説明

バイオディーゼルの製造

バイオディーゼルの生成におけるイオン性液体の使用は、反応条件下で安定しており、ここでイオン性液体は、溶媒及び触媒の両方である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオディーゼルの製造法、より詳細に述べると安定したイオン性液体を溶媒及び触媒の両方として使用するバイオディーゼルの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオディーゼルは、家庭資源及び再生可能資源から製造されるクリーン燃焼の代替燃料に与えられた名称である。バイオディーゼルは、石油を含まないが、バイオディーゼル配合物を作製するために、石油ディーゼルといずれかのレベルで配合することができる。これは、ほとんど又は全く改変せずに、圧縮点火(ディーゼル)エンジンにおいて使用することができる。バイオディーゼルは、使用が簡単で、生分解性であり、無毒であり、本質的にイオウ及び芳香族を含まないと考えられる。
バイオディーゼルは、植物油又は動物脂肪に由来する長鎖脂肪酸のモノアルキルエステルとして定義される。一般にバイオディーゼルは、動物脂肪のエステル交換により作製され、ここでグリセリンは、脂肪酸メチルエステルから分離される。あるいは、植物油のエステル化により作製することができ、ここで水の副産物は、最終の脂肪酸メチルエステルから分離される。
【0003】
バイオディーゼルは、適切な性能を確実にするために、工業規格(ASTM D6751)に厳密であるように製造されなければならず、並びに「改正大気浄化法(1990 Clean Air Act Amendments)」の健康影響の試験要件(the health effects testing requirements)を完全に満足する唯一の代替燃料である。ASTM D6751に適合するバイオディーゼルは、米国環境保護庁(EPA)に、販売及び流通のための合法的自動車燃料として登録されている。用語「バイオディーゼル」は、ディーゼル燃料との配合前の、純粋な燃料を意味する。バイオディーゼル配合物は、「BXX」と記され、「XX」は、その配合物中に含まれたバイオディーゼルの割合(%)を表している(すなわち:B20は、20%バイオディーゼル、80%石油ディーゼル)。
バイオディーゼルは、再生可能資源から作製され、及び石油ディーゼルに比べ低排気物質であるので、環境に優しい。これは、食卓塩よりも毒性が低く、砂糖と同じくらい速く生分解性である。
多くのバイオディーゼルの合成が公知であり、典型的には酸又は塩基触媒を使用する。
【0004】
【化1】

【0005】
脂肪酸(植物油)に関して、酸触媒されたエステル化反応が好ましく、その理由は水が唯一の副産物であり及びこの反応は迅速に生じるからである。メチルエステル又はエチルエステルへの塩基触媒されたエステル化は、一般に常温常圧では失敗し、その理由はこの触媒は、カルボン酸基との反応により失活されるからである(スキーム1)。
脂肪酸エステル(動物脂肪−通常グリセロールエステル)に関して、酸及び塩基の両方で触媒されたエステル交換が迅速に生じる。メチルエステル又はエチルエステルへの塩基触媒されたエステル交換は、通常わずかに高い反応温度及び圧力を必要とし、その理由はこれは比較的遅い反応であるからである(スキーム2)。
【0006】
【化2】

【0007】
有機溶媒を伴わない、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート-パラ-トルエンスルホン酸([OMIM][BF4]-PTSA)を使用する様々な有機酸のC4-C18アルコールによるエステル化が実行されるが、しかしこの反応を活性化するためには、過度の加熱又はマイクロ波照射が必要である。イオン性液体を使用する室温での触媒されたエステル化も公知であるが、触媒が存在しなければならない。しかしこれは、短鎖の酸(10個未満の炭素原子)にのみ適用され、決して植物又は動物由来の脂肪酸又は脂肪酸エステルで実行することはできない。(Fraga-Dubreuil, J., Bourahala, K., Rahmouni, M., Bazureau, J. P., Hamelin, J.の論文、Catalysis Communication, 2002, 3, 185-190)。
イオン性液体中のL-アスコルビン酸及び脂肪酸の真空-駆動されたリパーゼ-触媒された直接縮合、すなわち、天然の表面活性のある抗酸化物質の合成に関して、酵素も、イオン性液体と共に使用される。ブレンステッド酸性イオン性液体である1-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートも、エステル化に使用される。しかし酸性の条件下で、[BF4]-は、超腐蝕性、高毒性であり及びガラスを溶解するHFを生じる。
【0008】
イオン性液体及びイオン性液体/超臨界二酸化炭素中のキモトリプシン触媒されたエステル交換;イオン性液体中のアルコールの無水酢酸及び酢酸による金属ルイス酸-触媒されたアセチル化;N-複素環式カルベン触媒により媒介されたエステル交換/アシル化反応、並びにイオン性液体及び有機溶媒中でのリパーゼ-触媒されたエステル交換も公知である。
[BF4]及び[PF6]イオン性液体は、安定ではなく、及びイミダゾリウムイオン性液体は、塩基で安定していない。
本明細書において使用される用語「イオン性液体」は、固形物の溶融により生成されることが可能である液体であり、そのように生成される場合に、イオンのみからなる液体を意味する。イオン性液体は、有機塩に由来することができる。
【0009】
イオン性液体は、1種の陽イオン及び1種の陰イオンを含む均質な物質から形成されてよいか、又は1種よりも多い陽イオン及び/もしくは陰イオンで構成することができる。従ってイオン性液体は、1種よりも多い陽イオン及び1種の陰イオンで構成されてもよい。イオン性液体は更に、1種の陽イオン、及び1種又は複数種の陰イオンで構成されてもよい。従って本発明の混合された塩は、陰イオン及び陽イオンを含む混合された塩で構成することができる。
従ってまとめると、本明細書において使用される用語「イオン性液体」は、単独の塩(ひとつの陽イオン種及びひとつの陰イオン種)からなる均質な組成物を意味するか、又は1種よりも多い陽イオン及び/もしくは1種よりも多い陰イオンを含む不均質な組成物を意味することができる。
特に興味深いイオン性液体の種類は、融点が100℃以下である塩組成物のものである。このような組成物は、成分の個々の融点以下の温度で液体であることが多いそれらの成分の混合物である。
用語「塩基」は、酸と反応(中和)し、塩を形成する能力を有するブレンステッド塩基を意味する。塩基のpH範囲は、水中に溶解又は懸濁した場合に、7.0〜14.0である。
用語「酸」は、塩基と反応(中和)し、塩を形成する能力を有するブレンステッド酸を意味する。酸のpH範囲は、水中に溶解又は懸濁した場合に、1.0〜7.0である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは驚くべきことに、反応条件に対し安定しているイオン性液体を用い、バイオディーゼルを生成することが可能であり、これにより継続的な再循環が可能であることを認めた。
更に本発明者らは驚くべきことに、酸又は塩基官能基を、イオン性液体へ組み込み、このイオン性液体を触媒及び/又は溶媒として作用させることができることを認めた。
【0011】
本発明により、植物又は動物由来の脂肪酸を、安定なイオン性液体の存在下で、エステル化又はエステル交換する工程を含む、バイオディーゼルの製造方法を提供する。溶媒及び触媒の両方ともこのイオン性液体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
好ましくは、このイオン性液体は、酸性又は塩基性である。
イオン性液体が塩基性である場合、これは、塩基性陽イオン及び中性陰イオン、又は中性陽イオン及び塩基性陰イオン、又は塩基性陽イオン及び塩基性陰イオンの両方、又はそれらの混合物を含んでよい。
イオン性液体が酸性である場合、これは、酸性陽イオン及び中性陰イオン、又は中性陽イオン及び酸性陰イオン、又は酸性陽イオン及び酸性陰イオンの両方、又はそれらの混合物を含んでよい。
塩基性陽イオンは、好ましくは、下記式を有し:
[Cat+-Z-Bas]
ここで、Cat+は、アンモニウム、ホスホニウム、ピラゾリウム、DBU又はDBNを含むまたはこれらからなる陽イオン種であり;
Zは、Cat+とBasとを連結する共有結合であるか又は1、2もしくは3個の脂肪族連結基であり、各々1〜10個の炭素原子を含み、1、2もしくは3個の酸素原子を含んでいてもよく;並びに
Basは、塩基性部分である。
【0013】
Basは、好ましくは、少なくとも1個の窒素、リン、イオウ、酸素又はホウ素原子を含む。
より好ましくは、Basは、少なくとも1個の第1級、第2級又は第3級アミノ基を含む。
更により好ましくは、Basは、-N(R1)(R2)、及び-P(R1)(R2)から選択され;並びに、ここで、R1及びR2は、同一でも異なっていても良く、各々、水素、直鎖又は分岐アルキル、シクロアルキル、アリール及び置換されたアリールから選択される。
R1及びR2は好ましくは各々、水素、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル及びフェニルから選択される。
より好ましくは、Basは、-N(CH3)2及び-N(CH(CH3)2)2から選択される。
Zは、直鎖又は分岐C1-C18アルカンジイル、置換されたアルカンジイル、ジアルカニルエーテル及びジアルカニルケトンから選択されてよい。
好ましくは、Zは、-(CH2-CH2)-、-(CH2-CH2-CH2)-、-(CH2-CH2-CH2-CH2)-、-(CH2-CH2-CH2-CH2-CH2)-、-(CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2)-、-(CH2-CH2-O-CH2-CH2)-及び-(CH2-CH2-O-CH2-CH2-CH2)-から選択される。
【0014】
本発明に従い、Cat+-Z-Basは、以下から選択されてよく:
[N(Z-Bas)(Rb)(Rc)(Rd)]+ 及び [P(Z-Bas)(Rb)(Rc)(Rd)]+
ここで:Bas及びZは、先に定義されたものであり;並びに
Rb、Rc及びRdは、同一でも異なっていても良く、各々独立して、水素、C1-C40、直鎖又は分枝したアルキル基、C3-C8シクロアルキル基、又はC6-C10アリール基から選択され、ここで該アルキル、シクロアルキルもしくはアリール基は、無置換であるか、又は、C1-C6アルコキシ、C6-C10アリール、CN、OH、NO2、C7-C30アラルキル及びC7-C30アルカリルから選択された1〜3個の基により置換されてもよい。
好ましくは、Cat+-Z-Basは:
【0015】
【化3】

【0016】
から選択され、ここでZ、Bas及びRbは先に定義されたものである。
より好ましくは、Cat+-Z-Basは:
【0017】
【化4】

【0018】
から選択される。
Cat+は、1,3,5-トリアルキルピラゾリウム、1,2-ジアルキルピラゾリウム、及び1,2,3,5-テトラアルキルピラゾリウムを含むか又はこれらからなってよい。好ましくは、Cat+-Z-Basは:
【0019】
【化5】

【0020】
から選択され、ここでZ及びBasは、先に定義されたものである。
更に、Cat+-Z-Basは:
【0021】
【化6】

【0022】
から選択されてよい。
好ましくは、Cat+-Z-Basは:
【0023】
【化7】

【0024】
であってよく、ここでBas、Z及びRbは先に定義されたものである。
【0025】
本発明に従い、塩基性陰イオンは、式[Xb]-を有し、並びに、[F]-、[OH]-、[OR]-、[R-CO2]-、[PO4]3-及び[SO4]2-から選択されてよく、ここでRは、C1-C6アルキルである。
好ましくは、[Xb]-は、[OH]-である。
更に本発明に従い、酸性陽イオンは好ましくは、式:
[Cat+-Z-Acid]
を有し、ここで、Cat+は、陽イオン種であり;
Zは、1〜10個の炭素原子、及び各々任意に1、2又は3個の酸素原子を含む、Cat+及びAcidを結合する共有結合であり;並びに
Acidは、酸部分である。
酸は好ましくは、-SO3H、-CO2H、-SO3-Ph-R、-SO3R、RPO(OH)2及びR2PO(OH)から選択され、ここでRは、例えば、C1-C6アルキルである。
【0026】
[Cat+]は、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリニウム、アザチオゾリウム、オキソチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレノゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム(borolium)、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、イソトリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、ジベンゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ジベンゾチオフェニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンノリニウム(annnolinium)、フタラジニウム、キナゾリニウム、キナザリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、サジニウム、オキサジニウム、アザアニュレニウム及びピロリジニウムから選択された複素環構造を含むか又はこれらからなることができる。
【0027】
好ましくは、[Cat+]は、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリニウム、アザチオゾリウム、オキソチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレノゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、イソトリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、ジベンゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ジベンゾチオフェニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンノリニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キナザリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、サジニウム、オキサジニウム、アザアニュレニウム及びピロリジニウムから選択された複素環構造を含むか又はこれらからなることができる。
より好ましくは、[Cat+]は、ピラゾリウム、イソチアゾリニウム、テトラゾリウム、ピペリジニウム、モルホリニウム及びピロリジニウムから選択された複素環構造を含むか又はこれらからなることができる。
好ましくは、Cat+-Z-Acidは:
【0028】
【化8】

【0029】
【化9】

から選択され、
【0030】
ここで、Acid及びZは、先に定義されたものであり;並びに
Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRhは、同一でも異なっていても良く、各々独立して水素、C1-C40の直鎖又は分枝したアルキル基、C3-C8シクロアルキル基、又はC6-C10アリール基から選択され、ここで該アルキル、シクロアルキルもしくはアリール基は、無置換であるか、又は、C1-C6アルコキシ、C6-C10アリール、CN、OH、NO2、C7-C30アラルキル及びC7-C30アルカリルから選択された1〜3個の基により置換されてもよいか、又はRb、Rc、Rd、Re及びRfのいずれかふたつは、隣接炭素原子に結合し、メチレン鎖-(CH2)q-を形成してもよく、ここでqは、8〜20である。
より好ましくは、Cat+-Z-Acidは:
【0031】
【化10】

【0032】
【化11】

【0033】
から選択され、
ここで、Acid及びZは、先に定義されたものであり;並びに
Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRhは、同一でも異なっていても良く、各々独立して水素、C1-C40の直鎖又は分枝したアルキル基、C3-C8シクロアルキル基、又はC6-C10アリール基から選択され、ここで該アルキル、シクロアルキルもしくはアリール基は、無置換であるか、又は、C1-C6アルコキシ、C6-C10アリール、CN、OH、NO2、C7-C30アラルキル及びC7-C30アルカリルから選択された1〜3個の基により置換されてもよいか、又はRb、Rc、Rd、Re及びRfのいずれかふたつは、隣接炭素原子に結合し、メチレン鎖-(CH2)q-を形成してもよく、ここでqは、8〜20である。
最も好ましくは、Cat+-Z-Acidは:
【0034】
【化12】

【0035】
である。
本発明に従い、酸性陰イオンは、式[Xa]-を有し、並びに[HSO4]-、[H2PO4]-、[HPO4]2-、[HCl2]-及び[HX2]-から選択され、ここでX=F、Cl、Br又はIである。
好ましくは、[Xa]-は、[HF2]-、[HSO4]-及び[H2PO4]-から選択される。
イオン性液体が、塩基性陰イオンを含む場合、中性陽イオンは、アンモニウム、ホスホニウム、ピラゾリウム、DBU又はDBNを含むか又はそれらからなることができる。
好ましくは、中性陽イオンは:
[N(Ra)(Rb)(Rc)(Rd)]+ 及び[P(Ra)(Rb)(Rc)(Rd)]+
から選択され、
ここでRa、Rb、Rc及びRdは、同一でも異なっていても良く、各々独立して水素、C1-C40の直鎖又は分枝したアルキル基、C3-C8シクロアルキル基、又はC6-C10アリール基から選択され、ここで該アルキル、シクロアルキルもしくはアリール基は、無置換であるか、又は、C1-C6アルコキシ、C6-C10アリール、CN、OH、NO2、C7-C30アラルキル及びC7-C30アルカリルから選択された1〜3個の基により置換されてもよい。
より好ましくは、中性陽イオンは:
【0036】
【化13】

【0037】
から選択され、ここでRaは、先に定義されたものである。
更により好ましくは、中性陽イオンは:
【0038】
【化14】

【0039】
から選択される。
中性陽イオンは、1,3,5-トリアルキルピラゾリウム、1,2-ジアルキルピラゾリウム、又は1,2,3,5-テトラアルキルピラゾリウムを含むか又はこれらからなる。好ましくは、中性陽イオンは:
【0040】
【化15】

【0041】
から選択される。
更になお、中性陽イオンは:
【0042】
【化16】

【0043】
から選択されてもよく、ここで、Ra、Rb、Rc、Rdは、C1-C40の直鎖又は分枝したアルキル基である。
イオン性液体が酸性陰イオンを含む場合、中性陽イオンは、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリニウム、アザチオゾリウム、オキソチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレノゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、イソトリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、ジベンゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ジベンゾチオフェニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンノリニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キナザリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、サジニウム、オキサジニウム、アザアニュレニウム及びピロリジニウムから選択された複素環構造を含むか又はそれらからなることができる。
【0044】
好ましくは、陰イオンが酸性である場合、中性陽イオンは好ましくは、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリニウム、アザチオゾリウム、オキソチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレノゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、イソトリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、ジベンゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ジベンゾチオフェニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンノリニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キナザリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、サジニウム、オキサジニウム、アザアニュレニウム及びピロリジニウムから選択された複素環構造を含むか又はそれらからなる。
より好ましくは、中性陽イオンは、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、ピリミジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム及びピロリジニウムから選択された複素環構造を含む又はそれらからなる。
好ましくは、中性陽イオンは:
【0045】
【化17】

【0046】
【化18】

【0047】
から選択され、
ここで、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRhは、同一でも異なっていても良く、各々独立して水素、C1-C40の直鎖又は分枝したアルキル基、C3-C8シクロアルキル基、又はC6-C10アリール基から選択され、ここで該アルキル、シクロアルキルもしくはアリール基は、無置換であるか、又は、C1-C6アルコキシ、C6-C10アリール、CN、OH、NO2、C7-C30アラルキル及びC7-C30アルカリルから選択された1〜3個の基により置換されてもよいか、又はRb、Rc、Rd、Re及びRfのいずれかふたつは、隣接炭素原子に結合し、メチレン鎖-(CH2)q-を形成し、ここでqは、8〜20である。
より好ましくは、中性陽イオンは:
【0048】
【化19】

【0049】
【化20】

【0050】
から選択され、
ここで、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRhは、先に定義されたものである。
イオン性液体が、塩基性陽イオン又は酸性陽イオンを含む場合、中性陰イオンは、スルホネート、ホスフィネート、トリフラミド(アミド)、トリフラート、ジシアナミド、オキシド(フェノキシド)又はハロゲン化物の陰イオン種であることができる。
好ましくは、中性陰イオンは、[C(CN)3]-、[NTf2]-、[OTf]-、[R-SO3]-、[R2PO2]-、[Cl]-、[Br]-及び[I]-から選択され;ここでRは、C1-C6アルキル、又はC1-C6アリールである。
中性陰イオンは、[Me-SO3]-、[Ph-SO3]-及び[Me-Ph-SO3]-から選択されてもよい。
【0051】
本発明のいずれかの部分に従い、植物脂肪酸は、例えば、ナタネ油、カノーラ油又はPriolineなど、野菜又は穀物に由来することができる。
本発明の方法を目的として、例えば:
IL
脂肪酸+アルコール −−> バイオディーゼル+H2O
IL
脂肪酸エステル+R-OH −−> バイオディーゼル+グリセロール
このイオン性液体は、メタノール、水又はエタノールなどの溶媒(試薬)に溶解し、並びにバイオディーゼル相から分離し続けるであろう。このことは、バイオディーゼルを、イオン性液体から容易に分離することを可能にし、従ってイオン性液体相は、再循環することができる。
ここで、本発明を、実施例により、及び図面を参照し、更に詳しく説明する。
【実施例】
【0052】
本発明において使用されるイオン性液体は、公知の手段を用い生成されるか、又は、例えば、以下に説明された反応又はそれに類似した反応を用い生成することができる。
アンモニウム塩
N,N-ジメチルエタノールアミンイオン性液体
【0053】
【化21】

【0054】
一連のジメチルエタノールアミン塩及びイオン性液体を、ジメチルエタノールアミン及びハロゲン化アルキルから、引き続きハロゲン化物イオンを他の陰イオンと交換し、合成することができる。ジメチルエタノールアミンは、安価で、安定しているので、これらのイオン性液体は有用であり、及び酸素官能性は、これらのアンモニウム塩の融点を、同様のテトラアルキルアンモニウム塩と比べ低下する。この物質は、室温でイオン性液体である。
【0055】
【化22】

【0056】
ジメチルエタノールアミンのアルキル化は、窒素原子上で生じる。窒素及び酸素の両方のジアルキル化は、少なくとも2モルのアルキル化剤が使用される場合に認められる。注意:塩基も必要である。従って一連のモノ及びジアルキルジメチルエタノールアミン塩を合成することができる(スキーム2参照)。
【0057】
【化23】

【0058】
様々なN-アルキル及びO-アルキル基が必要である場合、スキーム2の第一工程の生成物は、様々なハロゲン化アルキルによりアルキル化することができる。これは、下記スキーム3に示されている。
【0059】
【化24】

【0060】
DABCOイオン性液体
ハロゲン化アルキルの過剰なジアザビシクロ[2,2,2]オクタンとの反応は、イオン性液体の塩基の安定した(及び塩基性の)シリーズを提供する。
【0061】
【化25】

【0062】
これらのモノアルキルDABCOブロミドは、わずかに高い融点を有するが、ヘキシル、オクチル及びデシルDABCOブロミドは、イオン性液体(m.p.<100℃)である。この分解温度は、全て、示差走査熱量測定(DSC)により220〜250℃の範囲である。[C6DABCO]ブロミドイオン性液体(95℃)の融点は、[C6DABCO][N(SO2CF3)2]に関してmp=-55℃(DSCによる)に低下し、これはこの温度でゲルを形成する。
DABCOメタンスルホン酸エチル[C2DABCO][OSO2CH3](mp 81℃)及びDABCOメタンスルホン酸ヘキシルは、DABCO及びメタンスルホン酸エチル又はメタンスルホン酸ヘキシルの反応からも合成される。
【0063】
典型的実験手順
[CnDABCO] [Br]
ジアゾビシクロ-[2,2,0]-オクテン(1.13g, 12.5mmol)及び臭化アルキル(10mmol)を、還流下(又は更に低い温度である150℃で)、1〜24時間加熱した。冷却時に、沈殿が形成された。これを、C2-C10DABCOブロミドについては最低量の沸騰している酢酸エチル/イソプロパノール中に、及びC12-C18DABCOブロミドについては沸騰しているトルエン/酢酸エチル中に溶解した。冷却時に形成された結晶を濾過し、真空(1mmHg)下で80℃で4時間加熱することにより乾燥した。これらの化合物は、NMR及びDSCにより分析した。収率は、典型的には60〜80%であった。
【0064】
[CnDABCO][OSO2CH3]
ジアゾビシクロ-[2,2,0]-オクテン(1.13g, 12.5mmol)及びメタンスルホン酸アルキル(10mmol)を、100℃で1時間加熱した。冷却時に、沈殿が形成された。これを、最低量の沸騰している酢酸エチル/イソプロパノール中に溶解した。冷却時に形成された結晶を濾過し、真空(1mmHg)下で80℃で4時間加熱することにより乾燥した。これらの化合物は、NMR及びDSCにより分析した。収率は、典型的には70〜80%であった。
【0065】
[CnDABCO][N(SO2CF3)2]
[C6DABCO]Br(2.75g, 10.0mmol)及びビストリフルオロメタンスルフィンイミドリチウム(3.15g, 11mmol)を各々、水(10cm3)に溶解した。これら2種の溶液を混合し、濃密なイオン性液体相が形成された。これを、ジクロロメタン(3x10cm3)で抽出し、Na2SO4上で乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させ、無色のペーストを得、これは25℃で液体になり始めた。このペーストを、真空(1mmHg)下で80℃で4時間加熱することにより乾燥した。これらの化合物は、NMR及びDSCにより分析した。
【0066】
TMEDA塩
テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)イオン性液体は、下記のように、TMEDA及び臭化アルキルから合成することができる。C2、C5、C6、C8、C12及びC18臭化アルキルを生成し、これらはDABCOイオン性液体よりもわずかに低い融点であるように見える。[CnTMEDA]Br(式中、N=5, 6, 8, 10)は、室温でイオン性液体である。
【0067】
【化26】

【0068】
TMEDAイオン性液体の合成
[CnTMEDA]Br
テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)(2.32g, 20mmol)及び臭化アルキル(25mmol)を、還流下(又は更に低い温度である130℃で)、1時間加熱し、濃密な相の形成を生じた。これを室温に冷却した。[C2TMEDA]Br及び[C4TMEDA]Brについて、結晶性固形物が形成され、[C18TMEDA]Brについて、液体結晶性物質が形成された。これらの生成物を、シクロヘキサンで洗浄し、真空下(80℃で24時間、1mmHg)乾燥した。収率は、典型的には60〜80%であった。.
【0069】
ピラゾリウムイオン性液体
ピラゾール化合物及びヨウ化アルキルからのピラゾリウムイオン性液体の合成は、実現可能であるが、比較的高価である。遭遇する主な難点は、ピラゾールは、求核性が低く、反応性アルキル化剤とはゆっくり反応するのみであることである。最大収率は、ヨウ化物でおよそ90%、臭化物で60〜80%であり、塩化物で<5%である。
【0070】
【化27】

【0071】
【化28】

【0072】
ピラゾリウムイオン性液体の新規合成は、分解を排除するように考案された。使用される方法は、アルキルメタンスルホン酸塩のピラゾールとの反応に関連し、メタンスルホン酸塩イオン性液体を得る。この方法を使用すると、副反応の排除は最早重大な問題点ではなかった。再デザインされた合成を、下記スキーム6に示す。
【0073】
【化29】

【0074】
DMAP塩
N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)イオン性液体は、下記のように、DMAP及びメタンスルホン酸アルキルから合成した。
【0075】
【化30】

【0076】
新規DMAPイオン性液体の合成
ジメチルアミノピリジン(DMAP)(2.443g, 20mmol)及び臭化エチル又は臭化ヘキシルのいずれか(25mmol)を、還流下(又は最低温度である130℃で)、1時間加熱した。冷却時に、沈殿が形成された。これを、C2-C6DMAPブロミドについては最低量の沸騰している酢酸エチル/イソプロパノール中に溶解した。冷却時に形成された結晶を濾過し、真空(1mmHg)下で80℃で4時間加熱することにより乾燥した。これらの化合物は、NMR及びDSCにより分析した。収率は、典型的には60〜80%であった。
ジメチルアミノピリジン(DMAP)(2.443g, 20mmol)及びメタンスルホン酸エチル又はメタンスルホン酸ヘキシルのいずれか(25mmol)を、100℃で1時間加熱した。冷却時に、沈殿が形成された。これを、C2-C6DMAPメタンスルホン酸塩については最低量の沸騰している酢酸エチル/イソプロパノール中に溶解した。冷却時に形成された結晶を濾過し、真空(1mmHg)下で80℃で4時間加熱することにより乾燥した。これらの化合物は、NMR及びDSCにより分析した。収率は、典型的には80〜85%であった。
塩基性
陽イオン中心とヒンダード塩基の間の距離が増大するにつれて、イオン性液体の塩基性は増大する。これは、以下に説明される反応配列により実現することができる。
【0077】
【化31】

【0078】
1-クロロ-2-(ジイソプロピルアミノ)エタン塩酸塩を使用し、ジメチルアミノエタノールをアルキル化し、得られるジアミンを、臭化プロピルでアルキル化した。4級化反応それ自身は、位置特異的であり、ジイソプロピルアミノ基は、非-求核性であり、及び適用された条件下では、4級化することができない。得られた塩は、陽イオンと塩基性のジイソプロピルアミノ基の間に5個の原子鎖を示す。ビストリフルイミドリチウムによるメタセシス反応は、室温でイオン性液体を生じる。その構造を以下に示す。
【0079】
【化32】

【0080】
前記スキームは、例えば、第4級窒素と塩基性窒素の間に5-原子スペーサーを持つ、一連の塩基性のイオン性液体の合成を示す。BIL 1-4の調製のための一般的合成戦略は、単純であり多用途であり、先のスキームにおいて示されている。塩基-つながれた(tethered)イオン性液体の合成の極めて重要な部分は、選択された求核試薬と反応する、2-ジイソプロピルアミノエチルクロリドの使用に関連しており、並びにジイソプロピルアミノ部分からの隣接基の参加により促進される。BIL 1、2及び4の調製のための合成戦略は、事実上非求核性であるジイソプロピルアルキルアミノ基に対して、ペンダントアミノ基、イミダゾリル基又はピリジル基を選択的に4級化する能力を考慮にいれる。BIL 3の調製のための合成戦略は、トルエン(溶媒)から析出する、モノ-4級化されたジアミンの不溶性を使用し、これによりこれが、ハロゲン化アルキルと更に反応することを防ぐ。全ての場合において、第4級アンモニウム塩と会合された陰イオンハロゲン化物には、ビストリフルイミドリチウムによるメタセシス反応が施され、塩基-つながれたイオン性液体BIL 1-4を生成する。
【0081】
実施例1−脂肪酸からのバイオディーゼルの合成
エステル化反応(反応1)は、過剰なメタノールを使用することにより、完了するよう駆動された平衡反応である。認められるように、水が唯一の副産物である。この方法の利点は、反応の最後に得られたイオン性液体/水メタノール混合物は、脂肪酸メチルエステル(FAME)生成物と混和せず、分離相を生じることである(反応1b)。バイオディーゼルは、相分離により単離される。この反応の別の利点は、この反応は室温で生じ、その結果エネルギー投入は、この工程では不要であることである。
【0082】
【化33】

【0083】
【化34】

【0084】
図1及び下記表に認められるように、この反応は、滑らかに進行し、予想された生成物が生じた。1% [emim][HS04]触媒で、この平衡収率(表)は、この反応の統計解析から予想されるものに近い(CH3OH 250%、500%及び1000%について、各々、収率60、80及び90%)。より多くの触媒が存在する場合(2.5%及び5%)、最終の収率は、90%よりも多い(NMRによる)。積分強度(integration)の誤差は、ほぼ±3%である。
【0085】
表1. NMR分析により決定した最終平衡収率(反応時間144時間、20℃) (誤差=±3%)。

【0086】
表2. 5% [emim][HS04]が触媒したオレイン酸メチルの豊富な相の組成(1H NMRによる)

【0087】
実施例2−トリグリセリドからのバイオディーゼルの合成
【0088】
【化35】

【0089】
実施例3−ラード(トリグリセリド)の酸触媒したエステル交換
【0090】
【化36】

【0091】
表3. ラード(1.0g)+メタノール2.0g及び触媒0.25gの電子レンジ内で0.5時間後のラードの酸触媒したエステル交換

【0092】
認められるように、触媒(1)及び(4){4-(3-メチルイミダゾリウム)ブタンスルホン酸ビストリフルオロメタンスルホニルアミド及び4-(3-メチルイミダゾリウム)ブタンスルホン酸トリフルオロメタンスルホン酸塩}は、この反応を120℃で良好に触媒する(表3)。この反応は、メタノール形の蒸発を停止するために、電子レンジ内で、加圧下で行った。これらは、従来の酸para-トルエンスルホン酸(p-TSA)と同様の結果を生じた。このイオン性液体は、揮発せず及びメタノール/グリセロール層中に残留するという、利点を有する。酸触媒(2)及び(3)は、有効性が低く、この反応を触媒するためには高い反応温度が必要である。従って、この反応は、これらの新規酸性のイオン性液体の酸度を測定する方法を提供する。
【0093】
表4. ラード(0.5g)+メタノール1.0g及び触媒0.25gの電子レンジ内で0.5時間後のラードの酸触媒したエステル交換

【0094】
表4は、この反応は温度依存型であること、及びバイオディーゼル性能に適合するために必要な95%を上回る転換を得るためには、少なくとも120℃が必要であることを示している。この生成物は、図2に示されたように、メタノール/グリセロール層/イオン性液体層の表面に分離層を形成する。
実施例4−ラード(トリグリセリド)の塩基触媒したエステル交換
【0095】
【化37】

【0096】

【0097】
試行1から15の反応条件
動物脂肪(ラード−ほとんどオレイン酸のトリグリセリド)(1.0g)、メタノール(2.0g)及び触媒(0.25g)(特に指定しない限り)(前記(1)から(7)から選択)を、磁気攪拌機の攪拌子(flea)と共に電子レンジ用チューブ内に配置し、条件に関して所望の温度で所望の時間(表3、4及び5参照)加熱した。これを、室温に冷却し、ふたつの層を、NMR(脂肪層についてCDCl3及びメタノール層についてCD3OD)で分析した。収率は、グリセリド内の-CH2-基を、オレイン酸メチル(バイオディーゼル)のメチルエステル内のOCH3基と、積分強度を比較することにより決定した(図3から5参照)。
生成物単離:上側のオレイン酸メチル層をデカントし、溶解したメタノールを、120℃に、又は圧力1mmHgで60℃に加熱することにより、蒸留除去した。この生成物は、イオン性液体触媒を含まないことがわかった。
【0098】
触媒再循環:メタノール及び水又はグリセロールは、蒸留又は減圧蒸留により、触媒から分離した。その後この触媒は、再循環及び再使用することができる。
試行16から24の条件
ナタネ油(1.0g)、メタノール(2.5、5.0又は10.0倍過剰)及び触媒([emim][HS04]) (1.0mol%、2.5mol%又は5.0mol%)を、ガラスチューブに、磁気攪拌子と共に入れた。これを、室温(20℃)で攪拌し、これらの試料を、GCにより、2時間、4時間及び144時間(これは、平衡が確立されるために十分な長さと推定された)後に分析した(表1及び2;反応1b;及び、条件については図1参照)。これらふたつの層も、NMR(脂肪層についてCDCl3 及びメタノール層についてCD3OD)により分析した。収率は、グリセリド内の-CH2-基を、オレイン酸メチル(バイオディーゼル)のメチルエステル内のOCH3基と、積分強度を比較することにより決定した。
欧州及び米国の規制に準拠したバイオディーゼルは、95.6%の脂肪酸メチル(又はエチル)エーテルで構成されなければならない。本発明のイオン性液体プロセスを使用する、酸イオン性液体触媒のこの規格に適合するバイオディーゼルの生成には、5mol%触媒及び10倍過剰なメタノールが必要である。
動物脂肪のメタノールによる酸触媒されたエステル交換については、比較的高い反応温度が必要である(典型的には90〜160℃)。このエステル交換は、酸性又は塩基性のイオン性液体で実行することができ、この酸性のイオン性液体はより良い結果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、様々なメタノール/触媒濃度での経時的転換の変動を示すグラフである(触媒=[emim][HS04]及びGC分析により決定される);
【図2】図2は、分離したオレイン酸メチル(上層)製品層を示す写真であり、ここで左側試験管は、反応前(メタノール/グリセロール/[MIBS][OTf])であり、右側は反応後である;
【図3】図3は、試行12(オレイン酸メチルへの54%転換)のプロトンNMRであり、グリセロールエステルピークを、4.25及び4.15に、並びにオレイン酸メチルピークを、3.63ppmに示す;
【図4】図4は、試行1(オレイン酸メチルへの99%転換)のプロトンNMRであり、オレイン酸メチルピークを、3.63ppmに示し、グリセロールエステルピーク又はイオン性液体ピークは示さない;並びに
【図5】図5は、試行1のプロトンNMRであり、メタノール層を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物又は動物由来の脂肪酸を、安定なイオン性液体の存在下でエステル化する工程を含むバイオディーゼルの製造方法であって、このイオン性液体が、溶媒及び触媒の両方である前記方法。
【請求項2】
前記イオン性液体が、酸性又は塩基性である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記イオン性液体が、塩基性陽イオン及び中性陰イオン、又は中性陽イオン及び塩基性陰イオン、又は塩基性陽イオン及び塩基性陰イオンの両方を含む請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記イオン性液体が、酸性陽イオン及び中性陰イオン、又は中性陽イオン及び酸性陰イオン、又は酸性陽イオン及び酸性陰イオンの両方を含む請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
前記塩基性陽イオンが、下記式を有し:
[Cat+-Z-Bas]
ここで、Cat+は、アンモニウム、ホスホニウム、ピラゾリウム、DBU又はDBNを含むか又はこれらからなる陽イオン種であり;
Zは、Cat+とBasとを連結する共有結合であるか又は1、2もしくは3個の脂肪族連結基であり、各々1〜10個の炭素原子を含み、1、2もしくは3個の酸素原子を含んでいてもよく;並びに
Basは、塩基性部分である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記Basが、少なくとも1個の窒素、リン、イオウ、酸素又はホウ素原子を含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記Basが、少なくとも1個の第1級、第2級又は第3級アミノ基を含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記Basが、-N(R1)(R2)、及び-P(R1)(R2)から選択され;並びに、ここで、R1及びR2は、同一でも異なっていても良く、各々、水素、直鎖又は分岐アルキル、シクロアルキル、アリール及び置換されたアリールから選択される請求項5又は6記載の方法。
【請求項9】
前記R1及びR2が各々、水素、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル及びフェニルから選択される請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記Basが、-N(CH3)2及び-N(CH(CH3)2)2から選択される請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
前記Zが、直鎖又は分岐C1-C18アルカンジイル、置換されたアルカンジイル、ジアルカニルエーテル及びジアルカニルケトンから選択される請求項5〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記Zが、-(CH2-CH2)-、-(CH2-CH2-CH2)-、-(CH2-CH2-CH2-CH2)-、-(CH2-CH2-CH2-CH2-CH2)-、-(CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2)-、-(CH2-CH2-O-CH2-CH2)-及び-(CH2-CH2-O-CH2-CH2-CH2)-から選択される請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記Cat+-Z-Basが、以下から選択され:
[N(Z-Bas)(Rb)(Rc)(Rd)]+ 及び [P(Z-Bas)(Rb)(Rc)(Rd)]+
ここで、Bas及びZは、先に定義されたものであり;並びに
Rb、Rc及びRdは、同一でも異なっていても良く、各々独立して、水素、C1-C40の直鎖又は分枝したアルキル基、C3-C8シクロアルキル基、又はC6-C10アリール基から選択され、ここで該アルキル、シクロアルキルもしくはアリール基は、無置換であるか、又は、C1-C6アルコキシ、C6-C10アリール、CN、OH、NO2、C7-C30アラルキル及びC7-C30アルカリルから選択された1〜3個の基により置換されてもよい請求項5記載の方法。
【請求項14】
前記Cat+-Z-Basが:
【化1】

から選択され、ここでZ、Bas及びRbは先に定義されたものである、請求項5記載の方法。
【請求項15】
前記Cat+-Z-Basが:
【化2】

から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
Cat+が、1,3,5-トリアルキルピラゾリウム、1,2-ジアルキルピラゾリウム及び1,2,3,5-テトラアルキルピラゾリウムを含むか又はこれらからなる請求項5記載の方法。
【請求項17】
前記Cat+-Z-Basが:
【化3】

から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記Cat+-Z-Basが:
【化4】

から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項19】
前記Cat+-Z-Basが:
【化5】

であり、ここでBas、Z及びRbは先に定義されたものである、請求項5記載の方法。
【請求項20】
前記塩基性陰イオンが、式[Xb]-を有し、並びに、[F]-、[OH]-、[OR] -、[R-CO2]-、[PO4]3-及び[SO4]2-から選択されてよく、ここでRは、C1-C6アルキルである、請求項3記載の方法。
【請求項21】
前記[Xb]-が、[OH]-である請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記酸性陽イオンが、式:
[Cat+-Z-Acid]
であり、
ここで、Cat+は、陽イオン種であり;
Zは、1〜10個の炭素原子を含み、1、2又は3個の酸素原子を含んでいてもよい、Cat+及びAcidを結合する共有結合であり;並びに
Acidは、酸部分である請求項4記載の方法。
【請求項23】
前記酸が、-SO3H、-CO2H、-SO3-Ph-R、-SO3R、RPO(OH)2及びR2PO(OH)から選択され、ここでRは、C1-C6アルキル又はC1-C6アリールである請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記[Cat+]が、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリニウム、アザチオゾリウム、オキソチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレノゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、イソトリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、ジベンゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ジベンゾチオフェニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンノリニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キナザリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、サジニウム、オキサジニウム、アザアニュレニウム及びピロリジニウムから選択された複素環構造を含むか又はこれらからなる請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記[Cat+]が、ピラゾリウム、イソチアゾリニウム、テトラゾリウム、ピペリジニウム、モルホリニウム及びピロリジニウムから選択された複素環構造を含むか又はこれらからなる請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記Cat+-Z-Acidが:
【化6】

【化7】

から選択され、
ここで、Acid及びZは、先に定義されたものであり;並びに
Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRhは、同一でも異なっていても良く、各々独立して水素、C1-C40の直鎖又は分枝したアルキル基、C3-C8シクロアルキル基、又はC6-C10アリール基から選択され、ここで該アルキル、シクロアルキルもしくはアリール基は、無置換であるか、又は、C1-C6アルコキシ、C6-C10アリール、CN、OH、NO2、C7-C30アラルキル及びC7-C30アルカリルから選択された1〜3個の基により置換されてもよいか、又はRb、Rc、Rd、Re及びRfのいずれかふたつは、隣接炭素原子に結合し、メチレン鎖-(CH2)q-を形成してもよく、ここでqは、8〜20である請求項25記載の方法。
【請求項27】
Cat+-Z-Acidは:
【化8】

である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記酸性陰イオンが、式[Xa]-を有し、並びに[HSO4]-、[H2PO4]-、[HPO4]2-、[HCl2]-及び[HX2]-から選択され、ここでX=F、Cl、Br又はIである請求項4記載の方法。
【請求項29】
前記[Xa]-が、[HF2]-、[HSO4]-及び[H2PO4]-から選択される請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記中性陽イオンが、アンモニウム、ホスホニウム、ピラゾリウム、DBU又はDBNを含む又はそれらからなる請求項3記載の方法。
【請求項31】
前記中性陽イオンが:
[N(Ra)(Rb)(Rc)(Rd)]+ 及び[P(Ra)(Rb)(Rc)(Rd)]+
から選択され、
ここで、Ra、Rb、Rc及びRdは、同一でも異なっていても良く、各々独立して水素、C1-C40の直鎖又は分枝したアルキル基、C3-C8シクロアルキル基、又はC6-C10アリール基から選択され、ここで該アルキル、シクロアルキルもしくはアリール基は、無置換であるか、又は、C1-C6アルコキシ、C6-C10アリール、CN、OH、NO2、C7-C30アラルキル及びC7-C30アルカリルから選択された1〜3個の基により置換されてもよい請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記中性陽イオンが:
【化9】

から選択され、ここでRaは、先に定義されたものである請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記中性陽イオンが:
【化10】

から選択される請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記中性陽イオンが、1,3,5-トリアルキルピラゾリウム、1,2-ジアルキルピラゾリウム、又は1,2,3,5-テトラアルキルピラゾリウムを含むか又はこれらからなる請求項31記載の方法。
【請求項35】
前記中性陽イオンが:
【化11】

から選択される請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記中性陽イオンが:
【化12】

から選択される請求項31記載の方法。
【請求項37】
前記中性陽イオンが、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリニウム、アザチオゾリウム、オキソチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレノゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、イソトリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、ジベンゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ジベンゾチオフェニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンノリニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キナザリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、サジニウム、オキサジニウム、アザアニュレニウム及びピロリジニウムから選択された複素環構造を含むか又はそれらからなる、請求項4記載の方法。
【請求項38】
前記中性陽イオンが、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、ピリミジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム及びピロリジニウムから選択された複素環構造を含むか又はそれらからなる請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記中性陽イオンが:
【化13】

【化14】

から選択され、
ここで、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRhは、同一でも異なっていても良く、各々独立して水素、C1-C40の直鎖又は分枝したアルキル基、C3-C8シクロアルキル基、又はC6-C10アリール基から選択され、ここで該アルキル、シクロアルキルもしくはアリール基は、無置換であるか、又は、C1-C6アルコキシ、C6-C10アリール、CN、OH、NO2、C7-C30アラルキル及びC7-C30アルカリルから選択された1〜3個の基により置換されてもよいか、又はRb、Rc、Rd、Re及びRfのいずれかふたつは、隣接炭素原子に結合し、メチレン鎖-(CH2)q-を形成し、ここでqは、8〜20である請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記中性陰イオンが、スルホネート、ホスフィネート、トリフラミド(アミド)、トリフラート、ジシアナミド、オキシド(フェノキシド)又はハロゲン化物の陰イオン種である請求項3又は4記載の方法。
【請求項41】
前記中性陰イオンが、[NTf2]-、[OTf]-、[R-SO3]-、[R2PO2]-、[Cl]-、[Br]-及び[I]-から選択され;ここでRは、C1-C6アルキル、又はC1-C6アリールである請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記中性陰イオンが、[Me-SO3]-、[Ph-SO3]-及び[Me-Ph-SO3]-から選択される請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記植物脂肪酸が、ナタネ油又はPriolineに由来する請求項1〜42のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
前述のバイオディーゼル製品及びイオン性液体が、非混和性である請求項1〜43のいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
前述のバイオディーゼル製品が、相分離により反応体から得られる請求項1〜44のいずれか1項記載の方法。
【請求項46】
前記イオン性液体が、再循環される請求項1〜45のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
石油化合物との配合における請求項1〜46のいずれか1項記載の方法により得られたバイオディーゼルの使用。
【請求項48】
前記石油化合物が、ディーゼルである請求項47記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−533232(P2008−533232A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500252(P2008−500252)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000682
【国際公開番号】WO2006/095134
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(507134356)ザ クィーンズ ユニヴァーシティー オブ ベルファスト (4)
【Fターム(参考)】