説明

ハードコートフィルムの製造方法、ハードコートフィルム、偏光板、前面板及び画像表示装置

【課題】(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルム上へのハードコート層の形成と、該基材フィルムとハードコート層との界面への凹凸の形成とを一度に行うことができ、干渉縞の発生を好適に防止できるハードコートフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルム上に、バインダー樹脂と溶剤とを含有するハードコート層用組成物を塗工し塗膜を形成する工程、上記塗膜を、温度90〜110℃、時間1〜10分の条件で乾燥させる工程、及び、乾燥させた上記塗膜を硬化させてハードコート層を形成する工程を有することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルムの製造方法、ハードコートフィルム、偏光板、前面板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、電子ペーパー等の画像表示装置においては、一般に最表面には反射防止のための光学積層体が設けられている。このような反射防止用の光学積層体は、光の散乱や干渉によって、像の映り込みを抑制したり反射率を低減したりするものである。
【0003】
従来、このような光学積層体の基材フィルムとして、トリアセチルセルロース(TAC)基材を用いることが知られている。
しかしながら、トリアセチルセルロース基材は、耐湿熱性に劣り、ハードコートフィルムを偏光板保護フィルムとして高温多湿の環境下で使用すると、偏光機能や色相等の偏光板機能を低下させるという欠点があった。
このような問題に対して、アクリル系樹脂及び/又はメタクリル系樹脂を主成分とする透明プラスチック基材を用いることが提案されている。
【0004】
しかしながら、アクリル系樹脂及び/又はメタクリル系樹脂を主成分とする透明プラスチック基材の片面若しくは両面にハードコート層を形成した光学積層体では、基材とハードコート層との密着性に劣るという問題があった。また、基材とハードコート層との間に屈折率差が生じ、当該光学積層体を用いて偏光板を形成した場合、干渉縞が発生して外観不良になるといった問題もあった。
【0005】
このような問題点に対し、例えば、特許文献1には、基材フィルムにコロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理のほか、アンカー剤又はプライマーと呼ばれる塗料の塗布を行った後、ハードコート層を形成することで、基材フィルムとハードコート層との密着性の向上を図ることが開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示の方法では、ハードコートフィルムの製造に必要な工程が増え、特別な処理をする必要があることから、やはり生産性に欠けるものであった。
【0006】
また、例えば、基材フィルムとハードコート層との界面に凹凸を形成する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、このような光学積層体では、プラスチック基材の表面にハードコート層を形成すると同時に該プラスチック基材の表面に凹凸を形成することはできず、別工程としてプラスチック基材の表面に凹凸を予め形成することが必要であった。このため、従来の基材フィルムに凹凸を形成することで干渉縞の発生を防止した光学積層体は、製造コスト的に好ましいものではなく、より簡便に製造でき干渉縞の発生を抑制できる光学積層体が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−81359号公報
【特許文献2】特開平8−197670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムとハードコート層との密着性に優れ、干渉縞の発生が充分に抑制されたハードコートフィルムを製造することができるとともに、上記基材フィルム上へのハードコート層の形成と、該基材フィルムとハードコート層との界面への凹凸の形成とを一度に行うことができるハードコートフィルムの製造方法、及び、(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムとハードコート層との界面に凹凸を有し、基材フィルムとハードコート層との密着性に優れ、干渉縞の発生が充分に抑制されたハードコートフィルム、該ハードコートフィルムを用いた偏光板及び前面板、並びに、画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ハードコート層を形成するハードコート層形成用組成物を(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルム上に塗布し形成した塗膜を、所定の条件で乾燥させることで、基材フィルム上に密着性に優れたハードコート層を形成でき、該基材フィルムとハードコート層との界面に干渉縞の発生を抑制可能な凹凸を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルム上に、バインダー樹脂と溶剤とを含有するハードコート層用組成物を塗工し塗膜を形成する工程、上記塗膜を、温度90〜110℃、時間30秒〜10分の条件で乾燥させる工程、及び、乾燥させた上記塗膜を硬化させてハードコート層を形成する工程を有することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法である。
本発明のハードコートフィルムの製造方法において、上記溶剤は、沸点が85〜165℃であることが好ましい。
【0011】
また、本発明者らは、(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルム上にハードコート層を有するハードコートフィルムについて鋭意検討した結果、基材フィルムとハードコート層との界面に凹凸を有し、該凹凸の粗さ曲線が、基材フィルムとハードコート層との断面において、特定の関係を有することで、上記基材フィルムとハードコート層との密着性に優れ、干渉縞の発生を好適に防止することができることを見出し、本発明のハードコートフィルムを完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムと、上記基材フィルムの一方の面上に形成されたハードコート層とを有するハードコートフィルムであって、上記基材フィルムと上記ハードコート層との界面に凹凸を有するものであり、上記基材フィルム及び上記ハードコート層の厚さ方向の断面において、上記基材フィルム及び上記ハードコート層の厚さ方向に垂直な方向にとった基準長さ(A)と、該基準長さ(A)内における上記界面の長さ(B)との比(B/A)が1.04〜1.09であることを特徴とするハードコートフィルムでもある。
本発明のハードコートフィルムにおいて、上記ハードコート層は、バインダー樹脂と溶剤とを含有するハードコート層用組成物を用いてなり、上記溶剤は、沸点が85〜165℃±40℃であることが好ましい。
また、上記基材フィルムのガラス転移温度が110〜140℃であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光素子の表面に本発明のハードコートフィルムを備えることを特徴とする偏光板でもある。
また、本発明は、本発明のハードコートフィルムを表面に保持することを特徴とする前面板でもある。
更に、本発明は、最表面に本発明のハードコートフィルム、若しくは、本発明の偏光板、又は、本発明の前面板を備えることを特徴とする画像表示装置でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明のハードコートフィルムの製造方法によると、(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルム上にハードコート層を有するハードコートフィルムであって、該基材フィルムとハードコート層との界面に凹凸を形成することができる。その結果、本発明により製造されたハードコートフィルムは、干渉縞の発生を好適に防止することができ、また、上記ハードコート層の形成と、上記界面における凹凸の形成とを一度に行うことができるため、製造コスト的にも優れ、更に、基材フィルムとハードコート層との接触面積が多くなることによる密着性の向上を図ることもできる。
【0015】
本発明により製造されるハードコートフィルムの基材フィルムとハードコート層との界面に形成される凹凸について、図面を用いてより詳細に説明する。
図1は、本発明により製造されるハードコートフィルムの一部を模式的に示した断面図である。
図1に示したように、本発明により製造されるハードコートフィルム10は、基材フィルム11及びハードコート層12の厚さ方向の断面において、これら基材フィルム11及びハードコート層12の界面13に凹凸14が形成されている。
本発明により製造されるハードコートフィルムは、基材フィルム11及びハードコート層12の厚さ方向に対して垂直な方向に基準長さ(A)をとり、該基準長さ(A)内における界面13の長さ(B)(図1において太線で示した)をとったとき、基準長さ(A)と長さ(B)との比(B/A)が、1.04〜1.09となることが好ましい。
上記(B/A)が1.04未満であると、得られるハードコートフィルムの基材フィルムとハードコート層との密着性に劣り、また、干渉縞が発生することを充分に防止できず、一方、1.09を超えると、ハードコートフィルムの内部ヘイズが高くなり、上記ハードコートフィルムを用いた場合の表示画像に白化の問題が生じる。
【0016】
ここで、上記基準長さ(A)と界面の長さ(B)との比は、例えば、画像解析ソフト(イメージプロ、Media Cybernetic社製)を用いた上記断面の画像解析により測定することができる。具体的には、SEMなどにより断面観察を行った画像を用い、上記画像解析ソフトを用いて、上記画像内のハードコートと基材フィルム端部間の直線距離を上記基準長さとし、上記画像解析ソフトを用いて該基準長さ(A)における上記界面の長さ(B)を測定し、得られた値から(B/A)を算出する。更に具体的には画像解析ソフトImage−Pro Plus、Sharp Stackバージョン6.2を用い、測定、較正、空間の較正ウィザード、アクティブな画像を構成、単位(microns)と操作を行い、SEM画像のスケールに合わせて定義線を引き、較正を行う。較正後、距離測定で界面の両末端の2点間距離を測定し、該基準長さ(A)とする。次にマニュアル測定でトレース線を作成(閾値=3、平滑化=0、速度=3、ノイズ=5、自動)し、末端に標準をあわせることで自動的に曲線を測定し、実測値を読み取り界面の長さ(B)とする。得られた値から(B/A)を算出する。
【0017】
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルム上に、バインダー樹脂と溶剤とを含有するハードコート層用組成物を塗工し塗膜を形成する工程を有する。
上記(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムは、製造するハードコートフィルムが、TACからなる基材フィルムを備えたハードコートフィルムと比較して、耐湿熱性及び平滑性に優れるとともに、シワの発生を好適に防止することができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」を意味する。
【0018】
上記基材フィルムを構成するアクリル系樹脂としては、例えば、環構造を有するアクリル系樹脂であることが好ましい。
上記環構造を有するアクリル系樹脂としては特に限定されないが、例えば、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、又は、イミド環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が好適に用いられる。これらの(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムは、TACからなる基材フィルムと比較して、機械的強度及び平滑性に優れ、また、透湿度が低く、高温環境下における耐熱性、高湿環境下における耐湿性等の耐久性に優れたものである。
【0019】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報等に記載のラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0020】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂としては、下記一般式(1)で表されるラクトン環構造を有することが好ましい。
【0021】
【化1】

【0022】
一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、上記有機残基は、酸素原子を含んでいてもよい。
【0023】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂の構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有率としては、5〜90質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましく、10〜60質量%であることが更に好ましく、10〜50質量%であることが最も好ましい。上記一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有率が5質量%未満であると、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不充分になるおそれがあり、90質量%を超えると、成形加工性に劣ることがある。
【0024】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂は、質量平均分子量が、1000〜200万であることが好ましく、5000〜100万であることがより好ましく、1万〜50万であることが更に好ましく、5万〜50万であることが最も好ましい。上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル樹脂の質量平均分子量が上記範囲を外れると、上述した本発明の効果を充分に発揮できないことがある。
【0025】
また、上記イミド環構造を有する(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、グルタルイミド構造又はN−置換マレイミド構造を有する(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。
【0026】
上記グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル樹脂としては、下記一般式(2)で表されるグルタルイミド構造を有することが好ましい。
【0027】
【化2】

【0028】
上記一般式(2)中、R及びRは、互いに独立して、水素原子又はメチル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はフェニル基を表す。
なお、このようなグルタルイミド構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体をメチルアミン等のイミド化剤によりイミド化して形成できる。
【0029】
上記N−置換マレイミド構造を有する(メタ)アクリル樹脂としては、下記一般式(3)で表されるN−置換マレイミド構造を有することが好ましい。
【0030】
【化3】

【0031】
上記一般式(3)中、R及びRは、互いに独立して、水素原子又はメチル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はフェニル基を表す。
なお、このようなN−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、例えば、N−置換マレイミドと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して形成できる。
【0032】
また、上記基材フィルムとしては、従来のハードコートフィルムの基材フィルムとして用いられていたものよりも高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。上記基材フィルムが従来と比較して高いTgを有することで、後述する塗膜を乾燥させる際にハードコート層用組成物に含まれた溶剤によるダメージを受けることなく、ハードコート層との界面に所定の凹凸を形成することができる。
上記基材フィルムのTgとしては、具体的には、110〜140℃であることが好ましい。110℃未満であると、ハードコート層を形成する際にハードコート層用組成物に含まれる溶剤によるダメージを受けることがあり、一方、140℃を超えると、ハードコート層との界面に凹凸を形成できないことがある。上記基材フィルムのTgのより好ましい下限は120℃、より好ましい上限は130℃である。
【0033】
上記基材フィルムの厚さとしては、20〜300μmであることが好ましく、より好ましくは上限が200μmであり、下限が30μmである。上記基材フィルムの厚さが20μm未満であると、本発明のハードコートフィルムにシワが発生することがあり、一方、300μmを超えると、本発明のハードコートフィルムが厚くなり、光透過性等の光学特性に劣ることがある。
【0034】
上記ハードコート層用組成物は、バインダー樹脂と溶剤とを含有する。
上記バインダー樹脂としては、透明性のものが好ましく、例えば、紫外線又は電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、又は、熱硬化型樹脂を挙げることができる。より好ましくは電離放射線硬化型樹脂である。
なお、本明細書において、「樹脂」は、モノマー、オリゴマー等の樹脂成分も包含する概念である。
【0035】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能化合物、又は、上記多官能化合物と(メタ)アクリレート等の反応生成物(例えば多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)等を挙げることができる。
【0036】
上記化合物のほかに、不飽和二重結合を有する比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も上記電離放射線硬化型樹脂として使用することができる。
【0037】
上記電離放射線硬化型樹脂は、溶剤乾燥型樹脂と併用して使用することもできる。溶剤乾燥型樹脂を併用することによって、塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。上記電離放射線硬化型樹脂と併用して使用することができる溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、製膜性、透明性や耐候性のという観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0038】
上記他のバインダー樹脂として使用できる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0039】
上記溶剤としては特に限定されないが、比較的高い沸点を有するものが好ましく、具体的には、85〜165℃であることが好ましい。上記ハードコート層用組成物がこのような沸点の溶剤を含有することで、続く塗膜の乾燥工程における乾燥条件を、後述する範囲内で上記基材フィルムの種類(Tg)及びバインダー樹脂の種類に合せて適宜調整することで、基材フィルムとハードコート層との界面に凹凸を好適に形成することができる。
また、本発明において、上記溶剤としては、上記基材フィルムのTgに対して、±40℃であることが好ましい。このような沸点を有する溶剤としては、例えば、メチルイソブチルケトン(沸点116℃)、ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、シクロヘキサノン(沸点157℃)、酢酸イソプロピル(沸点88℃)、酢酸ブチル(沸点126℃)、酢酸イソブチル(沸点116℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、トルエン(沸点110℃)等が挙げられる。なかでも、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが好適に用いられる。
【0040】
上記ハードコート層用組成物は、更に、レベリング剤を含有することが好ましい。
上記レベリング剤を含有することにより、ハードコート層の平面性を良好にし、ハードコートフィルムのブロッキングを防止することができる。
上記レベリング剤としては、例えば、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤等の公知のものを挙げることができる。なかでも、少ない添加量でのインキの安定性、塗工面の安定性を確保できる点で、フッ素系レベリング剤が好ましい。
【0041】
上記レベリング剤の含有量は、ハードコート層用組成物のバインダー樹脂固形分100質量部に対して0.05〜1質量部であることが好ましい。0.05質量部未満であると、ハードコート層の平面性が悪くなり、ヘイズやムラが生じやすいといったおそれがある。一方、1質量部を超えると、ハードコート層用組成物の分散性やポットライフが悪くなりやすく、後述するブロッキング防止剤の凝集や塗膜への悪影響でハードコート層のヘイズが高くなるおそれがある。
【0042】
上記ハードコート層用組成物はまた、ブロッキング防止剤を含有していてもよい。
上記ブロッキング防止剤としては、反応基を持たない、平均一次粒径が100〜600nmのケイ素又はスチレン等の粒子を挙げることができる。
上記平均一次粒径が100nm未満であると、ブロッキング防止性が発揮されないおそれがある。600nmを超えると、ヘイズが高くなるおそれがある。上記平均一次粒径は、100〜350nmであることがより好ましい。
なお、上記平均一次粒径はメチルイソブチルケトン5重量%分散液の状態でレーザー回折散乱法粒度分布測定装置により測定して得られる値である。
【0043】
上記ブロッキング防止剤の含有量は、ハードコート層用組成物のバインダー樹脂固形分100質量部に対して0.5〜3質量部であることが好ましい。0.5質量部未満であると、ブロッキング防止性が発揮されないおそれがある。3質量部を超えると、分散性が著しく悪化し、凝集・ゲル化の原因となり、結果として本発明のハードコートフィルム表面の外観上の欠点やヘイズの上昇につながるおそれがある。
【0044】
上記ハードコート層用組成物は、更に、光重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光重合開始剤としては、公知のものであれば特に限定されず、例えば、アセトフェノン類(例えば、商品名イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モリフォリノプロパン−1−オン)、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を挙げることができる。なかでも、アセトフェノン類であることが好ましい。
【0045】
上記光重合開始剤の含有量は、ハードコート層用組成物中のバインダー樹脂固形分100質量部に対して、1〜7質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、光重合開始剤の量が不足し、硬化不足となるおそれがある。7質量部を超えると、光重合開始剤が過剰となり、過剰であることによる光重合反応の違いが生じ、かえって硬度不足を引き起こす、溶け残りによる欠点が生じる、といったおそれがある。
上記光重合開始剤の含有量は、上記樹脂固形分100質量部に対して2〜5質量部であることがより好ましい。
【0046】
上記ハードコート層用組成物は、上述した成分以外に、必要に応じて他の成分を更に含んでいてもよい。
上記他の成分としては、熱重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、粘度調整剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防汚剤、スリップ剤、屈折率調整剤、分散剤等を挙げることができる。これらは公知のものを使用することができる。
【0047】
上記ハードコート層用組成物は、総固形分が20〜50%であることが好ましい。20%より低いと、残留溶剤が残ったり、白化が生じるおそれがある。50%を超えると、ハードコート層用組成物の粘度が高くなり、塗工性が低下して表面にムラやスジが出たり、干渉縞が発生するおそれがある。上記固形分は、30〜45%であることがより好ましい。
【0048】
上記ハードコート層用組成物は、上述のバインダー樹脂、及び、レベリング剤、ブロッキング防止剤、光重合開始剤、並びに、他の成分を溶剤中に混合分散させて調製することができる。
上記混合分散は、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー等の公知の装置を使用して行うとよい。
【0049】
上記ハードコート層用組成物を塗布して塗膜を形成する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法を挙げることができる。
【0050】
また、上記ハードコート層用組成物の塗布量(乾燥塗布量)は、3〜15g/mであることが好ましい。3g/m未満であると、所望の硬度のハードコート層が得られないおそれがある。15g/mを超えると、カールやダメージの防止が不充分となるおそれがある。上記塗布量は、4〜10g/mであることがより好ましい。
【0051】
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、上記塗膜を、温度90〜110℃、時間30秒〜10分の条件で乾燥させる工程を有する。
上記基材フィルム上に形成した塗膜を上記条件で乾燥させることで、上記基材フィルムと、上記乾燥させた塗膜との界面に凹凸を形成することができる。
上記乾燥温度が90℃未満、又は、乾燥時間が30秒未満であると、上記凹凸の形成が不充分となり、得られるハードコートフィルムの基材フィルムとハードコート層との密着性が不充分となり、また、干渉縞防止性も不充分となる。一方、上記乾燥温度が110℃を超える、又は、乾燥時間が10分を超えると、生産性に劣る、基材フィルムのTgに近くなり、基材フィルムがもろくなる、凹凸が過剰にでき、白化するといったおそれがある。上記塗膜の乾燥温度は100〜110℃であることが好ましく、上記塗膜の乾燥時間の好ましい下限は1分、好ましい上限は5分である。
なお、上記ハードコート層用組成物に用いるバインダー樹脂及び溶剤の種類、並びに、基材フィルムの種類等に応じて適切な乾燥温度及び乾燥時間を適宜選択することで、上記基材フィルムと上記塗膜との界面に図1を用いて説明したような所定の凹凸を形成することができる。
【0052】
上記条件にて塗膜を乾燥させることで基材フィルムと乾燥させた塗膜との界面に凹凸が形成される理由は、以下の通りであると推測される。
すなわち、基材フィルムのTgと乾燥にかかる温度が近いことで基材フィルムに影響が及び、僅かに基材フィルムが溶剤の浸透・膨潤を許容する状態に近い、及び/又は、基材フィルムがTgに迫ることでやや軟化しているものと推測され、かつ、上述した沸点の溶剤を用いることで、高い乾燥温度で乾燥中の塗膜の溶剤濃度が急激に減少することを防ぎ、僅かに基材フィルムを膨潤・侵食することで、結果的に上記界面に凹凸が形成されるものと推測される。
【0053】
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、乾燥させた上記塗膜を硬化させてハードコート層を形成する工程を有する。
上記塗膜を硬化させる方法としては、上記ハードコート層用組成物の内容等に応じて公知の方法を適宜選択すればよい。例えば、上記ハードコート層用組成物に含まれるバインダー樹脂が紫外線硬化型のものであれば、塗膜に紫外線を照射することにより硬化させればよい。
上記紫外線を照射する場合は、紫外線照射量が80mJ/cm以上であることが好ましく、100mJ/cm以上であることがより好ましく、130mJ/cm以上であることが更に好ましい。
【0054】
上記ハードコート層は、層厚みが3〜15μmであることが好ましい。
3μm未満であると、硬度が不充分となるおそれがある。15μmを超えると、残留溶剤が残ったり、塗膜密着性が低下するおそれがある。上記ハードコート層の層厚みは、下限が4〜10μmであることがより好ましい。
上記層厚みは、ハードコート層の断面を、電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察することにより測定して得られた値である。
【0055】
また、本発明により得られたハードコートフィルムは、硬度が、JIS K5600−5−4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)において、3H以上であることが好ましく、4H以上であることがより好ましい。
【0056】
また、上記ハードコートフィルムは、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。90%未満であると、ディスプレイ表面に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある他、所望のコントラストが得られないおそれがある。上記全光線透過率は、91%以上であることがより好ましい。
上記全光線透過率は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により測定することができる。
【0057】
また、上記ハードコートフィルムは、ヘイズが0.7%以下であることが好ましい。0.7%を超えると、所望の光学特性が得られず、上記ハードコートフィルムを画像表示表面に設置した際の視認性が低下する。上記ヘイズのより好ましい下限は0.1%であり、より好ましい上限は0.5%である。
なお、上記ヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7136に準拠した方法により測定することができる。
【0058】
上記ハードコートフィルムは、また、本発明の効果が損なわれない範囲内で、必要に応じて他の層(防眩層、帯電防止層、低屈折率層、防汚層、接着剤層、他のハードコート層等)の1層又は2層以上を適宜形成してもよい。なかでも、防眩層、帯電防止層、低屈折率層及び防汚層のうち少なくとも一層を有することが好ましい。これらの層は、公知の反射防止用積層体と同様のものを採用することもできる。
【0059】
このような本発明のハードコートフィルムの製造方法によると、(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルム及びハードコート層の界面に、図1に示したような凹凸の形成と、ハードコート層の形成とを一度に行うことができるため、製造コスト的に非常に優れたものとなり、また、製造されたハードコートフィルムは、干渉縞の発生を効果的に抑制することができる。
また、上記ハードコートフィルムは、上記基材フィルムとハードコート層との界面に凹凸が形成されたものであるため、該基材フィルムとハードコート層との接触面積が増加し、密着性が極めて優れたものとなる。
このような基材フィルムとハードコート層との密着性の向上は、本発明のように、基材フィルム上へのハードコート層の形成と、基材フィルム及びハードコート層の界面への凹凸の形成とを一度に行うことにより得ることができる。すなわち、従来のハードコートフィルムのように、基材フィルム上に予め凹凸を形成しておき、基材フィルムの予め形成した凹凸を有する面上にハードコート層を形成した場合、基材フィルムとハードコート層との密着性を充分に向上させることはできない。これは、基材フィルムに塗液を塗布し、凹凸を作りながら乾燥・硬化させる製造プロセスの中で基材を溶剤・温度によって侵食(浸透、膨潤)する作用が働き、ハードコートと基材との界面付近で両者の相互作用が働く状態となり密着力向上につながっているからと推測される。
【0060】
次に、本発明のハードコートフィルムについて説明する。
本発明のハードコートフィルムは、(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムと、上記基材フィルムの一方の面上に形成されたハードコート層とを有するハードコートフィルムであって、上記基材フィルムと上記ハードコート層との界面に凹凸を有するものであり、上記基材フィルム及び上記ハードコート層の厚さ方向の断面において、上記基材フィルム及び上記ハードコート層の厚さ方向に垂直な方向にとった基準長さ(A)と、該基準長さ(A)内における上記界面の長さ(B)との比(B/A)が1.04〜1.09であることを特徴とするものである。
【0061】
本発明のハードコートフィルムにおいて、上記基準長さ(A)及び界面の長さ(B)並びにこれらの比(B/A)は、図1を用いて説明したとおりである。
また、本発明のハードコートフィルムにおける(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルム、及び、ハードコート層としては、上述した本発明のハードコートフィルムの製造方法において説明したものと同様である。
【0062】
このような本発明のハードコートフィルムは、上述した本発明のハードコートフィルムの製造方法により製造することができる。
【0063】
本発明のハードコートフィルムは、偏光板に好適に用いることができる。
本発明のハードコートフィルムを用いた偏光板としては、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光素子の表面に本発明のハードコートフィルムを備えるものが挙げられる。
このような本発明のハードコートフィルムを用いた偏光板もまた、本発明の1つである。
【0064】
上記偏光素子としては特に限定されず、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を使用することができる。上記偏光素子と本発明のハードコートフィルムとのラミネート処理においては、光透過性基材にケン化処理を行うことが好ましい。ケン化処理によって、接着性が良好になり帯電防止効果も得ることができる。
【0065】
本発明はまた、最表面に本発明のハードコートフィルム、若しくは、本発明の偏光板、又は、本発明の前面板を備えてなる画像表示装置でもある。
上記画像表示装置は、LCD、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT、タッチパネル、電子ペーパー等が挙げられる。
【0066】
上記LCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、本発明のハードコートフィルム若しくは偏光板又は前面板が形成されてなるものである。
【0067】
本発明が上記ハードコートフィルムを有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源はハードコートフィルムの下側(基材側)から照射される。なお、STN型の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
【0068】
上記PDPは、表面ガラス基板と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又は、その前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述したハードコートフィルムを備えるものでもある。
なお、このような本発明のハードコートフィルムを表面保持した前面板もまた、本発明の1つである。
【0069】
その他の画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質等の発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の最表面又はその前面板の表面に上述したハードコートフィルムを備えるものである。
【0070】
本発明のハードコートフィルムは、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、液晶パネル、PDP、ELD、タッチパネル、電子ペーパー等の高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0071】
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムの一方の面上に、ハードコート層の形成と、該基材フィルムとハードコート層との界面に所定の凹凸の形成とを一度に行うことができるため、製造コスト的に優れたものであり、また、得られたハードコートフィルムは、干渉縞の発生を好適に防止することができる。更に、本発明により得られたハードコートフィルムは、基材フィルムとフィルム層との密着性に極めて優れたものとすることができる。
また、本発明のハードコートフィルムは、(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面上に形成されたハードコート層との間に所定の凹凸が形成されたものであるため、干渉縞の発生を防止できるとともに、基材フィルムとハードコート層との密着性が極めて優れたものとなる。
このため、本発明のハードコートフィルムは、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、電子ペーパー等のディスプレイ、特に高精細化ディスプレイに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明のハードコートフィルムの製造方法により製造されるハードコートフィルムの一部を模式的に示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例のみに限定されるものではない。
なお、文中、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
【0074】
(実施例1)
イルガキュア184(光重合開始剤、BASFジャパン社製)4質量部を、メチルイソブチルケトン(MIBK)中に添加して攪拌し溶解させて、最終固形分が40質量%の溶液を調製した。この溶液に、樹脂成分として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を添加して攪拌した。この溶液に、レベリング剤(製品名:ディフェンザMCF350−5;DIC社製)を固形分比で0.1質量部添加して撹拌し、ハードコート層用組成物を調製した。
このハードコート層用組成物を、アクリル基材(厚み40μm、Tg=125℃)上に、スリットリバースコートにより、乾燥塗布量8g/mとなるように塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を100℃で1分間乾燥させた後、紫外線照射量150mJ/cmで紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み7μmのハードコート層を形成し、実施例1のハードコートフィルムを得た。
【0075】
(実施例2)
メチルイソブチルケトン(MIBK)をシクロヘキサノンに変更した以外は、実施例1と同様にして調製したハードコート層用組成物を用い、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0076】
(実施例3)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)をジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)に変更した以外は、実施例2と同様にして調製したハードコート層用組成物を用い、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0077】
(実施例4)
塗膜の乾燥時間を2分とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0078】
(実施例5)
塗膜の乾燥温度を95℃とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0079】
(実施例6)
塗膜の乾燥温度を110℃とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0080】
(実施例7)
塗膜の乾燥時間を10分とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0081】
(比較例1)
塗膜の乾燥温度を70℃とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0082】
(比較例2)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)をジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)に変更し、塗膜の乾燥温度を70℃とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0083】
(比較例3)
塗膜の乾燥時間を30秒とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0084】
(比較例4)
塗膜の乾燥温度を120℃とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0085】
(比較例5)
塗膜の乾燥時間を15分とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0086】
(参考例1)
メチルイソブチルケトン(MIBK)をメチルエチルケトン(MEK)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製したハードコート層用組成物を用い、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0087】
実施例、比較例で得られたハードコートフィルムについて、下記の評価を行った。結果を表1に示した。
【0088】
(密着性)
JIS K5600に準拠し、クロスカットCCJ−1(コーテック社製)を用い、得られたハードコートフィルムのハードコート層の表面に碁盤目状の切り傷を入れ、1mm角の100マス作製する。ニチバン社製工業用24mm幅のセロテープ(登録商標)を碁盤目の上に貼り、その上からヘラで往復10回擦って、密着させ150°方向に急速剥離を行ない、同様の動作を5回繰り返し、残った升目の数をカウントする。残った升目の数を分子、升目の全個数を分母にして、以下の基準で評価した。
○: 100/100
×: 100/100に満たない
【0089】
(ヘイズ)
ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7136に準拠してヘイズを求めた
【0090】
(全光線透過率)
ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により全光線透過率を求めた。
【0091】
(基準長さ(A)内における界面の長さ(B)との比(B/A))
図1を用いて説明した方法により、得られたハードコート層の厚さ方向に垂直な方向にとった基準長さ(A)と、該基準長さ(A)内における界面の長さ(B)との比(B/A)を求めた。
【0092】
【表1】

【0093】
表1に示したように、実施例に係るハードコートフィルムは、密着性に優れ、ヘイズが低く、全光線透過率も充分に高かった。なお、実施例に係るハードコートフィルムには、干渉縞も確認されなかった。
これに対して、比較例1〜3に係るハードコートフィルムは、密着性が不充分であり、比較例4、5に係るハードコートフィルムは、ヘイズが高いものであった。
また、溶剤として沸点の低いMEK(沸点:79.5℃)を用いた参考例1に係るハードコートフィルムは、密着性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のハードコートフィルムは、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、タッチパネル、電子ペーパー等のディスプレイ、特に高精細化ディスプレイに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0095】
10 ハードコートフィルム
11 基材フィルム
12 ハードコート層
13 界面
14 凹凸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルム上に、バインダー樹脂と溶剤とを含有するハードコート層用組成物を塗工し塗膜を形成する工程、
前記塗膜を、温度90〜110℃、時間1〜10分の条件で乾燥させる工程、及び、
乾燥させた前記塗膜を硬化させてハードコート層を形成する工程を有する
ことを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
【請求項2】
溶剤は、沸点が85〜165℃である請求項1記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項3】
(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面上に形成されたハードコート層とを有するハードコートフィルムであって、
前記基材フィルムと前記ハードコート層との界面に凹凸を有するものであり、
前記基材フィルム及び前記ハードコート層の厚さ方向の断面において、前記基材フィルム及び前記ハードコート層の厚さ方向に垂直な方向にとった基準長さ(A)と、該基準長さ(A)内における前記界面の長さ(B)との比(B/A)が1.04〜1.09である
ことを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項4】
ハードコート層は、バインダー樹脂と溶剤とを含有するハードコート層用組成物を用いてなり、前記溶剤は、沸点が85〜165℃である請求項3記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
基材フィルムのガラス転移温度が110〜140℃である請求項3又は4記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
偏光素子を備えてなる偏光板であって、
前記偏光素子の表面に請求項3、4又は5記載のハードコートフィルムを備えることを特徴とする偏光板。
【請求項7】
請求項3、4又は5記載のハードコートフィルムを表面に保持することを特徴とする前面板。
【請求項8】
最表面に請求項3、4又は5記載のハードコートフィルム、若しくは、請求項6記載の偏光板、又は、請求項7記載の前面板を備えることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−50642(P2013−50642A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189447(P2011−189447)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】