ハニカム構造体1は断熱材などに包まれた状態で金属製のケースに収容される。このとき、ハニカム構造体1の外殻2の端縁がケースと接触する場合があり、この接触により外殻2が凹んだり欠けたりして、貫通孔13hが損傷する可能性がある。しかし、外殻2を構成要素とする貫通孔13hが封口されていれば、かかる接触があっても、外殻2の損傷、つまり、貫通孔13hの損傷を防ぐことができる。
【0027】
また、外殻2と内隔壁11との間に形成されている貫通孔13hの両端を封口すれば、この貫通孔13h内に、気体の層を形成することができる。すると、貫通孔13hを、内隔壁11の内側の領域の熱を内隔壁11の内側に保持しておくための保温層として機能させることもできる。
【0028】
例えば、ハニカム構造体1をDPFとして使用する場合であれば、保温層を設けることによって、以下のごとき効果を得ることができる。
DPFでは、隔壁に捕捉されたすすが、例えば、排ガスにより加熱されて酸化燃焼し、自己再生することが行われている。 かかる自己再生を有効に行う上では、すすを捕捉する領域の直交断面内においてDPFの温度が均一に維持されていることが好ましい。
しかし、DPFの外殻2近傍では、外気への放熱が大きいため、この部分ですすを捕捉した場合、すすを十分に燃焼できず、自己再生ができなくなる。すると、DPFに目詰まりなどが発生し、DPFの機能低下が生じる可能性がある。
上記のごとき貫通孔13hを設ければ、温度低下しやすい外殻2近傍ではすすを捕捉しない上、すすを捕捉する領域が貫通孔13hによって囲まれた状態とすることができるから、すすを捕捉する領域においてすすの燃焼により発生した熱が逃げることを防ぐことができる。すると、すすを捕捉する領域では、その領域の直交断面内におけるDPFの温度を均一化できるので、DPFに自己再生を有効に発生させることができ、目詰まりなどによるDPFの機能低下を防ぐことができるのである。
【0029】
なお、外殻2と内隔壁11との間に形成されている貫通孔13hを保温層とする場合、必ずしも両端を封口しなくてもよい。例えば、貫通孔13hにおいて、ハニカム構造体1に対して排ガスが流入する側の端部のみを封口しても、貫通孔13hを保温層とすることができる。なぜなら、流入する側の端部が封口されていれば、すすが貫通孔13hに流入することがなく貫通孔13h内ですすの燃焼も生じないので、貫通孔13hを単なる空気の層として機能させることができるからである。
【0030】
また、外殻2と内隔壁11との間に、ハニカム構造体1の半径方向に沿って複数の貫通孔13hが並ぶようにしてもよい。つまり、外殻2と内隔壁11との間に複数の保温層を設けてもよく、この場合には保温効果をより一層高くすることができる。
例えば、図1に示すように、外殻2と内隔壁11との間に、その中心軸が外殻2と同軸であって、外殻2の軸方向と直交する直交断面が外殻2と相似形となるように形成された隔壁13bを設ける。そして、外殻2と隔壁13bとの間、および、隔壁13bと内隔壁11との間に、それぞれ外周隔壁13aを設ければ、複数の保温層を設けることができる。
【0031】
つぎに、本発明のハニカム構造体1における特徴的なセル構造を説明する。
図1に示すように、本発明のハニカム構造体1では、内隔壁11近傍に連結貫通孔20が設けられている。
この連結貫通孔20は、内隔壁11と内部セル隔壁12によって囲まれた貫通孔10hを形成し得る境界部分21と、境界部分21と内隔壁11または内部セル隔壁12を共有する貫通孔を形成し得る連結部分22とを結合して形成されている。別な言い方をすれば、連結貫通孔20は、連結貫通孔20を設けなかった場合において、内隔壁11と内部セル隔壁12とによって貫通孔10hが形成される部分(境界部分21)と、この部分と隣接する貫通孔が形成される部分(連結部分22)と、を結合して形成されたものである。
【0032】
かかる連結貫通孔20を設けた場合、直交断面における開口の断面積(以下、単に開口面積という)が小さい境界部分21を、この境界部分21と隣接する連結部分22とを連結することによって、比較的断面積が大きい連結貫通孔20とすることができる。つまり、内隔壁11を設けたことによって開口面積が小さい貫通孔10hが形成されるはずであった部分に、比較的開口面積が大きい貫通孔を形成することができるから、内隔壁11近傍に封口不良が生じやすい貫通孔が形成されることを防ぐことができる。
【0033】
なお、連結部分22と結合させて境界部分21を形成する箇所、つまり、連結貫通孔20を形成する箇所はとくに限定されない。
しかし、直交断面における境界部分21の開口断面の形状が、略三角形状または略台形状である部分に連結貫通孔20を設けることが好ましい。
開口がかかる断面形状を有する境界部分21は、他の境界部分21に比べて開口面積が小さくなりやすい。よって、かかる断面形状の境界部分21をその近傍に位置する貫通孔10hや貫通孔13hと連結して比較的開口面積が大きい連結貫通孔20にすれば、封口不良が生じやすい開口面積が小さい貫通孔10hが形成されることを防ぐことができる。
【0034】
そして、連結貫通孔20を設けることによって、直交断面において、最小の開口面積を有する貫通孔が、全ての貫通孔10h、13h,20(以下、単に全貫通孔という)の平均開口面積の40%以上の開口面積となるようにすることが好ましい。
この場合、連結貫通孔20を含む全貫通孔が所定の大きさ以上の開口面積を有することになるので、封口不良の発生を防ぐことができる。
例えば、DPFに使用されるハニカム構造体では、1inch×1inchの領域に200〜400程度、好ましくは250〜350程度の貫通孔を有するが、全貫通孔の開口面積が、平均開口面積(1.0〜1.6mm程度)の40%(0.4〜0.64mm程度)となるようにすれば、封口不良が生じないようにDPFを製造することができる。
【0035】
さらに、全貫通孔において、貫通孔を形成し互いに連結された隔壁同士のなす内角が、全て30度以上となるように形成されていれば、より好ましい。
この場合には、貫通孔10h、13h,20を封口する際に、隔壁同士が交わる部分の近傍(角部)でも封口する材料を確実に充填することができる。すると、内燃機関から排出される排ガスを浄化するフィルタとするためにハニカム構造体1に対して封口を施したときに、封口不良が発生することを防ぐことができる。
【0036】

なお、上記例では、内隔壁11が一重の場合を説明したが、内隔壁11を2重以上設けていてもよい。この場合でも、上記のごとき連結貫通孔20を形成すれば、開口面積の小さい貫通孔10hが形成されることを防ぐことができ、封口不良が発生することを防ぐことができる。
また、上記例では、内隔壁11が外殻2と相似形である場合を説明したが、内隔壁11は必ずしも外殻2と相似形である必要はない。例えば、外殻2を楕円形やおむずび形、トラック形とし、内隔壁11を円形としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のハニカム構造体は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関から排出される排ガスを浄化するフィルタに適している。
【符号の説明】
【0038】
1 ハニカム構造体
2 外殻
10h 貫通孔
11 内隔壁
12 内部セル隔壁
13 外部セル隔壁
13b 外周隔壁
20 連結貫通孔
21 境界部分
22 連結部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガスを浄化するフィルタに使用される、複数の貫通孔を有するハニカム構造体であって、
筒状に形成された外殻と、
該外殻内部に形成された、該外殻の軸方向に沿って貫通する複数の貫通孔を備えたセル部とからなり、
該セル部が、
前記外殻内面よりも内方に位置する筒状の内隔壁を備えており、
該内隔壁よりも内方では、前記貫通孔を形成する内部セル隔壁が設けられており、
該内隔壁と前記外殻との間では、両者の間に前記貫通孔を形成する外部セル隔壁が設けられており、
前記内隔壁近傍には、
前記内隔壁と前記内部セル隔壁によって囲まれた貫通孔を形成し得る境界部分と、該境界部分と内隔壁および/または内部セル隔壁を共有する貫通孔を形成し得る連結部分と、を結合して形成された連結貫通孔が設けられている
ことを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記連結貫通孔は、
前記外殻の軸方向と直交する直交断面が略三角形状または略台形状となる境界部分を前記連結部分と連結させて形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記セル部の貫通孔は、
前記直交断面において、最小の開口面積を有する貫通孔が、全貫通孔の平均開口面積の40%以上の開口面積を有するように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記複数の貫通孔は、
前記直交断面において、該貫通孔を形成し互いに連結された隔壁同士のなす内角が、全て30度以上となるように形成されている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記外部セル隔壁は、
前記外殻内面に沿った方向において隣接する貫通孔同士を分割する外周隔壁を備えており、
該外周隔壁は、
前記外殻内面と略直交するように形成されている
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記外殻と前記内隔壁との間に形成されている貫通孔は、その少なくとも一方の端が封口されている
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のハニカム構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−147834(P2011−147834A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8679(P2010−8679)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】