説明

ハーネスプロテクタ構造

【課題】母材に形成された溝構造等の内部空間を収容空間として利用してハーネスを配索する際、不都合なくクランプ作業が行えるハーネスプロテクタを提供する。
【解決手段】クランプ20は、蓋部26と主部23が薄肉ヒンジ25により一体型に形成され、このクランプによりハーネスを固定して母材に取り付けるハーネスプロテクタ構造において、ハーネスプロテクタ7に差込みピン12を設け母材の係合部17に固定すると共に、クランプの蓋部に薄肉ヒンジのヒンジ軸に沿う形状であって蓋部を開いたときにクランプの主部に当接するリブ30を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はハーネスプロテクタ構造に係り、特に、車両に搭載するハーネスの配索であって、ハーネスを取り付け保持するクランプを備えるとともに、ハーネスを保護するプロハーネステクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両にハーネスを配索する場合、基本的に保護チューブを巻いて保護し、途中を複数個所でクランプにて固定する。また、配索は、ハーネスを取り付けると同時に外部からの衝撃や荷重から保護する為に、部分的に、プロテクタを用いて車体パネルや艤装部品などの母材に取付け固定している。
また、配索はできるだけ目立たないようにデッドスペースを利用するのが基本であるけれども、逆に目立つ所では整然とさせて設け、見栄えを損ねないようにしている。
そして、そのようなハーネスに設けるプロテクタとして、主部に一部開放したほぼ環状のハーネス保持部を有し、このハーネス保持部を薄肉に形成して可撓性を持たせたヒンジによって閉塞するように蓋部を主部に一体に設けた蓋一体型のクランプを備えた、ハーネスプロテクタがある。(特許文献1および特許文献2)
【0003】
ハーネスプロテクタは、クランプの薄肉ヒンジによる蓋部の開閉動作を妨げるような周囲の構造部が取付対象の母材にある場合、相互の干渉を避けてクランプ各部の寸法を設定する必要があり、蓋部の寸法を短くしたり、ヒンジの高さに影響を与えるほぼ環状のハーネス保持部に十分な高さを与えたりすることを行っている。
一方、車両への搭載に際しては、ハーネスの搭載と、艤装部品(例えばインストルメントパネルの周辺部品)の搭載とは、同時ではなく個別に行われる。車両全体にわたって配索する必要があるハーネスは、最も初期に搭載し、その後、車両内部に搭載する比較的大きな艤装品が優先的に搭載される。それぞれを搭載した後、ハーネスを配索しながら部品への結線やクランプ、取り付け作業が順次行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−232063号公報
【特許文献2】特開2002−78164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、取付対象の母材に形成される溝形状の凹部の内部空間を収容空間として利用して、クランプ付きのハーネスプロテクタを収容して取り付ける際、ハーネスプロテクタの取り付け作業の過程で問題なく取り付けることができることだけでなく、その後のクランプ作業を行う際に、クランプの蓋部の回動が不都合なく行える必要があるため、ハーネスプロテクタはその構造と形状に配慮する必要がある。
そして、ハーネスプロテクタを取り付ける際、持ち易い位置を持つ動作が自然に行われる。ところが、凹部の収容空間にハーネスプロテクタを入れ込む場合などでは、ハーネスプロテクタを持ち替えたり、位置をずらしたりすることがある。
例えば、凹部の底面に向かって単純に真っ直ぐにハーネスプロテクタを動かすだけの取り付け構造の場合、ハーネスプロテクタの持ち位置を変えたりする必要はなく、不用意に蓋部を押さえて持つということもあまり起こらない。
【0006】
しかし、凹部の側壁面に向かうように差込み部分をハーネスプロテクタに設けた上で母材に取り付ける場合、ハーネスプロテクタを凹部の底面に向かうように凹部の収容空間に入れ込みつつ、凹部の側壁面に向かうように回動させるように方向を変えるといった、取り付け上の作業動作が必要になると、不用意に開いた蓋部を押さえて持つということが起こり得る。このような場合には、開いた蓋部の引き起こしができない引掛かりが、周囲の構造部との間で起きてしまう可能性が高くなる。
そして、車両搭載後に、ハーネスを配索しながら部品への結線やクランプ、取り付け作業を行うに際して、特に、インストルメントパネルの下部裏側の作業のように、位置や状態の目視による確認が困難となる作業の場合では、手探りの作業となり、クランプ作業中に前述した不都合を生じ易いだけでなく、発生していても確認が難しい問題がある。
【0007】
この発明は、母材に形成された溝構造等の内部空間を収容空間として利用してハーネスを配索する際、不都合なくクランプ作業が行えるハーネスプロテクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、薄肉ヒンジによる一体型の蓋部を主部に有するクランプを備え、このクランプによりハーネスを固定して母材に保持して設けるハーネスプロテクタ構造において、前記ハーネスプロテクタに差込みピンを設ける一方、前記差込みピンの係合部を前記母材に設け、前記差込みピンの並びに前記クランプを設けるとともに、前記クランプの蓋部に前記薄肉ヒンジのヒンジ軸に沿う形状であって前記蓋部を開いたときに前記クランプの主部に当接するリブを設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明のハーネスプロテクタ構造は、開いた蓋部がクランプの主部に密着することをリブによって防止でき、蓋部が引き起こせない状態でハーネスプロテクタを母材に組み付けてしまうことがなくなる。
この発明のハーネスプロテクタ構造は、開いた蓋部とクランプの主部との間にリブによって指を入れ込むスペースが確保できるので、クランプの固定作業もし易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1はハーネスプロテクタの取付状態を示すアンダーカバーを除いたインストルメントパネルの斜視図である。(実施例)
【図2】図2は図1の矢視印Aによるハーネスプロテクタを母材に取り付ける作業動作を示す斜視図である。(実施例)
【図3】図3はハーネスプロテクタのクランプの斜視図である。(実施例)
【図4】図4クランプの蓋部を開いた状態の斜視図である。(実施例)
【図5】図5は蓋部を閉じる作業動作を示す斜視図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0012】
図1〜図5は、この発明の実施例を示すものである。図1において、1は車両のインストルメントパネル、2はセンターコンソール、3は暖房、換気、および空調(HVAC:Heating, Ventilating, and Air Conditioning)装置のユニット(以下「空調ユニット」と記す。)、4は空調ユニット3のユニット本体、5は空調ユニット3のブロアファンケーシング、6はハーネス、7はハーネスプロテクタである。空調ユニット3の本体4およびブロアファンケーシング5は、車両のインストルメントパネル1の下面の裏側に取り付けられ、ハーネス6がハーネスプロテクタ7により配索されている。
ハーネス6を配索する場合、ハーネス6を取付け固定する母材の形状、ここでは空調ユニット3のブロアファンケーシング5の外表面の形状も考慮している。すなわち、図2に示すように、略環状の外周部8により溝形状を呈する凹部9を設けたブロアファンケーシング5の外表面(車両搭載時の底面)に、このようなハーネス6を配索したりハーネスプロテクタ7を設けたりするために、デッドスペースともなりうる凹部9の内部空間を収容空間10として利用して設けている。これによって、ハーネスプロテクタ7を、省スペースに設けて搭載性を向上するとともに、ハーネス6の保護機能も確保することを、考慮して設けている。
このように、母材となる空調ユニット3のブロアファンケーシング5の外表面の形状は、収容空間10を有する凹部9を備え、この凹部9にハーネスプロテクタ7およびハーネス6の一部を収容可能としている。
【0013】
ブロアファンケーシング5の収容空間10に収容する前記ハーネスプロテクタ7は、収容空間10の形状に沿うように折曲した略V字形状のプロテクタ基体11を有している。プロテクタ基体11には、長手方向中央部の折曲部分に外側へ突出する差込みピン12を設け、長手方向両端部にそれぞれボルト座受部13・14を設け、長手方向に沿ってガード用の縦壁15・16を設けている。
一方、母材となる空調ユニット3のブロアファンケーシング5の凹部9を囲む外表面(車両搭載時の底面)には、差込みピン12を差し込んで係合する門型形状の係合部17を外周部8に設け、この係合部17を間に挟むようにボルト座受部13・14を取り付けるボルト締結部18・19をそれぞれ凹部9に設けている。
ハーネスプロテクタ7は、差込みピン12を係合部17に差し込んで係合し、ボルト座受部13・14をボルト締結部18・19にボルトで締結することで、母材のブロアファンケーシング5に取り付けられる。
前記ハーネスプロテクタ7の差込みピン12を係合部17に差し込む差込方向D1と、ボルト座受部13・14をボルト締結部18・19に締結するボルトの軸方向D2とは、直交している。差込みピン12を係合部17に差し込む際には、図2に示すように、ハーネスプロテクタ7全体を、差込みピン12の先端を中心に回動させながら差込みピン12の軸方向に滑らせるように移動して、係合部17に対して抉るように動かすことで、凹部9の収容空間10に入れ込むことが可能となる。
なお、これら差込みピン12とボルトによって取り付けられたハーネスプロテクタ7は、高い支持力を確保して、ハーネス6を保持するだけでなく、外部からの衝撃や荷重から保護することが可能である。
【0014】
前記ハーネスプロテクタ7は、プロテクタ基体11の中央部に設けた差込みピン12の並びにクランプ20を設けている。クランプ20は、差込みピン12に対して、一方のボルト座受部13側の並びに設けられ、図3・図4に示すように、対向する二つの壁部21・22により略U字形状に形成された主部23内に一部開放したほぼ環状のハーネス保持部24を有している。主部23の一方の壁部21の上端には、薄肉に形成して可撓性を持たせた薄肉ヒンジ25により蓋部26の一端側を一体に連結して設けている。
蓋部26には、蓋部26を閉じた状態においてハーネス保持部24と対向する内面に、ハーネス保持部24と協働してハーネス6を固定するハーネス固定部27を設けるとともに、他方の壁部22内に沿うように延びる係止爪28を設けている。主部23の他方の壁部22内には、蓋部26の係止爪28が係止する突起29を設けている。
クランプ20は、薄肉ヒンジ25によって蓋部26を閉じ方向に回動させ、係止爪28を突起29に係止して主部23を閉塞することで、ハーネス保持部24とハーネス固定部27との間にハーネス6を固定する。
【0015】
前記蓋部26には、図3に示すように、蓋部26を閉じた状態においてハーネス保持部24と背反する背面に、薄肉ヒンジ25のヒンジ軸Cに沿う形状であって、蓋部26を開いたときにクランプ20の主部23を形成する一方の壁部21の外面に当接してストッパとして機能するリブ30を設けている。
ハーネスプロテクタ7は、図5に示すように、開いた蓋部26に荷重が加わっても、ストッパのリブ30によって所定の開き角度で蓋部26が保持されるので、蓋部26の背面のスペースに指31が入れやすく、また、このリブ30が指掛かりとして機能し、手探りでの作業に重宝する。
このように、このハーネスプロテクタ7は、開いた蓋部26がクランプ20の主部23の壁部21に密着することをリブ30によって防止でき、蓋部26が引き起こせない状態でハーネスプロテクタ7をブロアファンケーシング5に組み付けてしまうことがなくなる。また、このハーネスプロテクタ7は、開いた蓋部26とクランプ20の壁部21との間にリブ30によって指31を入れ込むスペースが確保できるので、クランプ20の固定作業もし易くなる。
【0016】
また、ハーネスプロテクタ7は、クランプ20の蓋部26が開いてリブ30がクランプ20の主部23の壁部21に当接した状態では、差込みピン12を係合部17へ差し込む際の差込み動作を阻害するように、蓋部26を周辺の母材であるブロアファンケーシング5と干渉可能に設けている。
これにより、このハーネスプロテクタ7は、ハーネスプロテクタ7のブロアファンケーシング5への組み付け作業中に蓋部26が開いていることが分かるので、ハーネスプロテクタ7自体を固定する前に蓋部26の状態(開いているか、閉じているか)を確認でき、組み付け後に蓋部26が開いていることが判明したケースのようなハーネスプロテクタ7の無駄な着脱作業を減らすことができる。
なお、この実施例では、収容空間10を有する凹部9を備えた母材として、空調ユニット3のブロアファンケーシング5にハーネスプロテクタ7を取り付ける例を示したが、ハーネスプロテクタ7を取り付ける母材は空調ユニット3のブロアファンケーシング5に限らず、他部品のケーシングなどに応用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明は、母材の内部空間を収容空間として利用してハーネスを配索する際、不都合なくクランプ作業が行えるハーネスプロテクタを提供するものであり、ハーネスプロテクタに限らず、母材に取り付けられる部材が開閉する動作部を有している場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 インストルメントパネル
3 空調ユニット
5 ブロアファンケーシング
6 ハーネス
7 ハーネスプロテクタ
9 凹部
10 収容空間
11 プロテクタ基体
12 差込みピン
17 係合部
20 クランプ
21・22 壁部
23 主部
24 ハーネス保持部
25 薄肉ヒンジ
26 蓋部
27 ハーネス固定部
28 係止爪
29 突起
30 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉ヒンジによる一体型の蓋部を主部に有するクランプを備え、
このクランプによりハーネスを固定して母材に保持して設けるハーネスプロテクタ構造において、
前記ハーネスプロテクタに差込みピンを設ける一方、前記差込みピンの係合部を前記母材に設け、
前記差込みピンの並びに前記クランプを設けるとともに、前記クランプの蓋部に前記薄肉ヒンジのヒンジ軸に沿う形状であって前記蓋部を開いたときに前記クランプの主部に当接するリブを設けることを特徴とするハーネスプロテクタ構造。
【請求項2】
前記母材は収容空間を有する凹部を備え、
この凹部に前記ハーネスプロテクタを収容可能とし、
前記蓋部が開いて前記リブがクランプの主部に当接した状態では、前記差込みピンを前記差込みピンの係合部へ差し込む際の差込み動作を阻害するように、前記蓋部を周辺の母材と干渉可能に設けることを特徴とする請求項1に記載のハーネスプロテクタ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−120310(P2012−120310A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267161(P2010−267161)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】