説明

ハーネス部材のガイド構造

【課題】ヒンジの小型化に対応しつつ、バックドアが開け閉めいずれの状態でも車体ボデーとバックドアとの離間距離を許容できるように、弛みを少なくワイヤーハーネスをガイドできるようにする。
【解決手段】平行配置される第1回動軸37および第2回動軸38を具備したヒンジ30により、車体ボデー15に対してバックドア20が開閉可能に連結されている。ここでヒンジ30をなす第1回動軸37と第2回動軸38とを支持する中間支持部材35に、ワイヤーハーネス25をガイドするプロテクタ41が固定された状態で配設されている。このプロテクタ41は、車体ボデー15側からバックドア20側までの間で配線されるワイヤーハーネス25を、第1回動軸37の回動軸線L1および第2回動軸38の回動軸線L2に沿った軸線上を通過するようにガイドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ構造により車体ボデーに開閉可能に連結されるバックドアに向けて該車体ボデー側から配線されるハーネス部材をガイドするハーネス部材のガイド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばバンタイプの車両にあっては、車両後室を荷室として利用することができるように、車両後部にバックドアが配設されている。このようなバックドアには、ドアの開閉方式が左右に広がるようにした観音開き式となるものが知られている。このようなバックドアは、開閉されるドアとしての機能を有しつつも、車両の後部パネルとしての機能も有する。このため、このようなバックドアにあっても、一般の車両後部と同様、ブレーキランプや電磁式ロック等の電装部品が配設されている。このため、このようなランプ装置に向けて電力供給することができるように、車体ボデー側からバックドア側に向けて、いわゆるワイヤーハーネスとなるハーネス部材が配線されている(例えば、特許文献1参照)。なお、このハーネス部材は、車両の側部パネルをなす車体ボデーから車両の後部パネルをなすバックドアへと引き込んでいる。このため、車体ボデーとバックドアとの間におけるハーネス部材は、このようなパネル構造をなす車体ボデー内部およびバックドア内部には収納されずに、外部に剥き出しにされた状態で露出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−211446
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなバックドアには、2つの平行配置される回動軸を具備するヒンジ構造により車体ボデーに開閉可能に連結されているものがある。このため、車体ボデーとバックドアとの間の離間距離は、バックドアが閉め状態となっている場合と、バックドアが開き状態となっている場合とで顕著に相違している。具体的には、バックドアが閉め状態となっている場合の車体ボデーとバックドアとの離間距離は互いに隣接する接近した短いものとなる。これに対し、バックドアが開き状態となっている場合の車体ボデーとバックドアとの離間距離は軸回動した長く離れたものとなる。このため、車体ボデーとバックドアとの間で剥き出し状態で外部に露出されるハーネス部材は、バックドアが閉め状態となっていても、バックドアが開き状態となっていても、両者相違する離間距離を許容できるようにガイドする構造を設けておきたい。なお、上記した車体ボデーに対するバックドアの回動範囲には例えば270度に設定されるものがあり、このような回動範囲に設定されるものにあっては、バックドアの開け閉めによる車体ボデーとバックドアとの間の離間距離は顕著に相違することとなる。
他方、上記したヒンジ構造にあっては、これら2つの回動軸同士の間の距離を狭くするように設定してヒンジ構造の小型化を図りたいとの要請がある。このようにヒンジ構造の小型化が図られると、ハーネス部材をヒンジ構造の上下何れかの位置でガイドすることが要される。このため、このようにガイドされるハーネス部材は、小型化が図られるヒンジ構造の大きさに合わせて、バックドアの開閉状態を問わずに両者相違する離間距離を許容できるように、ハーネス部材をガイドするようにしておきたい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、2つの平行配置される回動軸を具備するヒンジ構造により車体ボデーに開閉可能に連結されるバックドアに向けて車体ボデー側から配線されるハーネス部材をガイドするハーネス部材のガイド構造において、ヒンジ構造の小型化に対応しつつ、バックドアが開け閉めいずれの状態でも車体ボデーとバックドアとの離間距離を許容できるように、ハーネス部材の弛みを少なくハーネス部材をガイドできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明に係るハーネス部材のガイド構造は次の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1の発明に係るハーネス部材のガイド構造は、平行配置される第1回動軸および第2回動軸を具備したヒンジ構造により車体ボデーに対してバックドアが開閉可能に連結される車両において該車体ボデー側から該バックドア側までの間で配線されるハーネス部材をガイドするハーネス部材のガイド構造であって、前記車体ボデー側から前記バックドア側までの間で配線される前記ハーネス部材をガイドするハーネスガイド部が、前記ヒンジ構造をなす前記第1回動軸と前記第2回動軸とを支持する介装部材に固定された状態で配設されており、前記ハーネスガイド部は、前記第1回動軸の軸線あるいは前記第2回動軸の軸線に沿った軸線上の少なくとも何れか1つの軸線上を通過するように、前記車体ボデー側から前記バックドア側までの間で配線される前記ハーネス部材をガイドすることを特徴とする。
【0007】
この第1の発明に係るハーネス部材のガイド構造によれば、平行配置される第1回動軸および第2回動軸を具備したヒンジ構造により、車体ボデーに対してバックドアが開閉可能に連結されている。ここでヒンジ構造をなす第1回動軸と第2回動軸とを支持する介装部材に、ハーネス部材をガイドするハーネスガイド部が固定された状態で配設されている。このハーネスガイド部は、車体ボデー側からバックドア側までの間で配線されるハーネス部材を、第1回動軸の軸線あるいは第2回動軸の軸線に沿った軸線上の少なくとも何れか1つの軸線上を通過するようにガイドする。これによって、配線されるハーネス部材は、ヒンジ構造の回動軸線に沿わせてバックドアが開け閉めによるハーネス部材の向きを変えることができる。したがって、この第1の発明に係るハーネス部材のガイド構造によれば、ヒンジ構造の小型化に対応しつつ、バックドアが開け閉めによるハーネス部材の長さの差(線長差)を小さくすることができ、もってバックドアが開け閉めいずれの状態でも車体ボデーとバックドアとの離間距離を許容できるようにハーネス部材の弛みを少なくハーネス部材をガイドすることができる。
【0008】
第2の発明に係るハーネス部材のガイド構造は、前記第1の発明に係るハーネス部材のガイド構造において、前記軸線上を通過するように前記ハーネス部材をガイドするハーネスガイド部は、該軸線上において該軸線方向を含むL字形で該ハーネス部材を屈曲させるようにガイドすることを特徴とする。
この第2の発明に係るハーネス部材のガイド構造によれば、軸線上を通過するようにハーネス部材をガイドするハーネスガイド部は、軸線上において軸線方向を含むL字形でハーネス部材を屈曲させるようにガイドする。これによって、このハーネスガイド部によりハーネス部材の向きを変えることにより生ずるハーネス部材の線長差は、ハーネス部材の捩りにより吸収することができることとなる。したがって、この第2の発明に係るハーネス部材のガイド構造によれば、ハーネス部材の向きを変えるのをスムーズに行えるようにして、バックドアの開け閉め動作を良好なものとすることができる。
【0009】
第3の発明に係るハーネス部材のガイド構造は、前記第1または前記第2の発明に係るハーネス部材のガイド構造において、前記ハーネス部材を前記バックドアの外部から該バックドアの内部に引き込むように設けられた該ハーネス部材の引込み部位の周辺には、該ハーネス部材を該バックドア側に固定するハーネス固定部が設けられていることを特徴とする。
この第3の発明に係るハーネス部材のガイド構造によれば、ハーネス部材の引込み部位の周辺にはハーネス部材をバックドア側に固定するハーネス固定部が設けられているので、バックドアの開け閉めによるハーネス部材の向きを変えるのにあたり、ハーネス部材をバックドア側に固定して行うことができる。これによって、ハーネス部材の向きを変えるのをバックドアの動きに追従させることができて、バックドアの開け閉め動作を良好なものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係るハーネス部材のガイド構造によれば、ヒンジ構造の小型化に対応しつつ、バックドアが開け閉めいずれの状態でも車体ボデーとバックドアとの離間距離を許容できるように、ハーネス部材の弛みを少なくハーネス部材をガイドすることができる。
第2の発明に係るハーネス部材のガイド構造によれば、ハーネス部材の向きを変えるのをスムーズに行えるようにして、バックドアの開け閉め動作を良好なものとすることができる。
第3の発明に係るハーネス部材のガイド構造によれば、ハーネス部材の向きを変えるのをバックドアの動きに追従させることができて、バックドアの開け閉め動作を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】バンタイプの車両の後部外観を簡略化して示す車両簡略外観図である。
【図2】ワイヤーハーネスのガイド構造をバックドアを開いた内側から視た斜視図である。
【図3】ワイヤーハーネスのガイド構造をバックドアの外側から視た斜視図である。
【図4】バックドアが開いている状態を示す上面視図である。
【図5】バックドアが閉じている状態を示す上面視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るハーネス部材のガイド構造を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1の車両簡略外観図では、バンタイプの車両10の後部外観を簡略化して示している。車両10は、荷物室として有効活用できるように車両後室(図示符号11部分)が広く設定されたバンタイプの車両である。この車両10の後部には、開け閉めされるバックドア20,20が配設されている。このバックドア20,20は、左右方向に広がるように開閉する、いわゆる観音開き式となっている。すなわち、このバックドア20は、ヒンジ30,30を介して車体ボデー15に開閉可能に連結されている。なお、このバックドア20は、片側につき2つのヒンジ30,30が取り付けられており、車体ボデー15に対して開閉可能に連結されている。
図2は、ワイヤーハーネス25のハーネスガイド構造40を含むヒンジ30を、バックドア20を開いた内側から視た斜視にて示している。図3は、ワイヤーハーネス25のハーネスガイド構造40をバックドア20の外側から視た斜視図である。図2および図3に示すように、ヒンジ30は、互いに平行配置される第1回動軸37と第2回動軸38との2つ回動軸を有したヒンジ構造により構成されている。なお、これら第1回動軸37と第2回動軸38とは、互いの回動軸線が車体上下方向となる鉛直方向に沿うように配置されている。
このヒンジ30は、車体ボデー15に対してバックドア20を最大270度の回動範囲で開閉することができるヒンジ構造となっている。具体的には、ヒンジ30は、概略、車体ボデー15側に固定される車体側ブラケット部としての車体側ブラケット部材31と、バックドア20側に固定されるドア側ブラケット部としてのドア側ブラケット部材33と、これらの車体側ブラケット部材31およびドア側ブラケット部材33のそれぞれに対して第1回動軸37および第2回動軸38を介して軸支連結される中間支持部材35とを備えている。なお、この中間支持部材35は、このヒンジ30をなすための第1回動軸37と第2回動軸38とを支持する本発明に係る介装部材に相当する。
【0013】
車体側ブラケット部材31は、適宜の螺子止め部材39により車体ボデー15に対して取り付けられている。ドア側ブラケット部材33も、適宜の螺子止め部材39によりバックドア20に対して取り付けられている。ここで中間支持部材35は、車体ボデー15側では第1回動軸37を介して車体側ブラケット部材31に対して回動可能に軸支連結されているとともに、バックドア20側では第2回動軸38を介してドア側ブラケット部材33に対して回動可能に軸支連結されている。このため、この中間支持部材35は、第1回動軸37により車体側ブラケット部材31に対して相対回動可能に連結されている。また、ドア側ブラケット部材33は、第2回動軸38により中間支持部材35に対して相対回動可能に連結されている。
これにより、車体側ブラケット部材31が固定される車体ボデー15に対して、ドア側ブラケット部材33が固定されるバックドア20は、第1回動軸37による中間支持部材35の軸支回動範囲と、第2回動軸38によるドア側ブラケット部材33の軸支回動範囲とを加える回動範囲に亘って、回動することができるようになっている。なお、このヒンジ30には、バックドア20の開き角度を270度の範囲に規制するために開き規制リンク36が架けられている。この開き規制リンク36は、車体側ブラケット部材31とドア側ブラケット部材33との両者の相対距離を維持したままでバックドア20を開閉することができるように、これら車体側ブラケット部材31とドア側ブラケット部材33との両者に対して懸架されている。具体的には、車体側ブラケット部材31には、内に向いて突出する連結部32が設けられている。この連結部32には、開き規制リンク36の一端側が軸支ピン321を介して回転可能に軸支連結されている。また、ドア側ブラケット部材33にも、内に向いて突出する連結部34が設けられている。この連結部34には、開き規制リンク36の他端側が軸支ピン341を介して回転可能に軸支連結されている。このようにして、バックドア20の開け閉めによって、ドア側ブラケット部材33の中間支持部材35に対する相対位置が変わったり、車体側ブラケット部材31の中間支持部材35に対する相対位置が変わったりしても、これら車体側ブラケット部材31の連結部34とドア側ブラケット部材33の連結部34との間の相対距離は、開き規制リンク36によって維持することができる。また、これらの連結部32,34同士の間の相対距離が開き規制リンク36により維持されることにより、これら車体側ブラケット部材31と、ドア側ブラケット部材33と、中間支持部材35との、互いの相対位置は常に決められる。
【0014】
他方、バックドア20は、一般の車両と同様、車両の後部パネルとしての機能を併せ持っており、このバックドア20には、ブレーキランプや電磁式ロック等の電装部品が配設されている。このため、車両の側部パネルを構成する車体ボデー15から、車両の後部パネルを構成するバックドア20に向けては、電力供給用電線および制御信号送信用電線を束ねた、いわゆるワイヤーハーネス25が配設されている。このワイヤーハーネス25は、本発明に係るハーネス部材に相当する部材である。
このワイヤーハーネス25は、図2および図3に示すように、車体ボデー15をなすパネル構造の内部と連通する引出し部位251から引き出されており、バックドア20をなすパネル構造の内部と連通する引込み部位252へと引き込まれている。なお、このワイヤーハーネス25は、車体ボデー15とバックドア20との間においては、車体ボデー15とバックドア20との内部に収納されずにヒンジ30に沿って配索されている。また、この車体ボデー15の引出し部位251は、後に説明するヒンジ30の第1回動軸37の回動軸線L1上に位置するように設定されている。
この外部に露出したワイヤーハーネス25は、次に説明するハーネスガイド構造40によりガイドされている。なお、ワイヤーハーネス25は、図示においては分かり難いが、上記した電力供給用電線および制御信号送信用電線を内装するように被覆して外部に露出される外周部分は、ハーネス被覆材26にて形成されている。
【0015】
上記した車体ボデー15側からバックドア20側までの間にて配線されるワイヤーハーネス25は、次のようなワイヤーハーネス25のハーネスガイド構造40によりガイドされる。このハーネスガイド構造40は、上記したヒンジ30を構成する中間支持部材35に対して取り付けられたプロテクタ41と、バックドア20に取り付けられたハーネス固定部材61とより構成されている。これらプロテクタ41とハーネス固定部材61とは、本発明に係るハーネス部材のガイド構造に相当する。また、このプロテクタ41は、この車体ボデー15側からバックドア20側までの間で配線されるワイヤーハーネス25をガイドする本発明に係るハーネスガイド部に相当し、ヒンジ30をなす第1回動軸37と第2回動軸38とを支持する中間支持部材35に固定された状態で配設されている。
また、ハーネス固定部材61は、本発明に係るハーネス固定部に相当し、ワイヤーハーネス25をバックドア20側に固定する部材である。このハーネス固定部材61は、ワイヤーハーネス25をバックドア20の外部からバックドア20の内部に引き込む引込み部位252の周辺に配設されている。
このプロテクタ41は、第1回動軸37の回動軸線L1に沿った軸線上を通過するように、車体ボデー15からバックドア20に向けて配線されるワイヤーハーネス25をガイドするように構成されている。また、このプロテクタ41は、車体ボデー15からバックドア20に向けて配線されるワイヤーハーネス25を、この回動軸線L1上の軸線方向を含むL字形で屈曲させるようにしてガイドするように構成されている。
【0016】
プロテクタ41は、概略、支持カバー部材42と、ハーネスガイド部材51とを備える。支持カバー部材42は、図2および図3に示すように、中間支持部材35の上側にワイヤーハーネス25を配置した状態で、このワイヤーハーネス25を中間支持部材35と挟み込むようにしながら中間支持部材35を覆うように形成されている。具体的には、支持カバー部材42は、ヒンジ30を構成する中間支持部材35に固定して取り付けられる。この支持カバー部材42は、中間支持部材35の上下位置にて水平方向に延在する上壁部43および下壁部44と、中間支持部材35の外側位置にて上壁部43および下壁部44とを鉛直方向に延在して連接する外壁部45とを備える。なお、外壁部45は、図2に示すように、適宜に折曲された形状にて形成されている。これに対して上壁部43および下壁部44の延在範囲は、中間支持部材35の厚み形状に対応して形成されている。この外壁部45は、図3に示すように、刳り貫き形状451が設けられている。図3に示すように、この外壁部45の刳り貫き形状451には、ガイドカバー部材52が取り付けられる。このガイドカバー部材52は、支持カバー部材42の刳り貫き形状451からヒンジ30が外部に露出しないようにカバーする機能を有する。このガイドカバー部材52は、ドア側ブラケット部材33に固定して取り付けられる。なお、このガイドカバー部材52には、図3に示すように、中間支持部材35の一部が入り込み可能に形成される挿し抜き孔521が設けられている。
また、支持カバー部材42には、外壁部45の上下位置に上側支持リブ452および下側支持リブ453が形成されている。この上側支持リブ452および下側支持リブ453は、鉛直方向に延在するリブ形状にて形成されており、ハーネスガイド部材51に当接して該ハーネスガイド部材51の回動をガイドする機能を有する。具体的には図3に示すように、上側支持リブ452は、ハーネスガイド部材51の上側部分に摺動可能に当接するようになっており、下側支持リブ453は、中間支持部材35の下側部分352を支持するように当接するようになっている。
【0017】
支持カバー部材42の上壁部43の下面431には、次に説明するハーネスガイド部材51の上側面511が接着固定されている。つまり、支持カバー部材42は、ハーネスガイド部材51と中間支持部材35とを挟持するように、この中間支持部材35に対して取り付けられている。このため、このハーネスガイド部材51は、中間支持部材35に固定支持される支持カバー部材42に固定支持されているため、間接的に中間支持部材35に固定支持される。なお、このハーネスガイド部材51の固定支持構造としては、直接的に中間支持部材35に固定支持されるようにしてもよい。
このハーネスガイド部材51は、中間支持部材35の上側でワイヤーハーネス25をガイドする機能を有する。すなわち図2および図3に示すように、ハーネスガイド部材51は、ワイヤーハーネス25を挿通するハーネス挿通部53を有して形成されている。このハーネスガイド部材51は、ワイヤーハーネス25を挿通することができるハーネス挿通部53が設けられるように水平方向の両側端を開口させた角筒形状にて形成されている。なお、このようにしてハーネス挿通部53は、中間支持部材35の上側にて車体ボデー15からバックドア20に向かうワイヤーハーネス25を水平方向に沿ってガイドしている。このため、中間支持部材35の上側におけるワイヤーハーネス25は、第1回動軸37の回動軸線L1方向と、第2回動軸38の回動軸線L2方向との、両者の軸線方向と直交する方向に延びてガイドされる。
ワイヤーハーネス25がハーネスガイド部材51にてガイドされるにあたっては、上記した引出し部位251から引き出されたワイヤーハーネス25が、支持カバー部材42の上壁部43の直交ガイド部432によりL字形にて屈曲されるようにしてガイドされる。つまり、引出し部位251から支持カバー部材42の直交ガイド部432までのワイヤーハーネス25は、第1回動軸37の回動軸線L1上の軸線方向に沿った車体上下方向にガイドされており、この直交ガイド部432によりL字形に屈曲されるようにガイドされている。なお、この直交ガイド部432は、ワイヤーハーネス25の外周形状に対応した形状を有して形成されている。このため、この直交ガイド部432は、ワイヤーハーネス25を直角に曲げるようにガイドしている。
これとは反対に、ワイヤーハーネス25がハーネスガイド部材51にてガイドされるにあたっては、上記した引込み部位252へ引き込むワイヤーハーネス25が、支持カバー部材42の上壁部43の水平ガイド部433により、バックドア20に向けた水平方向にてガイドされる。つまり、支持カバー部材42の水平ガイド部433からバックドア20に向けてのワイヤーハーネス25は、第2回動軸38の回動軸線L1上を通過しつつ車体水平方向に延びるようにガイドされている。なお、この水平ガイド部433は、ハーネス挿通部53の開口方向に沿った方向と一致して、ワイヤーハーネス25を水平方向にガイドする形状を有して形成されている。
【0018】
また、ハーネス固定部材61は、バックドア20に向けて車体ボデー15側から引き出されたワイヤーハーネス25のうち、引込み部位252の周辺のワイヤーハーネス25を固定する部材である。すなわち、図2に示すように、ハーネス固定部材61は、引込み部位252の下側位置でワイヤーハーネス25を固定するようにバックドア20に取り付けられている。このハーネス固定部材61は、引込み部位252の下側位置のワイヤーハーネス25を、車体上下方向となる鉛直方向にて配置させる。なお、このハーネス固定部材61は、図2に示すように、鉛直方向の両側端を開口させた角筒形状にて形成されている。なお、ハーネス固定部材61の下側の開口部612は、上記した水平ガイド部433の開口方向に略交差するように配置されている。このため、上記した水平ガイド部433によりバックドア20に向けて水平方向にガイドされるワイヤーハーネス25は、このハーネス固定部材61に挿通されるまで水平方向を維持するようにガイドされている。
このようにして車体ボデー15の引出し部位251から、バックドア20の引込み部位までのワイヤーハーネス25は、ハーネスガイド部材51とハーネス固定部材61とにより、第1回動軸37の回動軸線L1および第2回動軸38の回動軸線L2を通過しつつ、略コ字形をなすようにガイドされている。
【0019】
以上説明したハーネスガイド構造40によれば、次のような作用効果を奏することができる。すなわち、バックドア20を開いた状態では、図4に示すようにワイヤーハーネス25を図示するように配置することができる。また、バックドア20を閉じた状態では、図5に示すようにワイヤーハーネス25を図示するように配置することができる。つまり、このハーネスガイド構造40によれば、ワイヤーハーネス25のガイド機能を有しつつワイヤーハーネス25の長さをバックドア20の開け閉めいずれの状態であって、車体ボデー15との離間距離を許容できる長さとすることができる。これによって、バックドア20の開け閉め動作を阻害せず、さらにバックドア20の閉め動作によるワイヤーハーネス25の挟み込まれを防止することができる。
このようにして、上記したハーネスガイド構造40によれば、平行配置される第1回動軸37および第2回動軸38を具備したヒンジ30により、車体ボデー15に対してバックドア20が開閉可能に連結されている。ここでヒンジ30をなす第1回動軸37と第2回動軸38とを支持する中間支持部材35に、ワイヤーハーネス25をガイドするプロテクタ41が固定された状態で配設されている。このプロテクタ41は、車体ボデー15側からバックドア20側までの間で配線されるワイヤーハーネス25を、第1回動軸37の回動軸線L1および第2回動軸38の回動軸線L2に沿った軸線上を通過するようにガイドする。これによって、配線されるワイヤーハーネス25は、ヒンジ30の回動軸線L1,L2に沿わせてバックドア20が開け閉めによるワイヤーハーネス25の向きを変えることができる。したがって、上記したハーネスガイド構造40によれば、ヒンジ30の小型化に対応しつつ、バックドア20が開け閉めによるワイヤーハーネス25の長さの差(線長差)を小さくすることができ、もってバックドア20が開け閉めいずれの状態でも車体ボデー15とバックドア20との離間距離を許容できるようにワイヤーハーネス25の弛みを少なくワイヤーハーネス25をガイドすることができる。
【0020】
また、上記したハーネスガイド構造40によれば、回動軸線L1上を通過するようにワイヤーハーネス25をガイドするプロテクタ41は、回動軸線L1上において回動軸線L1方向を含むL字形でワイヤーハーネス25を屈曲させるようにガイドする。これによって、このプロテクタ41によりワイヤーハーネス25の向きを変えることにより生ずるワイヤーハーネス25の線長差は、ワイヤーハーネス25の捩りにより吸収することができることとなる。したがって、上記したハーネスガイド構造40によれば、ワイヤーハーネス25の向きを変えるのをスムーズに行えるようにして、バックドア20の開け閉め動作を良好なものとすることができる。
また、上記したハーネスガイド構造40によれば、ワイヤーハーネス25の引込み部位252の周辺にはワイヤーハーネス25をバックドア20側に固定するハーネス固定部材61が設けられているので、バックドア20の開け閉めによるワイヤーハーネス25の向きを変えるのにあたり、ワイヤーハーネス25をバックドア20側に固定して行うことができる。これによって、ワイヤーハーネス25の向きを変えるのをバックドア20の動きに追従させることができて、バックドア20の開け閉め動作を良好なものとすることができる。
【0021】
なお、本発明に係るハーネス部材のガイド構造にあっては、上記した実施の形態のハーネスガイド構造40に限定されるものではなく、次のように適宜個所を変更して構成するようにしてもよい。
すなわち、本発明に係るハーネスガイド部をなすプロテクタ41は、第1回動軸の軸線あるいは第2回動軸の軸線に沿った軸線上の少なくとも何れか1つの軸線上を通過するように、車体ボデー側からバックドア側までの間で配線されるワイヤーハーネスをガイドする機能を満たしているものであればよいものである。つまり、上記したハーネスガイド構造40のハーネスガイド部材51は、中間支持部材35(介装部材)に対して上側に設けられるプロテクタ41(ハーネスガイド部)により構成されるものであったが、中間支持部材35(介装部材)に対して下側に設けられるものであってもよい。
また、上記した第1回動軸37の回動軸線L1上を通過するようにワイヤーハーネス25をガイドするプロテクタ41は、該回動軸線L1上において該回動軸線L1方向を含むL字形でワイヤーハーネス25を屈曲させるようにガイドするものであった。しかしながら、上記したプロテクタ41およびハーネス固定部材61にあっては、上記した第2回動軸38の回動軸線L2上において該回動軸線L2方向を含むL字形でワイヤーハーネス25を屈曲させるようにガイドするものであってもよい。
【符号の説明】
【0022】
10 車両
15 車体ボデー
20 バックドア
25 ワイヤーハーネス(ハーネス部材)
251 引出し部位
252 引込み部位
26 ハーネス被覆材
30 ヒンジ
31 車体側ブラケット部材
32 連結部
321 軸支ピン
33 ドア側ブラケット部材
34 連結部
341 軸支ピン
35 中間支持部材(介装部材)
351 上側部分
352 下側部分
36 開き規制リンク
37 第1回動軸
38 第2回動軸
39 螺子止め部材
40 ハーネスガイド構造(ハーネス部材のガイド構造)
41 プロテクタ(ハーネスガイド部)
42 支持カバー部材
43 上壁部
431 下面
432 直交ガイド部
433 水平ガイド部
44 下壁部
45 外壁部
451 刳り貫き形状
452 上側支持リブ
453 下側支持リブ
51 ハーネスガイド部材
511 上側面
512 下側面
52 ガイドカバー部材
521 挿し抜き孔
53 ハーネス挿通部
61 ハーネス固定部材(ハーネス固定部)
612 開口部
L1 第1回動軸の回動軸線
L2 第2回動軸の回動軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行配置される第1回動軸および第2回動軸を具備したヒンジ構造により車体ボデーに対してバックドアが開閉可能に連結される車両において該車体ボデー側から該バックドア側までの間で配線されるハーネス部材をガイドするハーネス部材のガイド構造であって、
前記車体ボデー側から前記バックドア側までの間で配線される前記ハーネス部材をガイドするハーネスガイド部が、前記ヒンジ構造をなす前記第1回動軸と前記第2回動軸とを支持する介装部材に固定された状態で配設されており、
前記ハーネスガイド部は、前記第1回動軸の軸線あるいは前記第2回動軸の軸線に沿った軸線上の少なくとも何れか1つの軸線上を通過するように、前記車体ボデー側から前記バックドア側までの間で配線される前記ハーネス部材をガイドすることを特徴とするハーネス部材のガイド構造。
【請求項2】
請求項1に記載のハーネス部材のガイド構造において、
前記軸線上を通過するように前記ハーネス部材をガイドするハーネスガイド部は、該軸線上において該軸線方向を含むL字形で該ハーネス部材を屈曲させるようにガイドすることを特徴とするハーネス部材のガイド構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のハーネス部材のガイド構造において、
前記ハーネス部材を前記バックドアの外部から該バックドアの内部に引き込むように設けられた該ハーネス部材の引込み部位の周辺には、該ハーネス部材を該バックドア側に固定するハーネス固定部が設けられていることを特徴とするハーネス部材のガイド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−253926(P2012−253926A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125174(P2011−125174)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】