ハニカム構造体
【課題】より適切に耐熱衝撃性とアイソスタティック強度を両立させかつ浄化性能を高めることができるハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】本発明によるハニカム構造体1は、複数条の単位空間2aを相互に隔てる隔壁2と、複数条の単位空間2aの延在する延在方向Sの周方向θに延びて隔壁2を外包する外周壁3と、を一体的に含むハニカム構造体であって、外周壁3の径方向の外周壁厚dを、隣接する単位空間2a相互間に位置する隔壁2の隔壁厚tで除した比率d/tを1.3以上の値とすることを特徴とする。
【解決手段】本発明によるハニカム構造体1は、複数条の単位空間2aを相互に隔てる隔壁2と、複数条の単位空間2aの延在する延在方向Sの周方向θに延びて隔壁2を外包する外周壁3と、を一体的に含むハニカム構造体であって、外周壁3の径方向の外周壁厚dを、隣接する単位空間2a相互間に位置する隔壁2の隔壁厚tで除した比率d/tを1.3以上の値とすることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス規制強化に対応させて自動車又は産業用機械に搭載される機会が増大している、排気ガス浄化装置(排ガス後処理装置)に用いられるフィルターを構成するハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス浄化装置は、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM Particulate Matter)や窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等の規制対象物質を極力低減して排気ガスを浄化することを目的としたものであり、ハニカム構造体と種々の触媒を適宜組み合わせたフィルターを含むものが用いられる。
【0003】
このフィルターにおいては、触媒による規制対象物質の捕集及び低減にともなう浄化性能、すなわち触媒性能を高めるため、フィルターの温度を適宜上昇させる必要があるとともに、一定期間捕集及び低減を行った後、蓄積された規制対象物質を焼却して除去する又は酸化除去して再生を行うために、やはりフィルターそのものの温度を上昇させる必要が生じる。
【0004】
このような温度を上昇させる制御は自動車においては、エンジンの排気ガスの含む熱やポスト燃焼を利用したもの、ヒータ等の熱を利用したものがあり、これらを適宜選択して行うこととなる。これとともに、耐熱評価試験においても温度上昇を行う必要があることから、フィルターは温度上昇と温度低下のヒートサイクルの繰り返しに耐えうる耐熱衝撃性を具備することが求められる。
【0005】
また、フィルターは自動車においてはエギゾーストマニホールド等の排気配管の途中に組み込まれることから、配管にマットを介してフィルターを組み込むキャニングを行うことが必須となり、キャニングに伴ってフィルターに発生する応力にフィルター自身が耐えうるアイソスタティック強度も求められる。
【0006】
上述した浄化性能を高めるためには、温度を上昇させるにあたっての昇温速度を上昇させることも求められるとともに、排気ガスとフィルターとの接触面積の増大が求められる。このため、ハニカム構造体のセルを構成する隔壁の厚みを極力薄くすることをも求められる。このように隔壁を薄くすることと、耐熱衝撃性及びアイソスタティック強度を両立することを目指したハニカム構造体としては、特許文献1に記載されているようなものが提案されている。
【0007】
特許文献1に記載のハニカム構造体においては、隔壁を囲むように配設される外周壁の厚さの平均値を、隔壁の厚さ以上とし、隔壁の厚さの十倍以内とすることと、直角毎に区分される周方向の中間領域で外周壁の厚さを中間領域以外の部分に比べて薄くすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−239603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に示されたハニカム構造体においては、外周壁に発生する応力集中の発生現象そのものの防止に関して詳細な検討がなされているとは言えず、中間領域のクラックの発生そのものは許容して、発生の伸展を防止することが提案されているのみである。このため、特許文献1に開示された従来技術においては、外周壁に発生する応力集中に伴うクラックそのものを防止することが十分になされていないという問題が生じる。
【0010】
すなわち特許文献1においては、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度を両立させかつ浄化性能を高めるにあたって必ずしも適切なハニカム構造体を提供できていないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑み、より適切に耐熱衝撃性とアイソスタティック強度を両立させかつ浄化性能を高めることができるハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の問題を解決するため、本発明によるハニカム構造体は、
複数条の単位空間を相互に隔てる隔壁と、
前記複数条の単位空間の延在する延在方向の周方向に延びて前記隔壁を外包する外周壁と、
を一体的に含むハニカム構造体であって、
前記外周壁の径方向の外周壁厚を、隣接する前記単位空間相互間に位置する前記隔壁の隔壁厚で除した比率を1.3以上の値とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より適切に耐熱衝撃性とアイソスタティック強度を両立させかつ浄化性能を高めることができるハニカム構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1のハニカム構造体1におけるセル2aの壁面位置の調節態様の一実施形態を示す模式図である。
【図2】実施例1のハニカム構造体1の適用対象となる従来のハニカム構造体の応力分布を示す模式図である。
【図3】実施例1〜4のハニカム構造体1の比率の設定の根拠となるCAE(Computer Aided Engineering)解析結果を示す模式図である。
【図4】実施例2のハニカム構造体1におけるセル2aの壁面形態及び位置の修正態様の一実施形態と応力低減態様を示す模式図である。
【図5】実施例3のハニカム構造体1における基準面Bを用いた仮想セル2bの設定態様の一実施形態を示す模式図である。
【図6】実施例4のハニカム構造体1における仮想セル2b及び拡大仮想セル2cの設定態様の一実施形態を示す模式図である。
【図7】実施例4のハニカム構造体1における仮想セル2bと切削面CLとの位置関係を示す模式図である。
【図8】実施例4のハニカム構造体1における最大応力σmaxと低減効果Δσmaxを示す模式図である。
【図9】実施例4のハニカム構造体1における最大応力を低減する効果を示す模式図である。
【図10】実施例1〜4のハニカム構造体1のセル2aの配列態様の一実施形態を示す模式図である。
【図11】実施例1〜4のハニカム構造体1のセル2aの配列態様の一実施形態を示す模式図である。
【図12】実施例1〜4のハニカム構造体1のセル2aの配列態様の他の実施形態を示す模式図である。
【図13】実施例1〜4のハニカム構造体1のセル2aの配列態様の他の実施形態を示す模式図である。
【図14】実施例1〜4のハニカム構造体1のセル2aの配列態様の他の実施形態を示す模式図である。
【図15】実施例1〜4のハニカム構造体1のセル2aの配列態様の他の実施形態を示す模式図である。
【図16】実施例1〜4のハニカム構造体1のセル2aの配列態様の他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1に示すように本実施例1のハニカム構造体1は、上下左右にマトリクス状に整列された複数条のセル2a(単位空間)を相互に隔てる格子状であり全体形状としてはほぼ円柱状である隔壁2と、複数条のセル2aの延在する延在方向Sの周方向θに延びて円柱状の隔壁2を外包する円筒状の外周壁3と、を一体的に含む円柱状のハニカム構造体である。
【0017】
ハニカム構造体1は、規制対象物質の捕集及び低減、再生に適した触媒を担持可能な、例えば、コージェライト材料や炭化ケイ素等のセラミックス材料により構成される。ハニカム構造体1は、所定の成形原料をニーダー、真空土練機等の適宜の装置を用いて混練することにより胚土を調整した後、調整された胚土を、上述したセル2a、隔壁2、外周壁3の形状と配列態様に対応させた口金を用いて押出成形する公知の手法により適宜形成される。
【0018】
加えて、本実施例1のハニカム構造体1は、円筒状の外周壁3の径方向の外周壁厚dを、隣接するセル2a相互間に位置する隔壁2の隔壁厚tで除した比率d/tを1.3以上の値とする。
【0019】
本実施例1のハニカム構造体1においては、セル2aは隅部がR加工されたほぼ四角柱状空間であって、外周壁3の外周面Oに隣接して位置するセル2aの最も外周面Oに近接した隅部を構成する壁面の位置を、壁面に垂直な方向でかつ内側に向かう方向に、図1中のオフセット量hだけオフセットさせて調節する。この調節は、押出成形に用いる口金のセル2aの壁面を構成する部分をオフセット量hに対応させてオフセット成形することにより行う。このことにより、本実施例1においては、比率d/tを1.3以上の値に設定する。
【0020】
加えて、本実施例1においては、外周面Oに開口して位置する仮想セル2b(仮想単位空間)については複数条のセル2aに含めないこととし、押出成形に用いる口金の仮想セル2bに対応する部分を開口した上で押出成形を行う。換言すれば仮想セル2bについては押出成形の段階で埋めることとする。つまり仮想セル2bとは設計段階で外周面Oに対して開口するか否かを考慮して、穴埋めするか否かを判断するための、設計段階において仮定された空間を意味する。
【0021】
さらに、ハニカム構造体1の外周面Oはスキン層4により被覆されている。スキン層4を構成する材質はハニカム構造体1の外周面Oに対して密着性の高い性質を有するものであれば、特に限定されるものはない。
【0022】
本実施例1の比率d/tに適用される1.3と言う数値は、ハニカム構造体1を用いたフィルターについて、耐熱評価試験を行ったときの試験結果に対して、CAE解析を行った場合の解析結果に基づくものである。
【0023】
図2に示すように、上述した格子状かつ円柱状の隔壁2を基本構造とし、本実施例1の比率d/tが適用されないハニカム構造体においては、水平CHと鉛直CVの間つまり水平から45度の位置近傍に位置する、外周面Oに近接するセル2aの隅部に、応力集中が発生する。外周面Oに最も近接するセル2aの隅部において、最大応力σmaxが発生し、図2中右上に示すように、この隅部が最大応力位置Pσmaxを構成することとなる。
【0024】
ここで、比率d/tを0.5から2.0まで変化させた場合に、外周面Oに隣接するセル2aの隅部近傍において発生する最大応力σmaxは、図3に示すように、0.5〜1.3までは比率d/tに増加に対し反比例して減少するとともに、1.3以上で2.0以下までの領域においては、減少の傾きが極めて小さくなり、比率d/tの増加にかかわらずほぼ一定の値となる。
【0025】
本実施例1においては、図3に示されるような、比率d/tと最大応力σmaxの相関関係を利用して、比率d/tを1.3以上に設定している。なお、本実施例1においては下限値のみを設定し、特に上限値は設けないが、適宜上限値を設定してもよい。上限値はセル2aを構成する壁面の辺長に応じて、例えば2.0としても1.5としてもあるいは1.3そのものとしてもよい。
【0026】
以上述べた本実施例1のハニカム構造体1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、本実施例1においては、加熱に伴って外周壁3に発生する応力集中の発生現象そのものの発生態様を耐熱評価試験結果に基づいたCAE解析結果により明らかにした上で、応力集中現象自体の緩和と防止を図り、特には、応力集中箇所のクラックの発生そのものを防止することができる。
【0027】
このため、本実施例1のハニカム構造体1においては、比較的簡単な調節に基づいて、繰り返し発生する熱応力に伴っての応力集中を防いで熱応力に対する耐性を高めて、耐熱衝撃性を高めることができる。加えて、キャニング時に発生する応力に伴っての応力集中も防止して、アイソスタティック強度をも高めることができる。つまり、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度を両立させることができる。
【0028】
加えて、耐熱衝撃性の向上を図れることに伴い、ハニカム構造体1を用いたフィルターにおいて再生のため、加熱すなわち燃焼を行うにあたって、加熱温度を上げて規制対象物質のうち特には粒子状物質(PM)を大量に燃焼させることができる。このため、粒子状物質の捕集をできるかぎり継続的に行い、粒子状物質を蓄積する蓄積量をできるだけ多くすることができる。このことにより、再生を行う頻度を減少させ、ランニングコストを下げることができる。特に自動車においては燃費性能を高めることができる。
【0029】
また、耐熱衝撃性を高めることができることから、触媒の活性化のための加熱と、規制対象物質を除去するための再生のための加熱の双方について、加熱制御の自由度を高めることができるので、本実施例1のハニカム構造体1をフィルターに用いた場合の、浄化性能をも高めることができる。
【0030】
特に、加熱時間の短縮を行うことが可能となるので、担持された触媒が活性化するまでの時間を短縮して、触媒が有効に機能する時間をなるべく長くして、これによっても、浄化性能を高めることができる。
【0031】
さらに、排気ガスとの幾何学的接触面積の増大と、温度上昇制御の敏速性の双方を両立させるため、隔壁厚tを薄く設定することが要請される場合においても、本実施例1のハニカム構造体1はこの要請に容易に対応することができる。すなわち、本実施例1に示したように、隔壁厚tに応じて外周壁厚dを比率d/tに基づいて設定するのみで、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度の双方を確保することができる。
【0032】
上述した実施例1においては、外周壁3の外周面Oに隣接して位置するセル2aの最も外周面Oに近接した隅部を構成する壁面の位置を、壁面に垂直な方向でかつ内側に向かう方向に、オフセット量hだけオフセットさせて調節することで、比率d/tを設定したが、この手法については他の方法を用いることもできる。以下、他の手法に基づいた実施例2について述べる。
【実施例2】
【0033】
本実施例2のハニカム構造体1は、実施例1と同様に、セル2aは四角柱状空間である場合に該当する。本実施例2のハニカム構造体1の、修正される壁面を具備するセル2a以外の構成は、実施例1に示したハニカム構造体1と同様であるので、重複する説明は割愛する。
【0034】
図4に示すように、外周壁3の外周面Oに隣接して位置するセル2aの壁面を、破線で示した逆L字状の輪郭形状から、外周面Oに平行かつ内側であって逆L字状の輪郭形状の左上部と右上部を結ぶ曲面に修正する。このことにより比率d/tを1.3以上に設定する。より具体的には、外周面Oに平行で内周側に長さ1.3tだけオフセットして位置する基準面Bを設定して、セル2aの壁面を基準面Bに一致させる。この修正は、押出成形に用いる口金のセル2aの基準面Bに一致させる壁面を構成する部分を、基準面Bに対応させて成形することにより行う。
【0035】
加えて、外周面Oに開口して位置する仮想セル2bについては、実施例1と同様に、複数条のセル2aに含めないものとする。本実施例2においても、押出成形に用いる口金の仮想セル2bに対応する部分を開口した上で押出成形を行い、仮想セル2bについては押出成形の段階で埋めることとする。
【0036】
以上述べた本実施例2のハニカム構造体1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、本実施例2においても、外周壁3に発生する応力集中現象自体を、セル2aの壁面の上述した比較的簡単な修正に基づいて防止することができ、応力集中箇所のクラックの発生そのものの防止を図ることができる。
【0037】
特に、図2に示した従来技術における外周面Oに隣接したセル2aの隅部に発生する応力に比べて、本実施例2において発生する応力は、図4に示すようにほぼ2/3程度までの低い値に抑制することができる。なお、図4中に示す圧力は耐熱評価試験結果に基づく値である。
【0038】
つまり、本実施例2のハニカム構造体1においても、繰り返し発生する熱応力に伴っての応力集中を防いで熱応力に対する耐性を高めて、耐熱衝撃性を高めることができる。これとともに、ハニカム構造体1を排気ダクトに設置するためのキャニング時に発生する応力に伴っての応力集中を防止して、アイソスタティック強度も高めることができる。すなわち本実施例2においても、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度を両立させることができる。
【0039】
また、本実施例2においても、耐熱衝撃性を高めることができることから、触媒の活性化のための加熱と、規制対象物質を除去するための再生のための加熱の双方について、加熱制御の自由度を高めることができるので、ハニカム構造体1をフィルターに用いた場合の、規制対象物質に対する捕集、捕集後のフィルターの再生をより容易なものとして、フィルターの浄化性能を高めることができる。
【0040】
さらに、本実施例2においても、耐熱衝撃性の向上に伴わせて、ハニカム構造体1を用いたフィルターの捕集後の再生段階において、蓄積された粒子状物質 (PM)を大量に燃焼させることができる。このため、粒子状物質の捕集をできるかぎり継続的に行い、粒子状物質を蓄積する蓄積量をできるだけ多くすることができる。
【0041】
加えて、近年のフィルターにおいては、排気ガスとの幾何学的接触面積の増大と、温度上昇制御の敏速性を図るために、隔壁厚tを薄く設定することが主流となっているが、本実施例2のハニカム構造体1はこの傾向に容易に対応することができる。すなわち、本実施例2に示したように、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度の双方を確保するにあたっては、隔壁厚tに応じて外周壁厚dを比率d/tに基づいて設定することで対応可能である。
【0042】
上述した実施例1及び実施例2においては、外周面Oに隣接したセル2aの外周側を部分的に埋める形態を示したが、製造工程上の便宜を考慮して、全て埋める形態を選択しても良い。以下にそれについての実施例3について述べる。
【実施例3】
【0043】
本実施例3のハニカム構造体1も、セル2a(単位空間)が四角柱状空間である場合に該当する。本実施例3のハニカム構造体1は、図5に示すように、外周壁3の外周面Oから隔壁厚tに1.3を乗じた厚さ1.3tだけ内周側に位置する基準面Bに開口して位置する仮想セル2b(仮想単位空間)については複数条のセル2a(単位空間)に含めないこととする。
【0044】
図5中において、水平方向の中心線CHと鉛直方向の中心線CVを設定して、ハニカム構造体1の中心を通る横方向を中心線CHに一致させ、縦方向を中心線CVに一致させるものとすると、中心線CHと中心線CVとの周方向中央が45度線となる。
【0045】
図5中においては、45度線近傍には仮想セル2bは位置せず、45度線に関して線対称に仮想セル2bが分布されている。仮想セル2bの分布態様は、仮想セル2b及びセル2aそのものの寸法と、外周面Oの外形寸法、隔壁厚tの寸法との相互関係により決定される。
【0046】
本実施例3における仮想セル2bとは設計段階で基準面Bに対して開口するか否かを考慮して、穴埋めするか否かを判断するための、仮定された空間を意味する。本実施例3においても、仮想セル2bの穴埋めは、押出成形に用いる口金の仮想セル2bに対応する部分を開口した上で押出成形を行い、仮想セル2bについては押出成形の段階で埋めることとする。
【0047】
本実施例3のハニカム構造体1によっても、実施例1及び実施例2と同様に、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、本実施例3においても、外周壁3に発生する応力集中現象自体を、予め応力集中が発生する箇所の仮想セル2bを埋めるように、押出成形を行うことによって防止することができ、やはり、応力集中箇所のクラックの発生そのものの防止を図ることができる。
【0048】
つまり、本実施例3のハニカム構造体1においても、繰り返し発生する熱応力に伴っての応力集中を防いで熱応力に対する耐性を高めて、耐熱衝撃性を高めることができるとともに、キャニング時に発生する応力に伴っての応力集中を防止して、アイソスタティック強度も高めることができる。
【0049】
さらに、本実施例3においても、耐熱衝撃性を高めることができることから、触媒の活性化のための加熱と、規制対象物質を除去するための再生のための加熱の双方についてのヒートサイクル制御の自由度を高めることができる。このため、ハニカム構造体1をフィルターに用いた場合の、規制対象物質の捕集と、捕集後のフィルターの再生をともにより迅速かつ効率的に行うことを可能なものとして、フィルターの浄化性能をより高めることができる。
【0050】
加えて、本実施例3においても、耐熱衝撃性の向上によって、ハニカム構造体1を用いたフィルターの粒子状物質を捕集した後の再生時に、蓄積された粒子状物質 (PM)を大量に燃焼させることができる。このため、粒子状物質の捕集をなるべく持続的に行い、粒子状物質を蓄積する蓄積量をできるだけ多くすることを可能とすることができる。さらに、本実施例3においては、応力集中防止の対象となるセル2aの体積を他のセル2aよりも小さくすることが必須でないため、粒子状物質の蓄積量の増大をより効率的に図ることができる。
【0051】
また、本実施例3においては、実施例1及び実施例2に比べて、押出成形に用いる口金のセル2aに対応する部分の形態をより単純化することができるので、押出成形を含むハニカム構造体1の製造工程をより簡略化するとともに、ハニカム構造体1の歩留まりを高めることもできる。
【0052】
さらに、本実施例3のハニカム構造体1は、排気ガスとの幾何学的接触面積の増大と、温度上昇制御の敏速性を図るために、隔壁厚tを薄く設定したフィルターに対応させることが容易である。つまり、本実施例3に示したように、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度の双方を確保するにあたって、隔壁厚tに応じて外周壁厚dを比率d/tに基づいて設定することが可能である。
【0053】
外周面Oに隣接したセル2aの外周側を部分的に全て埋める形態については、実施例3に示したもの以外にも以下の形態を選択することもできる。以下にそれについての実施例4について述べる。
【実施例4】
【0054】
本実施例4のハニカム構造体1についてもセル2aが四角柱状空間である場合に該当する。図6に示すように、仮想セル2b(仮想単位空間)のそれぞれの壁面から垂直外側に向けて隔壁厚tだけ拡大された拡大仮想セル2c(拡大仮想単位空間)を仮定する。
【0055】
図7中において、水平方向の中心線CHと鉛直方向の中心線CVを設定して、ハニカム構造体1の横方向を中心線CHに一致させ、縦方向を中心線CVに一致させるものとすると、中心線CHと中心線CVとの周方向中央が45度線となる。
【0056】
図7中においては、45度線近傍に拡大仮想セル2cが位置しており、45度線に関して線対称に拡大仮想セル2cが分布されている。拡大仮想セル2cの分布態様はここでも、拡大仮想セル2cそのものの寸法と、外周面Oの外形寸法、隔壁厚tの寸法との相互関係により決定される。
【0057】
図6に示すように、仮想セル2bは隅部に半径rのR加工部を有しているため、拡大仮想セル2cも仮想セル2bのR加工部を外包する形態の半径R(=t)の拡大R加工部を有している。
【0058】
このように、外周壁3の外周面Oを機械的に構成する切削面CLに隣接して又は開口して位置する仮想セル2bのそれぞれの壁面から垂直外側に向けて隔壁厚tだけ拡大された拡大仮想セル2cを仮定して、図7に示すように、切削面CLに開口して位置する拡大仮想セル2cに属する仮想セル2bについては複数条のセル2aに含めないこととする。
【0059】
この場合においては、埋める対象となる仮想セル2bは、仮想セル2b自体が切削面CLに開口する場合の仮想セル2baを含むとともに、拡大仮想セル2cのうち拡大された部分のみが切削面CLに開口する場合の仮想セル2bbをも含むこととなる。仮想セル2ba、2bbの双方を含む仮想セル2bを埋めるにあたっては、押出成形に用いる口金の仮想セル2ba、2bbに対応する部分を開口した上で押出成形を行って、押出成形の段階で埋めることとする。
【0060】
本実施例4のハニカム構造体1によっても、実施例3と同様に、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、外周壁3に発生する応力集中現象自体を、予め応力集中が発生する箇所の仮想セル2bを埋めるように、押出成形を行うことによって防止することができるので、応力集中箇所のクラックの発生そのものの防止を図ることができる。
【0061】
特に、本実施例4においては図8に示されるように、仮想セル2baのみを埋めることに比べて、発生する応力を、7.8%程度の減少代で減少させることができる。つまり、本実施例4のハニカム構造体1においても、繰り返し発生する熱応力に伴っての応力集中を防いで熱応力に対する耐性を高め、かつ、耐熱衝撃性を高めることができる。加えて、キャニング時に発生する応力に伴っての応力集中をも防止して、アイソスタティック強度をも高めることができる。
【0062】
さらに、本実施例4においても、耐熱衝撃性を高めることができることから、触媒の活性化のための加熱と、規制対象物質を除去するための再生のための加熱の双方についての温度制御の頻度と自由度を高めることができる。従って、ハニカム構造体1をフィルターに用いた場合の、規制対象物質に対する捕集性能をより高めて、捕集後のフィルターの再生をより効率的に行うことを可能なものとして、フィルターの浄化性能をより高めることができる。
【0063】
また、本実施例4においても、耐熱衝撃性を高めることが可能となることに伴い、ハニカム構造体1を用いたフィルターの再生時に、蓄積された粒子状物質 (PM)をより高い加熱温度にて大量に燃焼させることができる。このため、粒子状物質の一サイクルあたりの捕集量を大きくして、粒子状物質を蓄積する蓄積量をできるだけ多くすることができる。さらに、本実施例4においては、応力集中防止の対象となるセル2aの体積を他のセル2aよりも小さくする必要がなく、複数条のセル2a相互間で体積が同一であることから、粒子状物質の蓄積量をより効率的に増大させることができる。
【0064】
さらに、本実施例4のハニカム構造体1は、排気ガスとの幾何学的接触面積の増大と、温度上昇制御の敏速性を図るために、隔壁厚tを薄く設定したフィルターに対応させて、隔壁厚tに応じて外周壁厚dを比率d/tに基づいて設定することが可能であり、設計自由度を高めるとともに、容易に、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度の双方を高めることができる。
【0065】
加えて、本実施例4においても、実施例1及び実施例2に比べて、押出成形に用いる口金のセル2aに対応する部分の形態をより単純化することができるので、押出成形を含むハニカム構造体1の製造工程をより簡略化するとともに、ハニカム構造体1の歩留まりを高めることもできる。
【0066】
さらに、本実施例4においては、拡大仮想セル2cが開口するか否かの判断対象となる面を、元来ハニカム構造体1を機械加工により構成するために設定される切削面CLとしているので、実施例3に比べて、設計面での変更を少なくすることができる。
【0067】
加えて、本実施例4においては、図9にβで示す、切削面CLに開口するか否かにより埋める仮想セル2bを決定しない従来の埋め方における最大応力の発生位置に対して、最大応力の発生位置αを周方向にずらすことができる。このため、最も応力が発生しやすい45度線から発生位置αを意図的にずらせて、最大応力の値そのものの低減と、クラックの発生を防止することができる。なお、図9中に示す圧力は耐熱評価試験に基づく値である。
【0068】
なお上述した実施例1〜4においては、セル2aの配列形態は、図10に示すように、格子状配列のものとしたが、本発明の比率d/tを1.3以上とすることに換えて、図11に示すように、セルを扇形状としセルの配列を半径方向と周方向に設定した上で、半径方向の隔壁厚t1を一定とし、周方向に複数条に延びる隔壁の隔壁厚t2を内周側から外周側に向けて徐々に厚くすることもできる。これにより、半径方向外側に向かうほど大きくなる応力に対応させて隔壁厚t2を設定して、最大応力を抑制し、クラックの発生を防止することができる。
【0069】
あるいは、図12に示すように、図10に示されたものに比べて、上下方向のセル2aの相互間の左右方向における相対位置関係をずらすことにより、周上の45度の位置の応力集中を防止することができ、特には、クラックが発生した後の進行方向を45度方向からずらしてクラックの進行を抑制して、信頼性を高めることができる。
【0070】
また、図13に示すように図10に示した相対位置関係のずらし量を更に大きく設定することもできる。加えて、図14に示すように、セルを六角形とする、又は、図15に示すように、セルを八角形とする、又は、図16に示すようにセルを円形とすることにより、セルの隅部そのもの形状に起因して発生する応力集中を低減して、クラックの発生を防止することもできる。
【0071】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0072】
上述した実施例1〜4のハニカム構造体1は、規制対象物質のうち粒子状物質の捕集量を増大させるにあたって有利であることから、自動車の内特にディーゼル車用のフィルターである、DPF(Diesel Particulate filter)に用いられて好適なものであるが、もちろん、ガソリン車用のフィルターに用いることも可能である。
【0073】
特に実施例1〜4のハニカム構造体1は、排気ガスとの幾何学的接触面積の増大と、温度上昇制御の敏速性を図るために、隔壁厚tを薄く設定したフィルターに対応させて、隔壁厚tに応じて外周壁厚dを比率d/tに基づいて設定することが可能であり、設計自由度を高めるとともに、容易に、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度の双方を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、より適切に耐熱衝撃性とアイソスタティック強度を両立させかつ浄化性能を高めることができるハニカム構造体を提供することができる。このハニカム構造体は主に規制対象物質の捕集、再生を行うフィルターに用いられ、このフィルターは、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に用いられる排気ガス浄化装置に適用されて有益であることはもちろん、排気ガスを排出する産業用機械、発電設備、船舶、鉄道車両等にも適用可能なものである。
【符号の説明】
【0075】
1 ハニカム構造体
2 隔壁
2a セル(単位空間)
2b 仮想セル(仮想単位空間)
2ba 仮想セル(仮想単位空間自体が開口)
2bb 仮想セル(拡大仮想単位空間が開口)
2c 拡大仮想セル(拡大仮想単位空間)
3 外周壁
4 スキン層
d 外周壁厚
t 隔壁厚
d/t 比率
Pσmax 最大応力位置
O 外周壁3の外周面(ハニカム構造体1とスキン層4との境界線)
B 基準面(外周面Oから1.3tだけ内側の内周面)
CH 中心線(水平)
CV 中心線(鉛直)
CL 切削面
R 拡大仮想セル2cの四隅の半径
r セル2a又は仮想セル2bの四隅の半径
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス規制強化に対応させて自動車又は産業用機械に搭載される機会が増大している、排気ガス浄化装置(排ガス後処理装置)に用いられるフィルターを構成するハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス浄化装置は、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM Particulate Matter)や窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等の規制対象物質を極力低減して排気ガスを浄化することを目的としたものであり、ハニカム構造体と種々の触媒を適宜組み合わせたフィルターを含むものが用いられる。
【0003】
このフィルターにおいては、触媒による規制対象物質の捕集及び低減にともなう浄化性能、すなわち触媒性能を高めるため、フィルターの温度を適宜上昇させる必要があるとともに、一定期間捕集及び低減を行った後、蓄積された規制対象物質を焼却して除去する又は酸化除去して再生を行うために、やはりフィルターそのものの温度を上昇させる必要が生じる。
【0004】
このような温度を上昇させる制御は自動車においては、エンジンの排気ガスの含む熱やポスト燃焼を利用したもの、ヒータ等の熱を利用したものがあり、これらを適宜選択して行うこととなる。これとともに、耐熱評価試験においても温度上昇を行う必要があることから、フィルターは温度上昇と温度低下のヒートサイクルの繰り返しに耐えうる耐熱衝撃性を具備することが求められる。
【0005】
また、フィルターは自動車においてはエギゾーストマニホールド等の排気配管の途中に組み込まれることから、配管にマットを介してフィルターを組み込むキャニングを行うことが必須となり、キャニングに伴ってフィルターに発生する応力にフィルター自身が耐えうるアイソスタティック強度も求められる。
【0006】
上述した浄化性能を高めるためには、温度を上昇させるにあたっての昇温速度を上昇させることも求められるとともに、排気ガスとフィルターとの接触面積の増大が求められる。このため、ハニカム構造体のセルを構成する隔壁の厚みを極力薄くすることをも求められる。このように隔壁を薄くすることと、耐熱衝撃性及びアイソスタティック強度を両立することを目指したハニカム構造体としては、特許文献1に記載されているようなものが提案されている。
【0007】
特許文献1に記載のハニカム構造体においては、隔壁を囲むように配設される外周壁の厚さの平均値を、隔壁の厚さ以上とし、隔壁の厚さの十倍以内とすることと、直角毎に区分される周方向の中間領域で外周壁の厚さを中間領域以外の部分に比べて薄くすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−239603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に示されたハニカム構造体においては、外周壁に発生する応力集中の発生現象そのものの防止に関して詳細な検討がなされているとは言えず、中間領域のクラックの発生そのものは許容して、発生の伸展を防止することが提案されているのみである。このため、特許文献1に開示された従来技術においては、外周壁に発生する応力集中に伴うクラックそのものを防止することが十分になされていないという問題が生じる。
【0010】
すなわち特許文献1においては、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度を両立させかつ浄化性能を高めるにあたって必ずしも適切なハニカム構造体を提供できていないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑み、より適切に耐熱衝撃性とアイソスタティック強度を両立させかつ浄化性能を高めることができるハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の問題を解決するため、本発明によるハニカム構造体は、
複数条の単位空間を相互に隔てる隔壁と、
前記複数条の単位空間の延在する延在方向の周方向に延びて前記隔壁を外包する外周壁と、
を一体的に含むハニカム構造体であって、
前記外周壁の径方向の外周壁厚を、隣接する前記単位空間相互間に位置する前記隔壁の隔壁厚で除した比率を1.3以上の値とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より適切に耐熱衝撃性とアイソスタティック強度を両立させかつ浄化性能を高めることができるハニカム構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1のハニカム構造体1におけるセル2aの壁面位置の調節態様の一実施形態を示す模式図である。
【図2】実施例1のハニカム構造体1の適用対象となる従来のハニカム構造体の応力分布を示す模式図である。
【図3】実施例1〜4のハニカム構造体1の比率の設定の根拠となるCAE(Computer Aided Engineering)解析結果を示す模式図である。
【図4】実施例2のハニカム構造体1におけるセル2aの壁面形態及び位置の修正態様の一実施形態と応力低減態様を示す模式図である。
【図5】実施例3のハニカム構造体1における基準面Bを用いた仮想セル2bの設定態様の一実施形態を示す模式図である。
【図6】実施例4のハニカム構造体1における仮想セル2b及び拡大仮想セル2cの設定態様の一実施形態を示す模式図である。
【図7】実施例4のハニカム構造体1における仮想セル2bと切削面CLとの位置関係を示す模式図である。
【図8】実施例4のハニカム構造体1における最大応力σmaxと低減効果Δσmaxを示す模式図である。
【図9】実施例4のハニカム構造体1における最大応力を低減する効果を示す模式図である。
【図10】実施例1〜4のハニカム構造体1のセル2aの配列態様の一実施形態を示す模式図である。
【図11】実施例1〜4のハニカム構造体1のセル2aの配列態様の一実施形態を示す模式図である。
【図12】実施例1〜4のハニカム構造体1のセル2aの配列態様の他の実施形態を示す模式図である。
【図13】実施例1〜4のハニカム構造体1のセル2aの配列態様の他の実施形態を示す模式図である。
【図14】実施例1〜4のハニカム構造体1のセル2aの配列態様の他の実施形態を示す模式図である。
【図15】実施例1〜4のハニカム構造体1のセル2aの配列態様の他の実施形態を示す模式図である。
【図16】実施例1〜4のハニカム構造体1のセル2aの配列態様の他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1に示すように本実施例1のハニカム構造体1は、上下左右にマトリクス状に整列された複数条のセル2a(単位空間)を相互に隔てる格子状であり全体形状としてはほぼ円柱状である隔壁2と、複数条のセル2aの延在する延在方向Sの周方向θに延びて円柱状の隔壁2を外包する円筒状の外周壁3と、を一体的に含む円柱状のハニカム構造体である。
【0017】
ハニカム構造体1は、規制対象物質の捕集及び低減、再生に適した触媒を担持可能な、例えば、コージェライト材料や炭化ケイ素等のセラミックス材料により構成される。ハニカム構造体1は、所定の成形原料をニーダー、真空土練機等の適宜の装置を用いて混練することにより胚土を調整した後、調整された胚土を、上述したセル2a、隔壁2、外周壁3の形状と配列態様に対応させた口金を用いて押出成形する公知の手法により適宜形成される。
【0018】
加えて、本実施例1のハニカム構造体1は、円筒状の外周壁3の径方向の外周壁厚dを、隣接するセル2a相互間に位置する隔壁2の隔壁厚tで除した比率d/tを1.3以上の値とする。
【0019】
本実施例1のハニカム構造体1においては、セル2aは隅部がR加工されたほぼ四角柱状空間であって、外周壁3の外周面Oに隣接して位置するセル2aの最も外周面Oに近接した隅部を構成する壁面の位置を、壁面に垂直な方向でかつ内側に向かう方向に、図1中のオフセット量hだけオフセットさせて調節する。この調節は、押出成形に用いる口金のセル2aの壁面を構成する部分をオフセット量hに対応させてオフセット成形することにより行う。このことにより、本実施例1においては、比率d/tを1.3以上の値に設定する。
【0020】
加えて、本実施例1においては、外周面Oに開口して位置する仮想セル2b(仮想単位空間)については複数条のセル2aに含めないこととし、押出成形に用いる口金の仮想セル2bに対応する部分を開口した上で押出成形を行う。換言すれば仮想セル2bについては押出成形の段階で埋めることとする。つまり仮想セル2bとは設計段階で外周面Oに対して開口するか否かを考慮して、穴埋めするか否かを判断するための、設計段階において仮定された空間を意味する。
【0021】
さらに、ハニカム構造体1の外周面Oはスキン層4により被覆されている。スキン層4を構成する材質はハニカム構造体1の外周面Oに対して密着性の高い性質を有するものであれば、特に限定されるものはない。
【0022】
本実施例1の比率d/tに適用される1.3と言う数値は、ハニカム構造体1を用いたフィルターについて、耐熱評価試験を行ったときの試験結果に対して、CAE解析を行った場合の解析結果に基づくものである。
【0023】
図2に示すように、上述した格子状かつ円柱状の隔壁2を基本構造とし、本実施例1の比率d/tが適用されないハニカム構造体においては、水平CHと鉛直CVの間つまり水平から45度の位置近傍に位置する、外周面Oに近接するセル2aの隅部に、応力集中が発生する。外周面Oに最も近接するセル2aの隅部において、最大応力σmaxが発生し、図2中右上に示すように、この隅部が最大応力位置Pσmaxを構成することとなる。
【0024】
ここで、比率d/tを0.5から2.0まで変化させた場合に、外周面Oに隣接するセル2aの隅部近傍において発生する最大応力σmaxは、図3に示すように、0.5〜1.3までは比率d/tに増加に対し反比例して減少するとともに、1.3以上で2.0以下までの領域においては、減少の傾きが極めて小さくなり、比率d/tの増加にかかわらずほぼ一定の値となる。
【0025】
本実施例1においては、図3に示されるような、比率d/tと最大応力σmaxの相関関係を利用して、比率d/tを1.3以上に設定している。なお、本実施例1においては下限値のみを設定し、特に上限値は設けないが、適宜上限値を設定してもよい。上限値はセル2aを構成する壁面の辺長に応じて、例えば2.0としても1.5としてもあるいは1.3そのものとしてもよい。
【0026】
以上述べた本実施例1のハニカム構造体1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、本実施例1においては、加熱に伴って外周壁3に発生する応力集中の発生現象そのものの発生態様を耐熱評価試験結果に基づいたCAE解析結果により明らかにした上で、応力集中現象自体の緩和と防止を図り、特には、応力集中箇所のクラックの発生そのものを防止することができる。
【0027】
このため、本実施例1のハニカム構造体1においては、比較的簡単な調節に基づいて、繰り返し発生する熱応力に伴っての応力集中を防いで熱応力に対する耐性を高めて、耐熱衝撃性を高めることができる。加えて、キャニング時に発生する応力に伴っての応力集中も防止して、アイソスタティック強度をも高めることができる。つまり、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度を両立させることができる。
【0028】
加えて、耐熱衝撃性の向上を図れることに伴い、ハニカム構造体1を用いたフィルターにおいて再生のため、加熱すなわち燃焼を行うにあたって、加熱温度を上げて規制対象物質のうち特には粒子状物質(PM)を大量に燃焼させることができる。このため、粒子状物質の捕集をできるかぎり継続的に行い、粒子状物質を蓄積する蓄積量をできるだけ多くすることができる。このことにより、再生を行う頻度を減少させ、ランニングコストを下げることができる。特に自動車においては燃費性能を高めることができる。
【0029】
また、耐熱衝撃性を高めることができることから、触媒の活性化のための加熱と、規制対象物質を除去するための再生のための加熱の双方について、加熱制御の自由度を高めることができるので、本実施例1のハニカム構造体1をフィルターに用いた場合の、浄化性能をも高めることができる。
【0030】
特に、加熱時間の短縮を行うことが可能となるので、担持された触媒が活性化するまでの時間を短縮して、触媒が有効に機能する時間をなるべく長くして、これによっても、浄化性能を高めることができる。
【0031】
さらに、排気ガスとの幾何学的接触面積の増大と、温度上昇制御の敏速性の双方を両立させるため、隔壁厚tを薄く設定することが要請される場合においても、本実施例1のハニカム構造体1はこの要請に容易に対応することができる。すなわち、本実施例1に示したように、隔壁厚tに応じて外周壁厚dを比率d/tに基づいて設定するのみで、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度の双方を確保することができる。
【0032】
上述した実施例1においては、外周壁3の外周面Oに隣接して位置するセル2aの最も外周面Oに近接した隅部を構成する壁面の位置を、壁面に垂直な方向でかつ内側に向かう方向に、オフセット量hだけオフセットさせて調節することで、比率d/tを設定したが、この手法については他の方法を用いることもできる。以下、他の手法に基づいた実施例2について述べる。
【実施例2】
【0033】
本実施例2のハニカム構造体1は、実施例1と同様に、セル2aは四角柱状空間である場合に該当する。本実施例2のハニカム構造体1の、修正される壁面を具備するセル2a以外の構成は、実施例1に示したハニカム構造体1と同様であるので、重複する説明は割愛する。
【0034】
図4に示すように、外周壁3の外周面Oに隣接して位置するセル2aの壁面を、破線で示した逆L字状の輪郭形状から、外周面Oに平行かつ内側であって逆L字状の輪郭形状の左上部と右上部を結ぶ曲面に修正する。このことにより比率d/tを1.3以上に設定する。より具体的には、外周面Oに平行で内周側に長さ1.3tだけオフセットして位置する基準面Bを設定して、セル2aの壁面を基準面Bに一致させる。この修正は、押出成形に用いる口金のセル2aの基準面Bに一致させる壁面を構成する部分を、基準面Bに対応させて成形することにより行う。
【0035】
加えて、外周面Oに開口して位置する仮想セル2bについては、実施例1と同様に、複数条のセル2aに含めないものとする。本実施例2においても、押出成形に用いる口金の仮想セル2bに対応する部分を開口した上で押出成形を行い、仮想セル2bについては押出成形の段階で埋めることとする。
【0036】
以上述べた本実施例2のハニカム構造体1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、本実施例2においても、外周壁3に発生する応力集中現象自体を、セル2aの壁面の上述した比較的簡単な修正に基づいて防止することができ、応力集中箇所のクラックの発生そのものの防止を図ることができる。
【0037】
特に、図2に示した従来技術における外周面Oに隣接したセル2aの隅部に発生する応力に比べて、本実施例2において発生する応力は、図4に示すようにほぼ2/3程度までの低い値に抑制することができる。なお、図4中に示す圧力は耐熱評価試験結果に基づく値である。
【0038】
つまり、本実施例2のハニカム構造体1においても、繰り返し発生する熱応力に伴っての応力集中を防いで熱応力に対する耐性を高めて、耐熱衝撃性を高めることができる。これとともに、ハニカム構造体1を排気ダクトに設置するためのキャニング時に発生する応力に伴っての応力集中を防止して、アイソスタティック強度も高めることができる。すなわち本実施例2においても、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度を両立させることができる。
【0039】
また、本実施例2においても、耐熱衝撃性を高めることができることから、触媒の活性化のための加熱と、規制対象物質を除去するための再生のための加熱の双方について、加熱制御の自由度を高めることができるので、ハニカム構造体1をフィルターに用いた場合の、規制対象物質に対する捕集、捕集後のフィルターの再生をより容易なものとして、フィルターの浄化性能を高めることができる。
【0040】
さらに、本実施例2においても、耐熱衝撃性の向上に伴わせて、ハニカム構造体1を用いたフィルターの捕集後の再生段階において、蓄積された粒子状物質 (PM)を大量に燃焼させることができる。このため、粒子状物質の捕集をできるかぎり継続的に行い、粒子状物質を蓄積する蓄積量をできるだけ多くすることができる。
【0041】
加えて、近年のフィルターにおいては、排気ガスとの幾何学的接触面積の増大と、温度上昇制御の敏速性を図るために、隔壁厚tを薄く設定することが主流となっているが、本実施例2のハニカム構造体1はこの傾向に容易に対応することができる。すなわち、本実施例2に示したように、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度の双方を確保するにあたっては、隔壁厚tに応じて外周壁厚dを比率d/tに基づいて設定することで対応可能である。
【0042】
上述した実施例1及び実施例2においては、外周面Oに隣接したセル2aの外周側を部分的に埋める形態を示したが、製造工程上の便宜を考慮して、全て埋める形態を選択しても良い。以下にそれについての実施例3について述べる。
【実施例3】
【0043】
本実施例3のハニカム構造体1も、セル2a(単位空間)が四角柱状空間である場合に該当する。本実施例3のハニカム構造体1は、図5に示すように、外周壁3の外周面Oから隔壁厚tに1.3を乗じた厚さ1.3tだけ内周側に位置する基準面Bに開口して位置する仮想セル2b(仮想単位空間)については複数条のセル2a(単位空間)に含めないこととする。
【0044】
図5中において、水平方向の中心線CHと鉛直方向の中心線CVを設定して、ハニカム構造体1の中心を通る横方向を中心線CHに一致させ、縦方向を中心線CVに一致させるものとすると、中心線CHと中心線CVとの周方向中央が45度線となる。
【0045】
図5中においては、45度線近傍には仮想セル2bは位置せず、45度線に関して線対称に仮想セル2bが分布されている。仮想セル2bの分布態様は、仮想セル2b及びセル2aそのものの寸法と、外周面Oの外形寸法、隔壁厚tの寸法との相互関係により決定される。
【0046】
本実施例3における仮想セル2bとは設計段階で基準面Bに対して開口するか否かを考慮して、穴埋めするか否かを判断するための、仮定された空間を意味する。本実施例3においても、仮想セル2bの穴埋めは、押出成形に用いる口金の仮想セル2bに対応する部分を開口した上で押出成形を行い、仮想セル2bについては押出成形の段階で埋めることとする。
【0047】
本実施例3のハニカム構造体1によっても、実施例1及び実施例2と同様に、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、本実施例3においても、外周壁3に発生する応力集中現象自体を、予め応力集中が発生する箇所の仮想セル2bを埋めるように、押出成形を行うことによって防止することができ、やはり、応力集中箇所のクラックの発生そのものの防止を図ることができる。
【0048】
つまり、本実施例3のハニカム構造体1においても、繰り返し発生する熱応力に伴っての応力集中を防いで熱応力に対する耐性を高めて、耐熱衝撃性を高めることができるとともに、キャニング時に発生する応力に伴っての応力集中を防止して、アイソスタティック強度も高めることができる。
【0049】
さらに、本実施例3においても、耐熱衝撃性を高めることができることから、触媒の活性化のための加熱と、規制対象物質を除去するための再生のための加熱の双方についてのヒートサイクル制御の自由度を高めることができる。このため、ハニカム構造体1をフィルターに用いた場合の、規制対象物質の捕集と、捕集後のフィルターの再生をともにより迅速かつ効率的に行うことを可能なものとして、フィルターの浄化性能をより高めることができる。
【0050】
加えて、本実施例3においても、耐熱衝撃性の向上によって、ハニカム構造体1を用いたフィルターの粒子状物質を捕集した後の再生時に、蓄積された粒子状物質 (PM)を大量に燃焼させることができる。このため、粒子状物質の捕集をなるべく持続的に行い、粒子状物質を蓄積する蓄積量をできるだけ多くすることを可能とすることができる。さらに、本実施例3においては、応力集中防止の対象となるセル2aの体積を他のセル2aよりも小さくすることが必須でないため、粒子状物質の蓄積量の増大をより効率的に図ることができる。
【0051】
また、本実施例3においては、実施例1及び実施例2に比べて、押出成形に用いる口金のセル2aに対応する部分の形態をより単純化することができるので、押出成形を含むハニカム構造体1の製造工程をより簡略化するとともに、ハニカム構造体1の歩留まりを高めることもできる。
【0052】
さらに、本実施例3のハニカム構造体1は、排気ガスとの幾何学的接触面積の増大と、温度上昇制御の敏速性を図るために、隔壁厚tを薄く設定したフィルターに対応させることが容易である。つまり、本実施例3に示したように、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度の双方を確保するにあたって、隔壁厚tに応じて外周壁厚dを比率d/tに基づいて設定することが可能である。
【0053】
外周面Oに隣接したセル2aの外周側を部分的に全て埋める形態については、実施例3に示したもの以外にも以下の形態を選択することもできる。以下にそれについての実施例4について述べる。
【実施例4】
【0054】
本実施例4のハニカム構造体1についてもセル2aが四角柱状空間である場合に該当する。図6に示すように、仮想セル2b(仮想単位空間)のそれぞれの壁面から垂直外側に向けて隔壁厚tだけ拡大された拡大仮想セル2c(拡大仮想単位空間)を仮定する。
【0055】
図7中において、水平方向の中心線CHと鉛直方向の中心線CVを設定して、ハニカム構造体1の横方向を中心線CHに一致させ、縦方向を中心線CVに一致させるものとすると、中心線CHと中心線CVとの周方向中央が45度線となる。
【0056】
図7中においては、45度線近傍に拡大仮想セル2cが位置しており、45度線に関して線対称に拡大仮想セル2cが分布されている。拡大仮想セル2cの分布態様はここでも、拡大仮想セル2cそのものの寸法と、外周面Oの外形寸法、隔壁厚tの寸法との相互関係により決定される。
【0057】
図6に示すように、仮想セル2bは隅部に半径rのR加工部を有しているため、拡大仮想セル2cも仮想セル2bのR加工部を外包する形態の半径R(=t)の拡大R加工部を有している。
【0058】
このように、外周壁3の外周面Oを機械的に構成する切削面CLに隣接して又は開口して位置する仮想セル2bのそれぞれの壁面から垂直外側に向けて隔壁厚tだけ拡大された拡大仮想セル2cを仮定して、図7に示すように、切削面CLに開口して位置する拡大仮想セル2cに属する仮想セル2bについては複数条のセル2aに含めないこととする。
【0059】
この場合においては、埋める対象となる仮想セル2bは、仮想セル2b自体が切削面CLに開口する場合の仮想セル2baを含むとともに、拡大仮想セル2cのうち拡大された部分のみが切削面CLに開口する場合の仮想セル2bbをも含むこととなる。仮想セル2ba、2bbの双方を含む仮想セル2bを埋めるにあたっては、押出成形に用いる口金の仮想セル2ba、2bbに対応する部分を開口した上で押出成形を行って、押出成形の段階で埋めることとする。
【0060】
本実施例4のハニカム構造体1によっても、実施例3と同様に、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、外周壁3に発生する応力集中現象自体を、予め応力集中が発生する箇所の仮想セル2bを埋めるように、押出成形を行うことによって防止することができるので、応力集中箇所のクラックの発生そのものの防止を図ることができる。
【0061】
特に、本実施例4においては図8に示されるように、仮想セル2baのみを埋めることに比べて、発生する応力を、7.8%程度の減少代で減少させることができる。つまり、本実施例4のハニカム構造体1においても、繰り返し発生する熱応力に伴っての応力集中を防いで熱応力に対する耐性を高め、かつ、耐熱衝撃性を高めることができる。加えて、キャニング時に発生する応力に伴っての応力集中をも防止して、アイソスタティック強度をも高めることができる。
【0062】
さらに、本実施例4においても、耐熱衝撃性を高めることができることから、触媒の活性化のための加熱と、規制対象物質を除去するための再生のための加熱の双方についての温度制御の頻度と自由度を高めることができる。従って、ハニカム構造体1をフィルターに用いた場合の、規制対象物質に対する捕集性能をより高めて、捕集後のフィルターの再生をより効率的に行うことを可能なものとして、フィルターの浄化性能をより高めることができる。
【0063】
また、本実施例4においても、耐熱衝撃性を高めることが可能となることに伴い、ハニカム構造体1を用いたフィルターの再生時に、蓄積された粒子状物質 (PM)をより高い加熱温度にて大量に燃焼させることができる。このため、粒子状物質の一サイクルあたりの捕集量を大きくして、粒子状物質を蓄積する蓄積量をできるだけ多くすることができる。さらに、本実施例4においては、応力集中防止の対象となるセル2aの体積を他のセル2aよりも小さくする必要がなく、複数条のセル2a相互間で体積が同一であることから、粒子状物質の蓄積量をより効率的に増大させることができる。
【0064】
さらに、本実施例4のハニカム構造体1は、排気ガスとの幾何学的接触面積の増大と、温度上昇制御の敏速性を図るために、隔壁厚tを薄く設定したフィルターに対応させて、隔壁厚tに応じて外周壁厚dを比率d/tに基づいて設定することが可能であり、設計自由度を高めるとともに、容易に、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度の双方を高めることができる。
【0065】
加えて、本実施例4においても、実施例1及び実施例2に比べて、押出成形に用いる口金のセル2aに対応する部分の形態をより単純化することができるので、押出成形を含むハニカム構造体1の製造工程をより簡略化するとともに、ハニカム構造体1の歩留まりを高めることもできる。
【0066】
さらに、本実施例4においては、拡大仮想セル2cが開口するか否かの判断対象となる面を、元来ハニカム構造体1を機械加工により構成するために設定される切削面CLとしているので、実施例3に比べて、設計面での変更を少なくすることができる。
【0067】
加えて、本実施例4においては、図9にβで示す、切削面CLに開口するか否かにより埋める仮想セル2bを決定しない従来の埋め方における最大応力の発生位置に対して、最大応力の発生位置αを周方向にずらすことができる。このため、最も応力が発生しやすい45度線から発生位置αを意図的にずらせて、最大応力の値そのものの低減と、クラックの発生を防止することができる。なお、図9中に示す圧力は耐熱評価試験に基づく値である。
【0068】
なお上述した実施例1〜4においては、セル2aの配列形態は、図10に示すように、格子状配列のものとしたが、本発明の比率d/tを1.3以上とすることに換えて、図11に示すように、セルを扇形状としセルの配列を半径方向と周方向に設定した上で、半径方向の隔壁厚t1を一定とし、周方向に複数条に延びる隔壁の隔壁厚t2を内周側から外周側に向けて徐々に厚くすることもできる。これにより、半径方向外側に向かうほど大きくなる応力に対応させて隔壁厚t2を設定して、最大応力を抑制し、クラックの発生を防止することができる。
【0069】
あるいは、図12に示すように、図10に示されたものに比べて、上下方向のセル2aの相互間の左右方向における相対位置関係をずらすことにより、周上の45度の位置の応力集中を防止することができ、特には、クラックが発生した後の進行方向を45度方向からずらしてクラックの進行を抑制して、信頼性を高めることができる。
【0070】
また、図13に示すように図10に示した相対位置関係のずらし量を更に大きく設定することもできる。加えて、図14に示すように、セルを六角形とする、又は、図15に示すように、セルを八角形とする、又は、図16に示すようにセルを円形とすることにより、セルの隅部そのもの形状に起因して発生する応力集中を低減して、クラックの発生を防止することもできる。
【0071】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0072】
上述した実施例1〜4のハニカム構造体1は、規制対象物質のうち粒子状物質の捕集量を増大させるにあたって有利であることから、自動車の内特にディーゼル車用のフィルターである、DPF(Diesel Particulate filter)に用いられて好適なものであるが、もちろん、ガソリン車用のフィルターに用いることも可能である。
【0073】
特に実施例1〜4のハニカム構造体1は、排気ガスとの幾何学的接触面積の増大と、温度上昇制御の敏速性を図るために、隔壁厚tを薄く設定したフィルターに対応させて、隔壁厚tに応じて外周壁厚dを比率d/tに基づいて設定することが可能であり、設計自由度を高めるとともに、容易に、耐熱衝撃性とアイソスタティック強度の双方を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、より適切に耐熱衝撃性とアイソスタティック強度を両立させかつ浄化性能を高めることができるハニカム構造体を提供することができる。このハニカム構造体は主に規制対象物質の捕集、再生を行うフィルターに用いられ、このフィルターは、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に用いられる排気ガス浄化装置に適用されて有益であることはもちろん、排気ガスを排出する産業用機械、発電設備、船舶、鉄道車両等にも適用可能なものである。
【符号の説明】
【0075】
1 ハニカム構造体
2 隔壁
2a セル(単位空間)
2b 仮想セル(仮想単位空間)
2ba 仮想セル(仮想単位空間自体が開口)
2bb 仮想セル(拡大仮想単位空間が開口)
2c 拡大仮想セル(拡大仮想単位空間)
3 外周壁
4 スキン層
d 外周壁厚
t 隔壁厚
d/t 比率
Pσmax 最大応力位置
O 外周壁3の外周面(ハニカム構造体1とスキン層4との境界線)
B 基準面(外周面Oから1.3tだけ内側の内周面)
CH 中心線(水平)
CV 中心線(鉛直)
CL 切削面
R 拡大仮想セル2cの四隅の半径
r セル2a又は仮想セル2bの四隅の半径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数条の単位空間を相互に隔てる隔壁と、前記複数条の単位空間の延在する延在方向の周方向に延びて前記隔壁を外包する外周壁と、を一体的に含むハニカム構造体であって、前記外周壁の径方向の外周壁厚を、隣接する前記単位空間相互間に位置する前記隔壁の隔壁厚で除した比率を1.3以上の値とすることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記単位空間が四角柱状空間である場合に、前記外周壁の外周面に隣接して位置する前記単位空間の壁面の位置を当該壁面に垂直な方向に調節することにより前記値を設定することを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記外周面に開口して位置する仮想単位空間については前記複数条の単位空間に含めないことを特徴とする請求項2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記単位空間が四角柱状空間である場合に、前記外周壁の外周面に隣接して位置する前記単位空間の壁面を前記外周面に平行かつ内側に修正することにより前記値を設定することを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記外周面に開口して位置する仮想単位空間については前記複数条の単位空間に含めないことを特徴とする請求項4に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記単位空間が四角柱状空間である場合に、前記外周壁の外周面から前記隔壁厚に前記1.3を乗じた厚さだけ内周側に位置する基準面に開口して位置する仮想単位空間については前記複数条の単位空間に含めないことを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記単位空間が四角柱状空間である場合に、前記外周壁の外周面に隣接して又は開口して位置する仮想単位空間のそれぞれの壁面から垂直外側に向けて前記隔壁厚だけ拡大された拡大仮想単位空間を仮定して、前記外周面に開口して位置する前記拡大仮想単位空間に属する前記仮想単位空間については前記複数条の単位空間に含めないことを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項1】
複数条の単位空間を相互に隔てる隔壁と、前記複数条の単位空間の延在する延在方向の周方向に延びて前記隔壁を外包する外周壁と、を一体的に含むハニカム構造体であって、前記外周壁の径方向の外周壁厚を、隣接する前記単位空間相互間に位置する前記隔壁の隔壁厚で除した比率を1.3以上の値とすることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記単位空間が四角柱状空間である場合に、前記外周壁の外周面に隣接して位置する前記単位空間の壁面の位置を当該壁面に垂直な方向に調節することにより前記値を設定することを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記外周面に開口して位置する仮想単位空間については前記複数条の単位空間に含めないことを特徴とする請求項2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記単位空間が四角柱状空間である場合に、前記外周壁の外周面に隣接して位置する前記単位空間の壁面を前記外周面に平行かつ内側に修正することにより前記値を設定することを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記外周面に開口して位置する仮想単位空間については前記複数条の単位空間に含めないことを特徴とする請求項4に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記単位空間が四角柱状空間である場合に、前記外周壁の外周面から前記隔壁厚に前記1.3を乗じた厚さだけ内周側に位置する基準面に開口して位置する仮想単位空間については前記複数条の単位空間に含めないことを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記単位空間が四角柱状空間である場合に、前記外周壁の外周面に隣接して又は開口して位置する仮想単位空間のそれぞれの壁面から垂直外側に向けて前記隔壁厚だけ拡大された拡大仮想単位空間を仮定して、前記外周面に開口して位置する前記拡大仮想単位空間に属する前記仮想単位空間については前記複数条の単位空間に含めないことを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−25628(P2012−25628A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166073(P2010−166073)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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