説明

ハードコート用樹脂組成物

【課題】 表面硬度を低下させることなく硬化収縮を低減させたハードコート用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(A) 分子内に反応性(メタ)アクリレート基を有するシランカップリング剤にて表面処理されたコロイダルシリカ;10〜40重量部
(B) 分子内に1個の反応性(メタ)アクリレートを有する(メタ)アクリルモノマーであり、かつそのモノマーのみを重合させたポリマーのガラス転移温度(Tg)が−70℃〜−5℃であるもの;5〜20重量部
(C) 2官能性(メタ)アクリレート;20〜40重量部
(D) 3官能性以上の多官能性(メタ)アクリレート;20〜50重量部
(E) レベリング剤;(A) 〜(D) 成分の合計量100重量部に対して0.01〜0.5重量部
(F) 光重合開始剤
を含有するハードコート用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート、アクリルに代表される透明プラスチック基材、特に光信号を高速、高密度に記録再生する光ディスク記録媒体の表面保護に用いられるハードコート用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンパクトディスク、光磁気ディスク等をはじめとする光ディスクは、ポリカーボネートやポリメタクリレート等の透明性基板が使用されており、特に加工性、取扱い性、価格の面で優れているポリカーボネートが用いられている。しかしながら、軽量、耐衝撃性に優れるなどの長所を持つ反面、硬度や耐擦傷性が不十分で容易に傷がつきやすく、特に読み取り面に生じたスクラッチ傷や擦り傷の影響で情報の読み取りができなくなるという不具合があった。またDVDおよびブルーレイ、HDDVDに代表される次世代DVDにおいては、単位面積あたりの記録情報量が増加するに従い、読み取り面の微細な傷がさらに容易に読み取り不良に直結することになるために、ポリカーボネートのようなプラスチック透明保護基材上にさらにハードコート層を設けることが必要とされている。このようなハードコート剤の硬化皮膜に要求される性能として、充分な表面硬度、耐磨耗性、耐擦傷性、透明性等が挙げられる。このような要求に応えるべく、特許文献1では、特定のシランカップリング剤で処理されたコロイダルシリカを含有するアクリレート系組成物が提案されており、特許文献2、3でもシリカを含有する特定組成のアクリレート系組成物が提案されている。
【特許文献1】特開昭57−131214号公報
【特許文献2】特開2002−245672号公報
【特許文献3】特開2003−338089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような従来技術によれば、充分な透明性、表面硬度、耐磨耗性を有する硬化皮膜が得られる。しかしながら、本発明者の検討によると、これらの皮膜は硬化時の収縮が大きく、フィルム加工や光ディスクに代表される精密加工用途時には、基材もろともの反り等が発生する問題があることが判明した。アクリル硬化皮膜の硬さと硬化時の収縮には相関があり、基本的に液の粘度が低く、硬化時の皮膜が硬いものほど収縮が大きい。硬い皮膜においては、アクリル樹脂の官能基数が多く、架橋点が多くなるが、収縮も大きくなるためである。従来技術では、多官能性アクリレートモノマーを多用することにより表面硬度を上げていたため、特に硬化収縮に問題が生じることが多かった。
【0004】
あらかじめ適度にアクリルモノマー成分を重合させたオリゴマーやポリマーを主剤として用いれば、硬化収縮に伴う基材変形を軽減することができる。しかしながら、通常オリゴマー化、ポリマー化された樹脂は粘度が大きくなり、ディスクコーティングに一般的に用いられるスピンコート法ではそのまま塗布できなくなるために、溶媒希釈する必要があり、生産性が非常に悪くなるという不具合がある。
【0005】
このような収縮の問題を解決するためには、アクリルモノマー樹脂骨格自体をすべて柔らかい成分に代えることにより収縮を少なくさせることが考えられるが、硬さが極度に落ち、プラスチック表面保護のハードコート剤にはそぐわなくなるという問題があった。
【0006】
即ち、アクリル樹脂の硬化皮膜の硬さと硬化時の収縮には逆相関が成り立つことから、硬さを維持しつつ硬化収縮を低減させることが基本的に困難であり、硬さと低硬化収縮を両立させたハードコート剤が求められていた。さらに、塗布方法において、溶媒希釈を必要としない低粘度のコーティング剤であることもあわせて求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記従来技術の問題を解決し、硬さと低硬化収縮を両立させたハードコート剤を提供すべく鋭意検討した結果、アクリレート成分として、多官能性アクリレート成分、および表面処理されたコロイダルシリカと共に、低ガラス転移温度を有する単官能アクリレートモノマーを併用することにより、表面硬度を低下させることなく硬化収縮を低減させることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、
(A) 分子内に反応性(メタ)アクリレート基を有するシランカップリング剤にて表面処理されたコロイダルシリカ;10〜40重量部
(B) 分子内に1個の反応性(メタ)アクリレートを有する(メタ)アクリルモノマーであり、かつそのモノマーのみを重合させたポリマーのガラス転移温度(Tg)が−70℃〜−5℃であるもの;5〜20重量部
(C) 2官能性(メタ)アクリレート;20〜40重量部
(D) 3官能性以上の多官能性(メタ)アクリレート;20〜50重量部
(E) レベリング剤;(A) 〜(D) 成分の合計量100重量部に対して0.01〜0.5重量部
(F) 光重合開始剤
を含有するハードコート用樹脂組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いる(A) 成分の表面処理シリカとは、分子内に反応性(メタ)アクリレート基を有するシランカップリング剤にて表面処理されたコロイダルシリカであって、特開昭57−131214号公報、特開2000−289172号公報等に記載の周知のものである。
【0010】
本発明に用いる(B) 成分の(メタ)アクリルモノマーは本発明の特徴的成分であり、分子内に1個の反応性(メタ)アクリレートを有する単官能性(メタ)アクリルモノマーであると共に、そのモノマーのみを重合させたポリマーのガラス転移温度(Tg)が−70℃〜−5℃であることを特徴とするものである。
【0011】
(B) 成分に該当する具体的な単官能性(メタ)アクリルモノマーとしては、イソデシルメタクリレート(Tg;−41℃)、2−エチルヘキシルメタクリレート(Tg;−10℃)、フェノキシエチルアクリレート(Tg;−22℃)、n−ラウリルメタクリレート(Tg;−65℃)、イソアミルアクリレート(Tg;−45℃)、フェノキシエチルアクリレート(Tg;−22℃)等が挙げられる。単官能性(メタ)アクリルモノマーとして一般的に用いられるメチルメタクリレート(Tg;105℃)、エチルメタクリレート(Tg;65℃)、ブチルメタクリレート(Tg;20℃)は、ガラス転移温度が本発明の規定外であって硬化時の収縮低減に効果が見られない。
【0012】
本発明に用いられる(C) 成分は2官能性(メタ)アクリレートであり、エチレンオキサイド変性ジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジアクリレート等の従来よりハードコート用アクリル樹脂原料として用いられているものが挙げられる。ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートに代表される環状構造のジアクリレートを単独または併用して用いることが硬度補強のために好ましい。特にジメチロールトリシクロデカンアクリレートを用いた場合には、硬化収縮における影響は他2官能性の(メタ)アクリレートと同様の硬化収縮を有するものの、硬化後の皮膜硬度が向上する利点を有しており、特に(B) 成分を添加した際に皮膜硬度が落ちることを最小にすることができる。
【0013】
本発明に用いられる(D) 成分は、3官能性以上の多官能性(メタ)アクリレートであり、従来よりハードコート用アクリル樹脂原料として用いられているペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレートやトリメチロールプロパントリエトキシ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、特に粘度が低く、硬化収縮と硬度の兼ね合いから、3官能のトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシ(メタ)アクリレートが望ましい。
【0014】
本発明において、(A) 〜(D) 成分の配合量は、(A) 成分10〜40重量部に対し、(B) 成分;5〜20重量部、(C) 成分;20〜40重量部、(D) 成分;20〜50重量部である。この範囲を外れる場合、例えば(A)成分が少ない場合においては、耐擦傷性の低下が著しくなり、多くなると粘度の上昇をともなって、溶媒希釈して塗布することが必要となる。(B)成分が少ない場合においては、硬化収縮の低減効果が少なくなり基材もろともの変形を伴いやすくなる不具合があり、逆に多い場合においては硬化物の硬度が落ちるために、ハードコートとしてそぐわなくなる。(C) 成分においては硬度補強および基材への密着性を発現しており、少ない場合にはこれらの効果が期待できず、また多い場合には粘度および硬化収縮の上昇を引き起こす不具合がある。(D) 成分が少ない場合においては皮膜硬度が落ち、さらに硬化速度が遅くなる不具合があり、多い場合には硬化収縮が大きくなるために基材もろともの変形を伴いやすくなる不具合がある。
【0015】
本発明に用いられる(E) 成分のレベリング剤は、塗布した際の表面の波打ちを防止し、表面平滑性を出し、さらに付着した汚れの拭き取り性を向上させるために配合されるもので、具体的にはポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエステル変性シリコーンオイル、パーフルオロ変性シリコーンオイル等が用いられる。
撥水、撥油性を有する変性されていないポリジメチルシリコーンオイル等においても同様の汚れ拭き取り性を付与することはできるが、根本的に樹脂への相溶性におとり、また塗布時に基材からのはじきが生じる不具合があるため、上記のような変性されたシリコーンオイルが望ましい。
【0016】
(E) 成分のレベリング剤は、(A) 〜(D) 成分の合計量100重量部に対して0.01〜0.5重量部使用される。これより少ない場合は表面の汚れ拭き取り性に効果がみられなくなり、多くなると皮膜の強度低下および表面のべたつきが多くなる不具合がある。
【0017】
本発明で用いる(F) 光重合開始剤としては、公知の一般に入手可能なものがいずれも使用可能であるが、特に可視領域における透明性を確保するために、UV吸収の最大波長ピークが400nm以下のものが望ましい。このような重合開始剤として、アセトフェノン系の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オン、フォスフィンオキシド系の2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、さらにはベンゾフェノンと重合促進剤のエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエートといった組み合わせのものも使用できる。これらは単独で用いられてもよいし、複数を組み合わせて光硬化時の光源に合わせて硬化条件の最適化を図ることもできる。特に液状で取扱が簡便な2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンは液体で取扱が簡便なため望ましく、上記にあげたような他重合開始剤をあらかじめ溶解させて使用することもできる。配合量は、光重合開始に必要な量であって特に制限されないが、一般的には(A) 〜(D) 成分の合計量100重量部に対して1〜10重量部が望ましく、硬化速度と経時安定性との兼ね合いから3〜8重量部がさらに望ましい。
【0018】
本発明のハードコート膜には、所望に応じて、帯電防止剤、艶消剤、紫外線安定剤および染料を含有していてもよい。ハードコート剤の光硬化に悪影響を与えず、透明または半透明性に悪影響を与えない限りで、これらの化合物のいずれも使用できる。さらに硬度を維持するために添加量はハードコート剤100重量部に対して0.1〜10重量部が望ましい。これより少ない場合には、帯電防止効果や紫外線吸収効果が期待できず、また多い場合においては硬度および耐擦傷性の低下が顕著となる。特にアクリル官能基といったバインダー樹脂と化学結合を伴う構造を有していない帯電防止剤、艶消剤、紫外線安定剤および染料においては硬度の低下がさらに顕著になるために、添加量はハードコート剤100重量部に対して5重量部以下が望ましい。
【0019】
本発明に用いるハードコート剤を製造するには、水性コロイドシリカ(コロイドシリカ水分散液)、シリルアクリレート、多官能価アクリルモノマーまたはその混合物、光開始剤および所望に応じて上述した他の添加剤のうち任意のものを配合させる。またコロイドシリカはアルコール溶媒にあらかじめ分散されているものでも同様に可能であり、アルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−メトキシー2−プロパノール等があげられる。コロイドシリカの粒径は、皮膜透明性を確保するため1次粒子径が30nm以下、特に25nm以下のものが望ましい。
【0020】
第1の工程で、シリルアクリレートを水性コロイドシリカおよび水混和性アルコールの存在下で加水分解する。適当なアルコールとしては、例えば水混和性アルコール、具体的にはt−ブタノール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど、またはエーテルアルコール、例えばエトキシエタノール、ブトキシエタノール、メトキシプロパノールなどが挙げられる。水性コロイドシリカとシリルアクリレートを、加水分解が終わるまで加熱攪拌する。シリルアクリレートの加水分解は、大気条件下で行う、あるいは加水分解混合物を加熱還流することによって行うことができる。
【0021】
第2の工程で、上記1の溶液にアクリル樹脂を添加し、反応に用いた水および溶媒を蒸留除去する。
【0022】
さらに第3の配合工程では、第2の工程のコロイドシリカが分散されたアクリル樹脂に、所望の光開始剤、光増感剤、レベリング剤などを添加する。
【0023】
本発明において用いるハードコート剤への上述した成分の添加順序は重要ではないが、上述した加水分解シリルアクリレートとコロイドシリカの混合物に多官能価アクリルモノマーまたはその混合物を加えるのが好ましい。好ましくは、シリルアクリレートとコロイドシリカの混合物を適当な加水分解媒体、例えば前述した通りの水混和性アルコールの水溶液中で攪拌しながら、この混合物に多官能価アクリルモノマーまたはその混合物を加える。
【0024】
本発明に用いるハードコート剤を製造する場合、水とアルコールの共沸混合物を上記配合物から蒸留除去する。最初の加水分解混合物にアルコールを使用しなかった場合には、十分な量のアルコールを加えて蒸留による水の除去を容易にすることができる。他の溶剤、例えば、トルエンまたは他の芳香族炭素水素を加えて水の除去を促進することもできる。
【0025】
本発明に用いるハードコート剤は、使用前にフィルターろ過されることが望ましい。フィルター材質はPTFE、ポリプロピレンなど、アクリル化合物によって容易侵食されないものが望ましく、ろ過時のフィルター径は0.2〜10ミクロン程度のものが入手も容易であり望ましい。特にフィルター径を2段階に分け、初期に2〜10ミクロン、後期に0.2〜1ミクロンのものを通すことにより、コロイドシリカの凝集物とアクリル樹脂由来のゲル物、および大気より混入する塵を効率良く除くことができ、最終的な皮膜の外観を良好に保つことができる。
【0026】
上に述べたハードコート液をディップ、スピン、フロー、スプレーおよびはけ塗り等によりポリカーボネート基材表面に塗工し、光重合開始剤を適宜選択することにより、市販されている光照射装置で硬化することができる。特に光ディスクの保護層として用いられる場合は、スピンコート法が好適に用いられ、本発明のハードコート剤においては溶媒で希釈せずとも、回転数2000rpm以上の条件で容易に3〜10ミクロンの皮膜を形成することができる。
【0027】
また、本発明においてハードコート剤の形成厚さは1〜10μm、好ましくは3〜8μmである。膜厚が少なくなると、光硬化時に酸素による重合阻害の影響が大きくなり、窒素などの不活性ガス下による硬化システムが必要となる。また膜厚が極度に大きくなると硬化収縮における基材の変形が大きくなる不具合がある。
【0028】
本発明に用いるハードコート剤は必要に応じて、IPA、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンなどの溶媒を用いて溶解して塗工することもできる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例中、部は重量部を示す。
実施例1
IPA120部、Nalcoag 1034A(35%コロイドシリカ水分散液) 60.6部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.4部の混合物を80℃に加熱して3時間還流させた。冷却後、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート26.0部を加えて、減圧下で溶剤を蒸留した。約半分の溶剤を蒸留したところで、メトキシプロパノ−ル120部を加え、次いで溶剤のすべてを蒸留して透明な溶液を得た。
【0030】
次にコロイドシリカ分散1,6−ヘキサンジオールジアクリレートに、イソデシルメタクリレート8.0部、ジメチロールトリシクロデカンメタクリレート8.0部、トリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート32.0部をそれぞれ加え、(メタ)アクリレート類および表面処理済みコロイドシリカの混合物に、光重合開始剤の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパンー1−オン6.0部、ポリエーテル変性シリコーンオイル(ビックケミー・ジャパン製商品名「BYK302」)0.1部を加えて、ハードコート剤を得た。
【0031】
このようにして得られたハードコート液100部にIPA70部を加えたものを、透明ポリカーボネート基材にフローコートにより5〜7μmの厚さに塗布し、紫外線照射装置(フュージョン社製F−450、Hバルブ120W/cm)内で紫外線硬化し、ハードコート膜の形成された試験片として、鉛筆硬度、およびテーバー磨耗輪CS10Fを250g荷重2輪で50回転させた時のヘイズ値の変化を調べた。回転粘度計における粘度(25℃)の測定結果と共に、結果を表1に示す。
【0032】
次に作製したハードコート剤をフローコートでガラス基板上に10〜12ミクロンに塗布し、この液膜について非接触式光学膜厚測定し、直後に上記と同様に紫外線照射装置で紫外線硬化させ、硬化皮膜の膜厚を測定し、[(硬化前膜厚−硬化後膜厚)/硬化前膜厚]から硬化時の体積収縮率を算出した。この結果も表1に示す。
実施例2〜5、比較例1〜4
使用する成分の種類及び量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてハードコート剤を作成し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
また、以下の評価を行った。
(汚れ拭き取り性の評価)
・指紋除去性試験
被験者3名の人差し指を試験片表面に圧着させた後30分放置し、キムワイプワイパーS−200((株)クレシア製)で3回拭き取り、その払拭性を、指紋痕が目視されないものを○、指紋痕がほぼ初期の状態のまま目視されるものを×、として評価した。
【0035】
その結果、実施例1〜4の組成においては○
実施例1の組成でレベリング剤を入れないもので×
実施例1の組成で、レベリング剤を粘度10cpのジメチルシリコーンオイルに変更すると、基材からのはじきが多く、評価用試験片を作製することができなかった。
(光ディスクとしての評価)
上記実施例1組成を、市販のCD-RおよびCD-RWのデータ読み取り面に塗布硬化させたものを作成した。ドライブにてディスク認識、書き込み、そのデータの読み取りができた。比較例1および比較例2の組成はディスク認識されなかった。
塗布方法:
塗布直前に孔径0.45ミクロンのフィルターでろ過し、ディスク内周部に2g試料を流し、2000rpm/8秒にてスピンコートして、直後に高圧水銀灯にて光硬化をおこなった。膜厚は6〜7ミクロン。硬化直後および60℃/湿度50%の条件で5日おいたディスクを評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 分子内に反応性(メタ)アクリレート基を有するシランカップリング剤にて表面処理されたコロイダルシリカ;10〜40重量部
(B) 分子内に1個の反応性(メタ)アクリレートを有する(メタ)アクリルモノマーであり、かつそのモノマーのみを重合させたポリマーのガラス転移温度(Tg)が−70℃〜−5℃であるもの;5〜20重量部
(C) 2官能性(メタ)アクリレート;20〜40重量部
(D) 3官能性以上の多官能性(メタ)アクリレート;20〜50重量部
(E) レベリング剤;(A) 〜(D) 成分の合計量100重量部に対して0.01〜0.5重量部
(F) 光重合開始剤
を含有するハードコート用樹脂組成物。
【請求項2】
(C) 2官能性(メタ)アクリレートの少なくとも1種がジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1記載のハードコート用樹脂組成物。
【請求項3】
(E) レベリング剤が、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエステル変性シリコーンオイル又はパーフルオロ変性シリコーンオイルであることを特徴とする請求項1又は2記載のハードコート用樹脂組成物。
【請求項4】
回転粘度計における粘度(25℃)が60cP以下である請求項1〜3の何れか1項記載のハードコート用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載のハードコート用樹脂組成物を塗布後、光で硬化してなる厚さ1〜10μmミクロンのハードコート層を有する光情報記録媒体。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項記載のハードコート用樹脂組成物を揮発性溶媒で希釈することなく、スピンコート法にて塗布後、光で硬化してなる厚さ1〜10μmミクロンのハードコート層を有する光情報記録媒体。

【公開番号】特開2006−63244(P2006−63244A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−249688(P2004−249688)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000221111)ジーイー東芝シリコーン株式会社 (257)
【Fターム(参考)】