説明

ハヤトウリを用いた木酢液・竹酢液の精製方法及びこれによって得られる木酢液・竹酢液

【課題】従来技術によっては、パパイン、活性炭を一切使用せずに、木酢液・竹酢液の有効成分を損なわないように有害成分を除去し、人体に有用な木酢液・竹酢液を精製することができなかった。
そこで、本発明は、木酢液・竹酢液から有効成分を損なわずに有害成分を除去し、木酢液・竹酢液を精製する方法に関し、特に、パパイン、活性炭を一切使用せずに、ハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素を用いることによって、木酢液・竹酢液を精製する木酢液・竹酢液の精製方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】木酢液・竹酢液に、ハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素を木酢液・竹酢液に添加して所定時間浸漬させる工程によって木酢液・竹酢液を精製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木酢液・竹酢液から有効成分を損なわずに有害成分を除去し、木酢液・竹酢液を精製する方法に関し、特に、パパイン及び活性炭を使用せずに、ハヤトウリを用いて木酢液・竹酢液を精製する木酢液・竹酢液の精製方法及びこれによって得られる木酢液・竹酢液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、木酢液・竹酢液が、非常に多くの有効成分を含んでいることは知られている。
木酢液・竹酢液とは、樹木・竹などの木質原料を乾留した際に生じる液体のことである。
樹木や竹などの木質原料を乾溜することにより気体が発生し、これを冷却して得られる液体を長時間静置し、沈降するタール分を分離したものが粗木酢液・粗竹酢液であるが、木酢液・竹酢液は、この粗木酢液・粗竹酢液を静置して、上層の軽質油、下層の沈降タールを除いた中層の液体を木酢液・竹酢液という。
【0003】
木酢液・竹酢液は、原料である樹木や竹などの木質材料や製造方法などの違いにもよるが、有機酸を主体とした液体で、肥料要素、微量要素(ミネラル)など、200種以上の成分が含まれているといわれている。
木酢液・竹酢液の主成分は、酢酸で、その他にも、メタノール、エタノール、プロパノール、ヒドロキシアセトン、フルフラール、クレゾール、ホルムアルデヒト、ベンゼン、トルエン、ベンツピレン、ピリジン、石炭酸、3,4−ベンゾピレン、1,2,5,6−ジベンゾアントラセン、3−メチルアルコールアンスレンなどが含まれ、人体に有害な成分も含まれている。
【0004】
そこで、木酢液・竹酢液から有害成分を除去し、人体に有用な木酢液・竹酢液を作り出す方法が求められている。
従来からの技術としては、木酢液・竹酢液から有害成分であるフェノールを除去する方法として、下記特許文献1が開示されている。
【0005】
この発明は、木酢液・竹酢液にパパイヤに含まれる蛋白質分解酵素であるパパインを添加して所定時間経過させた後、この木酢液・竹酢液を活性炭で処理することにより、簡単に木酢液・竹酢液からフェノールを除去することができるというものである。
【0006】
木酢液・竹酢液に添加したパパインが木酢液・竹酢液に含まれるフェノールを分解することにより、木酢液・竹酢液に含まれるフェノールの多くが除去され、更にこの後、この木酢液・竹酢液を活性炭で処理することにより、木酢液・竹酢液に残存するフェノールを活性炭が吸着し、木酢液・竹酢液に含まれるフェノールのほとんどを除去するというものである。
【特許文献1】特開平10−88145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の木酢液・竹酢液からのフェノール除去方法は、木酢液・竹酢液にパパインを添加して所定時間経過させた後、この木酢液・竹酢液に活性炭を投入し、または活性炭に木酢液・竹酢液を通すことによって、残存するフェノールを活性炭が吸着することによってフェノールを除去するものであるが、活性炭は、無数の特異な細孔構造をもつ無定形炭素であるため、木酢液・竹酢液に含まれるフェノールなどの有害成分を吸着するが、有害成分だけでなく有効成分までも吸着してしまう。
【0008】
さらに、パパイヤに含まれる蛋白質分解酵素であるパパインは、非常に強い酵素であるため、これも同様に木酢液・竹酢液に含まれる有害成分だけでなく、有効成分までをも除去してしまう。
【0009】
このため、上記の従来技術によっては、木酢液・竹酢液の有効成分をできるだけ損なわずに有害成分を除去し、人体に有用な木酢液・竹酢液を精製することができなかった。
【0010】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、木酢液・竹酢液から有効成分を損なわずに有害成分を除去し、木酢液・竹酢液を精製する方法に関し、特に、パパイン及び活性炭を使用せずに、木酢液・竹酢液を精製する木酢液・竹酢液の精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明においては、次の技術的手段を講じている。
【0012】
本発明の請求項1に係る木酢液・竹酢液の精製方法は、
木酢液・竹酢液に
ハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素を添加して所定時間浸漬させる工程によって木酢液・竹酢液を精製する
ことを特徴としている。
【0013】
蛋白質分解酵素は、ブロメラインF、パパイン等の植物由来の酵素、パンクレアチンF、トリプシン等の動物由来の酵素、ウマミザイムG、プロテアーゼM等の微生物由来の酵素など、多くの蛋白質分解酵素がある。
【0014】
本発明は、これらの蛋白質分解酵素のうち、特にハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素を用いるものである。
ハヤトウリ(隼人瓜、学名:Sechim edule)は、ウリ科の植物であり、別名:センナリウリ(千成り瓜)とも呼ばれている。
【0015】
ハヤトウリの果実は、洋ナシ形であり、中央に大型の種子を1個つけ、種以外の部分は果肉と果皮とからなる。
本発明では、ハヤトウリの果実を、未熟果実、成熟果実にかかわらず、果肉、果皮、種子の全てに含まれる蛋白質分解酵素を用いる。
【0016】
本発明における添加とは、蛋白質分解酵素を木酢液・竹酢液の中に投入する方法により行うことを意味する。
すなわち、蛋白質分解酵素を含有するハヤトウリを、木酢液・竹酢液の中に投入することにより、添加とする。
具体的には、ハヤトウリを適宜所望の大きさに切り、またピューレ状などに加工して、木酢液・竹酢液の中に投入する。
【0017】
また、蛋白質分解酵素のみをハヤトウリの果実から抽出し、この抽出した蛋白質分解酵素のみを木酢液・竹酢液に添加しても良い。
本発明にかかる精製方法は、以上のようにして木酢液・竹酢液を精製するのであるが、特に、パパイヤに含まれる蛋白質分解酵素であるパパイン、及び、活性炭を一切使用しないこととし、蛋白質分解酵素を木酢液・竹酢液に添加して所定時間浸漬させる工程のみによって、木酢液・竹酢液から有害成分を除去し、木酢液・竹酢液を精製するものである。
【0018】
パパイヤに含まれる蛋白質分解酵素であるパパインや、吸着力に優れた活性炭を使用した場合、短時間で有害成分を除去して木酢液・竹酢液を精製することができるが、有害成分だけでなく、有効成分をも除去してしまうという問題があった。
【0019】
そこで、本発明では、パパイン及び活性炭を使用する代わりに、木酢液・竹酢液にハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素を添加し、さらに従来技術に比べて、より長い時間、木酢液・竹酢液の中に浸漬させることにより、徐々に有害成分を除去し、木酢液・竹酢液の有効成分を損なわずに、効果的に木酢液・竹酢液を精製することができるようにしたものである。
【0020】
ハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素を浸漬させる時間は、具体的には、1週間以上とするのが良い。
好ましくは、10日間から6ヶ月間浸漬させるのが良い。
さらに好ましくは、2ヶ月から6ヶ月間浸漬させるのが良い。
【0021】
ハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素は、パパイヤに含まれる蛋白質分解酵素であるパパインに比べて速効性がないので、パパインを添加した従来技術に比べて、より多くの時間を要するためである。
浸漬後は、ハヤトウリの果実を木酢液・竹酢液から取り出す。
【0022】
本発明の請求項2に係る木酢液・竹酢液の精製方法は、
前記の工程は、
少なくとも2回以上行い、有害成分の分解除去及び風味や性質を改良する
ことを特徴としている。
【0023】
本発明における工程は、前記の木酢液・竹酢液に蛋白質分解酵素を浸漬させる工程を、複数回行うことを意味し、少なくとも2回以上行うことをいう。
これは、木酢液・竹酢液に蛋白質分解酵素を添加して所定時間浸漬させる工程を、複数回に分けて行うことで、1回のみで行う場合に比べ、有害成分をより効果的に除去して木酢液・竹酢液を精製できることを経験的に知り得たことによる。
【0024】
ハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素は、パパイヤに含まれる蛋白質分解酵素であるパパインに比べて速効性がないので、長期間木酢液・竹酢液の中に浸漬させる必要があるが、長時間浸漬させることにより、ハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素の働きは弱くなってしまう。
【0025】
そのため、1回目の工程で添加したハヤトウリの果実を木酢液・竹酢液から取り出し、新しく蛋白質分解酵素を含むハヤトウリの果実を投入することで、効果的に木酢液・竹酢液を精製しようとするものである。
【0026】
例えば、2回以上の工程を経ることとした場合、1回目の工程は、木酢液・竹酢液の有害成分を分解、除去することを目的とした分解反応工程であり、2回目以降の工程は、木酢液・竹酢液の風味や性質の改良を目的としたエキス融合工程と位置付けることができる。
【0027】
このように、複数回の工程に分けて木酢液・竹酢液を精製することにより、有効成分を残しつつ、より効果的に有害成分を除去することができ、さらには精製された木酢液・竹酢液の風味や性質も改良することができ、より有用な木酢液・竹酢液を得ることができる。
【0028】
この複数回の工程における木酢液・竹酢液に蛋白質分解酵素を添加して所定時間浸漬させる時間は、各工程で同じ時間にしても良いし、各工程で異なる時間にしても良い。
【0029】
例えば、1回目の工程では、短時間に有害成分を除去することを目的として比較的短い期間とし、2回目以降の工程では、徐々に有害成分を除去すると共に、木酢液・竹酢液の風味や性質も改良することを目的として比較的長い期間とすることができる。
【0030】
具体的には、例えば、1回目の工程では、木酢液・竹酢液に蛋白質分解酵素を浸漬させる期間を2週間から4週間とし、2回目以降の期間を2ヶ月から6ヶ月とする。
【0031】
また、この複数回の工程の各工程ごとで、木酢液・竹酢液に添加する蛋白質分解酵素を含む果実を、全く同じ大きさに切り分けて添加しても良いし、異なる大きさに切り分けて添加しても良い。
【0032】
異なる大きさに切り分ける場合の具体的方法は、例えば、1回目の工程では、蛋白質分解酵素の反応を早くさせるために、ハヤトウリの果実を細かく細断したり、ピューレ状などに加工するなどして、木酢液・竹酢液の中に投入し、2回目以降の工程では、1回目の工程の時よりも、蛋白質分解酵素の反応を遅くさせるために、ハヤトウリの果実を大きめの形状に切るなどして、切断面の面積が小さくなるように切り、木酢液・竹酢液の中に投入する。
【0033】
これによれば、1回目の工程では、蛋白質分解酵素が早く働くので、短時間で早く有害成分を除去させることができ、2回目の工程では、蛋白質分解酵素が徐々に働くので、残りの有害成分を徐々に除去すると共に、木酢液・竹酢液の風味や性質も改良することができ、より有用な木酢液・竹酢液を得ることができる。
【0034】
本発明の請求項3に係る木酢液・竹酢液の精製方法は、
前記の蛋白質分解酵素が
ククミシン類似プロテアーゼである
ことを特徴としている。
【0035】
本発明に係る蛋白質分解酵素は、ハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素であるククミシン類似プロテアーゼを用いることとしたものである。
ククミシン類似プロテアーゼは、ハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素であるが、本発明では、ハヤトウリの、特に果実に含まれるククミシン類似プロテアーゼを用いたものである。
【0036】
ハヤトウリの果実は、未熟果実、成熟果実にかかわらず、種子、果肉、果皮を含む全てをいう。
【0037】
本発明の請求項4に係る木酢液・竹酢液の精製方法は、
前記の工程によって得られた木酢液・竹酢液に対して、
摂氏55℃以下の温度で減圧蒸留処理を行う
ことを特徴としている。
【0038】
減圧蒸留処理は、前記の工程によって得られた木酢液・竹酢液を、蒸留釜において液温が摂氏55℃以下になるように保ち、蒸留するものである。
【0039】
好ましくは、液温が摂氏35℃〜55℃の範囲内で減圧蒸留処理を行うのが良い。
液温が摂氏55℃を超えてしまうと、液中の蛋白質分解酵素が不活又は死滅してしまう。
【0040】
そこで、蛋白質分解酵素が効果的に働くように、液温を摂氏55℃以下に保ち、減圧蒸留処理を行うこととした。
これにより、より効果的に有害成分を分解除去することができる。
【0041】
また、減圧蒸留処理は、複数回行っても良い。
この際の、釜内における圧力は、複数回の処理ごとに変えても良い。
【0042】
例えば、1回目の減圧蒸留処理では釜内圧力を85〜90kPaにし、2回目の減圧蒸留処理では釜内圧力を20〜25kPaにしても良い。
このように圧力を変えて減圧蒸留処理を複数回行うことで、例えば、各有害成分ごとに除去に適した圧力に設定して蒸留するなど、より効果的に有害成分を蒸留することができる。
【0043】
本発明の請求項5に係る木酢液・竹酢液の精製方法は、
前記の減圧蒸留処理によって得られた蒸留液に対して、
最初と最後を捨て、中間の50%を得る
ことを特徴としている。
【0044】
前記の工程によって得られた木酢液・竹酢液を減圧蒸留によって処理することで、有害成分を効果的に分解除去し、風味や性質をより向上させた木酢液・竹酢液を得ることができるが、より飲用に適した木酢液・竹酢液を得るため、蒸留処理後の蒸留液に対して、最初と最後の部分を捨てて、中間の50%を得ることとしたものである。
【0045】
これにより、より飲用に適した木酢液・竹酢液を得ることができる。
【0046】
本発明の請求項6に係る木酢液・竹酢液は、
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の木酢液・竹酢液の精製方法によって得られる木酢液・竹酢液である
ことを特徴としている。
【0047】
本発明にかかる木酢液・竹酢液は、請求項1から請求項5までのいずれかに記載の精製方法によって得られる木酢液・竹酢液である。
【0048】
木酢液・竹酢液は、原料である樹木や竹などの木質材料や製造方法などの違いにもよるが、有機酸を主体とした液体で、肥料要素、微量要素(ミネラル)など、200種以上の成分が含まれているといわれている。
【0049】
しかし、木酢液・竹酢液の主成分は、酢酸で、その他にも、メタノール、エタノール、プロパノール、ヒドロキシアセトン、フルフラール、クレゾール、ホルムアルデヒト、ベンゼン、トルエン、ベンツピレン、ピリジン、石炭酸、3,4−ベンゾピレン、1,2,5,6−ジベンゾアントラセン、3−メチルアルコールアンスレンなどが含まれ、人体に有害な成分も含まれている。
【0050】
そこで、木酢液・竹酢液から有害成分を除去し、人体に有用な木酢液・竹酢液を作り出す方法が求められている。
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の精製方法によれば、より効果的に有害成分を分解除去し、風味や性質をより向上させた飲用に適した木酢液・竹酢液を得ることができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明では以下のような効果がある。
【0052】
1)パパイン、活性炭を一切使用せずに、ハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素を用いることで、有効成分を損なわずに木酢液・竹酢液から有害成分を除去し、飲用に適した木酢液・竹酢液に精製できる。
【0053】
2)木酢液・竹酢液を精製する工程を複数の段階に分けて行うことで、より効果的に有害成分を分解除去し、風味や性質をより向上させた飲用に適した木酢液・竹酢液に精製できる。
【0054】
3)ハヤトウリに含まれるククミシン類似プロテアーゼにより、木酢液・竹酢液に含まれる有害成分を効果的に分解除去し、風味や性質をより向上させた飲用に適した木酢液・竹酢液に精製できる。
【0055】
4)蛋白質分解酵素及び木酢液・竹酢液に含まれる有効成分を不活、死滅させずに、風味や性質をより向上させた飲用に適した木酢液・竹酢液に精製できる。
【0056】
5)木酢液・竹酢液に含まれる有害成分を、より効果的に除去し、風味や性質をより向上させた飲用に適した木酢液・竹酢液に精製できる。
【0057】
6)風味や性質をより向上させた、より飲用に適した木酢液・竹酢液を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
本発明にかかる最適な実施例を図面とともに以下説明する。
【0059】
本発明にいう木酢液・竹酢液は、原料である樹木や竹などの木質材料の種類や製造方法などは特に限定されず、いずれの原料・方法によって作られた木酢液・竹酢液であっても良い。
【0060】
本発明にかかる精製方法は、木酢液でも竹酢液でも異なることなく精製することができるので、以下の実施例では、木酢液の精製方法についてのみ説明する。
本実施例における木酢液は、カシ、シイ、サクラ、ブナ等の樹木、樹皮等から採取している。
【0061】
木酢液を製造する方法は、カシ、シイ、サクラ、ブナ等の樹木、樹皮等を170度〜800度の温度で炭化させ、炭化させた際に発生した煙を誘導してこれを冷却し、煙に含まれた水分を液化することによって行う。
【0062】
この液化された液体を遠心分離、或いは2〜3カ月静置することによって、液体内のタールや固形不純物を沈澱分離させ、上澄液を取り出して、これを木酢液としている。
【0063】
以下、この木酢液を「原材料液」と呼び、説明する。
【0064】
本発明にかかる第1の実施例は、蛋白質分解酵素を含有するハヤトウリの果実を原材料液に投入し、所定時間浸漬させる工程を1回のみ行うことによって、原材料液を精製した。
【0065】
ハヤトウリは、未熟果実と成熟果実とに拘らず、種子、果肉、果皮の全てを用い、20mm程度の大きさで角切りに細断し、これを原材料液に投入し、所定時間静置して浸漬させた。
【0066】
この原材料液に、ハヤトウリの果実を添加する工程は、室温で行う。
【0067】
特に、ハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素であるククミシン類似プロテアーゼを活発に作用させるため、木酢液にハヤトウリの果実を浸漬させている間は、原材料液の液温を25〜35℃内に保つことが望ましい。
【0068】
また、原材料液に投入したハヤトウリの果実は、腐敗を防止するために、投入する原材料液に対して完全に浸漬した状態にすることが望ましい。
原材料液にハヤトウリの果実を浸漬させる時間は、2ヶ月とした。
【0069】
パパイン、活性炭を使用する代わりに、ハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素を用い、さらに、これを原材料液を浸漬させる時間を従来技術に比べてより長い時間にすることで、徐々に有害成分を除去し、原材料液の有効成分を損なわずに、効果的に原材料液を精製した木酢液を得ることができるようにした。
【0070】
2ヶ月間の浸漬の後、原材料液に投入したハヤトウリの果実を原材料液から取り出す。
【0071】
その後、原材料液を摂氏55℃以下の温度条件下において減圧蒸留処理を施した。
好ましくは、摂氏35℃〜55℃の温度条件下で減圧蒸留処理を施すのが良い。
【0072】
減圧蒸留処理によって得られたもののうち、最初と最後に蒸留されたものは捨てて、中間部分の50%を回収し、精製した木酢液とする。
これにより、パパイン、活性炭を一切使用せずに、有効成分を損なわずに原材料液から有害成分を分解除去し、飲用に適した木酢液に精製できる。
【0073】
また、本発明にかかる第2の実施例を、フローチャートによって以下説明する。
【0074】
第2の実施例は、蛋白質分解酵素を含有するハヤトウリの果実を原材料液に投入し、所定時間浸漬させる工程を2段階に分けて木酢液を精製した。
【0075】
各工程における、ハヤトウリの果実の切り分けの大きさ、ハヤトウリの果実を浸漬させる時間は、全て同一とした。
全く同一の工程を複数回行うことで、1回のみの工程による精製方法に比べて、より有害成分を除去し、且つ精製後の木酢液に含まれる有効成分の量が多いことが分かった。
【0076】
しかし、各工程で、ハヤトウリの果実の切り分けの大きさ、ハヤトウリの果実を浸漬させる時間を変えても、1回のみの工程による場合と比べて、より有害成分を除去し、且つ精製後の木酢液に含まれる有効成分の量は多いことに変わりはないので、必ずしも、ハヤトウリの果実の切り分けの大きさ、ハヤトウリの果実を浸漬させる時間は、全て同一とする必要はない。
【0077】
第2の実施例の具体的方法は、以下の通りである。
【0078】
まず、樹木、樹皮等から原材料液である木酢液を採取し(S1)、この原材料液である木酢液の中に、1回目の工程として、ハヤトウリの果実を添加した(S2)。
【0079】
1回目の工程は、有害成分の分解除去を目的とした分解反応工程であり、未熟果実と成熟果実と問わず、種子、果肉、果皮の全てを含むハヤトウリの果実を20mm程度の大きさで角切りに細断し、これを原材料液に投入した。
ハヤトウリの果実を添加した状態で、2ヶ月間静置して浸漬させた(S3)。
【0080】
この(S2)及び(S3)の処理が、木酢液の有害成分を分解、除去することを目的とした分解反応工程であり、1回目の工程である。
【0081】
1回目の工程の後、原材料液からハヤトウリの果実を取り出し(S4)、原材料液の中に再度、ハヤトウリの果実を添加した(S5)。
【0082】
ハヤトウリの果実は、1回目の工程と同様、未熟果実と成熟果実と問わず、種子、果肉、果皮の全てを含むハヤトウリの果実を20mm程度の大きさで角切りに細断し、これを原材料液に投入した。
【0083】
再度ハヤトウリの果実を添加した状態で、1回目の工程と同様、2ヶ月間静置して浸漬させた(S6)。
【0084】
この(S5)及び(S6)の処理が、木酢液の風味や性質の改良を目的としたエキス融合工程であり、2回目の工程である。
【0085】
2回目の工程の後、原材料液からハヤトウリの果実を取り出した(S7)。
【0086】
その後、原材料液を摂氏40℃〜50℃の温度条件下において減圧蒸留処理を施した(S8)。
【0087】
減圧蒸留処理によって得られた蒸留液のうち、最初と最後に蒸留されたものは捨てて、中間部分の50%のみを回収し(S9)、これにより得られた蒸留液を本発明にかかる精製方法によって得られた木酢液とする(S10)。
【0088】
これにより、パパイン、活性炭を一切使用せずに、有効成分を損なわずに原材料液から有害成分を分解除去し、木酢液の風味や性質を向上させた、より飲用に適した木酢液に精製できる。
【0089】
以上の本発明にかかる実施例のうち、特に第2の実施例によって得られた木酢液を成分分析した結果、木酢液に含まれる有害成分のうち、特に、フェノール、メタノール、ホルムアルデヒド、アセレン、酢酸エチルを除去でき、ミネラルやポリフェノールはそのまま残されていることが分かった。
【0090】
上記第2の実施例によって得られた木酢液の成分分析結果を以下に示す。
【0091】
フェノール含有量 ポリフェノール含有量
木酢液(原液) 1000ppm 600ppm
精製液(精製処理後) 10ppm 500ppm
【0092】
以上により、本発明によれば、活性炭を一切使用せずに、有効成分を損なわずに原材料液から有害成分を分解除去し、木酢液の風味や性質を向上させた、より飲用に適した木酢液の精製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係る木酢液の精製方法の第2の実施例の手順を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木酢液・竹酢液に
ハヤトウリに含まれる蛋白質分解酵素を添加して所定時間浸漬させる工程によって木酢液・竹酢液を精製する
ことを特徴とする木酢液・竹酢液の精製方法。
【請求項2】
前記の工程は、
少なくとも2回以上行い、有害成分の分解除去及び風味や性質を改良する
ことを特徴とする請求項1に記載の木酢液・竹酢液の精製方法。
【請求項3】
前記の蛋白質分解酵素は、
ククミシン類似プロテアーゼである
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の木酢液・竹酢液の精製方法。
【請求項4】
前記の工程によって得られた木酢液・竹酢液に対して、
摂氏55℃以下の温度で減圧蒸留処理を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の木酢液・竹酢液の精製方法。
【請求項5】
前記の減圧蒸留処理によって得られた蒸留液に対して、
最初と最後を捨て、中間の50%を得る
ことを特徴とする請求項4に記載の木酢液・竹酢液の精製方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の木酢液・竹酢液の精製方法によって得られる
ことを特徴とする木酢液・竹酢液。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−29969(P2009−29969A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196777(P2007−196777)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(506200131)株式会社亜熱帯薬酵技術研究所 (2)
【Fターム(参考)】