説明

ハロゲン含有ビニルポリマーのための熱安定剤組成物

【課題】ハロゲン含有ビニルポリマー形態を、例えば劣化および変色から安定化させるために有用な安定剤組成物。
【解決手段】安定剤組成物は、実質的に金属を含まない過塩素酸塩;第一のアミン含有安定剤;および第二のアミン含有安定剤を含み;第一のおよび第二のアミン含有安定剤は、アミノアルコール、ジヒドロピリジン、アミノクロトネート、アミノウラシル、フェニルインドール、または前記アミン含有安定剤の1以上を含む混合物から選択され;第一のおよび第二のアミン含有安定剤は異なる種類の安定剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン含有ビニルポリマーのための安定剤組成物、安定化されたハロゲン含有ビニルポリマー組成物、およびこれから形成される物品、およびハロゲン含有ビニルポリマーを安定化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン含有ビニルポリマー、例えば、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、およびポリ(塩化ビニリデン)は、一般に様々な物品、例えば、パイプ、窓枠、サイディング(siding)、ビン、壁装材、および包装用フィルムを製造するために用いられている。ポリマー樹脂における色彩保持(color hold)、特に窓加工中、例えば初期加工処理の間、および任意のその後の再加工処理の間の色彩保持を改良するために、ハロゲン含有ビニルポリマーに安定剤を添加する試みが数多くなされてきた。現在使用されているほとんどの安定剤組成物は、金属、例えばスズ、カドミウムを含み、鉛さえも含有する。これらの安定剤組成物は初期加工処理の間、ならびに任意のその後の再加工処理の間、変色を最小限に抑えるために有効であり得るが、環境、費用、およびその他の理由から、スズ、カドミウム、および/または鉛を含まない安定剤組成物の開発に対する関心が高まってきている。
【0003】
様々なタイプのアミンを含む安定剤組成物が報告されてきた。例えば米国特許第3,288,744号は、ハロゲン含有ビニルポリマーを安定化させるために、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンは有用であるが、他のアルカノールアミンは意外にも劣るということを開示している。他の安定剤成分と組合わせたアルカノールアミンの使用は、例えば特開昭61−009451号に開示されており、この公報は、モノ−、ジ−、またはトリエタノールアミンの過塩素酸塩を含有する安定剤組成物を対象としている。国際公開第02/048249号は、アミノアルコール、金属過塩素酸塩、および任意に軟質および硬質PVC処方物に使用するための他の既知の安定剤を含む安定剤組成物を開示している。この出願は、この二成分組み合わせは、トリエタノールアミン過塩素酸塩の主張された熱および衝撃感受性を理由として特開昭61−009451号において教示されているトリエタノールアミンの過塩素酸塩にわたって好ましいことを示唆している。ドイツ特許出願公開第DE10118179A1号は、金属過塩素酸塩、あるタイプのエナミン、またはこの両方とともに、アミノアルコールを含有する安定剤組成物を開示している。エナミンの例には、アルファ、ベータ−不飽和ベータ−アミノカルボン酸、例えばベータクロトン酸エステルおよびアミノウラシルが含まれる。ジヒドロピリジンは、この開示の範囲内には含まれない。
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,288,744号明細書
【特許文献2】特開昭61−009451号公報
【特許文献3】国際公開第02/048249号パンフレット
【特許文献4】独国特許出願公開第10118179A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それにもかかわらず、ハロゲン含有ビニルポリマーのための改善された安定剤組成物、特にカドミウム、スズ、および/または鉛を含まず、かつ加工処理中および/または使用中、変色に対して改善された耐性をもたらす組成物が当該分野において依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の態様において、実質的に金属を含まない過塩素酸塩;第一のアミン含有安定剤;および第二のアミン含有安定剤を含む熱安定剤組成物であって;第一のおよび第二のアミン含有安定剤が、アミノアルコール、ジヒドロピリジン、アミノクロトネート、アミノウラシル、フェニルインドール、または前記アミン含有安定剤の1以上を含む混合物から選択され;第一のおよび第二のアミン含有安定剤が異なる種類の安定剤である安定剤組成物が提供される。
【0007】
第二の態様において、ハロゲン含有ビニルポリマーおよび上記安定剤組成物を含む安定化されたポリマー組成物が提供される。
【0008】
もう一つの態様において、上記の安定化されたポリマー組成物を含む物品が提供される。
【0009】
もう一つ別の態様において、上記の安定剤組成物をハロゲン含有ビニルポリマー組成物に添加することを含むポリマー組成物を安定化させる方法が提供される。
【0010】
意外にも、実質的に金属を含まない過塩素酸塩は、あるアミン含有安定剤と一緒に、PVCとブレンドされ、有用な安定化を示すことができることが見いだされた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
「phr」なる略語は、ハロゲン含有ビニルポリマー100重量部あたりの特定の成分の重量部を意味する。
【0012】
本明細書において用いられる場合、「アルキル」とは、特定の数の炭素原子を有する分岐鎖および直鎖飽和脂肪族炭化水素基の両方を包含することを意図される。従って、本明細書において用いられるC−Cアルキルなる用語は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を包含する。本明細書においてC−Cアルキルが別の基と組み合わせられる場合、例えば(フェニル)C−Cアルキルの場合、表示される基(この場合フェニル)は、一つの共有結合により直接結合するか(C)、または特定の数の炭素原子(この場合1〜約4個の炭素原子)を有するアルキル鎖により結合するかのいずれかである。アルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、およびsec−ペンチルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0013】
本明細書において用いられる「アルケニル」とは、鎖に沿った任意の安定な点に生じ得る1以上の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖いずれかの構造の炭化水素鎖を示す。アルケニル基の例としては、エテニルおよびプロペニルが挙げられる。
【0014】
「アルコキシ」とは、酸素ブリッジを介して結合した、表示された数の炭素原子を有する前記定義のアルキル基を表す。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、2−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、2−ペントキシ、3−ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、n−ヘキソキシ、2−ヘキソキシ、3−ヘキソキシ、および3−メチルペントキシが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0015】
本明細書において用いられる場合、「アリール」なる用語は、芳香環(単数または複数)において炭素のみを含有する芳香族基を意味する。典型的なアリール基は1〜3の独立環、縮合環、またはペンダント環および6〜18の環原子を含有し、環構成要素としてヘテロ原子を含まない。示される場合には、かかるアリール基は炭素または非炭素原子または基でさらに置換することができる。かかる置換は、N、O、およびSから独立して選択される1または2個のヘテロ原子を任意に含有して、5〜7員飽和環状基となる縮合(例えば、3,4−メチレンジオキシ−フェニル基を形成してもよい)を包含し得る。アリール基は、例えば、フェニル、1−ナフチルおよび2−ナフチルをはじめとするナフチル、ならびにビフェニルを包含する。
【0016】
アリールアルキルなる用語において、アリールおよびアルキルは前記定義の通りであり、結合点はアルキル基上である。この用語は、ベンジル、フェニルエチル、およびピペロニルを包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0017】
「アルキルチオ」なる用語は、硫黄結合により結合した前記定義のアルキル基、すなわち、式、アルキル−S−、の基を示す。例としては、エチルチオおよびペンチルチオが挙げられる。
【0018】
本明細書において用いられる場合、アルキルアミノなる用語は、第二のまたは第三アルキルアミノ基を含み、ここにおいて、アルキル基は前記定義の通りであり、表示された数の炭素原子を有する。アルキルアミノ基の結合点は、窒素上である。モノ−およびジ−アルキルアミノ基の例としては、エチルアミノ、ジメチルアミノ、およびメチル−プロピル−アミノが挙げられる。
【0019】
ハロゲン含有ビニルポリマーのために有効な安定剤組成物は、実質的に金属を含まない過塩素酸塩;第一のアミン含有安定剤;および第二のアミン含有安定剤を含み;ここにおいて、第一のおよび第二のアミン含有安定剤は、アミノアルコール、ジヒドロピリジン、アミノクロトネート、アミノウラシル、フェニルインドール、または前記アミン含有安定剤の1以上を含む混合物から選択され;第一のおよび第二のアミン含有安定剤は異なる種類の安定剤である。例えば、第一のアミン含有安定剤がジヒドロピリジンであるならば、第二のアミン含有安定剤は、アミノアルコール、アミノクロトネート、アミノウラシル、フェニルインドール、または前記安定剤の1以上を含む混合物である。
【0020】
本明細書において用いられる場合、「実質的に金属を含まない過塩素酸塩」とは、式X(ClO)(式中、Xは水素または1以上のカウンターイオンであり得るが、金属カウンターイオンではない)の化合物を意味する。カウンターイオンは、例えばアミン含有安定剤を含み得る。
【0021】
金属を含まないとは、過塩素酸塩が、例えばLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、Zn、Al、LaおよびCeを含まないことを意味する。実質的に金属を含まないとは、金属を含まない過塩素酸塩中に存在する唯一の金属が不純物であることを意味する。実質的に金属を含まない過塩素酸塩は、過塩素酸塩の合計重量基準で約1重量%未満の金属を含む。
【0022】
安定剤組成物も実質的に金属を含んでいないものであり得る。例えば安定剤組成物の合計重量基準で0.5重量%未満の金属不純物を有する。さらに詳細には、安定剤組成物は、安定剤組成物の合計重量基準で0.1重量%未満の金属不純物を含み得る。実質的に金属を含まない過塩素酸塩は、過塩素酸水素、過塩素酸水素の水和形態、過塩素酸塩、第一のアミン含有安定剤を含む過塩素酸塩、第二のアミン含有安定剤を含む過塩素酸塩、または前記過塩素酸塩の1以上を含む組み合わせの形態において安定剤組成物に提供され得る。ただし、過塩素酸塩は前記のように実質的に金属を含まないものとする。過塩素酸塩が過塩素酸水素の形態において添加される場合、第一のおよび第二のアミン含有化合物は、アミンまたは他のカウンターイオンとの塩として添加され得る。当然のことながら、組み合わせによって、過塩素酸塩はある程度解離する場合もあれば、解離しない場合もあり、組成物中に存在する他のカウンターイオンと会合するようになる場合もあれば、会合しない場合もある。従って、本明細書において用いられる場合、「実質的に金属を含まない過塩素酸塩、第一のアミン含有安定剤、および第二のアミン含有安定剤を含む熱安定剤組成物」は、任意の過塩素酸塩含有化合物、任意の第一のアミン含有安定剤化合物、および任意の第二のアミン含有安定剤化合物の任意の組み合わせにより形成される組成物を包含することを意味する(無論、過塩素酸塩は前記のように実質的に金属を含まないとする)。
【0023】
アミン含有安定剤の、金属を含まない過塩素酸塩は、例えば、アミン含有安定剤を過塩素酸の水性溶液に添加することにより形成することができる。例えば、過塩素酸とアミン含有安定剤のモル比が1:1である場合、中性塩が形成される。過塩素酸塩と比較して過剰のアミン含有安定剤が添加される場合に形成される塩をはじめとする塩基性塩を得ることもできる。例えば、0.6から1モル未満の過塩素酸塩を1モルのアミン含有安定剤と反応させることができる。さらに、アミン含有安定剤と比較し過剰の過塩素酸を含む酸塩を得ることもできる。例えば、1より多く、1.2モルまでの過塩素酸塩を1モルのアミン含有安定剤と共に使用することができる。
【0024】
第一のおよび第二のアミン含有安定剤に好適なジヒドロピリジンは、下記式(1)を有するものである。
【0025】
【化1】

【0026】
式中、各R12は独立して、C−C36アルキル基であり、好ましくはメチルまたはエチル基である。各R11は独立して、水素、−OR14、−NHR14、または−NR1415であり、ここにおいてR14およびR15はそれぞれ独立してC−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、またはC−C20アルケニル基である。前記のそれぞれは、組成物の使用に悪影響を及ぼさない基で置換されていても、置換されていなくてもよい。好ましい置換基はアルコキシ基である。一具体例において、R11は−OR14であり、ここにおいて、R14は、C−Cアルキル基である。各R13は独立して水素、酸素、ハロゲン、またはC−C36アルキル、アルケニル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、炭素含有基は組成物の使用に悪影響を及ぼさない基で置換されていても、置換されていなくてもよい。R19は水素、C−C20アルキル基、C−C36アリール基、またはC−C20アルケニル基である。前記のそれぞれは、組成物の使用に悪影響を及ぼさない基で置換されていても、置換されていなくてもよい。一具体例において、R19は水素である。好適なジヒドロピリジンとしては、例えば、3,5−ビス(エトキシカルボニル)−2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジンが挙げられる。
【0027】
代替として、またはジヒドロピリジンに加えて、下記式(2)のポリジヒドロピリジンを使用することができる。
【0028】
【化2】

【0029】
式中、Aは、C6−18アリール、C2−22アルケニル、またはC1−22アルキル基であり、それぞれが、非置換であるかまたはC−C18アルコキシ、C−C18アルキルチオ、ヒドロキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、ハロゲン、フェニルまたはナフチル基で置換されていてもよい。各R12は独立して、C−C36アルキル基であり、好ましくはメチルまたはエチル基である。aおよびbは0〜20の数であり、cは0または1であり、dは1〜6の数である。ただし、d(a+b+c)>1であり、(a+b)>0であるとする。R17およびR18はそれぞれ独立してメチレン、フェニル、または(−C2p−X−)2p−(式中、pは2〜18の数であり、tは0〜10の数であり、Xは酸素または硫黄である)型のアルキレン基である。R19は水素、C−C20アルキル基、C−C36アリール基、またはC−C20アルケニル基である。前記のそれぞれは、組成物の使用に悪影響を及ぼさない基で置換されていても、置換されていなくてもよい。一具体例において、R19は水素である。好適なポリジヒドロピリジンは、例えば、チオジエチレン−ビス[5−メトキシカルボニル−2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキシレート]であり得る。
【0030】
過塩素酸塩またはアミン含有安定剤の形態において提供される場合、ジヒドロピリジンおよび/またはポリジヒドロピリジンの有効量は、樹脂100重量部あたり0.001〜10重量部(phr)である。この範囲内で、0.005phrより多い量、または0.01phrより多い量を用いることができ、5phrより少ない量、または3phrより少ない量も用いることができる。
【0031】
第一のおよび第二のアミン含有安定剤に好適なアミノアルコールは、下記式3に示す構造を有する。
【0032】
【化3】

【0033】
式中、Yは置換または非置換C−C36アルキル、アルケニル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基である。一具体例において、YはC−C12アルキルまたはアリール基である。もう一つ別の具体例において、Yは少なくとも1つのヒドロキシ基を含むC−Cアルキル基である。
【0034】
式(3)におけるRおよびR10はそれぞれ独立して、水素あるいは置換もしくは非置換C−C36アルキル、アルケニル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基である。一具体例において、RおよびR10はそれぞれ独立して、水素であるか、またはC−C12アルキルもしくはアリール基であるか、または、水素もしくは少なくとも1個のヒドロキシ基を含むC−Cアルキル基である。Y、RまたはR10のうちの2つは一緒になって、置換または非置換C−C36炭素環またはヘテロ原子が酸素または硫黄である複素環式基を形成することができる。
【0035】
Y、R、およびR10に好適な置換基は、熱安定剤組成物の使用に悪影響を及ぼさないものであり、例えば、第一のアミン、カルボン酸、カルボニル基、ハロゲン、酸素もしくは硫黄を環中に含むC−C18複素環、またはアルキル、アルケニル、アリール、アラルキルもしくはアリール基で置換されている第二のアミン、第三アミン、カルボン酸エステル、アミド、もしくはエーテルを包含するが、窒素および炭素のみを環形成原子として含有する複素環は除かれる。
【0036】
Y、R、およびR10は、2以上のヒドロキシ基を有するアミノアルコールが得られるように置換することができる。2以上のヒドロキシ基は、Y、R、およびR10の1つ、またはY、R、およびR10の任意の組み合わせに存在することができる。式(3)の範囲内の好適なアミノアルコールとしては、例えば、トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン、トリス(2−ヒドロキシ−1−プロピル)アミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−ヒドロキシ−1−プロピルアミン、N−(n−ブチル)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ビス(n−ブチル)−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−(3−n−ブチルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロピル)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、およびN−(1,3−ジヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−プロピル)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミンなどが挙げられる。アミノアルコールの混合物を使用できる。式(3)の範囲内の好適なアミノアルコールとしては、例えばトリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N−メチルグルカミン、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、および1以上の前記アミノアルコールを含む混合物が挙げられる。
【0037】
過塩素酸塩の形態で提供される場合、アミノアルコール塩は0.001〜5phrの量で使用され得る。この範囲内で、0.01phrより多い量、または0.1phrより多い量を使用することができる。また、この範囲内で、4phr未満、または3phr未満の量も使用することができる。アミン含有安定剤の形態で使用される場合、アミノアルコールは0.001〜10phrの量で使用できる。この範囲内で、0.01phrより多い量、または0.1phrより多い量を使用できる。また、この範囲内で、6phr未満、または3phr未満の量も使用できる。
【0038】
第一のおよび第二のアミン含有安定剤に好適なアミノクロトネートは、下記式4に示される一般構造を有する。
【0039】
【化4】

【0040】
式中、nは1〜100,000の数である。R、R、RおよびRはそれぞれ互いに独立して、水素;任意に置換されていてもよい直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和C−C44脂肪族アルキル;任意に置換されていてもよい飽和または不飽和C−C44シクロアルキル;任意に置換されていてもよいC−C44アリール;または任意に置換されていてもよいC−C44アラルキルを表す。一具体例において、Rは任意に置換されていてもよいC−C44アシルを表す。もう一つ別の具体例において、RおよびRは芳香族または複素環系に結合している。Rは水素;任意に置換されていてもよい直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和C−C44脂肪族アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、またはアルキルアミノ;任意に置換されていてもよい飽和または不飽和C−C44シクロアルキル、シクロアルキレン、オキシシクロアルキル、オキシシクロアルキレン、メルカプトシクロアルキル、メルカプトシクロアルキレン、アミノシクロアルキルまたはアミノシクロアルキレン;任意に置換されていてもよいC−C44アリールまたはアリーレン基;あるいは1〜20個の酸素および/または硫黄原子を含有するエーテルまたはチオエーテル基、あるいはO、S、NH、NRもしくはCHC(O)により括弧内の構造要素と結合しているポリマーである。Rは、任意に置換されていてもよい飽和または不飽和C−C24複素環式環系が全体として形成されるようにRと結合され得る。
【0041】
一具体例において、α,β−不飽和β−アミノカルボン酸、特にβ−アミノクロトン酸ベースの化合物が一般式4の化合物として使用される。対応するアミノカルボン酸の一価または多価アルコールまたはメルカプタンとのエステルまたはチオエステル(ここにおいて、Xは常にOまたはSを表す)を使用することができる。
【0042】
がアルコールまたはメルカプタンである場合には、Rは、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、イソオクタノール、イソノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、チオ−ジエタノール、トリメチロールプロパン、グリセロール、トリス−(2−ヒドロキシメチル)イソシアヌレート、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジグリセロール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ジペンタエリスリトール、ならびにこれらのアルコールの対応するメルカプト誘導体から形成され得る。
【0043】
一具体例において、RはC−C直鎖アルキル基であり;Rは水素であり;Rは直鎖または分岐鎖の飽和1〜6価C−C12アルキルまたはアルケニル基、または直鎖、分岐鎖または環状2〜6価エーテルアルコール基、またはチオエーテルアルコールである。
【0044】
一般式4による好適な化合物としては、例えば、β−アミノクロトン酸ステアリルエステル、1,4−ブタンジオールジ(β−アミノクロトン酸)エステル、チオジエタノール−β−アミノクロトン酸エステル、トリメチロールプロパントリ−β−アミノクロトン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラβ−アミノクロトン酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサ−β−アミノクロトン酸エステルなど、並びに前記アミノクロトネートの1以上を含む混合物が挙げられる。
【0045】
過塩素酸塩またはアミン含有安定剤の形態において提供される場合、アミノクロトネートは0.001〜10phrの量で使用され得る。この範囲内で、0.01phrより多い量、または0.1phr以上より多い量が使用され得る。また、この範囲内で、5phr未満、または3phr未満の量も使用され得る。
【0046】
第一のおよび第二のアミン含有安定剤に好適なウラシルは、下記式5に示す一般構造を有する。
【0047】
【化5】

【0048】
式中、XはOまたはSであり;RおよびRはそれぞれ独立して、水素あるいは置換または非置換、直鎖または分岐鎖C−C12アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル)、C−Cアルケニル、C−Cシクロアルキル、またはC−Cアラルキルであり;Rは水素あるいは置換または非置換、直鎖または分岐鎖C−C44アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル)、C−C44アルケニル、C−C44シクロアルキル、またはC−C44アラルキルである。
【0049】
過塩素酸塩またはアミン含有安定剤の形態において提供される場合、アミノウラシルは、0.001〜10phrの量で使用され得る。この範囲内で、0.01phrより多い量、または0.1phrより多い量が使用され得る。また、この範囲内で、6phr未満、または3phr未満の量も使用され得る。
【0050】
第一のおよび第二のアミン含有安定剤に好適フェニルインドールは下記式6に示す一般構造を有する。
【0051】
【化6】

【0052】
式中、R20は水素、あるいは直鎖または分岐鎖C−C20アルキルまたはシクロアルキル鎖である。芳香核上のR20の位置はオルト、メタまたはパラであってよい。好適なフェニルインドールは2−フェニルインドールである。
【0053】
過塩素酸塩またはアミン含有安定剤の形態において提供される場合、フェニルインドールは、0.001〜12phrの量で使用され得る。この範囲内で、0.01phrより多い量、または0.1phrより多い量が使用され得る。また、この範囲内で、8phr未満、または4phr未満の量も使用され得る。
【0054】
好適な、アミン含有安定剤の金属を含まない過塩素酸塩としては、例えば、過塩素酸トリエタノールアンモニウム(過塩素酸とトリエタノールアミンの反応から誘導することができる)、過塩素酸ジヒドロピリジニウム(過塩素酸とジヒドロピリジンの反応から誘導することができる)、および前記安定剤の1以上を含む混合物が挙げられる。これらの安定剤を、それぞれ式7および8により以下に示す。
【0055】
【化7】

【0056】
一具体例において、安定剤組成物は、アミノアルコールの過塩素酸塩、およびジヒドロピリジンを含む。もう一つ別の具体例において、安定剤組成物はジヒドロピリジンの過塩素酸塩、およびアミノアルコールを含む。
【0057】
任意に、組成物はさらなる補助安定剤、たとえば、エポキシ化合物、ポリオール、立体的障害アミン、ホスファイト、メルカプトカルボン酸エステル、ヒドロタルサイト、ゼオライト、ドーソナイト、有機亜鉛化合物など、および前記補助安定剤の1以上を含む混合物を含むことができる。好適なエポキシ化合物としては、例えば、エポキシ化油、例えば大豆油、ラード油、オリーブ油、アマニ油、ピーナッツ油、キリ油、綿実油、および前記エポキシ化合物の1以上を含む混合物が挙げられる。他の好適なエポキシ化合物としては、例えば、エピクロロヒドリン/ビスフェノールA樹脂、ブトキシプロピレンオキシド、グリシジルエポキシステアレート、エポキシ化α−オレフィン、エポキシ化グリシジルソイエート、およびエポキシ化ブチルトルエート;有機カルボン酸のグリシジルエステル、レゾルシノールのグリシジルエーテル、ヒドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、グリセリン、ペンタエリスリトール、およびソルビトール;アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、シクロヘキサンオキシド、4−(2,3−エポキシプロポキシ)アセトフェノン、メシチルオキシドエポキシド、2−エチル−3−プロピルグリシドアミン、および前記エポキシ化合物の1以上を含む混合物が挙げられる。エポキシは、30phrまでの量で存在し得る。
【0058】
好適なポリオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ビストリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、イノサイト、ポリビニルアルコール、ソルビトール、マンニトール、ラクトース、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、テトラメチロールシクロヘキサノール、テトラメチロールシクロピラノール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、または前記の少なくとも1つを含む混合物が挙げられる。好ましいポリオールとしては、例えば、ソルビトールおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。ポリオールは、例えば0.01〜20phr、または0.1〜10phrの量で使用され得る。
【0059】
有用な立体障害アミンとしては、例えば、モノマー、オリゴマー、またはポリマー系2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物が挙げられる。ピペリジン部分の窒素は、例えば、水素、C−C12アルキル、C−Cアルケニル、またはC−C12アラルキルで置換されていてもよい。ピペリジン部分のC−4炭素は、例えば、水素または酸素または窒素含有基で置換されていてもよい。好適な2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル−ベータ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)スクシネート、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イルアセテート、トリメリット酸トリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステルなどが挙げられる。ピペリジンは、例えば0.01〜1phr、または0.1〜0.5phrの量で使用できる。
【0060】
好適なホスファイトとしては、例えば、トリアルキルホスファイト、例えばトリオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリ(テトラデシル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、またはトリオレイルホスファイト;トリアリールホスファイト、例えばトリフェニルホスファイト、トリクレシルホスファイト、またはトリス−p−ノニルフェニルホスファイト;アルキルジアリールホスファイト、例えばフェニルジデシルホスファイトまたは(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ジドデシルホスファイト;ジアルキルアリールホスファイト;チオホスファイト、例えばトリチオヘキシルホスファイト、トリチオオクチルホスファイト、トリチオラウリルホスファイト、またはトリチオベンジルホスファイト;または前記ホスファイトの任意の1以上を含む混合物が挙げられる。ホスファイトは、例えば0.01〜10phr、または0.05〜5phr、または0.1〜3phrの量で使用できる。
【0061】
好適なメルカプトカルボン酸エステルとしては、例えば、2−メルカプトエチルエステル、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト安息香酸、またはチオ乳酸のエステルが挙げられる。メルカプトカルボン酸エステルは、例えば0.01〜10phr、または0.05〜5phr、または0.1〜3phrの量において用いることができる。
【0062】
好適なヒドロタルサイトとしては、例えば、式Al6MgOCO12HO、Mg4,5Al(OH)13CO 5HO、4MgOAlCO9HO、4MgOAlCO6HO、ZnO3MgOAlCO8−9HO、またはZnO3MgO AlCO5−6HOを有するものが挙げられる。好適なゼオライト(アルカリおよびアルカリ土類アルミノシリケート)としては、例えば、ゼオライトA、ソーダライト、ゼオライトY、ゼオライトX、ゼオライトP、ゼオライトMAP、ゼオライトK−F、カリウムオフレタイト、ゼオライトT等、および上記ゼオライトの少なくとも1つを含む混合物が挙げられる。ヒドロタルサイトおよび/またはゼオライトは、例えば、0.1〜20phr、有利には少なくとも0.1phrの量において用いることができる。ヒドロタルサイトおよび/またはゼオライトは10phr未満、または5phr未満の量において用いることもできる。
【0063】
金属ベースの安定剤は、スズを含まない金属塩および鉛を含まない金属塩であると定義される。金属塩は、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、ニッケル、チタン、アンチモン、およびアルミニウムをはじめとする金属の酸化物、水酸化物、硫化物、硫酸塩、塩化物、臭化物、フッ化物、ヨウ化物、リン酸塩、フェナート、過塩素酸塩、カルボン酸塩、および炭酸塩を包含する。例えば、フェノール、芳香族カルボン酸、脂肪酸、エポキシ化脂肪酸、シュウ酸、酢酸、および炭酸の塩が使用され得る。ステアリン酸カルシウム、2−エチルヘキサン酸カルシウム、オクタン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、ジ(ノニルフェノール酸)バリウム、ステアリン酸マグネシウム、オクタン酸(またはカプリル酸)亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、およびIおよびII族金属せっけんが一般にステアリン酸アルミニウムとともに好適な塩の例である。金属塩の組み合わせも用いられ得る。金属ベースの安定剤は、ハロゲン含有ビニルポリマーの重量の0.01重量%〜0.5重量%の量で使用され得る。
【0064】
本明細書で使用されるハロゲン含有ビニルポリマーなる用語は、ハロゲンが炭素原子に直接結合しているハロゲン含有ポリマーを意味する。好適なハロゲン含有ポリマーとしては、例えば、14〜75重量%、例えば、27重量%の塩素を有する塩素化ポリエチレン、塩素化天然および合成ゴム、塩酸ゴム、塩素化ポリスチレン、塩素化ポリ(塩化ビニリデン)、塩素化ポリ(塩化ビニル)、ポリ(臭化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、他の塩化ビニルポリマー、ならびに上記のポリマーの1以上を含む混合物が挙げられる。ポリ塩化ビニル(PVC)として知られている塩化ビニルポリマーは、塩化ビニルモノマー単独または好ましくは全モノマー重量基準で少なくとも70重量%の塩化ビニルを含むモノマーの混合物から製造される。好適なコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、塩化ビニリデン、トリクロロエチレン、1−フルオロ−2−クロロエチレン、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アルファ−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、スチレン、ビニルケトン、例えばビニルメチルケトンおよびビニルフェニルケトン、アクリロニトリル、クロロアクリロニトリル、二酢酸アリリデン、二酢酸クロロアリリデン、ならびにビニルエーテル、例えばビニルエチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、1モルのアクロレインと1モルのエチレングリコールジビニルエーテルとの反応によって調製されるビニルエーテル、ならびに上記のコモノマーの1以上を含む混合物が挙げられる。好適なハロゲン含有ビニルコポリマーとしては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル(87:13)、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸(86:13:1)、塩化ビニル−塩化ビニリデン(95:5);塩化ビニル−フマル酸ジエチル(95:5)、塩化ビニル−アクリル酸2−エチルヘキシル(80:20)、および上記のコポリマーの1以上を含む混合物が挙げられる。
【0065】
硬質ハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、可塑剤を含有しないものである。半硬質ハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、ハロゲン含有ビニルポリマー100重量部あたり、1〜25重量部の可塑剤を含有する。軟質ハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、ハロゲン含有ビニルポリマー100重量部あたり、25〜100重量部の可塑剤を含有する。好適な可塑剤としては、例えば、その中に8〜12個の炭素原子を有する1〜3個のアルキル基が存在するポリ酸のアルキルエステルが挙げられる。アルキルエステルの好適なアルキル基としては、例えば、n−オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、および上記のアルキル基の1以上を含む混合物が挙げられる。アルキルエステルのための好適なポリ酸としては、例えば、フタル酸、トリメリット酸、安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、ホスフェートなどが挙げられる。ポリマー性可塑剤も好適である。
【0066】
任意に、ハロゲン含有ポリマー組成物は、他の一般的な添加剤、例えば、酸化防止剤、潤滑剤、充填剤、顔料、耐衝撃性改良剤、加工助剤、発泡剤、染料、紫外線吸収剤、圧縮剤(densifying agents)、殺生物剤、および上記の添加剤の1以上を含む混合物を含むことができる。上記の添加剤の好適な量は、組成物の所望の最終特性および最終用途に応じて、当業者により容易に決定される。一般的に、それぞれの添加剤は、ハロゲン含有ビニルポリマーの合計重量基準で、0.01〜10重量%、特に0.1〜5重量%の量で存在する。
【0067】
好適な酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−4−ドデシルオキシフェノール、p−アミノフェノール、N−ラウリルオキシ−p−アミノフェノール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス[o−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]スルフィド、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、3−ヒドロキシ−4−(フェニルカルボニル)フェノキシ酢酸のn−ドデシルエステル、t−ブチルフェノール、および上記の酸化防止剤の1以上を含む混合物が挙げられる。
【0068】
好適な潤滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、脂肪酸の塩、低分子量ポリエチレン(即ち、ポリエチレンワックス)、脂肪酸アミド(即ち、ラウリミドおよびステアルアミド)、ビスアミド(即ち、デカメチレン、ビスアミド)、脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸グリセリル、アマニ油、ヤシ油、オレイン酸デシル、トウモロコシ油、綿実油など)、および上記の潤滑剤の1以上を含む混合物が挙げられる。好適な充填剤としては、例えば、焼成クレー、炭酸カルシウム、タルク、および上記の充填剤の1以上を含む混合物が挙げられる。好適な顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、および上記の顔料の1以上を含む混合物が挙げられる。
【0069】
一般的に、上記した熱安定剤組成物は、アミン含有安定剤の1以上の実質的に金属を含まない過塩素酸塩、および1以上のアミン含有安定剤の少なくとも1種を、結果として熱安定性において有益な改善をもたらすために有効な量で提供するように処方された一成分系(one−part)混合物として提供される。他の任意の添加剤も、この一成分系混合物中に存在し得るので、それぞれの成分の具体的な量は、一成分系混合物の全重量基準で、0.1〜99.9重量パーセント、特に1.0〜99.0重量パーセントで変えることができる。熱安定性における有益な改善をもたらすために有効な具体的な量は、当業者によって容易に決定される。
【0070】
ハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、低剪断または高剪断下でブレンドすることによって調製することができる。同様に、熱安定剤組成物は、ハロゲン含有ビニルポリマー組成物中に、適切なミルまたはミキサー内で、その成分およびポリマーを混合することにより、またはポリマー全体への安定剤の均一な分布をもたらす他の方法により組み入れることができる。相溶性および物理的状態(即ち、液体または固体)に応じて、所望の性能特性を有する均一な安定化されたポリマー組成物を形成するために、ブレンドの成分を加熱することを必要とする場合がある。
【0071】
安定化されたハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、物品を造形するための種々の技術、例えば、成形、押出、および射出成形を用いて、種々の硬質物品、例えば、家のサイディング、窓枠およびパイプを成形するために使用することができる。
【0072】
一具体例において、第一のアミン含有安定剤の実質的に金属を含まない過塩素酸塩と第二のアミン含有安定剤とを含む有益な組み合わせは、向上された早期着色、すなわち、初期加工処理中長時間持続する白色度を提供する。これは、ハロゲン含有ビニルポリマーからのパイプの製造において特に重要である。あるいは、第一のアミン含有安定剤の実質的に金属を含まない過塩素酸塩と第二のアミン含有安定剤とを含む有益な組み合わせは、向上された長期色彩安定性を、好ましくは向上された早期着色とともに提供しうる。
【0073】
本発明をさらに、次の実施例により説明する。ここにおいて、熱安定性試験のためのPVC組成物を、高剪断下で、100重量部のPVC樹脂、顔料(0.2phr)、離型剤(0.5〜2phr)、補助安定剤(1〜10phrのエポキシ化大豆油)、および潤滑剤(0.2〜2.0phr)を、表に示す安定剤組成物と一緒に混合することによって調製した。次いで、混合された組成物を、ツーロールミル内で390°F(199℃)で加熱し、表示した時間間隔で試料を取り出し、チップに形成した。それぞれのチップの色変化(dEによって反映される)および黄色度(YI)を、ハンターラブ(Hunter Labs)(L,a,b)比色計を使用して測定した。
【0074】
実施例1〜3は、3,5−ビス(エトキシカルボニル)−2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン(DHP)と過塩素酸トリエタノールアンモニウム(すなわち、トリエタノールアミンの実質的に金属を含まない過塩素酸塩)の組み合わせを用いて得られる有益な効果を示す。過塩素酸トリエタノールアンモニウムは3.7%(重量)溶液として添加される。
【0075】
【表1】

【0076】
表1に示すように、過塩素酸トリエタノールアンモニウムとDHPの二成分組み合わせは、トリエタノールアミン、過塩素酸ナトリウムおよびDHPの三成分組み合わせと同様の安定化をもたらす。従って、アミン含有安定剤の金属を含まない過塩素酸塩は、過塩素酸金属塩およびアミン含有安定剤の組み合わせと置換できる。
【0077】
実施例4〜8は、DHPまたはアミノクロトネートおよび過塩素酸トリエタノールアンモニウムの組み合わせを使用して得られる有益な効果を示す。
【0078】
【表2】

【0079】
表2に示すように、1,4−ブタンジオールビス(3−アミノクロトネート)および過塩素酸トリエタノールアンモニウムの二成分組み合わせ(実施例8)は、1,4−ブタンジオールビス(3−アミノクロトネート)、過塩素酸ナトリウムおよびトリエタノールアミンの三成分組み合わせ(実施例7)と類似した安定化を示す。DHPおよび1,4−ブタンジオールビス(3−アミノクロトネート)の過塩素酸トリエタノールアンモニウムとの組み合わせはどちらも好適な安定化をもたらす。
【0080】
本明細書において開示される全ての範囲は境界値を含み、組み合わせ可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に金属を含まない過塩素酸塩;第一のアミン含有安定剤;および第二のアミン含有安定剤を含む安定剤組成物であって;第一のおよび第二のアミン含有安定剤が、アミノアルコール、ジヒドロピリジン、アミノクロトネート、アミノウラシル、フェニルインドール、または前記アミン含有安定剤の1以上を含む混合物から選択され;第一のおよび第二のアミン含有安定剤が異なる種類の安定剤である安定剤組成物。
【請求項2】
第一のアミン含有安定剤が下記式3のアミノアルコールである請求項1記載の安定剤組成物。
【化1】

(式中、Yは置換または非置換C−C36アルキル、C−C36アリール、C−C36アルカリール、またはC−C36アラルキル基であり;RおよびR10はそれぞれ独立して水素、あるいは置換または非置換C−C36アルキル、C−C36アリール、C−C36アルカリール、またはC−C36アラルキル基であり、さらにY、R、またはR10のうちの2つが一緒になって、置換または非置換C−C36炭素環式あるいは酸素または硫黄ヘテロ原子を環中に有する複素環式基を形成することができ;さらに、Y、R、およびR10は2以上のヒドロキシ基を有するアミノアルコールを生じるように置換される。)
【請求項3】
第二のアミン含有安定剤がジヒドロピリジン、ポリジヒドロピリジン、またはその混合物であり、ジヒドロピリジンが下記式(1)を有するものであり、
【化2】

(式中、各R12は独立して、C−C36アルキル基であり、各R11は独立して、水素、−OR14、−NHR14、または−NR1415であり、各R14およびR15は独立して置換または非置換C−C20アルキルまたはC−C20アルケニル基であり、各R13は独立して水素、酸素、ハロゲン、あるいは置換もしくは非置換C−C36アルキル、アルケニル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、R19は水素、置換もしくは非置換C−C20アルキル、C−C36アリール、またはC−C36アルカリール基である。)
ポリジヒドロピリジンが下記式(2)を有するものである、請求項1または2記載の安定剤組成物。
【化3】

(式中、Aは、非置換であるかまたはC−C18アルコキシ、C−C18アルキルチオ、ヒドロキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、ハロゲン、フェニルまたはナフチル基で置換されているC6−18アリールまたはC1−22アルキル基であり、各R12は独立して、C−C36アルキル基であり、aおよびbは0〜20の数であり、cは0または1であり、dは1〜6の数である。ただし、d(a+b+c)>1であり、(a+b)>0であるとする;R17およびR18はそれぞれ独立してメチレン、フェニル、または(−C2p−X−)2p−(式中、pは2〜18の数であり、tは0〜10の数であり、Xは酸素または硫黄である)型のアルキレン基であり、R19は水素、置換もしくは非置換C−C20アルキル、C−C36アリールまたはC−C36アルカリール基である)
【請求項4】
さらにポリオール補助安定剤を含む、請求項1、2、または3記載の安定剤組成物。
【請求項5】
実質的に金属を含まない過塩素酸塩が、過塩素酸水素、過塩素酸塩、第一のアミン含有安定剤を含む過塩素酸塩、第二のアミン含有安定剤を含む過塩素酸塩、または1以上の前記過塩素酸塩を含む組み合わせの形態で安定剤組成物に提供される請求項1、2、3、または4記載の安定剤組成物。
【請求項6】
ハロゲン含有ビニルポリマーを安定化する方法であって、ハロゲン含有ビニルポリマー組成物に、実質的に金属を含まない過塩素酸塩;第一のアミン含有安定剤;および第二のアミン含有安定剤を含む安定剤組成物を添加することを含み;第一のおよび第二のアミン含有安定剤が、アミノアルコール、ジヒドロピリジン、アミノクロトネート、アミノウラシル、フェニルインドール、または1以上の前記アミン含有安定剤を含む混合物から選択され;第一のおよび第二のアミン含有安定剤が異なるタイプの安定剤である方法。
【請求項7】
ハロゲン含有ビニルポリマーと、安定剤組成物とを含むポリマー組成物であって、安定剤組成物が、実質的に金属を含まない過塩素酸塩;第一のアミン含有安定剤;および第二のアミン含有安定剤を含み;第一のおよび第二のアミン含有安定剤が、アミノアルコール、ジヒドロピリジン、アミノクロトネート、アミノウラシル、フェニルインドール、または前記アミン含有安定剤の1以上を含む混合物から選択され;第一のおよび第二のアミン含有安定剤が異なるタイプの安定剤である、ポリマー組成物。
【請求項8】
過塩素酸水素、過塩素酸塩、第一のアミン含有安定剤を含む過塩素酸塩、第二のアミン含有安定剤を含む過塩素酸塩、または1以上の前記過塩素酸塩を含む組み合わせ、の形態で安定剤組成物に実質的に金属を含まない過塩素酸塩が提供される、請求項7記載の安定化されたポリマー組成物。
【請求項9】
第一のアミン含有安定剤の金属を含まない過塩素酸塩0.001〜10phrと、第二のアミン含有安定剤0.001〜10phrとを含む請求項7記載の安定化されたポリマー組成物。
【請求項10】
請求項7、8、または9記載の安定化されたポリマー組成物を含む物品。

【公開番号】特開2006−104474(P2006−104474A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−293205(P2005−293205)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】