説明

ハーネス

【課題】複数の同軸線の露出したシールドのシールド効果を向上できるハーネスおよびハーネスの製造方法を提供する。
【解決手段】ハーネス100は、芯線111と絶縁体112とシールド113と外被114とを有する複数の同軸線110と、薄板120と、薄膜130と、接着部材140とを備えている。同軸線110は、一方端部において芯線111およびシールド113が露出している。薄膜130は、薄板120よりも柔軟性が高い。接着部材140は、シールド113と、薄板120および薄膜130の表面とを電気的に接続する。複数の同軸線110のうち、露出したシールド113の少なくとも2つの径は異なっている。薄板120上に露出したシールド113が並列に配置され、シールド113上に薄膜130の表面がシールド113の高さに応じて配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネスおよびハーネスの製造方法に関し、たとえばシールドの径が異なる複数本の同軸線がシールド処理されているハーネスおよびハーネスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器分野においては、たとえばノートパソコンや携帯電話機等の普及によって、これらの情報通信機器の小型化や軽量化が求められている。そのため、機器本体と液晶表示部との接続や機器内の配線等に、ハーネスが用いられている。図6に示すように、ハーネス200は、芯線211と、芯線211の外周側に配置される絶縁体212と、絶縁体212の外周側に配置されるシールド213と、シールド213の外周側に配置される外被214とを有する、複数の同軸線210を備えている。なお、図6は、従来のハーネスを示す概略斜視図である。
【0003】
ハーネス200は、狭いスペースで配線され、かつ高い精度での特性インピーダンスのマッチングが求められている。このような要求に対応するために、それぞれの同軸線210について、シールド213を確実にアースにおとす(接地する)必要があり、シールド213とグランドバー220,230とを接続するシールド処理がなされている。シールド処理は、たとえば同軸線210の露出されたシールド213とグランドバー220,230とを接着部材240で接続することにより行なわれる。
【0004】
シールド処理として、たとえば特開平11−297133号公報(特許文献1)には、同軸線のシールドを露出させるとともに、当該シールドを上下方向からグランドバーで挟み、半田付けを行なうことにより、シールドとグランドバーとを接続する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−297133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたシールド処理では、露出したシールドとグランドバーとの接続が充分でない同軸線が含まれる場合があることがわかった。シールドとグランドバーとの接続が充分でない同軸線が存在すると、当該同軸線のシールドを接地するシールド効果が充分に得られない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、複数の同軸線の露出したシールドのシールド効果を向上できるハーネスおよびハーネスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、露出したシールドとグランドバーとの接続が充分でない同軸線が含まれる場合があるという問題は、露出したシールドの径にばらつきがあることに起因することを見出した。しかし、グランドバーは変形しにくく厚さが均一な金属板であるので、シールドの径にばらつきがあると、グランドバーと接触しているシールドと、グランドバーと接触していないシールドとが生じる。その結果、シールドとグランドバーとの接続性能が安定しない。
【0009】
そこで、本発明のハーネスは、複数の同軸線と、薄板と、薄膜と、接着部材とを備えている。同軸線は、芯線と、芯線の外周側に配置される絶縁体と、絶縁体の外周側に配置されるシールドと、シールドの外周側に配置される外被とを有している。また、同軸線は、一方端部において芯線およびシールドが露出している。薄板は、少なくとも一方の表面が導電性である。薄膜は、薄板よりも柔軟性が高く、少なくとも一方の表面が導電性である。接着部材は、シールドと、薄板の表面および薄膜の表面とを電気的に接続する。複数の同軸線のうち、露出したシールドの少なくとも2つの径は異なっている。薄板の表面上に露出したシールドが並列に配置され、シールド上に薄膜の表面がシールドの高さに応じて配置されていることを特徴としている。
【0010】
本発明のハーネスによれば、薄板より柔軟性の高い薄膜をグランドバーとして用いている。そのため、薄板上に配置されたシールド上に、シールドの径が異なることから生じる高さの変動に応じて、薄膜を配置することができる。よって、細い径のシールドと薄板および薄膜との接続を安定させることができる。すなわち、複数の同軸線の露出したシールドについてシールド効果を向上できる。
【0011】
なお、上記「柔軟性」とは、同じ条件で同じ力を印加したときの変形量を基準とされ、変形量が大きいものを柔軟性が高いとしている。
【0012】
上記ハーネスにおいて好ましくは、薄膜は、フレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuits)であることを特徴としている。
【0013】
フレキシブルプリント配線板は径の異なるシールドに追随させやすいので、同軸線のシールドを接地するシールド効果をより向上できる。
【0014】
上記ハーネスにおいて好ましくは、接着部材は、熱硬化性樹脂であることを特徴としている。これにより、シールドと、薄板および薄膜とをより強固に接続できる。
【0015】
上記ハーネスにおいて好ましくは、接着部材は、熱硬化性樹脂と、前記熱硬化性樹脂中に配合された導電性粒子とからなることを特徴としている。これにより、シールドと、薄板および薄膜とをより強固に接続できる。
【0016】
本発明のハーネスの製造方法は、第1同軸線準備工程と、第2同軸線準備工程と、薄板準備工程と、薄膜準備工程と、接続工程とを備えている。第1同軸線準備工程は、芯線と、芯線の外周側に配置される絶縁体と、絶縁体の外周側に配置されるシールドと、シールドの外周側に配置される外被とを有し、一方端部において芯線およびシールドが露出している、同軸線を準備する。第2同軸線準備工程は、露出したシールドの少なくとも2つは異なる径である同軸線を複数準備する。薄板準備工程は、少なくとも一方の表面が導電性の薄板を準備する。薄膜準備工程は、薄板よりも柔軟性が高く、かつ少なくとも一方の表面が導電性の薄膜を準備する。接続工程は、薄板の表面上に露出したシールドを並列に配置するとともに、シールド上に薄膜の表面をシールドの高さに応じて配置した状態で、露出したシールドと薄板の表面および薄膜の表面とを接着部材で電気的に接続する。
【0017】
本発明のハーネスの製造方法によれば、薄板および薄板よりも柔軟性の高い薄膜と、露出したシールドとを接続している。そのため、薄板上に配置されたシールドについて、シールドの径が異なることから生じる高さの変動に応じて、薄膜を配置することができる。よって、細い径のシールドと薄板および薄膜との接続を安定させることができる。すなわち、複数の同軸線の露出したシールドを接地するシールド効果を向上できるハーネスを製造できる。
【0018】
上記ハーネスの製造方法において好ましくは、接続工程は、一方の表面に薄板よりも柔軟性の高い緩衝部材を有する加圧部材を用い、緩衝部材と薄膜とを接触させて加圧を行なうことを特徴としている。
【0019】
柔軟性の高い緩衝部材により、薄板上に配置されたシールドの高さに応じて薄膜を変形させることができる。そのため、細い径のシールドと薄板および薄膜とをより安定して接続できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のハーネスおよびハーネスの製造方法によれば、薄板および薄板よりも柔軟性の高い薄膜を用いて、径の異なる複数のシールドと接続しているので、複数の同軸線の露出したシールドのシールド効果を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態におけるハーネスを示す斜視図である。
【図2】図1における線分II−IIでの断面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるハーネスの製造方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態における同軸線準備工程で準備される同軸線を示し、(A)は斜視図であり、(B)は断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における接続工程を示す概略断面図である。
【図6】従来のハーネスを示す概略斜視図である。
【図7】従来のハーネスを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態におけるハーネスを示す斜視図である。図2は、図1における線分II−IIでの断面図である。図1および図2を参照して、本発明の実施の形態におけるハーネスを説明する。図1および図2に示すように、実施の形態におけるハーネス100は、複数の同軸線110と、薄板120と、薄膜130と、接着部材140とを備えている。同軸線110は、芯線111と、芯線111の外周側に配置される絶縁体112と、絶縁体112の外周側に配置されるシールド113と、シールド113の外周側に配置される外被114とを有している。同軸線110は、一方端部において芯線111およびシールド113が露出している。薄板120は、少なくとも一方の表面が導電性である。薄膜130は、薄板120よりも柔軟性が高く、少なくとも一方の表面が導電性である。接着部材140は、シールド113と、薄板120および薄膜130の表面とを接続する。複数の同軸線110のうち、露出したシールド113の少なくとも2つの径は異なっている。薄板120上に露出したシールド113が並列に配置され、シールド113上に薄膜130の表面がシールド113の高さに応じて配置されていることを特徴とする。
【0024】
実施の形態では、薄板120上に、複数の露出したシールド113が平行に配列されている。そして、露出したシールド113の上に薄膜130が配置されている。薄膜130は、露出したシールド113の曲率に沿うように湾曲している。すなわち、薄膜130は、露出したシールドの高さの変動に追随して湾曲している。そして、薄板120と薄膜130との間を、露出したシールド113を埋め込むように接着部材140が配置されている。すなわち、露出したシールド113は、薄板120、薄膜130、および接着部材140で覆われて固定されている。そのため、全ての同軸線110の露出したシールド113は、薄板120および薄膜130と接続されている。
【0025】
詳細には、同軸線110は、芯線111と、絶縁体112と、シールド113と、外被114とを有している。芯線111は、コネクタなどの部材と電気的に接続される導電性の部材である。絶縁体112は、芯線111の外周側に配置される絶縁性の部材である。シールド113は、絶縁体112の外周側に配置される絶縁性の部材である。外被114は、シールド113の外周側に配置される絶縁性の部材である。
【0026】
また、同軸線110の形状は、同軸線110の一方端部において芯線111とシールド113とが露出していれば特に限定されないが、実施の形態1では芯線111と、絶縁体112と、シールド113とが一方端に向けて順に露出している。なお、一方端部とは、同軸線110において一方の端から他方の端に向けて(一方の端から同軸線110の延びる方向に向けて)所定の長さの領域であり、露出した芯線111と、露出した絶縁体112と、露出したシールド113とを含む領域を意味する。
【0027】
複数の同軸線110のうち、露出したシールド113の少なくとも2つの径が異なっていれば、任意の同軸線110を用いることができる。たとえば、複数の同軸線110は、工業的に同じ大きさとして作製されているが実際には径が異なる場合、工業的に同じ大きさとして作製されており実際にも径が完全に同一であるが露出したシールド113の径のみが異なる場合、および工業的に異なる径の同軸線を作製する場合のすべてを含む。
【0028】
また、用いる同軸線110の外径寸法などに特に制限はない。たとえば、芯線111の径が100μm以下で、シールド113の径が200μm〜300μmの同軸線110を用いることができる。また、たとえば、同軸線110の少なくとも1つに外径寸法が1mm以下の極細同軸線を用いることもできる。
【0029】
薄板120は、複数の露出したシールド113と接続され、シールド113をアースにおとしている。なお、アースにおとす方法は特に限定されず、たとえば薄板120および薄膜130を介して、グランド電極(図示せず)と接続することにより、シールド113とグラウンドとを固定する方法などが挙げられる。
【0030】
また、薄板120は、シールド113と接続されている表面が導電性であれば特に限定されないが、たとえば銅などの金属からなる板状の金属板を用いることができる。
【0031】
また、薄板120は、薄膜130よりも柔軟性が低ければ特に限定されないが、ハンドリングが容易である観点から、シールド113を乗せた状態で0.3MPaの圧力が印加されたときの変形量が10μm未満であることが好ましい。
【0032】
薄膜130は、複数の露出したシールド113において薄板120と接続されている側と反対側と接続されている。薄膜130は、薄板120と同様に、シールド113をアースにおとしている。
【0033】
また、薄膜130は、薄板120上に並列に配置されたシールド113の高さに追随させやすい観点から、シールド113の上に重ねた状態で0.3MPaの圧力が印加されたときの変形量が10μm以上であることが好ましい。
【0034】
このような薄膜130として、フレキシブルプリント配線板を用いることが好ましい。フレキシブルプリント配線板は、パターンなどの金属膜131と絶縁膜132とを備えていれば特に限定されず、片面板、両面板、および多層板のいずれを用いてもよい。なお、片面板とは、配線板の一方面のみにパターン(回路)があるものを意味する。両面板とは、配線板の両面にパターン(回路)があるものを意味する。多層板とは、ウエハース状に絶縁体とパターン(回路)とを積み重ねたものを意味する。実施の形態では、ポリイミドなどの絶縁膜132上に、銅箔などのパターンである金属膜131が形成されている片面板のフレキシブルプリント配線板を用いている。薄膜130としてフレキシブルプリント配線板を用いる場合には、シールド113上に、パターンが形成された側の導電性の表面が配置されている。
【0035】
また、薄膜130は、導電性の材料からなる一層以上の膜であってもよい。このような膜としては、たとえば、銅、アルミニウム、金、またはそれらの合金からなる箔などが挙げられる。
【0036】
また、薄膜130は、たとえば300μm以下の厚みであり、5μm以上50μm以下であることが好ましい。10μm以上50μm以下の厚みとすることによって、シールド113の高さの変動により追随させて配置できる。
【0037】
また、薄膜130は、薄板120と同じ組成からなっていてもよく、その場合には、たとえば厚みを薄くすることによって、薄膜130の柔軟性を薄板120の柔軟性よりも高くする。
【0038】
なお、薄板120および薄膜130は、露出したシールド113と接続される表面の少なくとも一部が導電性であればよい。薄板120および薄膜130は、露出したシールド113と接続される面の全部が導電性であることが好ましい。
【0039】
また、図1に示すように、薄板120のおよび薄膜130の幅Wは、露出したシールド113の同軸線110の延びる方向の長さの80%〜100%であることが好ましい。これにより、シールド113と薄板120および薄膜130とを接続するシールド処理をより確実にできる。また、図2に示すように、薄板120の長さL123および薄膜130の長さL130は、同軸線110を平行に並べたときのすべてのシールド113をまたぐことができる長さとすることが好ましい。
【0040】
接着部材140は、熱硬化性樹脂であること、または熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂中に配合された導電性粒子とからなることが好ましい。熱硬化性樹脂は、たとえばエポキシ樹脂を用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、耐熱性の高い樹脂が好ましく、耐熱性が100℃以上であることがより好ましい。熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂中に配合された導電性粒子とからなる接着部材140としては、たとえば異方性導電性膜を用いることができる。なお、「異方性導電性膜(ACF:Anisotropic Conductive Film)」とは、フィルム状の絶縁樹脂材料の中に微細な導電性粒子を分散させ、特定(面間)方向の導電性が高い性質(異方導電性)を持つ膜を意味する。導電性粒子としては、たとえばニッケル、銅、銀、金、あるいは黒鉛等の導電性粒子の粉末を用いることができる。
【0041】
次に、図1〜図5を参照して、本発明の実施の形態におけるハーネスの製造方法について説明する。なお、図3は、本発明の実施の形態におけるハーネスの製造方法を示すフローチャートである。図4は、本発明の実施の形態における同軸線準備工程で準備される同軸線を示し、(A)は斜視図であり、(B)は断面図である。図5は、本発明の実施の形態における接続工程を示す概略断面図である。
【0042】
図3、図4(A)および(B)に示すように、芯線111と、芯線111の外周側に配置される絶縁体112と、絶縁体112の外周側に配置されるシールド113と、シールド113の外周側に配置される外被114とを有し、一方端部において芯線111およびシールド113が露出している、同軸線110を準備する第1同軸線準備工程(S10)を実施する。第1同軸線準備工程(S10)では、市販の同軸線を入手することにより同軸線110を準備して良いし、後述する露出工程を実施することにより同軸線110を準備しても良い。
【0043】
第1同軸線準備工程(S10)で露出工程を実施する場合には、たとえば以下のように行なう。まず、芯線111と、芯線111の外周側に配置される絶縁体112と、絶縁体112の外周側に配置されるシールド113と、シールド113の外周側に配置される外被114とを含む同軸線110を準備する。そして、一方端部において芯線111およびシールド113を露出する露出工程を実施する。露出工程は、芯線111と、絶縁体112と、シールド113とが一方端部に向けて順に露出することが好ましい。
【0044】
露出工程を実施する場合には、芯線111およびシールド113を露出させる方法は、レーザを用いて行なう方法やメカニカルに剥ぐ方法など任意の方法を採用できる。実施の形態では、たとえばレーザにより同軸線110の一方端部の外被114を除去する。そして、外被114近傍のシールド113を一部残して、残部のシールド113をレーザにより除去する。そして、シールド113近傍の絶縁体112を一部残して、残部の絶縁体112をレーザにより除去する。これにより、図4(A)に示すような芯線111と、絶縁体112と、シールド113とが一方端に向けて順に露出した同軸線110を形成できる。
【0045】
次に、露出したシールド113の少なくとも2つは異なる径である同軸線110を複数準備する第2同軸線準備工程(S20)を実施する。具体的には、第2同軸線準備工程(S20)では、第1同軸線準備工程(S10)で複数の同軸線110を準備する。複数の同軸線110のうち、少なくとも2つは異なる径である。
【0046】
第2同軸線準備工程(S20)では、上述したように、工業的に同じ大きさとして作製されているが実際にはシールド113の径が異なる場合、工業的に同じ大きさとして作製されており実際にも径が完全に同一であるが露出工程などにより露出されたシールド113の径のみが異なる場合、および工業的に異なる径の同軸線110を作製した場合などにより、複数の同軸線110を準備する。
【0047】
次に、少なくとも一方の表面が導電性の薄板120を準備する薄板準備工程(S30)を実施する。具体的には、薄板準備工程(S30)では、上述した薄板120を準備する。なお、薄板準備工程(S30)では、ハンドリングが容易である観点から、シールド113を乗せた状態で0.3MPaの圧力が印加されたときの変形量が10μm未満である薄板120を準備することが好ましい。
【0048】
次に、薄板120よりも柔軟性が高く、かつ少なくとも一方の表面が導電性の薄膜130を準備する薄膜準備工程(S40)を実施することが好ましい。具体的には、薄膜準備工程(S40)では、上述した薄膜130を準備する。薄膜準備工程(S40)では、シールド113の上に重ねた状態で0.3MPaの圧力が印加されたときの変形量が10μm以上である薄膜130を準備することが好ましい。これにより、後述する接続工程(S50)で薄板120上に並列に配置されたシールド113の高さに追随させやすくなる。また、薄膜準備工程(S40)では、薄膜130としてフレキシブルプリント配線板を準備することがより好ましい。これにより、後述する接続工程(S50)で薄板120上に並列に配置されたシールド113の高さに容易に追随できる。
【0049】
次に、薄板120の表面上に露出したシールド113を並列に配置するとともに、シールド113上に薄膜130の表面をシールド113の高さに応じて配置した状態で、露出したシールド113と薄板120の表面および薄膜130の表面とを接着部材140で電気的に接続する接続工程(S50)を実施する。接続工程(S50)では、接着部材140として、熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、異方性導電性膜を用いることがより好ましい。
【0050】
接続工程(S50)では、たとえば、薄板120の導電性の表面上に接着部材140を配置する。また、薄膜130の導電性の表面上に接着部材140を配置する。そして、薄板120の当該表面上に露出したシールド113を並列に配置する。そして、シールド113上に、薄膜130の導電性の表面を配置する。そして、それぞれの位置合わせを行なう。そして、図5に示すように、加圧部材20を用いて、接着部材140により、露出したシールド113と薄板120の表面および薄膜130の表面とを接着部材140で接続する。これにより、薄板上に配置したシールド113の高さに応じて薄膜130が配置される。
【0051】
接続工程(S50)は、一方の表面に薄板120よりも柔軟性の高い緩衝部材10を有する加圧部材20を用い、緩衝部材10と薄膜130とを接触させて加圧を行なうことが好ましい。緩衝部材10は柔軟性が高いので、加圧する際に薄板120上のシールド113の高さに応じて薄膜130を変形させることができる。なお、緩衝部材10は、加圧部材20の表面が平らで変形しにくい場合に、シールド113の曲径に応じて薄膜130を変形させる際の薄膜130の変形を吸収するクッション材としての役割りを果たす。
【0052】
緩衝部材10は、耐熱性が高く、柔軟性も良好である観点から、シリコンゴムシートなどのゴムシートが好適に用いられる。また、緩衝部材10は2層以上であってもよく、2層の場合には、薄膜130と接触する表面層がゴムシートであることが好ましい。
【0053】
また、緩衝部材10の厚みは、50μm以上500μm以下であることが好ましく、200μm以上300μm以下であることがより好ましい。この範囲内とすることによって、薄膜130の変形をより吸収しやすい。
【0054】
また、緩衝部材10は、薄膜130の変形を吸収しやすい観点から、シールド113の上に薄膜130を重ね、さらにその上に緩衝部材10を重ねた状態で0.3MPaの圧力が印加されたときの変形量が10μm以上であることが好ましい。
【0055】
接続工程(S50)では、薄膜130は変形し、薄板120は変形しない条件で加熱および加圧を行なう。このような条件として、たとえば圧力を0.1MPaから5.0MPaの範囲で、温度を150℃から300℃の範囲で、時間を3秒から60秒の範囲で、加熱および加圧を行なうことが好ましい。これにより、柔軟性の高い薄膜130のみをシールド113に追随させて変形させることができる。また、柔軟性の低い薄板120は変形しないので、補強材の役割りを果たすことができる。
【0056】
接着部材140は特に限定されないが、熱硬化性樹脂であることが好ましい。この場合には、熱硬化性樹脂を融点よりも高い温度に加熱し、硬化させることによって、露出したシールド113と薄板120の表面および薄膜130の表面とが接続される。
【0057】
また、接着部材140は、異方性導電性膜であることがより好ましい。この場合には、用いる異方性導電性膜に応じた条件で加熱および加圧を行なうことによって、露出したシールド113と薄板120の表面および薄膜130の表面とが接続される。接着部材140を異方性導電性膜とすると、異方性導電性膜の厚み方向について電気的に接続がなされるので、露出したシールド113と薄板120の表面および薄膜130の表面とが電気的に接続される。
【0058】
上記の工程(S10〜S50)を実施することによって、図1および図2に示すハーネス100を製造できる。なお、上記の工程(S10〜S50)は任意の順で実施してもよいし、同時に2以上の工程を実施してもよい。
【0059】
以上説明したように、本発明の実施の形態におけるハーネスによれば、芯線111と、芯線111の外周側に配置される絶縁体112と、絶縁体112の外周側に配置されるシールド113と、シールド113の外周側に配置される外被114とを有し、一方端部において芯線111およびシールド113が露出している、複数の同軸線110と、少なくとも一方の表面が導電性の薄板120と、薄板120よりも柔軟性が高く、少なくとも一方の表面が導電性の薄膜130と、シールド113と、薄板120の表面および薄膜130の表面とを接続する接着部材140とを備え、複数の同軸線110のうち、露出したシールド113の少なくとも2つの径は異なっており、薄板120の表面上に露出したシールド113が並列に配置され、シールド113上に薄膜130の表面がシールド113の
高さに応じて配置されていることを特徴としている。
【0060】
本願発明者は、鋭意研究の結果、図6に示すような従来のハーネス200は、露出したシールド213の径にばらつきがあるため、露出したシールド213とグランドバー220,230との接続が充分でない同軸線210が含まれる場合があるという問題を見出した。具体的には、図7に示すように、グランドバー220,230は変形しにくく厚さが均一な金属板であるので、シールド213の径にばらつきがあると、グランドバー220,230と接触しているシールド213と、グランドバー220,230と接触していないシールド213とが生じる。その結果、シールド213とグランドバー220,230との接続性能が安定しない。なお、図7は、従来のハーネスを示す概略断面図である。
【0061】
そこで、実施の形態のハーネス100によれば、薄板120より柔軟性の高い薄膜130をグランドバーとして用いている。そのため、薄板120上に配置されたシールド113上に、シールド113の径が異なることから生じる高さの変動に応じて、薄膜130を配置することができる。そのため、全ての同軸線110のシールド113と薄板120および薄膜130とは接続されている。よって、細い径のシールド113と薄板120および薄膜130との接続を安定させることができる。また、薄膜130はシールド113の曲径に追随させて配置できるので、シールド113と薄膜130との接触面積を増加できる。したがって、実施の形態におけるハーネス100によれば、上述した問題を解決でき、複数の同軸線110の露出したシールド113についてシールド効果を向上できる。
【0062】
上記ハーネス100において好ましくは、薄膜130は、フレキシブルプリント配線板であることを特徴としている。フレキシブルプリント配線板は径の異なるシールド113に追随させやすいので、シールド113を接地するシールド効果をより向上できる。
【0063】
上記ハーネス100において好ましくは、接着部材140は、熱硬化性樹脂であることを特徴としている。これにより、シールド113と、薄板120および薄膜130とをより強固に接続できる。
【0064】
上記ハーネス100において好ましくは、接着部材140は、熱硬化性樹脂と、前記熱硬化性樹脂中に配合された導電性粒子とからなることを特徴としている。これにより、シールド113と、薄板120および薄膜130とをより強固に接続できる。
【0065】
本発明の実施の形態におけるハーネス100の製造方法は、芯線111と、芯線111の外周側に配置される絶縁体112と、絶縁体112の外周側に配置されるシールド113と、シールド113の外周側に配置される外被114とを有し、一方端部において芯線111およびシールド113が露出している、同軸線110を準備する第1同軸線準備工程(S10)と、露出したシールド113の少なくとも2つは異なる径である同軸線110を複数準備する第2同軸線準備工程(S20)と、少なくとも一方の表面が導電性の薄板120を準備する薄板準備工程(S30)と、薄板120よりも柔軟性が高く、かつ少なくとも一方の表面が導電性の薄膜130を準備する薄膜準備工程(S40)と、薄板120の表面上に露出したシールド113を並列に配置するとともに、シールド113上に薄膜130の表面をシールド113の高さに応じて配置した状態で、露出したシールド113と薄板120の表面および薄膜130の表面とを接着部材140で電気的に接続する接続工程(S50)とを備えている。
【0066】
本発明の実施の形態におけるハーネス100の製造方法によれば、接続工程(S50)によって、薄板120および薄板120よりも柔軟性の高い薄膜130と、露出したシールド113とを接続している。そのため、薄板120上に配置されたシールド113について、シールド113の径が異なることから生じる高さの変動に応じて、薄膜130を配置することができる。そのため、全ての同軸線110のシールド113と薄板120および薄膜130とを接続することができる。よって、細い径のシールド113と薄板120および薄膜130との接続を安定させることができる。また、薄膜130はシールド113の曲径に追随させて配置できるので、シールド113と薄膜130との接触面積を増加できる。そのため、実施の形態におけるハーネス100の製造方法によれば、上述した問題を解決でき、複数の同軸線110の露出したシールド113についてシールド効果を向上できるハーネス100を製造できる。
【0067】
なお、近年、工業的に異なる径の同軸線110を集合させて、シールド処理を行なうことが要望されている。そのため、実施の形態におけるハーネス100の製造方法によれば、露出したシールド113の径が大きく異なっている同軸線110を複数備えるハーネス100についても、シールド効果を向上してシールド処理を行なうことができる。
【0068】
上記ハーネス100の製造方法において好ましくは、接続工程(S50)は、一方の表面に薄板120よりも柔軟性の高い緩衝部材10を有する加圧部材20を用い、緩衝部材10と薄膜130とを接触させて加圧を行なうことを特徴としている。これにより、緩衝部材10により、薄板120上に配置されたシールド113の高さに応じて薄膜130を変形させることができる。そのため、細い径のシールド113と薄板120および薄膜130との接続をより安定させることができる。
【0069】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものと意図される。
【符号の説明】
【0070】
10 緩衝部材、20 加圧部材、100,200 ハーネス、110,210 同軸線、111,211 芯線、112,212 絶縁体、113,213 シールド、114,214 外被、120 薄板、130 薄膜、131 金属膜、132 絶縁膜、140,240 接着部材、220,230 グランドバー、W 幅、L120,L130 長さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線と、前記芯線の外周側に配置される絶縁体と、前記絶縁体の外周側に配置されるシールドと、前記シールドの外周側に配置される外被とを有し、一方端部において前記芯線および前記シールドが露出している、複数の同軸線と、
少なくとも一方の表面が導電性の薄板と、
前記薄板よりも柔軟性が高く、少なくとも一方の表面が導電性の薄膜と、
前記シールドと、前記薄板の前記表面および前記薄膜の前記表面とを電気的に接続する接着部材とを備え、
複数の前記同軸線のうち、露出した前記シールドの少なくとも2つの径は異なっており、
前記薄板の前記表面上に露出した前記シールドが並列に配置され、前記シールド上に前記薄膜の前記表面が前記シールドの高さに応じて配置され、
前記薄膜は、露出した前記シールドの曲率に沿うように湾曲していることを特徴とする、ハーネス。
【請求項2】
前記薄膜は、フレキシブルプリント配線板であることを特徴とする、請求項1に記載のハーネス。
【請求項3】
前記接着部材は、熱硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項1または2に記載のハーネス。
【請求項4】
前記接着部材は、熱硬化性樹脂と、前記熱硬化性樹脂中に配合された導電性粒子とからなることを特徴とする、請求項1または2に記載のハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−282972(P2010−282972A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165962(P2010−165962)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【分割の表示】特願2007−25724(P2007−25724)の分割
【原出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】