説明

ハンドル位置検出装置及びこれを用いた鉄道車両の主幹制御装置

【課題】 高い信頼性を確保しつつ、機構部を簡略化して低コスト化及び機構部の組立調整等の簡単化を実現し、しかも、電源や発光素子等を不要にして長寿命化を図り、また、耐衝撃性を向上させる。
【解決手段】 主幹制御装置は、ブレーキ用ハンドル1の位置を検出するハンドル位置検出装置11を備える。ハンドル位置検出装置11は、ブレーキ用ハンドル1の複数のノッチ位置にそれぞれ対応して設けられた複数の個別位置検出部を含む。各個別位置検出部は、ブレーキ用ハンドル1に連動する可動部に設けられた磁石と、固定部に設けられ磁石が近づいている場合にオンするとともに前記磁石が遠ざかっている場合にオフするリードスイッチとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の主幹制御装置(いわゆるマスコン)のハンドル位置検出装置、及び、これを用いた鉄道車両の主幹制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の主幹制御装置は、ハンドルを有し、鉄道車両の運転台に設置され、運転士の操作による前記ハンドルの位置に応じた指令を前記鉄道車両の運転制御指令として出力するものである。
【0003】
従来の主幹制御装置では、ハンドル位置検出装置として、ハンドルに連動するカムと固定部に設けられたカムスイッチを用いていた。このカムスイッチ方式では、カム機構部が複雑で、コストアップを免れないとともに組立調整等に著しく手数を要していた。
【0004】
そこで、ハンドル位置検出装置としてカムスイッチに代えてロータリエンコーダを用いた主幹制御装置が提供されるに至っている(下記特許文献1)。
【特許文献1】特許第3243005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のロータリエンコーダを用いた主幹制御装置では、電気的な処理によりハンドルの位置を検出することになるので、その分、信頼性が低下せざるを得ない。そこで、前記従来のロータリエンコーダを用いた主幹制御装置では、ロータリエンコーダ及びそれを駆動したりその出力信号を処理する回路を2組設けて2重系に構成されているが、カムスイッチ方式の主幹制御装置ほど高い信頼性を得ることは困難であった。
【0006】
また、前記従来のロータリエンコーダを用いた主幹制御装置では、カムスイッチ方式の主幹制御装置に比べて、寿命を有する要素(すなわち、電源やロータリエンコーダに含まれる発光素子など)が追加されることになることで、その分、当該主幹制御装置の寿命が短くなってしまう。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、高い信頼性を確保しつつ、機構部を簡略化して低コスト化及び機構部の組立調整等の簡単化を実現することができ、しかも、電源や発光素子等を要することなく長寿命化を図ることができるとともに、耐衝撃性に優れた主幹制御装置のハンドル位置検出装置、及び、これを用いた鉄道車両の主幹制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、高い信頼性を確保しつつ、機構部を簡略化して低コスト化及び機構部の組立調整等の簡単化を実現することができ、しかも、電源や発光素子等を要することなく長寿命化を図ることができるとともに、耐衝撃性に優れ、更に、主幹制御装置に許されるスペースに制約があっても多くのハンドル位置を適切に検出することができる主幹制御装置のハンドル位置検出装置、及び、これを用いた鉄道車両の主幹制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様による主幹制御装置のハンドル位置検出装置は、鉄道車両の主幹制御装置のハンドル位置検出装置であって、前記主幹制御装置のハンドルの複数のノッチ位置にそれぞれ対応して設けられた複数の個別位置検出部を備え、前記各個別位置検出部は、前記ハンドルに連動する可動部に設けられた磁石と、固定部に設けられ前記磁石が近づいている場合と前記磁石が遠ざかっている場合とで異なるオン・オフ状態となるリードスイッチとを含むものである。
【0010】
この第1の態様によれば、個別位置検出部が磁石及びリードスイッチで構成されているので、ロータリエンコーダを用いた主幹制御装置のハンドル位置検出装置のように電気的な処理によりハンドルの位置を検出するものではないため、カムスイッチ方式の主幹制御装置のハンドル位置検出装置と同程度の高い信頼性を得ることができる。
【0011】
また、前記第1の態様によれば、個別位置検出部が磁石及びリードスイッチで構成されているので、カムスイッチ方式の主幹制御装置のハンドル位置検出装置に比べて、カム等が用いられないので、機構部を簡略化することができ、低コスト化及び組立調整等の簡単化を実現することができる。
【0012】
さらに、前記第1の態様によれば、個別位置検出部が磁石及びリードスイッチで構成されているので、ハンドル位置の検出に電源や発光素子を要しないため、長寿命化を図ることができる。
【0013】
さらにまた、前記第1の態様によれば、個別位置検出部が磁石及びリードスイッチで構成されているので、リードスイッチのヒステリシス特性によって、いわゆるチャタリングが防止され、カムスイッチ方式の主幹制御装置のハンドル位置検出装置に比べて、耐衝撃性が格段に高まる。
【0014】
本発明の第2の態様による主幹制御装置のハンドル位置検出装置は、前記第1の態様において、(i)前記ハンドルがその可動範囲内のいずれの位置に位置していても、前記複数の個別位置検出部のうちの1つの個別位置検出部又は互いに隣接する2つのノッチ位置に対応する2つの個別位置検出部のリードスイッチが、他の個別位置検出部のリードスイッチとは異なるオン・オフ状態となり、(ii)前記ハンドルが一方方向へ移動して前記複数のノッチ位置のうちの少なくとも1つの中間のノッチ位置に位置したときに、前記複数の個別位置検出部のうちの互いに隣接する2つのノッチ位置に対応する2つの個別位置検出部のリードスイッチが他の個別位置検出部のリードスイッチとは異なるオン・オフ状態となり、(iii)前記ハンドルが他方方向へ移動して各ノッチ位置に位置したときに、前記複数の個別位置検出部のうちの1つの個別位置検出部のリードスイッチが他の個別位置検出部のリードスイッチとは異なるオン・オフ状態となるものである。
【0015】
前記中間のノッチ位置とは、両端のノッチ位置以外のノッチ位置をいう。ここで、両端のノッチ位置とは、前記ハンドルの可動範囲内の最も一方側のノッチ位置と最も他方側のノッチ位置をいう。
【0016】
この第2の態様によれば、前記(i)〜(iii)を満たしているので、リードスイッチのヒステリシス特性を巧みに利用することで、主幹制御装置のハンドル位置検出装置に許されるスペースに制約があっても多くのハンドル位置を適切に検出することができる。
【0017】
本発明の第3の態様による鉄道車両の主幹制御装置は、前記第1又は第2の態様によるハンドル位置検出装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高い信頼性を確保しつつ、機構部を簡略化して低コスト化及び機構部の組立調整等の簡単化を実現することができ、しかも、電源や発光素子等を要することなく長寿命化を図ることができるとともに、耐衝撃性に優れた主幹制御装置のハンドル位置検出装置、及び、これを用いた鉄道車両の主幹制御装置を提供することができる。
【0019】
また、本発明によれば、高い信頼性を確保しつつ、機構部を簡略化して低コスト化及び機構部の組立調整等の簡単化を実現することができ、しかも、電源や発光素子等を要することなく長寿命化を図ることができるとともに、耐衝撃性に優れ、更に、主幹制御装置に許されるスペースに制約があっても多くのハンドル位置を適切に検出することができる主幹制御装置のハンドル位置検出装置、及び、これを用いた鉄道車両の主幹制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明による主幹制御装置装置のハンドル位置検出装置、及び、これを用いた鉄道車両の主幹制御装置について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態による主幹制御装置を示す概略平面図である。図2は、ブレーキ用ハンドル1の各ノッチ位置P1〜P10を示す図1中のA矢視図である。図3は、前後進用ハンドル2の各ノッチ位置P11〜P13及び力行用ハンドル3の各ノッチ位置P21〜P25を示す図1中のB矢視図である。図4は、図1中のブレーキ用ハンドル1の角度位置を検出するハンドル位置検出装置11を示す概略平面図である。図5は、図4中のC−C’に沿った断面の要部を模式的に示す概略断面図である。
【0022】
本実施の形態による主幹制御装置は、鉄道車両の運転台に設定され、図1乃至3に示すように、箱型の筐体4と、筐体4から突出したブレーキ用ハンドル1、前後進用ハンドル2及び力行用ハンドル3とを備え、ハンドル1〜3の各位置に応じた指令を発生する。
【0023】
ブレーキ用ハンドル1は、筐体4内に回転可能に設けられた回転軸6に対して固定され、図2に示すように、角度位置を変え得るようになっている。ブレーキ用ハンドル1の各ノッチ位置P1〜P10(例えば、それぞれブレーキの度合い指令する「ユルメ」、「1」〜「8」、「非常」にそれぞれ対応する。)において操作者がノッチ感覚が得られるように、図示しないノッチ機構が採用されている。
【0024】
同様に、前後進用ハンドル2及び力行用ハンドル3は、筐体4内に回転可能に設けられた回転軸7,8に対してそれぞれ固定され、図3に示すように、前後進用ハンドル2のノッチ位置P11〜P13(例えば、前後進の状態を指令する「後」、「切」、「前」にそれぞれ対応する。)及び力行用ハンドル3のノッチ位置P21〜P27(例えば、力行の度合いを指令する「6」〜「1」、「切」にそれぞれ対応する。)において操作者がノッチ感覚が得られるように、図示しないノッチ機構が採用されている。
【0025】
また、本実施の形態による主幹制御装置は、ブレーキ用ハンドル1の角度位置を検出するハンドル位置検出装置11と、前後進用ハンドル2の角度位置を検出するハンドル位置検出装置(図示せず)と、力行用ハンドル3の角度位置を検出するハンドル位置検出装置(図示せず)と、を備えている。本実施の形態では、各ハンドル位置検出装置は、同様に構成されているので、ここでは、代表して、ブレーキ用ハンドル1の角度位置を検出するハンドル位置検出装置11について、説明する。
【0026】
ハンドル位置検出装置11は、図1及び図4に示すように、回転軸12を有している。図1に示すように、この回転軸12に固定された歯車13と、ブレーキ用ハンドル1に対して固定されている回転軸6に固定された歯車14とが、噛み合わされている。これにより、回転軸12は、回転軸6に連動して回転するようになっている。ノッチ位置P1からノッチ位置P10に渡るブレーキ用ハンドル1の可動範囲が、回転軸12の所定角度(360゜より若干小さい角度)に対応するように、歯車13,14のギヤ比が設定されている。
【0027】
ハンドル位置検出装置11は、図4に示すように、前記回転軸12の他に、ブレーキ用ハンドル1のノッチ位置P1〜P10にそれぞれ対応して設けられた10個の個別位置検出部U1〜U10と、回転軸12を回転可能に支持するとともに、個別位置検出部U1〜U10の取り付けベースとなるベース部材15と、を有している。本実施の形態では、各個別位置検出部U1〜U10は、図4及び図5に示すように、永久磁石16と、磁石16を保持して磁石16を回転軸12に対して固定する磁石保持部材17と、磁石16が近づいている場合にオンするとともに磁石16が遠ざかっている場合にオフする(そのオン・オフは逆でもよい。)リードスイッチ18と、リードスイッチ18を保持するリードスイッチ保持部材19と、を有している。なお、ノッチ位置P1〜P10にそれぞれ対応する個別位置検出部U1〜U10のリードスイッチ18は、互いに区別する場合には、それぞれSW1〜SW10と表記する。各リードスイッチ保持部材19は、図示しない挿通ボルト等によって、図4に示すように連結した状態でベース15に固定されている。これにより、リードスイッチ18は固定部に設けられている。一方、磁石16は、前述したように磁石保持部材17を介して回転軸12に対して固定されることで、ブレーキ用ハンドル1に連動する可動部に設けられている。図面には示していないが、回転軸12と磁石保持部材17との間に係合溝等が多数設けられ、かなり細かい分解能で、磁石16の取り付け角度を容易に設定することができるように構成されている。
【0028】
そして、本実施の形態では、各個別位置検出部U1〜U10毎に、磁石16の取り付け角度等が設定することで、ブレーキ用ハンドル1の角度位置に応じて、各個別位置検出部U1〜U10のリードスイッチSW1〜SW10が図6に示すようにオン・オフするように設定されている。
【0029】
本実施の形態では、図6に示すように、リードスイッチSW1〜SW10は、ヒステリシス特性を有しているため、ブレーキ用ハンドル1の移動方向によって、オン・オフする位置がずれている。説明の便宜上、図2中の時計方向(図6中の右方向)を正転方向、図2中の反時計方向(図6中の左方向)を逆転方向と呼ぶ。
【0030】
図6に示すように、ブレーキ用ハンドル1がその可動範囲内のいずれの位置に位置していても、ブレーキ用ハンドル1が正転及び逆転のいずれによってその位置に位置したかに拘わらず、個別位置検出部U1〜U10のうちの1つの個別位置検出部又は互いに隣接する2つのノッチ位置に対応する2つの個別位置検出部のリードスイッチ18がオンするとともに、他の個別位置検出部のリードスイッチ18はオフするように、設定されている。これにより、いわゆる不感帯が生じないようになっている。
【0031】
また、図6に示すように、ブレーキ用ハンドル1が、各ノッチ位置P1〜P10の付近の各範囲ΔP1〜ΔP10内に位置するときには、その位置に正転により移動して到達した場合には、対応する1つの個別位置検出部のリードスイッチ18のみがオンし、他の個別位置検出部のリードスイッチ18がオフするように設定されている。
【0032】
さらに、図6に示すように、ブレーキ用ハンドル1が、中間の各ノッチ位置P2〜P9の付近の各範囲ΔP2〜ΔP9内に位置するときには、その位置に逆転により移動して到達した場合には、互いに隣接する2つのノッチ位置に対応する2つの個別位置検出部(本実施の形態では、そのノッチ位置に対応する個別位置検出部とそのノッチ位置の正転方向側に隣接するノッチ位置に対応する個別位置検出部)のリードスイッチ18がオンし、他の個別位置検出部のリードスイッチ18がオフするように設定されている。
【0033】
また、図6に示すように、ブレーキ用ハンドル1が、両端の各ノッチ位置P1,P10の付近の各範囲ΔP1,ΔP10内に位置するときには、その位置に逆転により移動して到達した場合には、対応する1つの個別位置検出部のリードスイッチ18のみがオンし、他の個別位置検出部のリードスイッチ18がオフするように設定されている。
【0034】
図6に示すようなハンドルとの位置と各リードスイッチのオン・オフ状態と関係の設定は、力行用ハンドル3についても同様である。また、前後進用ハンドル2についても同様で良いが、前後進用ハンドル2の場合は、ノッチ位置P11〜P13の数が3個と少ないので、ハンドルが、中間のノッチ位置の付近の範囲内に位置するときには、ハンドルが正転及び逆転のいずれによってその位置に位置したかに拘わらず、対応する1つの個別位置検出部のリードスイッチのみがオンし、他の個別位置検出部のリードスイッチがオフするように設定してもよい。
【0035】
本実施の形態によれば、個別位置検出部U1〜U10が磁石16及びリードスイッチ18で構成されているので、ロータリエンコーダを用いた主幹制御装置のように電気的な処理によりハンドルの位置を検出するものではないため、カムスイッチ方式の主幹制御装置と同程度の高い信頼性を得ることができる。
【0036】
また、本実施の形態によれば、個別位置検出部U1〜U10が磁石16及びリードスイッチ18で構成されているので、カムスイッチ方式の主幹制御装置に比べて、カム等が用いられないので、機構部を簡略化することができ、低コスト化及び組立調整等の簡単化を実現することができる。
【0037】
さらに、本実施の形態によれば、個別位置検出部U1〜U10が磁石16及びリードスイッチ18で構成されているので、ハンドル位置の検出に電源や発光素子を要しないため、長寿命化を図ることができる。
【0038】
さらにまた、本実施の形態によれば、個別位置検出部U1〜U10が磁石16及びリードスイッチ18で構成されているので、リードスイッチ18のヒステリシス特性によって、いわゆるチャタリングが防止され、カムスイッチ方式の主幹制御装置に比べて、耐衝撃性が格段に高まる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、前述したように、ブレーキ用ハンドル1の回転位置とリードスイッチSW1〜SW10のオン・オフ状態との関係が、図6に示すように設定されているので、リードスイッチSW1〜SW10のヒステリシス特性を巧みに利用することで、主幹制御装置に許されるスペースに制約があっても、多くのノッチ位置(ハンドル位置)P1〜P10を適切に検出することができる。この点について、以下に、図6を参照して、補足説明する。
【0040】
まず、ブレーキ用ハンドル1が正転により移動して各位置に位置する場合について説明する。この場合、ブレーキ用ハンドル1が各ノッチ位置P1〜P10の付近の各範囲ΔP1〜ΔP10内に位置するときには、対応する1つの個別位置検出部のリードスイッチ18のみがオンする(例えば、ブレーキ用ハンドル1がノッチ位置P5に位置するときには、個別位置検出部U5のリードスイッチSW5のみがオンする)ので、鉄道車両の駆動装置を電源投入時に、ブレーキ用ハンドル1がいずれのノッチ位置P1〜P10に位置していても、スイッチSW1〜SW10の信号によって、前記駆動装置はブレーキ用ハンドル1の位置を正しく確定することができる。また、ブレーキ用ハンドル1が正転により移動して範囲ΔP1〜ΔP10以外の位置に位置する場合は、図6に示すように2つのリードスイッチ18が同時にオンする場合があるが、この場合には、前記駆動装置が電源投入されて安定した後にブレーキ用ハンドル1が移動中であり、前記駆動装置は、2つのリードスイッチ18のうち先又は後にオンしたリードスイッチを知ることができるので、先又は後にオンしたリードスイッチを優先して、当該優先したリードスイッチ18に基づいてブレーキ用ハンドル1の位置を確定すればよい。
【0041】
次に、ブレーキ用ハンドル1が逆転により移動して各位置に位置する場合について説明する。この場合、ブレーキ用ハンドル1が中間の各ノッチ位置P2〜P9の付近の各範囲ΔP2〜ΔP9内に位置するときには、2つの個別位置検出部のリードスイッチ18がオンする(例えば、ブレーキ用ハンドル1がノッチ位置P5に位置するときには、個別位置検出部U5,U6のリードスイッチSW5,SW6がオンする)ので、リードスイッチ18がヒステリシス特性によってオフ時にオフし難いことから、前記駆動装置は、オンしている2つのリードスイッチ18のうちの逆転方向側のリードスイッチ18(例えば、オンしている2つのリードスイッチSW5,SW6のうちの逆転方向側のリードスイッチSW5)を優先することで、当該優先したリードスイッチ18に基づいてブレーキ用ハンドル1の位置を正しく確定することができる。
【0042】
また、ブレーキ用ハンドル1が逆転により移動して各ノッチ位置P1,P10の付近の各範囲ΔP1,ΔP10内に位置するときには、対応する1つの個別位置検出部のリードスイッチ18のみがオンする(例えば、ブレーキ用ハンドル1がノッチ位置P1に位置するときには、個別位置検出部U1のリードスイッチSW1のみがオンする)ので、鉄道車両の駆動装置を電源投入時に、ブレーキ用ハンドル1がノッチ位置P1,P10に位置していても、スイッチSW1〜SW10の信号によって、前記駆動装置はブレーキ用ハンドル1の位置を正しく確定することができる。
【0043】
さらに、ブレーキ用ハンドル1が逆転により移動して範囲ΔP1〜ΔP10以外の位置に位置する場合は、図6に示すように2つのリードスイッチ18が同時にオンする場合があるが、この場合には、前記駆動装置が電源投入されて安定した後にブレーキ用ハンドル1が移動中であり、前記駆動装置は、2つのリードスイッチ18のうち先又は後にオンしたリードスイッチを知ることができるので、先又は後にオンしたリードスイッチを優先して、当該優先したリードスイッチ18に基づいてブレーキ用ハンドル1の位置を確定すればよい。
【0044】
このように、本実施の形態によれば、ブレーキ用ハンドル1が中間のノッチ位置P2〜P9の付近の各範囲ΔP2〜ΔP9内に位置する場合は、ブレーキ用ハンドル1が正転により当該位置に位置したときは1つのリードスイッチ18のみがオンする一方、ブレーキ用ハンドル1が逆転により当該位置に位置したときは2つのリードスイッチ18がオンするので、鉄道車両の駆動装置は、当該駆動装置の電源投入時であっても、ブレーキ用ハンドル1の位置を適切に確定することができる。
【0045】
勿論、ブレーキ用ハンドル1が中間のノッチ位置P2〜P9の付近の各範囲ΔP2〜ΔP9内に位置していても、ブレーキ用ハンドル1が正転及び逆転のいずれによってその位置に位置したかに拘わらず、対応する1つの個別位置検出部のリードスイッチ18のみがオンするように設定すれば、従来のカムスイッチ方式の主幹制御装置と同様に、鉄道車両の駆動装置は、当該駆動装置の電源投入時であっても、ブレーキ用ハンドル1の位置を適切に確定することができる。
【0046】
しかし、この場合には、本実施の形態のようにノッチ位置P1〜P10が10個と多い場合には、磁石保持部材17の径を大きくせざるを得えないなどの事態を招き、ハンドル位置検出装置11の占有スペースが増大してしまい、当該主幹制御装置が大型化してしまう。
【0047】
これに対し、本実施の形態では、ブレーキ用ハンドル1が逆転により範囲ΔP2〜ΔP9内の位置に位置したときは2つのリードスイッチ18がオンするので、磁石保持部材17の径を比較的小さくすることができ、ハンドル位置検出装置11の占有スペースを抑えることができ、当該主幹制御装置の大型化を防止することができる。
【0048】
ところで、ブレーキ用ハンドル1が逆転により範囲ΔP2〜ΔP9内の位置に位置したときのみならず、ブレーキ用ハンドル1が正転により範囲ΔP2〜ΔP9内の位置に位置したときにも、2つのリードスイッチ18がオンするように設定すれば、占有スペースの点では有利である。しかし、この場合は、前記駆動装置の電源投入時に、2つのリードスイッチ18のいずれを優先させてブレーキ用ハンドル1の位置を確定すればよいかが不明となってしまい、ブレーキ用ハンドル1の位置を正しく確定することができなくなってしまう。
【0049】
以上のように、本実施の形態によれば、リードスイッチSW1〜SW10のヒステリシス特性を巧みに利用することで、主幹制御装置に許されるスペースに制約があっても、多くのノッチ位置(ハンドル位置)P1〜P10を適切に検出することができるのである。
【0050】
なお、本発明では、ブレーキ用ハンドル1が逆転により範囲ΔP2〜ΔP9のうちのいずれか1つ以上の範囲内の位置に位置したときに、2つのリードスイッチ18がオンする一方、ブレーキ用ハンドル1が逆転により範囲ΔP2〜ΔP9のうちの残りの範囲内に位置したときに、1つのリードスイッチ18のみがオンするように、設定してもよい。また、本発明では、ブレーキ用ハンドル1がΔP2〜ΔP9内に位置していても、ブレーキ用ハンドル1が正転及び逆転のいずれによってその位置に位置したかに拘わらず、対応する1つの個別位置検出部のリードスイッチ18のみがオンするように設定してもよい。
【0051】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0052】
例えば、本発明では、ハンドル1〜3の全てについて磁石及びリードスイッチを用いたハンドル位置検出装置を採用する必要はなく、例えば、力行用ハンドル3や前後進用ハンドル2の両方又はいずれか一方については、従来と同様に、カム及びカムスイッチを用いた構成を採用してもよい。
【0053】
また、前記実施の形態は、ブレーキ用と力行用とが別々のハンドル1,3で構成された例であるが、本発明は、ブレーキ用と力行用とが1つのハンドルで構成されたいわゆるワンハンドルの主幹制御装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態による主幹制御装置を示す概略平面図である。
【図2】ブレーキ用ハンドルの各ノッチ位置を示す図1中のA矢視図である。
【図3】前後進用ハンドルの各ノッチ位置及び力行用ハンドルの各ノッチ位置を示す図1中のB矢視図である。
【図4】図1中のブレーキ用ハンドルの角度位置を検出するハンドル位置検出装置を示す概略平面図である。
【図5】図4中のC−C’に沿った断面の要部を模式的に示す概略断面図である。
【図6】図1に示す主幹制御装置のブレーキ用ハンドルの回転位置と各リードスイッチのオン・オフ状態との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ブレーキ用ハンドル
2 前後進用ハンドル
3 力行用ハンドル
6 回転軸
11 ハンドル位置検出装置
12 回転軸
16 磁石
17 磁石保持部材
18(SW1〜SW10) リードスイッチ
19 リードスイッチ保持部材
U1〜U10 個別位置検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の主幹制御装置のハンドル位置検出装置であって、
前記主幹制御装置のハンドルの複数のノッチ位置にそれぞれ対応して設けられた複数の個別位置検出部を備え、
前記各個別位置検出部は、前記ハンドルに連動する可動部に設けられた磁石と、固定部に設けられ前記磁石が近づいている場合と前記磁石が遠ざかっている場合とで異なるオン・オフ状態となるリードスイッチとを含むことを特徴とする主幹制御装置のハンドル位置検出装置。
【請求項2】
前記ハンドルがその可動範囲内のいずれの位置に位置していても、前記複数の個別位置検出部のうちの1つの個別位置検出部又は互いに隣接する2つのノッチ位置に対応する2つの個別位置検出部のリードスイッチが、他の個別位置検出部のリードスイッチとは異なるオン・オフ状態となり、
前記ハンドルが一方方向へ移動して前記複数のノッチ位置のうちの少なくとも1つの中間のノッチ位置に位置したときに、前記複数の個別位置検出部のうちの互いに隣接する2つのノッチ位置に対応する2つの個別位置検出部のリードスイッチが他の個別位置検出部のリードスイッチとは異なるオン・オフ状態となり、
前記ハンドルが他方方向へ移動して各ノッチ位置に位置したときに、前記複数の個別位置検出部のうちの1つの個別位置検出部のリードスイッチが他の個別位置検出部のリードスイッチとは異なるオン・オフ状態となる、
ことを特徴とする請求項1記載の主幹制御装置のハンドル位置検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のハンドル位置検出装置を備えたことを特徴とする鉄道車両の主幹制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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