説明

ハロゲン化マグネシウム上に担持された複合触媒系

本発明は、ハロゲン化マグネシウム及び有機アルミニウム化合物を含む付加体上に担持された少なくとも二種類の異なる遷移金属配位化合物を含む触媒系に関し、また、かかる触媒系の存在下における重合方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化マグネシウム及び有機アルミニウム化合物を含む付加体上に担持された少なくとも二種類の異なる遷移金属配位化合物を含む触媒系に関し、また、かかる触媒系の存在下における重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シングルサイト触媒は、当該技術において周知であり、通常、共触媒としてアルモキサン又はホウ素化合物と共に用いられる。かくして得られる触媒系は、得られるポリマーの形態を制御し、特に気相又はスラリー重合プロセスにおける反応器内のファウリングを回避するために、不活性担体上に担持させて用いることができる。
【0003】
かくして得られる触媒系の欠点は、シングルサイト触媒成分に対してアルモキサンを大過剰に用いなければならないので、得られる触媒が極めて高価であるという点である。したがって、アルモキサンの使用を減少又は排除することが望ましい。
【0004】
ホウ素化合物を共触媒として用いる場合には、大過剰は必要ない。しかしながら、ホウ素化合物は、アルモキサンよりも高価であり、取り扱うのが危険であるという欠点を有している。
【0005】
2種以上の異なるチーグラータイプ又はメタロセンタイプのオレフィン重合触媒を含む触媒組成物を用いることが公知である。例えば、一つの触媒によって、広い分子量分布を有する反応器ブレンドを調製するための他の触媒によって製造されるものとは異なる平均モル質量を有するポリエチレンが製造される、二つの触媒の組み合わせを用いることができる(WO 95/11264)。チタンをベースとする伝統的なチーグラー・ナッタ触媒を用いて形成される、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)として知られる、エチレンと、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、又は1−オクテンのようなより高級なα−オレフィンとのコポリマーは、メタロセンを用いて調製されるLLDPEとは異なる。コモノマーの取り込みによって形成される側鎖の数、及びSCBD(短鎖分岐分布)として知られるその分布は、種々の触媒系を用いた場合に大きく異なる。側鎖の数及び分布は、エチレンコポリマーの結晶化挙動に重大な影響を与える。これらのエチレンコポリマーの流動特性及びしたがって加工性は、主としてそのモル質量及びモル質量分布に依存し、したがって、機械特性は、特に短鎖分岐分布に依存する。しかしながら、短鎖分岐分布は、また、特定の処理法、例えば、フィルム押出において役割を果たす。フィルム押出の場合には、フィルム押出物の冷却中のエチレンコポリマーの結晶化挙動は、フィルムを如何に迅速に且つどのような品質で押出すことができるかを決定する重要なファクターである。多数の可能な組み合わせを考慮すると、良好な機械特性及び良好な加工性のバランスのとれた組み合わせのための触媒の的確な組み合わせは、見出すことが困難である。上記記載の触媒系において、シングルサイト成分は、通常、アルミノキサンによって活性化される。
【0006】
WO 99/46302においては、(a)鉄−ピリジンビスイミン成分、及び(b)ジルコノセン又はチーグラー触媒のような更なる触媒をベースとする触媒組成物、並びにエチレン及びオレフィンの重合のためのこれらの使用が記載されている。これらのタイプの触媒において、遷移金属配位化合物は、通常、アルミノキサンによって活性化される。
【0007】
これらの混合触媒系の欠点は、これらの触媒系の保管中に、アルミノキサンの構造及び性質が変化し、それによって初期の触媒系の活性が変化するという点である。異なる担持シングルサイト系の活性は、異なって変化する。したがって、経時劣化した触媒系を用いて所望の二峰性ポリオレフィン生成物を製造することの再現性が制限される。
【0008】
EP−1568716においては、ハロゲン化マグネシウム及び特別の遷移金属配位化合物をベースとする担体を含む触媒系が記載されている。これらの特別な触媒系は、アルミノキサンを加えなくても活性である。二種類の異なる遷移金属配位化合物を含む触媒系に関しては何も言及されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、少なくとも二種類の異なる遷移金属配位化合物を含む、商業的な製造プラントにおいて用いることができ、公知の系よりもより経済的で、保管中により安定である触媒系を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、この目的は、
(a)式(I):
MgT・yAlR(OR3−j (I)
(式中、
Mgは、マグネシウムであり;
Tは、塩素、臭素、又はヨウ素、好ましくは塩素であり;
Alは、アルミニウムであり;
は、線状又は分岐鎖のC〜C10アルキル基、好ましくは線状のC〜C10アルキル基、より好ましくはメチル若しくはエチルであり;
yは、6.00〜0.05の範囲であり、好ましくは、Yは2〜0.1の範囲、より好ましくは1〜0.1の範囲であり;
jは、3〜0.1、好ましくは3〜0.5、より好ましくは3〜1の範囲であり、また非整数でもあり;
は、同一か又は異なり、場合によってはケイ素又はゲルマニウム原子を含む1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基である置換基であり、好ましくは、Rは、場合によってはケイ素又はゲルマニウム原子を含む、線状又は分岐鎖で環式又は非環式の、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり、より好ましくは、Rは、線状又は分岐鎖のC〜C20アルキル基であり、更に好ましくは、Rは、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ヘキシル、又はオクチル基である)
の付加体を、
(b)遷移金属配位化合物の一つが、遷移金属が元素周期律表第6、8、9、及び10族から選択され、好ましくはCr、Fe、Co、Ni、及びPdからなる元素の群、特に好ましくはFe及びCo、特にFeから選択される化合物(B)である、少なくとも二種類の異なる遷移金属配位化合物;
と接触させることによって得られる生成物を含む担持触媒系によって達成できることが見出された。
【0011】
式(I):
MgT・yAlR(OR3−j (I)
の付加体は、30m/gより高く、より好ましくは38m/gより高く、更に好ましくは200m/gより高く、しかしながら300m/gより高い値には達しない表面積(BET)を有する。これは、当該技術において通常的に知られている方法によって得ることができる。例えば、式:MgT・wROH(式中、wは0.1〜6の範囲である)の付加体を、不活性溶媒中において、式:HAlRq13−e又はHAlq16−e(式中、Rq1置換基は、同一か又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、又は場合によってはケイ素若しくはゲルマニウム原子を含む1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基であり;但し、少なくとも一つのRq1はハロゲンとは異なり;eは、0〜1の範囲であり、また非整数でもあり;好ましくは、かかる炭化水素基は、場合によってはケイ素又はゲルマニウム原子を含む、線状又は分岐鎖で環式又は非環式の、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり;好ましくは、Rq1は、線状又は分岐鎖のC〜C20アルキル基、より好ましくは、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ヘキシル、又はオクチル基である)のアルミニウム化合物と接触させる。この反応の例は、米国特許4,399,054及び米国特許5,698,487において見ることができる。
【0012】
好ましくは、式:MgT・wROHの付加体を、米国特許5,698,487において記載されているように部分的に脱アルコール化する。したがって、本発明の更なる対象は、
(a)(i)式:MgT・wROH(式中、Tは、塩素、臭素、又はヨウ素、好ましくは塩素であり;Rは、線状又は分岐鎖のC〜C10アルキル基であり、好ましくは、Rは、線状のC〜C10アルキル基であり、より好ましくは、Rは、メチル又はエチル基であり;wは、6〜0.1、好ましくは3〜0.5、より好ましくは2.9〜0.5の範囲であり、また非整数でもある)の部分的に脱アルコール化された付加体を;
(ii)式:HAlRq13−e又はHAlq16−e(式中、Rq1置換基は、同一か又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、又は場合によってはケイ素若しくはゲルマニウム原子を含む1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基であり;但し、少なくとも一つのRq1はハロゲンとは異なり;eは、0〜1の範囲であり、また非整数でもあり;好ましくは、かかる炭化水素基は、場合によってはケイ素又はゲルマニウム原子を含む、線状又は分岐鎖で環式又は非環式の、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり;好ましくは、Rq1は、線状又は分岐鎖のC〜C20アルキル基であり;より好ましくは、Rq1は、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ヘキシル、又はオクチル基である)の有機アルミニウム化合物;
と接触させて、上記に記載の式(I):MgT・yAlR(OR3−jの付加体を得;
(b)上記に記載のようにして、工程(a)から得られた生成物を、遷移金属配位化合物の一つが、遷移金属が元素周期律表第6、8、9、及び10族から選択され、好ましくはCr、Fe、Co、Ni、及びPdからなる元素の群、特に好ましくはFe及びCo、特にFeから選択される化合物(B)である、少なくとも二種類の異なる遷移金属配位化合物と接触させる;
工程を含む方法によって得られる担持触媒系である。
【0013】
工程(a)において用いる式:MgT・wROHの部分的に脱アルコール化された付加体は、1〜6モルのアルコールを含むMgTとアルコールとの付加体を部分的に脱アルコール化することによって得ることができる。同等のアルコールの含量、即ち同じ実験式を有する二種類の付加体が、一方の付加体が部分的に脱アルコール化されているという理由のために多孔度及び表面積が異なるという可能性がある。
【0014】
脱アルコール化は、米国特許5,698,487において記載されているもののような公知の方法論にしたがって行うことができる。脱アルコール化処理の程度によって、一般に1モルのMgTあたり0.1〜3モル、好ましくは2.9〜0.5モル、より好ましくは2.9〜1モルのアルコールの範囲のアルコール含量を有する部分的に脱アルコール化された付加体を得ることができる。
【0015】
かかる部分的に脱アルコール化されたマグネシウム付加体を、次に、EP−A−553806に記載されている方法のような当該技術において通常的に知られている方法によって、不活性溶媒中で、式:HAlRq13−e又はHAlq16−eの有機アルミニウム化合物と接触させる。
【0016】
本発明方法の工程(b)においては、公知の方法にしたがって、工程(a)の生成物を、例えば、−78℃〜150℃、好ましくは室温〜120℃の温度において操作して、かかる遷移金属配位化合物の溶液と接触させることによって、少なくとも2種類の異なる遷移金属配位化合物、好ましくは2又は3種類、より好ましくは2種類の異なる遷移金属配位化合物を、工程(a)で得られた担体上に担持させることができる。担体上に固定されていないかかる遷移金属配位化合物は、濾過又は同様の方法によって除去する。
【0017】
式(I)の付加体上に担持されるかかる遷移金属配位化合物の量は、一般に、1000マイクロモル/g−担体〜1マイクロモル/g−担体であり;好ましくは、かかる量は、500マイクロモル/g−担体〜2マイクロモル/g−担体、より好ましくは200マイクロモル/g−担体〜2マイクロモル/g−担体である。
【0018】
本発明の触媒系中のかかる遷移金属配位化合物のモル比は、それぞれの遷移金属配位化合物の個々の活性及び所期のポリマー組成に依存する。式(I)の付加体上に担持されるそれぞれの遷移金属配位化合物のモル比は、通常、用いた遷移金属配位化合物の合計モル量の少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%である。
【0019】
本発明において記載する担持触媒系は、遷移金属配位化合物の一つが、遷移金属が元素周期律表第6、8、9、及び10族から選択され、好ましくはCr、Fe、Co、Ni、及びPdからなる元素の群、特に好ましくはFe及びCo、特にFeから選択される化合物(B)である、少なくとも二種類の異なる遷移金属配位化合物を含む。第1の遷移金属化合物(B)は、好ましくは、シクロペンタジエニル誘導体、フェノキシイミン誘導体、並びに、一つ、二つ、又は三つの配位窒素原子を有する非荷電又は単陰荷電若しくは多陰荷電の単座、二座、若しくは三座窒素リガンド、好ましくは、シクロペンタジエニル誘導体、並びに、三つの配位窒素原子を有する非荷電の三座窒素リガンドからなる群から選択されるリガンドを含む。
【0020】
更なる遷移金属配位化合物(A)として、原則としては、有機基又は無機基を有し、通常は共触媒、特に式(I)の付加体との反応後にオレフィン重合のための活性触媒を形成する、周期律表第3〜12族又はランタニド族の遷移金属の全ての化合物を用いることが可能である。遷移金属配位化合物は、通常は、少なくとも一つの単座又は多座リガンドが、σ結合又はπ結合を介して中心遷移金属原子に結合している化合物である。可能なリガンドとしては、シクロペンタジエニル基を含むリガンド及びシクロペンタジエニルを含まないリガンドの両方が挙げられ、好ましくは、シクロペンタジエニル誘導体、フェノキシイミン誘導体、及び一つ、二つ、又は三つの配位窒素原子を有する非荷電、又は単陰荷電若しくは多陰荷電の単座、二座、若しくは三座窒素リガンド、好ましくは、シクロペンタジエニル誘導体、及び三つの配位窒素原子を有する非荷電の三座窒素リガンドからなる群から選択されるリガンドが挙げられる。Chem.Rev.2000,vol.100,No.4には、オレフィン重合に好適な多くのかかる化合物が記載されている。更に、多核シクロペンタジエニルコンプレックスも、また、オレフィン重合に好適である。
【0021】
本発明の触媒系の製造において用いることのできる少なくとも二種類の異なる遷移金属化合物(A)及び(B)の代表例(しかしながら、これらは本発明の範囲を限定しない)は次の通りである。
【0022】
(a)次式:
【0023】
【化1】

【0024】
のように、(A)及び(B)は二種類の異なる鉄配位化合物である;
(b)次式:
【0025】
【化2】

【0026】
のように、(A)及び(B)は二種類の異なるクロム配位化合物である;
(c)次式:
【0027】
【化3】

【0028】
のように、(A)は、TiCl、Ti(OiPr)、ZrCl、又は(n−Bu−Cp)HfClのような、Ti、Zr、又はHf配位化合物であり、(B)は鉄配位化合物である;
(d)次式:
【0029】
【化4】

【0030】
のように、(A)はクロム配位化合物であり、(B)は鉄配位化合物である。
遷移金属配位化合物の一つが、三つの配位窒素原子を含む中性三座リガンド、好ましくは2,6−ビスイミノピリジンリガンドを含む、鉄又はコバルト、好ましくは鉄の配位化合物(B)である担持触媒系が好ましい。
【0031】
好ましくは、鉄又はコバルトの配位化合物(B)の三つの配位窒素原子を含む中性三座リガンドは、少なくとも二つのo,o−二置換アリール基を有する。
式(II):
【0032】
【化5】

【0033】
(式中、変数は以下の意味を有する:
Mは、Fe又はCo、特にFeであり;
1Cは、窒素又はリン、特に窒素であり;
2C〜E4Cは、それぞれ、互いに独立して、炭素、窒素、又はリン、特に炭素であり;
1C〜R3Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、NR18C、OR18C、SiR19Cであり、ここで、有機基R1C〜R3Cは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1C〜R3Cは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1C〜R3Cは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成し;
4C〜R7Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR18C、SiR19Cであり、ここで、有機基R4C〜R7Cは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つのジェミナルか又は隣接する基R4C〜R7Cは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つのジェミナルか又は隣接する基R4C〜R7Cは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成し;vが0である場合には、R6CはL1Cへの結合であり、及び/又は、R7CはL2Cへの結合であり、これによってL1CはR4Cを有する炭素原子への二重結合を形成し、及び/又は、L2CはR5Cを有する炭素原子への二重結合を形成し;
uは、E2C〜E4Cが窒素又はリンである場合には0であり、E2C〜E4Cが炭素である場合には1であり;
1C〜L2Cは、それぞれ、互いに独立して、窒素又はリン、特に窒素であり;
8C〜R11Cは、それぞれ、互いに独立して、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、NR18C、OR18C、SiR19Cであり、ここで、有機基R8C〜R11Cは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R8C〜R17Cは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R8C〜R17Cは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成し;
12C〜R17Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、NR18C、OR18C、SiR19Cであり、ここで、有機基R12C〜R17Cは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R8C〜R17Cは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R8C〜R17Cは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成し;
指数vは、それぞれ、互いに独立して、0又は1であり;
基Xは、それぞれ、互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR18C、OR18C、SR18C、SO18C、OC(O)R18C、CN、SCN、β−ジケトネート、CO、BF、PF、或いは嵩高な非配位アニオンであり、Xは、互いに結合していてもよく;
基R18Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、SiR19Cであり、ここで、有機基R18Cは、また、ハロゲン、又は窒素−及び酸素−含有基によって置換されていてもよく、二つの基R18Cは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく;
基R19Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、ここで、有機基R19Cは、また、ハロゲン、又は窒素−及び酸素−含有基によって置換されていてもよく、二つの基R19Cは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく;
sは、1、2、3、又は4、特に2又は3であり;
Dは、非荷電のドナーであり;
tは、0〜4、特に0、1、又は2である)
の遷移金属配位化合物(B)が好ましい。
【0034】
式(II)の分子中の三つの原子E2C〜E4Cは、同一であっても異なっていてもよい。E1Cがリンである場合には、E2C〜E4Cは、好ましくはそれぞれ炭素である。E1Cが窒素である場合には、E2C〜E4Cは、それぞれ好ましくは、窒素又は炭素、特に炭素である。
【0035】
置換基R1C〜R3C及びR8C〜R17Cは、広範囲に変化してよい。可能な炭素有機置換基R1C〜R3C及びR8C〜R17Cは、例えば以下のものである:線状又は分岐鎖であってよいC〜C22アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;置換基としてC〜C10アルキル基及び/又はC〜C10アリール基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル;線状、環式、又は分岐鎖であってよく、二重結合が内部であっても又は末端であってもよいC〜C22アルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル;更なるアルキル基によって置換されていてもよいC〜C22アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル;或いは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−フェニルエチル;ここで、二つの基R1C〜R3C及び/又は二つの隣接する基R8C〜R17Cは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1C〜R3C及び/又は二つの隣接する基R8C〜R17Cは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成してもよく、及び/又は、有機基R1C〜R3C及びR8C〜R17Cは、また、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよい。更に、R1C〜R3C及びR8C〜R17Cは、また、アミノ:NR18C又はN(SiR19C、アルコキシ又はアリールオキシ:OR18C、例えばジメチルアミノ、N−ピロリジニル、ピコリニル、メトキシ、エトキシ、又はイソプロポキシ、或いはフッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンであってもよい。有機ケイ素置換基:SiR19C中の可能な基R19Cは、R1C〜R3Cに関して上記に記載したものと同じ炭素有機基であり、ここで、二つのR19Cは、また、結合して5又は6員環を形成してもよく、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル、又はジメチルフェニルシリルである。これらのSiR19C基は、また、酸素又は窒素を介してE2C〜E4Cに結合してもよく、例えばトリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、ブチルジメチルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ、又はトリ−tert−ブチルシリルオキシである。
【0036】
好ましい基R1C〜R3Cは、水素、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、o−ジアルキル−又は−ジクロロ−置換フェニル、トリアルキル−又はトリクロロ−置換フェニル、ナフチル、ビフェニル、及びアントラニルである。特に好ましい有機ケイ素置換基は、アルキル基中に1〜10個の炭素原子を有するトリアルキルシリル基、特にトリメチルシリル基である。
【0037】
好ましい基R12C〜R17Cは、水素、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、フッ素、塩素、及び臭素、特に水素である。特に、R13C及びR16Cは、それぞれ、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、フッ素、塩素、又は臭素であり、R12C、R14C、R15C、及びR17Cは、それぞれ水素である。
【0038】
好ましい基R8C〜R11Cは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、フッ素、塩素、及び臭素である。特に、R8C及びR10Cは、それぞれ、ハロゲンによって置換されていてもよいC〜C22アルキル、特にハロゲンによって置換されていてもよいC〜C22−n−アルキル、例えばメチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、又は、フッ素、塩素若しくは臭素のようなハロゲンであり、R9C及びR11Cは、それぞれ、フッ素、塩素、若しくは臭素のようなハロゲンである。R8C及びR10Cが、それぞれ、ハロゲンによって置換されていてもよいC〜C22アルキル、特にハロゲンによって置換されていてもよいC〜C22−n−アルキル、例えばメチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニルであり、R9C及びR11Cが、それぞれ、フッ素、塩素、若しくは臭素のようなハロゲンであることが特に好ましい。
【0039】
特に、R12C、R14C、R15C、及びR17Cが同一であり、R13C及びR16Cが同一であり、R9C及びR11Cが同一であり、R8C及びR10Cが同一である。これはまた、上記に記載の好ましい態様においても好ましい。
【0040】
置換基R4C〜R7Cも、広範囲に変化してよい。可能な炭素有機置換基R4C〜R7Cは、例えば以下のものである:線状又は分岐鎖であってよいC〜C22アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;置換基としてC〜C10アルキル基及び/又はC〜C10アリール基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル;線状、環式、又は分岐鎖であってよく、二重結合が内部であっても又は末端であってもよいC〜C22アルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル;更なるアルキル基によって置換されていてもよいC〜C22アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル;或いは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−フェニルエチル;ここで、二つの基R4C〜R7Cは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つのジェミナルな基R4C〜R7Cは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成してもよく、及び/又は、有機基R4C〜R7Cは、また、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよい。更に、R4C〜R7Cは、アミノ:NR18C又はN(SiR19C、例えば、ジメチルアミノ、N−ピロリジニル、又はピコリニルであってよい。有機ケイ素置換基:SiR19C中の可能な基R19Cは、R1C〜R3Cに関して上記したものと同じ炭素有機基であり、ここで、R19Cは、また、結合して5又は6員環を形成してもよく、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル、又はジメチルフェニルシリルである。これらのSiR19C基は、また、窒素を介してそれらを有する炭素と結合していてもよい。vが0である場合には、R6CはL1Cへの結合であり、及び/又は、R7CはL2Cへの結合であり、それによってL1CはR4Cを有する炭素原子への二重結合を形成し、及び/又は、L2CはR5Cを有する炭素原子への二重結合を形成する。
【0041】
好ましい基R4C〜R7Cは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ベンジル、フェニル、o−ジアルキル−又はジクロロ−置換フェニル、トリアルキル−又はトリクロロ−置換フェニル、ナフチル、ビフェニル、及びアントラニルである。また、アミド置換基:NR18C、特に、ジメチルアミド、N−エチルメチルアミド、ジエチルアミド、N−メチルプロピルアミド、N−メチルイソプロピルアミド、N−エチルイソプロピルアミド、ジプロピルアミド、ジイソプロピルアミド、N−メチルブチルアミド、N−エチルブチルアミド、N−メチル−tert−ブチルアミド、N−tert−ブチルイソプロピルアミド、ジブチルアミド、ジ−sec−ブチルアミド、ジイソブチルアミド、tert−アミル−tert−ブチルアミド、ジペンチルアミド、N−メチルヘキシルアミド、ジヘキシルアミド、tert−アミル−tert−オクチルアミド、ジオクチルアミド、ビス(2−エチルヘキシル)アミド、ジデシルアミド、N−メチルオクタデシルアミド、N−メチルシクロヘキシルアミド、N−エチルシクロヘキシルアミド、N−イソプロピルシクロヘキシルアミド、N−tert−ブチルシクロヘキシルアミド、ジシクロヘキシルアミド、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、デカヒドロキノリン、ジフェニルアミン、N−メチルアニリド、又はN−エチルアニリドのような第2級アミドも好ましい。
【0042】
1C及びL2Cは、それぞれ、互いに独立して、窒素又はリン、特に窒素であり、vが0の場合には、R4C又はR5Cを有する炭素原子と共に二重結合を形成してもよい。特に、vが0である場合には、L1C及び/又はL2Cは、R4C又はR5Cを有する炭素原子と一緒に、イミノ基:−CR4C=N−又は−CR5C=N−を形成する。vが1である場合には、L1C及び/又はL2Cは、R4C又はR5Cを有する炭素原子と一緒に、特にアミド基:−CR4C6C−N−又は−CR5C7C−N−を形成する。
【0043】
リガンドXは、例えば、鉄コンプレックスの合成のために用いる適当な出発金属化合物の選択に由来するが、その後に変化させることもできる。可能なリガンドXは、特に、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素、特に塩素のようなハロゲンである。また、メチル、エチル、プロピル、ブチルのようなアルキル基、ビニル、アリル、フェニル、又はベンジルも、用いることのできるリガンドXである。更なるリガンドXとしては、純粋に例示の目的で且つ全く排他的ではなく、トリフルオロアセテート、BF、PF、及び、弱配位又は非配位アニオン(例えば、S.Strauss,Chem.Rev.,1993,93,927〜942を参照)、例えばB(Cに言及することができる。また、アミド、アルコキシド、スルホネート、カルボキシレート、及びβ−ジケトネートも、特に有用なリガンドXである。これらの置換リガンドXの幾つかは、安価で容易に入手できる出発物質から得ることができるので、特に好ましく用いられる。而して、特に好ましい態様は、Xが、ジメチルアミド、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、フェノキシド、ナフトキシド、トリフレート、p−トルエンスルホネート、アセテート、又はアセチルアセトネートであるものである。
【0044】
基R18Cを変化させることによって、例えば溶解度のような物理特性を精細に調節することができる。可能な炭素有機置換基R18Cは、例えば以下のものである。線状又は分岐鎖であってよいC〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;置換基としてC〜C10アリール基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル;線状、環式、又は分岐鎖であってよく、二重結合が内部であっても又は末端であってもよいC〜C20アルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル;更なるアルキル基及び/又はN−若しくはO−含有基によって置換されていてもよいC〜C20アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル、2−メトキシフェニル、2−N,N−ジメチルアミノフェニル;或いは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−フェニルエチル;ここで、二つの基R18Cは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく、及び、有機基R18Cは、また、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよい。有機ケイ素置換基SiR19C中の可能な基R19Cは、R18Cに関して上記したものと同じ基であり、ここで、二つの基R19Cは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル、又はジメチルフェニルシリルである。基R18Cとして、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルのようなC〜C10アルキル基、並びに、ビニル、アリル、ベンジル、及びフェニルを用いることが好ましい。
【0045】
リガンドXの数は、Fe又はCo、特にFeである金属Mの酸化状態に依存する。したがって、数値sは、総括的表現では与えることができない。触媒活性コンプレックス中の鉄の酸化状態は、当業者に一般的に知られている。しかしながら、その酸化状態が活性触媒のものに一致しないコンプレックスを用いることも可能である。かかるコンプレックスは、次に、好適な活性化剤によって適当に還元又は酸化することができる。+3又は+2の酸化状態の鉄コンプレックスを用いることが好ましい。
【0046】
Dは、非荷電のドナー、特に非荷電のルイス塩基又はルイス酸、例えば、アミド、アルコール、エーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、スルフィド、又はホスフィンであり、これは、鉄中心に結合するか、或いは鉄コンプレックスの製造からの残留溶媒として残存していてもよい。
【0047】
リガンドDの数tは、0〜4であってよく、しばしば、その中で鉄又はコバルトコンプレックスを調製する溶媒、及び、得られたコンプレックスを乾燥する時間に依存し、したがって、0.5又は1.5のような非整数であってもよい。特に、tは、0、1〜2である。
【0048】
好ましい態様においては、遷移金属配位化合物(B)は、式(IIa):
【0049】
【化6】

【0050】
(式中、
2C〜E4Cは、それぞれ、互いに独立して、炭素、窒素、又はリン、特に炭素であり;
1C〜R3Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、NR18C、OR18C、SiR19Cであり、ここで、有機基R1C〜R3Cは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1C〜R3Cは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1C〜R3Cは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成し;
4C〜R5Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR18C、SiR19Cであり、ここで、有機基R4C〜R5Cは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく;
uは、E2C〜E4Cが窒素又はリンである場合には0であり、E2C〜E4Cが炭素である場合には1であり;
1C〜L2Cは、それぞれ、互いに独立して、窒素又はリン、特に窒素であり;
8C〜R11Cは、それぞれ、互いに独立して、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、NR18C、OR18C、SiR19Cであり、ここで、有機基R8C〜R11Cは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R8C〜R17Cは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R8C〜R17Cは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成し;
12C〜R17Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、NR18C、OR18C、SiR19Cであり、ここで、有機基R12C〜R17Cは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R8C〜R17Cは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R8C〜R17Cは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成し;
指数vは、それぞれ、互いに独立して、0又は1であり;
基Xは、それぞれ、互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR18C、OR18C、SR18C、SO18C、OC(O)R18C、CN、SCN、β−ジケトネート、CO、BF、PF、或いは嵩高な非配位アニオンであり、基Xは、互いに結合していてもよく;
基R18Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、SiR19Cであり、ここで、有機基R18Cは、また、ハロゲン、並びに窒素−及び酸素−含有基によって置換されていてもよく、二つの基R18Cは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく;
基R19Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、ここで、有機基R19Cは、また、ハロゲン、又は窒素−及び酸素−含有基によって置換されていてもよく、二つの基R19Cは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく;
sは、1、2、3、又は4、特に2又は3であり;
Dは、非荷電のドナーであり;
tは、0〜4、特に0、1、又は2である)
のものである。
【0051】
上記に記載の態様及び好ましい態様は、E2C〜E4C、R1C〜R3C、X、R18C、及びR19Cに同様に適用される。
置換基R4C〜R5Cは、広範囲に変化してよい。可能な炭素有機置換基R4C〜R5Cは、例えば以下のものである:水素、線状又は分岐鎖であってよいC〜C22アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;置換基としてC〜C10アルキル基及び/又はC〜C10アリール基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル;線状、環式、又は分岐鎖であってよく、二重結合が内部であっても又は末端であってもよいC〜C22アルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル;更なるアルキル基によって置換されていてもよいC〜C22アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル;或いは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−フェニルエチル;ここで、二つの基R4C〜R5Cは、また、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよい。更に、R4C〜R5Cは、アミノ:NR18C又はN(SiR19C、例えばジメチルアミノ、N−ピロリジニル、又はピコリニルであってもよい。有機ケイ素置換基:SiR19C中の可能な基R19Cは、R1C〜R3Cに関して上記に記載したものと同じ炭素有機基であり、ここで、二つの基R19Cは、また、結合して5又は6員環を形成してもよく、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル、又はジメチルフェニルシリルである。これらのSiR19C基は、また、窒素を介してそれらを有する炭素に結合していてもよい。
【0052】
好ましい基R4C〜R5Cは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、又はベンジル、特にメチルである。
【0053】
置換基R8C〜R17Cは、広範囲に変化してよい。可能な炭素有機置換基R8C〜R17Cは、例えば以下のものである:線状又は分岐鎖であってよいC〜C22アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;置換基としてC〜C10アルキル基及び/又はC〜C10アリール基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル;線状、環式、又は分岐鎖であってよく、二重結合が内部であっても又は末端であってもよいC〜C22アルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル;更なるアルキル基によって置換されていてもよいC〜C22アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル;或いは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−フェニルエチル;ここで、二つの基R8C〜R17Cは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R8C〜R17Cは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成してもよく、及び/又は、有機基R8C〜R17Cは、また、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよい。更に、R8C〜R17Cは、フッ素、塩素、臭素のようなハロゲン;アミノ:NR18C又はN(SiR19C、アルコキシ又はアリールオキシ:OR18C、例えばジメチルアミノ、N−ピロリジニル、ピコリニル、メトキシ、エトキシ、又はイソプロポキシであってもよい。有機ケイ素置換基:SiR19C中の可能な基R19Cは、R1C〜R3Cに関して上記に記載したものと同じ炭素有機基であり、ここで、二つのR19Cは、また、結合して5又は6員環を形成してもよく、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル、又はジメチルフェニルシリルである。これらのSiR19C基は、また、酸素又は窒素を介して結合していてもよく、例えば、トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、ブチルジメチルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ、又はトリ−tert−ブチルシリルオキシである。
【0054】
好ましい基R12C〜R17Cは、水素、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、フッ素、塩素、及び臭素、特に水素である。特に、R13C及びR16Cは、それぞれ、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、フッ素、塩素、又は臭素であり、R12C、R14C、R15C、及びR17Cは、それぞれ、水素である。
【0055】
好ましいR8C〜R11Cは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、フッ素、塩素、及び臭素である。特に、R8C及びR10Cは、それぞれ、ハロゲンによって置換されていてもよいC〜C22アルキル、特にハロゲンによって置換されていてもよいC〜C22−n−アルキル、例えばメチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、或いは、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンであり、R9C及びR11Cは、それぞれ、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンである。R8C及びR10Cが、それぞれ、ハロゲンによって置換されていてもよいC〜C22アルキル、特にハロゲンによって置換されていてもよいC〜C22−n−アルキル、例えばメチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニルであり、R9C及びR11Cが、それぞれ、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンであることが特に好ましい。
【0056】
特に、R12C、R14C、R15C、及びR17Cは同一であり、R13C及びR16Cは同一であり、R9C及びR11Cは同一であり、R8C及びR10Cは同一である。これはまた、上記記載の好ましい態様においても好ましい。
【0057】
式(II)又は(IIa)の遷移金属配位化合物の調製は、例えば、J.Am.Chem.Soc.,120,p.4049以下(1998)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1998,849、及びWO 98/27124において記載されている。好ましいコンプレックス(B)は、2,6−ビス[1−(2,6−ジメチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2,4,6−トリメチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2−クロロ−4,6−ジメチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2−クロロ−6−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2,6−ジクロロフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ)メチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2,4−ジクロロ−6−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2,6−ジフルオロフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2,6−ジブロモフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、又はそれぞれのジブロミド若しくはトリブロミドである。
【0058】
第2の遷移金属配位化合物(A)が、そのシクロペンタジエニル系が非荷電ドナー(A1)又はハフノセン(A2)によって置換されている元素周期律表第4〜6族の金属のモノシクロペンタジエニルコンプレックスである、上記に記載の担持触媒系が好ましい。
【0059】
本発明の目的のためには、非荷電ドナーは、周期律表第15又は16族の元素を含む非荷電の官能基である。
ハフノセン触媒成分は、例えば、シクロペンタジエニルコンプレックスである。シクロペンタジエニルコンプレックスは、例えば、例えばEP−129368、EP−561479、EP−545304、及びEP−576970に記載されているような橋架又は非橋架ビスシクロペンタジエニルコンプレックス、例えばEP−416815に記載されている橋架アミドシクロペンタジエニルコンプレックスのようなモノシクロペンタジエニルコンプレックス、EP−632063に記載されているような多核シクロペンタジエニルコンプレックス、EP−659758に記載されているようなπリガンド置換テトラヒドロペンタレン、又はEP−661300に記載されているようなπリガンド置換テトラヒドロインデンであってよい。
【0060】
一般式:Cp−Y(III)
(式中、変数は以下の意味を有する:
Cpは、シクロペンタジエニル系であり;
Yは、Cpに結合する置換基であり、周期律表第15又は16族の少なくとも一つの原子を含む少なくとも一つの非荷電ドナーを含み;
は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、又はタングステン、特にクロムであり;
mは、1、2、又は3である)
の構造的特徴を有するモノシクロペンタジエニルコンプレックス(A1)が好ましい。
【0061】
好適なモノシクロペンタジエニルコンプレックス(A1)は、一般式:Cp−Y(III)(式中、変数は上記に定義した通りである)の構造要素を含む。したがって、更なるリガンドが金属原子Mに結合していてよい。更なるリガンドの数は、例えば、金属原子の酸化状態に依存する。これらのリガンドは、更なるシクロペンタジエニル系ではない。好適なリガンドとしては、例えばXに関して記載したようなモノアニオン性及びジアニオン性リガンドが挙げられる。更に、アミン、エーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、スルフィド、又はホスフィンのようなルイス塩基もまた、金属中心Mに結合していてよい。モノシクロペンタジエニルコンプレックスは、モノマー、ダイマー、又はオリゴマーの形態であってよい、モノシクロペンタジエニルコンプレックスは、好ましくはモノマーの形態である。
【0062】
は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、及びタングステンからなる群から選択される金属である。触媒活性コンプレックス中における遷移金属Mの酸化状態は、当業者に一般的に知られている。極めて高い確率で、クロム、モリブデン、及びタングステンは酸化状態+3で、ジルコニウム及びハフニウムは酸化状態+4で、チタンは酸化状態+3又は+4で存在する。しかしながら、その酸化状態が活性触媒のものと一致しないコンプレックスを用いることも可能である。かかるコンプレックスは、次に、好適な活性化剤によって適当に還元又は酸化することができる。Mは、好ましくは、酸化状態3のチタン;バナジウム、クロム、モリブデン、又はタングステンである。酸化状態2、3、及び4、特に3のクロムが特に好ましい。
【0063】
mは、1、2、又は3であってよく、即ち、1、2、又は3つのドナー基YがCpに結合していてもよく、2又は3つの基Yが存在する場合には、これらは同一であっても異なっていてもよい。Cpに一つのみのドナー基Yが結合している(m=1)ことが好ましい。
【0064】
非荷電ドナーYは、周期律表第15又は16族の元素を含む非荷電官能基、例えば、アミン、イミン、カルボキサミド、カルボン酸エステル、ケトン(オキソ)、エーテル、チオケトン、ホスフィン、ホスファイト、ホスフィンオキシド、スルホニル、スルホンアミド、或いは、非置換、置換、又は縮合で、部分的に不飽和の複素環若しくはヘテロ芳香環系である。ドナーYは、遷移金属Mに分子間又は分子内結合していてもよく、或いはそれに結合していなくてもよい。好ましくは、ドナーYは金属中心Mに分子内結合している。一般式Cp−Y−Mの構造要素を含むモノシクロペンタジエニルコンプレックスが特に好ましい。
【0065】
Cpは、いかなるように置換されていてもよく、及び/又は、1以上の芳香族、脂肪族、複素環式、又はヘテロ芳香族環と縮合していてもよく、1、2、又は3つの置換基、好ましくは1つの置換基は基Yによって形成されており、及び/又は、1、2、又は3つの置換基、好ましくは1つの置換基は基Yによって置換されており、及び/又は、芳香族、脂肪族、複素環式、又はヘテロ芳香族縮合環は、1、2、又は3つの置換基、好ましくは1つの置換基を有している、シクロペンタジエニル系である。シクロペンタジエニル骨格自体は、6つのπ電子を有するC環系であり、その炭素原子の一つは、また、窒素又はリン、好ましくはリンによって置き換えられていてもよい。ヘテロ原子によって置き換えられていないC環系を用いることが好ましい。このシクロペンタジエニル骨格は、例えば、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含むヘテロ芳香環、或いは芳香環と縮合していてもよい。これに関連して、「縮合」とは、ヘテロ環及びシクロペンタジエニル骨格が、二つの原子、好ましくは炭素原子を共有することを意味する。シクロペンタジエニル系はMに結合する。
【0066】
特に適切なモノシクロペンタジエニルコンプレックス(A1)は、Yが基:−Z−A−によって形成されており、シクロペンタジエニル系Cp及びMと一緒に、一般式:Cp−Z−A−M(IV)の構造要素を含むモノシクロペンタジエニルコンプレックスを形成するものである。上記において、変数は以下の意味を有する:
Cp−Z−Aは、
【0067】
【化7】

【0068】
(式中、変数は以下の意味を有する:
1A〜E5Aは、それぞれ炭素であるか、或いはE1A〜E5Aの1つ以下はリンであり;
1A〜R4Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR5A、N(SiR5A、OR5A、OSiR5A、SiR5A、BR5Aであり、ここで、有機基R1A〜R4Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、二つの隣接する基R1A〜R4Aは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1A〜R4Aは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成し;
基R5Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、二つのジェミナルな基R5Aは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく;
Zは、以下の群:
【0069】
【化8】

【0070】
−BR6A−、−BNR6A7A−、−AlR6A−、−Sn−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NR6A−、−CO−、−PR6A−、又は−P(O)R6A
から選択される、AとCpとの間の二価の橋架基であり;ここで、
1A〜L3Aは、それぞれ、互いに独立して、ケイ素又はゲルマニウムであり;
6A〜R11Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR12Aであり、ここで、有機基R6A〜R11Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、二つのジェミナルか又は隣接する基R6A〜R11Aは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく;
基R12Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、或いはアルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、C〜C10アルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであり、二つの基R12Aは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく;
Aは、元素周期律表第15及び/又は16族の1以上の原子を含む非荷電のドナー基、好ましくは非置換、置換、又は縮合のヘテロ芳香族環系である)
であり;
は、酸化状態3のチタン;バナジウム、クロム、モリブデン、及びタングステンからなる群から選択される金属、特にクロムであり;
kは、0又は1である。
【0071】
好ましいシクロペンタジエニル系Cpにおいては、E1A〜E5Aは全て炭素である。
置換基R1A〜R4Aを変化させることによって、金属コンプレックスの重合挙動に影響を与えることができる。置換基の数及びタイプによって、重合するオレフィンに対する金属原子Mの接近可能性に影響を与えることができる。このようにして、種々のモノマー、特に嵩高なモノマーに対する触媒の活性及び選択性を変化させることが可能である。また、置換基によって成長ポリマー鎖の停止反応の速度に影響を与えることができるので、このようにして、形成されるポリマーの分子量も変化させることができる。したがって、置換基R1A〜R4Aの化学構造は、所望の結果を達成し、用途に合わせて調製された触媒系を得るために、広範囲に変化させることができる。可能な炭素有機基R1A〜R4Aは、例えば以下のものである:水素、線状又は分岐鎖であってよいC〜C22アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;置換基としてC〜C10アルキル基及び/又はC〜C10アリール基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル;線状、環式、又は分岐鎖であってよく、二重結合が内部であっても又は末端であってもよいC〜C22アルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル;更なるアルキル基によって置換されていてもよいC〜C22アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル;或いは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−フェニルエチル;ここで、二つの基R1A〜R4Aは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1A〜R4Aは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成してもよく、及び/又は、有機基R1A〜R4Aは、また、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよい。更に、R1A〜R4Aは、アミノ:NR5A又はN(SiR5A、アルコキシ又はアリールオキシ:OR5A、例えばジメチルアミノ、N−ピロリジニル、ピコリニル、メトキシ、エトキシ、又はイソプロポキシであってもよい。有機ケイ素置換基:SiR5A中の基R5Aは、R1A〜R4Aに関して上記に記載したものと同じ炭素有機基であってよく、ここで、二つのR5Aは、また、結合して5又は6員環を形成してもよく、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル、又はジメチルフェニルシリルである。これらのSiR5A基は、また、酸素又は窒素を介してシクロペンタジエニル骨格に結合してもよく、例えばトリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、ブチルジメチルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ、又はトリ−tert−ブチルシリルオキシである。好ましい基R1A〜R4Aは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、o−ジアルキル−又は−ジクロロ−置換フェニル、トリアルキル−又はトリクロロ−置換フェニル、ナフチル、ビフェニル、及びアントラニルである。可能な有機ケイ素置換基は、特に、アルキル基中に1〜10個の炭素原子を有するトリアルキルシリル基、特にトリメチルシリル基である。
【0072】
二つの隣接する基R1A〜R4Aは、それらを有するE1A〜E5Aと一緒に、窒素、リン、酸素、及びイオウ、特に好ましくは窒素及び/又はイオウからなる群から選択される少なくとも一つの原子を含む、複素環、好ましくはヘテロ芳香環を形成してもよく、複素環又はヘテロ芳香環中に存在するE1A〜E5Aは、好ましくは炭素である。5又は6つの環原子の環寸法を有する複素環及びヘテロ芳香環が好ましい。環原子として炭素原子に加えて1〜4つの窒素原子及び/又はイオウ若しくは酸素原子を含んでいてよい5員の複素環の例は、1,2−ジヒドロフラン、フラン、チオフェン、ピロール、イソオキサゾール、3−イソチアゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−トリアゾール、及び1,2,4−トリアゾールである。1〜4つの窒素原子及び/又はリン原子を含んでいてよい6員のヘテロアリール基の例は、ピリジン、ホスファベンゼン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、又は1,2,3−トリアジンである。5員又は6員の複素環は、また、C〜C10アルキル、C〜C10アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜10個の炭素原子を有するアリールアルキル、トリアルキルシリル、或いは、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲン、ジアルキルアミド、アリールアルキルアミド、ジアリールアミド、アルコキシ、又はアリールオキシによって置換されていてもよく、或いは、1以上の芳香環若しくはヘテロ芳香環と縮合していてもよい。ベンゾ縮合5員ヘテロアリール基の例は、インドール、インダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、及びベンズイミダゾールである。ベンゾ縮合6員ヘテロアリール基の例は、クロマン、ベンゾピラン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタルアジン、キナゾリン、キノキサリン、1,10−フェナントロリン、及びキノリジンである。複素環の命名及び付番は、Lettau,Chemie der Heterocyclen,第1版,VEB,Weinheim,1979からとった。複素環/ヘテロ芳香環は、好ましくは、複素環/ヘテロ芳香環のC−C二重結合を介してシクロペンタジエニル骨格と縮合する。1つのヘテロ原子を有する複素環/ヘテロ芳香環は、好ましくは、2,3−又はb−縮合する。
【0073】
縮合複素環を有するシクロペンタジエニル系Cpは、例えば、チアペンタレン、2−メチルチアペンタレン、2−エチルチアペンタレン、2−イソプロピルチアペンタレン、2−n−ブチルチアペンタレン、2−tert−ブチルチアペンタレン、2−トリメチルシリルチアペンタレン、2−フェニルチアペンタレン、2−ナフチルチアペンタレン、3−メチルチオペンタレン、4−フェニル−2,6−ジメチル−1−チオペンタレン、4−フェニル−2,6−ジエチル−1−チオペンタレン、4−フェニル−2,6−ジイソプロピル−1−チオペンタレン、4−フェニル−2,6−ジ−n−ブチル−1−チオペンタレン、4−フェニル−2,6−ジ−トリメチルシリル−1−チオペンタレン、アザペンタレン、2−メチルアザペンタレン、2−エチルアザペンタレン、2−イソプロピルアザペンタレン、2−n−ブチルアザペンタレン、2−トリメチルシリルアザペンタレン、2−フェニルアザペンタレン、2−ナフチルアザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジメチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジエチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−n−ブチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−tert−ブチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−トリメチルシリル−1−アザペンタレン、1−tert−ブチル−2,5−ジメチル−1−アザペンタレン、オキサペンタレン、ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジメチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジエチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−n−ブチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−tert−ブチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−トリメチルシリル−1−ホスファペンタレン、1−メチル−2,5−ジメチル−1−ホスファペンタレン、1−tert−ブチル−2,5−ジメチル−1−ホスファペンタレン、7−シクロペンタ[1,2]チオフェン[3,4]シクロペンタジエン、又は7−シクロペンタ[1,2]ピロール[3,4]シクロペンタジエンである。
【0074】
更に好ましいシクロペンタジエニル系Cpにおいては、4つの基R1A〜R4A、即ち隣接する基の2つの対は、2つの複素環、特にヘテロ芳香環を形成する。複素環系は、上記に記載のものと同じである。
【0075】
2つの縮合複素環を有するシクロペンタジエニル系Cpは、例えば、7−シクロペンタジチオフェン、7−シクロペンタジピロール、又は7−シクロペンタジホスホールである。
【0076】
かかる縮合複素環を有するシクロペンタジエニル系の合成は、例えば、上記記載のWO 98/22486において記載されている。”metalorganic catalysts for synthesis and polymerisation”,Springer Verlag 1999,Ewenら,p.150以下においては、これらのシクロペンタジエニル系の更なる合成が記載されている。
【0077】
特に好ましい置換基R1A〜R4Aは、上記に記載の炭素有機置換基、及び、環式縮合環系を形成する、即ち、E1A〜E5Aシクロペンタジエニル骨格、好ましくはCシクロペンタジエニル骨格と一緒に、例えば、非置換又は置換の、インデニル、ベンズインデニル、フェナントレニル、フルオレニル、又はテトラヒドロインデニル系を形成する炭素有機置換基、並びに特にそれらの好ましい態様である。
【0078】
かかるシクロペンタジエニル系(好ましくは1位に配置する基−Z−A−を除く)の例は、3−メチルシクロペンタジエニル、3−エチルシクロペンタジエニル、3−イソプロピルシクロペンタジエニル、3−tert−ブチルシクロペンタジエニル、ジアルキルアルキルシクロペンタジエニル、例えばテトラヒドロインデニル、2,4−ジメチルシクロペンタジエニル、又は3−メチル−5−tert−ブチルシクロペンタジエニル、トリアルキルシクロペンタジエニル、例えば2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル、或いはテトラアルキルシクロペンタジエニル、例えば2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル、並びに、インデニル、2−メチルインデニル、2−エチルインデニル、2−イソプロピルインデニル、3−メチルインデニル、ベンズインデニル、及び2−メチルベンズインデニルである。縮合環系は、更にC〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR5A、N(SiR5A、OR5A、OSiR5A、又はSiR5Aを有していてもよく、例えば、4−メチルインデニル、4−エチルインデニル、4−イソプロピルインデニル、5−メチルインデニル、4−フェニルインデニル、5−メチル−4−フェニルインデニル、2−メチル−4−フェニルインデニル、又は4−ナフチルインデニルである。
【0079】
特に好ましい態様においては、置換基R1A〜R4Aの1つ、好ましくはR2Aは、C〜C22アリール、又はアルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、好ましくはC〜C22アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラセニル、又はフェナントレニルであり、ここで、アリールは、また、N−、P−、O−、又はS−含有置換基、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、ハロゲン、或いは1〜10個の炭素原子を有するハロアルキル若しくはハロアリールによって置換されていてもよく、例えばo−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル、o−、m−、p−ジメチルアミノフェニル、o−、m−、p−メトキシフェニル、o−、m−、p−フルオロフェニル、o−、m−、p−クロロフェニル、o−、m−、p−トリフルオロメチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジクロロフェニル、或いは2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジ(トリフルオロメチル)フェニルである。アリール基上の置換基としてのN−、P−、O−、又はS−含有置換基、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、ハロゲン、或いは1〜10個の炭素原子を有するハロアルキル若しくはハロアリールは、好ましくは、シクロペンタジエニル環への結合に対してパラ位に位置する。アリール置換基は置換基−Z−Aに対して隣接する位置に結合することができ、或いは二つの置換基はシクロペンタジエニル環上の1,3位に互いに位置する。−Z−A及びアリール置換基は、好ましくは、シクロペンタジエニル環上において互いに1,3位に存在する。
【0080】
メタロセンの場合のように、モノシクロペンタジエニルコンプレックス(A1)は、キラルであってよい。而して、シクロペンタジエニル骨格の置換基R1A〜R4Aの1つは1以上のキラル中心を有していてよく、或いは、シクロペンタジエニル系Cp自体がエナンチオトピックであって、それが遷移金属Mに結合している場合においてのみキラリティーが誘導されていてもよい(シクロペンタジエニル化合物におけるキラリティーに関する形式については、R.Halterman,Chem.Rev.,92(1992)965−994を参照されたい)。
【0081】
シクロペンタジエニル系Cpと非荷電ドナーAとの間の橋架基Zは、好ましくは炭素−及び/又はケイ素−及び/又はホウ素−含有橋架員から構成される、二価の有機橋架基(k=1)である。シクロペンタジエニル系とAとの間の連結基の長さを変化させることによって、触媒の活性に影響を与えることができる。Zは、好ましくは、縮合複素環又は縮合芳香環に隣接するシクロペンタジエニル骨格に結合する。而して、複素環又は芳香環がシクロペンタジエニル骨格の2,3位において縮合している場合には、Zは、好ましくは、シクロペンタジエニル骨格の1又は4位に位置する。
【0082】
連結基Z上の可能な炭素有機置換基R6A〜R11Aは、例えば以下のものである:線状又は分岐鎖であってよいC〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;置換基としてC〜C10アリール基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル;線状、環式、又は分岐鎖であってよく、二重結合が内部であっても又は末端であってもよいC〜C20アルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル;更なるアルキル基によって置換されていてもよいC〜C20アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェン−1−イル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェン−1−イル;或いは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−フェニルエチル;ここで、二つのR6A〜R11Aは、また、結合して、5又は6員環、例えばシクロヘキサンを形成してもよく、及び、有機基R6A〜R11Aは、また、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよく、例えば、ペンタフルオロフェニル又はビス−3,5−トリフルオロメチルフェン−1−イルであり、並びにアルキル若しくはアリールによって置換されていてもよい。
【0083】
有機ケイ素置換基:SiR12A中の基R12Aは、R6A〜R11Aに関して上記で言及したものと同じ基であってよく、ここで、二つの基R12Aは、また、結合して5又は6員環を形成してもよく、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル、又はジメチルフェニルシリルである。好ましい基R6A〜R11Aは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ベンジル、フェニル、o−ジアルキル−又は−ジクロロ−置換フェニル、トリアルキル−又はトリクロロ−置換フェニル、ナフチル、ビフェニル、及びアントラニルである。
【0084】
特に好ましい置換基R6A〜R11Aは、水素、線状又は分岐鎖であってよいC〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;更なるアルキル基によって置換されていてもよいC〜C20アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェン−1−イル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェン−1−イル;或いは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−フェニルエチルであり;ここで、二つの基R6A〜R11Aは、また、結合して、5又は6員環、例えばシクロヘキサンを形成してもよく、及び、有機基R6A〜R2Bは、また、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲン、特にフッ素によって置換されていてもよく、例えば、ペンタフルオロフェニル又はビス−3,5−トリフルオロメチルフェン−1−イルであり、並びにアルキル若しくはアリールによって置換されていてもよい。メチル、エチル、1−プロピル、2−イソプロピル、1−ブチル、2−tert−ブチル、フェニル、及びペンタフルオロフェニルが、特に好ましい。
【0085】
Zは、好ましくは、基:−CR6A7A−、−SiR6A7A−、特に−Si(CH−、−CR6A7ACR8A9A−、−SiR6A7ACrR8A9A−、又は、置換若しくは非置換の1,2−フェニレン、特に−CR6A7A−である。上記に記載の置換基R6A〜R11Aの好ましい態様は、ここでも同様に好ましい態様である。−CR6A7A−が−CHR6A−、−CH−、又は−C(CH−基であることが好ましい。−L1A6A7ACR8A9A−中の基:−SiR6A7A−は、シクロペンタジエニル系又はAに結合していてよい。この基:−SiR6A7A−又はその好ましい態様は、好ましくはCpに結合する。
【0086】
kは0又は1であり、特にkは1であり、或いは、Aが、非置換、置換、又は縮合複素環系である場合には、0であってもよい。kが1であることが好ましい。
Aは、周期律表第15又は16族の原子、好ましくは酸素、イオウ、窒素、及びリン、好ましくは窒素及びリンからなる群から選択される1以上の原子を含む非荷電のドナーである。Aにおけるドナー官能基は、金属Mに分子間又は分子内結合していてよい。Aにおけるドナーは、好ましくはMに分子内結合している。可能なドナーは、周期律表第15又は16族の元素を含む非荷電の官能基、例えば、アミン、イミン、カルボキサミド、カルボン酸エステル、ケトン(オキソ)、エーテル、チオケトン、ホスフィン、ホスファイト、ホスフィンオキシド、スルホニル、スルホンアミド、或いは、非置換、置換、又は縮合複素環系である。シクロペンタジエニル基及びZに対するAの付加は、例えば、WO 00/35928に記載されているものに類似の方法によって合成的に行うことができる。
【0087】
Aは、好ましくは、−OR13A−、−SR13A−、−NR13A14A−、−PR13A14A−、−C=NR13A−、及び、非置換、置換、又は縮合ヘテロ芳香環系、特に−NR13A14A−、−C=R13A−、及び非置換、置換、又は縮合ヘテロ芳香環系から選択される基である。
【0088】
13A及びR14Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、線状又は分岐鎖であってよいC〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;置換基としてC〜C10アリール基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル;線状、環式、又は分岐鎖であってよく、二重結合が内部であっても又は末端であってもよいC〜C20アルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル;更なるアルキル基によって置換されていてもよいC〜C20アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェン−1−イル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェン−1−イル;アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有し、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−フェニルエチル;或いはSiR15Aであり;ここで、有機基R13A〜R14Aは、また、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲン、或いは窒素含有基、並びに、更なるC〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、或いはSiR15A基によって置換されていてもよく、二つの隣接する基R13A〜R14Aは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく;基R15Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、或いはアルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、二つの基R15Aは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよい。
【0089】
NR13A14Aはアミド置換基である。ジメチルアミド、N−エチルメチルアミド、ジエチルアミド、N−メチルプロピルアミド、N−メチルイソプロピルアミド、N−エチルイソプロピルアミド、ジプロピルアミド、ジイソプロピルアミド、N−メチルブチルアミド、N−エチルブチルアミド、N−メチル−tert−ブチルアミド、N−tert−ブチルイソプロピルアミド、ジブチルアミド、ジ−sec−ブチルアミド、ジイソブチルアミド、tert−アミル−tert−ブチルアミド、ジペンチルアミド、N−メチルヘキシルアミド、ジヘキシルアミド、tert−アミル−tert−オクチルアミド、ジオクチルアミド、ビス(2−エチルヘキシル)アミド、ジデシルアミド、N−メチルオクタデシルアミド、N−メチルシクロヘキシルアミド、N−エチルシクロヘキシルアミド、N−イソプロピルシクロヘキシルアミド、N−tert−ブチルシクロヘキシルアミド、ジシクロヘキシルアミド、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、デカヒドロキノリン、ジフェニルアミン、N−メチルアニリド、又はN−エチルアニリドのような第2級アミドが好ましい。
【0090】
イミノ基:−C=NR13Aにおいて、R13Aは、好ましくは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいC〜C20アリール基、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェン−1−イル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェン−1−イルである。
【0091】
Aは、好ましくは、環炭素に加えて、酸素、イオウ、窒素、及びリンからなる群から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい、非置換、置換、又は縮合ヘテロ芳香環系である。炭素原子に加えて環員として、1〜4個の窒素原子、或いは1〜3個の窒素原子及び/又は1個のイオウ若しくは酸素原子を含んでいてもよい5員のヘテロアリール基の例は、2−フリル、2−チエニル、2−ピロリル、3−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、1,2,4−オキサジアゾル−3−イル、1,2,4−オキサジアゾル−5−イル、1,3,4−オキサジアゾル−2−イル、及び1,2,4−トリアゾル−3−イルである。1〜4個の窒素原子及び/又は1個のリン原子を含んでいてもよい6員のヘテロアリール基の例は、2−ピリジニル、2−ホスファベンゼニル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−ピラジニル、1,3,5−トリアジン−2−イル及び1,2,4−トリアジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−5−イル及び1,2,4−トリアジン−6−イルである。5員及び6員のヘテロアリール基は、また、C〜C10アルキル、C〜C10アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜10個の炭素原子を有するアリールアルキル、トリアルキルシリル、又はフッ素、塩素、若しくは臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよく、或いは、1以上の芳香環又はヘテロ芳香環と縮合してもよい。ベンゾ縮合5員ヘテロアリール基の例は、2−インドリル、7−インドリル、2−クマロニル、7−クマロニル、2−チオナフテニル、7−チオナフテニル、3−インダゾリル、7−インダゾリル、2−ベンズイミダゾリル、及び7−ベンズイミダゾリルである。ベンゾ縮合6員ヘテロアリール基の例は、2−キノリル、8−キノリル、3−シンノリル、8−シンノリル、1−フタラジル、2−キナゾリル、4−キナゾリル、8−キナゾリル、5−キノキサリル、4−アクリジル、1−フェナントリジル、及び1−フェナジルである。複素環の命名及び付番は、L.Fieser及びM.Fieser,Lehrbuch der organischen Chemie,第3改訂版,Verlag Chemie,Weinheim 1957からとった。
【0092】
これらのヘテロ芳香環系Aの中で、ヘテロ芳香環部分に1、2、3、4、又は5個の窒素原子を有する、非置換、置換、及び/又は縮合6員ヘテロ芳香環、特に、置換及び非置換の2−ピリジル若しくは2−キノリルが特に好ましい。したがって、Aは、好ましくは、式(VI):
【0093】
【化9】

【0094】
(式中、
6A〜E9Aは、それぞれ、互いに独立して、炭素又は窒素であり;
16A〜R19Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR20Aであり、ここで、有機基R16A〜R19Aは、また、ハロゲン若しくは窒素、並びに更なるC〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR20Aによって置換されていてもよく、二つの隣接する基R16A〜R19A、又はR16AとZは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく、基R20Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、又はアルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、二つの基R20Aは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく;
pは、E6A〜E9Aが窒素である場合には0であり、或いはE6A〜E9Aが炭素である場合には1である)
の基である。
【0095】
特に、0又は1つのE6A〜E9Aは窒素であり、残りは炭素である。Aは、特に好ましくは、2−ピリジル、6−メチル−2−ピリジル、4−メチル−2−ピリジル、5−メチル−2−ピリジル、5−エチル−2−ピリジル、4,6−ジメチル−2−ピリジル、3−ピリダジル、4−ピリミジル、6−メチル−4−ピリミジル、2−ピラジニル、6−メチル−2−ピラジニル、5−メチル−2−ピラジニル、3−メチル−2−ピラジニル、3−エチルピラジニル、3,5,6−トリメチル−2−ピラジニル、2−キノリル、4−メチル−2−キノリル、6−メチル−2−キノリル、7−メチル−2−キノリル、2−キノキサリル、又は3−メチル−2−キノキサリルである。
【0096】
製造の容易さにより、Z及びAの好ましい組み合わせは、Zが非置換又は置換1,2−フェニレンであり、AがNR16A17Aであるもの、及び、Zが、−CHR6A−、−CH−、−C(CH−、又は−Si(CH−であり、Aが、非置換又は置換2−キノリル或いは非置換又は置換2−ピリジルであるものである。kが0である橋架基Zを有しない系もまた、合成するのが非常に簡単である。この場合においては、Aは、好ましくは、非置換又は置換8−キノリルである。更に、kが0である場合には、R2Aは、好ましくは、C〜C22アリール、或いはアルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、好ましくはC〜C22アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラセニル、又はフェナントレニルであり、ここで、アリールは、また、N−、P−、O−、又はS−含有置換基、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、ハロゲン、或いは1〜10個の炭素原子を有するハロアルキル若しくはハロアリールによって置換されていてもよい。
【0097】
変数に関する上記記載の好ましい態様は、また、これらの好ましい組み合わせにおいても好ましい。
は、酸化状態3のチタン;バナジウム、クロム、モリブデン、及びタングステン;好ましくは、酸化状態3のチタン;及びクロムからなる群から選択される金属である。酸化状態2、3、及び4、特に3のクロムが特に好ましい。金属コンプレックス、特にクロムコンプレックスは、適当な金属塩、例えば金属塩化物を、リガンドアニオンと反応させる(例えば、DE 19710615における実施例と類似の方法を用いる)ことによって、簡単な方法で得ることができる。
【0098】
好適なモノシクロペンタジエニルコンプレックス(A1)の中で、
式:Cp−Y(VII)
(式中、変数Cp、Y、A、m、及びMは、上記に定義した通りであり、それらの好ましい態様はここでも好ましく;
は、それぞれ、互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR21A22A、OR21A、SR21A、SO21A、OC(O)R21A、CN、SCN、β−ジケトネート、CO、BF、PF、或いは嵩高な非配位アニオンであり、或いは、二つの基Xは、置換又は非置換ジエンリガンド、特に1,3−ジエンリガンドを形成し、基Xは、互いに結合していてもよく;
21A〜R22Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、SiR23Aであり、ここで、有機基R21A〜R22Aは、また、ハロゲン、又は窒素−及び酸素−含有基によって置換されていてもよく、二つの基R21A〜R22Aは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく;
基R23Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、二つの基R23Aは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく;
nは、1、2、又は3である)
のものが好ましい。
【0099】
Cp、Y、Z、A、m、及びMに関して上記した態様及び好ましい態様は、また、これらの好ましいモノシクロペンタジエニルコンプレックスにも、個々に、及び組み合わせて適用される。
【0100】
リガンドXは、例えば、モノシクロペンタジエニルコンプレックスの合成のために用いる適当な出発金属化合物の選択に由来するが、その後に変化させることもできる。可能なリガンドXは、特に、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のようなハロゲン、特に塩素である。メチル、エチル、プロピル、ブチルのようなアルキル基、ビニル、アリル、フェニル、又はベンジルも、また、有利なリガンドXである。純粋に例示の目的で且つ全く排他的でない、言及することのできる更なるリガンドXは、トリフルオロアセテート、BF、PF、及び、弱配位又は非配位アニオン(例えば、S.Strauss,Chem.Rev.,1993,93,927〜942を参照)、例えばB(Cである。
【0101】
アミド、アルコキシド、スルホネート、カルボキシレート、及びβ−ジケトネートもまた、特に有用なリガンドXである。基R21A及びR22Aを変化させることによって、例えば、溶解度のような物理特性を精細に調節することができる。可能な炭素有機置換基R21A〜R22Aは、例えば以下のものである。線状又は分岐鎖であってよいC〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;置換基としてC〜C10アリール基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル;線状、環式、又は分岐鎖であってよく、二重結合が内部であっても又は末端であってもよいC〜C20アルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル;更なるアルキル基及び/又はN−若しくはO−含有基によって置換されていてもよいC〜C20アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル、2−メトキシフェニル、2−N,N−ジメチルアミノフェニル;或いは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−フェニルエチル;ここで、R21Aは、また、R22Aに結合して、5又は6員環を形成してもよく、有機基R21A〜R22Aは、また、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよい。有機ケイ素置換基SiR23A中の可能な基R23Aは、R21A〜R22Aに関して上記したものと同じ基であり、ここで、二つのR23Aは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル、又はジメチルフェニルシリルである。基R21A及びR22Aとして、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルのようなC〜C10アルキル、並びに、ビニル、アリル、ベンジル、及びフェニルを用いることが好ましい。これらの置換リガンドXの幾つかは、安価で容易に入手できる出発物質から得ることができるので、特に好ましく用いられる。而して、特に好ましい態様は、Xがジメチルアミド、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、フェノキシド、ナフトキシド、トリフレート、p−トルエンスルホネート、アセテート、又はアセチルアセトネートであるものである。
【0102】
リガンドXの数は、遷移金属Mの酸化状態に依存する。したがって、数値nは、総括的表現では与えることができない。触媒活性コンプレックス中の遷移金属Mの酸化状態は、当業者に一般的に知られている。極めて高い確率で、クロム、モリブデン、及びタングステンは酸化状態+3で、バナジウムは酸化状態+3又は+4で存在する。しかしながら、その酸化状態が活性触媒のものに一致しないコンプレックスを用いることも可能である。かかるコンプレックスは、次に、好適な活性化剤によって適当に還元又は酸化することができる。酸化状態+3のクロムコンプレックス、及び酸化状態3のチタンコンプレックスを用いることが好ましい。
【0103】
このタイプの好ましいモノシクロペンタジエニルコンプレックス(A1)は、1−(8−キノリル)−3−フェニルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−(8−キノリル)−3−(1−ナフチル)シクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−(8−キノリル)−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)シクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−(8−キノリル)−3−(4−クロロフェニル)シクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−(8−キノリル)−2−メチル−3−フェニルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−(8−キノリル)−2−メチル−3−(1−ナフチル)シクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−(8−キノリル)−2−メチル−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)シクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−(8−キノリル)−2−メチル−3−(4−クロロフェニル)シクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−(8−キノリル)−2−フェニルインデニルクロム(III)ジクロリド、1−(8−キノリル)−2−フェニルベンズインデニルクロム(III)ジクロリド、1−(8−(2−メチルキノリル))−2−メチル−3−フェニルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−(8−(2−メチルキノリル))−2−フェニルインデニルクロム(III)ジクロリド、1−(2−ピリジルメチル)−3−フェニルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−(2−ピリジルメチル)−2−メチル−3−フェニルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、1−(2−キノリルメチル)−3−フェニルシクロペンタジエニルクロムジクロリド、1−(2−ピリジルエチル)−3−フェニルシクロペンタジエニルクロムジクロリド、1−(2−ピリジル−1−メチルエチル)−3−フェニルシクロペンタジエニルクロムジクロリド、1−(2−ピリジル−1−フェニルメチル)−3−フェニルシクロペンタジエニルクロムジクロリド、1−(2−ピリジルメチル)インデニルクロム(III)ジクロリド、1−(2−キノリルメチル)インデニルクロムジクロリド、1−(2−ピリジルエチル)インデニルクロムジクロリド、1−(2−ピリジル−1−メチルエチル)インデニルクロムジクロリド、1−(2−ピリジル−1−フェニルメチル)インデニルクロムジクロリド、5−[(2−ピリジル)メチル]−1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニルクロムジクロリド、及び1−(8−(2−メチルキノリル))−2−メチルベンズインデニルクロム(III)ジクロリドである。
【0104】
かかる官能性シクロペンタジエニルリガンドの製造は公知である。これらの錯化リガンドへの種々の合成経路は、例えば、M.Endersら,Chem.Ber.(1996),129,459−463、又はP.Jutzi及びU.Siemeling,J.Orgmet.Chem.(1995),500,175−185に記載されている。
【0105】
かかるコンプレックスの合成は、それ自体公知の方法によって行うことができ、適当に置換された環式炭化水素アニオンと、チタン、バナジウム、又はクロムのハロゲン化物との反応が好ましい。適当な調製法の例は、例えば、Journal of Organometallic Chemistry,369(1989),359−370、及びEP−A−1212333に記載されている。
【0106】
特に好適なハフノセン(A2)は、一般式(VIII):
【0107】
【化10】

【0108】
(式中、置換基及び指数は以下の意味を有する:
は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C15アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、−OR6B、又は−NR6B7Bであり、或いは二つの基Xは、置換若しくは非置換ジエンリガンド、特に1,3−ジエンリガンドを形成し、基Xは、同一か又は異なり、互いに結合していてもよく;
1B〜E5Bは、それぞれ炭素であるか、或いは、E1B〜E5Bの一つ以下はリン又は窒素であり、好ましくは炭素であり;
tは、1、2、又は3であり、Hfの価数に依存して、一般式(VI)のメタロセンコンプレックスが非荷電となるような数であり;ここで、
6B及びR7Bは、それぞれ、C〜C10アルキル、C〜C15アリール、それぞれアルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有する、アリールアルキル、アリールアルキル、フルオロアルキル、又はフルオロアリールであり;
1B〜R5Bは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、置換基としてC〜C10アルキル基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜16個の炭素原子及びアリール部分に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR8B、N(SiR8B、OR8B、OSiR8B、SiR8Bであり、ここで、有機基R1B〜R5Bは、またハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R1B〜R5B、特に隣接する基は、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1D〜R5Dは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む、5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;ここで、
基R8Bは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、C〜C10アルキル、C〜C10シクロアルキル、C〜C15アリール、C〜Cアルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであってよく;
1Bは、X、又は
【0109】
【化11】

【0110】
であり;ここで、
基R9B〜R13Bは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、置換基としてC〜C10アルキル基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜16個の炭素原子及びアリール部分に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR14B、N(SiR14B、OR14B、OSiR14B、SiR14Bであり、ここで、有機基R9B〜R13Bは、またハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R9B〜R13B、特に隣接する基は、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R9B〜R13Bは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む、5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;ここで、
基R14Bは、同一か又は異なり、それぞれ、C〜C10アルキル、C〜C10シクロアルキル、C〜C15アリール、C〜Cアルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであり;
6B〜E10Bは、それぞれ炭素であるか、或いは、E6B〜E10Bの一つ以下はリン又は窒素であり、好ましくは炭素であり;
或いは、ここで、基R4B及びZ1Bは一緒になって−R15B−A1B−基を形成し;ここで、
15Bは、
【0111】
【化12】

【0112】
=BR16B、=BNR16B17B、=AlR16B、−Ge−、−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO、=NR16B、=CO、=PR16B、又は=P(O)R16Bであり;ここで、
16B〜R21Bは、同一か又は異なり、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、C〜C10アルキル基、C〜C10フルオロアルキル基、C〜C10フルオロアリール基、C〜C10アリール基、C〜C10アルコキシ基、C〜C15アルキルアリールオキシ基、C〜C10アルケニル基、C〜C40アリールアルキル基、C〜C40アリールアルケニル基、又はC〜C40アルキルアリール基であり、或いは、二つの隣接する基は、それらを結合する原子と一緒になって、4〜15個の炭素原子を有する飽和又は不飽和環を形成し;
2B〜M4Bは、それぞれ、ケイ素、ゲルマニウム、又はスズ、或いは好ましくはケイ素であり;
1Bは、−O−、−S−、=NR22B、=PR22B、=O、=S、=NR22B、−O−R22B、−NR22B、−PR22B、又は、非置換、置換、若しくは縮合複素環系であり;ここで、
基R22Bは、それぞれ、互いに独立して、C〜C10アルキル、C〜C15アリール、C〜C10シクロアルキル、C〜C18アリールアルキル、又はSi(R23Bであり;
23Bは、水素、C〜C10アルキル、置換基としてC〜Cアルキル基を有していてもよいC〜C15アリール、又はC〜C10シクロアルキルであり;
vは、1であるか、或いはA1Bが、非置換、置換、又は縮合複素環系である場合には0であってもよく;
或いは、ここで基R4B及びR12Bは、一緒になって−R15B−基を形成する)
のハフニウムコンプレックスである。
【0113】
1Bは、例えば橋架基R15Bと一緒になって、アミン、エーテル、チオエーテル、又はホスフィンを形成してもよい。しかしながら、A1Bは、また、環炭素に加えて、酸素、イオウ、窒素、及びリンからなる群からのヘテロ原子を含んでいてもよい、非置換、置換、又は縮合の複素環式芳香環系であってもよい。炭素原子に加えて環員として、1〜4個の窒素原子、及び又は1個のイオウ若しくは酸素原子を含んでいてもよい5員のヘテロアリール基の例は、2−フリル、2−チエニル、2−ピロリル、3−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、1,2,4−オキサジアゾル−3−イル、1,2,4−オキサジアゾル−5−イル、1,3,4−オキサジアゾル−2−イル、及び1,2,4−トリアゾル−3−イルである。1〜4個の窒素原子及び/又は1個のリン原子を含んでいてもよい6員のヘテロアリール基の例は、2−ピリジニル、2−ホスファベンゼニル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−ピラジニル、1,3,5−トリアジン−2−イル及び1,2,4−トリアジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−5−イル及び1,2,4−トリアジン−6−イルである。5員及び6員のヘテロアリール基は、また、C〜C10アルキル、C〜C10アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜10個の炭素原子を有するアリールアルキル、トリアルキルシリル、又はフッ素、塩素、若しくは臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよく、或いは、1以上の芳香族又はヘテロ芳香環と縮合してもよい。ベンゾ縮合5員ヘテロアリール基の例は、2−インドリル、7−インドリル、2−クマロニル、7−クマロニル、2−チオナフテニル、7−チオナフテニル、3−インダゾリル、7−インダゾリル、2−ベンズイミダゾリル、及び7−ベンズイミダゾリルである。ベンゾ縮合6員ヘテロアリール基の例は、2−キノリル、8−キノリル、3−シンノリル、8−シンノリル、1−フタラジル、2−キナゾリル、4−キナゾリル、8−キナゾリル、5−キノキサリル、4−アクリジル、1−フェナントリジル、及び1−フェナジルである。複素環の命名及び付番は、L.Fieser及びM.Fieser,Lehrbuch der organischen Chemie,第3改訂版,Verlag Chemie,Weinheim 1957からとった。
【0114】
一般式(XIII)中の基Xは、好ましくは同一であり、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、C〜Cアルキル又はアラルキル、特に塩素、メチル、又はベンジルである。
かかるコンプレックスの合成は、それ自体公知の方法によって行うことができ、適当に置換された環式炭化水素アニオンと、ハフニウムのハロゲン化物との反応が好ましい。適当な調製法の例は、例えば、Journal of Organometallic Chemistry,369(1989),359−370に記載されている。
【0115】
ハフノセンは、ラセミ又は偽ラセミ形態で用いることができる。偽ラセミという用語は、コンプレックスの全ての他の置換基を無視した場合に、二つのシクロペンタジエニルリガンドが互いに対してラセミ配列であるコンプレックスを指す。
【0116】
好適なハフノセン(A2)の例は、とりわけ、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、メチレンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、メチレンビス(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、メチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、メチレンビス(テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(3−フェニルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、エチレンビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、テトラメチルエチレン−9−フルオレニルシクロペンタジエニルハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(3−tert−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−イソプロピルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−tert−ブチルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジエチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ハフニウムジブロミド、ジメチルシランジイルビス(3−メチル−5−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(3−エチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−エチルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンズインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4,5−ベンズインデニル)ハフニウムジクロリド、メチルフェニルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンズインデニル)ハフニウムジクロリド、メチルフェニルシランジイルビス(2−エチル−4,5−ベンズインデニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンズインデニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(2−エチル−4,5−ベンズインデニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−プロピル−4−(1−ナフチル)インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−i−ブチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−プロピル−4−(9−フェナントリル)インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−イソプロピルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2,7−ジメチル)−4−イソプロピルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−[p−トリフルオロメチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−[3’,5’−ジメチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジエチルシランジイルビス(2−メチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−プロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−n−ブチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−ヘキシル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−フェニルインデニル)(2−メチル−4−フェニルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−(1−ナフチル)インデニル)(2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−エチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[3’,5’−ビス−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[1’−ナフチル]インデニル)ハフニウムジクロリド、及びエチレン(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、並びに、対応するジメチルハフニウム、モノクロロモノ(アルキルアリールオキシ)ハフニウム、及びジ(アルキルアリールオキシ)ハフニウム化合物である。コンプレックスは、ラセミ形態、メソ形態で、或いはこれらの混合物として用いることができる。
【0117】
一般式(VIII)のハフノセンの中で、式(IX):
【0118】
【化13】

【0119】
のものが好ましい。
式(IX)の化合物の中で、
が、フッ素、塩素、臭素、C〜Cアルキル、又はベンジルであるか、或いは二つの基Xが、置換又は非置換ブタジエンリガンドを形成し;
tが、1又は2、好ましくは2であり;
1B〜R5Bが、それぞれ、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアリール、NR8B、OSiR8B、又はSi(R8Bであり;
9B〜R13Bが、それぞれ、水素、C〜Cアルキル若しくはC〜Cアリール、NR14B、OSiR14B、又はSi(R14Bであり;
或いは、それぞれの場合において、二つの基R1B〜R5B及び/又はR9B〜R13Bは、C環と一緒になって、インデニル、フルオレニル、又は置換インデニル若しくはフルオレニル系を形成する;
ものが好ましい。
【0120】
シクロペンタジエニル基が同一である式(IX)のハフノセンが特に有用である。
式(IX)の特に好適なハフノセン(A2)の例は、とりわけ、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ビス(テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(トリメトキシシリルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(イソブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(3−ブテニルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(1,3−ジ−tert−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(tert−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(フェニルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(N,N−ジメチルアミノメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、(メチルシクロペンタジエニル)(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(1−メチル−3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、並びに対応するジメチルハフニウム化合物である。
【0121】
更なる例は、1つ又は2つのクロリドリガンドが臭素又はヨウ素によって置き換えられている対応するハフノセン化合物である。
また、第2の遷移金属配位化合物が、少なくとも1つのo−モノ置換アリール基を有する、三つの配位窒素原子を含む中性三座リガンドを含む鉄又はコバルト配位化合物(A3)である、上記に記載の担持触媒系も好ましい。
【0122】
式(X):
【0123】
【化14】

【0124】
(式中、
Mは、Fe又はCo、特にFeであり;
2C〜E4Cは、それぞれ、互いに独立して、炭素、窒素、又はリン、特に炭素であり;
1C〜R3Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、NR18C、OR18C、SiR19Cであり、ここで、有機基R1C〜R3Cは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1C〜R3Cは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1C〜R3Cは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成し;
4C〜R5Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR18C、SiR19Cであり、ここで、有機基R4C〜R5Cは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく;
uは、E2C〜E4Cが窒素又はリンである場合には0であり、E2C〜E4Cが炭素である場合には1であり;
1C〜L2Cは、それぞれ、互いに独立して、窒素又はリン、特に窒素であり;
8C〜R11Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、NR18C、OR18C、SiR19Cであり、ここで、有機基R8C〜R11Cは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R8C〜R17Cは、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R8C〜R17Cは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成し、但し、基R8C〜R11Cの少なくとも1つは水素であり;
12C〜R17Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、NR18C、OR18C、SiR19Cであり、ここで、有機基R12C〜R17Cは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R8C〜R17Cは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R8C〜R17Cは、結合して、N、P、O、又はSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成し;
指数vは、それぞれ、互いに独立して、0又は1であり;
基Xは、それぞれ、互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR18C、OR18C、SR18C、SO18C、OC(O)R18C、CN、SCN、β−ジケトネート、CO、BF、PF、或いは嵩高な非配位アニオンであり、基Xは、互いに結合していてもよく;
基R18Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、SiR19Cであり、ここで、有機基R18Cは、また、ハロゲン、並びに窒素−及び酸素−含有基によって置換されていてもよく、二つの基R18Cは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく;
基R19Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、ここで、有機基R19Cは、また、ハロゲン、又は窒素−及び酸素−含有基によって置換されていてもよく、二つの基R19Cは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく;
sは、1、2、3、又は4、特に2又は3であり;
Dは、非荷電のドナーであり;
tは、0〜4、特に0、1、又は2である)
の鉄又はコバルト配位化合物(A3)が特に好ましい。
【0125】
上記に記載の態様及び好ましい態様は、E2C〜E4C、R1C〜R3C、X、R18C、及びR19Cにも同様に適用される。
置換基R4C〜R5Cは、広範囲に変化してよい。可能な炭素有機置換基R4C〜R5Cは、例えば以下のものである:水素、線状又は分岐鎖であってよいC〜C22アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;置換基としてC〜C10アルキル基及び/又はC〜C10アリール基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル;線状、環式、又は分岐鎖であってよく、二重結合が内部であっても又は末端であってもよいC〜C22アルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル;更なるアルキル基によって置換されていてもよいC〜C22アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル;或いは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−フェニルエチル;ここで、二つの基R4C〜R5Cは、また、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよい。更に、R4C〜R5Cは、アミノ:NR18C又はN(SiR19C、例えばジメチルアミノ、N−ピロリジニル、又はピコリニルであってもよい。有機ケイ素置換基:SiR19C中の可能な基R19Cは、R1C〜R3Cに関して上記に記載したものと同じ炭素有機基であり、ここで、二つのR19Cは、また、結合して5又は6員環を形成してもよく、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル、又はジメチルフェニルシリルである。これらのSiR19C基は、また、窒素を介してそれらを有する炭素に結合していてもよい。
【0126】
好ましい基R4C〜R5Cは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、又はベンジル、特にメチルである。
【0127】
置換基R8C〜R17Cは、広範囲に変化してよい。可能な炭素有機置換基R8C〜R17Cは、例えば以下のものである:線状又は分岐鎖であってよいC〜C22アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;置換基としてC〜C10アルキル基及び/又はC〜C10アリール基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル;線状、環式、又は分岐鎖であってよく、二重結合が内部であっても又は末端であってもよいC〜C22アルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル;更なるアルキル基によって置換されていてもよいC〜C22アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル;或いは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−フェニルエチル;ここで、二つの基R8C〜R17Cは、また、結合して、5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R8C〜R17Cは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成してもよく、及び/又は、有機基R8C〜R17Cは、また、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよい。更に、R8C〜R17Cは、フッ素、塩素、臭素のようなハロゲン;アミノ:NR18C又はN(SiR19C、アルコキシ又はアリールオキシ:OR18C、例えばジメチルアミノ、N−ピロリジニル、ピコリニル、メトキシ、エトキシ、又はイソプロポキシであってもよい。有機ケイ素置換基:SiR19C中の可能な基R19Cは、R1C〜R3Cに関して上記に記載したものと同じ炭素有機基であり、ここで、二つのR19Cは、また、結合して5又は6員環を形成してもよく、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル、又はジメチルフェニルシリルである。これらのSiR19C基は、また、酸素又は窒素を介して結合していてもよく、例えば、トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、ブチルジメチルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ、又はトリ−tert−ブチルシリルオキシである。
【0128】
好ましい基R12C〜R17Cは、水素、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、フッ素、塩素、及び臭素、特に水素である。特に、R13C及びR16Cは、それぞれ、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、フッ素、塩素、又は臭素であり、R12C、R14C、R15C、及びR17Cは、それぞれ、水素である。
【0129】
好ましい基R8C〜R11Cは、水素、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、フッ素、塩素、及び臭素である。
【0130】
特に、R12C、R14C、R15C、及びR17Cは同一であり、R13C及びR16Cは同一であり、R9C及びR11Cは同一であり、R8C及びR10Cは同一である。これはまた、上記記載の好ましい態様においても好ましい。
【0131】
式(X)の遷移金属配位化合物の調製は、原則として、上記に記載した式(II)又は(IIa)の類似の化合物の調製と同様である。式(X)の好ましいコンプレックス(A3)は、2,6−ビス[1−(2−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2,4−ジメチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2−クロロ−フェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2−イソプロピルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2,4−ジイソプロピルフェニルイミノ)メチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2,4−ジクロロ−フェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2−メチル−4−クロロ−フェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(フルオロフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2−ブロモフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、又はそれぞれのジブロミド若しくはトリブロミドである。
【0132】
本発明の担持触媒系は、アルミノキサン、非荷電の強ルイス酸、又はルイス酸カチオンを有するイオン性化合物、或いはカチオンとしてブレンステッド酸を含むイオン性化合物のような通常の共触媒を添加することなく、活性である。幾つかの場合においては、例えばWO 2005/058916に開示されている少なくとも1種の公知の共触媒を加えることにより、本発明の触媒系の活性が向上する。
【0133】
触媒系は、更に、更なる成分(E)として、一般式(XX):
(R1GrG(R2GsG(R3GtG
(式中、
は、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、亜鉛、特にLi、Na、K、Mg、ホウ素、アルミニウム、又はZnであり;
1Gは、水素、C〜C10アルキル、C〜C15アリール、それぞれアルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有する、アリールアルキル又はアリールアルキルであり;
2G及びR3Gは、それぞれ、水素、ハロゲン、C〜C10アルキル、C〜C15アリール、それぞれアルキル部分に1〜20個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有する、アルキルアリール、アリールアルキル、又はアルコキシ、或いはC〜C10アルキル又はC〜C15アリールを含むアルコキシであり;
は、1〜3の整数であり;
及びtは、0〜2の整数であり、r+s+tの合計はMの価数に相当する)
の金属化合物を更に含んでいてもよい。
【0134】
また、式(XX)の種々の金属化合物の混合物を用いることもできる。
一般式(XX)の金属化合物の中で、
が、リチウム、マグネシウム、ホウ素、又はアルミニウムであり、
1Gが、C〜C20アルキルであるものが好ましい。
【0135】
式(XX)の特に好ましい金属化合物は、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、n−ブチル−n−オクチルマグネシウム、n−ブチル−n−ヘプチルマグネシウム、特にn−ブチル−n−オクチルマグネシウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、及びトリメチルアルミニウム、並びにこれらの混合物である。アルミニウムアルキルとアルコールとの部分加水分解生成物を用いることもできる。
【0136】
金属化合物(E)を用いる場合には、それは、好ましくは、遷移金属配位化合物からの遷移金属の合計に対する式(XX)からのMのモル比が3000:1〜0.1:1、好ましくは800:1〜0.2:1、特に好ましくは100:1〜1:1であるような量で触媒系中に存在させる。
【0137】
一般に、一般式(XX)の金属化合物(E)は、オレフィンの重合又は共重合のための触媒系の構成成分として用いる。ここでは、金属化合物(E)は、例えば、重合中又は重合の直前に加えることができる。用いる複数の金属化合物(E)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0138】
また、触媒系を、まずα−オレフィン、好ましくは線状C〜C10−1−アルケン、特にエチレン又はプロピレンを用いて予備重合し、次に得られた予備重合触媒固体を実際の重合において用いることもできる。その上に重合するモノマーに対する予備重合において用いる触媒固体の質量比は、通常、1:0.1〜1:1000、好ましくは1:1〜1:200の範囲である。
【0139】
更に、変性成分として少量のオレフィン、好ましくはα−オレフィン、例えばビニルシクロヘキサン、スチレン、又はフェニルジメチルビニルシラン、静電防止化合物又は好適な不活性化合物、例えばワックス又はオイルを、触媒系の調製中又は調製後に添加剤として加えることができる。遷移金属配位化合物からの遷移金属の合計に対する添加剤のモル比は、通常、1:1000〜1000:1、好ましくは1:5〜20:1である。
【0140】
本発明の触媒系は、オレフィンを重合又は共重合するため、好ましくは、エチレンを、好ましくは3〜12個の炭素原子を有するα−オレフィンと重合及び共重合するために好適である。
【0141】
本発明は、更に、エチレンを、本発明の触媒系の存在下で、場合によってはC〜C12−1−アルケンと共重合する、エチレンのホモポリマー又はコポリマーの製造方法を提供する。
【0142】
本発明の共重合方法においては、エチレンを、好ましくは3〜12個の炭素原子を有するα−オレフィンと重合する。好ましいα−オレフィンは、線状又は分岐鎖のC〜C12−1−アルケン、特に線状のC〜C10−1−アルケン、例えばプロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、或いは分岐鎖のC〜C10−1−アルケン、例えば4−メチル−1−ペンテンである。特に好ましいα−オレフィンは、C〜C12−1−アルケン、特に線状のC〜C10−1−アルケンである。また、種々のα−オレフィンの混合物を重合することもできる。エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、及び1−デセンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンを(共)重合することが好ましい。少なくとも50モル%のエテンを含むモノマー混合物が、好ましく用いられる。
【0143】
エチレンを、α−オレフィンと共に又はこれを伴わずに重合するための本発明方法は、工業的に公知の全ての重合方法を用いて、−60〜350℃、好ましくは0〜200℃、特に好ましくは25〜150℃の範囲の温度、及び0.5〜4000bar、好ましくは1〜100bar、特に好ましくは3〜40barの圧力下で行うことができる。重合は、公知の方法で、バルク、懸濁液中、気相中、或いは超臨界媒体中で、オレフィンの重合のために用いられる通常の反応器内において行うことができる。これは、1以上の段階で、バッチ式か又は好ましくは連続的に行うことができる。管状反応器又はオートクレーブ内での高圧重合法、溶液法、懸濁法、撹拌気相法、又は気相流動床法が全て可能である。
【0144】
重合は、通常、−60〜350℃の範囲、好ましくは20〜300℃の範囲の温度、及び0.5〜4000barの圧力下で行う。平均滞留時間は、通常、0.5〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。重合を行うために有利な圧力及び温度範囲は、通常、重合法に依存する。通常1000〜4000bar、特に2000〜3500barの圧力で行う高圧重合法の場合においては、一般に高い重合温度が同様に設定される。これらの高圧重合法のために有利な温度範囲は、200〜320℃、特に220〜290℃である。低圧重合法の場合においては、通常、ポリマーの軟化温度よりも少なくとも数度低い温度が設定される。特に、これらの重合法においては、50〜180℃、好ましくは70〜120℃の温度が設定される。懸濁重合の場合においては、重合は、通常、懸濁媒体、好ましくはイソブタンのような不活性炭化水素、或いは複数の炭化水素の混合物中か、或いはモノマーそれ自体の中で行う。重合温度は、概して−20〜115℃の範囲であり、圧力は、概して1〜100barの範囲である。懸濁液の固形分含量は、概して10〜80%の範囲である。重合は、例えば撹拌オートクレーブ内においてバッチ式、或いは例えば管状反応器、好ましくはループ反応器内において連続的のいずれかで行うことができる。米国特許3,242,150及び米国特許3,248,179に記載されているようなPhillips PF法を用いることが特に好ましい。気相重合は、一般に、30〜125℃の範囲及び1〜50barの圧力において行う。
【0145】
上記で言及した重合法の中で、特に気相流動床反応器内での気相重合、特にループ反応器及び撹拌タンク反応器内での溶液重合及び懸濁重合が特に好ましい。気相重合は、また、循環気体の一部を露点より低く冷却し、二相混合物として反応器に再循環する凝縮又は超凝縮モードで行うこともできる。更に、二つの重合領域が互いに接続され、ポリマーが、これらの二つの領域を多数回交互に通過する多領域反応器を用いることができる。二つの領域は、また、異なる重合条件を有していてもよい。かかる反応器は、例えば、WO 97/04015に記載されている。また、所望の場合には、例えばHostalenプロセスのように重合カスケードが形成されるように、異なるか又は同一の重合プロセスを直列に接続することもできる。また、2以上の同一か又は異なるプロセスを用いた平行の反応器配列も可能である。更に、モル質量調整剤、例えば水素、或いは静電防止剤のような通常の添加剤を、重合において用いることもできる。ビニル基の高い割合を得るためには、重合は、好ましくは、少量の水素の存在下か又は水素を存在させないで行う。
【0146】
重合は、好ましくは、単一の反応器内、特に気相反応器内で行う。本発明の触媒を用いた場合、エチレンと3〜12個の炭素原子を有するα−オレフィンとを重合することにより、好ましくは二峰性又は多峰性のポリエチレンが得られる。反応器から直接得られるポリエチレン粉末は、極めて高い均質性を示すので、カスケード法の場合とは異なり、均質な製品を得るために引き続く押出は必要ない。
【0147】
本発明の触媒系を用いることによって得ることができる二峰性ポリエチレンの重要な用途は、ガス、飲用水、及び排水の移送用の圧力配管を製造するためのそれらの使用である。ポリエチレン製の圧力配管は、ますます金属管に置き換わっている。このタイプの用途のためには、管が、経年劣化及び脆性破壊の心配なしに極めて長い作動寿命を有することが重要である。圧力配管においては小さな欠陥又は切り欠きであっても、低圧においてもより大きく成長して脆性破壊を引き起こす可能性があり、このプロセスはより高い温度及び/又は浸食性の化学物質によって加速する可能性がある。したがって、管における欠陥、例えば腐り傷又は「白点」の数及び寸法を可能な限り大きく減少することが極めて重要である。
【実施例】
【0148】
以下の実施例により、本発明の範囲を制限することなく、本発明を例示する。
記載されている測定値は、以下の方法で測定した。
ビニル基含量は、ASTM D6248−98にしたがって、IRを用いて測定した。
【0149】
メチル基含量は、James.C.Randall,JMS−REV.Macromol.Chem.Phys.,C29(2&3),201−317(1989)に記載されているように、13C−NMR分光法を用いて測定し、炭素原子1000個あたりのCH基の合計含量に基づく。炭素原子1000個あたりのCHよりも長い側鎖、特にブチル側鎖分岐数は、同様にこの方法で測定した。
【0150】
密度(g/cm)は、ISO 1183にしたがって測定した。
固有粘度は、EN ISO 1628−1にしたがって測定した。
モル質量分布及びそれから誘導される平均M、M、及びM/Mの測定は、DIN 55672に基づく方法、及び、直列に接続した以下のカラム:3×SHODEX AT 806MS、1×SHODEX UT 807、及び1×SHODEX AT−Gを用いて、WATERS 150C上で、以下の条件:溶媒=1,2,4−トリクロロベンゼン(0.025重量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールによって安定化);流量=1mL/分;注入容量=500μL、温度=135℃;PE標準試料を用いて較正;において行った。評価は、WIN−GPCを用いて行った。
【0151】
下表中の略号は以下の通りである。
Cat=触媒;
IV=固有粘度;
=重量平均モル質量;
/M=多分散度;
Prod=1時間あたり、用いた触媒1gあたりの得られたポリマーのgでの触媒の生産性。
【0152】
CH/1000Cは、炭素原子1000個あたりの合計CH(末端基を含む)を指す。
ポリマーexは、実施例からのポリマーを意味する。
【0153】
個々の成分の調製
実施例1;2,6−ビス[1−(2−クロロ−4,6−ジメチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)クロリド(コンプレックス1又は(ClMePhNCMe)Py・FeCl)の調製
【0154】
【化15】

【0155】
WO 98/27124の実施例2と同様に2,6−ビス[1−(2−クロロ−4,6−ジメチルフェニルイミノ)エチル]ピリジンを製造し、WO 98/27124の実施例8に記載されているようにして鉄(II)クロリドを用いることによって、2,6−ビス[1−(2−クロロ−4,6−ジメチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)クロリドに転化させた。
【0156】
実施例2:(2−メチル−3−(4−ベンゾトリフルオリド)−1−(8−キノリル)シクロペンタジエニル)クロムジクロリド(コンプレックス2又はMe(CFPh)CpQ・CrCl)の調製
2.1:3−ヒドロキシ−2−メチル−3−(4−ベンゾトリフルオリド)−1−(8−キノリル)シクロペンテンの調製
80mLのテトラヒドロフラン中の3.51g(15.6ミリモル)の4−ブロモベンゾトリフルオリドの溶液を−90℃に冷却し、次に、6.2mLのn−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、15.6ミリモル)を撹拌しながら加えた。この温度で15分間撹拌した後、40mLのテトラヒドロフラン中の2.9g(13ミリモル)の2−メチル−3−(8−キノリル)シクロペント−2−エノン(実施例1.2を参照)の溶液を撹拌しながら加えた。混合物をこの温度で更に1時間撹拌し、次に1mLの酢酸エチルを加えた。混合物を撹拌しながら室温に加温し、次に100mLの水を加えた。次に、水相を有機相から分離し、水相をジエチルエーテルで2回抽出した。有機相を合わせて、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を留去した。残渣を5mLのトルエン中に溶解し、次に80mLのヘキサンと混合した。形成した沈殿を濾別し、乾燥した。これによって、2.69g(7.28ミリモル)の3−ヒドロキシ−2−メチル−3−(4−ベンゾトリフルオリド)−1−(8−キノリル)シクロペンテンが得られた。母液を冷却して第2のフラクションを得た(1.42g、3.84ミリモル、合計収率:85.4%)。
【0157】
1H-NMR (200.13MHZ, CDCl3): 1.42 (3H, m, Me); 2.52 (2H, m, CH2); 2.98 (1H, m, CH2); 3.18 (1H, m, CH2); 4.10 (1H, s, OH); 7.39 (1H, dd, H3); 7.56-7.84 (7H, m, CH-キノリル+アリール); 8.18 (1H, dd, H4); 8.89 (1H, dd, H2)。
【0158】
MS (EI), m/e (%): 369 (9) [M+]; 351 (100) [M+-H2O]; 336 (12) [M+-H2O-Me]; 181 (72) [M+-H2O-Me-キノリル-CH2]。
2.2:2−メチル−3−(4−ベンゾトリフルオリド)−1−(8−キノリル)シクロペンタジエンの調製
5mLの水及び5mLの濃塩酸の混合物を、100mLのテトラヒドロフラン中の3.61g(9.8ミリモル)の3−ヒドロキシ−2−メチル−3−(4−ベンゾトリフルオリド)−1−(8−キノリル)シクロペンテンの溶液に加えた。混合物を室温で90分間撹拌し、次にpHが12になるまでアンモニア溶液を加えた。次に、水相を有機相から分離し、水相をジエチルエーテルで2回抽出した。有機相を合わせて、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を留去した。この方法で得られた残渣を、169〜176℃及び2×10−2mbarで蒸留して、2.09g(5.9ミリモル、60.2%)の2−メチル−3−(4−ベンゾトリフルオリド)−1−(8−キノリル)シクロペンタジエンを得た。
【0159】
1H-NMR (200.13 MHZ, CDCl3): 1.13 (3H, d, Me); 1.97 (3H, m, Me); 2.03 (3H, m, Me); 3.62 (2H, m, CH2); 3.87 (2H, m, CH2); 4.81 (1H, q, CHMe); 6.59 (1H, m, CpH); 6.66 (1H, m, CpH); 7.07 (1H, m, CpH); 7.26 (1H, m, CpH). 7.31-7.88 (24H, m, CH-キノリル+アリール); 8.14-8.24 (3H, m, H4); 8.93-9.02 (3H, m, H2)。
【0160】
MS (EI), m/e (%): 351 (100) [M+]; 167 (72) [M+-F3CC6H4-C3H3]。
2.3:(2−メチル−3−(4−ベンゾトリフルオリド)−1−(8−キノリル)シクロペンタジエニル)クロムジクロリドの調製
【0161】
【化16】

【0162】
40mLのテトラヒドロフラン中の2.09g(5.95ミリモル)の2−メチル−3−(4−ベンゾトリフルオリド)−1−(8−キノリル)シクロペンタジエンの溶液を、20mLのテトラヒドロフラン中の0.242g(5.95ミリモル)の水素化カリウムの懸濁液に加えた。添加が完了したら、反応混合物を室温で6時間撹拌し、次に、撹拌しながら、50mLのテトラヒドロフラン中の2.23g(5.95ミリモル)のクロムトリクロリドトリス(テトラヒドロフラン)の溶液に加えた。混合物を室温で更に12時間撹拌し、次に溶媒を留去し、残渣を、ヘキサンで3回、トルエンで3回洗浄した。この方法で得られた残渣を、塩化メチレンで3回抽出し、濾別した。塩化メチレン抽出物を合わせて、溶媒を除去し、洗浄し、減圧下で乾燥した。これによって、1.58g(3.34ミリモル)の(2−メチル−3−(4−ベンゾトリフルオリド)−1−(8−キノリル)シクロペンタジエニル)クロムジクロリドが得られた(56.1%)。
【0163】
1H-NMR (200.13 MHz, CDCl3): -54.1 (1H, H4); -17.1 (1H, H5); 13.5 (3H, Me); 14.9 (1 H, H6); 48.8 (1H, H3)。
MS (EI), m/e (%): 472 (100) [M+]; 437 (82) [M+-Cl]; 400 (49) [M+-2HCl]; 380 (22) [M+-2HCl-Cr-HF]; 348 (23) [M+-2HCl-Cr]。
【0164】
実施例3
Cromptonから、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド(コンプレックス3)を得ることができる。
【0165】
実施例4
CpTiCl(コンプレックス4)
実施例5
IndTiCl(コンプレックス5)
担持触媒の調製
MgCl/AlR(OEt)3−n−担体の調製
EP 1568716−A1に記載されている方法と同様にMgCl・1.1−EtOH及びAlEtを用いて触媒A〜Eのための担体を調製し、MgCl・0.20−AlEt2.25OEt0.75の組成を有するMgCl/AlR(OEt)3−n−担体を得た。
【0166】
アルゴン下において、56.8gのMgCl・1.1−EtOH(Basell、S218−1)に150mLのトルオールを加えることによって、触媒F及びGのための担体であるMgCl・1.1−EtOH/TIBAL(Al/Mg=1.1/1)を得た。更に、トルエン中の400gのトリイソブチルアルミニウムの20重量%溶液を加えた。懸濁液を0℃において1時間還流した。次に、温度を80℃に昇温し、混合物を2時間還流した。冷却した後、固体を濾過し、ヘプタンで洗浄した。62gの担体が得られた。
【0167】
40.6gのMgCl・1.1−EtOH(Basell、S218−1)に150mLのトルオールを加えることによって、触媒H及びIのための担体であるMgCl・1.1−EtOH/TIBAL(Al/Mg=2.1/1)を得た。更に、290mLのトルエン中トリイソブチルアルミニウムの2M溶液を加えた。懸濁液を0℃において1時間還流し、次に温度を80℃に昇温し、混合物を更に2時間還流した。冷却した後、固体を濾過し、ヘプタンで洗浄した。35gの担体が得られた。
【0168】
触媒A:
18mgのコンプレックス1を20mLのトルエン中に溶解した。この溶液2.43mL(3.86マイクロモル)を、258.1mgの上記のMgCl・0.20−AlEt2.25OEt0.75−担体に加えた(装填量15マイクロモル/g)。得られた懸濁液を40℃において2時間撹拌した後、全ての溶媒を真空中で除去した。得られた粉末は、明赤色を有していた。
【0169】
触媒B
22mgのコンプレックス2を25mLのトルエン中に溶解した。この溶液3.3mL(6.00マイクロモルのコンプレックス2)を、240.0mgのMgCl・0.20−AlEt2.25OEt0.75−担体に加えた(装填量25マイクロモル/g)。得られた懸濁液を40℃において2時間撹拌した後、溶媒を真空中で除去した。得られた粉末は、緑青色を有していた。
【0170】
触媒C
30mLのトルエン中の15.3mgのコンプレックス1の溶液4.3mL(3.87マイクロモル)及び40mLのトルエン中の32.7mgのコンプレックス2の溶液3.7mL(6.44マイクロモル)を、258mgのMgCl・0.20−AlEt2.25OEt0.75−担体に加えた(装填量:コンプレックス1=15マイクロモル/g;コンプレックス2=25マイクロモル/g)。得られた懸濁液を40℃において1時間撹拌した後、溶媒を真空中で除去した。得られた粉末は、緑青色を有していた。
【0171】
触媒D
30mLのトルエン中の15.3mgのコンプレックス1の溶液5.1mL(4.60マイクロモル)及び40mLのトルエン中の32.7mgのコンプレックス2の溶液8.9mL(15.29マイクロモル)を、306.1mgのMgCl・0.20−AlEt2.25OEt0.75−担体に加えた(装填量:コンプレックス1=15マイクロモル/g;コンプレックス2=50マイクロモル/g)。得られた懸濁液を40℃において1時間撹拌した後、溶媒を真空中で除去した。得られた粉末は、緑青色を有していた。
【0172】
触媒E
42mLのトルエン中の32mgのコンプレックス1の溶液及び30mLのトルエン中の34.1mgのコンプレックス2の溶液を混合し、779.2mgのMgCl・0.20−AlEt2.25OEt0.75−担体に加えた(装填量:コンプレックス1=50マイクロモル/g;コンプレックス2=50マイクロモル/g)。得られた懸濁液を40℃において1時間撹拌した後、溶媒を真空中で除去した。得られた粉末は、緑青色を有していた。
【0173】
触媒F
22mLのトルエン中の11mgのコンプレックス1及び123mgのコンプレックス3の溶液、並びに5.7mLのトルエン中MAO(30%溶液、4.75モル/L)を混合し、4.2mgのMgCl・1.1−EtOH/TIBAL(Al/Mg=1.1/1)−担体に加えた(装填量:コンプレックス1=5マイクロモル/g;コンプレックス2=60マイクロモル/g)。得られた懸濁液を40℃において1時間撹拌した後、溶媒を真空中で除去した。得られた粉末(5.5g)は、白みがかった色を有していた。
【0174】
触媒G
25mLのトルエン中の22.25mgのコンプレックス1及び92.5mgのコンプレックス4の溶液、並びに9.6mLのトルエン中MAO(30%溶液、4.75モル/L)を混合し、6.7mgのMgCl・1.1−EtOH/TIBAL(Al/Mg=1.1/1)−担体に加えた(装填量:コンプレックス1=6.3マイクロモル/g;コンプレックス2=107マイクロモル/g)。得られた懸濁液を40℃において1時間撹拌した後、溶媒を真空中で除去した。得られた粉末は、白みがかった色を有していた。
【0175】
触媒H
33mLのトルエン中の42mgのコンプレックス1、330mgのコンプレックス2の溶液、並びに1mLのトルエン中MAO(30%溶液、4.75モル/L)を混合し、10.5mgのMgCl・1.1−EtOH/TIBAL(Al/Mg=2.1/1)−担体に加えた(装填量:コンプレックス1=7マイクロモル/g;コンプレックス2=60マイクロモル/g)。得られた懸濁液を40℃において1時間撹拌した後、溶媒を真空中で濾過した。得られた粉末(10g)は、白みがかった色を有していた。
【0176】
触媒I
7.3mgのコンプレックス1及び32mgのコンプレックス2及び15mgのコンプレックス5の溶液、並びに0.2mLのトルエン中MAO(30%溶液、4.75モル/L)を混合し、2gのMgCl・1.1−EtOH/TIBAL(Al/Mg=2.1/1)−担体に加えた(装填量:コンプレックス1=6.5マイクロモル/g;コンプレックス2=30マイクロモル/g;コンプレックス5=30マイクロモル/g)。得られた懸濁液を40℃において1時間撹拌した後、溶媒を濾過によって除去した。得られた粉末(2.1g)は、白みがかった色を有していた。
【0177】
1Lオートクレーブ中での重合
アルゴン下、70℃において、1Lのスチール製オートクレーブに、>1mmの粒径を有するPE粉末(真空中80℃で6時間乾燥し、アルゴン雰囲気下に保管)150gを充填した。200mgのイソプレニルアルミニウムIPRA(50mg/mLのヘプタン中IPRA)、及び5mgのCostelan AS100(5mg/mLのヘプタン中Costelan)を加えた。共重合の場合には、対応量のヘキサンを加えた。5分間の撹拌の後、触媒を加え、触媒投与ユニットを7mLのヘプタンですすいだ。まず、アルゴン圧を70℃において10barまで上昇させ、次にエチレンによって20barの圧力を調節した。重合中には更なるエチレンを加えることによって、20barの圧力を1時間一定に保持した。1時間後、圧力を解放し、オートクレーブを室温に冷却した。ポリマーを真空中で乾燥し、オートクレーブから取り出し、ポリマー床を除去するために篩にかけた。
【0178】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I):
MgT・yAlR(OR3−j (I)
(式中、
Mgは、マグネシウムであり;
Tは、塩素、臭素、又はヨウ素であり;
Alは、アルミニウムであり;
は、線状又は分岐鎖のC〜C10アルキル基であり;
yは、6.00〜0.05の範囲であり;
jは、3〜0.1の範囲であり、また非整数でもあり;
は、同一か又は異なり、場合によってはケイ素又はゲルマニウム原子を含む1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基である置換基である)
の付加体を;
(b)遷移金属配位化合物の一つが、遷移金属が元素周期律表第6、8、9、及び10族から選択される化合物(B)である、少なくとも二種類の異なる遷移金属配位化合物;
と接触させることによって得られる生成物を含む、担持触媒系。
【請求項2】
遷移金属配位化合物の一つが、三つの配位窒素原子を含む中性三座リガンドを含む鉄又はコバルトの配位化合物(B)である、請求項1に記載の触媒系。
【請求項3】
鉄又はコバルトの配位化合物(B)の中性三座リガンドが2,6−ビスイミノピリジンリガンドである、請求項2に記載の触媒系。
【請求項4】
鉄又はコバルトの配位化合物(B)の三つの配位窒素原子を含む中性三座リガンドが、少なくとも二つのo,o−二置換アリール基を有する、請求項2又は3に記載の触媒系。
【請求項5】
第2の遷移金属配位化合物が、そのシクロペンタジエニル系が非荷電ドナー(A1)又はハフノセン(A2)によって置換されている元素周期律表第4〜6族の金属のモノシクロペンタジエニルコンプレックスである、請求項1〜4のいずれかに記載の触媒系。
【請求項6】
第2の遷移金属配位化合物が、少なくとも一つのo−モノ置換アリール基を有する三つの配位窒素原子を含む中性三座リガンドを含む鉄又はコバルトの配位化合物(A3)である、請求項1〜4のいずれかに記載の触媒系。
【請求項7】
アルミノキサン、非荷電強ルイス酸、又はルイス酸カチオンを有するイオン性化合物、或いはカチオンとしてブレンステッド酸を含むイオン性化合物のような共触媒を更に加える、請求項1〜6のいずれかに記載の触媒系。
【請求項8】
Tが塩素であり;Rが線状C〜C10アルキル基であり;Yが2〜0.1の範囲であり;Rが、場合によってはケイ素又はゲルマニウム原子を含む、線状又は分岐鎖で環式又は非環式の、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基である、請求項1〜7のいずれかに記載の触媒系。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の触媒系、及びその上に1:0.1〜1:1000の質量比で重合されている線状C〜C10−1−アルケンを含む、予備重合触媒系。
【請求項10】
オレフィンを重合又は共重合するための請求項1〜8のいずれかに記載の触媒系の使用。
【請求項11】
エチレンを、請求項1〜8のいずれかに記載の触媒系の存在下で、場合によってはC〜C12−1−アルケンと共重合する、エチレンホモポリマー又はコポリマーの製造方法。

【公表番号】特表2009−511681(P2009−511681A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534916(P2008−534916)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009749
【国際公開番号】WO2007/042252
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【Fターム(参考)】