説明

ハードコートフィルム

【課題】ハードコート層の本来の機能である機械的強度を有するとともに、防指紋性にも優れたハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】透明フィルム2上に、第1のハードコート層3、第2のハードコート層4がこの順に設けられ、第1のハードコート層3は鉛筆硬度が3H以上であり、第2のハードコート層4は厚み0.1〜1μm、オレイン酸の接触角30°以下かつ水の接触角80°以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光学表示装置等に用いられるハードコートフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置(LCD)、プロジェクションディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ(ELD)、タッチパネル等の光学表示装置、光学レンズ、眼鏡レンズ、フォトリソグラフィープロセスにおける反射防止処理、太陽電池パネル表面の反射防止処理等に用いられる光学フィルムは一般に、荷重のかかる引っ掻きによる傷を防止し、表面の機械的強度を改善するためにその表面にハードコート層が設けられる(特許文献1〜4参照)。
【0003】
さらに、タッチパネル等の光学表示装置においては、これらの光学表示装置の表面を指で触れても指紋跡が付かない防指紋性も求められている。
【0004】
ハードコートフィルムの防指紋性を向上させる技術としては、シリコーン系の化合物等の撥水・親油性を付与する成分をハードコート層形成用の樹脂組成物に配合すること等が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−129130号公報
【特許文献2】特開2000−52472号公報
【特許文献3】特開平11−34243号公報
【特許文献4】特開2008−239724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような撥水・親油性を付与する成分をハードコート層形成用の樹脂組成物に配合すると、ハードコート層の本来の機能である、表面硬度等の機械的強度が低下してしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、ハードコート層の本来の機能である機械的強度を有するとともに、防指紋性にも優れたハードコートフィルムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0009】
第1に、本発明のハードコートフィルムは、透明フィルム上に、第1のハードコート層、第2のハードコート層がこの順に設けられ、第1のハードコート層は鉛筆硬度が3H以上であり、第2のハードコート層は厚み0.1〜1μm、オレイン酸の接触角30°以下かつ水の接触角80°以上であることを特徴とする。
【0010】
第2に、上記第1のハードコートフィルムにおいて、第2のハードコート層は、含フッ素官能基を有する(メタ)アクリレートおよび重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含有する(メタ)アクリル系の電離放射線硬化型樹脂組成物を硬化して得られたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記第1の発明によれば、第1のハードコート層の表面にオレイン酸の接触角30°以下かつ水の接触角80°以上である厚み0.1〜1μmの第2のハードコート層を設けることで、表面を指で触れても指紋跡が付かない防指紋性を付与することができる。さらに、第2のハードコート層の厚みを0.1〜1μmとするとともに第1のハードコート層の鉛筆硬度を3H以上とすることで、ハードコート層の本来の機能である機械的強度も実用上満足な程度に維持することができる。
【0012】
上記第2の発明によれば、第2のハードコート層の材料として上記の特定の(メタ)アクリル系の電離放射線硬化型樹脂組成物を用いることで、上記第1の発明の効果に加え、第1のハードコート層とともにハードコート層全体としての機械的強度を維持しかつ防指紋性も有する第2のハードコート層を容易に形成することができ、フッ素含有量の調整により接触角の制御も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明のハードコートフィルムの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明のハードコートフィルムの一例を示す断面図である。
【0016】
このハードコートフィルム1は、透明フィルム2の上に、第1のハードコート層3、第2のハードコート層4がこの順に設けられている。
【0017】
第1のハードコート層3は、鉛筆硬度が3H以上であり、第1のハードコート層3および第2のハードコート層4の全体としての機械的強度を付与している。そして第2のハードコート層4は、厚み0.1〜1μm、オレイン酸の接触角30°以下かつ水の接触角80°以上であり、第1のハードコート層3とともに用いることで全体として機械的強度を維持しつつ、ハードコートフィルム1に防指紋性を付与している。
【0018】
なお、図1に示すハードコートフィルム1では、透明フィルム2の片面に第1のハードコート層3および第2のハードコート層4を設けているが、透明フィルム2の両面に第1のハードコート層3および第2のハードコート層4を設けるようにしてもよい。
【0019】
本発明において、透明フィルム2としては、透明性、屈折率、ヘイズ等の光学特性や、耐衝撃性、耐熱性、耐久性等の物性を考慮して各種の透明樹脂フィルムを用いることができる。
【0020】
このような透明樹脂フィルムの樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ナイロン−6、ナイロン−66等のポリアミド樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、あるいはこれらの樹脂を構成するモノマーの共重合体等の樹脂フィルムを用いることができ、これらの樹脂材料をフィルム状に成形することにより透明樹脂フィルムを製造することができる。
【0021】
また、上記の樹脂材料に、公知の添加剤、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、難燃剤等を配合したものを用いて透明フィルム2を製造することもできる。
【0022】
透明フィルム2は、単層のものであっても、あるいは複数の樹脂材料による各層を積層した多層のものであってもよい。また、第1のハードコート層3との密着性を向上させる等のために、透明フィルム2の表面に、従来より用いられている厚みが例えば150nm以下の薄い易接着層を設けたものであってもよい。
【0023】
透明フィルム2の厚みは、特に限定されないが、例えば、50〜200μmである。
【0024】
本発明において、第1のハードコート層3は、透明フィルム2よりも硬度の高い被膜であり、透明フィルム2の表面の硬度を向上させ、荷重のかかる引っ掻きによる傷を防止し、第2のハードコート層4とともにハードコートフィルム1の機械的強度を改善するものである。
【0025】
第1のハードコート層3の鉛筆硬度は3H以上、好ましくは3Hである。第1のハードコート層3の鉛筆硬度を3H以上とすることにより、防指紋性を付与するための第2のハードコート層4をその表面に設けても、第1のハードコート層3および第2のハードコート層4の全体としてハードコートフィルム1の機械的強度を十分に得ることができる。
【0026】
第1のハードコート層3は、反応性硬化型樹脂組成物、すなわち、熱硬化型樹脂組成物と電離放射線硬化型樹脂組成物のうち少なくとも一方を用いて形成することができる。
【0027】
熱硬化型樹脂組成物に配合する熱硬化型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を用いることができる。
【0028】
熱硬化型樹脂組成物には、上記の熱硬化型樹脂に加えて、必要に応じて、例えば、架橋剤、重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、溶媒等を配合することができる。
【0029】
熱硬化型樹脂組成物を用いて第1のハードコート層3を形成する際には、熱硬化型樹脂組成物を、透明フィルム2の表面に塗布した後、加熱により乾燥硬化させるのが好ましい。
【0030】
電離放射線硬化型樹脂組成物に配合する樹脂成分としては、アクリレート系の官能基を有する化合物が好ましく用いられる。アクリレート系の官能基を有する化合物としては、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール樹脂等の多官能(メタ)アクリレートのオリゴマー、プレポリマー等を用いることができる。
【0031】
また、電離放射線硬化型樹脂組成物には、上記のオリゴマーやプレポリマーとともに、反応性希釈剤としてのモノマーを配合することができる。このようなモノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、あるいは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーを用いることができる。
【0032】
さらに、上記の電離放射線硬化型樹脂組成物を紫外線硬化型樹脂組成物とする場合には、光重合開始剤を配合することが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類等を用いることができる。
【0033】
また、光重合開始剤とともに光増感剤を用いてもよい。光増感剤としては、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、チオキサントン等を用いることができる。
【0034】
光重合反応する紫外線硬化型樹脂組成物を用いて第1のハードコート層3を形成する際には、例えば、紫外線硬化型樹脂組成物を、透明フィルム2の表面に塗布し乾燥した後、紫外線照射により硬化させることができる。
【0035】
第1のハードコート層3は、反射率低減等の点からは、透明フィルム2と屈折率が近似していることが好ましい。例えば、透明フィルム2としてポリエステル樹脂フィルム等を用いる場合には、第1のハードコート層3の屈折率は、好ましくは1.40〜1.60である。
【0036】
また、第1のハードコート層3の屈折率を増大させるために、第1のハードコート層3形成用の組成物中に高屈折率粒子、すなわち高屈折率の金属酸化物の超微粒子を含有させることができる。高屈折率粒子としては、例えば、屈折率が1.6以上で粒径が0.5〜200nmのものを用いることができる。
【0037】
上記の高屈折率の金属酸化物の超微粒子としては、例えば、亜鉛、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ランタン、ジルコニウム、錫、インジウム、アンチモン、およびニオブから選ばれる少なくとも1種の酸化物の粒子を用いることができる。具体的には、例えば、ZnO(屈折率1.90)、TiO(屈折率2.3〜2.7)、Al(屈折率1.63)、CeO(屈折率1.95)、Y(屈折率1.87)、La(屈折率1.95)、ZrO(屈折率2.05)、SnO、ITO(屈折率1.95)、Sb(屈折率1.71)、Nb(屈折率2.2〜2.3)等の超微粒子を用いることができる。
【0038】
第1のハードコート層3には、帯電防止性を付与し、ハードコートフィルム1としての帯電防止性や埃付着防止性を確保することが好ましい。第1のハードコート層3に帯電防止性を付与するために、例えば、第1のハードコート層3に導電性ナノ粒子を含有させることができる。
【0039】
導電性ナノ粒子としては、例えば、導電性の金属酸化物で粒径が0.5〜200nmの超微粒子を用いることができる。具体的には、例えば、インジウム、錫、アンチモン、鉛、およびチタンから選ばれる少なくとも1種の酸化物の粒子を用いることができる。
具体的には、例えば、酸化インジウム(ITO)、酸化錫(SnO)、アンチモン/錫酸化物(ATO)、アンチモン酸化物(Sb)、鉛/チタン酸化物(PTO)等の超微粒子等を用いることができる。
【0040】
第1のハードコート層3の厚みは、十分な機械的強度を得る点等を考慮すると、例えば2〜10μmである。
【0041】
本発明において、第2のハードコート層4は、透明フィルム2よりも硬度の高い被膜であって、透明フィルム2の表面の硬度を向上させるとともに、ハードコートフィルム1の防指紋性を改善するものである。
【0042】
第2のハードコート層4の厚みは、0.1〜1μmである。第2のハードコート層4の厚みが小さ過ぎると、防指紋性が低下する場合があり、第2のハードコート層4の厚みが大き過ぎると、第1のハードコート層3および第2のハードコート層4の全体としての機械的強度が低下する場合がある。
【0043】
第2のハードコート層4は、表面のオレイン酸の接触角が30°以下であり、かつ水の接触角が80°以上である。これらの接触角が当該範囲内であることにより、ハードコートフィルム1の表面を指で触ってもその撥水・親油性により指紋跡が視認されなくなり、防指紋性を付与することができる。
【0044】
このような第2のハードコート層4は、例えば、含フッ素官能基を有する(メタ)アクリレート化合物および重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含有する(メタ)アクリル系の電離放射線硬化型樹脂組成物を用いて形成することができる。なお、本明細書において(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを意味する。
【0045】
含フッ素官能基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、含フッ素官能基を有する単官能または多官能の(メタ)アクリレートモノマー、オリゴマー、プレポリマー等を用いることができる。
【0046】
例えば、次の一般式(I)、(II)で表される化合物を用いることができる。
【0047】
【化1】

【0048】
【化2】

【0049】
上記一般式(I)中、R1は、水素原子、炭素数が1〜3のアルキル基、またはハロゲン原子を示す。Rfは、完全にまたは部分的にフッ素置換されたアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環、またはアリール基を示す。
【0050】
2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、ヘテロ基、アリール基、または上記Rfで定義される基を示す。R1、R2、R3、およびRfは、それぞれフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。また、R2、R3、およびRfに任意の2つ以上の基が互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0051】
また、上記一般式(II)中、Aは、完全にまたは部分的にフッ素化されたn価の有機基を示す。R4は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン原子を示す。R4はフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。nは2〜8の整数を示す。
【0052】
また、含フッ素官能基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H−ペルフルオロ−n−ブチル(メタ)アクリレート、1H,1H−ペルフルオロ−n−ペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H−ペルフルオロ−n−ヘキシル(メタ)アクリレート、1H,1H−ペルフルオロ−n−オクチル(メタ)アクリレート、1H,1H−ペルフルオロ−n−デシル(メタ)アクリレート、1H,1H−ペルフルオロ−n−ドデシル(メタ)アクリレート、1H,1H−ペルフルオロイソブチル(メタ)アクリレート、1H,1H−ペルフルオロイソオクチル(メタ)アクリレート、1H,1H−ペルフルオロイソドデシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−ペルフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ペルフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ペルフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H,1H,11H−ペルフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、3,3,3−トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル(メタ)アクリレート、2−(ペルフルオロ−n−プロピル)エチル(メタ)アクリレート、2−(ペルフルオロ−n−ブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(ペルフルオロ−n−ヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(ペルフルオロ−n−オクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(ペルフルオロ−n−デシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(ペルフルオロイソブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(ペルフルオロイソオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4−テトラフルオロブチル(メタ)アクリレート、1H,1H,6H−ペルフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、1H,1H,8H−ペルフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H,1H,10H−ペルフルオロデシル(メタ)アクリレート、1H,1H,12H−ペルフルオロドデシル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートジフルオロブチレート等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーとしては、例えば、含フッ素エチレン性モノマーに由来する主鎖を有し、架橋硬化のための反応性基を側鎖に有するものを用いることができる。側鎖の反応性基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、α−フルオロアクリロイルオキシ基、エポキシ基等が挙げられる。例えば、このような含フッ素反応性ポリマーとして、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、イソプロピルアルコール、2−ブタノール等のアルコール系溶媒等に可溶なものを用いることができる。
【0054】
第2のハードコート層4を形成するための(メタ)アクリル系の電離放射線硬化型樹脂組成物には、粘度調整や塗布後の表面レベリングのために、反応を阻害しない限り、溶媒を含有させても良い。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒等が挙げられる。
【0055】
また、フッ素含有量を調整する等の目的で、フッ素を含有しない多官能(メタ)アクリル酸エステル、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を50質量%以下の割合で混合して用いることができる。
【0056】
さらに、上記の電離放射線硬化型樹脂組成物を紫外線硬化型樹脂組成物とする場合には、光重合開始剤を配合することが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類等を用いることができる。
【0057】
光重合反応する紫外線硬化型樹脂組成物を用いて第2のハードコート層4を形成する際には、例えば、紫外線硬化型樹脂組成物を、第1のハードコート層3の表面に塗布し乾燥した後、紫外線照射により硬化させることができる。
【0058】
第2のハードコート層4の屈折率は、好ましくは1.35〜1.65である。
【0059】
第1のハードコート層3および第2のハードコート層4の全体としての鉛筆硬度は、3H以上である。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
ポリエステルフィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製「A4300」、PETフィルムの厚み 100μm、易接着層付き)を用いた。
【0061】
このポリエステルフィルム上に、第1のハードコート層形成用の紫外線硬化型樹脂組成物としてアクリル系紫外線硬化型樹脂(大日精化工業(株)製「セイカビームPET−HC301」、固形分50%)をワイヤーバーコーター#10番で塗布した。
【0062】
これを80℃で5分間乾燥させた後に、UV照射(450mJ/cm)して硬化させることにより、厚み5μmのハードコート層を形成した。
【0063】
次に、第2のハードコート層形成用の紫外線硬化型樹脂組成物として、含フッ素官能基を有する(メタ)アクリレート化合物を含有するフッ素含有紫外線硬化型樹脂(DIC(株)製「ディフェンサOP−40」、固形分10%)を30質量部、およびPET−HC301を70質量部配合したものを用いた。これをワイヤーバーコーター#06番で塗布し、80℃で5分間乾燥させた後に、UV照射(450mJ/cm)して硬化させた。これにより、厚み0.8μmの第2のハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
<実施例2>
実施例1において、第2のハードコート層形成用の紫外線硬化型樹脂組成物のディフェンサOP−40の配合量を60質量部、PET−HC301の配合量を40質量部に変更し、それ以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
<実施例3>
実施例1において、第2のハードコート層形成用の紫外線硬化型樹脂組成物のディフェンサOP−40を、含フッ素官能基を有する(メタ)アクリレート化合物を含有するフッ素含有紫外線硬化型樹脂(DIC(株)製「品番OP−43」、固形分10%)に変更し、それ以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
<比較例1>
実施例1において、第2のハードコート層を形成せず、それ以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
<比較例2>
実施例1において、第2のハードコート層形成用の紫外線硬化型樹脂組成物のディフェンサOP−40の配合量を10質量部、PET−HC301の配合量を90質量部に変更し、それ以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
<比較例3>
実施例1において、第1のハードコート層形成用の紫外線硬化型樹脂組成物を、大日精化工業(株)製「セイカビームPET−HC15」に変更し、それ以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0064】
実施例および比較例のハードコートフィルムについて、次の測定および評価を行った。
[接触角]
接触角計(協和界面科学(株)製「DM−500」)を用いて、室温(20℃、50%RH)で直径1μlの液滴を針先に作り、これをハードコートフィルムの表面に接触させて液滴を作製した。接触角は、ハードコートフィルムと液体が接する点における液体表面に対する接線とハードコートフィルム表面がなす角として液体を含む方の角度で定義した。液体には、オレイン酸および蒸留水を用いた。
[防指紋性]
ハードコートフィルムの表面を指で触った後、指紋跡を目視により観察し、次の基準により評価した。
○:指紋跡が全く残らない。
×:指紋跡が目立つ。
[鉛筆硬度]
異なる硬度の鉛筆を用い、750g荷重下でJIS K5600に示される試験法により鉛筆硬度を測定した。
[耐擦傷性]
#0000のスチールウールにより、ハードコートフィルムの表面を250gの荷重をかけながら100回摩擦し、傷の発生の有無および傷の程度を目視により観察し、次の基準により評価した。
○:傷の発生が全く認められない。
×:無数の傷が認められる。
【0065】
評価結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1より、透明フィルム上に、第1のハードコート層、第2のハードコート層がこの順に設けられ、第1のハードコート層の鉛筆硬度を3H以上とし、第2のハードコート層を厚み0.1〜1μm、オレイン酸の接触角30°以下かつ水の接触角80°以上とした実施例1〜3では、防指紋性を有し、さらにハードコート層の本来の機能である機械的強度も実用上満足な程度に維持されていた。
【0068】
一方、第2のハードコート層を形成しなかった比較例1では、防指紋性が低下した。
【0069】
第2のハードコート層を形成したがオレイン酸の接触角と水の接触角が上記の範囲外である比較例2も、防指紋性が低下した。
【0070】
第1のハードコート層の鉛筆硬度を2Hとした比較例3では、ハードコート層全体としての機械的強度が得られなかった。
【符号の説明】
【0071】
1 ハードコートフィルム
2 透明フィルム
3 第1のハードコート層
4 第2のハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム上に、第1のハードコート層、第2のハードコート層がこの順に設けられ、第1のハードコート層は鉛筆硬度が3H以上であり、第2のハードコート層は厚み0.1〜1μm、オレイン酸の接触角30°以下かつ水の接触角80°以上であることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
第2のハードコート層は、含フッ素官能基を有する(メタ)アクリレートおよび重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含有する(メタ)アクリル系の電離放射線硬化型樹脂組成物を硬化して得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−152681(P2011−152681A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14801(P2010−14801)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】