説明

バイオシリカ−接着タンパク質ナノコンポジット材料:合成及び歯科学への応用

本発明は、充填材として使用されるシリカ含有ナノコンポジット材料を合成するための、歯科学におけるシリカテイン−絹フィブロイン融合タンパク質の応用に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
シリカは産業及び医学の分野で汎用されている。例えばガラス、セラミックス、塗料、粘着剤、及び触媒の製造に、分子篩の成分として、食品添加剤、担体、安定化剤(例えば歯磨き粉中の)として、及び半導体素子における絶縁体として広く使用されている。シリカはナノ(バイオ)テクノロジーにおいても重要な材料である。シリカの技術的生産では大抵、高温条件及び極端なpHが必要とされる。注目すべきは、或る特定の単細胞生物及び多細胞生物、例えば珪藻類、海綿動物、及び高等植物は、周囲の低温且つ低圧の中性に近いpH条件下で、そのシリカ骨格を形成可能であることである。また、これらの生物の骨格要素は高い忠実度且つ高いコピー数で産生されるため、固有の特性を有する新規のバイオシリカの製造に関して、これらの生物及びその骨格形成の基礎にある機序が、興味をもたれている。
【0002】
海棲海綿及び淡水海綿は、シリカ(バイオシリカ)を酵素的に合成する固有の能力を有する。この能力は、海綿動物を(ナノ)バイオテクノロジーに関して非常に興味深いものにしている。これまで使用されてきたシリカ(ガラス)の産生方法では高温、高圧、及び攻撃的な(aggressive)化学物質の存在が必要である。海綿動物は、シリカナノ構造を生物学的な環境に優しい条件下で、卓越した正確さ及び再現性をもって酵素(生体触媒)により合成することが可能である。
【0003】
珪質海綿の骨格の主要素は針状の骨片であり、普通海綿綱(Demospongia)及び六放海綿綱(Hexactinellida)の綱(class)では、非晶質非結晶性シリカから成る。
【0004】
骨片の形態学及び生合成における従来技術は、非特許文献1及び非特許文献2に記載されている。海綿骨片のオパールシリカは6%〜13%の水を含有し、式(SiO2〜5・HOに相当する(非特許文献3)。普通海綿の骨片形成は軸糸の周辺から始まり、その周囲にシリカが酵素的に沈着する。
【0005】
シリカ形成生物におけるSiO骨格の合成及び/又は分解に関する2つの酵素、及びその技術的応用は記載されている。
【0006】
第1の酵素は、海綿骨片(骨針)の軸糸中に存在するシリカテインα(シリカテインとも呼ばれる)である(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。この酵素は、海棲珪質海綿であるスベリテス・ドムンクラ(Suberites domuncula)からクローニングされている(非特許文献4)。シリカテインは、有機ケイ素化合物(アルコキシシラン)から非晶質シリカ(ポリケイ酸、ポリケイ酸塩)を合成することが可能である(非特許文献5)。
【0007】
シリカテインαの他に、さらなるシリカテイン、例えばシリカテインβ(特許文献4)及び淡水海綿由来の4種のシリカテインアイソフォーム(シリカテイン−a1〜4;特許文献5)が本発明者らによりクローニングされている。シリカテインは、表面への結合後もその触媒活性を保持している(非特許文献6)。
【0008】
第2の酵素は、炭酸脱水酵素の群に属するシリカーゼ(silicase)である(特許文献6、特許文献7)。海棲海綿であるスベリテス・ドムンクラ(S. domuncula)において最初に発見されたこの酵素は、遊離ケイ酸の形成下でシリカを溶解することが可能である(非特許文献7)。また、シリカーゼは可逆反応においてポリマーの合成を媒介し得る(特許文献8)。シリカテインと同様に、シリカーゼもナノテクノロジーに関して、例えば医学及びマイクロエレクトロニクスにおけるシリカマトリクスの改質に関して興味をもたれている。
【0009】
シリカは骨及び軟骨の組織工学において、足場として使用される材料、例えば生物活性ガラス及び複合材料の重要な成分である(非特許文献8、非特許文献9)。生体適合性及び安定性は、これらの材料の適応性を決定する重要な特徴であり、これらの材料を外科(例えば、骨置換)及び歯科学における使用のために改良することの要求が高まっている。高分子シリカ及び他のシロキサン系材料の化学合成では典型的には、複合材料の成分として使用される有機分子に損傷を与え得る高温及び高圧等の過激な条件、並びに腐食性の化学物質の使用が必要とされる。しかしながら、珪質海綿動物はシリカ骨格をシリカテインの生体触媒活性を用いて、周囲(低温及び低圧)条件下で合成することが可能である。
【0010】
シリカテイン及び1型コラーゲンでプレコートし、次いでシリカテインの基質のTEOSを用いてバイオシリカでコーティングすることにより修飾した培養皿上で増殖させた場合に、ヒト骨肉腫SaOS−2細胞のミネラル化(リン酸カルシウムの形成)が、顕著に増大することを、本発明者らは示した(非特許文献10、特許文献9)。その結果により、バイオシリカ修飾表面が生物活性であること、および、骨芽細胞機能を高めるために使用され得ることが示される。
【0011】
組換えシリカ合成酵素(シリカテイン)の利用によって、生体分子に損傷を与えない温和な条件下でのシリカ含有生物活性表面の生合成に新たな道が開かれる。本発明者らはまた、新規のバイオ材料である海綿バイオシリカを持続的に産生する技術を考え出した。これは海綿プリモルフ(primmorph)培養(海綿細胞培養の特殊型;特許文献10、特許文献11、特許文献12)を確立することにより達成された。プリモルフのシリカ産生は、或る特定の添加剤により増大することができる(特許文献13)。
【0012】
接着タンパク質
イガイ由来の接着タンパク質は既知である(イガイ接着タンパク質、MAPs、例えばフットプロテイン1(foot protein 1)、Mefp−1)。イガイは接着タンパク質から成る接着斑を介して金属、セラミックス、及びガラスの表面に付着することが可能である。これらの接着タンパク質は、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)を高い割合で含有する。ヨーロッパイガイ(Mytilus edulis)由来のMefp−1は、配列Ala−Lys−Pro−Ser−Tyr−DHP−Hyp−Thr−DOPA−Lysを有するタンデム様反復デカペプチドを有する。表面への接着はカテコール酸素により媒介される。
【0013】
接着タンパク質は、他の海洋生物、例えばナマコ類にも存在する。本発明者らは、ナマコ類であるニセクロナマコ(Holothuria forscali)のキュビエ器官の生化学的接着機序を初めて研究及び記載した(非特許文献11、非特許文献12)(図1)。また、本発明者らは、海綿動物もモノフェノールをジフェノールに変換するチロシナーゼを含有することを示した(非特許文献13)(図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】PCT/US99/30601 Methods, compositions, and biomimetic catalysts, such as silicateins and block copolypeptides, used to catalyze and spatially direct the polycondensation of silicon alkoxides, metal alkoxides, and their organic conjugates to make silica, polysiloxanes, polymetallo-oxanes, and mixed poly (silicon/ metallo) oxane materials under environmentally benign conditions. 発明者/出願人:Morse DE, Stucky GD, Deming TD, Cha J, Shimizu K, Zhou Y
【特許文献2】DE10037270(A1) Silicatein-vermittelte Synthese von amorphen Silicaten und Siloxanen und ihre Verwendung. 発明者/出願人:Mueller WEG, Lorenz B, Krasko A, Schroeder HC
【特許文献3】EP1320624 Silicatein-mediated synthesis of amorphous silicates and siloxanes and use thereof. 発明者/出願人:Mueller WEG, Lorenz B, Krasko A, Schroeder HC、国内段階:US2003134391,NO20030407,日本特願2002−516336,CN1460110T,カナダ2,414,602,オーストラリア2001289713
【特許文献4】DE10352433.9 Enzym- und Template-gesteuerte Synthese von Silica aus nicht-organischen Siliciumverbindungen sowie Aminosilanen und Silazanen und Verwendung. 出願人:University of Mainz. 発明者:Schwertner H, Mueller WEG, Schroeder HC
【特許文献5】DE102006001759.5 Kontrollierte Herstellung von Silber- und Gold-Nanopartikeln und Nanokristallen definierter Groesse und Form durch chirale Induktion mittels Silicatein. 出願人/発明者:Tremel W, Tahir MN, Mueller WEG. Schroeder HC
【特許文献6】DE10246186 In vitro and in vivo degradation or synthesis of silicon dioxide and silicones, useful e.g. for treating silicosis or to prepare prosthetic materials, using a new silicase enzyme. 出願人:University of Mainz. 発明者:Mueller WEG, Krasko A, Schroeder HC
【特許文献7】PCT/EP03/10983 Abbau und Modifizierung von Silicaten und Siliconen durch Silicase und Verwendung des reversiblen Enzyms. 出願人:University of Mainz. 発明者:Mueller WEG, Krasko A, Schroeder HC
【特許文献8】DE10352433.9 Enzymatische Synthese, Modifikation und Abbau von Silicium (IV)- und anderer Metall (IV)- Verbindungen. 出願人:University of Mainz. 発明者:Mueller WEG, Schwertner H, Schroeder HC
【特許文献9】DE102004021229.5 Enzymatisches Verfahren zur Herstellung bioaktiver, Osteoblasten-stimulierender Oberflaechen und Verwendung. 出願人:University of Mainz. 発明者:Schwertner H, Mueller WEG, Schroeder HC
【特許文献10】DE19824384.7
【特許文献11】PCT/EP99/03121
【特許文献12】EP99955288.8
【特許文献13】EP05012162.3 Selenium-enriched liquid media for the cultivation of siliceous sponges and for biogenic silica production. 出願人:University of Mainz. 発明者:Mueller WEG, Schroeder HC, Osinga R, Schwertner H
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Uriz et al. (2003) Progr Molec Subcell Biol 33:163-193
【非特許文献2】Mueller et al. (2003) Progr Molec Subcell Biol 33:195-221
【非特許文献3】Schwab & Shore (1971) Nature 232:501-502
【非特許文献4】Krasko et al. (2000) Eur J Biochem 267:4878-4887
【非特許文献5】Cha et al. (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96:361-365
【非特許文献6】Tahir et al. (2004) Chem Commun 2004:2848-2849
【非特許文献7】Schroeder et al. (2003) Progr Molec Subcell Biol 33:250-268
【非特許文献8】Hench and Wilson (1984) Science 226:630-636
【非特許文献9】Yamamuro et al. (1990) Handbook on Bioactive Ceramics, VoI I: Bioactive Glasses and Glass-Ceramics, CRC Press, Boca Raton, FL
【非特許文献10】Schroeder et al. (2005) J Biomed Mater Res Part B: Appl Biomater 75B:387-392
【非特許文献11】Mueller et al. (1972) Cytobiologie 5:335
【非特許文献12】Mueller et al. (1976) Biochim Biophys Acta 433:684
【非特許文献13】Mueller et al. (2004) Micron 35:87
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、非晶質二酸化ケイ素(シリカ)、シロキサンの合成のための方法及び組換えシリカテイン−絹フィブロイン融合タンパク質の使用、並びにこれらの化合物の修飾、並びに歯科学におけるそれらの医学的使用に関する。
【0017】
シリカテイン配列(シリカ形成配列)及び絹フィブロイン配列を含む融合タンパク質、並びにこのような融合タンパク質をコードするcDNAが記載される。シリカテインは、歯科充填材として働くことのできる(バイオ)シリカの生体触媒形成に単独で、又はナノコンポジットの成分として使用される。絹フィブロインは、シリカテイン及びシリカテインにより形成されるシリカナノ粒子を歯のエナメル質、又は他の固体材料、例えば金属、プラスチック、及び複合材の表面に付着する接着タンパク質(「水中接着剤」)として使用される。シリカテインの幾つかの型及びアイソフォーム、例えばPCR法を用いてスベリテス・ドムンクラ(S. domuncula)から単離される、シリカテインαポリペプチドをコードするcDNAを、融合タンパク質を構築するのに使用することができる。関連cDNAは他の海棲海綿、例えばGeodia cydonium、又は淡水海綿、例えばLubomirskia baicalensisから単離することができる。融合タンパク質又はその一部を、ヒトエナメル質由来ペプチド又はDOPA含有ペプチド/タンパク質と組み合わせて、シリカ/ペプチド系ナノコンポジットをデザインすることができる。
【0018】
本発明のさらなる態様は、配列番号1に示される配列と少なくとも25%の配列相同性、好ましくは同一性を示すシリカテインαドメインを含む融合タンパク質が使用される、シリカ(ケイ酸及び/又はケイ酸塩の縮合産物)、シリコーン、及び他の金属酸化物、並びにこれらの化合物の混合ポリマーをin vitro又はin vivoで合成する手法である。
【0019】
合成には、ケイ酸、モノアルコキシシラントリオール、モノアルコキシシランジオール、モノアルコキシシラノール、ジアルコキシシランジオール、ジアルコキシシラノール、トリアルコキシシラノール、テトラアルコキシシラン、アルキル‐、アリール‐若しくはメタロ‐シラントリオール、アルキル‐、アリール‐若しくはメタロ‐シランジオール、アルキル‐、アリール‐若しくはメタロ‐シラノール、アルキル‐、アリール‐若しくはメタロ‐モノアルコキシシランジオール、アルキル‐、アリール‐若しくはメタロ‐モノアルコキシシラノール、アルキル‐、アリール‐若しくはメタロ‐ジアルコキシシラノール、アルキル‐、アリール‐若しくはメタロ‐トリアルコキシシラン等の化合物を基質として使用することができる手法が用いられる。これらの化合物の規定の混合物を使用することにより、混合ポリマーを産生することができる。
【0020】
本発明のさらに好適な態様によれば、融合タンパク質を他の分子、又はガラス、金属、金属酸化物、プラスチック、生体高分子、若しくは鋳型となる他の材料の表面に結合することにより、規定の2次元及び3次元構造を形成することができる。
【0021】
本発明のさらに好適な態様によれば、ヒドロキシアパタイト(例えば、エナメル質)、シリカ又は金属酸化物を含有する構造又は表面を修飾する手法が提示され、それにおいて、配列番号1及び配列番号2に示される配列と少なくとも25%の配列相同性、好ましくは同一性を有するシリカテイン及び/又は絹フィブロインドメインを含む融合タンパク質が修飾に使用される。
【0022】
本発明のさらに好適な態様は、本明細書中に記載される手法を用いて得られた化合物又はシリカを含有する構造若しくは表面に関する。
【0023】
本発明のさらに好適な態様は、配列番号1と一致するスベリテス・ドムンクラ(S. domuncula)由来のシリカテインαの融合タンパク質、又はシリカテインαドメインのアミノ酸配列中で配列番号1に示される配列と少なくとも25%の配列相同性、好ましくは同一性を有する相同ポリペプチド、又はその一部に関する。
【0024】
「相同性」は、2つの配列をアライニング及び必要に応じてギャップ導入して最大の相同性%を達成した後の、対照配列シリカテインαドメインの残基と同一な候補アミノ酸配列中の残基の割合として定義される。アライメントの方法及びコンピュータプログラムは、当該技術分野で既知である。候補配列がこの定義に含まれるかを決定する目的に使用又は適応し得るコンピュータプログラムの一つは、Genentech, Incにより作成された「Align 2」である。
【0025】
本発明のさらに好適な態様は、本特許出願に記載されるポリペプチドをコードする核酸、特に配列番号3及び配列番号4と一致する核酸に関する。核酸はDNA、cDNA、RNA、又はそれらの混合物であり得る。核酸の配列は少なくとも1つのイントロン及び/又はポリA配列を含み得る。
【0026】
本発明のさらに好適な態様は(a)融合タンパク質(キメラタンパク質)構築物、又は(b)分離タンパク質発現(プロテアーゼ切断部位)を有する構築物の形である核酸に関する。核酸はまた、合成的に産生され得る。必要な方法は従来技術の方法による。
【0027】
本発明のさらに好適な態様は、本発明による核酸を含有するベクター、好ましくはプラスミド、シャトルベクター、ファージミド、コスミド、発現ベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又は粒子、ナノ粒子、若しくはリポソームの形であるベクターに関する。さらに、これらのベクターは、好ましくはナノ粒子又はリポソームの形で、本発明による融合タンパク質を含むタンパク質の転移に使用することができる。
【0028】
本発明のさらに好適な態様は、ベクターでトランスフェクトされたか、又は本発明による粒子により感染若しくは形質導入された宿主細胞である。この宿主細胞は、請求項1〜7に記載のポリペプチド又はその一部を発現することができる。任意の既知の宿主細胞生物、例えば酵母、真菌、海綿、細菌、CHO細胞、又は昆虫細胞を使用することができる。
【0029】
本出願でクレームされる融合タンパク質は、合成的に産生されるか、又は原核細胞又は真核細胞の抽出物又は溶解物中に存在することができる。細胞抽出物又は溶解物はex vivo又はex vitroで細胞、例えば組換え細菌細胞から調製することができる。
【0030】
本出願でクレームされる融合タンパク質は、従来の方法を用いて精製することができ、したがって実質的に他のタンパク質を含み得ない。
【0031】
融合タンパク質中に存在する接着タンパク質は、シリカテイン及びバイオシリカ構成要素の表面への制御された付着に使用することができる。
【0032】
さらに、本発明による融合タンパク質又は核酸は、シリコーン及びシリコーンインプラントの代謝及び吸収の調節に使用することもできる。シリカテインは単量体シリコーン前駆体から高分子シリコーンを合成可能であり、したがって体細胞に取り込まれ得る単量体の除去に使用することができる。最終的に、本明細書中に記載される発明は、シリコーン及びシリコーンインプラントの代謝及び吸収を調節するために、本明細書中に記載される核酸による細胞のトランスフェクションに応用することができる。上述の応用の方法論は従来の方法であり、特定の要件に容易に適応させることができる。
【0033】
また、ジフェノール含有タンパク質/ペプチド、特にDOPA(3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン)含有タンパク質/ペプチドは、水性環境で接着剤として働くことが知られている。本発明者らは海綿チロシナーゼをクローニングし、及び組換えタンパク質を発現させた。この酵素は、モノフェノール化合物を用いてジフェノールを合成する。組換え海綿酵素を用いて調製されるDOPA含有タンパク質及びペプチドは、シリカテイン/バイオシリカ構成要素を表面に結合するのに使用することができる。
【0034】
特異的に修飾されたDOPA含有タンパク質及びペプチドの接着によって、表面をDOPA含有タンパク質及びペプチドのコーティングによる、異なる材料(金属、ガラス、プラスチック等)の表面上のパターンが作成され得る。
【0035】
金属表面(チタン、チタン合金、又はCoCr)並びにプラスチック及び複合材料から選択される表面を使用することができる。特にFe(III)及び他の金属イオンに対して強い結合親和性を有するカテコール酸素は、DOPA含有ペプチド及びタンパク質の表面への結合に重要である。
【0036】
骨とインプラント(例えばTi、Ti合金、又はCoCrから作られる金属インプラント)との間の安定した接続を作り出すことが主要な課題である。金属インプラントの「生物化(biologisation)」の一方法は、表面のDOPA含有タンパク質及びペプチドによるコーティングである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ナマコ類における生化学的接着機序の第1の説明図である。左:2つのキュビエ管(Cuvier tubuli)(A:内筒、B:外筒)。右:パラフィンに接着するキュビエ管(Mueller and Zahn (1972) Cytobiologie 3: 335-351)。
【図2】海綿チロシナーゼによるモノフェノールのジフェノールへの変換(及びキノンへのさらなる酸化)の図である。
【図3】シリカテインαをコードするスベリテス・ドムンクラ(Suberites domuncula)cDNAのヌクレオチド配列の図である。プライマーの構築に使用される配列には下線を引き、太字で示している。ATG開始コドンには二重下線を引いている(配列番号5)。
【図4】シリカテインαをコードするスベリテス・ドムンクラ(Suberites domuncula)cDNAの推定アミノ酸配列の図である。
【図5】プレコラーゲンDをコードするムラサキイガイ(Mytilus galloprovincialis )cDNAのヌクレオチド配列の図である。プライマーの構築に使用される配列には下線を引き、太字で示している(配列番号6)。
【図6】プレコラーゲンDをコードするムラサキイガイ(Mytilus galloprovincialis )cDNAの推定アミノ酸配列の図である(配列番号7)。
【図7】絹フィブロインをコードするムラサキイガイ(Mytilus galloprovincialis )cDNAの推定アミノ酸配列の図である(配列番号8)。
【図8】絹フィブロインをコードするムラサキイガイ(Mytilus galloprovincialis )cDNAのヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列の図である。フォワードプライマー及びリバースプライマーの構築に使用される配列には下線を引き、太字で示している(配列番号9)。
【図9】ベクターpTrcHis2−TOPO(Invitrogen)のヌクレオチド配列の図である。
【図10】絹フィブロインからシリカテインをエンテロキナーゼにより切断するために使用される、プロテアーゼ結合部位(エンテロキナーゼ認識部位)の図である。
【図11】NcoIによる消化後の、pTrcHis2ベクターの絹フィブロインcDNAの直前への、プロテアーゼ結合部位を有するシリカテイン遺伝子のクローニングの図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
組換えシリカテイン−絹フィブロイン融合タンパク質の発現及び単離
組換えシリカテイン−絹フィブロイン融合タンパク質の調製は、好ましくは大腸菌において行なわれる。酵母及び哺乳類細胞における組換えタンパク質の調製も可能であり、首尾よく行われている。cDNAを適切なベクター、例えばpTrcHis2−TOPO(Invitrogen)にクローニングする。大腸菌の形質転換後、シリカテイン−絹フィブロイン融合タンパク質の発現をIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド) によって誘導する(Ausubel et al. (1995) Current Protocols in Molecular Biology. John Wiley and Sons, New York)。シリカテイン−絹フィブロイン融合タンパク質の発現及び組換えタンパク質の精製は、例えば組換えタンパク質中に存在するヒスチジンタグを用いて、適切なアフィニティーマトリクス、例えばNi−NTAマトリクス上で行なうことができる(Skorokhod et al. (1997) Cell Mol Biol 43:509-519)。
【0039】
2つの代替的構築物をシリカテインα−絹フィブロイン融合タンパク質発現に使用する。
【0040】
1.プロテアーゼ切断部位を有しない融合タンパク質の調製
シリカテインαポリペプチド及び絹フィブロインを有する融合タンパク質を調製するために、適切な発現ベクター(例えば、pTrcHis2−TOPOベクター;Invitrogen)を使用する。5'末端及び3'末端の両方に、例えばNcoI制限部位を有するシリカテインα cDNAを調製する。シリカテインα cDNAの停止コドンを除去する。増幅には、PCR−Technikを使用し、それぞれの制限部位を有するプライマーを使用する。第2のタンパク質をコードするcDNAを調製する。そこでは、5'末端にシリカテインα cDNAの3'末端と同じ制限部位(例では、NcoI)を使用し、及び3'末端にもNcoI制限部位を使用する。
【0041】
両方のcDNAを標準手法に従ってライゲーションし、精製し、pTrcHis2−TOPOベクターにライゲーションする。ライゲーションはヒスチジンタグの近くに行なわれる。例えば組換えタンパク質中に存在するヒスチジンタグを用いた融合タンパク質の発現及び精製は、適切なアフィニティーマトリクス、例えばNi−NTAマトリクスを用いて行なうことができる(Skorokhod et al. (1997) Cell Mol Biol 43:509-519)。
【0042】
2.分離発現(プロテアーゼ切断部位)
1の手法に対して代替的に、プロテアーゼ切断部位(例えば、エンテロキナーゼ部位)を、シリカテインαポリペプチドをコードするcDNAと、絹フィブロインをコードするcDNAとの間にクローニングすることができる。発現及び精製の後、融合タンパク質をタンパク質分解性切断する。その後、両タンパク質を分離する。
【0043】
以下の例では、大腸菌におけるスベリテス・ドムンクラ(S. domuncula)由来のシリカテインα遺伝子、及びムラサキイガイ(Mytilus galloprovincialis)由来の絹フィブロイン遺伝子を含む融合タンパク質の発現が記載される。この例では、触媒活性ドメイン(短型シリカテイン)のみを含むシリカテイン挿入断片を使用するが、当該タンパク質の完全アミノ酸配列を含む挿入断片を使用することも可能である。
【0044】
融合タンパク質をコードするcDNAの構築に使用されるシリカテインcDNAを記載する。
【0045】
スベリテス・ドムンクラ(S. domuncula)由来のシリカテインα及びシリカテインβをコードするcDNAは、シリカテインαはAJ272013(非特許文献4)、シリカテインβはAJ547635、AJ784227(Schroeder et al. (2004) Cell Tissue Res 316:271-280)である。シリカテインαをコードするスベリテス・ドムンクラ(S. domuncula)cDNAのヌクレオチド配列を図3に示す。シリカテインαをコードするスベリテス・ドムンクラ(S. domuncula)cDNAの推定アミノ酸配列は図4に示す。
【0046】
ルボミルスキア・バイカレンシス(Lubomirskia baicalensis)由来のシリカテインa1〜4をコードするcDNAは、シリカテインalphaはAJ872183、シリカテインa2はAJ968945、シリカテインa3はAJ968946、シリカテインa4はAJ968947である(Wiens et al. (2006) Dev Genes Evol 216:229-242)。
【0047】
プレコラーゲンDをコードするムラサキイガイ(M. galloprovincialis )cDNAのヌクレオチド配列を図5に示す。プレコラーゲンDをコードするムラサキイガイ(M. galloprovincialis )cDNAの推定アミノ酸配列は図6に示す。
【0048】
絹フィブロインをコードするムラサキイガイ(M. galloprovincialis )cDNAのヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列を図7及び図8に示す。
【0049】
ベクターpTrcHis2−TOPO(Invitrogen)を融合タンパク質の産生に使用するが、pTrcHis2−TOPOのヌクレオチド配列については図9を参照されたい。他の発現ベクターも用いることができることは証明されている。
【0050】
制限酵素NcoI(C↓CATGG)を使用した。この制限酵素は:
絹フィブロインcDNAに制限部位を有しない;
シリカテインα cDNAに制限部位を有しない;
pTrcHis2ベクターに1つの制限部位を有する。
【0051】
NcoIによる消化のために、オーバーハングを含む以下のプライマーをシリカテインcDNAに使用する:
SiliNoc_For1
CCA TGG TTC TTG TCA CAG TGG TAG TAC TG(配列番号10);
SiliNoc_Rev1
CCA TGG ATA GGG TGG GAT AAG ATG CAT C(配列番号11)。
【0052】
第1の工程では、絹フィブロインをコードする配列を、以下の特定のプライマーを用いてpre−ColD cDNAから単離する:
Silk F
5' GGT GGA CTC GGA GGA GC 3'(配列番号12);
Silk HIS R
5' ATA TCC TGG TTT GTG ATA GC 3'(配列番号13)。
【0053】
次に、絹フィブロインcDNAをベクターpTrcHis2−TOPO(Invitrogen)にクローニング(T/Aクローニング)する。その後、細菌株BL21を得られたプラスミドでトランスフェクトする。
【0054】
シリカテインα配列については、オーバーハングを含む以下のリバースプライマーを、このオーバーハングをプロテアーゼ(エンテロキナーゼ)結合部位として使用するように構築する:
Sili_Endo_Rev
5' CTT GTC ATC GTC ATC TAG GGT GGG ATA AG 3'(配列番号14)。
【0055】
次の工程では、オーバーハングを含む以下のプライマーを構築する:
SiliNoc_For1
5' CCA TGG TTC TTG TCA CAG TGG TAG TAC TG 3'(配列番号15);
SiliNoc_Rev1
5' CCA TGG ACT TGT CAT CGT CAT CTA GG 3'(配列番号16)。
【0056】
これらのオーバーハングは、制限酵素NcoIの制限部位として使用される。pTrcHis2ベクターも、この酵素に対する制限部位を有する。これによりベクター及び増幅シリカテインで二重消化を行なうことができる。この消化の後、シリカテインをpTrcHis2ベクターに、絹フィブロインの直前にクローニングする。
【0057】
シリカテインを絹フィブロインから切断するために使用される、プロテアーゼ結合部位(エンテロキナーゼ認識部位)を図10に示す。
【0058】
NcoIによる消化の後、プロテアーゼ結合部位を有するシリカテインcDNAをpTrcHis2ベクターに、絹フィブロインcDNAの直前にクローニングする(図11)。
【0059】
大腸菌の形質転換後、シリカテイン−絹フィブロイン融合タンパク質の発現は通常、IPTGにより誘発され、37℃で4時間又は6時間行なわれる(Ausubel et al. (1995) Current Protocols in Molecular Biology. John Wiley and Sons, New York)。得られた融合タンパク質を、例えばNi−NTAマトリクス上でのアフィニティークロマトグラフィーにより精製する。シリカテインを絹フィブロインから分離するために、融合タンパク質をエンテロキナーゼにより切断する。次に、タンパク質を2−メルカプトエタノールの存在下でゲル電気泳動にかける。ゲル電気泳動は、0.1%NaDodSOを用いて10%ポリアクリルアミドゲル上で行なうことができる(ポリアクリルアミドゲル電気泳動;PAGE)。ゲルをクーマシーブリリアントブルーで染色する。切断、精製、及び続くPAGEの後、組換えシリカテインタンパク質及び絹フィブロインの短型が得られる。
【0060】
抗体を用いたシリカテイン−絹フィブロイン融合タンパク質の単離及び精製
シリカテインα−絹フィブロイン融合タンパク質は、アフィニティーマトリクス上でさらに精製することができる。アフィニティーマトリクスは、例えばシリカテインα特異抗体を固相(CNBr活性化セファロース又は他の適切な担体)上に固定化することにより調製することができる。標準方法に従って調製された、シリカテインαに対するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を使用することができる(Osterman (1984) Methods of Protein and Nucleic Acid Research Vol. 2; Springer-Verlag [Berlin])。抗体のマトリクスへのカップリングは、メーカー(Pharmacia)の使用説明書に従って行なわれる。純粋なシリカテインα−絹フィブロイン融合タンパク質の溶出は、pH変化又はイオン強度の変化により行なわれる。
【0061】
他のアフィニティーマトリクスも使用することができる。
【0062】
シリカテイン活性の検出及びシリカの合成
組換えシリカテイン−絹フィブロイン融合タンパク質の酵素活性を求めるために、テトラエトキシシラン(TEOS)の加水分解及び続く重合の後の重合し沈降したシリカの測定に基づく分析を用いる。
【0063】
組換えシリカテインの酵素活性の測定は通常、以下のように行なわれる。融合タンパク質を酵素反応に適切な緩衝液、例えば50mM MOPS(pH6.8)に対して一晩透析する。pHが4.5〜10.5の範囲の他の緩衝液も適切である。
【0064】
融合タンパク質(1μg〜50μg)を1mlの適切な緩衝液、例えば50mM MOPS(pH6.8)に溶解し、1mlの1mM〜4.5mM TEOS溶液を補充する。酵素反応は室温で行なうことができる。典型的には、60分のインキュベーション期間で、シリカテイン100μgにつき200nmolの非晶質シリカが合成される。シリカ産物を遠心分離(12000×g、15分、+4℃)により回収し、エタノールで洗浄し、風乾する。その後、沈殿を1M NaOHで加水分解する。溶解ケイ酸塩を次に、モリブデン酸塩に基づく分析、例えばケイ素分析(Merck)により定量的に測定する。
【0065】
以下の基質を使用することができる:テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラノール、ジアルコキシシランジオール、モノアルコキシシラントリオール、ジアルコキシシラノール、モノアルコキシシランジオール、モノアルコキシシラノール、アルキル−、アリール−若しくはメタロトリアルコキシシラン、アルキル−、アリール−若しくはメタロシラノール、アルキル−、アリール−若しくはメタロシランジオール、アルキル−、アリール−若しくはメタロシラントリオール、アルキル−、アリール−若しくはメタロモノアルコキシシランジオール、アルキル−、アリール−若しくはメタロジアルコキシシラノール、又は他の金属酸化物 前駆体(ガリウム、ジルコニウム、又はチタンのアルコキシ化合物)。これらの基質の混合物もまた酵素によって使用される。したがって、混合ポリマーも産生され得る。
【0066】
反応は温和な条件下で行なうことができる。したがって、本発明は省エネルギーで環境に無害な手法の導入に寄与している。
【0067】
完全に再生され得るヒドロキシアパタイトの代わりにシリカを使用することの他の理由は、シリカがより耐酸性であり、ヒドロキシアパタイトが「天然の」エナメル質と同じくらい齲蝕を受けやすいことである。
【0068】
シリカテイン−接着タンパク質融合タンパク質の組合せ
シリカテイン−絹フィブロイン融合タンパク質及びシリカテインにより産生される(バイオ)シリカは、以下と組み合せて使用することができる:
a)ヒトエナメル質由来ペプチド。これらのペプチドはシリカ/ペプチド系ナノコンポジットのデザインを可能にする。これらは副作用を引き起こす可能性がある樹脂単量体又は添加剤の浸出がなく、生体適合性である。
b)DOPA含有ポリペプチド/タンパク質。これらのポリペプチド/タンパク質は、海綿チロシナーゼを用いて調製することができる。これらはシリカテイン/バイオシリカの表面結合のための接着剤として使用される。
【0069】
(バイオ)シリカとエナメル質由来ペプチド/タンパク質の組合せ
エナメル質に由来するペプチドを使用する理由は、当該ペプチドがエナメル質において粘着をもたらし、シリカ複合体中で最高の粘着を生じ、空洞が引き起こされた虫歯のエナメル質辺縁へのシリカ系「ナノコンポジット」の最高の粘着作用を生じるためである。樹脂粘着剤の欠点は、「感水性(water sensible)」で、加水分解される傾向があることである。
【0070】
(バイオ)シリカとDOPA含有タンパク質及びペプチドの組合せ
海棲海綿からクローニングされる組換えチロシナーゼ(非特許文献13)が、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)単位を含有する接着ポリペプチド又はタンパク質を合成するために使用される。使用されるチロシン含有タンパク質及びペプチドの酵素によるヒドロキシル化は、記載の手法(Marumo and Waite (1986) Biochim Biophys Acta 872:98、Akemi Ooka and Garrell (2000) Biopolymers 57:92)に従って行なわれる。タンパク質又はペプチド中のチロシン残基のDOPAへの酵素によるヒドロキシル化における一つの問題は、チロシンヒドロキシル化後に形成されるDOPAのさらなる産物(特にドーパキノン)へのチロシナーゼ媒介酸化によって起こり得る。ドーパキノンは、リシン残基と架橋を形成することが可能である。DOPAからの酸化産物の形成を低減するために、ヒドロキシル化中にアスコルビン酸を添加する。アスコルビン酸は、形成されるドーパキノン及びカテコールのさらなる酸化産物を減少させる。酵素は、低分子量ペプチドのヒドロキシル化中に、遠心分離/濾過(ミクロポアフィルタ)により除去する。アスコルビン酸を産物から逆相HPLCにより分離する。
【0071】
組換え海綿チロシナーゼを「GST Fusions」システム(Amersham)を用いて調製する。得られたGST融合タンパク質を、グルタチオン−セファロース4B上でアフィニティークロマトグラフィーにより精製する。グルタチオン−S−トランスフェラーゼを組換え海綿酵素から分離するために、融合タンパク質をトロンビンで切断する。チロシナーゼの酵素活性は、リン酸緩衝液中でL−チロシンを基質として用いて求める。チロシンのL−DOPA(3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン)への変換を280nmで測定する。
【0072】
また、シリカテインは、モノフェノール(例えばチロシン残基)をジフェノールに変換する組換え海綿チロシナーゼを用いて修飾することができる。
【0073】
得られた接着剤タンパク質は、高次構造の形成下で、バイオシリカから作られる(シリカテインにより合成される)構成要素を連結するために使用することができる。
【0074】
シリカテインα−絹フィブロイン融合タンパク質の応用
本発明のさらなる態様は、以下のシリカテインα−絹フィブロイン融合タンパク質の応用である。
【0075】
1)歯科材料の表面修飾への応用(生体適合性の改善、現在使用されている材料と比較して高い安定性及び空隙率)。
【0076】
2)歯科用置換材料等の新規の歯科材料(複合材料)の調製への応用。
【0077】
3)金属、金属酸化物、プラスチック、及び他の材料から作られる歯科材料のコーティングの調製、特にこれらの材料上の単分子層の調製(生物化;骨と歯科材料との間の安定した接続の形成)への応用。
【0078】
4)シリカテイン及びバイオシリカ構成要素(シリカテインにより合成されるバイオシリカ粒子)の表面(金属、ガラス等)への付着のため、及び高次構造の形成下でバイオシリカ構成要素を連結するための、融合タンパク質中に存在する接着タンパク質(「水中接着剤」)の使用。
【0079】
5)歯科学におけるフィラー粒子としてのバイオシリカの使用。バイオシリカは従来の材料と比べて、2つの利点を有する:1.組換え酵素(シリカテイン)又はバイオリアクター(プリモルフ)を用いて酵素的に生成することができるため、環境に無害に合成される。表面修飾はシリカーゼにより行なわれ得る。高いエネルギー又は攻撃的な化学物質の必要はない。
【0080】
配列番号1:スベリテス・ドムンクラ(Suberites domuncula)由来のシリカテインαポリペプチドのアミノ酸配列(rSILICAα_SUBDO)。
配列番号2:ムラサキイガイ(Mytilus galloprovincialis )由来の絹フィブロインポリペプチドのアミノ酸配列(rSILKFIB_MYTGA)。
配列番号3:シリカテインαポリペプチドをコードするスベリテス・ドムンクラ(Suberites domuncula)由来cDNAの核酸配列。
配列番号4:絹フィブロインポリペプチドをコードするムラサキイガイ(Mytilus galloprovincialis )由来cDNAの核酸配列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ合成酵素及び接着タンパク質を含む、融合タンパク質。
【請求項2】
前記シリカ合成酵素と前記接着タンパク質との間にプロテアーゼ切断部位を含有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記シリカ合成酵素がシリカテインである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記シリカ合成酵素がシリカテインαである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記接着タンパク質が絹フィブロインである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記シリカ合成酵素と前記接着タンパク質との間にプロテアーゼ切断部位を含有する、請求項3、4、又は5のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記プロテアーゼ切断部位がエンテロキナーゼ切断部位である、請求項2、3、4、5、又は6のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードするcDNA。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の融合タンパク質を合成する方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の融合タンパク質を含む、ナノコンポジット材料。
【請求項11】
適切な添加剤及び補助剤と共に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物を含む、ナノコンポジット材料。
【請求項12】
適切な希釈溶液又は担体物質と共に、1つ又は複数の成分がデポー化合物の形で、又は前駆体として存在する、請求項10又は11に記載のナノコンポジット材料。
【請求項13】
さらなる化合物と正に相互作用し、且つリン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)沈殿、エナメル細胞動員を調節し、且つ抗菌活性を示す付加的な生物活性を有する、請求項10〜12のいずれか1項に記載のナノコンポジット材料。
【請求項14】
これらの融合タンパク質及びナノコンポジット材料を使用することにより、二酸化ケイ素(ケイ酸又はケイ酸塩の縮合産物;シリカとも呼ばれる)、シリコーン、及び酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化鉄、及び酸化バナジウムを含む他の金属酸化物、並びに混合ポリマーをin vitro又は非ヒトin vivoで合成する方法。
【請求項15】
二酸化ケイ素(ケイ酸又はケイ酸塩の縮合産物;シリカとも呼ばれる)、シリコーン、及び酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化鉄、及び酸化バナジウムを含む他の金属酸化物、並びに混合ポリマーをin vitro又は非ヒトin vivoで合成する方法であって、配列番号2に示される配列と少なくとも25%の配列類似性を示す接着タンパク質ドメインを含む融合タンパク質が使用される、in vitro又は非ヒトin vivoで合成する方法。
【請求項16】
二酸化ケイ素(ケイ酸又はケイ酸塩の縮合産物;シリカとも呼ばれる)、シリコーン、及び酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化鉄、及び酸化バナジウムを含む他の金属酸化物、並びに混合ポリマーをin vitro又はin vivoで合成する方法であって、配列番号1に示される配列と少なくとも25%の配列類似性を示すシリカテインドメインを含む融合タンパク質が使用される、in vitro又はin vivoで合成する方法。
【請求項17】
ケイ酸、ケイ酸塩、モノアルコキシシラントリオール、モノアルコキシシランジオール、モノアルコキシシラノール、ジアルコキシシランジオール、ジアルコキシシラノール、トリアルコキシシラノール、テトラアルコキシシラン、アルキル−、アリール−若しくはメタロ−シラントリオール、アルキル−、アリール−若しくはメタロ−シランジオール、アルキル−、アリール−若しくはメタロ−シラノール、アルキル−、アリール−若しくはメタロ−モノアルコキシシランジオール、アルキル−、アリール−若しくはメタロ−モノアルコキシシラノール、アルキル−、アリール−若しくはメタロ−ジアルコキシシラノール、アルキル−、アリール−若しくはメタロ−トリアルコキシシラン、又は他の金属酸化物前駆体化合物が合成の基質として使用される、請求項14〜16に記載の方法。
【請求項18】
規定の組成の混合ポリマーが、前記化合物の規定の混合物を用いて産生される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ガラス、金属、金属酸化物、プラスチック、生体高分子、又は鋳型として使用される他の材料への前記融合タンパク質の表面結合により、規定の2次元及び3次元構造が産生される、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
組換え海綿チロシナーゼを用いて、DOPA含有タンパク質及びペプチドを製造する方法。
【請求項21】
DOPA含有ポリペプチドを用いて、シリカテイン/バイオシリカ構成要素を表面(金属表面、プラスチック表面、又は複合材料の表面)に結合させる方法。
【請求項22】
前記請求項に記載の方法を用いて得られる歯科充填材。
【請求項23】
(a)融合タンパク質(キメラタンパク質)構築物、又は(b)分離タンパク質発現(プロテアーゼ切断部位)を有する構築物の形である、請求項8に記載の核酸。
【請求項24】
前記核酸がDNA、cDNA、RNA、又はそれらの混合物を表す、請求項23に記載の核酸。
【請求項25】
前記核酸の配列が少なくとも1つのイントロン及び/又はポリA配列を含む、請求項8、23、又は24のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項26】
前記核酸が合成的に産生される、請求項8及び請求項23〜25のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項27】
好ましくはプラスミド、シャトルベクター、ファージミド、コスミド、発現ベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、若しくはナノ粒子、又はリポソームの形である、請求項8及び請求項23〜25のいずれか1項に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項28】
好ましくはナノ粒子又はリポソームの形である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む、ベクター。
【請求項29】
請求項8及び請求項23〜28のいずれか1項に記載のベクターでトランスフェクトされたか、又は請求項8及び請求項23〜28のいずれか1項に記載の粒子により感染若しくは形質導入された宿主細胞。
【請求項30】
請求項1〜7に記載のポリペプチド又はその一部を発現する、請求項29に記載の宿主細胞。
【請求項31】
前記ポリペプチドが合成的に産生される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項32】
前記ポリペプチドが原核細胞又は真核細胞の抽出物又は溶解物中に存在する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項33】
前記ポリペプチドが精製され、実質的に他のタンパク質を含まない、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項34】
シリコーンインプラントにおけるシリコーン及びシリコーン単量体の吸収の調節のための、前記請求項に記載のポリペプチド、核酸、又はナノコンポジット材料の使用。
【請求項35】
シリコーンインプラントにおけるシリコーン及びシリコーン単量体の吸収を調節するために、細胞をトランスフェクションするための前記請求項に記載の核酸の使用。
【請求項36】
金属、金属酸化物、プラスチック、及び他の材料のコーティング、特にこれらの材料上の単分子層の形成としての、シリカテインにより酵素的に産生されたシリカ、又は他の金属酸化物、及び接着タンパク質の使用。
【請求項37】
シリカテイン−絹フィブロイン融合タンパク質と、生体適合性ヒトエナメル質由来ペプチド/タンパク質との組合せ(シリカ/ペプチド系ナノコンポジット)の使用。
【請求項38】
シリカテイン−絹フィブロイン融合タンパク質と、DOPA含有タンパク質及びペプチドとの組合せの使用。
【請求項39】
歯科学におけるフィラー粒子としての、シリカテインを用いて生成される(バイオ)シリカの使用。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【公表番号】特表2010−501168(P2010−501168A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524957(P2009−524957)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007363
【国際公開番号】WO2008/022774
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(509052104)ナノテクマリン ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】