説明

ハロゲン化物系輝尽性蛍光体、その製造方法、それを用いた放射線画像変換パネル

【課題】 粒径分布の揃ったハロゲン化物系輝尽性蛍光体、特に酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物輝尽性蛍光体を生産性良く高い収率で得ることでができる製造方法及びこれを利用して製造した輝尽性蛍光体を用いた高感度高画質の放射線画像変換プレートを提供する。
【解決手段】 ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法において、ハロゲン化物イオン溶液に少なくとも2種以上の無機物溶液を添加して調製された混合溶液からハロゲン化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶を析出させる工程と、当該結晶を析出させる混合溶液槽より溶媒を除去する工程を経ることによりハロゲン化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶を得ること及び特定要件を満たす焼成炉により焼成することを特徴とするハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン化物系輝尽性蛍光体、特に酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物輝尽性蛍光体、当該輝尽性蛍光体の製造方法、及びそれを用いた放射線画像変換パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線写真法に代わる画像形成方法の一つとして、輝尽性蛍光体を用いる放射線画像記録再生方法が知られている(特許文献1参照。)。この方法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シートとも呼ばれる。)を利用するもので、被写体を透過した、又は被検体から発せられた放射線を輝尽性蛍光体に吸収させ、可視光線、紫外線などの電磁波(励起光と言う)で時系列的に輝尽性蛍光体を励起して、蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光と言う。)として放射させ、この蛍光を光電的に読みとって電気信号を得、得られた電気信号に基づいて被写体又は被検体の放射線画像を可視画像として再生するものである。読取り後の変換パネルは、残存画像の消去が行われ、次の撮影に供される。
【0003】
この方法によれば、放射線写真フィルムと増感紙とを組み合わせて用いる放射線写真法に比して、遙かに少ない被爆線量で情報量の豊富な放射線画像が得られる利点がある。又、放射線写真法では撮影毎にフィルムを消費するのに対して、放射線像変換パネルは繰り返し使用されるので、資源保護や経済効率の面からも有利である。
【0004】
放射線像変換パネルは、支持体とその表面に設けられた輝尽性蛍光体層、又は自己支持性の輝尽性蛍光体層のみから成り、輝尽性蛍光体層は通常輝尽性蛍光体とこれを分散支持する結合材から成るものと、蒸着法や焼結法によって形成される輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものがある。又、該凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものも知られている。更に、輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対側の表面には、通常、ポリマーフィルムや無機物の蒸着膜から成る保護膜が設けられる。
【0005】
輝尽性蛍光体としては、通常、400〜900nmの範囲にある励起光によって、波長300〜500nmの範囲にある輝尽発光を示すものが一般的に利用され、特開昭55−12145号、同55−160078号、同56−74175号、同56−116777号、同57−23673号、同57−23675号、同58−206678号、同59−27289号、同59−27980号、同59−56479号、同59−56480号公報等に記載の希土類元素賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭59−75200号、同60−84381号、同60−106752号、同60−166379号、同60−221483号、同60−228592号、同60−228593号、同61−23679号、同61−120882号、同61−120883号、同61−120885号、同61−235486号、同61−235487号公報等に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭55−12144号公報に記載の希土類元素賦活オキシハロゲン化物蛍光体;特開昭58−69281号公報に記載のセリウム賦活3価金属オキシハロゲン化物蛍光体;特開昭60−70484号に記載のビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体;特開昭60−141783号、同60−157100号公報等に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−157099号公報に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロ硼酸塩蛍光体;特開昭60−217354号公報に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−21173号、同61−21182号公報等に記載のセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−40390号公報に記載のセリウム賦活希土類ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−78151号公報に記載の2価のユーロピウム賦活ハロゲン化セリウム・ルビジウム蛍光体;特開昭60−78151号公報に記載の2価のユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体等が挙げられ、中でも、ヨウ素を含有する2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物蛍光体、ヨウ素を含有する希土類元素賦活オキシハロゲン化物蛍光体及びヨウ素を含有するビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体等が知られているが、依然、高輝度の輝尽性蛍光体が要求されている。
【0006】
又、輝尽性蛍光体を利用する放射線像変換方法の利用が進むにつれて、得られる放射線画像の画質の向上、例えば鮮鋭度の向上や粒状性の向上が更に求められるようになって来た。放射線画像の画質向上の手段の中で、輝尽性蛍光体の微粒子化と微粒子化された輝尽性蛍光体の粒径を揃えること、即ち、粒径分布を狭くすることが有効である。
【0007】
上記の各種輝尽性蛍光体は、固相法あるいは焼結法と呼ばれる方法で製造することができる。しかしながら、当該方法においては、焼成後の粉砕が必須であり、感度、画像性能に影響する粒子形状の制御が困難であるという問題を有する。
【0008】
一方、特開平7−233369号、同9−291278号等で開示されている液相からの輝尽性蛍光体の製造法は、蛍光体原料溶液の濃度を調整して微粒子状の輝尽性蛍光体前駆体結晶(以下において、「輝尽性蛍光体前駆体」ともいう。)を得る方法であり、粒径分布の揃った輝尽性蛍光体粉末の製造法として有効である。又、放射線被爆量の低減という観点から、希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物輝尽性蛍光体の内、ヨウ素含有量が高いものが好ましいことが知られている。これは、臭素に比べてヨウ素がX線吸収率が高いためである(例えば、特許文献2,3,4参照。)。
【0009】
しかしながら、液相で製造されるアルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物輝尽性蛍光体は輝度、粒状性の点で有利であるが、液相にて前駆体結晶を得る場合、以下のような問題を持っている。液相でアルカリ土類金属フッ化ヨウ化物系輝尽性蛍光体粒子を製造する場合、特開平10−88125、同9−291278の記載に見られるように、1)ヨウ化バリウムを水あるいは有機溶媒に溶解し、この液を攪拌しながら無機フッ化物の溶液を添加する。2)フッ化アンモニウムを水に溶解し、この液をを攪拌しながらヨウ化バリウムの溶液を添加する、方法が有効である。しかし、1)の方法では溶液中に過剰のヨウ化バリウムを存在させておく必要があり、そのため投入したヨウ化バリウムと固液分離後に得られるフッ化ヨウ化バリウムの化学量論比は0.4前後と小さい値であることが多い。つまり投入したヨウ化バリウムに対し、アルカリ土類金属フッ化ヨウ化物系輝尽性蛍光体の収率は40%程度であることが多い。また、2)の方法でも無機フッ化物に対して過剰のヨウ化バリウムを必要とし、収率が低い。このようにフッ化ヨウ化バリウムの液相合成は収率が低く生産性が悪いという問題点を有している。収率をあげるために母液中のヨウ化バリウム濃度を下げると粒子の肥大化を招く。粒子の肥大化は画質特性上好ましくない。
【0010】
なお、希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物輝尽性蛍光体、特にアルカリ土類属フッ化ヨウ化物系輝尽性蛍光体の収率をあげる試みとしては特開平11−29324号に反応母液濃度とフッ素源を添加した後濃縮することにより基本組成式BaFI:xLn(Ln:Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、TmおよびYbからなる群より選ばれる少なくとも1種の希土類元素)を満たす希土類含有角状フッ化ヨウ化バリウム結晶を得る方法が開示されている。本発明者らが追試を行った結果、記載どおりBaFI角状結晶は生成したものの、自然蒸発による濃縮を用いているため著しく生産性が低く、工業的には現実的ではないことがわかった。また、得られる角状結晶も粒径が大きくかつ粒径分布が広いため、画像特性、特に構造モトルが悪く、実用に供することができないことがわかった。
【0011】
また、特開2002−38143には、母液濃度を高くした状態から濃縮することにより生産性の高い前駆体を得る方法が記載されている。しかし、濃縮開始時に中間体であるBaF2が大量に存在するため、得られた蛍光体の画像特性上好ましくない。
【特許文献1】特開昭55−12145号公報
【特許文献2】特開2003−268369号公報
【特許文献3】特開平7−233369号公報
【特許文献4】特開2003−268365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、粒径分布の揃ったハロゲン化物系輝尽性蛍光体、特に酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物輝尽性蛍光体を生産性良く高い収率で得ることでができる製造方法を提供することであり、更にこれを利用して製造した輝尽性蛍光体を用いた高感度高画質の放射線像変換プレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記本発明の課題は、以下の構成により解決することができる。
【0014】
(1)
ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法において、ハロゲン化物イオン溶液に少なくとも2種以上の無機物溶液を添加して調製された混合溶液からハロゲン化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶を析出させる工程と、当該結晶を析出させる混合溶液槽より溶媒を除去する工程を経ることによりハロゲン化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶を得ること及び下記1)〜4)の要件を満たす焼成炉により焼成することを特徴とするハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。
要件:
1)上記焼成炉が、石英ガラス製円筒の両端に、より径の小さな石英ガラス製円筒を接続した構造の炉心管を有し、当該炉心管の中央の径の大きな部分に輝尽性蛍光体前駆体を充填することができ、かつ当該炉心管を回転させながら炉心管内部を600〜900℃に加熱することができる。
2)上記炉心管が、当該炉心管内部の雰囲気ガスを置換することができ、少なくとも水素を含む雰囲気ガス、少なくとも酸素を含む雰囲気ガス、及び窒素ガスの3種類の雰囲気ガスを、各々の流量を制御して、当該炉心管内部に導入し排出できる機能を有する。
3)上記炉心管のうち上記雰囲気ガスが接触する表面部分の総表面積の80%以上を占める部分の部材が石英ガラス、又はフッ素樹脂により被覆された金属である。
4)上記焼成炉が炉心管外部に配置された熱源を有し、当該炉心管の冷却時には、当該熱源を当該炉心管から離れた位置に移動することができる。
【0015】
(2)
ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法において、前記無機物溶液を添加する工程より前記溶媒を除去する工程に長い時間をかけて、前記混合溶液からハロゲン化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶を析出させるとともに、併行して溶媒を除去することを特徴とする前記(1)に記載のハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。
【0016】
(3)
前記ハロゲン化物系輝尽性蛍光体が希土類賦活アルカリ土類金属フッ化臭化物輝尽性蛍光体であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。
【0017】
(4)
前記ハロゲン化物系輝尽性蛍光体が下記一般式(EFS1)で表わされる酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化臭化物輝尽性蛍光体であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。
一般式(EFS1)
Ba1-x2xFX1-yBry:aM1,bLn,cO
〔式中、M1:Li,Na,K,Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属、X:Cl又はIより選ばれる少なくとも一種のハロゲン元素、M2:Be,Mg,Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属、Ln:Ce,Pr,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,Dy,Ho,Nd,Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素、x,y,a,b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3,0≦y≦1.0、0≦a≦0.05,0<b≦0.2,0<c≦0.1を表す。〕
(5)
前記(1)〜(4)のいずれかに記載のハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法によって製造されたことを特徴とするハロゲン化物系輝尽性蛍光体。
【0018】
(6)
前記(1)〜(4)のいずれかに記載のハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法によって製造されたハロゲン化物系輝尽性蛍光体を用いたことを特徴とする放射線画像変換パネル。
【発明の効果】
【0019】
本発明の構成により、粒径分布の揃ったハロゲン化物系輝尽性蛍光体、特に酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物輝尽性蛍光体を生産性良く高い収率で得ることでができる製造方法を提供すること及び更にこれを利用して製造した輝尽性蛍光体を用いた高感度高画質の放射線像変換プレートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明及び構成要素について説明する。
【0021】
(ハロゲン化物系輝尽性蛍光体)
本発明に係るハロゲン化物系輝尽性蛍光体は、新規な製造方法によって得られたことを特徴とする。即ち、ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法において、上記特定要件を満たす輝尽性蛍光体の製造装置により製造することことを特徴とし、更に、当該輝尽性蛍光体の前駆体結晶が、後で詳述する製造方法において、ハロゲン化物イオン溶液に少なくとも2種以上の無機物溶液を添加して調製された混合溶液からハロゲン化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶を析出させる工程と、当該結晶を析出させる混合溶液槽より溶媒を除去する工程を経ることによりを得られたことを特徴とする。
【0022】
ここで、本発明に係る輝尽性蛍光体前駆体結晶とは、前記製造方法において、混合溶液から析出された結晶であって、600℃以上の高温での焼成処理を経ていない状態のものをいう。輝尽性蛍光体前駆体結晶は、輝尽発光性や瞬時発光性をほとんど示さない。
【0023】
本発明のハロゲン化物系輝尽性蛍光体の前駆体としてのハロゲン化物系輝尽性蛍光体を構成する元素の組成は使用目的、励起光の波長、強度等の条件に応じて種々に変化させることができ、特定の組成に限定されるものではない。しかし、理論上下記基本組成式(I)で表されるハロゲン化物系輝尽性蛍光体が好ましい。
【0024】
基本組成式(I):Ba1-x2x121-y3y:aM1,bLn
[但し、M1:Li,Na,K,Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属、M2:Be,Mg,Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属、X1,X2,X3:F,Cl,Br,及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲン元素、Ln:Ce,Pr,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,Dy,Ho,Nd,Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素を表し、x,y,a及びbは、それぞれ、0≦x≦0.5、0≦y≦1.0、0≦a≦0.05、0<b≦0.2で表される範囲の数値を表す。]
さらに、上記基本組成式(I)で表される輝尽性蛍光体の内、理論上下記基本組成式(II)で表される希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体が好ましい。
【0025】
基本組成式(II):Ba1-x2xFX1-yy:aM1,bLn
[但し、M1:Li,Na,K,Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属、M2:Be,Mg,Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属、X:Cl又はBrより選ばれる少なくとも一種のハロゲン元素、Ln:Ce,Pr,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,Dy,Ho,Nd,Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素を表し、x,y,a及びbは、それぞれ、0≦x≦0.5、0≦y≦1.0、0≦a≦0.05、0<b≦0.2で表される範囲の数値を表す。]
前記基本組成式(I)又は(II)で表される輝尽性蛍光体は、輝尽発光量、消去特性等を更に改良する目的で、下記のような種々添加成分を含有していてもよい。例えば、B,O,Sに代表される非金属元素、Al,Ge,Snに代表される両性元素、Mg,Fe,Ni,Cu,Agに代表される金属元素等が挙げられる。これら添加成分の量は、前記基本組成式(I)で表される輝尽性蛍光体に対して、1000ppm以下であることが好ましい。
【0026】
特に、好ましくは、上記基本組成式(I)又は(II)で表さられる輝尽性蛍光体に酸素を導入した輝尽性蛍光体であって、理論上下記基本組成式(III)で表される酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物輝尽性蛍光体である。
【0027】
基本組成式(III):Ba1-x2xFX1-yBry:aM1,bLn,cO
[但し、M1:Li,Na,K,Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属、M2:Be,Mg,Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属、X:Cl又はBrより選ばれる少なくとも一種のハロゲン元素、Ln:Ce,Pr,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,Dy,Ho,Nd,Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素を表し、x,y,a及びbは、それぞれ、0≦x≦0.5、0≦y≦1.0、0≦a≦0.05、0<b≦0.2、0<c<0.1で表される範囲の数値を表す。]
本発明において、最も好ましいハロゲン化物輝尽性蛍光体は、理論上下記一般式(EFS1)で表わされる酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化臭化物輝尽性蛍光体である。
【0028】
一般式(EFS1):Ba1-x2xFX1-yBry:aM1,bLn,cO
〔式中、M1:Li,Na,K,Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属、X:Cl又はIより選ばれる少なくとも一種のハロゲン元素、M2:Be,Mg,Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属、Ln:Ce,Pr,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,Dy,Ho,Nd,Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素、x,y,a,b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3,0≦y≦1.0、0≦a≦0.05,0<b≦0.2,0<c≦0.1を表す。〕
前記基本組成式(I)〜(III)で表される輝尽性蛍光体は、通常は、アスペクト比が1.0〜5.0の範囲にある。本発明の輝尽性蛍光体は、粒子アスペクト比が1.0〜2.0の場合には、粒子サイズのメジアン径(Dm)が1〜10μm(更に好ましくは、2〜7μm)の範囲、かつ、粒子サイズ分布の標準偏差をσとしたときのσ/Dmが50%以下(更に好ましくは、40%以下)の範囲にあることが好ましい。一方、粒子アスペクト比が2.0〜5.0の場合には、粒子サイズのメジアン径(Dm)が1〜20μm(更に好ましくは、2〜15μm)の範囲、かつ、粒子サイズ分布の標準偏差をσとしたときのσ/Dmが50%以下(更に好ましくは、40%以下)の範囲にあることが好ましい。また、粒子の形状としては、直方体型、正六面体型、正八面体型、これらの中間多面体型、14面体型等があるが、前記粒子アスペクト比、粒子サイズ及び粒子サイズ分布を満たすものであれば、本発明の効果を達し得る。前記基本組成式(I)〜(III)において、Lnは、Ce又はEuであることが、発光特性(感度、消去特性、応答等)を向上させる点で好ましい。
【0029】
前駆体結晶としての希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の好ましい具体例としては、例えば、BaFI:0.005Eu,BaFI:0.001Eu,Ba0.97Sr0.03FI:0.0001K,0.013Eu,BaFI:0.0002K,0.005Eu,Ba0.998Ca0.002FI:0.005Eu,BaFI:0.005Ce,Ba0.99Ca0.01FI:0.0002K,0.005Eu,BaFI:0.0001Ce,0.0001Tbなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
(前駆体結晶及び輝尽性蛍光体の製造方法)
本発明に係るハロゲン化物系輝尽性蛍光体は、以下において詳しく説明するように、特定要件を満たす輝尽性蛍光体の製造装置により製造することを特徴とし、更に、ハロゲン化物イオン溶液に少なくとも2種以上の無機物溶液を添加して調製された混合溶液からハロゲン化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶を析出させる工程と、当該結晶を析出させる混合溶液槽より溶媒を除去する工程を経ることによりを得られたことを特徴とする。なお、本発明に係る液相法による輝尽性蛍光体前駆体製造については、特開平10−140148号公報に記載された前駆体製造方法、特開平10−147778号公報に記載された前駆体製造装置等を参酌することができる。
【0031】
以下に、本発明に係る輝尽性蛍光体の製造法の詳細について説明する。
【0032】
最初に、水系媒体中を用いてフッ素化合物以外の原料化合物を溶解させる。すなわち、BaBr2とLn(Ce,Pr,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,Dy,Ho,Nd,Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素。)のハロゲン化物、そして必要により、更にM2のハロゲン化物、そして更にM1のハロゲン化物を水系媒体中に入れ充分に混合し、溶解させて、それらが溶解した水溶液を調製する。ただし、BaBr2濃度が0.5mol/L以上好ましくは1.5mol/L以上となるように、BaBr2濃度と水系溶媒との量比を調整しておく。このときバリウム濃度が低いと所望の組成の前駆体が得られないか、得られても粒子が肥大化する。よって、バリウム濃度は適切に選択する必要があり、本発明者らの検討の結果、0.5mol/L以上で微細な前駆体粒子を形成することができることが分かった。このとき、所望により、少量の酸、アンモニア、アルコール、水溶性高分子ポリマー、水不溶性金属酸化物微粒子粉体などを添加してもよい。BaBr2の溶解度が著しく低下しない範囲で低級アルコール(メタノール、エタノール)を適当量添加しておくのも好ましい態様である。この水溶液(反応母液)は60℃に維持される。
【0033】
次に、この60℃に維持され、撹拌されている水溶液に、無機フッ化物(フッ化アンモニウム、アルカリ金属のフッ化物など)の水溶液を注入する。この注入は、撹拌が特に激しく実施されている領域部分に行なうのが好ましい。この無機フッ化物水溶液の反応母液への注入によって、前記一般式(1)に該当する酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化臭化物系蛍光体前駆体結晶が析出する。
【0034】
本発明においては、無機フッ化物水溶液の添加時に反応液から溶媒を除去する。溶媒を除去する時期は添加中であれば、特に問わない。溶媒の除去後の全質量が除去前の質量(反応母液の質量と添加した水溶液の質量の和)に対する比率(除去比率)が0.97以下であることが好ましい。これ以下では結晶がBaFBrになりきらない場合がある。そのため除去比率0.97以下であることが好ましく、0.95以下がより好ましい。また、除去しすぎても反応溶液の粘度が過剰に上昇するなど、ハンドリングの面で不都合が生じる場合がある。そのため溶媒の除去比率は0.5までが好ましい。溶媒の除去に要する時間は生産性に大きく影響するばかりでなく、粒子の形状、粒径分布も溶媒の除去方法に影響されるので、除去方法は適切に選択する必要がある。
【0035】
一般的に溶媒の除去に際しては溶液を加熱し、溶媒を蒸発する方法が選択される。本発明においてもこの方法は有用である。溶媒の除去により、意図した組成の前駆体を得ることができる。更に、生産性を挙げるため、また、粒子形状を適切に保つため、他の溶媒除去方法を併用することが好ましい。併用する溶媒の除去方法は特に問わない。逆浸透膜などの分離膜を用いる方法を選択することも可能である。本発明では生産性の面から、以下の除去方法を選択することが好ましい。
【0036】
1.乾燥気体を通気する
反応容器を密閉型とし、少なくとも2箇所以上の気体が通過できる孔を設け、そこから乾燥気体を通気する。気体の種類は任意に選ぶことができる。安全性の面から、空気、窒素が好ましい。通気する気体の飽和水蒸気量に依存し、溶媒が気体に同伴され、除去される。反応容器の空隙部分に通気する方法の他、液相中に気体を気泡として噴出させ、気泡中に溶媒を吸収させる方法もまた有効である。
【0037】
2.減圧
よく知られるように減圧にすることにより、溶媒の蒸気圧は低下する。蒸気圧降下により効率的に溶媒を除去することができる。減圧度としては溶媒の種類により適宜選択することができる。溶媒が水の場合86kPa以下が好ましい。
【0038】
3.液膜
蒸発面積を拡大することにより溶媒の除去を効率的に行うことができる。本発明のように、一定容積の反応容器を用いて加熱、攪拌し、反応を行わせる場合、加熱方法としては、加熱手段を液体中に浸漬するか、容器の外側に加熱手段を装着する方法が一般的である。当該方法によると、伝熱面積は液体と加熱手段が接触する部分に限定され、溶媒除去に伴い、伝熱面積が減少し、よって、溶媒除去に要する時間が長くなる。これを防ぐため、ポンプ、あるいは攪拌機を用いて反応容器の壁面に散布し、伝熱面積を増大させる方法が有効である。このように反応容器壁面に液体を散布し、液膜を形成する方法は”濡れ壁”として知られている。濡れ壁の形成方法としては、ポンプを用いる方法のほか、特開平6−335627号、同11−235522号に記載の攪拌機を用いる方法が挙げられる。
【0039】
これらの方法は単独のみならず、組み合わせて用いてもかまわない。液膜を形成する方法と容器内を減圧にする方法の組み合わせ、液膜を形成する方法と乾燥気体を通気する方法の組み合わせなどが有効である。特に前者が好ましく、特開平6−335627号、特願2002−35202号公報に記載の方法が好ましく用いられる。
【0040】
次に、上記の蛍光体前駆体結晶を、濾過、遠心分離などによって溶液から分離し、メタノールなどによって充分に洗浄し、乾燥する。この乾燥蛍光体前駆体結晶に、アルミナ微粉末、シリカ微粉末などの焼結防止剤を添加、混合し、結晶表面に焼結防止剤微粉末を均一に付着させる。なお、焼成条件を選ぶことによって焼結防止剤の添加を省略することも可能である。
【0041】
4.焼成
上記の方法によって得られた蛍光体前駆体結晶(以下において、「蛍光体前駆体」ともいう。)を使用して輝尽性蛍光体を製造するには、図2に示す本発明の製造装置を用いて、特に下記a)〜e)の工程を経る焼成方法を採用する。
【0042】
a)焼成前に炉心管21内部の輝尽性蛍光体前駆体充填部23に、輝尽性蛍光体前駆体結晶51の全質量m(kg)と炉心管21内部容積l(L)との比率m/l(kg/L)が0.03以上1.0以下となるように輝尽性蛍光体前駆体51を充填する工程;b)0.1〜10%の水素を含み残りが窒素である雰囲気ガスを、炉心管容積に対する流量比率0.01〜2.0(%/min)で流通させながら、輝尽性蛍光体前駆体結晶を100℃以下から600℃以上に加熱する工程;c)前記b)に引き続いて、0.1〜7%の酸素と0.1〜10%の水素を含み残りが窒素である雰囲気ガスを、炉心管容積に対する流量比率0.01〜2.0(%/min)で流通させながら、輝尽性蛍光体前駆体を600℃以上で30分以上加熱する工程;d)前記c)に引き続いて、0.1〜10%の水素を含み残りが窒素である雰囲気ガスを、炉心管容積に対する流量比率0.01〜10(%/min)で流通させながら、輝尽性蛍光体前駆体を600℃以上で30分以上加熱する工程;e)前記d)に引き続いて、0.1〜10%の水素を含み残りが窒素である雰囲気ガスを、炉心管容積に対する流量比率2.0〜10(%/min)で流通させながら、焼成炉11を焼成炉上側部分待避位置15と焼成炉下側部分待避位置16の各々に移動させ、輝尽性蛍光体を100℃以下に急冷して取り出す工程。
【0043】
以下、各工程の詳細を説明する。まず、焼成前に炉心管21内部の輝尽性蛍光体前駆体充填部23に、輝尽性蛍光体前駆体51の全質量m(kg)と炉心管21内部容積l(L)との比率m/l(kg/L)が0.03以上1.0以下となるように輝尽性蛍光体前駆体51を充填する。
【0044】
しかる後に炉心管21内部に、0.1〜10%の水素を含み残りが窒素である雰囲気ガスを流通させる。この時、炉心管21内部の容量の少なくとも10%の体積の雰囲気ガスを注入するまでの間、輝尽性蛍光体前駆体充填部23の温度は100℃以下に保つことが好ましい。
【0045】
炉心管21内部を上記雰囲気ガスに置換した後、600℃以上に加熱を行う。この時、炉心管内の混合雰囲気は上記雰囲気ガスを炉心管容積に対する流量比率0.01〜2.0(%/min)で流通させることが好ましい。更に好ましくは、0.1〜3.0(%/min)である。又、昇温の速度は、電気炉の仕様等により異なるが、1〜50℃/minが好ましい。
【0046】
600℃以上に到達した後、少なくとも0.1〜7%の酸素と0.1〜10%の水素を含み残りが窒素である雰囲気ガスを炉心管内に導入し、少なくとも30分間、好ましくは1〜5時間の間、600℃以上で窒素、水素、酸素の混合雰囲気ガスを流通させる。流量は炉心管容積に対する流量比率0.01〜2.0(%/min)で流通させることが好ましい。更に好ましくは、0.1〜3.0(%/min)である。また、この時の温度は好ましくは600〜1300℃、より好ましくは700〜1000℃である。600℃以上とすることにより、良好な輝尽発光特性が得られ、700℃以上で更に放射線画像の診断の実用上好ましい輝尽発光特性を得ることができる。又、1300℃以下であれば、焼結により大粒径化することを防止でき、特に1000℃以下であれば、放射線画像の診断の実用上好ましい粒径の輝尽性蛍光体を得ることができる。更に好ましくは、820℃付近である。新たに導入される雰囲気としては、水素濃度が0.1〜10%、酸素濃度は7%未満かつ水素濃度未満、さらに残りの成分が窒素である混合ガスが好ましい。より好ましくは、水素濃度は0.1〜3%、酸素濃度は水素濃度に対して40〜150%、かつ残りの成分が窒素という混合ガスである。特に好ましくは、水素が1%、酸素1.1%、かつ残りの成分が窒素の混合ガスである。水素濃度は、0.1%以上とすることで還元力を得られ、発光特性を向上させることができ、5%以下とすることで取り扱い上好ましく、更に輝尽性蛍光体の結晶自体が還元されてしまうことを防止できる。又、酸素濃度は、水素濃度に対して約110%をピークに輝尽発光強度を著しく向上できる。
【0047】
前記操作の後、再び炉心管21内部に0.1〜10%の水素を含み残りが窒素である雰囲気を導入する。この時、昇温の時と同じ雰囲気ガスを用いることが好ましい。雰囲気ガスの流量は、炉心管容積に対する流量比率0.01〜10(%/min)が好ましい。又、これにより炉心管21内部の雰囲気ガスが置換されるので、炉心管21内部で生成される輝尽性蛍光体以外の反応生成物を排出することができる。少なくとも30分以上、好ましくは30分から12時間の間、600℃以上で0.1〜10%の水素を含み残りが窒素である雰囲気が保持される。30分以上とすることにより、良好な輝尽発光特性を示す輝尽性蛍光体を得ることができる。又、12時間以下とすることにより、加熱による輝尽発光特性の低下を防止することができる。この時の温度は好ましくは600〜1300℃、より好ましくは700〜1000℃である。
【0048】
冷却は、0.1〜10%の水素を含み残りが窒素である雰囲気ガスを、炉心管容積に対する流量比率2.0〜10(%/min)で流通させながら行なうことが好ましい。置換の効率を高めるために、雰囲気ガスの流量を増加させることが好ましい。炉心管容積に対する流量比率を2.0〜10(%/min)とすることで、炉心内で生成される輝尽性蛍光体以外の反応生成物を排出することができる。降温の速度は、1〜50℃/minが好ましい。
【0049】
生産性向上と、蛍光体特性の二つの観点から、冷却はなるべく早い速度で行なう事が好ましい。本発明に係る製造装置では、焼成炉の分割により冷却速度を極めて早くできるため有利である。
【0050】
冷却は少なくとも100℃まで行ない、その後生成した蛍光体を取り出すことが好ましく、特に好ましい取り出し温度は50℃以下である。
本発明によれば、輝尽性蛍光体を均一に焼成した後、急冷し、腐食による劣化やコンタミネーションを防ぐことができる。
【0051】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を詳しく説明する。
【0052】
図1は、本発明の実施の形態に係る輝尽性蛍光体製造装置(以下、単に「製造装置」という場合がある。)の外観斜視図である。
【0053】
図1において、11は焼成炉であって、内部に炉心管21が、貫通する状態で配されており、両端は炉心管回転支持装置13により支えられている。焼成炉11は2分割されており、炉心管冷却時に、炉心管外部の焼成炉内面に配置された熱源を炉心管から離れた位置に移動可能である。
【0054】
図2は本発明の輝尽性蛍光体製造装置の断面図である。図2において、11は焼成炉であって、内部に炉心管21が、貫通する状態で配されている。焼成炉11内面であって、炉心管21の外部には熱源12が配され、該熱源12によって焼成炉11内部が加熱され、炉心管21内に直接投入される輝尽性蛍光体前駆体結晶51が焼成できるように構成されている。
【0055】
炉心管21の形状としては、図2に示すように、円筒の両端に、より径の小さな円筒を接続した構造が好ましい。径の異なる円筒を接続する部分については、図2に示すように滑らかに接続される構造の他、大小二つの円筒を直接、ドーナツ状の板を介して接続した構造であってもよい。
【0056】
炉心管内部の小径部分のいずれかの位置に、図2に示すようなリング状の炉心管内突起22を有することが好ましい。炉心管内突起22の高さは5〜50mm程度から選択できる。炉心管内突起22により、管の両端に析出、付着した残留物や汚れなどが輝尽性蛍光体前駆体51に混入することを防止できる。
【0057】
炉心管21の大きさとしては、目的に応じて適宜設定されるが、中央の径の大きい部分の断面の直径が、大方50〜1000mm程度の範囲から選択され、100〜400mm程度の範囲が好ましい。中央の径の大きい部分は輝尽性蛍光体前駆体を充填する部分、すなわち輝尽性蛍光体前駆体充填部23であり、図中斜線で示してある。輝尽性蛍光体前駆体充填部23の長さ(図中左右方向)は100〜1000mmが好ましい。輝尽性蛍光体前駆体充填部23に接続する両端部分の断面の直径は、輝尽性蛍光体前駆体充填部23の直径の20〜90%程度の範囲から選択され、50〜80%程度の範囲が好ましい。輝尽性蛍光体前駆体充填部23に輝尽性蛍光体前駆体51を投入した場合、炉心管21を回転した時に輝尽性蛍光体前駆体51を焼成炉11により加熱される範囲の中に止めることができる。
【0058】
更に、炉心管21を保持する部分を設けるためと、炉心管21の両端の温度を200℃程度以上まで上昇させないために、炉心管21の長さは焼成炉11の端からそれぞれ300〜2000mm程度の長さを有することが好ましい。
【0059】
炉心管21および炉心管内突起22の材質は石英ガラスが好ましい。石英ガラスは耐食性が強く、急激な温度変化に強い特徴がある。
【0060】
輝尽性蛍光体前駆体充填部23には、輝尽性蛍光体前駆体51の流動性を調節するために、高さ5〜50mm程度の羽根状突起等を内部に含んでも良い。
【0061】
炉心管21内部は輝尽性蛍光体前駆体51の全質量m(kg)と炉心管21内部容積(L)との比率m/l(kg/L)が0.03以上1.0以下であることが好ましく、特に好ましくはm/lが0.04以上0.7以下である。比率m/lが1.0以上であると、狭い空間に密に蛍光体原料混合物を詰め込んだ状態となり、全体的に均一な焼成を行うことが困難となる場合があり、0.03以下だと、揮発するハロゲン雰囲気が低すぎて、得られる輝尽性蛍光体の輝尽発光量や消去特性等が劣化することがある。
【0062】
炉心管21は、焼成炉11の図中左側に配置される炉心管回転支持装置13と、右側に配置される炉心管回転駆動装置14によって保持される。炉心管21は軸方向に水平であっても若干傾斜していても良い。傾斜して配置される場合には、炉心管21に輝尽性蛍光体前駆体51を充填し炉心管21を回転させた時に、輝尽性蛍光体前駆体充填部23から輝尽性蛍光体前駆体51がこぼれ出さない程度の傾斜角に抑える必要がある。炉心管21は焼成炉11とは実質的に接触しない構造が好ましい。炉心管回転支持装置13と炉心管回転駆動装置14は、それぞれ水平に並んだ2本のゴムローラ等により構成され、炉心管21は2本のゴムローラ上に接するように配置される。更に炉心管回転駆動装置14は、ゴムローラを回転するためのモータや、モータの回転を伝達するチェーンなどを含み、炉心管21を回転させるために用いられる。
【0063】
炉心管21の回転速度は、0.1〜10rpmの範囲に調節可能であることが好ましい。0.1rpm以下の回転速度では、輝尽性蛍光体前駆体51に対して均一に熱や雰囲気ガスを供給する効果が少なく、10rpm以上では過剰な運動により輝尽性蛍光体前駆体51に損傷を与える場合がある。
【0064】
炉心管21には、図中左側に示すように、炉心管内部にガスを導入するためにガス導入配管33がガス導入側蓋31を介して接続される。ガス導入側蓋31とガス導入側配管33の接続は、蓋の中心に設置される所謂ガス導入側ロータリージョイント32を介して成される。ガス導入側ロータリージョイント32は内部にオイルシール、メカニカルシール等を有し、回転部分を密閉し、炉心管21内部の雰囲気を一定に保つ。また同様に、炉心管21の反対側の端部(図中右側)にはガスを排出するためにガス排出配管43が、ガス排出側ロータリージョイント42およびガス排出側蓋41を介して接続される。
【0065】
雰囲気ガスとしては、少なくとも窒素、水素、酸素を含む3種類が必要である。100%水素の代わりに1〜5%水素で残りが窒素の混合ガスを用いた方が安全上好ましい。同様に、100%酸素の代わりに酸素と窒素の混合ガスを用いても良い。図中、酸素混合ガスボンベ37、窒素ガスボンベ38、水素混合ガスボンベ39の3種類のガス供給源からレギュレータ、バルブ等(図面上省略)を介して酸素混合ガス流量制御装置34、窒素ガス流量制御装置35、水素混合ガス流量制御装置36にそれぞれ接続される。
【0066】
3種類のガスの供給量はガス流量制御装置34〜36により制御される。ガス流量制御装置34〜36はマスフローコントローラやフロート式の流量計などが使用でき、3種類のガスの流量を独立に制御した後、混合し、ガス導入配管33を介して炉心管21内に導入する。雰囲気ガスは焼成中、常時流通させて炉心管21内部の雰囲気を置換し続けることが好ましい。
【0067】
雰囲気ガスの流量としては、酸素混合ガス流量制御装置34は1〜1000ml/min、窒素ガス流量制御装置35は0.1〜30L/min、水素混合ガス流量制御装置36は0.01〜10L/minの範囲で調節可能であることが好ましい。
【0068】
前記一般式(EFS1)に示すような希土類元素賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物の輝尽性蛍光体を焼成する場合、ヨウ素、臭素などのハロゲンガスが発生する場合があるので、雰囲気ガスに接触する部分は耐食性を持つことが好ましい。
【0069】
ガス導入側蓋31、ガス排出側蓋41、ガス導入側ロータリージョイント32、ガス排出側ロータリージョイント42、は、材質としてはステンレス合金、アルミニウム等が好ましい。また雰囲気ガスに接する表面がフッ素コーティングされていることが好ましい。フッ素樹脂としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)等が選択でき、特にPFA、ETFEが好ましい。
【0070】
ガス導入配管33、ガス排出配管43、ガストラップ44の材質は、前記ガス導入側蓋31等と同様のフッ素コーティングされた金属の他、フッ素樹脂そのものでも良い。
【0071】
ガストラップ44内部で、排気ガスはチオ硫酸ナトリウム水溶液45により洗浄後、大気中に排出される。チオ硫酸ナトリウム水溶液45により、排気ガス中からヨウ素などのハロゲンガスが効率良く除去できる。
【0072】
以上述べたガス導入側蓋31、ガス排出側蓋41、ガス導入側ロータリージョイント32、ガス排出側ロータリージョイント42、ガス供給配管33、ガス排出配管43、ガストラップ44および炉心管21の接ガス部分の総面積のうち、80%以上が前記フッ素コーティングされているか、石英ガラスであることが好ましい。特に好ましくは90%以上である。80%以上とすることで、焼成中のハロゲンガスによる腐食を防ぐことが出来、腐食生成物の発生を抑えることが出来る。また、焼成時に温度が200℃以上に達する部分は石英ガラスを用いることが好ましく、200℃より低い部分はフッ素コーティングされた金属であることが好ましい。
【0073】
熱源12としては、従来公知のあらゆる熱源を使用することができ、例えば公知の電気ヒーターを採用することができる。熱源12は少なくとも輝尽性蛍光体前駆体充填部53の範囲を均一に600〜900℃の間の任意の温度に保持する能力を有する必要がある。
【0074】
輝尽性蛍光体前駆体結晶51を焼成するに際しては、まず輝尽性蛍光体前駆体51を輝尽性蛍光体前駆体充填部53に投入する。しかる後にガス導入側蓋31とガス排出側蓋41を炉心管21に固定し、炉心管21内部を密閉状態にする。そして、ガス導入配管33、ガス排出配管43等により炉心管21内部の雰囲気ガスを適宜導入および排気し、炉心管21内部の雰囲気を所定の状態にしつつ、熱源12から熱を与え、焼成を行う。焼成条件(雰囲気ガスの流量、温度、時間、焼成温度・雰囲気の段数等)は、目的に応じて適宜設定すればよい。
【0075】
焼成後、焼成炉11を二つに分割して、焼成炉上側部分待避位置15と焼成炉下側部分待避位置16まで移動できる。熱源12を炉心管21から遠ざけることにより冷却速度を高めることができる。また分割して出来た空間に冷却ファンなどの冷却装置を設置し、更に冷却速度を高めることが出来る。焼成炉の分割方法は、上下に移動することには限定されず、左右に分割しても、図中左右方向に分割しても良い。また、3つ以上の構成部分に分割しても良い。移動距離としては100〜1000mm程度の範囲から選択できる。移動距離が大きい方が冷却速度を高めることができる。
【0076】
炉心管21が十分冷却されてから、ガス導入側蓋31とガス排出側蓋41を外した後、焼成済みの輝尽性蛍光体前駆体結晶51すなわち輝尽性蛍光体を取り出す。
【0077】
(放射線画像変換パネルの作製)
上記のようにして、目的の酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物輝尽性蛍光体が得られ、これを用いて形成された蛍光体層を有する放射線像変換パネルが作製される。以下、放射線画像変換パネルの作製について詳しく説明する。
【0078】
〔支持体〕
本発明に係る放射線像変換パネルに用いられる支持体としては各種高分子材料が用いられる。特に情報記録材料としての取り扱い上可撓性のあるシートあるいはウェブに加工できるものが好適であり、この点からいえばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルムが好ましい。
【0079】
また、これら支持体の層厚は用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80μm〜1000μmであり、取り扱い上の点から、さらに好ましくは80μm〜500μmである。これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0080】
さらに、これら支持体は、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引層を設けてもよい。
【0081】
〔下引き層〕
本発明に係る下引き層では、架橋剤により架橋できる高分子樹脂と架橋剤とを含有していることが好ましい。
【0082】
下引き層で用いることのできる高分子樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニールブチラール、ニトロセルロース等を挙げることができ、請求項2に係る発明では、下引き層で用いる高分子樹脂の平均ガラス転移点温度(Tg)が25℃以上であることが特徴の1つであり、好ましくは25〜200℃のTgを有する高分子樹脂を用いることである。
【0083】
本発明に係る下引き層で用いることのできる架橋剤としては、特に制限はなく、例えば、多官能イソシアネート及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミノ樹脂及びその誘導体等を挙げることができるが、架橋剤として多官能イソシアネート化合物を用いることが好ましく、例えば、日本ポリウレタン社製のコロネートHX、コロネート3041等が挙げられる。
【0084】
本発明に係る下引き層は、例えば、以下に示す方法により支持体上に形成することができる。
【0085】
まず、上記記載の高分子樹脂と架橋剤を適当な溶剤、例えば後述の輝尽性蛍光層塗布液の調製で用いる溶剤に添加し、これを充分に混合して下引き層塗布液を調製する。
【0086】
架橋剤の使用量は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂の種類等により異なるが、輝尽性蛍光体層の支持体に対する接着強度の維持を考慮すれば、高分子樹脂に対して、50質量%以下の比率で添加することが好ましく、特には、15〜50質量%であることが好ましい。
【0087】
下引き層の膜厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂及び架橋剤の種類等により異なるが、一般には3〜50μmであることが好ましく、特には、5〜40μmであることが好ましい。
【0088】
〔輝尽性蛍光体層〕
本発明において、蛍光体層に用いられる結合剤の例としては、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、またはアラビアゴムのような天然高分子物質;および、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン・塩化ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステルなどのような合成高分子物質などにより代表される結合剤を挙げることができるが、結合剤が熱可塑性エラストマーを主成分とする樹脂であることが好ましく、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、上記にも記載のポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジェン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、天然ゴム系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン−ブタジエンゴム及びシリコンゴム系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのうち、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーは、蛍光体との結合力が強いため分散性が良好であり、また延性にも富み、放射線増感スクリーンの対屈曲性が良好となるので好ましい。なお、これらの結合剤は、架橋剤により架橋されたものでも良い。
【0089】
塗布液における結合剤と輝尽性蛍光体との混合比は、目的とする放射線像変換パネルのヘイズ率の設定値によって異なるが、蛍光体に対し1〜20質量部が好ましく、さらには2〜10質量部がより好ましい。
【0090】
〔保護層〕
塗布型の蛍光体層を有する放射線像変換パネルに設ける保護層としては、ASTMD−1003に記載の方法により測定したヘイズ率が、5%以上60%未満の励起光吸収層を備えたポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルム等が使用できるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルム等の延伸加工されたフィルムが、透明性、強さの面で保護層として好ましく、更には、これらのポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム上に金属酸化物、窒化珪素などの薄膜を蒸着した蒸着フィルムが防湿性の面からより好ましい。
【0091】
保護層で用いるフィルムのヘイズ率は、使用する樹脂フィルムのヘイズ率を選択することで容易に調整でき、また任意のヘイズ率を有する樹脂フィルムは工業的に容易に入手することができる。放射線像変換パネルの保護フィルムとしては、光学的に透明度の非常に高いものが想定されている。そのような透明度の高い保護フィルム材料として、ヘイズ値が2〜3%の範囲にある各種のプラスチックフィルムが市販されている。本発明の効果を得るために好ましいヘイズ率としては5%以上60%未満であり、さらに好ましくは10%以上50%未満である。ヘイズ率が5%未満では、画像ムラや線状ノイズを解消する効果が低く、また60%以上では鮮鋭性の向上効果が損なわれ、好ましくない。
【0092】
本発明に係る保護層で用いるフィルムは、必要とされる防湿性にあわせて、樹脂フィルムや樹脂フィルムに金属酸化物などを蒸着した蒸着フィルムを複数枚積層することで最適な防湿性とすることができ、輝尽性蛍光体の吸湿劣化防止を考慮して、透湿度は少なくとも5.0g/m2・day以下であることが好ましい。樹脂フィルムの積層方法としては、特に制限はなく、公知のいずれの方法を用いても良い。
【0093】
また、積層された樹脂フィルム間に励起光吸収層を設けることによって、励起光吸収層が物理的な衝撃や化学的な変質から保護され安定したプレート性能が長期間維持でき好ましい。また、励起光吸収層は複数箇所設けてもよいし、積層する為の接着剤層に色材を含有して、励起光吸収層としても良い。
【0094】
保護フィルムは、輝尽性蛍光体層に接着層を介して密着していても良いが、蛍光体面を被覆するように設けられた構造(以下、封止または封止構造ともいう)であることがより好ましい。蛍光体プレートを封止するにあたっては、公知のいずれの方法でもよいが、防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層樹脂層を熱融着性を有する樹脂フィルムとすることは、防湿性保護フィルムが融着可能となり蛍光体シートの封止作業が効率化される点で、好ましい形態の1つである。さらには、蛍光体シートの上下に防湿性保護フィルムを配置し、その周縁が前記蛍光体シートの周縁より外側にある領域で、上下の防湿性保護フィルムをインパルスシーラー等で加熱、融着して封止構造とすることで、蛍光体シートの外周部からの水分進入も阻止でき好ましい。また、さらには、支持体面側の防湿性保護フィルムが1層以上のアルミフィルムをラミネートしてなる積層防湿フィルムとすることで、より確実に水分の進入を低減でき、またこの封止方法は作業的にも容易であり好ましい。上記インパルスシーラーで加熱融着する方法においては、減圧環境下で加熱融着することが、蛍光体シートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
【0095】
防湿性保護フィルムの蛍光体面が接する側の熱融着性を有する最外層の樹脂層と蛍光体面は、接着していても接着していなくてもかまわない。ここでいう接着していない状態とは、微視的には蛍光体面と防湿性保護フィルムとが点接触していても、光学的、力学的には殆ど蛍光体面と防湿性保護フィルムは不連続体として扱える状態のことである。また、上記の熱融着性を有する樹脂フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことで、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0096】
輝尽性蛍光体層塗布液の調製に用いられる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル、トリオール、キシロールなどの芳香族化合物、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどのハロゲン化炭化水素およびそれらの混合物などが挙げられる。
【0097】
塗布液には、該塗布液中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、また、形成後の輝尽性蛍光体層中における結合剤と蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤などの種々の添加剤が混合されていてもよい。そのような目的に用いられる分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。また、可塑剤の例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル;フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチル等のフタル酸エステル;グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチルなどのグリコール酸エステル;そして、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールとコハク酸とのポリエステルなどのポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステルなどを挙げることができる。また、輝尽性蛍光体層塗布液中に、輝尽性蛍光体粒子の分散性を向上させる目的で、ステアリン酸、フタル酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などの分散剤を混合してもよい。
【0098】
輝尽性蛍光体層用塗布液の調製は、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、三本ロールミル、高速インペラー分散機、Kadyミル、あるいは超音波分散機などの分散装置を用いて行なわれる。
【0099】
上記のようにして調製された塗布液を、後述する支持体表面に均一に塗布することにより塗膜を形成する。用いることのできる塗布方法としては、通常の塗布手段、例えば、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、リップコーターなどを用いることができる。
【0100】
上記の手段により形成された塗膜を、その後加熱、乾燥されて、支持体上への輝尽性蛍光体層の形成を完了する。輝尽性蛍光体層の膜厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによって異なるが、通常は10〜1000μmであり、より好ましくは10〜500μmである。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を挙げて本発明を例証する。
【0102】
実施例1
図2に示す本発明の製造装置を用いて輝尽性蛍光体を製造した。用いた製造装置の各部位の仕様を以下に示す。
【0103】
炉心管21:石英ガラス製、大径部分=400mm、小径部分=200mm、大径部分の長さ=500mm、内部容積=120L、炉心管内突起22=10mmを小径部分の端(図2の位置)に設置し、ガス導入側蓋31、ガス導入側ロータリージョイント32、ガス排出側蓋41、ガス排出側ロータリージョイント42、及びガス排出配管43はアルミニウム製の表面にETFEコーティングを施したものを用いた。
酸素混合ガス流量制御装置34:山武社製CMQ9200、
窒素ガス流量制御装置35:山武社製CMQ0005、
水素混合ガス流量制御装置36:山武社製CMQ0020、
酸素混合ガスボンベ37:20%酸素/80%窒素混合ガス、
水素混合ガスボンベ39:1%水素/99%窒素混合ガスとした。
【0104】
ユーロピウム賦活フッ化臭化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するために、2つの孔をもつ耐圧容器にBaBr2水溶液(1.5mol/L)2500mlとEuBr3水溶液(0.2mol/L)50mlを反応器に入れた。この反応器中の反応母液を撹拌しながら60℃で保温した。乾燥空気を10L/minの割合で通気しながらフッ化アンモニウム水溶液(10mol/L)300mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、結晶(沈澱物)を析出させた。反応終了後通気前後の溶液の質量比は0.94であった。そのままの温度で90分間攪拌した。90分攪拌した後ろ過しエタノール2000mlで洗浄した後、80℃で乾燥した。焼成時の焼結による粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するために、アルミナの超微粒子粉体を0.1質量%添加し、ミキサーで十分攪拌して、結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。
【0105】
ユーロピウム賦活フッ化臭化バリウムの結晶粉体とアルミナ超微粒子の混合物7kgを、炉心管21内部の輝尽性蛍光体前駆体結晶充填部23に充填し、99%窒素/1%水素混合ガスを10L/minの流量で60分間流通させて雰囲気ガスを置換した。しかる後、99%窒素/1%水素混合ガスの流量を1.5L/minに減じ、0.2rpmの速度で炉心管を回転させながら、20℃/minの昇温速度で820℃まで加熱した。
【0106】
試料温度が820℃に到達してから60分後に、導入するガスを99%窒素/1%水素混合ガス1.5L/minに加えて20%酸素/80%窒素混合ガス90ml/minの流量で2時間30分流通させながら820℃で保持した。
【0107】
その後、導入するガスを再び99%窒素/1%水素混合ガスに替えて流量を5L/minに増して820℃で1時間30分保持した。
【0108】
その後、99%窒素/1%水素混合ガスの流量を5L/minに保ったまま6℃/minの降温速度で600℃まで冷却した。更に、焼成炉11を二つに分割して、焼成炉上側部分待避位置15と焼成炉下側部分待避位置16まで移動し、冷却速度を15℃/minとして50℃まで冷却した。その後、焼成炉雰囲気を大気に戻し、炉心管の回転を止めて生成されたユーロピウム賦活フッ化臭化バリウム輝尽性蛍光体粒子を取り出した。取り出した輝尽性蛍光体粒子は均一に白色を呈していた。
【0109】
次に上記蛍光体粒子を篩いにより分級し、平均粒径2.2μmの粒子を得た。
【0110】
なお、回収した前駆体の質量を計測し、収率を求めた。上記の操作によって得た結晶についてX線回折測定により結晶構造の同定を行った。X線はCu−Kα線を用いた。また、得られた結晶の平均粒径を測定するとともに、粒径が10μm以上及び0.5μm以下の結晶の比率(%)を計算したした。以下の比較例についても、同様の測定・評価を行った。
【0111】
比較例1
炉心管21:石英ガラス製、直径部分=400mmの円筒状、内部容積=250Lとし、ガス導入側蓋31、ガス導入側ロータリージョイント32、ガス排出側蓋41、ガス排出側ロータリージョイント42、及びガス排出配管43はアルミニウム製(フッ素コーティング無)を用いた。
【0112】
実施例と同様に前駆体結晶を用意した。ユーロピウム賦活フッ化臭化バリウムの結晶粉体とアルミナ超微粒子の混合物7kgを、炉心管21の中央付近に充填し、99%窒素/1%水素混合ガスを10L/minの流量で60分間流通させて雰囲気ガスを置換した。
【0113】
しかる後に、99%窒素/1%水素混合ガスの流量を1.5L/minに減じ、0.2rpmの速度で炉心管を回転させながら、20℃/minの昇温速度で820℃まで加熱した。
【0114】
試料温度が820℃に到達してから60分後に、導入するガスを99%窒素/1%水素混合ガス1.5L/minに加えて20%酸素/80%窒素混合ガス90ml/minの流量で2時間30分流通させながら820℃で保持した。
【0115】
その後、導入するガスを再び99%窒素/1%水素混合ガスに替えて流量を5L/minに増して820℃で1時間30分保持した。
【0116】
その後、99%窒素/1%水素混合ガスの流量を5L/minに保ったまま6℃/minの降温速度で600℃まで冷却した。更に、炉体を分割せず、自然冷却した。焼成炉雰囲気を大気に戻し、炉心管の回転を止めて生成されたユーロピウム賦活フッ化臭化バリウム蛍光体粒子を取り出した。
【0117】
焼成後、ガス導入側蓋31、ガス導入側ロータリージョイント32、ガス排出側蓋41、ガス排出側ロータリージョイント42、ガス排出配管43の接ガス部分に、腐食、錆が発生した。取り出した輝尽性蛍光体粒子には、錆と見られる不純物が多数混入していた。
【0118】
比較例2
実施例と同様の製造装置を用いた。実施例と同様に前駆体を用意した。
【0119】
ユーロピウム賦活フッ化臭化バリウムの結晶粉体とアルミナ超微粒子の混合物7kgを、炉心管21内部の輝尽性蛍光体前駆体充填部23に充填し、99%窒素/1%水素混合ガスを10L/minの流量で60分間流通させて雰囲気を置換した。しかる後、99%窒素/1%水素混合ガスの流量を1.5L/minに減じ、炉心管21を回転させずに、20℃/minの昇温速度で820℃まで加熱した。
【0120】
試料温度が820℃に到達してから60分後に、導入するガスを99%窒素/1%水素混合ガス1.5L/minに加えて20%酸素/80%窒素混合ガス90ml/minの流量で2時間30分流通させながら820℃で保持した。
【0121】
その後、導入するガスを再び99%窒素/1%水素混合ガスに替えて流量を5L/minに増して820℃で1時間30分保持した。
【0122】
その後、99%窒素/1%水素混合ガスの流量を5L/minに保ったまま6℃/minの降温速度で600℃まで冷却した。更に、炉体を分割せず、自然冷却した。焼成炉雰囲気を大気に戻し、生成されたユーロピウム賦活フッ化臭化バリウム蛍光体粒子を取り出した。
【0123】
取り出した輝尽性蛍光体粒子には部分的に茶褐色のムラが見られた。
【0124】
比較例3
実施例1と同様の製造装置を用いた。実施例と同様に前駆体を用意した。
【0125】
炉心管21の回転をしない他は実施例と同様に焼成を行ない、生成されたユーロピウム賦活フッ化臭化バリウム蛍光体粒子を取り出した。
【0126】
取り出した輝尽性蛍光体粒子には部分的に茶褐色のムラが見られた。
比較例4
ユーロピウム賦活フッ化臭化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するために、BaBr2水溶液(2mol/L)2500mlとEuBr3水溶液(0.2mol/L)26.5mlを反応器に入れた。この反応器中の反応母液を撹拌しながら60℃で保温した。フッ化アンモニウム水溶液(10mol/L)250mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、結晶(沈澱物)を析出させた。注入終了後そのままの温度で90分間攪拌した。90分攪拌した後ろ過しエタノール2000mlで洗浄した後、80℃で乾燥し、前駆体を用意したこと以外、実施例1と同様にしてユーロピウム賦活フッ化臭化バリウム蛍光体粒子を取り出した。
【0127】
《放射線像変換パネルの作製》
〔下引層の形成〕
以下に記載の下引層塗布液を、ドクターブレードを用いて、厚さ188μmの発泡ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製188E60L)に塗布し、100℃で5分間乾燥させて、乾燥膜厚30μmの下引層を塗設した。
【0128】
(下引層塗布液)
ポリエステル樹脂溶解品(東洋紡社製バイロン55SS、固形分35%)288.2gに、β−銅フタロシアニン分散品0.34g(固形分35%、顔料分30%)及び硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製コロネートHX)11.22gを混ぜ、プロペラミキサーで分散して下引層塗布液を調製した。
【0129】
〔蛍光体層の形成〕
(蛍光体層塗布液の調製)
上記調製した各輝尽性蛍光体粒子300gと、ポリエステル樹脂(東洋紡社製バイロン530、固形分30%、溶剤:メチルエチルケトン/トルエン=5/5)52.63gとを、メチルエチルケトン0.13g、トルエン0.13g及びシクロヘキサノン41.84gの混合溶剤に添加、プロペラミキサーによって分散して蛍光体層塗布液を調製した。なお、蛍光体層塗布液中におけるシクロヘキサンの溶剤比率は、53質量%である。
【0130】
(蛍光体層の形成、蛍光体シートの作製)
上記調製した蛍光体層塗布液を、ドクターブレードを用いて、上記形成した下引層上に、膜厚が180μmとなるように塗布したのち、100℃で15分間乾燥させて蛍光体層を形成して、蛍光体シートを作製した。
【0131】
〔防湿性保護フィルムの作製〕
上記作製した蛍光体シートの蛍光体層塗設面側の保護フィルムとして下記構成(A)のものを使用した。
構成(A)
NY15///VMPET12///VMPET12///PET12///CPP20
NY:ナイロン
PET:ポリエチレンテレフタレート
CPP:キャステングポリプロピレン
VMPET:アルミナ蒸着PET(市販品:東洋メタライジング社製)
各樹脂フィルムの後ろに記載の数字は、樹脂層の膜厚(μm)を示す。上記「///」は、ドライラミネーション接着層で、該接着層の厚みが3.0μmであることを意味する。使用したドライラミネーション用の接着剤は、2液反応型のウレタン系接着剤を用いた。また、蛍光体シートの支持体裏面側の保護フィルムは、CPP30μm//アルミフィルム9μm//ポリエチレンテレフタレート188μmの構成のドライラミネートフィルムとした。また、この場合の「//」は接着剤層の厚みは1.5μmで2液反応型のウレタン系接着剤を使用した。
【0132】
〔放射線画像変換パネルの作製〕
前記作製した各蛍光体シートを、各々一辺が20cmの正方形に断裁した後、上記作製した防湿性保護フィルムを用いて、減圧下で周縁部をインパルスシーラーを用いて融着、封止して、各放射線像変換パネルを作製した。尚、融着部から蛍光体シート周縁部までの距離は1mmとなるように融着した。融着に使用したインパルスシーラーのヒーターは3mm幅のものを使用した。
【0133】
〈放射線画像変換パネルの評価〉
(輝度評価)
各放射線画像変換パネル6について、管電圧80kVpのX線を照射した後、パネルをHe−Neレーザー光(633nm)で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光して、その強度を測定して、これを輝度と定義し、比較例1の放射線画像像変換パネルの輝度を100とした、相対値で表示した。
【0134】
(鮮鋭性の評価)
鮮鋭性については、各放射線像変換パネルに鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線を蛍光体シート支持体の裏面側から照射した後、パネルをHe−Neレーザー光で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を、上記と同じ受光器で受光して電気信号に変換し、これをアナログ/デジタル変換して磁気テープに記録し、磁気テープをコンピューターで分析して磁気テープに記録されているX線像の1サイクル/mmにおける変調伝達関数(MTF)を調べ、これを放射線画像変換パネルの25箇所で測定を行い、その平均値(平均MTF値)を鮮鋭度と定義し、比較例1の鮮鋭度を100とした、相対値で表示した。
【0135】
上記の評価結果を表1に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
表1から、本発明の製造方法により、粒径分布の揃った酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物輝尽性蛍光体を生産性良く高い収率で得ることでができること及び当該方法により製造した輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換プレートは輝度が高く、鮮鋭性も良好であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の実施の形態に係る輝尽性蛍光体製造装置
【図2】本発明の実施の形態に係る輝尽性蛍光体製造装置の断面図
【符号の説明】
【0139】
11 焼成炉
12 熱源
13 炉心管回転支持装置
14 炉心管回転駆動装置
15 焼成炉上側部分待避位置
16 焼成炉下側部分待避位置
21 炉心管
22 炉心管内突起
23 輝尽性蛍光体前駆体充填部
31 ガス導入側蓋
32 ガス導入側ロータリージョイント
33 ガス導入配管
34 酸素混合ガス流量制御装置
35 窒素ガス流量制御装置
36 水素混合ガス流量制御装置
37 酸素混合ガスボンベ
38 窒素ガスボンベ
39 水素混合ガスボンベ
41 ガス排出側蓋
42 ガス排出側ロータリージョイント
43 ガス排出配管
44 ガストラップ
45 チオ硫酸ナトリウム水溶液
51 輝尽性蛍光体前駆体結晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法において、ハロゲン化物イオン溶液に少なくとも2種以上の無機物溶液を添加して調製された混合溶液からハロゲン化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶を析出させる工程と、当該結晶を析出させる混合溶液槽より溶媒を除去する工程を経ることによりハロゲン化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶を得ること及び下記1)〜4)の要件を満たす焼成炉により焼成することを特徴とするハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。
要件:
1)上記焼成炉が、石英ガラス製円筒の両端に、より径の小さな石英ガラス製円筒を接続した構造の炉心管を有し、当該炉心管の中央の径の大きな部分に輝尽性蛍光体前駆体を充填することができ、かつ当該炉心管を回転させながら炉心管内部を600〜900℃に加熱することができる。
2)上記炉心管が、当該炉心管内部の雰囲気ガスを置換することができ、少なくとも水素を含む雰囲気ガス、少なくとも酸素を含む雰囲気ガス、及び窒素ガスの3種類の雰囲気ガスを、各々の流量を制御して、当該炉心管内部に導入し排出できる機能を有する。
3)上記炉心管のうち上記雰囲気ガスが接触する表面部分の総表面積の80%以上を占める部分の部材が石英ガラス、又はフッ素樹脂により被覆された金属である。
4)上記焼成炉が炉心管外部に配置された熱源を有し、当該炉心管の冷却時には、当該熱源を当該炉心管から離れた位置に移動することができる。
【請求項2】
ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法において、前記無機物溶液を添加する工程より前記溶媒を除去する工程に長い時間をかけて、前記混合溶液からハロゲン化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶を析出させるとともに、併行して溶媒を除去することを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化物系輝尽性蛍光体が希土類賦活アルカリ土類金属フッ化臭化物輝尽性蛍光体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。
【請求項4】
前記ハロゲン化物系輝尽性蛍光体が下記一般式(EFS1)で表わされる酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属フッ化臭化物輝尽性蛍光体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。
一般式(EFS1)
Ba1-x2xFX1-yBry:aM1,bLn,cO
〔式中、M1:Li,Na,K,Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属、X:Cl又はIより選ばれる少なくとも一種のハロゲン元素、M2:Be,Mg,Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属、Ln:Ce,Pr,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,Dy,Ho,Nd,Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素、x,y,a,b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3,0≦y≦1.0、0≦a≦0.05,0<b≦0.2,0<c≦0.1を表す。〕
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法によって製造されたことを特徴とするハロゲン化物系輝尽性蛍光体。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項に記載のハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法によって製造されたハロゲン化物系輝尽性蛍光体を用いたことを特徴とする放射線画像変換パネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−45937(P2007−45937A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231815(P2005−231815)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】