説明

ハロゲン含有ビニルポリマーのための熱安定剤組成物

【課題】ハロゲン含有ビニルポリマーのための熱安定剤組成物を提供する。
【解決手段】ハロゲン含有ビニルポリマー形態を、例えば劣化および変色から安定化させるために相乗的安定剤組成物が使用される。安定剤組成物は、芳香族アミンおよび少なくとも1種の追加の補助安定剤を含む。補助安定剤は、ジヒドロピリジン、ポリジヒドロピリジン、アミノアルコール、過塩素酸塩、ポリオール、立体障害アミン、ヒドロタルサイト、メルカプタン含有有機化合物、または前記補助安定剤の1以上を含む混合物である。芳香族アミンを含むハロゲン含有ビニルポリマー組成物、およびポリマー組成物を含む物品も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン含有ビニルポリマーのための安定剤組成物、安定化されたハロゲン含有ビニルポリマー組成物、およびこれから形成される物品、およびハロゲン含有ビニルポリマーを安定化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン含有ビニルポリマー、例えば、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、およびポリ(塩化ビニリデン)は、一般に様々な物品、例えば、パイプ、窓枠、サイディング(siding)、ビン、壁装材、および包装用フィルムを製造するために用いられている。ポリマー樹脂における色彩保持、特に窓の加工中、例えば、初期加工中および任意のその後の再加工中の色彩保持を改善するために、ハロゲン含有ビニルポリマーに安定剤を添加する多数の試みがなされてきた。スズ、カドミウム、および/または鉛を含む安定剤組成物は、初期加工中、ならびに任意のその後の再加工中の変色を最小限に抑えるために有効であり得るが、環境、費用、および他の理由から、これらの金属を含まないおよび/またはこれらの金属の量を減少させた安定剤組成物の開発に関心が持たれている。
【0003】
スズ、カドミウム、および/または鉛を含まない安定剤は、米国特許第4,642,322号に記載されているようなタイプの芳香族アミンを含む。芳香族アミンは、他の安定剤、例えばエポキシ化脂肪酸エステル、例えば、エポキシ化大豆油、ホスファイト、カルボン酸金属塩、フェノール酸金属塩、無機塩、例えばZnCl、有機スズ化合物、およびアンチモン−トリメルカプトカルボン酸エステルと混合することができる。
【0004】
他の種類のアミンを含む安定剤組成物も記載されている。例えば、米国特許第3,288,744号は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンがハロゲン含有ビニルポリマーを安定化させるために有用であるが、他のアルカノールアミンは意外にも劣ることを開示している。独国特許公開10118179A1は、アミノアルコールを、過塩素酸塩、ある種のエナミン、または両者と共に含有する安定剤組成物を開示している。エナミンの例としては、アルファ、ベータ−不飽和ベータ−アミノカルボン酸、例えばベータ−クロトン酸エステルおよびアミノウラシルが挙げられる。
【特許文献1】米国特許第4642322号明細書
【特許文献2】米国特許第3288744号明細書
【特許文献3】独国特許公開10118179A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それにもかかわらず、当該分野において、加工中および/または使用中の変色に対する改善された耐性を提供する、ハロゲン含有ビニルポリマーのための改善された安定剤組成物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、式:
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、pは1または2であり、各Rは独立して、H、NO、アルケニル、アルコキシ、C〜C18エステルアルキル、C〜C18アルカノイル、または−(C=O)Rであり、各R基は、独立して置換されていないか、または1〜3の−OH、C〜Cアルコキシ基、フェノキシ基、またはその組み合わせにより置換されている)の芳香族アミン、および補助安定剤を含む熱安定剤組成物であって、該補助安定剤がジヒドロピリジン、ポリジヒドロピリジン、アミノアルコール、過塩素酸塩、ポリオール、立体障害アミン、ヒドロタルサイト、メルカプタン含有有機化合物、または前記補助安定剤の1以上を含む混合物である、熱安定剤組成物が提供される。。
【0009】
第二の態様において、ハロゲン含有ビニルポリマーおよび前記安定剤組成物を含む安定化されたポリマー組成物が提供される。
【0010】
さらにもう一つの態様において、前記の安定化されたポリマー組成物を含む物品が提供される。
【0011】
さらにもう一つの態様において、ポリマー組成物を安定化させる方法であって、前記安定剤組成物をハロゲン含有ビニルポリマー組成物に添加することを含む方法が提供される。
【0012】
特定の補助安定剤と組み合わせられた場合、ある種の芳香族アミンは相乗的安定化をもたらすことが判明している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
略語「phr」は、ハロゲン含有ビニルポリマー100重量部あたりの特定の成分の重量部を示す。
【0014】
本明細書において用いられる場合、「アルキル」とは、特定の数の炭素原子を有する分岐鎖および直鎖飽和脂肪族炭化水素基の両方を包含することを意図される。従って、本明細書において用いられるC〜Cアルキルなる用語は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を包含する。例えば(フェニル)C〜Cアルキルなど、C〜Cアルキルが本明細書において別の基と組み合わせて用いられる場合、表示される基(この場合フェニル)は、一つの共有結合により直接結合するか(C)、または特定の数の炭素原子(この場合1〜約4個の炭素原子)を有するアルキル鎖により結合するかのいずれかである。アルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、およびsec−ペンチルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0015】
本明細書において用いられる「アルケニル」とは、鎖に沿った任意の安定な点に存在し得る1以上の炭素−炭素二重結合を有する、直鎖または分岐鎖いずれかの構造の炭化水素鎖を示す。アルケニル基の例としては、エテニルおよびプロペニルが挙げられる。
【0016】
「アルコキシ」とは、酸素ブリッジを介して結合した、表示された数の炭素原子を有する前記定義のアルキル基を表す。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、2−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、2−ペントキシ、3−ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、n−ヘキソキシ、2−ヘキソキシ、3−ヘキソキシ、および3−メチルペントキシが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0017】
「アルカノイル」とは、ケト(−(C=O)−)ブリッジを介して結合した前記定義のアルキル基を示す。アルカノイル基は、表示された数の炭素原子を有し、ケト基の炭素は番号を付けた炭素原子に含まれる。例えば、Cアルカノイル基は、式CH(C=O)−を有するアセチル基である。
【0018】
本明細書において用いられる場合、「アリール」なる用語は、芳香環において炭素のみを含有する芳香族基を意味する。典型的なアリール基は1〜3の独立環、縮合環若しくはペンダント環および6〜18の環原子を含有し、環構成要素としてヘテロ原子を含まない。示される場合には、かかるアリール基は炭素または非炭素原子または基でさらに置換することができる。このような置換は、N、O、およびSから独立して選択される1または2個のヘテロ原子を任意に含有してもよい5〜7員飽和環状基に対する縮合を包含することができ、例えば、3,4−メチレンジオキシ−フェニル基が形成される。アリール基は、例えば、フェニル、1−ナフチルおよび2−ナフチルをはじめとするナフチル、ならびにビフェニルを包含する。
【0019】
「フェノキシ」は、酸素ブリッジを介して結合した、表示された数の炭素原子を有する前記定義のフェニル基を表す。
【0020】
「エステルアルキル」なる用語は、エステル結合を介して結合した前記定義のようなアルキル基、すなわち式 −O(C=O)アルキルの基を示す。
【0021】
「アルコキシカルボニル」とは、カルボニル基に隣接したアルコキシ基、すなわち式 アルキル−O(C=O)−の基を意味する。
【0022】
「(アリール)アルキル」なる用語において、アリールおよびアルキルは前記定義の通りであり、結合点はアルキル基上である。この用語は、これらに限定されないが、ベンジル、フェニルエチル、およびピペロニルを包含する。同様に、(アリール)カルボヒドリルなる用語において、アリールおよびカルボヒドリルは前記定義の通りであり、結合点はカルボヒドリル基上であり、例えば、フェニルプロペン−1−イル基である。
【0023】
「アルキルチオ」なる用語は、硫黄連結を介して結合した前記定義のアルキル基、すなわち、式アルキル−S−の基を示す。例としては、エチルチオおよびペンチルチオが挙げられる。
【0024】
ハロゲン含有ビニルポリマーのための有効な安定剤組成物は、芳香族アミンを少なくとも1つの追加の補助安定剤との組み合わせにおいて含む。補助安定剤は、ジヒドロピリジン、ポリジヒドロピリジン、アミノアルコール、過塩素酸塩、ポリオール、立体障害アミン、ヒドロタルサイト、メルカプタン含有有機化合物、または前記補助安定剤の1以上を含む混合物を含む。芳香族アミンは、他の安定剤成分との相乗的相互作用により予想外に改善された熱安定性をもたらす。特に有利な特徴において、芳香族アミンは、標準的多成分熱安定剤組成物における1以上の成分と置換することができる。芳香族アミンはまた、多成分安定剤組成物に追加の安定剤として添加することもできる。さらに、芳香族アミンは、ある種の安定剤組成物において起こり得るUV不安定性を軽減することができる。
【0025】
芳香族アミンは、下式を有する。
【0026】
【化2】

【0027】
式中、pは1または2であり、各Rは独立して、H、NO、アルケニル、アルコキシ、C〜C18エステルアルキル、C〜C18アルカノイル、または−(C=O)Rであり、各R基は、独立して、置換されていないか、または1〜3の−OH、C〜Cアルコキシ基、フェノキシ基、またはその組み合わせにより置換されている。
【0028】
一具体例において、RはNOである。この具体例において、芳香族アミンは、ニトロアニリン、例えば4−ニトロアニリンを含む。
【0029】
もう一つの具体例において、芳香族アミンは、下式を有する。
【0030】
【化3】

【0031】
式中、pは1または2であり;各Rは独立して、−OH、−NH、またはC〜C18アルキル、フェニル、(アリール)アルキル、またはその混合物である。
【0032】
式2の化合物の例は、アントラニルアミド、アントラニル酸、ヒドロキシルアミド、アントラニル酸アミド、3−アミノ安息香酸アミド、4−アミノ安息香酸アミド、アントラニル酸N−メチルアミド、アントラニル酸N−エチルアミド、アントラニル酸N−(1’,1’−ジヒドロキシメチル−2’−ヒドロキシエチル)−アミド、アントラニル酸N−n−プロピルアミド、アントラニル酸N−イソプロピルアミド、アントラニル酸N−n−ブチルアミド、アントラニル酸N−n−ヘキシルアミド、アントラニル酸N−n−オクチルアミド、アントラニル酸N−(2’−エチルヘキシル)−アミド、アントラニル酸N−(1’−エチルヘキシル)−アミド、アントラニル酸N−n−デシルアミド、アントラニル酸N−n−ドデシルアミド、アントラニル酸N−n−テトラデシルアミド、アントラニル酸N−n−ヘキサデシルアミド、アントラニル酸N−n−オクタデシルアミド、アントラニル酸N−フェニルアミド、アントラニル酸N−ベンジルアミド、アントラニル酸N−(2’,3’−ジヒドロキシプロピル)−アミド、アントラニル酸N−(2’−ヒドロキシエチル)−アミド、アントラニル酸N−(2’−ヒドロキシ−n−プロピル)−アミド、アントラニル酸N−(3’−ヒドロキシ−n−プロピル)−アミド、アントラニル酸N−(2’−ヒドロキシ−2’−フェニルエチル)−アミド、アントラニル酸N−(p−ヒドロキシフェニル)−アミド、アントラニル酸N−(p−フェノキシフェニル)アミド、アントラニル酸N−(2’−ヒドロキシ−3’−n−ブトキシ−n−プロピル)−アミド、3−アミノ安息香N−(2’−ヒドロキシエチル)−アミド、4−アミノ安息香酸N−(2’−ヒドロキシエチル)−アミド、2−アミノ安息香酸ヒドラジド、3−アミノ安息香酸ヒドラジド、4−アミノ安息香酸ヒドラジド、3,4−ジアミノ安息香酸ヒドラジド、2−メトキシ−4−アミノ安息香酸ヒドラジド、アントラニル酸N−2’−(o−アミノベンゾイルオキシ)−エチル−アミド、アントラニル酸N−2’−(p−アミノベンゾイルオキシ)−エチル−アミド、4−アミノ−3−メトキシ安息香酸N−(2’−ヒドロキシエチル)−アミド、4−アミノ−3−メトキシ安息香酸ヒドラジド、2−、3−、または4−アミノ−アセトフェノン、および前記化合物の1以上を含む混合物である。
【0033】
式2のいくつかの化合物の構造を以下の表1に示す:
【0034】
【表1】

【0035】
もう一つの具体例において、芳香族アミンは下式を有する。
【0036】
【化4】

【0037】
式中、pは1または2であり、RはC〜C18アルキルである。
【0038】
式3の芳香族アミンは、例えば、エチル−2−アミノベンゾエート、ジメチルアミノテレフタレート、メチルアントラニレート、エチル−4−アミノベンゾエート、および前記芳香族アミンの1以上を含む混合物を包含する。式3のいくつかの化合物の構造を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
さらにもう一つ別の具体例において、芳香族アミンは下式を有する。
【0041】
【化5】

【0042】
式中、RはH、またはC〜C18アルキルである。
【0043】
式4の好適な化合物は、アニリン、p−トルイジン、および前記芳香族アミンの1以上を含む混合物を包含する。
【0044】
【化6】

もう一つ別の具体例において、芳香族アミンは式5を有するものである。
【0045】
【化7】

【0046】
式中、RはC〜C18アルキルである。式6の好適な化合物は、2−、3−、および4−アミノアセトフェノンを包含する。
【0047】
【化8】

【0048】
芳香族アミンの有効量は、樹脂100重量部あたり0.001〜10重量部(phr)である。一具体例において、0.01phr〜8phrの量を用いることができる。もう一つ別の具体例において、0.05phr〜6phrの量を用いることができる。量が少ないと効果が低くなる傾向があり、量が多いと安定化に悪影響を及ぼさないが、必要はないので、経済的でない場合がある。
【0049】
安定剤組成物は、例えばジヒドロピリジン、ポリジヒドロピリジン、アミノアルコール、過塩素酸塩、ポリオール、立体障害アミン、ヒドロタルサイト、メルカプタン含有有機化合物を包含する補助安定剤、および前記補助安定剤の1以上を含む混合物を含む。
【0050】
好適なジヒドロピリジンは式(6)を有するものであり得る。
【0051】
【化9】

【0052】
式中、各R29は独立してC〜C36アルキル基、例えば、メチルまたはエチル基である。各R28は、独立して、水素、−OR21、−NHR21、または−NR2122であり、ここにおいて、R21およびR22はそれぞれ独立して、C〜C20アルキル基、C〜C20アルコキシ基、またはC〜C20アルケニル基である。前記のそれぞれは、組成物の使用に悪影響を及ぼさない基で置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。一具体例において、置換基はアルコキシ基である。一具体例において、R28は−OR21であり、ここにおいてR21はC〜Cアルキル基である。各R20は独立して、水素、酸素、ハロゲン、またはC〜C36アルキル、アルケニル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、ここにおいて、炭素含有基は、組成物の使用に悪影響を及ぼさない基で置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。R26は水素、C〜C20アルキル基、C〜C36アリール基、またはC〜C20アルケニル基である。前記のそれぞれは、組成物の使用に悪影響を及ぼさない基で置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。一具体例において、R26は水素である。好適なジヒドロピリジンは、例えば、3,5−ビス(エトキシカルボニル)−2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジンを包含する。
【0053】
ジヒドロピリジンの代わりに、またはジヒドロピリジンに加えて、式(4)のポリジヒドロピリジンを使用することができる:
【0054】
【化10】

【0055】
式中、BはC〜C18アリール、C〜C22アルケニル、またはC〜C22アルキルであり、そのそれぞれは置換されていなくてもよいし、あるいはC〜C18アルコキシ、C〜C18アルキルチオ、ヒドロキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、ハロゲン、フェニルまたはナフチルで置換されていてもよい。各R29は、独立して、C〜C36アルキル基、特にメチルまたはエチル基である。aおよびbは0〜20の数であり、cは0または1であり、dは1〜6の数である。ただし、d(a+b+c)>1であり、(a+b)>0であるとする。R24およびR25はそれぞれ独立して、メチレン、フェニル、または(−C2p−X−)2p−(式中、pは2〜18の数であり、tは0〜10の数であり、Xは酸素または硫黄である)のタイプのアルキレン基である。R26は水素、C〜C20アルキル基、C〜C36アリール基、またはC〜C20アルケニル基である。前記のそれぞれは置換されていなくてもよいし、あるいは組成物の使用に悪影響を及ぼさない基で置換されていてもよい。一具体例において、R26は水素である。好適なポリジヒドロピリジンとしては、例えば、チオジエチレン−ビス[5−メトキシカルボニル−2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキシレート]が挙げられる。ジヒドロピリジンおよび/またはポリジヒドロピリジンの有効量は、存在する場合には、0.01phr〜5phrである。
【0056】
好適なアミノアルコールは、式8に示される構造を有する。
【0057】
【化11】

【0058】
式中、Yは置換または非置換C〜C36アルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル基である。一具体例において、YはC〜C12アルキルまたはアリール基であり、別の具体例において、Yは少なくとも1個のヒドロキシ基を含むC〜Cアルキル基である。
【0059】
式(8)におけるR27およびR28は、それぞれ独立して、水素あるいは置換または非置換C〜C36アルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル基である。一具体例において、R27およびR28は、それぞれ独立して、水素、またはC〜C12アルキルまたはアリール基であり、もう一つ別の具体例においては、水素または少なくとも1個のヒドロキシ基を含むC〜Cアルキル基である。Y、R27、またはR28のうちの2つは一緒になって、置換または非置換C〜C36炭素環式または複素環式基を形成することができ、ここにおいて、ヘテロ原子は酸素または硫黄である。Y、R27、またはR28のうちの2つが一緒になって、ヘテロ原子が窒素である置換または非置換複素環式基を形成することは本発明の範囲内に含まれない。
【0060】
Y、R27、およびR28に対する好適な置換基は、熱安定剤組成物の使用に悪影響を及ぼさないものであり、例えば、第一アミン、カルボン酸、カルボニル基、ハロゲン、環中に酸素または硫黄を含むC〜C18複素環、または第二アミン、第三アミン、カルボン酸エステル、アミド、またはエーテル(アルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはアリール基で置換された)を包含する。ただし、環形成原子として窒素および炭素のみを含有する複素環は除く。
【0061】
一具体例において、Y、R27、およびR28を置換して、2以上のヒドロキシ基を有するアミノアルコールを提供することができる。2以上のヒドロキシ基は、Y、R27およびR28のうちの1つ、またはY、R27およびR28の任意の組み合わせに存在し得る。式(8)の範囲内に含まれる好適なアミノアルコールとしては、例えば、トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン、トリス(2−ヒドロキシ−1−プロピル)アミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−ヒドロキシ−1−プロピルアミン、N−(n−ブチル)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ビス(n−ブチル)−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−(3−n−ブチルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロピル)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、およびN−(1,3−ジヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−2−プロピル)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミンなどが挙げられる。アミノアルコールの混合物も使用することができる。式(8)の範囲内の好適なアミノアルコールとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N−メチルグルカミン、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、および前記アミノアルコールの1以上を含む混合物が挙げられる。アミノアルコールは、存在する場合、0.1phr〜3phrの量で使用することができる。
【0062】
好適な過塩素酸塩としては、例えば、式M(ClO(式中、MはH、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Zn、Al、LaまたはCeであり、nはMの価数に応じて1、2または3である)のものが挙げられる。過塩素酸塩は、様々なアルコール、例えば、ポリオール、シクロデキストリン、エーテルアルコール、エステルアルコール、ポリオール部分エステル、および前記アルコールの1以上を含む混合物と、複合体を形成することができる。ダイマー、トリマー、オリゴマー、およびポリマー、例えば、ジ−、トリ−、テトラ−およびポリ−グリコール、およびジ−、トリ−およびテトラ−ペンタエリスリトールまたは様々な重合度のポリビニルアルコールも使用することができる。グリセロールモノエーテルおよびグリセロールモノチオエーテルがポリオール部分エーテルとして好ましい。過塩素酸塩は様々な公知形態、例えば基体(例えばPVC、珪酸カルシウム、ゼオライト、またはヒドロタルサイト)に適用される塩または水性溶液の形態において導入することができる。過塩素酸塩は、例えば対応するゼオライトまたはヒドロタルサイト金属塩とのイオン交換により形成されるゼオライトまたはヒドロタルサイト塩として導入することもできる。存在する場合、過塩素酸塩は、例えば0.001phr〜5phr、または0.01phr〜1phrの量において用いることができる。
【0063】
好適なポリオールとしては、例えば、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ビストリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、イノサイト、ポリビニルアルコール、マンニトール、ラクトース、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、テトラメチロールシクロヘキサノール、テトラメチロールシクロピラノール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、および前記ポリオールの1以上を含む混合物が挙げられる。ポリオールは、例えば0.01〜20phr、または0.1〜10phrの量で使用することができる。
【0064】
好適なエポキシ化合物としては、例えば、エポキシ化油、例えば大豆油、ラード油、オリーブ油、アマニ油、ピーナッツ油、キリ油、綿実油、および前記エポキシ化合物の1以上を含む混合物が挙げられる。他の好適なエポキシ化合物としては、例えば、エピクロルヒドリン/ビスフェノールA樹脂、ブトキシプロピレンオキシド、グリシジルエポキシステアレート、エポキシ化α−オレフィン、エポキシ化グリシジルソイエート、およびエポキシ化ブチルトルエート;有機カルボン酸のグリシジルエステル、レゾルシノールのグリシジルエーテル、ヒドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、およびグリセリン;アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、シクロヘキサンオキシド、4−(2,3−エポキシプロポキシ)アセトフェノン、メシチルオキシドエポキシド、2−エチル−3−プロピルグリシドアミン、および前記エポキシ化合物の1以上を含む混合物が挙げられる。エポキシ化合物は30phrまでの量で存在することができる。
【0065】
有用な立体障害アミンとしては、例えば、モノマー、オリゴマー、またはポリマー系2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物が挙げられる。ピペリジン部分の窒素は、例えば、水素、C〜C12アルキル、C〜Cアルケニル、またはC〜C12アラルキルで置換されていてもよい。ピペリジン部分のC−4炭素は、例えば、水素、または酸素もしくは窒素含有基で置換されていてもよい。好適な2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル−ベータ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)サクシネート、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イルアセテート、トリメリット酸トリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステルなどが挙げられる。ピペリジンは、例えば0.01〜1phr、または0.1phr〜0.5phrの量で使用することができる。
【0066】
好適なメルカプタン含有有機化合物としては、例えば、1〜100個の炭素原子および1〜4個のメルカプト基を有するアルキルメルカプタン、メルカプトエステル、メルカプトアルコール、メルカプト酸などが挙げられる。好適なメルカプタン含有有機化合物は以下の式で表される構造を有する。
【0067】
【化12】

【0068】
式中、
i=0〜6、j=0〜3、m=1〜2、n=2〜3であり、ただしm+n=4であり;
は、−H、C〜C18アルキル、またはC〜C36アリールであり;
およびR10はそれぞれ独立に、−H、−OH、−SH、C〜C18アルキル、アリール、R16C(=O)O−、またはR16OC(=O)−であり;
11は、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはフェニルであり;
12は、−H、−OH、−SH、C18アルキル、C18アリール、R16C(=O)O−、R16OC(=O)−であり、ただし、式MC2において、R11がフェニルである場合、R12は−OHであり、i=0であり、−SH基は非隣接炭素原子上にあり;
13は−Hまたは2価の基であって、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、またはアルキル置換基を含んでもよく、またR11がフェニルである場合、このフェニルと結合してナフタレン環を形成し;
14は2価であり、かつ−OC(=O)R17C(=O)O−、−OC(=O)CH=CHC(=O)O−、または−C(=O)OR17OC(=O)−であり;
15は、C〜C12アルキル、好ましくは−CH、−CHCH;C〜C12ヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシメチル;または式
【0069】
【化13】

【0070】
であり;
16は、−H、C〜C24アルキル、C〜C24アルケニル、C〜C36アリール、C〜C36アラルキル、C〜C36アルカリール、C〜C16シクロアルキル、またはC〜C36シクロアルケニルであり;
17は、C〜C36アリーレン、C1〜8アルキレニル、−(CHCHO)CHCH−(式中、b=1〜6である)、または式
【0071】
【化14】

【0072】
(式中、f=1または2である)である。
【0073】
メルカプタン含有有機化合物は、式MC1において、Rが−Hであり、Rが−Hであり;R10が−OH、R16C(=O)O−、またはR16OC(=O)−であり;i=1である化合物;式MC2において、R11がフェニルであり;Rが−Hであり;R12が−Hであり;R13が−Hであり;j=1であり、i=1である化合物;式MC3において、Rが−Hであり;R14が−OC(=O)CH=CHC(=O)O−であり;i=1である化合物;式MC4において、Rが−Hであり;i=1である化合物;および式MC5において、R15が−Cまたは
【0074】
【化15】

【0075】
であり;Rが−Hであり;i=1である化合物;および
式MC6において、Rが−Hであり;i=1である化合物を含み得る。
【0076】
一具体例において、メルカプタン含有有機化合物は、式MC−1またはMC−2(式中、各R、R10、またはR12が独立にR16C(=O)O−またはR16OC(=O)−である);あるいはMC−3、MC−4、MC−5、またはMC−6のメルカプトエステルまたは逆エステルである。好適なエステルとしては、例えば、ステアリルチオグリコレート、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジエチレングリコールビス(チオグリコレート)、および前記のエステルを1種類以上含む混合物が挙げられる。好適な逆エステルとしては、例えば、2−メルカプトエチルステアレート、2−メルカプトエチルカプロエート、2−メルカプトエチルタレート、および前記の逆エステルを1種類以上含む混合物が挙げられる。
【0077】
好適なヒドロタルサイトとしては、例えば、式Al、6MgOCO12HO、Mg4,5Al(OH)13CO5HO、4MgOAlCO9HO、4MgOAlCO6HO、ZnO3MgOAlCO8−9HO、またはZnO3MgOAlCO5−6HOを有するものが挙げられる。好適なゼオライト(アルカリおよびアルカリ土類アルミノシリケート)としては、例えばゼオライトA、ソーダライト、ゼオライトY、ゼオライトX、ゼオライトP、ゼオライトMAP、ゼオライトK−F、カリウムオフレタイト、ゼオライトTなど、および前記ゼオライトの少なくとも1つを含む混合物が挙げられる。ヒドロタルサイトおよび/またはゼオライトは、例えば0.1〜20phr、または0.1phr〜10phrの量で用いることができる。
【0078】
組成物はさらに、追加の補助安定剤、例えば、ホスファイトおよびメルカプトカルボン酸エステル、および前記補助安定剤の1以上を含む混合物を含むことができる。
【0079】
好適なメルカプトカルボン酸エステルとしては、例えばチオグリコール酸、チオリンゴ酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト安息香酸、またはチオ乳酸のエステルが挙げられる。メルカプトカルボン酸エステルは、例えば0.01phr〜10phr、または0.05phr〜5phr、または0.1phr〜3phrの量で用いることができる。
【0080】
好適なホスファイトとしては、例えばトリアルキルホスファイト、例えばトリオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリ(テトラデシル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリル−ペンタエリトリトールジホスファイト、またはトリオレイルホスファイト;トリアリールホスファイト、例えばトリフェニルホスファイト、トリクレシルホスファイト、またはトリス−p−ノニルフェニルホスファイト;アルキルジアリールホスファイト、例えばフェニルジデシルホスファイトまたは(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ジドデシルホスファイト;ジアルキルアリールホスファイト;チオホスファイト、例えばトリチオヘキシルホスファイト、トリチオオクチルホスファイト、トリチオラウリルホスファイト、またはトリチオベンジルホスファイト;または前記ホスファイトのいずれか1つまたはそれ以上を含む混合物が挙げられる。ホスファイトは、例えば0.01phr〜10phr、または0.05phr〜5phr、または0.1phr〜3phrの量で用いることができる。
【0081】
本明細書で使用される場合、ハロゲン含有ビニルポリマーなる用語は、ハロゲンが炭素原子に直接結合しているハロゲン含有ポリマーを意味する。好適なハロゲン含有ポリマーとしては、例えば、14〜75重量%、例えば、27重量%の塩素を有する塩素化ポリエチレン、塩素化天然および合成ゴム、塩酸ゴム、塩素化ポリスチレン、塩素化ポリ(塩化ビニリデン)、塩素化ポリ(塩化ビニル)、ポリ(臭化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、他の塩化ビニルポリマー、ならびに上記のポリマーの1以上を含む混合物が挙げられる。ポリ塩化ビニル(PVC)として知られている塩化ビニルポリマーは、塩化ビニルモノマー単独または全モノマー重量基準で例えば70重量%の塩化ビニルを含むモノマーの混合物から製造される。好適なコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、塩化ビニリデン、トリクロロエチレン、1−フルオロ−2−クロロエチレン、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アルファ−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、スチレン、ビニルケトン、例えばビニルメチルケトンおよびビニルフェニルケトン、アクリロニトリル、クロロアクリロニトリル、二酢酸アリリデン、二酢酸クロロアリリデン、ならびにビニルエーテル、例えばビニルエチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、1モルのアクロレインと1モルのエチレングリコールジビニルエーテルとの反応によって調製されるビニルエーテル、ならびに上記のコモノマーの1以上を含む混合物が挙げられる。好適なハロゲン含有ビニルコポリマーとしては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル(87:13)、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸(86:13:1)、塩化ビニル−塩化ビニリデン(95:5);塩化ビニル−フマル酸ジエチル(95:5)、塩化ビニル−アクリル酸2−エチルヘキシル(80:20)、および上記のコポリマーの1以上を含む混合物が挙げられる。
【0082】
硬質ハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、可塑剤を含有しないものである。半硬質ハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、ハロゲン含有ビニルポリマー100重量部あたり、1〜25重量部の可塑剤を含有する。軟質ハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、ハロゲン含有ビニルポリマー100重量部あたり、25〜100重量部の可塑剤を含有する。好適な可塑剤としては、例えば、その中に8〜12個の炭素原子を有する1〜3個のアルキル基が存在するポリ酸のアルキルエステルが挙げられる。アルキルエステルの好適なアルキル基としては、例えば、n−オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、および上記のアルキル基の1以上を含む混合物が挙げられる。アルキルエステルの好適なポリ酸としては、例えば、フタル酸、トリメリット酸、安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、ホスフェートなどが挙げられる。ポリマー性可塑剤も好適である。
【0083】
任意に、ハロゲン含有ポリマー組成物は、他の従来の添加剤、例えば、酸化防止剤、潤滑剤、充填剤、顔料、耐衝撃性改良剤、加工助剤、発泡剤、染料、紫外線吸収剤、圧縮剤(densifying agents)、殺生物剤、および上記の添加剤の1以上を含む混合物を含んでいてもよい。上記の添加剤の好適な量は、組成物の所望の最終特性および最終用途に応じて、当業者により容易に決定される。一般的に、それぞれの添加剤は、ハロゲン含有ビニルポリマーの合計重量基準で0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の量で存在する。
【0084】
好適な酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−4−ドデシルオキシフェノール、p−アミノフェノール、N−ラウリルオキシ−p−アミノフェノール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス[o−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]スルフィド、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、3−ヒドロキシ−4−(フェニルカルボニル)フェノキシ酢酸のn−ドデシルエステル、t−ブチルフェノール、および上記の酸化防止剤の1以上を含む混合物が挙げられる。
【0085】
好適な潤滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、脂肪酸の塩、低分子量ポリエチレン(即ち、ポリエチレンワックス)、脂肪酸アミド(即ち、ラウリミドおよびステアルアミド)、ビスアミド(即ち、デカメチレン、ビスアミド)、脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸グリセリル、アマニ油、ヤシ油、オレイン酸デシル、トウモロコシ油、綿実油など)、および上記の潤滑剤の1以上を含む混合物が挙げられる。好適な充填剤としては、例えば、焼成クレー、炭酸カルシウム、タルク、および上記の充填剤の1以上を含む混合物が挙げられる。好適な顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、および上記の顔料の1以上を含む混合物が挙げられる。
【0086】
一般的に、上記した熱安定剤組成物は、熱安定性をもたらすために有効な量で芳香族アミンを提供するように処方された1液系(one−part)混合物として提供される。他の任意の添加剤も、この一液系混合物中に存在し得るので、それぞれの成分の特定量は、一液系混合物の全重量基準で、0.1〜99.9重量パーセント、または1.0〜99.0重量パーセントで変えることができる。熱安定性における相乗的改善をもたらすために有効な特定量は、当業者によって容易に決定される。
【0087】
ハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、低剪断または高剪断下でブレンドすることによって調製することができる。同様に、熱安定剤組成物は、適切なミルまたはミキサー内で、その成分およびポリマーを混合することにより、またはポリマー全体への安定剤の均一な分布をもたらす他の方法によりハロゲン含有ビニルポリマー組成物中に組み入れることができる。相溶性および物理的状態(即ち、液体または固体)に応じて、所望の性能特性を有する均一な安定化されたポリマー組成物を形成するために、ブレンドの成分は加熱を必要とする場合がある。
【0088】
安定化されたハロゲン含有ビニルポリマー組成物は、物品を造形するための種々の技術、例えば、成形、押出、および射出成形を用いて、種々の硬質物品、例えば、家のサイディング、窓枠およびパイプを成形するために使用することができる。
【0089】
一具体例において、芳香族アミンおよび補助安定剤を含む相乗的組み合わせは、改善された長期色彩安定性を、好ましくは改良された初期色彩と共にもたらすことができる。一具体例において、補助安定剤は、過塩素酸塩、アミノアルコール、およびポリオールを含む。
【実施例】
【0090】
本発明をさらに、次の実施例により説明する。ここにおいて、熱安定性試験のためのPVC組成物は、高剪断下で、100重量部のPVC樹脂、顔料(0.1〜2.0phr)、離型剤(0.5〜2phr)、補助安定剤(1〜10phrのエポキシ化大豆油)、および潤滑剤(0.2〜5.0phr)を、表に示す安定剤組成物と一緒に混合することによって調製した。次いで、混合された組成物を、ツーロールミル内で390°F(199℃)で加熱し、サンプルを表示した時間間隔で取り出し、チップに形成した。それぞれのチップの色変化(dEによって反映される)および黄色度(YI)を、Hunter Labs(L,a,b)比色計を使用して測定した。
【0091】
実施例1〜5は、異なる比での芳香族アミンと過塩素酸塩の組み合わせを使用して得られる相乗効果を示す。
【0092】
【表3】

【0093】
表3に示すように、芳香族アミンと過塩素酸塩の組み合わせは、安定剤の合計量が同じで、いずれかの安定剤単独よりも改善された安定化をもたらす。実施例2〜4を比較すると、過塩素酸塩よりも過剰の芳香族アミンが最良の安定化をもたらすと思われる。
【0094】
実施例6〜10は、異なる芳香族アミンとトリエタノールアミンの等モル量の組み合わせを用いて得られる相乗効果を示す。
【0095】
【表4】

【0096】
実施例6〜10は、トリエタノールアミンと組み合わせた場合に、等モル量の様々な芳香族アミンは類似した安定化を見せることを示す。
【0097】
実施例11〜13は、芳香族アミン、アミノアルコール(トリエタノールアミン)、過塩素酸塩、およびポリオール(ソルビトール)の組み合わせを使用して得られる相乗効果を示す。
【0098】
【表5】

【0099】
前記データは、アニリンが、トリエタノールアミン、過塩素酸塩、およびソルビトールとの組み合わせに添加された場合に改善された安定化をもたらすことを示す。従って、芳香族アミンは、他の安定剤と組み合わせた場合にPVC組成物に対して好適な安定性をもたらす。
【0100】
実施例14〜20は、芳香族アミンと、過塩素酸塩、トリエタノールアミン、およびソルビトールとの組み合わせを用いて得られる相乗効果を示す。
【0101】
【表6】

【0102】
表6からわかるように、芳香族アミン、例えば2−アミノアセトフェノン、p−トルイジンまたは4−ニトロアニリンを、過塩素酸ナトリウム、トリエタノールアミンおよびソルビトールを含む安定剤組成物に添加すると、安定化が改善される。
【0103】
実施例21〜29は、芳香族アミンと、過塩素酸塩、トリエタノールアミン、およびソルビトールとの組み合わせを用いて得られる相乗効果を示す。
【0104】
【表7】

【0105】
表7からわかるように、芳香族アミン、例えばエチル−2−アミノベンゾエート、ジメチルアミノテレフタレート、アントラニルアミド、またはエチル−4−アミノベンゾエートを、過塩素酸ナトリウム、トリエタノールアミンおよびソルビトールを含む安定剤組成物に添加すると、安定化が改善される。
【0106】
本明細書において開示される全ての範囲は境界値を含み、組み合わせ可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1:
【化1】

(式中、pは1または2であり、各Rは独立して、H、NO、アルケニル、アルコキシ基、C〜C18エステルアルキル、C〜C18アルカノイル、または−(C=O)Rであり、各R基は、独立して、置換されていないか、または1〜3つの−OH、C〜Cアルコキシ、フェノキシ基、またはその組み合わせにより置換されている)の芳香族アミン、および補助安定剤を含む安定剤組成物であって、
該補助安定剤がジヒドロピリジン、ポリジヒドロピリジン、アミノアルコール、過塩素酸塩、ポリオール、立体障害アミン、ヒドロタルサイト、メルカプタン含有有機化合物、または前記補助安定剤の1以上を含む混合物である、安定剤組成物。
【請求項2】
芳香族アミンが、式:
【化2】

(式中、pは1または2であり;各Rは独立して、−OH、−NH、またはC〜C18アルキル、フェニル、または(アリール)アルキル、またはその混合物である);
【化3】

(式中、pは1または2であり、RはC〜C18アルキルである);
【化4】

(式中、RはH、またはC〜C18アルキルである);または
【化5】

(式中、RはC〜C18アルキルである)
を有するものである、請求項1記載の安定剤組成物。
【請求項3】
芳香族アミンがエチル2−アミノベンゾエート、ジメチルアミノテレフタレート、エチル4−アミノベンゾエート、アントラニルアミド、4−ニトロアニリン、p−トルイジン、2−アミノアセトフェノン、または前記芳香族アミンの1以上を含む混合物である請求項1または2記載の安定剤組成物。
【請求項4】
補助安定剤が、アミノアルコール、過塩素酸塩、ポリオール、または前記補助安定剤の1以上を含む混合物である請求項2または3記載の安定剤組成物。
【請求項5】
補助安定剤がアミノアルコール、過塩素酸塩、およびポリオールを含む請求項4記載の安定剤組成物。
【請求項6】
式:
【化6】

(式中、pは1または2であり、各Rは独立して、H、NO、アルケニル、アルコキシ、C〜C18エステルアルキル、C〜C18アルカノイル、または−(C=O)Rであり、各R基は、独立して、置換されていないか、または1〜3つの−OH、C〜Cアルコキシ基、フェノキシ基、またはその組み合わせで置換されている)の芳香族アミン、および
補助安定剤(ここにおいて、補助安定剤はジヒドロピリジン、ポリジヒドロピリジン、アミノアルコール、過塩素酸塩、ポリオール、立体障害アミン、ヒドロタルサイト、メルカプタン含有有機化合物、または前記補助安定剤の1以上を含む混合物である)
をハロゲン含有ビニルポリマー組成物に添加することを含む、組成物を安定化する方法。
【請求項7】
ハロゲン含有ビニルポリマー;並びに
式:
【化7】

(式中、pは1または2であり、各Rは独立して、H、NO、アルケニル、アルコキシ、C〜C18エステルアルキル、C〜C18アルカノイル、または−(C=O)Rであり、各R基は、独立して、置換されていないか、または1〜3つの−OH、C〜Cアルコキシ基、フェノキシ基、またはその組み合わせにより置換されている)の芳香族アミン、および補助安定剤(ここにおいて、補助安定剤はジヒドロピリジン、ポリジヒドロピリジン、アミノアルコール、過塩素酸塩、ポリオール、立体障害アミン、ヒドロタルサイト、メルカプタン含有有機化合物、または前記補助安定剤の1以上を含む混合物である)を含む安定剤組成物;
を含むポリマー組成物。
【請求項8】
芳香族アミンが、式:
【化8】

(式中、pは1または2であり、各Rは独立して−OH、−NH、またはC〜C18アルキル、フェニル、または(アリール)アルキル、またはその混合物である)
【化9】

(式中、pは1または2であり、RはC〜C18アルキルである);
【化10】

(式中、RはH、またはC〜C18アルキルである);または
【化11】

(式中、RはC〜C18アルキルである)
を有するものである、請求項7記載のポリマー組成物。
【請求項9】
補助安定剤が、過塩素酸塩、アミノアルコール、ポリオール、または前記補助安定剤の1以上を含む混合物である請求項8記載のポリマー組成物。
【請求項10】
請求項7、8、または9記載の安定化されたポリマー組成物を含む物品。

【公開番号】特開2006−131904(P2006−131904A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−310914(P2005−310914)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】