説明

ハロゲン化ポリマーの安定剤系

本発明は、成分(A)として、式(A):
【化1】


{式中、mは3.8〜4.2であり、nは0〜3である}のカルシウムモノカルボナトヒドロキソジアルミナートと、
成分(B)として、式:
【化2】


{式中、MtはLiまたはNaであり、AnはOClO3であり、及びqは1である}のモノマー単位をもつカテナ-2,2’,2”-ニトリロトリスエタノールパークロラトリチウムまたは-ナトリウム配位ポリマー(B1)及び/または四級または三級アンモニウムまたはホスホニウムの過塩素酸塩(B2)を含むハロゲン-含有ポリマーの安定剤系に関する。
本発明は、前記安定剤系を含む組成物及び物品並びに、前記系及び組成物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン含有ポリマーの安定剤系、また前記安定剤系を含む組成物及び物品、並びに前記系及び組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン含有プラスチックは、これらが加工や長期使用の間に熱応力に暴露されると、不都合な分解反応や不都合な崩壊反応となる傾向があることが知られている。この問題は金属含有安定剤を使用することによって解決することができ、これらの安定剤は、加工の前またはその間にハロゲン含有ポリマーに添加される。既知の安定剤の中には、バリウム-カドミウム安定剤、鉛安定剤、有機スズ安定剤、バリウム-亜鉛安定剤及びカルシウム-亜鉛安定剤がある。これらの安定剤の群は全て重金属を含んでいるが、これでは環境適合性を損なう。
【0003】
従って、近年、重金属を含まない、有機系として知られる系の開発がますますみられるようになり、現在、市場で入手可能でもある。これらは固体安定剤であり、多くが圧縮された、より環境に優しい形状で取り扱われる。これらの有機ベースの系は多成分混合物であり、その主成分はハイドロタルサイト類の物質である(ヒドロキシカルボン酸マグネシウムアルミニウム)。
【0004】
しかしながら、この種の化合物に含まれる原材料のため、製造が比較的高価である。その上、マグネシウム塩とアルミニウム塩とを使用しなければならないため、製造プロセスにはかなりの量の廃水が伴う。
【0005】
それぞれハイドロタルサイト及びハイドロカルマイト(加藤石)を含む、PVCの熱安定剤として機能する重金属を含まない組成物は、たとえば欧州特許EP 1 046 668 B1(特許文献1)及び同EP 0930 332 B1(特許文献2)に記載されている。
【0006】
従って、より安価で且つ過剰に資源を使用せずに、より環境適合的に合成し得る物質を探究することがなお必要とされている。
【0007】
カルシウムモノカルボナトヒドロキソジアルミナートの原材料価格は、PVCの熱安定剤にとって魅力的である。しかしながら、これらは工業的に製造するには非常に費用がかかる。ドイツ特許出願番号DE 10 2006 055214.8(特許文献3)では、この種の化合物の製造プロセスについて記載している。このプロセスは低コストの原材料を使用し、発生する廃水量も非常に少ないので、低コストで環境に優しく製造することができる。
【0008】
配位ポリマー形状のトリエタノールアミン-金属分子内錯体は、合成ポリマー添加剤としてPCT国際公開第WO A2006/0136191(特許文献4)により開示されている。
【0009】
利用可能な安定剤系はあるものの、優れた安定剤特性とさらに上記の好都合な点とを持つことができる代替系が求められている。
【0010】
従って本発明の目的は、これらの安定剤系を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許EP 1 046 668 B1
【特許文献2】欧州特許EP 0 930 332 B1
【特許文献3】ドイツ特許出願番号DE 10 2006 055214.8
【特許文献4】PCT国際公開WO A2006/0136191
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本目的は、成分(A)として、式(A):
【化1】

{式中、mは3.8〜4.2であり、nは0〜3である}
のカルシウムモノカルボナトヒドロキソジアルミナートと、
成分(B)として、式:
【化2】

{式中、MtはLiまたはNaであり、AnはOClO3であり、及びqは1である}
のモノマー単位をもつカテナ(catena)-2,2’,2”-ニトリロトリスエタノールパークロラトリチウムまたは-ナトリウム配位ポリマー(B1)及び/または四級または三級アンモニウムまたはホスホニウムの過塩素酸塩(B2)と
を含むハロゲン-含有ポリマーの安定剤系により達成される。
【0013】
具体的には、成分(A)と(B)との組み合わせにより、特にPVCにおいて熱安定剤作用を高めることが見いだされた。成分(C)を添加することにより、さらに高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
成分(A)は、式(A)のカルシウムモノカルボナトヒドロキソジアルミネートである。この化合物の製造は、たとえばドイツ特許出願番号第DE 10 2006 055214.8に記載されている。
【0015】
成分(B)は、化合物(B1)及び/または(B2)を含む。
【0016】
化合物(B1)は、配位ポリマーであり、以下のモノマー単位:
【化3】

{式中、MtはLiまたはNaであり、AnはOClO3であり、及びqは1である}
を含む。
【0017】
国際公開WO-A2006/0136191は、本質的にこれらについて記載し、その製造法についても記載する。
【0018】
化合物(B2)は四級または三級アンモニウムであり、それぞれホスホニウムパークロレート(過塩素酸塩)である。
【0019】
これらは好ましくは式:R1R23XClO4{式中、XはPまたはNであり、R1はHまたはR2であり、R2はそれぞれ互いに独立して、1〜20個の炭素原子をもつ飽和若しくは不飽和、分岐若しくは非分岐の環式若しくは非環式の、または環式及び非環式の両方をもつ炭化水素基である}のパークロレートである。
【0020】
これらの四級塩は、水中、アルカリ金属パークロレート(主にナトリウム化合物)と四級アンモニウムまたはホスホニウム塩(主にハロゲン化物または硝酸塩)とのアニオンメタセシスにより得ることができ、ここで四級オニウムパークロレート(onium perchlorate)は濾過可能な沈殿物として生成する。三級オニウムパークロレートは、過塩素酸水溶液で三級アミンまたはホスファンをプロトン化することにより生成される。
【0021】
成分(A)をベースとする成分(B)の割合は、好ましくは1〜10重量%である。
【0022】
本発明の安定剤系は、さらに成分(C)を含むことができるが、これらは窒素含有有機化合物または水酸化カルシウムである。
【0023】
成分(C)は、置換シアノアセチル尿素(C-1)、置換6-アミノウラシル(C-2、C-3、C-4、C-5及びC-6)、置換モノまたはポリ-1,4-ジヒドロピリジン(C-7)、及び3-アミノクロトン酸エステル(C-8)であり、以下の構造をもつ窒素含有有機化合物(C)を含むのが好ましい:
【化4】

{式中、R3=C1-C20-アルキル、C3-C6-アルケニル、C7-C9-フェニルアルキル、非置換フェニル、または1〜3個のC1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、若しくはヒドロキシ基で置換されたフェニル;
R4=R3またはH;
R5=Hまたはヒドロキシ-C2-C4-アルキル、ヒドロキシフェニル、C1-C4-アルコキシフェニル;
R6=C1-C20-アルキル;
R7=Hまたは以下の基:C1-C14-アルキル、C2-C4-アルケニル、C4-C8-置換されていてもよいシクロアルキル、C6-C10-アリール、C7-C10-アルカリール、C7-C10-アラルキル、-CH2-O-R9、ここで
R9=C1-C10-アルキル基若しくはC2-C4-アルケニル基、またはC4-C8-シクロアルキルであり、好適にはオキシラン環を含む;
R8=1〜4個のO若しくはS原子が割り込み得るか、及び/または1〜4個のOH基により置換され得る非分岐若しくは分岐C2-C20-アルキレン、またはジメチロールシクロヘキサン-1,4-ジイル、ポリエチレン-(若しくは-プロピレン)グリコール-α,ω-ジイル(ポリは好ましくはテトラからデカである)、ポリグリセリル-α,ω-ジイル(ポリは好ましくはテトラからデカである)、若しくはグリセロトリイル、トリメチロールエタン(若しくは-プロパン)トリイル、ペンタエリスリトール-トリ(若しくは-テトラ)イル、ビストリメチロールエタン(若しくは-プロパン)トリ(若しくは-テトラ)イル、ジグリセロールトリ(若しくは-テトラ)イル、テトリトール-テトライル、トリグリセロールトリ(若しくは-テトラ-若しくは-ペンタ)イル、ペンチトールペンタイル、ジペンタエリスリトール-ペンタ(若しくは-ヘキサ)イル及びヘキシトール-ヘキサイル;及び
p=2〜6}。
【0024】
前記置換シアノアセチル尿素は1,3-ジメチルシアノアセチル尿素であり、前記置換6-アミノウラシルは、1,3-ジメチル-6-アミノウラシル、1,3-ジアリル-6-アミノウラシル、若しくは5,5’-[C4-C18-アルキリデン]-ビス-1,3-ジメチル-6-アミノウラシルであり、前記置換1,4-ジヒドロピリジンは2,6-ジメチル-3,5-ビスカルボキシラウリル-1,4-ジヒドロピリジンであり、及び前記3-アミノクロトン酸エステルは1,4-ブタンジイルビス-3-アミノクロトネートまたは2,2’-チオビスエタンジイル3-アミノクロトネートであるのが特に好ましい。
【0025】
物質群(C-1)から(C-6)は、欧州特許0768336、同1510545、同0967209、同0967208、同0962461及び同1044968により詳細に記載されている。
【0026】
特に好ましいものは、成分(A)〜(C)として以下の化合物である。
【0027】
(A):テトラカルシウムモノカルボナトドデカヒドロキソジアルミネート及びその水和物;
(B):カテナ-2,2’,2”-ニトリロトリスエタノールパークロラトナトリウム;
(C):(C-1)1,3-ジメチルシアノアセチル尿素;
(C-2)1-[C3-C22-アルキル]-または1-ベンジル-6-アミノウラシル;
(C-3)ビス-1,3-C1-C22-アルキル-または1,3-ジベンジル-6-アミノウラシル;
(C-4)6-[2-ヒドロキシエチルアミノ]-、6-[2(3,4)-ヒドロキシアニリノ]-、または6-[2(3,4)-メト(エト)キシアニリノ]-1,3-ジメチルウラシル;
(C-5)5,5’-[C4-C18-アルキリデン]-ビス-1,3-ジメチル-6-アミノウラシル;
(C-6)1-メチル(フェニル、ベンジル)-3-[2-ヒドロキシブチル]-6-アミノウラシル、または1-メチル(フェニル、ベンジル)-3-[2-ヒドロキシ-2-アリルオキシエチル]-6-アミノウラシル;
(C-7)2,6-ジメチル-3,5-ビスカルボキシラウリル-1,4-ジヒドロピリジン;
(C-8)1,4-ブタンジイルビス-3-アミノクロトネート、または2,2’-チオビスエタンジイル3-アミノクロトネート。
【0028】
(C)の中でも、以下のものは特に非常に好ましい:
1,3-ジメチル-6-アミノウラシル、1,3-ジベンジル-6-アミノウラシル(C-3);
1,3-ジメチル-6-[2-ヒドロキシアニリノ]ウラシル(C-4);
5,5’-ペンチリデンビス-1,3-ジメチル-6-アミノウラシル、
5,5’-ヘキシリデンビス-1,3-ジメチル-6-アミノウラシル、
5,5’-ヘプチリデンビス-1,3-ジメチル-6-アミノウラシル、
5,5’-オクチリデンビス-1,3-ジメチル-6-アミノウラシル、
5,5’-ウンデシリデンビス-1,3-ジメチル-6-アミノウラシル、または
5,5’-ドデシリデンビス-1,3-ジメチル-6-アミノウラシル(C-5);
1-メチル-3-[2-ヒドロキシブチル]-6-アミノウラシル、または
1-ベンジル-3-[2-ヒドロキシブチル]-6-アミノウラシル(C-6);
2,6-ジメチル-3,5-ビスカルボキシラウリル-1,4-ジヒドロピリジン(C-7)及び
1,4-ブタンジイルビスアミノクロトネート、または
2,2’-チオジエタノールビスアミノクロトネート(C-8);
水酸化カルシウム。
【0029】
適切な場合には、本発明の安定剤系は、たとえば以下のようなさらなる添加剤を含むことができる:
水酸化マグネシウム及びアルカリ土類石鹸;
ポリオール及び糖アルコール類、またはトリスヒドロキシアルキルイソシアヌレート;
亜リン酸エステル(phosphorous ester)(ホスファイト:phosphite);
グリシジル化合物及びエポキシド化脂肪酸エステル;
立体障害アミン(HALS)及びアミノアルコール;
β-ジケトン及びβ-ケトエステル;
酸化防止剤;
UV吸収剤及び光安定剤;
蛍光増白剤;
帯電防止剤;
殺生物剤;
顔料;
フィラー;
発泡剤;
滑剤;
可塑剤。
【0030】
従って本発明は、さらにこれらの化合物の一種以上も含む本発明の組成物を提供する。
【0031】
本発明の安定剤系は、少なくとも一種の酸化防止剤及び/または、ポリオール、糖アルコール及びトリスヒドロキシアルキルイソシアヌレートまたはアミノアルコールから選択される一種のアルコールも含むのが好ましい。
【0032】
アルカリ土類金属の水酸化物及びアルカリ土類金属石鹸
水酸化カルシウム及びステアリン酸カルシウムが好ましい。
【0033】
ポリオール及び糖アルコール類
使用し得るこの種の化合物の例としては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、ビストリメチロールプロパン、イノシトール、ポリビニルアルコール、ビストリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、マルチトール、イソマルチトール、リカシン(Lycasin)、マンニトール、ラクトース、ロイクロース(leucrose)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)、パラチニトール(palatinitol)、テトラメチルシクロへキサノール、テトラメチロールシクロペンタノール、テトラメチロールピラノール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、チオジグリセロール、または1-O-α-D-グリコピラノシル-D-マンニトール二水和物がある。二糖類アルコールが好ましい。ポリオールシロップも使用され、ソルビトールシロップ、マンニトールシロップ及びマルチトールシロップが挙げられる。使用し得るポリオールの量としては、PVC100重量部をベースとして、0.01〜20重量部、通常0.1〜20重量部、特に0.1〜10重量部である。トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが好ましい。
【0034】
亜リン酸エステル(ホスファイト)
これらの例としては、トリオクチル、トリデシル、トリトリデシル、トリペンタデシル、トリオレイル、トリステアリル、トリフェニル、トリラウリル、トリクレシル、トリスノニルフェニル、トリス-2,4-tert-ブチルフェニル、またはトリシクロヘキシルホスファイトがある。他の好適なホスファイトとしては、アリールジアルキルまたはアルキルジアリールホスファイトの種々の混合物、たとえばフェニルジオクチル、フェニルジデシル、フェニルジドデシル、フェニルジトリデシル、フェニルジテトラデシル、フェニルジペンタデシル、オクチルジフェニル、デシルジフェニル、ウンデシルジフェニル、ドデシルジフェニル、トリデシルジフェニル、テトラデシルジフェニル、ペンタデシルジフェニル、オレイルジフェニル、ステアリルジフェニル、及びドデシルビス-2,4-ジ-tert-ブチルフェニルホスファイトがある。種々のジオールまたはポリオール類のホスファイト、たとえばテトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、テトライソデシルジプロピレングリコールジホスファイト、トリスジプロピレングリコールホスファイト、テトラメチロールシクロへキサノールデシルジホスファイト、テトラメチロールシクロへキサノールブトキシエトキシエチルジホスファイト、テトラメチロールシクロへキサノールノニルフェニルジホスファイト、ビスノニルフェニルジトリメチロールプロパンジホスファイト、ビス-2-ブトキシエチルジトリメチロールプロパンジホスファイト、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートヘキサデシルトリホスファイト、ジデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス-2,4-ジ-tert-ブチルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、及びこれらのホスファイトの混合物、(H19C9-C6H4)O1.5P(OC12,13H25,27)1.5または(C8H17-C6H4-O-)2P(イソ-C8H17O)、(H19C9-C6H4)O1.5P(OC9,11H19,23)1.5の統計的化合物のアリール/アルキルホスファイト混合物を好都合に使用することができる。工業的な例としては、Naugard P、Mark CH300、Mark CH301、Mark CH302、及びMark CH55(製造業者:Chemtura Corp.アメリカ)がある。使用し得る有機ホスファイトの重量としては、PVC100重量部をベースとして0.01〜10重量部、通常0.05〜5重量部、特に0.1〜3重量部である。
【0035】
本発明の安定剤系は、約30重量%以下、特に約10重量%以下の量の記載のホスファイト化合物を含み得る。
【0036】
グリシジル化合物及びエポキシ化脂肪酸エステル
エポキシ化合物の例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ひまし油、エポキシ化落花生油、エポキシ化トウモロコシ油、及びエポキシ化綿実油がある。
【0037】
グリシジル化合物の例としては、グリシジル基:
【化5】

をもつ化合物があり、これは炭素原子、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子に対して直接結合を持ち得、ここでR3及びR5は両方とも水素であり、R4は水素若しくはメチルであり、n=0であるか、またはR3とR5は一緒になって-CH2-CH2-若しくは-CH2-CH2-CH2-であり、R4は水素であり、n=0若しくは1である。
【0038】
I) 分子内に少なくとも一つのカルボキシ基をもつ化合物と、エピクロロヒドリン、それぞれグリセロールジクロロヒドリン及びβ-メチルエピクロロヒドリンとの反応により得ることが可能なグリシジル及びβ-メチルグリシジルエステル。この反応は通常、塩基の存在下で実施する。
【0039】
分子内に少なくとも一つのカルボキシ基をもつ使用し得る化合物は、脂肪族カルボン酸である。これらのカルボン酸の例としては、グルタミン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、または二量体化若しくは三量体化リノール酸、アクリル及びメタクリル酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸並びにステアリン酸がある。
【0040】
しかしながら、脂環式カルボン酸、たとえばシクロヘキサンカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、または4-メチルヘキサヒドロフタル酸を使用することも可能である。
【0041】
芳香族カルボン酸も使用することができ、たとえば安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、またはピロメリット酸がある。
【0042】
カルボキシ末端付加物、たとえばトリメリット酸及びポリオール、たとえばグリセロールまたは2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのカルボキシ-末端付加物を使用することも可能である。欧州特許0506607はさらに、この発明の目的に関して使用し得るエポキシ化合物について開示している。
【0043】
II) アルカリ条件下、または酸触媒と続くアルカリ処理の存在下で、少なくとも一つの遊離アルコール性ヒドロキシ基及び/またはフェノール性ヒドロキシ基をもつ化合物と、好適に置換されたエピクロロヒドリンとの反応により得ることが可能なグリシジルまたはβ-メチルグリシジルエーテル。
【0044】
この種のエーテルは、たとえば非環式アルコール類、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、及び高級ポリ(オキシエチレン)グリコール類、プロパン-1,2-ジオール、若しくはポリ(オキシプロピレン)グリコール類、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール類、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘキサン-2,4,6-トリオール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、ビストリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、若しくはソルビトールから、またはポリエピクロロヒドリン、ブタノール、アミルアルコール、若しくはペンタノールから、または一価アルコール、たとえばイソオクタノール、2-エチルへキサノール、若しくはイソデカノールから、またはC7-C9-アルカノール及びC9-C11-アルカノール混合物から誘導する。
【0045】
しかしながら、これらはまた脂環式アルコール類、たとえば1,3-若しくは1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、若しくは1,1-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキセ-3-エンからも誘導するか、またはこれらは芳香環をもつことができ、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アニリン、若しくはp,p’-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンが挙げられる。
【0046】
エポキシ化合物は、単核フェノール類、たとえばフェノール、レゾルシノール類、若しくはヒドロキノンからも誘導することができるか、またはこれらは多核フェノール、たとえばビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、若しくは酸性条件下で、フェノールとホルムアルデヒドから得られた縮合体、たとえばフェノールノボラックをベースとすることができる。
【0047】
他の可能な末端エポキシドの例としては、グリシジル1-ナフチルエーテル、グリシジル2-フェニルフェニルエーテル、2-ビフェニルグリシジルエーテル、N-(2,3-エポキシプロピル)フタルイミド、及び2,3-エポキシプロピル4-メトキシフェニルエーテルがある。
【0048】
III) エピクロロヒドリンと、少なくとも一個のアミノ水素原子を含むアミンとの反応生成物の脱塩化水素反応により得ることができるN-グリシジル化合物。これらのアミンの例としては、アニリン、N-メチルアニリン、トルイジン、n-ブチルアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、m-キシレンジアミン、及びビス(4-メチルアミノフェニル)メタン、またN,N,O-トリグリシジル-m-アミノフェノール及びN,N,O-トリグリシジル-p-アミノフェノールがある。
【0049】
しかしながら、N-グリシジル化合物の中で、シクロアルキレン尿素、たとえばエチレン尿素若しくは1,3-プロピレン尿素のN,N’-ジ-、N,N’,N”-トリ-及びN,N’,N”,N”’-テトラグリシジル誘導体、並びにヒダントイン類、たとえば5,5-ジメチルヒダントイン若しくはグリコールウリル及びトリグリシジルイソシアヌレートのN,N’-ジグリシジル誘導体もある。
【0050】
IV) ジ-S-グリシジル誘導体などのS-グリシジル化合物、ここでこれらはエタン-1,2-ジチオールなどのジチオール類、若しくはビス(4-メルカプトメチルフェニル)エーテルから誘導する。
【0051】
V) 上記式{式中、R1及びR3は一緒になって-CH2-CH2-であり、nは0である}の基をもつエポキシ化合物は、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、2,3-エポキシシクロペンチルグリシジルエーテル、または1,2-ビス(2,3-エポキシシクロペンチルオキシ)エタンである。上記式{式中、R1及びR3は一緒になって-CH2-CH2-であり、nは1である}の基をもつエポキシ樹脂の例としては、3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキシルメチル3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレートがある。
【0052】
好適な末端エポキシドの例としては、以下のものがある。
a) 液体ビスフェノールAジグリシジルエーテル類、たとえばAraldit(登録商標)GY240、Araldit(登録商標)GY250、Araldit(登録商標)GY260、Araldit(登録商標)GY266、Araldit(登録商標)GY2600、Araldit(登録商標)MY790、及びEpicote(登録商標)828(BADGE);
b) 固体ビスフェノールAジグリシジルエーテル類、たとえばAraldit(登録商標)GT6071、Araldit(登録商標)GT7071、Araldit(登録商標)GT7072、Araldit(登録商標)GT6063、Araldit(登録商標)GT7203、Araldit(登録商標)GT6064、Araldit(登録商標)GT7304、Araldit(登録商標)GT7004、Araldit(登録商標)GT6084、Araldit(登録商標)GT1999、Araldit(登録商標)GT7077、Araldit(登録商標)GT6097、Araldit(登録商標)GT7097、Araldit(登録商標)GT7008、Araldit(登録商標)GT6099、Araldit(登録商標)GT6608、Araldit(登録商標)GT6609、Araldit(登録商標)GT6610、及びEpikote(登録商標)1002;
c) 液体ビスフェノールFジグリシジルエーテル類、たとえばAraldit(登録商標)GY281、Araldit(登録商標)PY302、Araldit(登録商標)PY306(BFDGE);
d) テトラフェニルエタンの固体ポリグリシジルエーテル類、たとえばCG EPOXY Resin(登録商標)0163;
e) フェノール-ホルムアルデヒドノボラックの固体及び液体ポリグリシジルエーテル類、たとえばEPN1138、EPN1139、GY1180、PY307(NODGE);
f) o-クレゾール-ホルムアルデヒドノボラックの固体及び液体ポリグリシジルエーテル類、たとえばECN1235、ECN1273、ECN1280、ECN1299(NODGE);
g) アルコールの液体グリシジルエーテル類、たとえばShell Glycidylether(登録商標)162、Araldit(登録商標)DY0390、Araldit(登録商標)DY0391;
h) カルボン酸の液体及び固体グリシジルエーテル類、たとえばShellのCardura(登録商標)E、テレフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、及びこれらの混合物、Araldit(登録商標)PY284及びAraldit(登録商標)P811;
i) 固体複素環式エポキシ樹脂(トリグリシジルイソシアヌレート)、たとえばAraldit(登録商標)PT810;
j) 液体脂環式エポキシ樹脂、たとえばAraldit(登録商標)CY179;
k) p-アミノフェノールの液体N,N,O-トリグリシジルエーテル類、たとえばAraldit(登録商標)MY0510;
l) テトラグリシジル-4-4’-メチレンベンズアミンまたはN,N,N’,N’-テトラグリシジルアミノフェニルメタン類、たとえばAraldit(登録商標)MY720、Araldit(登録商標)MY721。
【0053】
二つの官能基をもつエポキシ化合物を用いるのが好ましい。しかしながら、一つ、または三つ以上の官能基をもつエポキシ化合物を使用することも原理上は可能である。
【0054】
主に使用される化合物はエポキシ化合物であり、特に芳香族基をもつジグリシジル化合物である。
【0055】
好適な場合には、種々のエポキシ化合物の混合物を使用することも可能である。
【0056】
立体障害アミン(HALS)及びアミノアルコール類
立体障害アミンは、通常、以下の基:
【化6】

{式中、A及びVは互いに独立して、C1-8-アルキル、C3-8-アルケニル、C5-8-シクロアルキル、若しくはC7-9-フェニルアルキルであるか、または好適には一緒になって、O、NH若しくはCH3-Nが割り込んでいるC2-5-アルキレンを形成する}を含む化合物であるか、または立体障害アミンは、環式、特にアルキル-若しくはポリアルキルピペリジン種由来の化合物、特に以下の基:
【化7】

を含むテトラメチルピペリジンの種由来の化合物であってもよい。
【0057】
これらのポリアルキルピペリジン化合物の例としては、以下の通りである(ここで、オリゴマー若しくはポリマー化合物の場合には、n及びrは2〜200の範囲、特に2〜10の範囲、特に3〜7の範囲である)。これらの化合物の包括リストは欧州特許0796888B1に見いだされる。
【0058】
本発明の特に好ましい態様の目的に関して、使用されるアミノアルコール類は複素環式化合物を含む。これらの例としては、エチレン-及びプロピレン尿素、パラバン酸、ヒダントイン、バルビツール酸、グリコールウリル及びイソシアヌル酸のEO-、PO-及びBO-反応生成物がある。本発明の目的に関して、本発明の安定剤系の構成成分として、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)またはトリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートを使用することが特に好ましい。
【0059】
本発明の安定剤系のTHEIC含有量は、たとえば約0.01〜約10重量%である。
【0060】
β-ジケトン及びβ-ケトエステル類
使用し得る1,3-ジカルボニル化合物は、線状または環式ジカルボニル化合物である。式:R’1COCHR’2-COR’3{式中、R’1は、C1-C22-アルキル、C5-C10-ヒドロキシアルキル、C2-C18-アルケニル、若しくはフェニル、またはOH、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、若しくはハロゲンにより置換されたフェニルであるか、あるいはC7-C10-フェニルアルキル若しくはC5-C12-シクロアルキル、またはC1-C4-アルキル-置換C5-C12-シクロアルキルであるか、または-R’5-S-R’6若しくは-R’5-O-R’6基であり;R’2は水素、C1-C8-アルキル、C2-C12-アルケニル、フェニル、C7-C12-アルキルフェニル、C7-C10-フェニルアルキル、または-CO-R’4基であり;R’3は、R’1に関して定義された通りであるか、またはC1-C18-アルコキシであり;R’4はC1-C4-アルキルまたはフェニルであり;R’5はC1-C10-アルキレンであり、並びにR’6はC1-C12-アルキル、フェニル、C7-C18-アルキルフェニル、またはC7-C10-フェニルアルキルである}のジカルボニル化合物を使用するのが好ましい。
【0061】
これらの化合物の中でも、欧州特許0.346.279A1にはヒドロキシ基を含むジケトンが、欧州特許0.307.358A1にはオキサ及びジチアジケトンが、また米国特許4,339,383にはイソシアヌル酸ベースのケトエステルがある。
【0062】
アルキルとしてのR’1及びR’3は、特にC1-C18-アルキル、たとえばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、またはオクタデシルであり得る。ヒドロキシルとしてのR’1及びR’3は、特に-(CH2)n-OH基{式中、nは5、6若しくは7である}である。
【0063】
アルケニルとしてのR’1及びR’2は、たとえばビニル、アリル、メタリル、1-ブテニル、1-ヘキセニル、またはオレイルであり得、好ましくはアリルである。
【0064】
OH-、アルキル-、アルコキシ-またはハロゲン置換フェニルとしてのR’1及びR’3は、たとえばトリル、キシリル、tert-ブチルフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、ヒドロキシフェニル、クロロフェニル、またはジクロロフェニルであり得る。
【0065】
フェニルアルキルとしてのR’1及びR’3は、特にベンジルである。シクロアルキルまたはアルキルシクロアルキルとしてのR’2及びR’3は、特にシクロへキシルまたはメチルシクロへキシルである。
【0066】
アルキルとしてのR’2は特にC1-C4-アルキルであり得る。C2-C12-アルケニルとしてのR’2は、特にアリルであり得る。アルキルフェニルとしてのR’2は特にトリルであり得る。フェニルアルキルとしてのR’2は、特にベンジルであり得る。R’2が水素であるのが好ましい。アルコキシとしてのR’3は、たとえばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、またはオクタデシルオキシであり得る。C1-C10アルキレンとしてのR’5は、特にC2-C4-アルキレンである。アルキルとしてのR’6は、特にC4-C12-アルキル、たとえばブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、またはドデシルである。
【0067】
アルキルフェニルとしてのR’6は、特にトリルである。フェニルアルキルとしてのR’6は、特にベンジルである。
【0068】
上記一般式、またそのアルカリ金属キレート、アルカリ土類金属キレート及び亜鉛キレートの1,3-ジカルボニル化合物の例としては、アセチルアセトン、ブタノイルアセトン、ヘプタノイルアセトン、ステアロイルアセトン、パルミトイルアセトン、ラウロイルアセトン、7-tert-ノニルチオヘプタン-2,4-ジオン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、ラウロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、イソオクチルベンゾイルメタン、5-ヒドロキシ-カプロニルベンゾイルメタン、トリベンゾイルメタン、ビス(4-メチルベンゾイル)メタン、ベンゾイル-p-クロロベンゾイルメタン、ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)メタン、4-メトキシベンゾイルベンゾイルメタン、ビス(4-メトキシベンゾイル)メタン、1-ベンゾイル-1-アセチルノナン、ベンゾイルアセチルフェニルメタン、ステアロイル-4-メトキシベンゾイルメタン、ビス(4-tert-ブチルベンゾイル)メタン、ベンゾイルホルミルメタン、ベンゾイルフェニルアセチルメタン、ビスシクロヘキサノイルメタン、ジピバロイルメタン、2-アセチルシクロペンタノン、2-ベンゾイルシクロペンタノン、ジアセト酢酸のメチル、エチル及びアリルエステル、ベンゾイル-、プロピオニル-及びブチリルアセト酢酸のメチル及びエチルエステル、トリアセチルメタン、アセト酢酸のメチル、エチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル若しくはオクタデシルエステル、ベンゾイル酢酸のメチル、エチル、ブチル、2-エチルヘキシル、ドデシル、若しくはオクタデシルエステル、並びにプロピオニル-及びブチリル酢酸のC1-C18-アルキルエステルもある。ステアロイル酢酸のエチル、プロピル、ブチル、ヘキシル若しくはオクチルエステル、欧州特許EP-A0433230に記載の多核β-ケトエステル、並びにデヒドロ酢酸、及びその亜鉛、マグネシウムまたはアルカリ金属塩。アセチルアセトン及びデヒドロ酢酸のCa、Mg及びZn塩が好ましい。
【0069】
上記式{式中、R’1はC1-C18-アルキル、フェニル、またはOH、メチル若しくはメトキシで置換されたフェニルであるか、C7-C10-フェニルアルキル若しくはシクロヘキシルであり、R’2は水素であり、及びR’3は、R’1に関して定義した通りである}の1,3-ジケト化合物が特に好ましい。これらの化合物の中でも、複素環式2,4-ジオン類、たとえばN-フェニル-3-アセチルピロリジン-2,4-ジオンがある。欧州特許EP0.734.414A1は、このカテゴリーの他の代表例について記載する。使用し得るジケト化合物の量の例としては、PVC100重量部をベースとして0.01〜10重量部、有益には0.01〜3重量部、特に0.01〜2重量部である。
【0070】
酸化防止剤
中でも立体障害フェノール、たとえばアルキル化モノフェノール類、たとえば2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、アルキルチオメチルフェノール類、たとえば、2,4-ジオクチルチオメチル-6-tert-ブチルフェノール、アルキル化ヒドロキノン類、たとえば2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル類、たとえば2,2’-チオビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、アルキリデンビスフェノール類、たとえば2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、ベンジル化合物、たとえば3,5,3’,5’-テトラ-tert-ブチル-4,4’-ジヒドロキシジベンジルエーテル、ヒドロキシベンジル化マロネート類、たとえばジオクタデシル2,2-ビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシベンジル)マロネート、ヒドロキシベンジル芳香族化合物、たとえば1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、トリアジン化合物、たとえば2,4-ビスオクチルメルカプト-6-(2,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ホスホネート及びホスホナイト(phosphonite)、たとえばジメチル2,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、アシルアミノフェノール類、たとえば4-ヒドロキシラウリン酸アニリド、ベータ-(3,5-ジ-tertブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル、ベータ-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸のエステル、ベータ-(3,5-ジシクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル酢酸と一価若しくは多価アルコールとのエステル、β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、たとえばN,N’-ビス(3,5-ジ-tertブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサメチレンジアミン、ビタミンE(トコフェロール)、及び誘導体、並びにD,L-アスコルビン酸がある。使用し得る酸化防止剤の量の例としては、PVC100重量部をベースとして、0.01〜10重量部、有用には0.1〜10重量部、特に0.1〜5重量部である。
【0071】
UV吸収剤及び光安定剤
これらの例としては、2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類、たとえば2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシベンゾフェノン類、置換されていてもよい安息香酸のエステル、たとえばサリチル酸4-tert-ブチル-フェニル、サリチル酸フェニル、アクリレート、ニッケル化合物、オキサルアミド類、たとえば4,4’-ジオクチルオキシオキサニリド、2,2’-ジオクチルオキシ-5,5’-ジ-tertブチルオキサニリド、2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン類、たとえば2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5トリアジン、テトラメチルピペリジンをベースとする立体障害アミン、それぞれテトラメチルピペラジノンまたはテトラメチルモルホリノン、たとえばビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)スクシネート及びベンゾオキサジノン類、たとえば1,4-ビスベンゾオキサジノニルベンゼンがある。
【0072】
蛍光増白剤
これらの例としては、ビスベンゼン(1,4)オキサゾール類、フェニルクマリン類及びビススチリルビフェニル類、たとえば4-メチル-7-ジエチルアミノクマリン、3-フェニル-7-(4-メチル-6-ブトキシベンゾオキサゾール)クマリン、4,4’-ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン、及び1,4-ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)ナフタレンがある。可塑剤中の蛍光増白剤の溶液、DOPが好ましい。
【0073】
帯電防止剤
帯電防止剤は、非イオン(a)、アニオン(b)、カチオン(c)、及び両性(d)種に分けられる。(a)の中でも、脂肪酸エトキシレート、脂肪酸エステル、エトキシル化脂肪アルキルアミン、脂肪酸ジエタノールアミド、並びにエトキシル化フェノール及びアルコール、並びにポリグリコールのモノ脂肪酸エステルがある。(b)の中でも、アルカリ金属の脂肪アルカンスルホネート及びリン酸のビス(脂肪アルコール)エステルのアルカリ金属塩がある。(c)の中でも、四級脂肪アルキルアンモニウム塩、(d)の中でも脂肪アルキルベタイン及び脂肪アルキルイミダゾリンベタインがある。好ましい化合物は、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミン、Naオクタデシルスルホネート、及びNaビスオクタデシルホスフェートである。
【0074】
殺生物剤
記載し得る殺生物剤としては、イソチアゾリン-3-オン誘導体、たとえば2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)及び4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、Ag-Znゼオライト、N-トリクロロメチルチオ-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシイミド、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン、10,10’-オキシビスフェノキシアルシン(OBPA)、四級アンモニウム及びホスホニウム塩、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、メチルベンズイミダゾール-2-カルバメート、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル、亜鉛ビス-2-ピリジンチオレートN-オキシド(亜鉛ピリチオン)及び1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、N-ブチルベンズイソチアゾリン-3-オン、及びまた2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール(チアベンダゾール)がある。
【0075】
顔料
顔料は本発明の安定剤系の別の好適な構成成分である。当業者は好適な物質を承知している。無機顔料の例としては、TiO2、酸化ジルコニウムベースの顔料、BaSO4、酸化亜鉛(亜鉛白)、及びリトポン(硫化亜鉛/硫酸バリウム)、カーボンブラック、カーボンブラック-二酸化チタン混合物、酸化鉄顔料、Sb2O3、(Ti、Ba、Sb)O2、Cr2O3、スピネル、たとえばコバルトブルー及びコバルトグリーン、Cd(S、Se)、ウルトラマリンブルーがある。有機顔料の例としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料及びアントラキノン顔料がある。また微粉化状のTiO2も好ましい。“Handbook of PVC Formulating”,E.J.Wickson、John Wiley&Sons、New York、1993年は、定義とさらなる記載を提供する。
【0076】
フィラー
記載し得るフィラーとしては、炭酸カルシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、タルク、カオリン、マイカ、長石、霞石、閃長石、珪灰石、硫酸バリウム、重晶石、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カーボンブラック及びグラファイトがある。
【0077】
発泡剤
発泡剤の例としては、有機アゾ及びヒドラゾ化合物、テトラゾール、オキサジン、イサチン酸無水物(isatinic anhydride)、N-メチルイサチン酸無水物、また重炭酸ソーダ及びナトリウムがある。アゾジカーボンアミド及び重炭酸ナトリウム、並びにこれらの混合物も好ましい。特に軟質PVCまたは半硬質PVCでは、イサチン酸無水物またはN-メチルイサチン酸無水物が非常に好ましい。
【0078】
滑剤
本発明の安定剤系は潤滑剤も含み得る。使用し得る潤滑剤の例としては、欧州特許0.259.783A1に列記されているようなモンタン蝋、脂肪酸エステル、PEワックス及びPPワックス、アミドワックス、クロロパラフィン、グリセロールエステル若しくはアルカリ土類金属石鹸、並びに脂肪ケトン、並びにこれらの組み合わせがある。
【0079】
本発明の安定剤系は、記載の滑剤を約70重量%以下、特に約40重量%以下で含むことができる。
【0080】
可塑剤
有機可塑剤は、本発明の安定剤系の好適な添加剤でもある。使用し得る有機可塑剤の例は、以下の群のものである。
(i) フタル酸エステル、好ましい例は、ジ-2-エチルヘキシル、ジイソノニル及びジイソデシルフタレートであり、これらはよく知られている略号DOP(ジオクチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート)、DNP(ジイソノニルフタレート)、及びDIDP(ジイソデシルフタレート)によっても知られている;
(ii) 脂肪族ジカルボン酸のエステル、特にアジピン酸、アゼライン酸及びセバシン酸のエステル、ジ-2-エチルヘキシルアジペート及びジイソオクチルアジペートが好ましい;
(iii) トリメリット酸エステル、たとえばトリ-2-エチルヘキシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート(混合物)、トリイソトリデシルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート(混合物)、及びトリ-C6-C8-アルキル、トリ-C6-C10-アルキル、トリ-C7-C9-アルキル及びトリ-C9-C11-アルキルトリメリテート;よく知られている略号はTOTM(トリ-オクチルトリメリテート、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート)、TIDTM(トリイソデシルトリメリテート)及びTITDTM(トリイソトリデシルトリメリテート)である;
(iv) エポキシ可塑剤;これらは主にエポキシ化不飽和脂肪酸、たとえばエポキシ化大豆油である;
(v) ポリマー可塑剤;これらを製造するのに最もよく知られている出発材料は、ジカルボン酸、たとえばアジピン酸、フタル酸、アゼライン酸及びセバシン酸と、ジオール類、たとえば1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、及びジエチレングリコール(ADMEX(登録商標)グレード、Velsicol Corp.製及びPX-811、Asahi Denka製参照);
(vi) リン酸エステル;これらのエステルの定義は、“TASCHENBUCH der Kunststoffadditive”[Plastics additives handbook]の第5.9.5章の408-412頁に見ることができる。
これらのリン酸エステルの例としては、トリブチルホスフェート、トリ-2-エチルブチルホスフェート、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート、トリクロロエチルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、クレシルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、及びトリキシレニルホスフェートがあり;トリ-2-エチルヘキシルホスフェート及びReofos(登録商標)50及び95(Ciba Spezialitatenchemie参照)が好ましい。
(vii) 塩素化炭化水素(パラフィン);
(viii) 炭化水素;
(ix) モノエステル類、たとえばオレイン酸ブチル、オレイン酸フェノキシエチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、及びアルキルスルホン酸エステル;
(x) グリコールエステル類、たとえば安息香酸ジグリコール;
(xi) 国際公開WO02/05206に記載のクエン酸エステル、たとえばクエン酸トリブチル及びアセチルクエン酸トリブチル;
(xii) ドイツ特許DE197.56.913A1、同DE199.27.977A1、同DE199.27.978A1及び同DE199.27.979A1に記載のペルヒドロフタル酸エステル、-イソフタル酸エステル及び-テレフタル酸エステル、またペルヒドロ化(perhydrogenated)グリコール及びジグリコールベンゾエート;ペルヒドロ化ジイソノニルフタレート(Hexamoll(登録商標)DINCH-製造業者:BASF)が好ましい;
(xiii) ひまし油ベースの可塑剤(Soft-N-Safe(登録商標)、製造業者:DANISCO);
(xiv) ケトン-エチレン-エステルターポリマー:Elvaloy(登録商標)KEE、(Elvaloy(登録商標)741、Elvaloy(登録商標)742、製造業者:DuPont)。
【0081】
これらの可塑剤の定義及びその例は、“TASCHENBUCH der Kunststoffadditive”[Handbook of plastics additives]、R.Gachter/H.Muller、Carl Hanser Verlag、第3版、1989年の第5.9.6章、412-415頁と、“PVC Technology”、W.V.Titow、第4版、Elsevier Publ.1984年の165-170頁に記載されている。使用し得る可塑剤の量の例としては、約99.5重量%以下、特に約30重量%以下、約20重量%以下、または約10重量%以下である。本発明の好ましい態様の目的に関しては、本発明の可塑剤系の構成成分としてのこれらの可塑剤の下限は、約0.1重量%以上、たとえば約0.5重量%、1重量%、2重量%または5重量%である。
【0082】
他の添加物、たとえば耐衝撃性改良剤及び加工助剤、ゲル化剤、殺生物剤、金属不活性化剤、難燃剤、防曇剤、及び相溶化剤(compatibilizer)の定義及び例については、“Handbuch der Kunststoffadditive”[Plastics additives handbook]、R.Gachter/H.Muller、Carl Hanser Verlag、第3版、1989年、及び第4版、2001年、並びに“Handbook of Polyvinyl Chloride Formulating”、E.J.Wickson、J.Wiley&Sons、1993年及び“Plastics Additives”、G.Pritchard、Chapman&Hall、ロンドン、第1版、1998年に記載されている。耐衝撃性改良剤の別の詳細な記載は、“Impact Modifiers for PVC”、J.T.Lutz/D.L.Dunkelberger、John Wiley&Sons、1992年に見られる。
【0083】
本発明は、さらに塩素含有ポリマーと本発明の安定剤系を含む組成物を提供する。
【0084】
塩素含有ポリマーを安定化させるために、これらの組成物において使用すべき成分(A)+(B)の濃度範囲は、通常、以下の通りである。いずれもハロゲン含有ポリマーの100重量部をベースとして:
好ましい:(A)0.01〜30重量部;(B)0.001〜10重量部
特に好ましい:(A)0.05〜15重量部;(B)0.01〜5.0重量部
特に非常に好ましい:(A)0.1〜10重量部;(B)0.01〜3.0重量部
【0085】
式(A)の化合物の使用量は、0.01〜3.0重量部(phr)、好ましくは0.05〜1.5phr、特に好ましくは0.1〜1.0phrが好ましい。
【0086】
存在していてもよい成分(C)の使用し得る濃度範囲は、以下の通りである。いずれもハロゲン含有ポリマーの100重量部をベースとして:
好ましい:0.01〜10重量部
特に好ましい:0.01〜5.0重量部
特に非常に好ましい:0.1〜2.0重量部
【0087】
使用し得る成分(C)の量は、0.01〜10phr、好ましくは0.01〜5.0phr、特に好ましくは0.01〜2.0phrである。
【0088】
もちろん本発明の組成物は、本発明の安定剤系の構成成分として上記の化合物をさらに含むことができる。
【0089】
従って本発明は、以下の化合物:水酸化マグネシウム及びアルカリ土類石鹸、ポリオール若しくは糖アルコール、またはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(THEIC)、亜リン酸エステル、グリシジル化合物、エポキシ化脂肪酸エステル、立体障害アミン(HALS)、酸化防止剤、UV吸収剤及び光安定剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、殺生物剤、顔料、フィラー、発泡剤、滑剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤及び加工助剤の少なくとも一つを含む組成物も提供する。
【0090】
安定化すべきハロゲン含有ポリマーの例としては、塩素含有ポリマー、特に非常に好ましくは塩化ビニルのポリマー、または塩化ビニリデンのポリマー、その構造に塩化ビニル単位を含むビニル樹脂、たとえば塩化ビニルと脂肪酸のビニルエステル、特に酢酸ビニルとのコポリマー、塩化ビニルとアクリル酸及びメタクリル酸のエステルとアクリロニトリルとのコポリマー、塩化ビニルとジエン化合物と不飽和ジカルボン酸若しくはその無水物とのコポリマー、たとえば塩化ビニルとマレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル若しくはマレイン酸無水物とのコポリマー、後塩素化(postchlorinated)ポリマー、及び塩化ビニルのコポリマー、塩化ビニル及び塩化ビニリデンと不飽和アルデヒド及びケトンと他の化合物、たとえばアクロレイン、クロトンアルデヒド、ビニルメチルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどとのコポリマー;塩化ビニリデンのポリマー、及び塩化ビニリデンと塩化ビニルと他の重合可能な化合物とのコポリマー;ビニルクロロアセテートのポリマー及びジクロロジビニルエーテルのポリマー;酢酸ビニルの塩素化ポリマー、アクリル酸の塩素化ポリマー性エステル及びアルファ-置換アクリル酸の塩素化ポリマー性エステル;塩素化スチレン、たとえばジクロロスチレンのポリマー;塩素化ゴム;エチレンの塩素化ポリマー;クロロブタジエンのポリマー及び後塩素化ポリマー並びにこれらと塩化ビニル、塩素化天然ゴム及び合成ゴムとのコポリマー、この群内の上記ポリマーの混合物または他の重合可能な化合物との混合物が挙げられる。本発明の目的に関しては、PVCなる用語は、塩化ビニルとアクリロニトリルまたは酢酸ビニルまたはABSなどの重合可能な化合物とのコポリマーをも網羅し、本明細書における材料は懸濁ポリマー、バルクポリマーまたはエマルションポリマーであり得る。
【0091】
ポリアクリレートまたはポリメタクリレートとも組み合わせたPVCホモポリマーも好ましい。
【0092】
PVCとEVA、ABS及びMBSとのグラフトポリマーも使用することができ、PVCとPMMAとのグラフトポリマーも使用することができる。他の好ましい物質は、上記ホモ-及びコポリマー、特に塩化ビニルホモポリマーと、他の熱可塑性及び/またはエラストマーポリマーとの混合物、特にABS、MBS、NBR、SAN、EVA、CPE、MBAS、PMA、PMMA、EPDM及びポリラクトン、特にABS、NBR、NAR、SAN及びEVAの群由来のポリアセトンとのブレンドがある。コポリマーに関する略号は当業者に知られており、その意味は以下の通りである:ABS:アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン;SAN:スチレン-アクリロニトリル;NBR:アクリロニトリル-ブタジエン;NAR:アクリロニトリル-アクリレート;EVA:エチレン-酢酸ビニル。使用し得る特定の他の材料は、アクリレートをベースとするスチレン-アクリロニトリルコポリマー(ASA)である。これに関連して好ましい成分は、成分(i)及び(ii)として、PVC25〜75重量%と上記コポリマー75〜25重量%との混合物を含むポリマー組成物によって提供される。特に重要な成分は、(i)PVC100重量部と、(ii)ABS及び/またはSAN-変性ABS0〜300重量部と、コポリマーNBR、NAR及び/またはEVAの群由来、特にEVA0〜80重量部から製造した組成物によって提供される。
【0093】
本発明の目的に関して安定化に使用される塩素含有ポリマーは、特にリサイクレート(recyclate)も含み得、これらは加工、使用または貯蔵により劣化した上記記載のポリマーである。PVCリサイクレートは特に好ましい。本発明の安定剤組み合わせの別の利用は、硬質または軟質PVCで製造した完成品に帯電防止特性を提供する能力にある。従って、高価な帯電防止剤の使用を軽減することが可能である。この用途に関しては、軟質PVCまたは半硬質PVCが好ましい。
【0094】
本発明はさらに、本発明の組成物を含む消費財(消費者製品)などの物品を提供する。
【0095】
特に微細発泡構造体を特徴とする消費財の使用が好ましい。これは硬質、軟質、及び半硬質PVCにあてはまる。この側面は特に、軟質PVCの壁装材(wallcovering)及び床仕上げ材(floorcovering)で重要である。微細発泡を達成するには、通常、Zn安定剤またはSn安定剤などの重質金属化合物である分解促進剤(kicker)が必要である。意外にもTEAP分子内錯体は、イサチン酸無水物またはN-メチルイサチン酸無水物に分解促進作用を及ぼし、微細発泡構造が達成されることが見いだされた。
【0096】
意外にも、成分として式(B)のTEA分子内錯体を含む消費財の電気抵抗特性は大きく改善されることが見いだされ、ケーブル及び絶縁体の製造において、及び半導体分野での用途で特に好都合であることが判明した。
【0097】
この配合物は亜鉛石鹸を全く含まないため、プラスチック表面に拡散した後、電気的特性を損なう塩化亜鉛を全く生成しないので、これらのアイテム(主にケーブル)はさらに、優れた水老化性能をもつ。
【0098】
亜鉛感受性用途で殺生物的特性が急務である場合、主に軟質-PVC分野(たとえばホイル及び屋根保護材)に亜鉛を含有する殺菌剤を添加することも可能であるが、カルシウム-亜鉛安定剤の使用が厳しく制限される。
【0099】
付随して使用し得る化合物及び、塩素含有ポリマーは当業者に知られており、詳細は、“HANDBUCH DER KUNSTSTOFFADDITIVE”[Plastics additives handbook]、R.Gachter/H.Muller、Carl Hanser Verlag、第3版、1989年、及び第4版、2001年、ドイツ特許DE197.41.778A1、及び欧州特許0.967.245A1に記載されており、これらの刊行物は本明細書中、参照として含まれる。
【0100】
本発明の安定剤系は、可塑化されていないか、可塑剤を含まないか、本質的に可塑剤を含まない組成物である塩素含有ポリマー組成物だけでなく、可塑化された組成物にも好適である。硬質PVCまたは半硬質PVCでの用途が特に好ましい。
【0101】
本発明の組成物は、中空体(ボトル)、ホイル、たとえば包装用ホイル(熱成形用ホイル)、インフレートホイル、“安全パッド”ホイル(自動車)及びオフィス部門のホイル、パイプ、フォーム、形材(profile)、たとえば強力形材(窓枠)、発光壁形材及び構造形材、ブリスターパック(たとえばLuvitherm法により製造したもの)、羽目板、装備品(fitting)、マーガリン容器、チョコレート用包装並びに装置用ハウジング、コンピューターハウジング、絶縁体及び住宅設備構成用の硬質配合物の形状に特に適しており、電子用途、特に半導体部門にも適している。これらは白さが強く、表面の艶のある窓形材に特に適している。
【0102】
半硬質及び軟質配合物の形態での好ましい他の組成物は、ワイヤ外装(wire sheathing)、ケーブル絶縁、装飾用ホイル、屋根葺き用ホイル、発泡体、農業用ホイル、ホース、ガスケット形材、床仕上げ材、壁装材、自動車部品、軟質ホイル、射出成形(吹き込み成形)、オフィス部門のホイル及び空気-担持構造体用のものである。プラスチゾルとしての本発明の組成物の使用例としては、子供向け用品(回転成形)、合成皮革、床仕上げ材、テキスタイルコーティング、壁装材、コイルコーティング用途、及び自動車用底面保護があり、本発明の組成物の焼結PVC用途の例としては、スラッシュ、スラッシュ成形及びコイルコーティング用途があり、EPVCではLuvithermプロセスにより製造したホイル用である。これに関連する詳細は、“KUNSTSTOFFHANBUCH PVC”[Plastics handbook:PVC]、第2/2巻、W.Becker/H.Braun、第2版、1985年、Carl Hanser Verlag、1236-1277頁を参照されたい。
【0103】
本発明はさらに、ハロゲン含有ポリマーを安定化させるための本発明の安定剤系の使用、及び本発明の物品を製造するための本発明の組成物の使用も提供する。
【実施例】
【0104】
I.ミルドシート(milled sheet)の製造
表1.2(A-2、B-2)、2.1(C-2、D-2)、3.1(E-2、F-2)及び4.1(G-2、H-2、J-2、K-2)、5.1(L-2、M-2)及び6.1(N-2、O-2、P-2、R-2)で製造した混合物はそれぞれ、Collinラボラトリー・ロールミル試験系(COLLIN:W100E、BJ:2005)(ロール径:110mm、10rpm、摩擦:-10%)で5分間、表示温度で可塑化する。得られたホイル(厚さ0.3mm)をさらに試験するために前方へ通す。
【0105】
II.脱塩化水素試験方法(DHC)
DHCは、加熱したときにPVCから発生するHCl放出の尺度である。蒸留水と共に窒素ガスを使用して放出された塩素ガスを洗って容器に入れ、マイクロジーメンス/センチメートル(μS/cm)で導電率の上昇を測定する。使用した目盛り(index)は分(分)であり、表に示されている。特定の導電率を達成するのにかかった時間が長ければ長いほど、PVC試験片はより耐熱性である。装置:PVC Thermomat 763(Metrohm)。試験は、DIN 53381パート1、方法B:導電率測定に従って実施する。
【0106】
パラメーター:
試験片の重量 500±0.5mg(裁断したミルドシート)
温度:℃(実施例で記載)
流速:7l/時間(窒素5.0)
吸収容積:60ml(脱イオン水)
【0107】
評価:t10、t50及びt200(導電率10、50及び200μS/cm−データ(分))。
【0108】
III.静的加熱試験(SHT)方法
試験片(15mm×15mm)をIで製造したミルドシートから切り出した。顕著な変色がおきるまでこれらをHeraeusトレーオーブン中、表示温度で加熱する。Spectro-Guide色測定装置(BYK-GADNER)を使用し、DIN53381に従ってYI(黄色度)を測定し、これを加熱していないミルドシート(ゼロ分の値)と比較する。結果を表に表す。所定の時点でYIが小さければ小さいほど、色性能が優れている。
【0109】
IV.連続ロール練り試験(SRT)法
動的加熱試験(SRT)は、COLLIN W110Eロールミル(ロール径:110mm、10rpm、摩擦:-10%)で実施する。
【0110】
混合物をロールミル上、表示温度で5分間ホモジナイズする。次いでロール練りをこの温度で継続し、試験片(t=0.3mm、25×38mm)を5分間隔でとり、これらの黄色度(YI)をBYK GARDENER色測定装置(Spectro Guide Sphere Gloss)を使用し、ASTM D1925に従って測定する。
【0111】
実施例1(軟質PVC、着色ホイル)
混合物A-1及びB-1をGTユニバーサルミキサー(ROTH、Kalsruhe)中でホモジナイズする(表1.1)。
【表1】

【0112】
混合物A-1は本発明の混合物である。混合物B-1は従来法に対応する(pa)。上記混合物それぞれ2.2gを以下の配合物で使用する(表1.2)。
【表2】

【0113】
表1.3に示した値は、配合物A-2及びB-2で製造した裁断したミルドシートで測定した。
【表3】

分の値が大きければ大きいほど、効果が高い。
【0114】
静的HTは、配合物A-2及びB-2で製造した試験片で実施した(表1.4)。
【表4】

YIが小さければ小さいほど、且つ分の値が大きければ大きいほど、性能は優れている。
【0115】
同重量の安定剤混合物を使用すると、従来法のB-2(ハイドロタルサイトを含む)と比較してA-2(CAHCを含む)の熱安定性(10、50及び200μS/cm値)に関してのみならず、初期の色-IC(0〜20分)及び色彩堅牢度-CF(40〜80分)及び長期安定性-LTS(100〜120分)に関して、脱塩化水素及び静的加熱試験から明瞭且つ顕著な改善が認められた。
【0116】
実施例2(軟質PVC、工業用ホイル)
以下の乾燥粉末混合物を製造した(表2.1)。
【表5】

【0117】
配合物C-2は、本発明の配合物である。配合物D-2は、従来法に対応する。以下のDHC値は、得られた配合物C-2及びD-2で測定した(表2.2)。
【0118】
【表6】

脱塩化水素結果は、同重量の安定剤成分を使用すると、CAHCを含む配合物(C-2)の性能は、ハイドロタルサイトを含む配合物(D-2)よりも明らかによいことが判明する。
【0119】
配合物C-2及びD-2で製造した試験片を、色性能に関して試験する(表2.3)。
【0120】
【表7】

表2.3から解るように、静的加熱試験でCAHCを含む配合物C-2のDHC値は、ハイドロタルサイトを含む配合物D-Cよりも優れた色プロフィールを示す。
【0121】
実施例3(硬質PVC、透明ホイル)
以下のコンパウンド化材料E-2及びF-2を製造した(表3.1)。
【表8】

【0122】
配合物E-2は本発明の配合物である。配合物F-2は従来法に対応する。配合物E-2及びF-2は以下のDHC値により特徴付けすることができる(表3.2)。
【表9】

【0123】
脱塩化水素データは、安定剤成分の使用量が同一であるとき、CAHCを含む配合物E-2の性能は、ハイドロタルサイトを含む配合物F-2よりもずっと優れていることをはっきりと示している。
【0124】
配合物E-2及びF-2で製造した試験片をSHT試験にかける(表3.3)。
【表10】

同様に静的加熱試験は、E-2がF-2よりも優れていることを圧倒的に示している。
【0125】
実施例4(硬質PVC、形材配合物)
以下の乾燥粉末混合物を製造した(表4.1)。
【表11】

【0126】
配合物G-2は本発明の配合物である。配合物H-2並びに、それぞれJ-2及びK-2は、従来法の刊行物及び未発表物に対応する。
【0127】
配合物G-2、H-2、J-2及びK-2から誘導したミルドシートをそのDHC値に関して以下のように特徴付けした(表4.2)。
【表12】

【0128】
G-2は、本発明の配合物である。H-2、J-2及びK-2は従来法である。H-2は市販で入手可能なCa/Zn安定剤組成物(One-Pack I)であり、3.6phrの推奨ガイドライン濃度で使用した。One-Pack IIは、Alkamizer P93の代わりにCAHCを同量使用した以外には同一である。
【0129】
脱塩化水素の結果から、G-2(重金属を含まない配合物中のCAHC)は、重金属を含む市販品H-2よりも優れていることを示しており、使用量が大きく減少した(3.6phrと比較して3.31)。
【0130】
重金属を含むカルシウム-亜鉛石鹸と組み合わせてCAHCを含む配合物J-2及びK-2に同様の考察を当てはめると、その効果は、ジペンタエリスリトール、ジヒドロピリジン及びラウリン酸亜鉛をさらに添加することにより最適化された。この比較でも高い総濃度を使用する(3.31phrに対して4.1及び4.65phr)。
【0131】
連続ロールミル試験における配合物G-2、H-2、J-2及びK-2の試験結果は以下の通りである(表4.3)。
【表13】

【0132】
ほぼ同重量(3.6phrに対して3.31)を使用する、窓形材配合物においてG-2とH-2を比較すると、G-2はIC、CF及びLTS(即ち全ての色プロフィールにわたって)に関して優れていることを示している。
【0133】
実施例5(硬質PVC、ホイル配合物)
以下の乾燥粉末混合物(ドライブレンド)を製造した(表5.1)。
【表14】

【0134】
配合物L-2は本発明の配合物であり、配合物M-2は従来法に対応する。いずれの配合物もICを改善するためにDHPを含んでいるので、ICを改善するためにDMAUを含む実施例3と直接比較することができる。
【0135】
配合物のDHC値は以下の通りである(表5.2)。
【表15】

これらのデータは、L-2がM-2よりも優れていることを非常によく示している。
【0136】
配合物L-2及びM-2におけるSRTから以下の結果が得られた(表5.3)。
【表16】

【0137】
本発明の配合物L-2は、従来法に対応する配合物M-2よりもかなり優れていることを示唆する。IC、CF及びLTSに関してだけでなく、SRTにおける意外な結果は、SHTにおいてSorbacid911の作用を示す実施例3(F-2)と比較したM-2の効果における深刻な低下である。
【0138】
実施例6(軟質PVC、ケーブル配合物)
以下のドライブレンドを製造した(表6.1)。
【表17】

【0139】
配合物N-2は本発明の配合物であり、O-2、P-2及びR-2は従来法で知見される。O-2及びP-2は、最も近い先行技術と考えることができる。配合N-2、O-2及びP-2のDHC値は以下の通りである(表6.2)。
【表18】

O-2及びP-2とN-2を比較すると、品質が低下していることが解る(分の値がより小さくなっている)。
【0140】
配合物N-2、O-2及びP-2におけるSRTの結果は以下の通りである(表6.3)(R-2を網羅するために従来法を拡張した)。
【表19】

【0141】
以上のように、最も近い先行技術O-2及びP-2と比較して、最も遠い先行技術R-2と比較しても、本発明の組み合わせN-2は、SRTにおいてIC、CF及びLTSに関しより有効である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)として、式(A):
【化1】

{式中、mは3.8〜4.2であり、nは0〜3である}
のカルシウムモノカルボナトヒドロキソジアルミナートと、
成分(B)として、式:
【化2】

{式中、MtはLiまたはNaであり、AnはOClO3であり、及びqは1である}
のモノマー単位をもつカテナ-2,2’,2”-ニトリロトリスエタノールパークロラトリチウムまたは-ナトリウム配位ポリマー(B1)及び/または四級または三級アンモニウムまたはホスホニウムの過塩素酸塩(B2)
を含むハロゲン-含有ポリマーの安定剤系。
【請求項2】
(A)がテトラカルシウムモノカルボナトドデカヒドロキソジアルミナート(水和物)である、請求項1に記載の安定剤系。
【請求項3】
(B1)がカテナ-2,2’,2”-ニトリロトリスエタノールパークロラトナトリウムである、請求項1または2に記載の安定剤系。
【請求項4】
(B2)が式:R1R23XClO4{式中、XはPまたはNであり、R1はHまたはR2であり、R2はそれぞれ互いに独立して、1〜20個の炭素原子をもつ飽和若しくは不飽和、分岐若しくは非分岐の環式若しくは非環式の、または環式及び非環式の両方をもつ炭化水素基である}の過塩素酸塩である、請求項1または2に記載の安定剤系。
【請求項5】
さらに成分(C)として、置換シアノアセチル尿素、置換6-アミノウラシル、置換1,4-ジヒドロピリジン、3-アミノクロトン酸エステル、及び水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の安定剤系。
【請求項6】
前記置換シアノアセチル尿素が1,3-ジメチルシアノアセチル尿素であり、前記置換6-アミノウラシルが、1,3-ジメチル-6-アミノウラシル、1,3-ジアリル-6-アミノウラシル、または5,5’-[C4-C18-アルキリデン]-ビス-1,3-ジメチル-6-アミノウラシルであり、前記置換1,4-ジヒドロピリジンが2,6-ジメチル-3,5-ビスカルボキシラウリル-1,4-ジヒドロピリジンであり、前記3-アミノクロトン酸エステルが1,4-ブタンジイルビス-3-アミノクロトネートまたは2,2’-チオビスエタンジイル3-アミノクロトネートである、請求項5に記載の安定剤系。
【請求項7】
成分(A)をベースとする成分(B)の割合は、1〜10重量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の安定剤系。
【請求項8】
ハロゲン含有ポリマーと請求項1〜7のいずれか1項に記載の安定剤系とを含む組成物。
【請求項9】
成分(A)の化合物の使用量が0.01〜3.0重量部、好ましくは0.05〜1.5重量部、特に好ましくは0.1〜1.0重量部である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
成分(C)の使用量が0.10〜10重量部、好ましくは0.01〜5.0重量部、特に好ましくは0.01〜2.0重量部である、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
さらに以下の化合物:水酸化マグネシウム及びアルカリ土類金属石鹸、ポリオールまたは糖アルコールまたはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(THEIC)、亜リン酸エステル、グリシジル化合物、エポキシ化脂肪酸エステル、立体障害アミン(HALS)、酸化防止剤、UV吸収剤及び光安定剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、殺生物剤、顔料、フィラー、発泡剤、滑剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤及び加工助剤の少なくとも一種を含む、請求項8〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ハロゲン含有ポリマーが塩素含有ポリマー、特にPVCである、請求項8〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか1項に記載の組成物を含む物品。
【請求項14】
木材-プラスチック複合材料(WPC=放射線強化木材)、ホイル、形材、床仕上げ材、自動車部品、壁装材、ホース、射出成形またはワイヤ外装である、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
ハロゲン含有ポリマーを安定化するための請求項1〜7のいずれか1項に記載の安定剤系の使用。
【請求項16】
請求項13または14に記載の物品を製造するための請求項8〜13のいずれか1項に記載の組成物の使用。



【公表番号】特表2010−535867(P2010−535867A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519370(P2010−519370)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006412
【国際公開番号】WO2009/021652
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(503379760)ナバルテック アー・ゲー (5)
【Fターム(参考)】