説明

バイオマスの加工方法

バイオマス供給材料の分子構造を変えるための方法が提供される。この方法はスクリュー押出しプロセスを含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、バイオマスの加工、およびそれから作製された産物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
セルロース材料およびリグノセルロース材料、例えば、繊維の形をしたセルロース材料およびリグノセルロース材料は、多くの分野で多量に生産、加工、および使用される。多くの場合、このような材料は一度用いられると、廃棄物として捨てられるか、または廃棄材料、例えば、下水、バガス、おがくず、およびストーバーにすぎないと考えられている。
【0003】
様々なセルロース材料およびリグノセルロース材料、これらの使用ならびに用途が、米国特許第7,074,918号、同第6,448,307号、同第6,258,876号、同第6,207,729号、同第5,973,035号、および同第5,952,105号;ならびに2006年3月23日に出願された「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」PCT/US2006/010648および「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」米国特許公開公報第2007/0045456号を含む、様々な特許出願に記載されている。
【発明の概要】
【0004】
概要
概して、本発明は、炭水化物含有材料(例えば、バイオマス材料またはバイオマス由来材料)、このような材料を作製する方法および(例えば、このような材料の構造を変えるように)このような材料を加工する方法、ならびにこのような材料から作られた産物に関する。例えば、本明細書に記載の方法の多くは、天然の材料と比較して、抵抗性(recalcitrance)レベルが低く、分子量および/または結晶化度が小さいセルロース材料および/またはリグノセルロース材料を提供することができる。方法の多くは、例えば、酸、塩基、もしくは酵素と容易に反応する、および/あるいは、有用な産物、例えば、水素、アルコール(例えば、エタノールまたはブタノール)、有機酸(例えば、酢酸)、炭化水素、副産物(例えば、タンパク質)、またはこれらのいずれかの混合物を産生するために、様々な微生物が容易に利用することができる材料を提供する。
【0005】
一つの局面において、本発明は、バイオマスの個々の断片の一つまたは複数の寸法を縮小する工程;バイオマスの分子構造を変える処理方法を用いて、バイオマス、例えば、サイズが小さくなったバイオマスを処理する工程;および、任意で、バイオマスを一次プロセスに供して、産物を形成する工程を含む方法を特徴とする。サイズを縮小する工程および処理する工程の少なくとも一つは、バイオマス供給材料をスクリュー押出しプロセスによって処理する工程を含む。処理方法は、例えば、放射線照射、超音波処理、熱分解、および酸化を含んでもよく、または、例えば、放射線照射、超音波処理、熱分解、および酸化をさらに含んでもよい。スクリュー押出しプロセスは、例えば、供給材料の寸法を小さくして供給材料をパルプ化するために用いられてもよく、スクリュー押出機は、例えば、供給材料が運ばれている時に長さに沿って、供給材料が化学反応を受ける反応容器として用いられてもよい。スクリュー押出し工程は、バイオマスと、バイオマスの分離された部分および/または1種類もしくは複数の種類の他の材料を同時押出しする工程を含んでもよく、他の材料は有機材料、無機材料、または2つの混合物でもよい。1種類または複数の種類の他の材料は、例えば、固体または液体でもよく、場合によっては、気体材料を含んでもよい。
【0006】
一次プロセスは、例えば、発酵でもよい。一次プロセスは、好ましくは、スクリュー押出しプロセス後に、および任意の必要な解毒工程後に、例えば、産生されたフラン化合物を除去するために解毒工程後に行われる。例えば、押出し後に、体積が、例えば、50,000L、100,000L、500,000L、またはそれ以上の発酵容器に、材料を添加することができる。
【0007】
ある実施では、処理方法は、組み合わせて用いられる放射線照射および超音波処理を含んでもよい。放射線は、電離放射線、例えば、電子線またはγ線の形をした電離放射線でもよい。いくつかの態様において、放射線照射は、2種類またはそれ以上の放射線源、例えば、γ線またはX線(例えば、制動放射(bremssthrahlung)放射線)および電子線、例えば、それぞれの電子が1MeV、2MeV、3MeV、5MeV、さらには10MeVまで加速された加速電子線を適用する工程を含む。いくつかの態様では、バイオマス供給材料が、空気もしくは酸素に富む空気または他のいくつかの酸化ガス、例えば、オゾンに曝露されながら、バイオマス供給材料に対して、処理方法の少なくとも一つ、例えば、放射線照射が行われる。特定の態様において、電子線照射は約10MRadの総線量で適用され、超音波処理は、5MJ/m3を超える総エネルギーで適用される。放射線は、例えば、約100nm〜約280nmの波長を有してもよい。放射線は、例えば、約10Mrad〜約150Mradの総線量で、例えば、約0.5〜約10Mrad/day、または1Mrad/s〜約10Mrad/sの線量率で適用されてもよい。超音波処理は、約15kHz〜約25kHz、例えば、約18kHz〜22kHzの周波数で行われてもよい。
【0008】
放射線照射は超音波処理の前に行われてもよく、超音波処理は放射線照射の前に行われてもよく、放射線照射および超音波処理は同時にまたはほぼ同時に行われてもよい。場合によっては、放射線照射は、スクリュー押出しプロセス中に行われてもよい。
【0009】
バイオマス供給材料の分子構造の変化は、抵抗性レベル、平均分子量、平均結晶化度、表面積、重合度、多孔度、分枝度、グラフトの程度、バイオマスのドメインサイズ、およびバイオマスの分子構成のいずれか一つまたは複数の変化を含んでもよい。いくつかの態様において、バイオマス供給材料の分子構造の変化は、バイオマスの平均分子量および平均結晶化度のいずれか一つもしくは両方の低下、またはバイオマスの表面積および多孔度のいずれか一つもしくは両方の増加を含む。
【0010】
別の局面において、本発明は、バイオマス供給材料を、放射線照射、超音波処理、熱分解、および/または酸化によって処理する工程を含むプロセスによって産生される炭水化物を含む材料を準備する工程;供給材料をスクリュー押出しプロセスに供する工程;ならびに材料と、材料の少なくとも一部、例えば、少なくとも約1重量%を、可燃性燃料などの産物に変換する能力を有する微生物を接触させる工程を含む、可燃性燃料などの産物を作る方法を特徴とする。
【0011】
微生物は、例えば、細菌または酵母でもよい。産生される燃料の例には、水素、アルコール、および炭化水素の一つまたは複数が含まれる。例えば、アルコールは、エタノール、n-プロパノール、イソプロアノール(isoproanol)、n-ブタノール、またはこれらの混合物でもよい。変換は、材料を、可燃性燃料などの産物に発酵させる工程を含んでもよい。スクリュー押出しプロセス中に、バイオマスと、化学物質、例えば、酸化剤、酸、または塩基とを接触させることができる。
【0012】
いくつかの態様において、前記方法は、バイオマスを酸または塩基で加水分解する工程を含まない。例えば、いくつかの態様において、バイオマスの少なくとも約70重量%は加水分解されておらず、例えば、バイオマスの少なくとも95重量%は加水分解されていない。特定の態様において、バイオマスは実質的に加水分解されていない。
【0013】
いくつかの態様において、スクリュー押出しプロセスがバイオマスに対して行われ、ここで、バイオマスの約25重量%未満が水などの液体で湿潤されている。具体的には、いくつかの態様では、バイオマスは液体で実質的に湿潤されていない。バイオマスは、25℃および50パーセント相対湿度で測定された時に、例えば、約5重量パーセント未満の保留水を有し得る。
【0014】
前記方法の工程の一つまたは複数において、圧力を利用することができる。例えば、約2.5気圧を超える圧力の下で、例えば、5気圧または10気圧を超える圧力の下で、処理方法の少なくとも一つ、例えば、放射線照射を行うことができる。ある実施では、約20気圧を超える圧力の下で、例えば、約25〜約200気圧、または約50〜約150気圧で、スクリュー押出し工程を行うことができる。
【0015】
さらに、前記プロセスは、処理工程の前、間、または後に、バイオマスを酸化、熱分解、または水蒸気爆砕する工程を含んでもよい。
【0016】
特定の態様において、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料のサイズが凍結粉砕によって縮小される。例えば、それぞれの材料が、25℃より低い温度、例えば、0℃もしくは0℃より低い温度、例えば、ドライアイスの正常大気昇華温度もしくはドライアイスの正常大気昇華温度より低い温度、または液体窒素の正常大気沸点もしくは液体窒素の正常大気沸点より低い温度まで冷却されるように、材料をフリーザーミルに入れて粉砕することができる。フリーザーミルにおけるバイオマスの摩砕は、全体が参照として本明細書に組み入れられる、発明の名称が「Cooling and Processing Materials」である米国特許仮出願第61/081,709号に記載されている。
【0017】
バイオマス供給材料の例には、紙、紙製品、紙廃棄物、木材、パーティクルボード、おがくず、農業廃棄物、下水、サイレージ、草、もみ殻、バガス、綿、ジュート、アサ、アマ、タケ、サイザル、アバカ、ワラ、コーンコブ、コーンストーバー、スイッチグラス、アルファルファ、乾草、もみ殻、ヤシ毛、綿、合成セルロース、海藻、藻類、またはこれらの混合物が含まれる。バイオマスは天然材料または合成材料でもよく、天然材料または合成材料を含んでもよい。
【0018】
いくつかの態様において、バイオマスは、第一の数平均分子量を有する第一のセルロースを含み、炭水化物材料は、第一の数平均分子量より小さい第二の数平均分子量を有する第二のセルロースを含む。例えば、第二の数平均分子量は、第一の数平均分子量より約1倍超小さい。いくつかの態様において、第一のセルロースは第一の結晶化度を有し、第二のセルロースの第二の結晶化度は第一の結晶化度より小さい。例えば、第二の結晶化度は、第一の結晶化度より約10パーセント超小さくてもよい。
【0019】
いくつかの態様において、第一のセルロースは第一の酸化レベルを有してもよく、第二のセルロースの第二の酸化レベルは、第一の酸化レベルより大きい。
【0020】
バイオマス供給材料は、バイオマス繊維源を剪断して繊維材料を得ることによって調製することができる。例えば、剪断は、回転ナイフカッターを用いて行うことができる。繊維材料の繊維は、例えば、5/1を超える平均の長さ対直径比を有してもよい。繊維材料は、例えば、0.25m2/gを超えるBET表面積を有してもよい。
【0021】
いくつかの態様において、炭水化物は、一つまたは複数のβ-1,4結合を含み、約3,000〜50,000の数平均分子量を有してもよい。
【0022】
ある実施では、処理されたバイオマス材料は、緩衝液、例えば、炭酸水素ナトリウムもしくは塩化アンモニウム、電解質、例えば、塩化カリウムもしくは塩化ナトリウム、増殖因子、例えば、ビオチンおよび/もしくは塩基対、例えば、ウラシル、界面活性剤、無機質、またはキレート剤をさらに含んでもよい。
【0023】
本明細書において開示される方法を用いて産生され得る産物のさらなる例には、単官能および多官能C1-C6アルキルアルコール、単官能および多官能カルボン酸、C1-C6炭化水素、ならびにその組み合わせが含まれる。適切なアルコールの具体例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、およびその組み合わせが含まれる。適切なカルボン酸の具体例には、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、オレイン酸、リノール酸、グリコール酸、乳酸、γ-ヒドロキシ酪酸、およびその組み合わせが含まれる。適切な炭化水素の例には、メタン、エタン、プロパン、ペンタン、n-ヘキサン、およびその組み合わせが含まれる。これらの産物の多くは燃料として使用することができる。
【0024】
本明細書で使用する「繊維材料」という用語は、緩い、ばらばらの、および分離可能な非常に多くの繊維を含む材料である。例えば、繊維材料は、例えば、回転ナイフカッターで剪断することによって、漂白したクラフト紙繊維源から調製することができる。
【0025】
本明細書で使用する「スクリーン」という用語は、サイズに応じて材料をふるい分けることができる部材を意味する。スクリーンの例には、穴のあいた板、シリンダーなど、またはワイヤメッシュもしくは生地が含まれる。
【0026】
本明細書で使用する「熱分解」という用語は、熱エネルギーを加えることによって材料内の結合を破壊することを意味する。熱分解は、対象材料を減圧下に置きながら、あるいは気体材料、例えば、空気もしくは酸素などの酸化ガス、または水素などの還元ガスの中に入れながら行うことができる。
【0027】
酸素含有量は、1300℃またはそれ以上で操作されている炉中で試料を熱分解することによる元素分析によって測定される。
【0028】
「バイオマス」という用語は、任意の非化石化物質、すなわち、再生可能な有機物質をいう。種々のタイプのバイオマスは、植物バイオマス(以下に定義)、動物バイオマス(任意の動物副産物、動物廃棄物など)、ならびに都市廃棄物バイオマス(金属およびガラスなどの再生可能物が除去された、住宅ゴミおよび軽い商業ゴミ)を含む。
【0029】
「植物バイオマス」および「リグノセルロースバイオマス」という用語は、持続可能にエネルギーを利用することができる実質的に全ての植物由来有機物(木質または非木質)をいう。植物バイオマスには、農業作物廃棄物および残渣、例えば、コーンストーバー、コムギワラ、稲ワラ、サトウキビバガスなどが含まれ得るが、これに限定されない。さらに、植物バイオマスには、樹木、木質エネルギー作物、木材廃棄物および残渣、例えば、軟木林間伐材、樹皮廃棄物、おがくず、製紙産業およびパルプ産業の廃棄物ストリーム、木材繊維などが含まれるが、これに限定されない。さらに、スイッチグラスなどの飼料用作物が、別の植物バイオマス源として大規模に生産される可能性がある。都市部における最良の潜在的な植物バイオマス供給材料は、庭の廃棄物(例えば、刈り取った草、葉、刈り取った木、およびやぶ)ならびに植物加工廃棄物を含む。「リグノセルロース供給材料」は、非木質植物バイオマス、C4草、例えば、スイッチグラス、コードグラス(cord grass)、ドクムギ、ススキ、クサヨシ、またはその組み合わせなどがあるが、これに限定されない草などがあるが、これに限定されない栽培作物、あるいは糖加工残渣、例えば、バガスまたはビートパルプ、農業残渣、例えば、ダイズストーバー、コーンストーバー、稲ワラ、もみ殻、オオムギワラ、コーンコブ、コムギワラ、キャノーラワラ、稲ワラ、オートムギワラ、オートムギ殻、トウモロコシ繊維、リサイクルされた木質パルプ繊維、おがくず、硬材、例えば、ポプラ木材およびおがくず、軟木、またはその組み合わせなどがあるが、これに限定されない、任意のタイプの植物バイオマスである。さらに、リグノセルロース供給材料は、新聞印刷用紙、ボール紙、おがくずなどがあるが、これに限定されないセルロース廃棄物材料を含んでもよい。
【0030】
リグノセルロース供給材料は一種類の繊維を含んでもよく、あるいは代わりに、リグノセルロース供給材料は、異なるリグノセルロース供給材料に由来する繊維の混合物を含んでもよい。さらに、リグノセルロース供給材料は、新鮮なリグノセルロース供給材料、部分的に乾燥されたリグノセルロース供給材料、完全に乾燥されたリグノセルロース供給材料、またはその組み合わせを含んでもよい。
【0031】
本開示の目的では、炭水化物は、一つもしくは複数の糖単位から完全になる材料である、または一つもしくは複数の糖単位を含む材料である。炭水化物は、ポリマー(例えば、10マー、100マー、1,000マー、10,000マー、もしくは100,000マーと同等もしくはそれを超える)、オリゴマー(例えば、4マー、5マー、6マー、7マー、8マー、9マー、もしくは10マーと同等もしくはそれを超える)、三量体、二量体、または単量体であもよい。炭水化物が複数の反復単位から形成される場合、各反復単位は同一でもよく、異なってもよい。
【0032】
ポリマー炭水化物の例には、セルロース、キシラン、ペクチン、およびデンプンが含まれるのに対して、セロビオースおよびラクトースは二量体炭水化物の例である。モノマー炭水化物の例には、グルコースおよびキシロースが含まれる。
【0033】
炭水化物は超分子構造の一部でもよく、例えば、共有結合して超分子構造になってもよい。このような材料の例には、リグノセルロース材料、例えば、木材に見られるリグノセルロース材料が含まれる。
【0034】
可燃性燃料は、酸素の存在下で燃焼することができる材料である。可燃性燃料の例には、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、水素、およびこれらのいずれか2つまたはそれ以上の混合物が含まれる。
【0035】
本明細書で使用する膨張剤は、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料に、溶液、例えば、水溶液として適用された時に、識別可能な膨張、例えば、このような材料の非膨張状態と比べて2.5パーセントの体積増加を引き起こす材料である。例には、アルカリ物質、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、および水酸化アンモニウム、酸性化剤、例えば、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、およびリン酸)、塩、例えば、塩化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、硫酸ベンジルトリメチルアンモニウム、および塩基性有機アミン、例えば、エチレンジアミンが含まれる。
【0036】
本明細書で使用する「剪断された材料」は、ばらばらの繊維を含み、かつ約0.6g/cm3未満の非圧縮嵩密度を有する材料であり、ここで、ばらばらの繊維の少なくとも約50%の長さ/直径(L/D)比は少なくとも約5である。従って、剪断された材料は、切断された、切り刻まれた、または摩砕された材料とは異なる。
【0037】
本明細書で使用する、バイオマス供給材料の分子構造の変化とは、化学結合配置または構造のコンホメーションの変化を意味する。例えば、分子構造の変化は、材料の超分子構造の変化、材料の酸化の変化、平均分子量の変化、平均結晶化度の変化、表面積の変化、重合度の変化、多孔度の変化、分枝度の変化、他の材料へのグラフト、結晶ドメインサイズの変化、またはドメインの全サイズの変化を含んでもよい。
【0038】
特に定義のない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様のまたは等価な方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下で説明する。本明細書で述べた全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全てが参照として組み入れられる。コンフリクトの場合、本明細書(定義を含む)が、制御する。さらに、材料、方法、および実施例は例示にしかすぎず、限定することが意図されない。
【0039】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】バイオマスから産物および副産物への変換を示したブロック図である。
【図2】繊維源から第一の繊維材料および第二の繊維材料への変換を示したブロック図である。
【図3】回転ナイフカッターの断面図である。
【図4】繊維源から第一の繊維材料、第二の繊維材料、および第三の繊維材料への変換を示したブロック図である。
【図5】材料の高密度化を示したブロック図である。
【図6】ペレットミルの透視図である。
【図7A】ペレット形態の高密度化繊維材料である。
【図7B】中空の中心がペレットの中心と並んでいる中空ペレットの横断面である。
【図7C】中空の中心がペレットの中心と並んでいない中空ペレットの横断面である。
【図7D】トリローバルペレットの横断面である。
【図8】供給材料を加工するための処理シーケンスを示すブロック図である。
【図9】γ線照射器の破断透視図である。
【図10】図9の領域Rの拡大透視図である。
【図11】供給材料の電子線照射前処理シーケンスを示すブロック図である。
【図12】繊維源をエタノールなどの産物に変換するプロセスの概要を示すブロック図である。
【図13】スクリュー押出機の透視図である。
【図14】図13のスクリュー押出機の断面模式図である。
【図15】図13のスクリュー押出機の加熱区画の模式図である。
【図16】図13のスクリュー押出機において使用することができる排出弁(discharge valve)の断面図である。
【図17】図13のスクリュー押出機において使用することができる排出弁の断面図である。
【図18】図13のスクリュー押出機において使用することができる運動用シール(dynamic seal)の模式図である。
【図19】図13のスクリュー押出機において使用することができる代替排出弁の断面図である。
【図20】図13のスクリュー押出機において使用することができる代替排出弁の断面図である。
【図21】図13のスクリュー押出機において使用することができる代替運動用シールの模式図である。
【図22】代替スクリュー押出機の上部から見た縦断面である。
【図23】上部の図22のラインII--II上にある部分横断面、および下部の図22のラインIII--III上にある部分横断面を示す。
【図24】別の代替スクリュー押出機の片側から見た縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
バイオマス(例えば、植物バイオマス、動物バイオマス、および都市廃棄物バイオマス)を加工して、燃料などの有用な産物を生産することができる。容易に入手可能であるが、加工しにくいことがあるバイオマス供給材料、例えば、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料を利用することができるシステムおよびプロセスが本明細書で説明される。このような加工のために、供給材料をスクリュー押出し工程に供することによって、供給材料は物理的および/または化学的に調製される。これによって、未加工の供給材料のサイズを縮小することができ、場合によっては、供給材料の高密度化、パルプ化、および/または加水分解(例えば、酸加水分解)において、未加工の供給材料のサイズを縮小することができる。所望であれば、スクリュー押出し工程の前、間、または後に、放射線照射、超音波処理、酸化、熱分解、および水蒸気爆砕の一つまたは複数を用いて、供給材料を処理または加工することができる。様々な処理システムおよび方法が利用される場合、これらの技術の2つ、3つ、さらには4つを組み合わせて使用することができる。
【0042】
場合によっては、微生物によって、可燃性燃料(例えば、エタノール、ブタノール、または水素)などの多くの望ましい産物に変換することができる、炭水化物、例えば、セルロースを含む材料を得るために、一つまたは複数の糖単位を含む供給材料を、本明細書に記載のプロセスのいずれか一つまたは複数によって処理することができる。産生することができる他の産物および副産物には、例えば、ヒト用食品、動物用飼料、薬、および栄養補助食品が含まれる。個々の処理方法の実験規模の実施から大規模なバイオマス加工プラントに及ぶ多くの例が示される。
【0043】
バイオマスのタイプ
一般的に、一つもしくは複数の糖単位から完全になる炭水化物である、または一つもしくは複数の糖単位から完全になる炭水化物を含む、あるいは一つもしくは複数の糖単位を含む、任意のバイオマス材料を、本明細書に記載の任意の方法によって加工することができる。例えば、バイオマス材料は、セルロース材料またはリグノセルロース材料でもよい。
【0044】
例えば、このような材料は、紙、紙製品、木材、木材関連材料、パーティクルボード、草、もみ殻、バガス、綿、ジュート、アサ、アマ、タケ、サイザル、アバカ、ワラ、コーンコブ、もみ殻、ヤシ毛、藻類、海藻、綿、合成セルロース、またはこれらのいずれかの混合物を含んでもよい。
【0045】
繊維源には、紙および紙製品(例えば、ポリコーティングされた紙およびクラフト紙)を含む、セルロース繊維源、ならびに木材および木材関連材料、例えば、パーティクルボードを含む、リグノセルロース繊維源が含まれる。他の適切な繊維源には、天然繊維源、例えば、草、もみ殻、バガス、綿、ジュート、アサ、アマ、タケ、サイザル、アバカ、ワラ、コーンコブ、もみ殻、ヤシ毛;α-セルロース含有量が高い繊維源、例えば、綿;ならびに合成繊維源、例えば、押し出されたヤーン(配向したヤーンまたは配向していないヤーン)が含まれる。天然繊維源または合成繊維源は、バージンスクラップテキスタイル材料、例えば、残留物に由来するものでもよく、使用済み廃棄物、例えば、ぼろ切れでもよい。紙製品が繊維源として用いられる場合、バージン材料、例えば、スクラップバージン材料でもよく、使用済み廃棄物でもよい。バージン原材料とは別に、使用済み廃棄物、産業廃棄物(例えば、くず)、および加工廃棄物(例えば、紙加工からの廃水)も繊維源として用いることができる。また、繊維源は、ヒト廃棄物(例えば、下水)、動物廃棄物、または植物廃棄物から得られてもよく、それに由来してもよい。さらなる繊維源は、米国特許第6,448,307号、同第6,258,876号、同第6,207,729号、同第5,973,035号、および同第5,952,105号に記載されている。
【0046】
いくつかの態様において、炭水化物は、一つまたは複数のβ-1,4結合を有し、約3,000〜50,000の数平均分子量を有する材料であるか、これを含む。このような炭水化物は、β(1→4)-グリコシド結合の縮合によって(β-グルコース1)から得られたセルロース(I)であるか、これを含む。この結合は、デンプンおよび他の炭水化物に存在するα(1→4)-グリコシド結合のものと対照をなす。

【0047】
前記の材料のいずれかのブレンドも使用することができる。
【0048】
バイオマスを処理するための例示的なシステム
図1は、バイオマス、特に、多量のセルロース成分およびリグノセルロース成分を有するバイオマスを有用な産物および副産物に変換するためのシステム100を示す。システム100は、供給調製サブシステム110、前処理サブシステム114、一次プロセスサブシステム118、および後処理サブシステム122を備える。供給調製サブシステム110は、未加工の形をしたバイオマスを受け取り、バイオマスを下流プロセスによる供給材料として使用するために物理的に調製し(例えば、バイオマスのサイズを縮小する、バイオマスをホモジナイズする)、未加工の形をしたバイオマスおよび供給材料の形をしたバイオマスの両方を保管する。多量のセルロース成分およびリグノセルロース成分を有するバイオマス供給材料は、有用な産物への供給材料の加工(例えば、エタノール産生のための供給材料の発酵)を難しくする大きな平均分子量および結晶化度によって、よく例示されるように、高レベルの抵抗性を有することがある。
【0049】
処理サブシステム114は、供給調製サブシステム110から供給材料を受け取り、供給材料を、一次製造プロセスにおいて使用するために、例えば、供給材料の平均分子量および結晶化度を縮小することによって調製する。一次プロセスサブシステム118は、処理サブシステム114から、処理された供給材料を受け取り、有用な産物(例えば、エタノール、他のアルコール、薬、および/または食品)を産生する。場合によっては、一次プロセスサブシステム118のアウトプットは直接有用であるが、他の場合では、後処理サブシステム122によって提供される、さらなる加工を必要とする。後処理サブシステム122は、これを必要とする一次プロセスシステム118からの産物ストリームに対するさらなる加工(例えば、エタノールの蒸留および変性)ならびに他のサブシステムからの廃棄物ストリームの処理を提供する。場合によっては、サブシステム114、118、122の副産物も直接または間接的に二次産物として、および/またはシステム100の全効率の増大において有用な場合がある。例えば、後処理サブシステム122は、他のサブシステムにおけるプロセス水として使用するためにリサイクルされる処理水を産生することができ、ならびに/または蒸気および/もしくは電気を発生するボイラーの燃料として使用可能な可燃性廃棄物を産生することができる。
【0050】
本明細書において議論されるスクリュー押出し工程は、例えば、バイオマス供給材料のサイズを縮小するために、および/またはバイオマス供給材料をホモジナイズするために、供給調製サブシステムの一部として行われてもよい。代わりに、またはさらに、処理および/または一次プロセスサブシステムの一部としてスクリュー押出しが行われてもよい。場合によっては、下記で詳細に議論するように、繊維材料を高密度化するために、スクリュー押出しが用いられてもよい。ある実施では、スクリュー押出機は反応容器として用いられてもよく、ここで、バイオマスは加水分解などの反応に供される。
【0051】
バイオマス変換プラントのための最適サイズは、規模の経済、ならびに供給材料として用いられるバイオマスのタイプおよび入手可能性を含む要因の影響を受ける。プラントサイズが大きくなると、プラントプロセスに関連する規模の経済が高まる傾向がある。しかしながら、プラントサイズが大きくなると、供給材料の単位当たりのコスト(例えば、輸送コスト)が増大する傾向もある。これらの要因を分析した研究から、バイオマス変換プラントの適切なサイズは、少なくとも部分的に、使用される供給材料のタイプに応じて、一日当たり2000〜10,000乾燥トンの供給材料であり得ることが示唆されている。供給材料のタイプはまた、プラント保管条件に影響を及ぼすこともあり、主に、季節によって入手可能性が変化する供給材料(例えば、コーンストーバー)の加工に合わせて設計されているプラントは、入手可能性が比較的一定している供給材料(例えば、廃棄紙)を加工するように設計されているプラントより多くの敷地内または敷地内での供給材料保管を必要とする
【0052】
スクリュー押出し
本明細書において開示されるプロセスは、有利なことに、有用な産物へのバイオマスの加工を強化するために、少なくとも一回のスクリュー押出し工程を用いる。前記で議論されたように、スクリュー押出しプロセスは、バイオマス加工システムの一つまたは複数の点で行うことができる。一般的に、スクリュー押出し工程がプロセスのどの点で行われるかに関係なく、使用される機器および技法は類似している。スクリュー押出し工程の一般的なシステムおよびパラメータを今から議論する。スクリュー押出しが行われる時に応じて、これらの任意のパラメータが変えられる程度まで、バイオマス加工システム100のサブシステムについて説明する以下のセクションにおいて、このことが言及されるだろう。
【0053】
図13〜20に示した、説明された第一のシステムは、下記で議論されるように反応が行われる反応容器として有利に使用することができる。しかしながら、ある実施では、このシステムは、熱もしくは圧力を加えて、または熱もしくは圧力を加えることなく、単にバイオマス供給材料を摩砕する、粉砕する、またはパルプ化するのに用いられてもよい。さらに、化学反応物の例が下記で言及されるが、他の化学反応物または添加剤が用いられてもよく、スクリュー押出機が反応容器として用いられていない実施では何も添加されなくてもよい。
【0054】
シングルバレルスクリュー押出機が下記で議論され、図において示されるが、本明細書で使用する「スクリュー押出し」という用語は、同時押出しを含む。従って、所望であれば、スクリュー押出し工程は、バレルが複数ある同時押出機を用いた同時押出しを含んでもよい。バレルが複数ある同時押出機は、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のバレルを有してもよい。このような同時押出機は周知であり、従って、本明細書において例示されない。同時押出しは様々なやり方で利用することができる。例えば、バイオマスは2つまたはそれ以上の画分に分離することができ、次いで、同時押出機の別々のバレルを通って運ばれる。所望であれば、画分を異なるバレルにおいて異なって処理することができる。例えば、ある画分は、酸化剤による処理によって酸化されてもよく、別の画分は蒸気および圧力に供されてもよいが、酸化されない。代わりに、またはさらに、複数の画分は、同時押出機に導入される前に異なってもよく、例えば、ある画分は別の画分より高い含水量を有してもよい。別の態様において、バイオマスはバレルの一つまたは複数に供給されるのに対して、非バイオマス材料は一つまたは複数の他のバレルに供給される。同時押出機は、複数の層を重ねて付着させて、多層の押出し物を形成するのに用いられてもよい。または、単に、バレルから出た複数の押出し物が一緒に混合されてもよい。一般的に、この場合、同時押出機は、異なる画分または材料を同時押出し中に異なって処理できるようにするために利用される。
【0055】
さらに、所望であれば、2つまたはそれ以上のスクリュー押出機(シングルバレル押出機および/または同時押出機の任意の望ましい組み合わせ)を連続して一緒につなぐことができる。これを行うと、例えば、一連のスクリュー押出し工程を異なる条件下で行うことが可能になる、または1つの長いスクリュー押出機を必要とすることなく、スクリュー押出機バレル内での長期の滞留時間が可能になる。一例では、まず最初に、シングルバレルスクリュー押出機においてバイオマスを加工し、次いで、得られた加工済みバイオマスを2本のストリームに分離し、これらを、1つの同時押出機の2つのバレルに供給する。
【0056】
押出し物または同時押出し物は、複合体、例えば、板またはペレットの形をした複合体でもよい。押出しまたは同時押出しによって作製されたペレットは、他の用途において、例えば、複合板を製造するためのプロセスにおいて使用することができる。押出し物または同時押出し物のための他の用途には、薬、栄養補助食品、および食品が含まれる。
【0057】
図13は、スクリュー押出機20を示す。スクリュー押出機20は、例えば、Werner & Pfleiderer ZDS-K53ツインスクリュー押出機でもよい。図13に示したスクリュー押出機の中には、モーター21によって駆動される2つの同時回転スクリューがあるが、二重反転配置も使用することができる。ハウジング20aは、変換しようとする材料を受け入れる供給入口を備える。バイオマス供給材料、例えば、スラリーの形をした、または乾燥状態もしくは半乾燥状態のバイオマス供給材料を、クラマーフィーダー(crammer feeder)10によって押出機20に供給する。クラマーフィーダー10は、図14に示したように、材料を押出機に運ぶためのスクリュー要素を有する。
【0058】
押出機20は、押出機20の入口側で運動用シール区画24によって結合され、押出機20の出口側で排出弁80によって結合された反応区画25を備える。反応区画の上流は、最初に繊維インプットが入れられ、それによって反応区画に送られる、入口部分またはツインスクリュー22の予熱区画22aである。
【0059】
繊維材料がスラリーの状態で入れられる時に、スラリーが反応区画に運ばれるプロセスの間にスラリーの水の多くは除去され、この目的のために、運動用シールの上流に脱水管23が設けられている。繊維材料が乾燥した形で供給される場合、添加される液体は担体として働くのに十分であり、加水分解の場合は、反応物として働くのに十分であり、従って、運搬中に水はほとんどまたは全く除去されないので、脱水管は必要でない。
【0060】
さらに、器具は、添加剤、例えば、酸触媒、酸化剤、還元剤、または塩基を添加するための投入装置30を備える。投入装置30は、槽31、および添加剤をパイプ33に沿って押出機ハウジングの投入口34に供給する定量ポンプ32を備える。投入口34は、好ましくは、反応区画における反応物の滞留時間の実質的に全てにわたって、添加剤が反応物に作用するように、図示したように反応区画25の頭にある。しかしながら、投入口34の位置は、例えば、反応区画における温度に応じて変えることができる。(高温では、反応は一般的に速くなり、従って、反応区画の出口にさらに近い位置で添加剤を導入することができる)。
【0061】
ある実施では、反応は高温で行うことが有利であり、これを最も有利なやり方で生じさせるために、エネルギーを反応区画に加えて、温度を素速く上昇させるために、蒸気を加えることができる。このために、蒸気供給装置40が設けられている。この装置40は、蒸気パイプ41および蒸気投入口42を備える。蒸気はまた、反応区画において、セルロース縮合の際にセルロースを加水分解するための水の供給物として使用することもできる。
【0062】
繊維材料が乾燥した形で押出機に投入される場合、運動用シール24を通って投入口34に入る前に、予熱区画において水を添加できることも留意すべきである。
【0063】
押出機ハウジングに沿って、圧力指示器50と一緒になって反応区画内の圧力をモニタリングすることができる、圧力指示器用の口51も設けられている。さらに、押出機アセンブリの様々な区画内の温度をモニタリングするために、温度投入口43も設けられている。これらの区画は図15に区画1〜4として示され、使用中の器具の熱配置の一例を示す。
【0064】
さらに、反応区画25の出口端には、反応区画内の圧力が許容限度を超えた時に、圧力除去を行う圧力解放弁60が設けられている。
【0065】
押出機からの反応物の準連続排出または連続排出は、ガスベント71および排水管(flushing drain)72を有する収集容器70に、反応物を排出する排出弁80によって行われる。
【0066】
図17〜18に戻ると、スクリュー押出機において使用することができる排出弁80がさらに詳細に議論されている。この実施では、流体操作ボール弁、例えば、酷使に耐えるサービスのために1.5''内径を有する2インチKamyrボール弁を用いることによって、排出が準連続に引き起こされる。1.5''内径82を有するボール81は、従来通り水力学的に動くことができる軸83の上で回転可能である。ボール81は、反応物を準連続排出するために内径82と共同で働く弁開口26を規定するためのフランジ27を有する押出機の出口にある。
【0067】
図17は、完全に開いた、すなわち、内径82が開口26と完全に一列に並んでいる弁80を示す。図18は、完全に閉じた位置にある、すなわち、内径82が開口26と90度位相がずれている弁80を示す。Kramyrボール弁の場合、ボールは、20秒毎に180度回転し、従って、回転するのに0.25秒かかる。従って、この弁は、時間の約10%、従って、1サイクル毎に約0.025秒間、完全に開いた位置にある。
【0068】
次に図19を見ると、運動用シール24がさらに詳細に議論されている。運動用シールは、例えば、運動用シール区画の領域に左ねじ山24を設け、その上流にあるスクリュー領域22aおよびその下流にあるスクリュー領域22bには右ねじ山を設けることによって形成することができる。左ねじ山24は、反応区画を密封し、インプットを反応区画に連続して運びながら気体が逃げないようにするダイナミックプラグ(dynamic plug)を形成するように働く。
【0069】
運動用シールは弁80と一緒になって、所望であれば、スクリュー要素が供給材料を反応区画内外に運ぶのを可能にしながら、反応区画内で高い圧力および/または温度を維持できるようにする。
【0070】
反応区画インプットは、例えば、25ポンド/時間の乾燥バイオマス供給材料、30ポンド/時間の水、および100ポンド/時間の化学反応物、例えば、酸溶液であり得る。これらのインプットの場合、アウトプットは、例えば、6ポンド/時間のグルコース、9ポンド/時間のセルロース、5ポンド/時間のリグニン、5ポンド/時間のヘミセルロースまたは分解産物、100ポンド/時間の水を含む、20%固体混合物であり得る。反応区画内の組成は供給物によって変化し、産物の組成もまた供給物および反応条件によって変化する。
【0071】
湿式供給のための供給材料は、例えば、5%〜50%スラリーの粘稠度と、限られた粘度を有してもよい。本明細書において開示される任意のバイオマス供給材料を使用することができる。好ましくは、材料の平均粒径は、約0.01〜約250μm、例えば、約0.1〜約100μm、または約0.250〜約50μmである。粒径のずれは、例えば、平均粒径の±6倍、平均粒径の3倍、または平均粒径の1倍でもよい。一般的に、粒子の形状は環状または板状であることが好ましい。
【0072】
供給速度は、供給材料の粘稠度およびスクリュー要素のRPMに応じて変化してもよいが、好ましくは、高処理量プロセスでの使用を容易にするために非常に速い。例えば、50,000,000gal/年のエタノールプラントの場合、処理量は、100gal/トンを生じるバイオマスでは、約57トン/時間(114,000lb/時間)である。従って、供給速度は、少なくとも50,000lb/時間、より好ましくは少なくとも100,000lb/時間であることが好ましい。これらの速い供給速度を実現するために、非常に大きな低湿地(swale)が必要とされる。従って、一般的に、スクリュー押出機は非常に大きく、および/または複数のスクリュー押出機が同時に動作することが必要である。
【0073】
反応温度は、例えば、1000psiで約華氏350度〜約華氏550度でもよく、利用可能な蒸気圧および素速く排出する能力に応じて、これより高くてもよい。代わりのエネルギー移動態様、例えば、過熱した蒸気もしくは水または直接熱が可能である。熱配置は、区画2〜4の全てが交替可能であり、1〜3個のバレル区画で長さが変化してもよい。予熱区画温度は約華氏32度〜約華氏212度でもよく、反応区画温度は約華氏350度〜約華氏550度でもよい。
【0074】
反応圧力は、利用可能な蒸気圧および素速く排出する能力に応じて、例えば、約135psi〜約3000psiまたはそれ以上でもよい。ある実施では、反応圧力は約200〜約500psiでもよい。ある実施では、スクリュー押出機内の圧力は、比較的低くてもよく、例えば、75psi未満でもよい。
【0075】
プロセスの酸濃度は、0〜300ポンド/時間の速度で0.1〜10%酸の注入でもよい。代わりの酸または他の添加剤、例えば、過酸化物、例えば、過酸化水素または過酸化ベンキソイル(benxoyl);塩基、例えば、水酸化ナトリウムもしくは石灰;HCl;HNO3;有機酸;またはSO2ガスを使用してもよい。
【0076】
行われる脱水は、スクリュー速度およびクラマー速度ならびにスクリュー配置によって変化する。これは、例えば、100ポンド/時間の供給では80ポンド/時間から、900ポンド/時間の供給では720ポンド/時間まで変化してもよい。脱水出口にある固体もまた、例えば、0.05%〜5%で変化する。
【0077】
スクリュー配置は全長2250mmを有してもよく、630mm長の30mmピッチ要素であるプレプラグ供給区画が、1回転毎に材料を30mm前方に運ぶ。プラグ区画は、例えば、30mm長で90mm左巻きピッチを備えてもよい。反応区画は、例えば、1590mm長で、45mmピッチステンレス鋼要素を備えてもよい。様々な用途の必要条件に合わせるために、スクリューの区域を変更してもよく、スクリュー全体を変更してもよい。
【0078】
前方運搬予熱区画22aは、30、45、60、または90mmのピッチ要素を有する、長さが2000mmまでの右巻き要素の任意の組み合わせでよい。均質な材料を運動用シール区画25に供給するために、混合要素、微粉砕要素、または混練要素も中に含まれてもよい。ダイナミックプラグを形成する運動用シール区画は15〜360mmでもよく、30、45、60または90mmの左巻きピッチ要素を備える。反応区画は、長さが2000mmまでの右巻きの前方運搬要素を備え、30、45、60または90mmのピッチ右巻き要素を備える。排出弁は、例えば、11/2''内径、180度サイクルにつき、0.25秒で、一サイクル20秒の2''Kamyrボール弁でもよい。
【0079】
スクリュー機械速度、毎分回転数(RPM)は、例えば、約40RPM〜約750RPM、例えば、約50RPM〜約300RPMで変化してもよい。スクリューコンバーターおよびクラマーフィーダーは、最大値の約8%〜約100%、例えば、約8%〜約15%で動作してもよい。トルクもまた、スクリューRPM、クラマー速度、供給物の粘稠度、スクリュー配置、温度プロファイル、酸注入速度、変換速度、および排出速度に基づいて、例えば、最大値の約20%〜約100%、例えば、約50%〜約70%で変化する。
【0080】
グルコース変換は、滞留時間、酸濃度、温度、混合などの前記の全てのパラメータに依存し、これらは全て機械パラメータに全て依存する。グルコース変換は、理論上の変換最大値の5%〜95%に及んでもよい。
【0081】
図19および20は、反応区画25において所定の圧力に応じて反応物を連続排出することができる構成の代替弁80'を示す。弁80'は、中に弁開口26のある押出機ハウジング27のフランジ付末端と共に働く球状弁本体81を備える。球状弁本体81は、好ましくは、2''弁本体である。
【0082】
弁本体81は弁プレート82の中に設置され、図18に示した閉じた位置に弁本体81を偏らせるように、バネ85が弁プレート82に働く。偏りは4つのスクリュー83を用いて行われ、スクリュー83はフランジ部分27の一端に固定され、もう一方の端に、ねじが切ってある部分83aを有する。ねじが切ってある部分83aの上にはプレート84がはめられ、プレート84は、ねじが切ってある部分83aとネジで係合されたナット86によって右に動かないようにされている。弁アセンブリはプレート87によって密封され、プレート87は、開口26からの排出材料の放出が出口90からしか起こらないように、スクリュー88によってハウジング89に留められている。
【0083】
使用中に、反応区画25の中の圧力が、バネ85によって弁本体81にかかっている力を超えた時に、図20に示したように弁本体81は右に動き、排出物は開口26および出口90を通る。スクリュー押出機が用いられている時には、プロセスの初期化後に弁本体81が開いた位置に留まり、排出物が弁80'を連続して通るように、反応区画内の圧力は連続して維持される。
【0084】
連続して開いた位置に弁80'が維持される圧力(図20)は、ねじが切ってある部分83aと係合する上述のナット86を用いることによってプリセットすることができる。選択された圧力を上げるためには、ナット86を時計方向に回して、プレート84を左に動かし、それによって、バネ85がプレート82に加える力を高め、それによって、弁本体81に加える力を高める。従って、前述のプロセスを逆にすることによって圧力を下げることができる。
【0085】
図21に示したように、運動用シール区画24は、ある実施では、それぞれのスクリューの上に、放射状の凹みのある、ねじ切りをしていない、ねじ区域240を用いることによって形成されてもよい。ねじ区域240の上流には任意の左ねじ山区域24a、ねじ区域240の下流には左ねじ山区域24bがある。任意で、左ねじ山部分24a、24bを有する、ねじ切りをしていない、放射状の凹みのある部分240は、上流に右ねじ山部分22aおよび下流に右ねじ山部分22bと一緒になると、反応区画を密封し、供給された材料を反応区画に運びながら、インプットを通って気体が逃げないようにするダイナミックプラグを生じるように働く。
【0086】
運動用シールは弁手段80と一緒になって、高圧を維持し、所望であれば、反応区画内の高温を維持しながら、スクリュー要素が、供給された材料を反応区画内外へ運ぶのを可能にし、反応区画内で反応プロセスが起こるのを可能にする。
【0087】
ある実施では、バイオマスを摩砕するために、およびバイオマスの抵抗性を小さくするために、スクリュー押出機が用いられる。例えば、スクリュー押出機を用いて、バイオマス供給材料を脱リグニンすることができる。このようなプロセスを行うための適切なスクリュー押出機の例を図22〜24に示した。
【0088】
図22および23は、一対の平行軸601、602を備えるスクリュー押出機を示し、それぞれの平行軸には、それぞれ、らせん状表面603、604が設けられ、表面603、604が互いに貫通し合うように軸は並べられている。それぞれの軸は、ベアリング611、612、621、622のそれぞれの末端に取り付けられ、ベアリングは、軸601、602を取り囲むケーシング605の末端に取り付けられる。
【0089】
2つの軸は、2つの減速歯車661、662を介してモーター606によって同時に回転し、それぞれの減速歯車は、対応するベアリング611、622の先にある、それぞれの軸の延長部分610、620の上に取り付けられたピニオンを備える。2つの減速歯車は頭と尾を向かい合わせにして並べられ、これはケーシング605のそれぞれの末端にある。減速歯車は、2つの軸がモーター606によって同じ速度で同じ方向に回転するように並べられる。ケーシング605の中には2つの開口部651、652が設けられ、これはケーシングのそれぞれの末端にあり、開口部651はらせん状表面の上流端に配置され、開口部652はらせん状表面の下流端に配置される。軸は、開口部651を通って機械に供給された材料が開口部652に向かって前進する方向に回転する。
【0090】
らせん状表面603、604のピッチは、ピッチが異なる連続区画を規定するように、軸601および602の長さに沿って変化する。図22に示したような最も簡単な態様では、らせん状表面は、入口開口部651を通って導入された材料が下流に進む、ピッチの広い区画A、および表面のピッチが逆になっている「ブレーキ」区画Bを有する。「ブレーキ」区画は、実質的に軸の終わりの3分の1にわたって出口開口部652まで延びている。開口部651を通って導入された材料は、軸に沿って開口部652に向かって動かされ、区画Bに入るとブレーキがかけられる。区画Bでは、らせん状表面が材料を反対方向に押す傾向がある。
【0091】
このブレーキ区画では、らせん状表面に開口または窓630および640が設けられており、これらは軸から表面の外側端部まで延びてもよい。これらの窓のサイズおよび間隔は自由に選択することができ、窓があると、特に、摩砕が進行するにつれて材料を下流に前進させることができ、材料を下流に選択的に動かすことができる場合もある。
【0092】
パルプは、実際には大気圧で開口部652から出る。従って、機械に先細ノズルを取り付ける必要はない。このことは、図22に示したように、それぞれの軸601、602のそれぞれの末端に、ベアリング611、612、621、622を取り付けることができ、減速歯車をケーシングの両端にはめ込むことができることを意味する。
【0093】
加熱および冷却を制御することによって区画の温度を正確に制御するために、ケーシングに沿って筐体607が配置されてもよい。好ましくは、誘導加熱によって特に正確に温度を制御できるので、誘導加熱が用いられる。所望であれば、ケーシングに蒸気を導入することができる。
【0094】
開口部651を通して導入された材料は、軸の回転によって下流に動かされる。また、軸は同じ方向に回転するので、らせん状表面の間の空間が満たされていない時でも材料を下流に動かすことができるポンプ作用が得られる。区画Aでは、材料は、らせん状表面に沿って薄い層の形で広がり、段々と満たされる。材料は均一に向けられる傾向があり、特に、らせん状表面が互いに貫通し合う部分634(図23)では、圧縮力および剪断力の組み合わせに供される。前者は、主に、表面が互いに貫通し合うことによるものであり、後者は、主に、軸が同じ方向に回転することによるものであり、これにより摩砕の下地がつくられる。さらに、らせん状表面が同じ方向に回転すると、均質化に有利な材料の攪拌が起こる。摩擦により温度が上昇するが、制御可能であり、動かされた材料を希釈することなく、ケーシングを冷却することによって必要なレベルに保持することができる。
【0095】
区画Bにある表面のピッチが反対になることで材料の循環にブレーキがかけられるために、区画Aの末端では、ねじ山は段々と満たされる。区画Bの入口では、ねじ山が反対になるので、材料がかなり蓄積し、高圧縮の区画が作り出される。摩砕が完了するは区画Bであり、表面が反対になったことによるブレーキ作用が圧縮力および剪断力の複合作用を強化する。
【0096】
従って、材料は、この区画に長期間保持され、均質化に有利な混合にかけられる。らせん状表面の中に形成された窓630および640があるので、材料は摩砕されるにつれて下流に前進することが可能になり、十分に摩砕されなかった部分は作業領域に長く保持される。
【0097】
優れた機械的特性を有する高濃度のメカニカルパルプが開口部652から抽出される。
【0098】
プラスチック材料用のスクリュー押出機の製造では、モジュール形式の構造がよく用いられ、それぞれのスクリューは、一緒に取り付けられ、中心軸上にねじ切りされた区域からなる。この形式の構造を用いると、必要な最終結果に合わせられたピッチの異なる連続区画を有するらせん状表面を生じることができる。駆動速度は軸に沿って変化してもよく、同様に材料の圧力も変化してよい。表面は、例えば、材料を通し、互いに離れたブレーキ区画として働くために、窓が設けられた反対方向のピッチを有する、いくつかの部分を備えてもよい。窓には連続プラグが形成される。ピッチならびに窓の数およびサイズを変えることによって、プラグをある程度の密度にすることができる。次いで、圧力ポンプまたは他の任意の公知の手段の力を借りて、流体を、ブレーキ区画の中に、または2つのプラグ間に注入することが可能である。流体は、例えば、過熱した水もしくは蒸気、または好ましくは加熱された化学試薬であり得る。この熱い流体を加圧下で注入すると、材料、例えば、木材繊維への浸透がかなり容易になり、摩砕プロセスが加速される。
【0099】
注入圧力、注入される試薬流体の粘度、およびらせん状表面のピッチに応じて、様々な流体が材料と同じ方向に動くために、または材料の流れに逆らって動くために、いくつかの注入点を設けることができる。
【0100】
図24は、スクリュー押出機の別の態様を示す。押出機は、らせん状表面がかなり広いピッチを有し、原材料が蒸気と共に充填される区画Iを備える。この区画では、ケーシングには誘導加熱要素671が設けられている。開口部651を通して材料が導入され、開口部653を通して蒸気が出され、開口部653は、この区画の末端で真空ポンプに接続されてもよい。
【0101】
区画IIでは、開口部654を通して導入された化学試薬の存在下で、第一の加熱調理(cooking)段階を行うことができる。この区画では高圧を生じることができ、必要とされる温度は加熱要素672によって得ることができる。前述のように、らせん状表面間の材料へのポンプ作用によって薄膜に沿ってチップを動かすことができるので、チップへの試薬の接近および正確な反応温度調節がかなり容易になり、表面が同じ方向に回転すると、表面が互いに貫通し合う区画634において層を攪拌することができるので、チップへの試薬の接近および正確な反応温度調節がさらに容易になる。従って、さらに均一かつ優れた、制御された処理を実現することができる。
【0102】
区画IIIでは、ピッチは反対になり、ねじ山には、下流への材料の通過を制御するための窓630が設けられている。区画IIからの原材料の機械的摩砕は、本質的には、この区画IIIにおいて達成される。摩砕は、前記のプロセスに従って行われる。区画IIIに入ると、らせん状表面のピッチが反対になったことによるブレーキの影響を受けて、材料は高度に圧縮される。表面の中に形成された窓があるので、摩砕が進行するにつれて、材料は下流に流れることができる。さらに、区画IIIへの入口で原材料にブレーキがかけられるために、過剰な液体は区画IIに戻り、区画IIにおいて、可能性のあるリサイクルのために、開口部655を通って過剰な液体を出すことができる。
【0103】
ケーシング内にある、いくつかの互いに貫通し合っているスクリューの間に、湿った材料が通過すると、液相および気相が上流に動き、固相が下流に動く。
【0104】
区画IVでは、第二の加熱調理段階が加圧下で行われる。この区画では、パルプの薄膜を生成するために、らせん状表面のピッチは広くなってもよい。必要とされる温度は加熱要素673によって得られる。所望であれば、加圧下で酸素が導入されてもよい。
【0105】
区画Vには、反対方向のねじ山および窓を有する、ピッチの狭いらせん状表面があり、ここで、パルプは再圧縮され、上流に動いた液体は開口部656を通って出される。脱気用の開口部657も同様に上流に設けられてもよい。従って、区画Vでは、加熱調理されていない材料に対して最終の摩砕操作が行われる。
【0106】
また、区画Vの下流に、化学物質添加剤を導入するための新たな化学処理区画680が設けられてもよい。化学物質添加剤は、最終的に、出口オリフィス652を通って出ることができる。
【0107】
パルプが大気圧で出るので、軸スラストはかなり小さくなる。このために、減速歯車を機械の2つの末端に配置することはかなり容易になる。このように、ピニオン直径の選択には制限はなく、駆動装置への負荷を小さくすることができる。
【0108】
らせん状表面を容易にかつ素速く変更することができ、その結果、単に、プロファイルの異なる利用可能ならせん状表面を備えることによって、同じプラントを様々な処理に容易に合わせることができる。
【0109】
スクリュー押出しプロセスの結果に影響を及ぼすパラメータには、フライトギャップ(flight gap)、テトラヘドロンギャップ(tehtrahedron gap)、カレンダーギャップ(calendar gap)、サイドギャップ(side gap)、滞留時間、および高温区画温度(バイオマスの分解温度に基づく)が含まれる。
【0110】
スクリュー押出機は、例えば、米国特許第4,088,528号、同第3,382,536号、同第4,316,747号、同第4,316,748号、および同第3,917,507号に開示されている。これらの全ての開示が参照として本明細書に組み入れられる。
【0111】
供給調製
場合によっては、加工方法は、供給材料の物理的調製、例えば、未加工の供給材料のサイズ縮小から始まる。物理的調製は、前記で議論されたスクリュー押出しプロセスを用いて行われてもよい。代わりに、またはスクリュー押出しの前に、もしくはスクリュー押出しの後でも、サイズ縮小が必要であれば、他の技法を用いて、例えば、切断、摩砕、剪断、または切り刻みによって、物理的調製が行われてもよい。場合によっては、剪断または細断によって、緩い供給材料(例えば、再生紙またはスイッチグラス)が調製される。スクリーンおよび/または磁石を用いて、供給材料ストリームから、大き過ぎる物体または望ましくない物体、例えば、岩または爪を除去することができる。
【0112】
供給調製システムは、特定の特徴、例えば、特定の最大サイズ、特定の長さ対幅、または比表面積比を有する供給ストリームを生じるような構成でもよい。供給調製の一部として、供給材料の嵩密度を制御することができる(例えば、大きくすることができる)。
【0113】
サイズ縮小
いくつかの態様では、加工しようとする材料は、繊維源を剪断することによって得られた繊維を含む繊維材料の形をとる。例えば、剪断は、回転ナイフカッターを用いて行うことができる。多くの剪断工程を以下で議論する。これらの剪断工程のいずれかまたは全てを、前記で議論された機器または他の適切なスクリュー押出し機器を用いたスクリュー押出し工程で代替することができる。
【0114】
例えば、図2を見ると、繊維源210を、例えば、回転ナイフカッター内で剪断して、第一の繊維材料212を得る。平均目開きが1.59mmまたはそれ以下(1/16インチ、0.0625インチ)の第一のスクリーン214に、第一の繊維材料212を通して、第二の繊維材料216を得る。所望であれば、剪断の前に、繊維源を、例えば、シュレッダーで切断することができる。例えば、繊維源として紙が用いられる場合、まず最初に、例えば、シュレッダー、例えば、二重反転スクリューシュレッダー、例えば、Munson(Utica, N.Y.)製の二重反転スクリューシュレッダーを用いて、紙を、例えば、1/4〜1/2インチ幅の細片に切断することができる。細断の代わりとして、ギロチンカッターを用いて望ましいサイズまで切断することによって、紙のサイズを縮小することができる。例えば、ギロチンカッターを用いて、紙を、例えば、10インチ幅x12インチ長のシートに切断することができる。
【0115】
ある実施では、繊維源の剪断と、得られた第一の繊維材料の、第一のスクリーンへの通過が同時に行われる。剪断および通過はバッチ型プロセスで行うこともできる。
【0116】
例えば、繊維源の剪断と第一の繊維材料の選別を同時に行うために、回転ナイフカッターが用いられる。図3を見ると、回転ナイフカッター220は、繊維源を細断することによって調製された、細断された繊維源224を充填できるホッパー222を備える。細断された繊維源を、固定ブレード230と回転ブレード232との間で剪断して、第一の繊維材料240を得る。第一の繊維材料240はスクリーン242を通り、得られた第二の繊維材料244をビン250に取り込む。第二の繊維材料の収集を助けるために、ビンは、公称大気圧より低い圧力、例えば、公称大気圧より少なくとも10パーセント低い圧力、例えば、公称大気圧より少なくとも25パーセント低い圧力、公称大気圧より少なくとも50パーセント低い圧力、または公称大気圧より少なくとも75パーセント低い圧力を有してもよい。いくつかの態様において、真空源252を利用して、ビンを公称大気圧より低い圧力に維持する。
【0117】
剪断は、繊維材料を「開放(open up)」し、「力を加える」ことによって、材料のセルロースの鎖が切断しやすくなり、および/または結晶化度が小さくなるために有利な場合がある。開放された材料はまた、放射線照射時に酸化しやすくなっている場合がある。
【0118】
繊維源は、乾燥した状態、水和した状態(例えば、10重量パーセントまでの吸収した水を有する)、または例えば、約10重量パーセント〜約75重量パーセントの水を有する湿潤状態で剪断することができる。繊維源は、水、エタノール、イソプロパノールなどの液体下に部分的にまたは完全に浸した状態で剪断することもできる。
【0119】
繊維源はまた、(空気以外の気体のストリームもしくは雰囲気などの)気体、例えば、酸素もしくは窒素、または蒸気の中で剪断することもできる。
【0120】
繊維材料を作る他の方法には、例えば、岩の摩砕、機械的な切り離しもしくは引き裂き、ピン研削、または空気粉砕ミリングが含まれる。
【0121】
所望であれば、繊維材料は、例えば、それらの長さ、幅、密度、材料のタイプ、またはこれらの属性のいくつかの組み合わせに従って、連続的に、またはバッチ方式で分離して分画することができる。例えば、複合体を形成するためには、繊維長さの比較的狭い分布を有することが往々にして望ましい。
【0122】
例えば、鉄材料を含む繊維材料が電磁石などの磁石を通り過ぎ、次いで、得られた繊維材料を一連のスクリーンに通すことによって、どのような繊維材料からでも鉄材料を分離することができる。各スクリーンは、サイズの異なる穴を有する。
【0123】
繊維材料はまた、例えば、高速の気体、例えば、空気を用いることによって分離することもできる。このようなアプローチでは、繊維材料は、所望であれば光子によって特徴付けることができる異なる画分を取り除くことによって分離される。このような分離装置は、Lindsey et al., 米国特許第6,883,667号において議論されている。
【0124】
繊維材料は、その調製の直後に放射線照射されてもよく、含水量が、例えば、使用前に約0.5%未満になるように、例えば、約105℃で4〜18時間、乾燥されてもよい。
【0125】
所望であれば、リグニンを含むどのような繊維材料からでも、リグニンを除去することができる。また、セルロースを含む材料の破壊を助けるために、放射線照射前に、材料を、熱、化学物質(例えば、鉱酸、塩基、もしくは強力な酸化剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウム)、および/または酵素で処理することもできる。
【0126】
いくつかの態様において、第一のスクリーンの平均目開きは、0.79mm(1/32インチ、0.03125インチ)未満、例えば、0.51mm(1/50インチ、0.02000インチ)未満、0.40mm(1/64インチ、0.015625インチ)未満、0.23mm(0.009インチ)未満、0.20mm(1/128インチ、0.0078125インチ)未満、0.18mm(0.007インチ)未満、0.13mm(0.005インチ)未満、さらには0.10mm(1/256インチ、0.00390625インチ)未満である。スクリーンは、適切な直径を有するモノフィラメントを織り合わせて、望ましい目開きを得ることによって調製される。例えば、モノフィラメントは、ステンレス鋼などの金属から作られてもよい。目開きがが小さくなるにつれて、モノフィラメントの構造的負担が大きくなる場合がある。例えば、0.40mm未満の目開きについては、ステンレス鋼以外の材料、例えば、チタン、チタン合金、アモルファス金属、ニッケル、タングステン、ロジウム、レニウム、セラミック、またはガラスから作られたモノフィラメントからスクリーンを作ることが有利な場合がある。いくつかの態様において、スクリーンは、穴、例えば、レーザーを用いて板の中に切断された穴のあいた板、例えば、金属板から作られる。いくつかの態様において、メッシュの開口領域は、52%未満、例えば、41%未満、36%未満、31%未満、30%未満である。
【0127】
いくつかの態様において、第二の繊維材料を剪断し、第一のスクリーンまたはサイズの異なるスクリーンに通す。いくつかの態様において、第二の繊維材料を、平均目開きが第一のスクリーンに等しい、または第一のスクリーンより小さい第二のスクリーンに通す。
【0128】
図4を見ると、第二の繊維材料216を剪断し、得られた材料を、平均目開きが第一のスクリーン214より小さい第二のスクリーン222に通すことによって、第二の繊維材料216から第三の繊維材料220を調製することができる。
【0129】
一般的に、繊維材料の繊維は2回以上剪断されても、比較的大きな(例えば、20:1を超える)平均長さ対直径比を有し得る。さらに、本明細書に記載の繊維材料の繊維は、比較的狭い、長さおよび/または長さ対直径比の分布を有してもよい。
【0130】
本明細書で使用する平均繊維幅(すなわち、直径)とは、約5,000本の繊維を無作為に選択することによって光学的に決定されたものである。平均繊維長さは、修正された長さ加重長さ(length-weighted length)である。BET(Brunauer, Emmet and Teller)表面積は多点表面積であり、多孔度は、水銀ポロシメトリーによって決定されたものである。
【0131】
第二の繊維材料14の平均長さ対直径比は、例えば、8/1を超えてもよく、例えば、10/1を超えてもよく、15/1を超えてもよく、20/1を超えてもよく、25/1を超えてもよく、または50/1を超えてもよい。第二の繊維材料14の平均長さは、例えば、約0.5mm〜2.5mm、例えば、約0.75mm〜1.0mmでもよく、第二の繊維材料14の平均幅(すなわち直径)は、例えば、約5μm〜50μm、例えば、約10μm〜30μmでもよい。
【0132】
いくつかの態様において、第二の繊維材料14の長さの標準偏差は、第二の繊維材料14の平均長さの60パーセント未満であり、例えば、平均長さの50パーセント未満、平均長さの40パーセント未満、平均長さの25パーセント未満、平均長さの10パーセント未満、平均長さの5パーセント未満、さらには平均長さの1パーセント未満である。
【0133】
いくつかの態様において、第二の繊維材料のBET表面積は、0.1m2/gを超える、例えば、0.25m2/gを超える、0.5m2/gを超える、1.0m2/gを超える、1.5m2/gを超える、1.75m2/gを超える、5.0m2/gを超える、10m2/gを超える、25m2/gを超える、35m2/gを超える、50m2/gを超える、60m2/gを超える、75m2/gを超える、100m2/gを超える、150m2/gを超える、200m2/g、さらには250m2/gを超える。第二の繊維材料14の多孔度は、例えば、20パーセントを超えてもよく、25パーセントを超えてもよく、35パーセントを超えてもよく、50パーセントを超えてもよく、60パーセントを超えてもよく、70パーセントを超えてもよく、例えば、80パーセントを超えてもよく、85パーセントを超えてもよく、90パーセントを超えてもよく、92パーセントを超えてもよく、94パーセントを超えてもよく、95パーセントを超えてもよく、97.5パーセントを超えてもよく、99パーセントを超えてもよく、さらには99.5パーセントを超えてもよい。
【0134】
いくつかの態様において、第一の繊維材料の平均長さ対直径比と、第二の繊維材料の平均長さ対直径比の比は、例えば、1.5未満、例えば、1.4未満、1.25未満、1.1未満、1.075未満、1.05未満、1.025未満であり、さらには実質的に1に等しい。
【0135】
特定の態様において、第二の繊維材料は再剪断され、得られた繊維材料は、平均目開きが第一のスクリーンより小さな第二のスクリーンに通されて、第三の繊維材料が得られる。このような場合、第二の繊維材料の平均長さ対直径比と、第三の繊維材料の平均長さ対直径比の比は、例えば、1.5未満、例えば、1.4未満、1.25未満、さらには1.1未満でもよい。
【0136】
いくつかの態様において、第三の繊維材料を第三のスクリーンに通して、第四の繊維材料を得る。第四の繊維材料を、例えば、第四のスクリーンに通して、第五の材料を得ることができる。類似のスクリーニングプロセスを、望ましい特性を有する望ましい繊維材料を得るように所望の回数で繰り返すことができる。
【0137】
高密度化
本明細書に記載の任意の方法によって、高密度化された材料を加工することができる。
【0138】
嵩密度が低い、例えば、嵩密度が0.05g/cm3またはそれ以下の材料、例えば、繊維材料を高密度化して、嵩密度の高い産物にすることができる。
【0139】
例えば、前記で議論されたスクリュー押出しプロセスを用いて、例えば、前記のスクリュー押出しのセクションにおいて議論されたブレーキ区画を用いて、繊維材料を高密度化することができる。
【0140】
または、他の技法を用いて、例えば、繊維材料を、比較的、気体不浸透性のある構造、例えば、ポリエチレンで作られたバッグ、またはポリエチレン層とナイロン層が交互に並んで作られたバッグに入れて密封し、次いで、閉じ込められた気体、例えば、空気を構造から抜くことによって、材料組成物を高密度化することができる。
【0141】
高密度化後に、繊維材料は、例えば、0.3g/cm3を超える嵩密度、例えば、0.5g/cm3、0.6g/cm3、0.7g/cm3またはそれ以上、例えば、0.85g/cm3の嵩密度を有してもよい。高密度化後に、産物は、本明細書に記載の任意の方法によって加工されてもよく、例えば、放射線照射されてもよく、例えば、γ線が照射されてもよい。これは、例えば、エタノールを生産するために、繊維材料組成物を溶液に添加することができる別の位置、例えば、遠くの製造プラントに、材料を輸送することが望ましい場合に、有利であり得る。
【0142】
排気バッグを用いて高密度化する場合、実質的に気体不浸透性の構造に穴を開けた後に、高密度化された繊維材料は、ほぼ初期嵩密度まで、例えば、初期嵩密度の60パーセント超まで、例えば、初期嵩密度の70パーセント、80パーセント、85パーセントまたはそれ以上、例えば、95パーセントまで戻ることができる。繊維材料の静電気を減らすために、静電防止剤を材料に添加することができる。
【0143】
いくつかの態様において、バッグなどの実質的に気体不浸透性の構造は、水などの液体に溶ける材料から形成される。例えば、構造は、水をベースとする系と接触した時に溶けるようにポリビニルアルコールから形成されてもよい。このような態様は、最初に高密度化構造の内容物を、例えば、切断によって放出することなく、高密度化構造を、微生物を含む溶液に直接添加するのを可能にする。
【0144】
図5を見ると、他の実施では、バイオマス材料を任意の望ましい添加剤および結合剤と組み合わせ、その後に、圧力を加えることによって、例えば、材料を、二重反転圧力ロール間に規定されるニップに通すことによって、または材料をペレットミルに通すことによって、高密度化することができる。圧力を加えている間に、繊維材料の高密度化を助けるために、任意で、熱を加えることができる。次いで、高密度化材料は放射線照射されてもよい。
【0145】
いくつかの態様において、高密度化前の材料の嵩密度は、0.25g/cm3未満、例えば、0.20g/cm3、0.15g/cm3、0.10g/cm3、0.05g/cm3またはそれ以下、例えば、0.025g/cm3である。嵩密度は、ASTM D1895Bを用いて決定される。簡単に述べれば、嵩密度を測定するASTM法は、既知体積のメスシリンダーに試料を満たし、試料の重量を得る工程を含む。嵩密度は、試料の重量、グラムを、メスシリンダーの既知体積、立方センチメートルで割ることによって計算される。
【0146】
高密度化された繊維材料はペレットミルに入れて作製されてもよい。場合によっては、例えば、材料をスクリュー押出機に供給するのを容易にし、それによって、処理量を高めるために、スクリュー押出しの前にペレット化が行われる。図6を見ると、ペレットミル300は、セルロースなどの炭水化物含有材料を含む高密度化されていない材料310を収容するためのホッパー301を有する。コンディショナーモーター330によって回転されるパドル322によって、高密度化されていない材料を攪拌するコンディショナー320へ高密度化されていない材料を輸送することができるように、可変速モーター314によって駆動されるオーガ312にホッパーが連絡している。他の成分、例えば、本明細書に記載の任意の添加剤および/またはフィラーを入口332に添加することができる。所望であれば、繊維材料がコンディショナーにある間に熱を加えてもよい。コンディショニングした後、材料は、ダンプシュート340を通ってコンディショナーからもう1つのオーガ342へと通過する。アクチュエーター344によって制御されるダンプシュートによって、材料をコンディショナーからオーガへ妨害無く通過させることができる。オーガはモーター346によって回転され、ダイおよびローラーアセンブリ350への繊維材料の供給を制御する。具体的には、材料は、水平軸の周りを回転し、かつ放射状に延びるダイホール250を有する、中空の円筒形ダイ352に導入される。ダイ352は、モーター360によって消費される総電力を示す馬力ゲージを備えるモーターによって軸の周りを回転する。例えば、ペレットの形をした高密度化材料370はシュート372から落下し、捕捉され、放射線照射などにより加工される。
【0147】
材料は、高密度化の後、都合良く、様々な形状を有するペレットまたはチップの形をしてもよい。次いで、ペレットを放射線照射することができる。いくつかの態様において、ペレットまたはチップの形状は、例えば、1mmまたはそれ以上、例えば、2mm、3mm、5mm、8mm、10mm、15mmまたはそれ以上、例えば、25mmの最大横方向寸法を有する円筒である。複合体を作製するためのもう1つの便利な形状は、例えば、1mmまたはそれ以上、例えば、2mm、3mm、5mm、8mm、10mmまたはそれ以上、例えば、25mmの厚み;例えば、5mmまたはそれ以上、例えば、10mm、15mm、25mm、30mmまたはそれ以上、例えば、50mmの幅;および5mmまたはそれ以上、例えば、10mm、15mm、25mm、30mmまたはそれ以上、例えば、50mmの長さを有する、板のような形をしたペレットまたはチップを含む。
【0148】
次に図7A〜7Dを見ると、ペレットは、中空の内側を有するように作製することができる。示されたように、中空は、概して、ペレットの中心と並んでいてもよく(図7B)、またはペレットの中心から外れていてもよい(図7C)。内側にペレットの中空を作製すると、放射線照射後の液体への溶解速度を速めることができる。
【0149】
次に図7Dを見ると、ペレットは、例えば、マルチローバル、例えば、示されたようなトリローバル、またはテトラローバル、ペンタローバル、ヘキサローバル、もしくはデカローバルである横方向形状を有することができる。そのような横方向の形状のペレットを作製することでも、放射線照射後の溶液への溶解速度を速めることができる。
【0150】
分子構造を変える処理
例えば、供給材料の抵抗性レベルを下げることによって、供給材料の平均分子量および結晶化度を小さくすることによって、ならびに/または供給材料の表面積および/もしくは多孔度を大きくすることによって、一次製造プロセスにおいて使用するために、物理的に調製された供給材料を処理することができる。処理プロセスは、放射線照射、超音波処理、酸化、熱分解、水蒸気爆砕、およびスクリュー押出し、例えば、スクリュー押出しと押出しバレルに沿った酸注入の一つまたは複数を含んでもよい。これらの技術の2つ、3つ、さらには4つと組みあわせて、様々な前処理システムおよび方法を使用することができる。所望であれば、供給材料をスクリュー押出機に通しながら、これらの技法の一つまたは複数を行うことができる。例えば、押出機の一区画において、供給材料を放射線照射してもよく、押出機の別の区画に圧力を加えた蒸気を注入してもよい。超音波処理の場合、水などのエネルギー伝播媒体をスクリュー押出機内に供給する。
【0151】
処理の組み合わせ
いくつかの態様において、バイオマスは、本明細書に記載の前の、間の、もしくは後の供給材料調製と共に、または本明細書に記載の前の、間の、もしくは後の供給材料調製を伴わずに、本明細書に記載の任意のプロセスの2つまたはそれ以上、例えば、放射線照射、超音波処理、酸化、熱分解、および水蒸気爆砕の2つまたはそれ以上を適用することによって加工することができる。前記プロセスは、任意の順番で(または同時に)、バイオマス、例えば、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料に適用することができる。他の態様では、炭水化物を含む材料は、本明細書に記載の任意のプロセスの3つ、4つ、またはそれ以上を(任意の順番でまたは同時に)適用することによって調製される。例えば、炭水化物は、放射線照射、超音波処理、酸化、熱分解、任意で、水蒸気爆砕を、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料に(任意の順番でまたは同時に)適用することによって調製することができる。次いで、得られた炭水化物含有材料は、1種類または複数の種類の微生物、例えば、細菌、酵母、または酵母および細菌の混合物によって、本明細書に記載の多くの望ましい産物に変換することができる。複数のプロセスによって、材料の分子量が小さくなり、結晶化度が少なくなり、および/または溶解度が高まるので、様々な微生物が容易に利用できる材料を得ることができる。複数のプロセスによって相乗効果が生まれ、いずれか1回のプロセスと比較して、必要とされる全エネルギー投入量を少なくすることができる。
【0152】
例えば、いくつかの態様では、セルロース材料および/もしくはリグノセルロース材料を放射線照射および超音波処理する工程を含むプロセス(どちらの順でも、もしくは同時に)、セルロース材料および/もしくはリグノセルロース材料を放射線照射および酸化する工程を含むプロセス(どちらの順でも、もしくは同時に)、セルロース材料および/もしくはリグノセルロース材料を放射線照射および熱分解する工程を含むプロセス(どちらの順でも、もしくは同時に)、セルロース材料および/もしくはリグノセルロース材料を放射線照射および熱分解する工程を含むプロセス(どちらの順でも、もしくは同時に)、またはセルロース材料および/もしくはリグノセルロース材料を放射線照射および水蒸気爆砕する工程を含むプロセス(どちらの順でも、もしくは同時に)によって産生された炭水化物を含む供給材料が提供される。次いで、得られた供給材料は、供給材料の少なくとも一部、例えば、少なくとも約1重量%を、本明細書に記載のように、可燃性燃料などの産物に変換する能力を有する微生物と接触させることができる。
【0153】
いくつかの態様において、前記プロセスは、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料を、例えば、酸または塩基、例えば、無機酸、例えば、塩酸もしくは硫酸で加水分解する工程を含まない。
【0154】
所望であれば、供給材料の一部は、加水分解された材料を含んでもよく、供給材料は、加水分解された材料を含まなくてもよい。例えば、いくつかの態様において、供給材料の少なくとも約70重量%は、加水分解されていない材料であり、例えば、供給材料の少なくとも95重量%は、加水分解されていない材料である。いくつかの態様において、供給材料は実質的に全て、加水分解されていない材料である。
【0155】
いずれの供給材料も、供給材料が充填されたリアクターもしくはファーメンターも、緩衝液、例えば、炭酸水素ナトリウム、塩化アンモニウムまたはTris;電解質、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、または塩化カルシウム;増殖因子、例えば、ビオチンおよび/もしくは塩基対、例えば、ウラシル、またはその等価物;界面活性剤、例えば、Tween(登録商標)またはポリエチレングリコール;無機質、例えば、例えば、カルシウム、クロム、銅、ヨウ素、鉄、セレン、または亜鉛;あるいはキレート剤、例えば、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(またはその塩型、例えば、EDTAナトリウムもしくはEDTAカリウム)、あるいはジメルカプロールを含んでよい。
【0156】
放射線が利用される場合、乾燥した、または湿った、さらには水などの液体に分散した任意の試料に放射線を適用することができる。例えば、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料に対して放射線照射を行うことができ、ここで、セルロース材料および/またはリグノセルロース材の約25重量パーセント未満が水などの液体で表面湿潤されている。いくつかの態様において、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料に対して放射線照射が行われ、ここで、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料は実質的に水などの液体で湿潤されていない。
【0157】
いくつかの態様では、セルロース材料および/もしくはリグノセルロース材料が得られたように乾燥したままになっている状態で、または例えば、熱および/もしくは減圧を用いて乾燥された後に、本明細書に記載の任意の加工が行われる。例えば、いくつかの態様において、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料は、25℃および50パーセント相対湿度で測定された時に、約5重量パーセント未満の保留水を有する。
【0158】
所望であれば、本明細書において定義された、膨張剤を、本明細書に記載の任意のプロセスにおいて利用することができる。いくつかの態様では、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料が放射線を用いて加工される場合、約25重量%未満のセルロース材料および/またはリグノセルロース材料が膨張した状態にあり、膨張した状態は、体積が、膨張していない状態より約2.5パーセント多い、例えば、膨張していない状態より5.0パーセント多い、7.5パーセント多い、10パーセント多い、または15パーセント多いことを特徴とする。いくつかの態様では、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料に対して放射線が利用される場合、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料は実質的に膨張した状態にない。
【0159】
特定の態様において、放射線が利用される場合、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料は膨張剤を含み、膨張したセルロースおよび/またはリグノセルロースに約10Mrad未満の線量が与えられる。
【0160】
任意のプロセスにおいて放射線が利用される場合、セルロースおよび/またはリグノセルロースを、空気、酸素に富む空気、さらには酸素それ自体に曝露しながら、または窒素、アルゴン、もしくはヘリウムなどの希ガスで覆いながら、放射線を適用することができる。最大酸化が望ましい場合、空気または酸素などの酸化環境が用いられる。
【0161】
放射線が利用される場合、約2.5気圧を超える圧力の下で、例えば、5気圧、10気圧、15気圧、20気圧、さらには約50気圧を超える圧力の下で、バイオマス、例えば、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料に、放射線を適用することができる。
【0162】
特定の態様において、前記プロセスは放射線照射および超音波処理を含み、放射線照射は超音波処理の前に行われる。他の特定の態様において、超音波処理は放射線照射の前に行われるか、または放射線照射および超音波処理は同時に行われる。
【0163】
いくつかの態様において、前記プロセスは、放射線照射および超音波処理(どちらの順でも、または同時に)を含み、酸化、熱分解、または水蒸気爆砕する工程をさらに含む。
【0164】
前記プロセスが放射線照射を含む場合、放射線照射は、電離放射線、例えば、γ線、X線、エネルギーの高い紫外線、例えば、約100nm〜約280nmの波長を有する紫外線C放射線、粒子線、例えば、電子線、低速中性子、またはα粒子を用いて行うことができる。いくつかの態様において、放射線照射は、2種類またはそれ以上の放射線源、例えば、γ線および電子線を含み、どちらの順でも、または同時に適用することができる。
【0165】
特定の態様において、超音波処理は、1KWまたはそれ以上のホーン、例えば、2KW、3KW、4KW、5KW、さらには10KWホーンを用いて、約15khz〜約25khz、例えば、約18khz〜22khzの周波数で行うことができる。
【0166】
いくつかの態様において、セルロース材料および/またはリグノセルロース材料は、第一の数平均分子量を有する第一のセルロースを含み、得られた炭水化物は、第一の数平均分子量より小さな第二の数平均分子量を有する第二のセルロースを含む。例えば、第二の数平均分子量は、第一の数平均分子量より約25パーセント超小さく、例えば、1/2、1/3、1/5、1/7、1/10、1/25、さらには1/100である。
【0167】
いくつかの態様において、第一のセルロースは第一の結晶化度を有し、第二のセルロースは、第一の結晶化度より小さな、例えば、約2パーセント、3パーセント、5パーセント、10パーセント、15パーセント、または25パーセント小さな第二の結晶化度を有する。
【0168】
いくつかの態様において、第一のセルロースは第一の酸化レベルを有し、第二のセルロースは、第一の酸化レベルより大きな、例えば、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、10パーセント、さらには25パーセント大きな第二の酸化レベルを有する。
【0169】
放射線処理
多種多様な供給源に由来する未加工の供給材料を加工して、供給材料から有用な物質を抽出するために、ならびにさらなる加工工程および/またはシーケンスへのインプットとして機能する部分的に分解された有機材料を得るために、一回または複数回の放射線照射加工シーケンスを使用することができる。放射線照射によって、供給材料の分子量および/または結晶化度を小さくすることができる。いくつかの態様では、材料を放射線照射するために、原子軌道から電子を放出する、材料に蓄積するエネルギーが用いられる。放射線は、1)重い荷電粒子、例えば、α粒子、2)電子、例えば、β崩壊もしくは電子線加速器において生じる電子、または3)電磁放射線、例えば、γ線、X線、もしくは紫外線によって供給されてもよい。一つのアプローチでは、放射性物質によって生じる放射線を用いて、供給材料を放射線照射することができる。別のアプローチでは、(例えば、電子線エミッターを用いて生じた)電磁放射線を用いて、供給材料を放射線照射することができる。適用される線量は、望ましい効果および特定の供給材料によって決まる。例えば、高線量の放射線は、供給材料成分内の化学結合を破壊することができ、低線量の放射線は、供給材料成分内の化学結合(例えば、架橋結合)を増やすことができる。
【0170】
図8を見ると、一つの方法では、第一の数平均分子量(TMN1)を有するセルロースである、またはこれを含む第一の材料2を、例えば、電離放射線(例えば、γ線、X線、100nm〜280nm紫外線(UV)、電子線または他の荷電粒子の線)による処理によって放射線照射して、第一の数平均分子量より小さい第二の数平均分子量(TMN2)を有するセルロースを含む第二の材料3を得る。第二の材料(または第一の材料および第二の材料)は、第二の材料および/または第一の材料を利用して、水素、アルコール(例えば、エタノールもしくはブタノール、例えば、n-、sec-、もしくはt-ブタノール)、有機酸、炭化水素、またはこれらのいずれかの混合物である、あるいはこれを含む燃料5を産生することができる微生物(例えば、細菌または酵母)と組み合わせることができる。
【0171】
第二の材料3は、第一の材料と比較して小さな分子量、場合によっては、小さな結晶化度も有するセルロースを有するので、微生物を含有する溶液中での分散性、膨張性、および/または可溶性が概して高い。これらの特性により、第二の材料3は、第一の材料2と比較して、化学的攻撃、酵素的攻撃、および/または生物学的攻撃に対する材料の感受性が高い。このために、望ましい産物、例えば、エタノールの生産速度および/または生産レベルを大幅に改善することができる。放射線照射によって材料を滅菌することもできる。
【0172】
いくつかの態様において、第二の数平均分子量(MN2)は、第一の数平均分子量(TMN1)より約10パーセント超小さく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、さらには約75パーセント超小さい。
【0173】
場合によっては、第二の材料のセルロースの結晶化度(TC2)は、第一の材料のセルロースの結晶化度(TC1)より少ない。例えば、(TC2)は、(TC1)より、約10パーセント超少なく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、さらには約50パーセント超少なくてもよい。
【0174】
いくつかの態様において、開始結晶化度指数(放射線照射前)は、約40〜約87.5パーセント、例えば、約50〜約75パーセント、または約60〜約70パーセントであり、放射線照射後の結晶化度指数は、約10〜約50パーセント、例えば、約15〜約45パーセント、または約20〜約40パーセントである。しかしながら、いくつかの態様において、例えば、大規模な放射線照射後には、5パーセントより低い結晶化度指数となる可能性がある。いくつかの態様において、放射線照射後の材料は実質的に無定形である。
【0175】
いくつかの態様において、開始数平均分子量(放射線照射前)は、約200,000〜約3,200,000、例えば、約250,000〜約1,000,000、または約250,000〜約700,000であり、放射線照射後の数平均分子量は、約50,000〜約200,000、例えば、約60,000〜約150,000、または約70,000〜約125,000である。しかしながら、いくつかの態様において、例えば、大規模な放射線照射後には、約10,000未満、さらには約5,000未満の数平均分子量となる可能性がある。
【0176】
いくつかの態様において、第二の材料の酸化レベル(TO2)は、第一の材料の酸化レベル(TO1)より高くてもよい。材料の酸化レベルが高ければ、分散、膨張、および/または溶解の助けとなり、さらには、化学的攻撃、酵素的攻撃、または生物学的攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。いくつかの態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境において、例えば、空気または酸素の下で放射線照射が行われ、第一の材料より酸化された第二の材料が産生される。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、またはカルボン酸基の数が増えていてもよく、これらは材料の親水性を高めることができる。
【0177】
電離放射線
各種類の放射線は、放射線のエネルギーにより決まる特定の相互作用を介してバイオマスをイオン化する。重い荷電粒子は、主に、クーロン散乱を介して物質をイオン化する。さらに、これらの相互作用によって、物質をさらにイオン化し得る高エネルギー電子が発生する。α粒子はヘリウム原子の核と同一であり、様々な放射性核種(radioactive nuclei)、例えば、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、いくつかのアクチニド、例えば、アクチニウム、トリウム、ウラン、ネプツニウム、キュリウム、カリホルニウム、アメリシウム、およびプルトニウムの同位体のα崩壊によって発生する。
【0178】
電子はクーロン散乱を介して相互作用し、電子の速度の変化によって制動放射放射線が生じる。電子は、β崩壊を受ける放射性核種、例えば、ヨウ素、セシウム、テクネチウム、およびイリジウムの同位体によって生じてもよい。または、熱電子放出を介した電子源として電子銃を使用することができる。
【0179】
3つのプロセス:光電吸収、コンプトン散乱、および対生成を介して、電磁放射線は相互作用する。優勢な相互作用は、入射放射線のエネルギーおよび材料の原子番号によって決まる。セルロース材料に吸収される放射線に寄与する相互作用の総和は、入射エネルギーの関数として下記でグラフ化されている質量吸収係数によって表すことができる。

【0180】
電磁放射線は、波長に応じて、γ線、X線、紫外線、赤外線、マイクロ波、または電波としてさらに分類される。
【0181】
例えば、材料を放射線照射するために、γ線を使用することができる。図9および図10(領域Rの拡大図)を見ると、γ照射器510は、γ線源512、例えば、60Coペレット、放射線照射しようとする材料を保持するための作業台514、およびストレージ516、例えば、複数の鉄板から作られたストレージを備える。これらは全て、鉛でライニングされたドア526の裏に迷路通路522を備えるコンクリート製の格納室520に収容されている。ストレージ516は、複数のチャネル530、例えば、16個またはそれ以上のチャネルを備え、このために、γ線源は、作業台の近くにある、途中にあるストレージを通過することができる。
【0182】
操作の際に、放射線照射しようとする試料を作業台の上に置く。照射器は所望の線量率を送達するように配置され、モニタリング機器は実験ブロック531に連結される。次いで、オペレーターは格納室を離れ、迷路通路を通り、および鉛でライニングされたドアを通る。オペレーターは制御パネル532を受け持ち、コンピューター533が、水圧ポンプ540に取り付けられたシリンダー536を用いて放射線源512を作動位置まで持ち上げるように指令する。
【0183】
γ線には、試料中の様々な材料への透過の深さが大きいという利点がある。γ線源には、放射性核種、例えば、コバルト、カルシウム、テクニシウム(technicium)、クロム、ガリウム、インジウム、ヨウ素、鉄、クリプトン、サマリウム、セレン、ナトリウム、タリウム、およびキセノンの同位体が含まれる。
【0184】
X線源には、金属標的、例えば、タングステンもしくはモリブデンまたは合金を用いた電子線衝突、あるいは小型光源、例えば、Lynceanによって商業生産されている小型光源が含まれる。
【0185】
紫外線源には、重水素ランプまたはカドミウムランプが含まれる。
【0186】
赤外線源には、サファイア、亜鉛、またはセレン化物ウィンドウセラミックランプが含まれる。
【0187】
マイクロ波源には、クライストロン、Slevin型RF源、または水素ガス、酸素ガス、もしくは窒素ガスを用いた原子線源が含まれる。
【0188】
電子線
いくつかの態様では、電子線が放射線源として用いられる。電子線には、線量率が高い(例えば、1Mrad/秒、5Mrad/秒、さらには10Mrad/秒)、高処理、封じ込めが少ない、閉じ込め装置が小さいという利点がある。電子はまた、鎖の切断において効率が高いこともある。さらに、4〜10MeVのエネルギーを有する電子は、5〜30mmまたはそれ以上、例えば、40mmの透過の深さを有し得る。
【0189】
電子線は、例えば、静電発電機、カスケードジェネレータ、変圧発電機(transformer generator)、低エネルギー加速器とスキャニングシステム、低エネルギー加速器とリニアカソード、直線加速器、およびパルス加速器によって発生させることができる。電離放射線源としての電子は、例えば、積み重なりが比較的薄い、例えば、0.5インチ未満、例えば、0.4インチ未満、0.3インチ未満、0.2インチ未満、または0.1インチ未満の材料に有用な場合がある。いくつかの態様において、電子線の各電子のエネルギーは、約0.3MeV〜約2.0MeV(百万電子ボルト)、例えば、約0.5MeV〜約1.5MeV、または約0.7MeV〜約1.25MeVである。
【0190】
図11は、電子線を照射する供給材料前処理シーケンスにおいて様々な工程を含むプロセスフローチャート3000を示す。最初の工程3010では、供給源から、乾燥供給材料が供給される。前記で議論されたように、供給源からの乾燥供給材料は電子線照射装置に送達される前に、前処理されてもよい。例えば、植物供給源から供給材料が得られるのであれば、植物材料が収集される前に、および/または植物材料が供給材料輸送装置によって送達される前に、植物材料のある特定の部分が除去されてもよい。代わりに、またはさらに、任意の工程3020において表されるように、バイオマス供給材料は電子線照射装置に送達される前に、(例えば、供給材料中の繊維の平均長さを短くするために)機械加工に供されてもよい。
【0191】
工程3030では、乾燥供給材料は供給材料輸送装置(例えば、コンベヤーベルト)に移送され、容量がほぼ均一に、供給材料輸送装置の断面幅にわたって分散される。これは、例えば、電子線照射加工前の供給材料輸送装置のある地点で、手作業で、または局所振動を誘導することによって達成することができる。
【0192】
いくつかの態様では、スラリーを生じる任意のプロセス3040において、混合システムによって化学薬品3045が供給材料に導入される。混合工程3040において、水と、加工された供給材料が組み合わされると、水性供給材料スラリーが作り出される。水性供給材料スラリーは、例えば、コンベヤーベルトを用いるのではなく、例えば、管で送ることによって輸送することができる。
【0193】
次の工程3050は、(乾燥した、またはスラリーの形をした)供給材料を、一つまたは複数の(例えば、N個の)電子線照射装置を介して電子線に曝露する工程を含むループである。供給材料スラリーは、工程3052でN個の電子線「シャワー」のそれぞれに通される。この移動は、シャワーを通る時、およびシャワーの間にある時に速度が連続してもよく、それぞれのシャワーを通る時に小休止があり、その後に、次のシャワーに突然移動してもよい。工程3053では、所定の曝露時間にわたって、供給材料スラリーの小さな薄片が、それぞれのシャワーに曝露される。
【0194】
電子線照射装置は、Ion Beam Applications, Louvain-la-Neuve, BelgiumまたはTitan Corporation, San Diego, CAから商業的に入手することができる。代表的な電子エネルギーは、1MeV、2MeV、4.5MeV、7.5MeV、または10MeVでもよい。代表的な電子線照射装置の出力は、1kW、5kW、10kW、20kW、50kW、100kW、250kW、または500kWでもよい。供給材料スラリーの解重合の有効性は、使用される電子エネルギーおよび適用される線量によって決まるのに対して、曝露時間は出力および線量によって決まる。代表的な線量は、1kGy、5kGy、10kGy、20kGy、50kGy、100kGy、または200kGyの値をとってもよい。
【0195】
電子線照射装置の出力仕様の検討において折り合いをつけなければならないものには、運転コスト、資本コスト、減価償却、装置の設置面積が含まれる。電子線照射の曝露線量レベルの検討において折り合いをつけなければならないものは、エネルギーコスト、ならびに環境、安全、衛生(ESH)の問題であろう。電子エネルギーの検討において折り合いをつけなければならないものには、エネルギーコストが含まれる。この場合、ある特定の供給材料スラリーの解重合の促進には低電子エネルギーが有利であるかもしれない(例えば、Bouchard, et al, Cellulose(2006)13:601-610を参照されたい)。
【0196】
より効果的な解重合プロセスを提供するためには、二重に電子線を照射することが有利な場合がある。例えば、供給材料移送装置は、(乾燥した、またはスラリーの形をした)供給材料を下部に向け、最初の移送方向とは逆の方向に向けることができる。二重通過システムを用いると、厚い供給材料スラリーを加工することが可能になり、供給材料スラリーの厚みを通して、より均一な解重合をもたらすことが可能になる。
【0197】
電子線照射装置は、固定ビームまたはスキャニングビームを発生させることができる。スキャニングビームは、スキャンスィープ長が大きく、スキャンスピードが速く、有利な場合があるので、効果的に、大きな固定ビーム幅の代わりとなるだろう。さらに、0.5m、1m、2m、またはそれ以上の有効なスィープ幅を利用することができる。
【0198】
供給材料スラリーの一部がN個の電子線照射装置を通って輸送されたら、いくつかの態様では、工程3060のように、供給材料スラリーの液体成分および固体成分を機械的に分離することが必要な場合がある。これらの態様では、残留固体粒子を得るために、供給材料スラリーの液体部分が濾過され、スラリー調製工程3040に戻ってリサイクルされる。次いで、供給材料スラリーの固体部分は、供給材料輸送装置を介して、次の加工工程3070に進む。他の態様において、供給材料は、さらなる加工のためにスラリーの形で維持される。
【0199】
電子より重い粒子
イオン粒子線
炭水化物、または炭水化物、例えば、セルロース材料、リグノセルロース材料、デンプン質材料、もしくはこれらのいずれかと本明細書に記載の他の材料の混合物を含む材料を放射線照射するために、電子より重い粒子を利用することができる。例えば、プロトン、ヘリウム核、アルゴンイオン、ケイ素イオン、ネオンイオン、炭素イオン、リンイオン、酸素イオン、または窒素イオンを利用することができる。いくつかの態様において、電子より重い粒子は多量の鎖の切断を誘導することができる。場合によっては、正に荷電した粒子は、その酸性度により、負に荷電した粒子より多量の鎖の切断を誘導することができる。
【0200】
より重い粒子の線は、例えば、直線加速器またはサイクロトロンを用いて発生させることができる。いくつかの態様において、粒子線の各粒子のエネルギーは、約1.0MeV/原子単位〜約6,000MeV/原子単位、例えば、約3MeV/原子単位〜約4,800MeV/原子単位、または約10MeV/原子単位〜約1,000MeV/原子単位である。
【0201】
このセクションでは、様々なタイプのバイオマス材料を放射線照射するのに使用することができる粒子のタイプおよび特性が開示される。さらに、このような粒子の線を発生させるためのシステムおよび方法が開示される。
【0202】
1.イオンのタイプ
一般的に、バイオマス材料を放射線照射するために、多くのタイプのイオンを使用することができる。例えば、いくつかの態様において、イオンビームは、比較的軽いイオン、例えば、プロトンおよび/またはヘリウムイオンを含んでもよいを含んでもよい。ある特定の態様において、イオンビームは、中程度に重いイオン、例えば、炭素イオン、窒素イオン、酸素イオン、および/またはネオンイオンを含んでもよい。いくつかの態様において、イオンビームは、さらに重いイオン、例えば、アルゴンイオン、ケイ素イオン、リンイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、および/または鉄イオンを含んでもよい。
【0203】
ある特定の態様において、バイオマス材料を放射線照射するために用いられるイオンビームは、複数の異なるタイプのイオンを含んでもよい。例えば、イオンビームは、2種類またはそれ以上(例えば、3種類もしくは4種類またはそれ以上)のタイプのイオンの混合物を含んでもよい。例示的な混合物は、炭素イオンおよびプロトン、炭素イオンおよび酸素イオン、窒素イオンおよびプロトン、ならびに鉄イオンおよびプロトンを含んでもよい。さらに一般的には、放射線照射イオンビームを形成するために、前記で議論された任意のイオン(または他の任意のイオン)を使用することができる。特に、1つのイオンビームに、比較的軽いイオンおよび比較的重いイオンの混合物を使用することができる。ここで、異なるタイプのイオンはそれぞれ、バイオマス材料の放射線照射における有効性が異なる。
【0204】
いくつかの態様において、バイオマス材料を放射線照射するためのイオンビームには、正に荷電したイオンが含まれる。正に荷電したイオンは、例えば、正に荷電した水素イオン(例えば、プロトン)、希ガスイオン(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン)、炭素イオン、窒素イオン、酸素イオン、ケイ素原子、リンイオン、ならびに金属イオン、例えば、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、および/または鉄イオンを含んでもよい。どの理論にも拘束されるものではないが、このような正に荷電したイオンは、バイオマス材料に曝露されるとルイス酸部分として化学挙動して、酸化環境においてカチオン性環開口性の鎖切断反応を開始および持続すると考えられている。
【0205】
ある特定の態様において、バイオマス材料を放射線照射するためのイオンビームには、負に荷電したイオンが含まれる。負に荷電したイオンは、例えば、負に荷電した水素イオン(例えば、水素化物イオン)、ならびに比較的電子陰性のある様々な核の負に荷電したイオン(例えば、酸素イオン、窒素イオン、炭素イオン、ケイ素イオン、およびリンイオン)を含んでもよい。どの理論にも拘束されるものではないが、このような負に荷電したイオンは、バイオマス材料に曝露されるとルイス塩基部分として化学挙動して、還元環境においてアニオン性環開口性の鎖切断反応を引き起こすと考えられている。
【0206】
いくつかの態様において、バイオマス材料を放射線照射するためのビームは中性原子を含んでもよい。例えば、バイオマス材料の放射線照射に用いられるビームには、水素原子、ヘリウム原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ネオン原子、ケイ素原子、リン原子、アルゴン原子、および鉄原子のいずれか一つまたは複数を含めることができる。一般的に、前記のタイプの原子のいずれか2つまたはそれ以上の(例えば、3つまたはそれ以上、4つまたはそれ以上、またはそれ以上の)混合物がビームに存在してもよい。
【0207】
前述の議論は、単核イオンおよび/または中性粒子(例えば、原子イオンおよび中性原子)を含むイオンビームに焦点を当てている。典型的には、このような粒子は、エネルギーの点から見ると、発生させるのが最も容易であり、これらの化学種が得られる親粒子を大量に入手することができる。しかしながら、いくつかの態様では、バイオマス材料を放射線照射するためのビームは、多核の、例えば、2種類またはそれ以上のタイプの核を含む、一つまたは複数のタイプのイオンまたは中性粒子を含んでもよい。例えば、イオンビームは、N2、O2、H2、CH4、および他の分子種などの化学種から形成された、陽イオンおよび/または陰イオンおよび/または中性粒子を含んでもよい。イオンビームはまた、さらに多くの核を含む、さらに重い化学種から形成されたイオンおよび/または中性粒子、例えば、様々な炭化水素をベースとする化学種および/または様々な金属の配位化合物を含む様々な無機化学種を含んでもよい。
【0208】
ある特定の態様において、バイオマス材料を放射線照射するのに用いられるイオンビームには、単一電荷イオン、例えば、H+、H-、He+、Ne+、Ar+、C+、C-、O+、O-、N+、N-、Si-、Si+、P+、P-、Na+、Ca+、およびFe+の一つまたは複数が含まれる。いくつかの態様において、イオンビームは、多電荷イオン、例えば、C2+、C3+、C4+、N3+、N5+、N3-、O2+、O2-、O22-、Si2+、Si4+、Si2-、およびSi4-の一つまたは複数を含んでもよい。一般的に、イオンビームはまた、複数の正電荷または負電荷を有するさらに複雑な多核イオンを含んでもよい。ある特定の態様において、多核イオンの構造によって、正電荷または負電荷は、イオンの構造の実質的に全体に有効に分布することができる。いくつかの態様において、正電荷または負電荷は、イオンの構造の複数の部分にわたって、ある程度局在してもよい。
【0209】
電磁放射線
電磁放射線の照射が行われる態様では、電磁放射線は、例えば、102eVを超えるエネルギー/光子(電子ボルト)、例えば、103eV、104eV、105eV、106eV、さらには107eVを超えるエネルギー/光子(電子ボルト)を有してもよい。いくつかの態様において、電磁放射線は、104〜107eV、例えば、105〜106eVのエネルギー/光子を有する。電磁放射線は、例えば、1016hz、1017hz、1018hz、1019hz、1020hz、さらには1021hzを超える周波数を有してもよい。いくつかの態様において、電磁放射線は、1018〜1022hz、例えば、1019〜1021hzの周波数を有する。
【0210】
線量
いくつかの態様において、材料に、少なくとも0.25Mrad、例えば、少なくとも1.0Mrad、少なくとも2.5Mrad、少なくとも5.0Mrad、または少なくとも10.0Mradの線量が与えられるまで、放射線照射(任意の放射線源または放射線源の組み合わせによる)が行われる。いくつかの態様において、材料に、1.0Mrad〜6.0Mrad、例えば、1.5Mrad〜4.0Mradの線量が与えられるまで、放射線照射が行われる。いくつかの態様において、材料に、少なくとも25Mrad、50Mrad、75Mrad、100Mrad、125Mrad、150Mrad、175Mrad、さらには200Mradを超える線量が与えられるまで、放射線照射が行われる。
【0211】
いくつかの態様において、5.0〜1500.0キロラド/時間、例えば、10.0〜750.0キロラド/時間、または50.0〜350.0キロラド/時間の線量率で、放射線照射が行われる。いくつかの態様において、5.0〜150.0キロラド/時間、例えば、10.0〜125.0キロラド/時間、または15.0〜75.0キロラド/時間の線量率で、放射線照射が行われる。
【0212】
いくつかの態様では、2種類またはそれ以上の放射線源、例えば、2種類またはそれ以上の電離放射線が用いられる。例えば、試料は、電子線の次に、γ線および約100nm〜約280nmの波長を有するUV光によって任意の順番で処理することができる。いくつかの態様では、試料は、3種類の電離放射線源、例えば、電子線、γ線、およびエネルギーの高いUV光によって処理される。
【0213】
超音波処理
多種多様な供給源に由来する未加工の供給材料を加工して、供給材料から有用な物質を抽出するために、ならびにさらなる加工工程および/またはシーケンスへのインプットとして機能する部分的に分解された有機材料を得るために、一回または複数回の超音波処理加工シーケンスを使用することができる。超音波処理によって、供給材料の分子量および/または結晶化度を小さくすることができる。
【0214】
再び、図8を見ると、一つの方法では、第一の数平均分子量(TMN1)を有するセルロースを含む第一の材料2を、媒体、例えば、水に分散させ、超音波処理して、および/または他の方法で気泡を作って(cavitate)、第一の数平均分子量より小さい第二の数平均分子量(TMN2)を有するセルロースを含む第二の材料3を得る。第二の材料(またはある特定の態様では、第一の材料および第二の材料)は、第二の材料および/または第一の材料を利用して、水素、アルコール、有機酸、炭化水素、またはこれらのいずれかの混合物である、あるいはこれを含む燃料5を産生することができる微生物(例えば、細菌または酵母)と組み合わせることができる。
【0215】
第二の材料は、第一の材料と比較して小さな分子量、場合によっては、小さな結晶化度も有するセルロースを有するので、微生物を含有する溶液中での、例えば、106微生物/mLを超える濃度での分散性、膨張性、および/または可溶性が高い。これらの特性により、第二の材料3は、第一の材料2と比較して、化学的攻撃、酵素的攻撃、および/または微生物攻撃に対する材料の感受性が概して高い。このために、望ましい産物、例えば、エタノールの生産速度および/または生産レベルを大幅に改善することができる。超音波処理によって材料を滅菌することもできるが、微生物を生かすことになっている間は使用すべきでない。
【0216】
いくつかの態様において、第二の数平均分子量(TMN2)は、第一の数平均分子量(TMN1)より約10パーセント超小さく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、さらには約75パーセント超小さい。
【0217】
場合によっては、第二の材料のセルロースの結晶化度(TC2)は、第一の材料のセルロースの結晶化度(TC1)より少ない。例えば、(TC2)は、(TC1)より、約10パーセント超少なく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、さらには約50パーセント超少なくてもよい。
【0218】
いくつかの態様において、開始結晶化度指数(超音波処理前)は、約40〜約87.5パーセント、例えば、約50〜約75パーセント、または約60〜約70パーセントであり、超音波処理後の結晶化度指数は、約10〜約50パーセント、例えば、約15〜約45パーセント、または約20〜約40パーセントである。しかしながら、ある特定の態様において、例えば、大規模な超音波処理後には、5パーセントより低い結晶化度指数となる可能性がある。いくつかの態様において、超音波処理後の材料は実質的に無定形である。
【0219】
いくつかの態様において、開始数平均分子量(超音波処理前)は、約200,000〜約3,200,000、例えば、約250,000〜約1,000,000、または約250,000〜約700,000であり、超音波処理後の数平均分子量は、約50,000〜約200,000、例えば、約60,000〜約150,000、または約70,000〜約125,000である。しかしながら、いくつかの態様において、例えば、大規模な超音波処理後には、約10,000未満、さらには約5,000未満の数平均分子量となる可能性がある。
【0220】
いくつかの態様において、第二の材料の酸化レベル(TO2)は、第一の材料の酸化レベル(TO1)より高くてもよい。材料の酸化レベルが高ければ、分散、膨張、および/または溶解の助けとなり、さらには、化学的攻撃、酵素的攻撃、または微生物攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。いくつかの態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境において熱分解が行われ、第一の材料より酸化された第二の材料が産生される。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、またはカルボン酸基の数が増えていてもよく、これらは材料の親水性を高めることができる。
【0221】
いくつかの態様において、超音波処理媒体は水性媒体である。所望であれば、媒体は、酸化剤、例えば、過酸化物(例えば、過酸化水素)、分散剤、および/または緩衝液を含んでもよい。分散剤の例には、イオン性分散剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、および非イオン性分散剤、例えば、ポリ(エチレングリコール)が含まれる。
【0222】
他の態様において、超音波処理媒体は非水性である。例えば、超音波処理は、炭化水素、例えば、トルエンまたはヘプタン、エーテル、例えば、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランの中で、さらには液化ガス、例えば、アルゴン、キセノン、または窒素の中でも行うことができる。
【0223】
熱分解
多種多様な供給源に由来する未加工の供給材料を加工して、供給材料から有用な物質を抽出するために、ならびにさらなる加工工程および/またはシーケンスへのインプットとして機能する部分的に分解された(官能化された)有機材料を得るために、一回または複数回の熱分解加工シーケンスを使用することができる。熱分解は、スクリュー押出しプロセスの前、間(乾燥区画において)、または後に行うことができる。
【0224】
再び、図8の概略図を見ると、例えば、第一の数平均分子量(TMN1)を有するセルロースを含む第一の材料2を、例えば、チューブ炉の中で加熱することによって熱分解して、第一の数平均分子量より小さい第二の数平均分子量(TMN2)を有するセルロースを含む第二の材料3を得る。第二の材料(またはある特定の態様では、第一の材料および第二の材料)は、第二の材料および/または第一の材料を利用して、水素、アルコール(例えば、エタノールもしくはブタノール、例えば、n-、sec、もしくはt-ブタノール)、有機酸、炭化水素、またはこれらのいずれかの混合物である、あるいはこれを含む燃料5を産生する微生物(例えば、細菌または酵母)と組み合わされる。
【0225】
第二の材料は、第一の材料と比較して小さな分子量、場合によっては、小さな結晶化度も有するセルロースを有するので、微生物を含有する溶液中での、例えば、106微生物/mLを超える濃度での分散性、膨張性、および/または可溶性が概して高い。これらの特性により、第二の材料3は、第一の材料2と比較して、化学的攻撃、酵素的攻撃、および/または微生物攻撃に対する材料の感受性が高い。このために、望ましい産物、例えば、エタノールの生産速度および/または生産レベルを大幅に改善することができる。熱分解によって第一の材料および第二の材料を滅菌することもできる。
【0226】
いくつかの態様では、第二の数平均分子量(TMN2)は、第一の数平均分子量(TMN1)より、約10パーセント超小さく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、さらには約75パーセント超小さい。
【0227】
場合によっては、第二の材料のセルロースの結晶化度(TC2)は、第一の材料のセルロースの結晶化度(TC1)より少ない。例えば、(TC2)は、(TC1)より、約10パーセント超少なく、例えば、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、さらには約50パーセント超少なくてもよい。
【0228】
いくつかの態様において、開始結晶化度(熱分解前)は、約40〜約87.5パーセント、例えば、約50〜約75パーセント、または約60〜約70パーセントであり、熱分解後の結晶化度指数は、約10〜約50パーセント、例えば、約15〜約45パーセント、または約20〜約40パーセントである。しかしながら、ある特定の態様において、例えば、大規模な熱分解後には、5パーセントより低い結晶化度指数となる可能性がある。いくつかの態様において、熱分解後の材料は実質的に無定形である。
【0229】
いくつかの態様において、開始数平均分子量(熱分解前)は、約200,000〜約3,200,000、例えば、約250,000〜約1,000,000、または約250,000〜約700,000であり、熱分解後の数平均分子量は、約50,000〜約200,000、例えば、約60,000〜約150,000、または約70,000〜約125,000である。しかしながら、いくつかの態様において、例えば、大規模な熱分解後には、約10,000未満、さらには約5,000未満の数平均分子量となる可能性がある。
【0230】
いくつかの態様において、第二の材料の酸化レベル(TO2)は、第一の材料の酸化レベル(TO1)より高くてもよい。材料の酸化レベルが高ければ、分散、膨張、および/または溶解の助けとなり、さらには、化学的攻撃、酵素的攻撃、または微生物攻撃に対する材料の感受性が強化され得る。いくつかの態様において、第一の材料と比較して第二の材料の酸化レベルを高めるために、酸化環境において熱分解が行われ、第一の材料より酸化された第二の材料が産生される。例えば、第二の材料は、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、またはカルボン酸基の数が増えていてもよく、これらは材料の親水性を高めることができる。
【0231】
いくつかの態様において、材料の熱分解は連続する。他の態様において、材料は、所定の時間、熱分解され、次いで、第二の所定の時間、冷却された後に、再度、熱分解される。
【0232】
酸化
多種多様な供給源に由来する未加工の供給材料を加工して、供給材料から有用な物質を抽出するために、ならびにさらなる加工工程および/またはシーケンスへのインプットとして機能する部分的に分解された有機材料を得るために、一回または複数回の酸化加工シーケンスを使用することができる。酸化は、スクリュー押出しの前、間、もしくは後に行うことができる。例えば、バイオマスが押出機に入っている間に、酸化剤、例えば、過硫酸アンモニウムまたは次亜塩素酸ナトリウムをバイオマスに注入することによって、押出し中に酸化を行うことができる。
【0233】
図8を再び見ると、例えば、チューブ炉において、空気または酸素に富む空気のストリームの中で、第一の数平均分子量(TMN1)を有し、第一の酸素含有量(TO1)を有するセルロースを含む第一の材料(2)を加熱することによって、第一の材料(2)を酸化して、第二の数平均分子量(TMN2)を有し、第一の酸素含有量(TO1)より高い第二の酸素含有量(TO2)を有するセルロースを含む第二の材料(3)を得る。
【0234】
このような材料は固体および/または液体とも組み合わせることができる。例えば、液体は溶液の形であってもよく、固体は微粒子の形であってもよい。液体および/または固体は、微生物、例えば、細菌、および/または酵素を含んでもよい。例えば、細菌および/または酵素は、セルロース材料またはリグノセルロース材料に作用して、燃料、例えば、エタノールまたは副産物、例えば、タンパク質を産生することができる。燃料および副産物は、2006年6月15日に出願された「FIBROUS MATERIALS AND COMPOSITES」USSN 11/453,951に記載されている。前述の各出願の全内容は参照として本明細書に組み入れられる。
【0235】
材料を用いて燃料または副産物を作製する、いくつかの態様において、開始数平均分子量(酸化前)は、約200,000〜約3,200,000、例えば、約250,000〜約1,000,000、または約250,000〜約700,000であり、酸化後の数平均分子量は、約50,000〜約200,000、例えば、約60,000〜約150,000、または約70,000〜約125,000である。しかしながら、いくつかの態様では、例えば、大規模な酸化後には、約10,000未満、さらには約5,000未満の数平均分子量となる可能性がある。
【0236】
いくつかの態様において、第二の酸素含有量は、第一の酸素含有量より少なくとも約5パーセント高く、例えば、7.5パーセント高く、10.0パーセント高く、12.5パーセント高く、15.0パーセント高く、または17.5パーセント高い。いくつかの好ましい態様において、第二の酸素含有量は、第一の材料の酸素含有量より少なくとも約20.0パーセント高い。酸素含有量は、試料を、1300℃またはそれ以上で操作されている炉の中で熱分解することで元素分析によって測定される。適切な元素分析器は、VTF-900高温熱分解炉が付いているLECO CHNS-932分析器である。
【0237】
いくつかの態様において、第一の材料200を酸化しても、セルロースの結晶化度は大幅に変化しない。しかしながら、場合によっては、例えば、極端な酸化の後に、第二の材料のセルロースの結晶化度(TC2)は、第一の材料のセルロースの結晶化度(TC1)より少ない。例えば、(TC2)は、(TC1)より約5パーセント超少なく、例えば、10パーセント、15パーセント、20パーセント、さらには25パーセント少なくてもよい。これは、複合体の曲げ疲労特性の最適化が目標である場合に望ましい場合がある。例えば、結晶化度の低減は破断点伸びを改良することができ、または複合体の衝撃耐性を増強することができる。これはまた、細菌および/または酵素を含む液体などの液体中の材料の溶解度を高めるために望ましい場合がある。
【0238】
一般的に、第一の材料200の酸化は酸化環境で行われる。例えば、酸化は、酸化環境、例えば、空気または空気に富むアルゴンの中で熱分解することによって行われてもよく、助けられてもよい。酸化を助けるために、酸化の前または間に、様々な化学薬品、例えば、酸化剤、酸、または塩基を材料に添加することができる。例えば、酸化前に過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)を添加することができる。
【0239】
他のプロセス
水蒸気爆砕は、本明細書に記載のどのプロセスも用いることなく単独で行われてもよく、本明細書に記載の任意のプロセスと組み合わせて用いられてもよい。場合によっては、スクリュー押出し工程中に、圧力が加えられた蒸気をスクリュー押出機に導入することができる。
【0240】
図23は、繊維源400を、剪断および水蒸気爆砕を含むプロセスによって、エタノールなどの産物450に変換して、繊維材料401を得、次いで、繊維材料401が加水分解および変換、例えば、発酵して、産物を得るプロセス全体の概要を示す。繊維源は、少なくとも一つの剪断プロセスおよび少なくとも一つの水蒸気爆砕プロセスを含む多くの可能な方法によって、繊維材料401に変えることができる。
【0241】
例えば、一選択肢は、繊維源を剪断し、その後に、任意のスクリーニング工程および任意のさらなる剪断工程を行って、剪断された繊維源402を得、次いで、これを水蒸気爆砕して、繊維材料401を得ることができる工程を含む。水蒸気爆砕プロセスの後に、任意で、水蒸気爆砕プロセスに起因する液体または「リカー(liquor)」404を除去する繊維回収プロセスを行う。剪断された繊維源の水蒸気爆砕に起因する材料は、任意のさらなる剪断工程および/または任意のスクリーニング工程によってさらに剪断されてもよい。
【0242】
別の方法では、まず最初に、繊維材料401を水蒸気爆砕して、水蒸気爆砕された繊維源410を得る。次いで、得られた水蒸気爆砕された繊維源を、任意の繊維回収プロセスに供して、液体またはリカーを除去する。次いで、得られた水蒸気爆砕された繊維源を剪断して、繊維材料を得ることができる。水蒸気爆砕された繊維源はまた、一回もしくは複数回の任意のスクリーニング工程および/または一回もしくは複数回の任意のさらなる剪断工程に供されてもよい。繊維源を剪断および水蒸気爆砕して、剪断および水蒸気爆砕された繊維材料を得るプロセスを以下でさらに議論する。
【0243】
剪断または水蒸気爆砕の前に、繊維源を切断して、紙吹雪(confetti)材料の断片または細片にしてもよい。剪断プロセスは、繊維源は、乾燥した状態(例えば、0.25重量%未満の吸収した水を有する)、水和した状態、または材料が水もしくはイソプロパノールなどの液体に部分的にまたは完全に浸した状態でも行うことができる。このプロセスはまた、最適には、乾燥剪断または水蒸気爆砕のさらなる工程を可能にするために、水蒸気爆砕または剪断の後にアウトプットを乾燥させる工程を含んでもよい。剪断、スクリーニング、および水蒸気爆砕の工程は、様々な化学溶液の存在下または非存在下で行うことができる。
【0244】
水蒸気爆砕プロセスでは、繊維源または剪断された繊維源は高圧下で蒸気と接触され、蒸気は、繊維源の構造(例えば、リグノセルロース構造)の中に拡散する。次いで、蒸気は高圧下で凝縮し、それによって、繊維源を「湿らせる」。繊維源の中の水分は、繊維源の中の全てのアセチル基(例えば、ヘミセルロース画分中のアセチル基)を加水分解して、有機酸、例えば、酢酸およびウロン酸が形成する。次に、この酸がヘミセルロースの解重合を触媒して、キシランおよび限られた量のグルカンを放出することができる。次いで、圧力が開放されると、「湿った」繊維源(または剪断された繊維源など)は「爆砕」される。圧力が急激に下がるため、凝縮されていた水分は瞬時に蒸発し、水蒸気の膨張が、繊維源(または剪断された繊維源など)に対して剪断力を発揮する。十分な剪断力があると、繊維源の内部構造(例えば、リグノセルロース構造)が機械的に破壊される。
【0245】
次いで、剪断および水蒸気爆砕された繊維材料は、エタノールなどの有用な産物に変換される。いくつかの態様において、繊維材料は燃料に変換される。繊維材料を燃料に変換する一つの方法は、加水分解によって発酵性糖412を産生させ、次いで、発酵性糖412を発酵させて産物を得る方法である。繊維材料を燃料に変換する他の公知の方法および未知の方法も使用することができる。
【0246】
ある態様では、微生物を組み合わせる前に、繊維材料上にあり得る競合する微生物を全て死滅させるために、剪断および水蒸気爆砕された繊維材料401を滅菌する。例えば、繊維材料は、繊維材料を、放射線、例えば、赤外線、紫外線、または電離放射線、例えば、γ線に曝露することによって滅菌することができる。微生物はまた、化学滅菌剤、例えば、漂白剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)、クロルヘキシジン、またはエチレンオキシドを用いて死滅させることもできる。
【0247】
剪断および水蒸気爆砕された繊維材料を加水分解する方法の一つは、セルラーゼを用いる方法である。セルラーゼは、セルロースを加水分解するように協力作用する酵素の一群である。リグノセルロースバイオマスを発酵性糖に還元する酵素複合体を含有する、市販のAccellerase3 1000も使用することができる。
【0248】
現時点での理解によれば、セルラーゼの成分は、エンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ(セロビオヒドロラーゼ)、およびb-グルコシダーゼ(セロビアーゼ)を含む。2種類またはそれ以上の成分の組み合わせによる加水分解が、個々の成分によって表される活性の総和を超える場合、セルラーゼ成分間の相乗作用が存在する。結晶性セルロースに対するセルラーゼ系(特に、T.ロンギブラキアタム(longibrachiatum)の)一般的に認められたメカニズムとは以下である:エンドグルカナーゼがアモルファス領域の内部β-1,4-グリコシド結合を加水分解し、それにより、露出した非還元末端の数を増加させる。次いで、エキソグルカナーゼが非還元末端からセロビオース単位を切断し、これは、次に、b-グルコシダーゼにより個々のグルコース単位まで加水分解される。立体特異性が異なるエンドグルカナーゼおよびエキソグルカナーゼ双方にはいくつかの立体配置がある。一般に、最適なセルロース加水分解には、種々の立体配置をした成分の相乗作用が必要である。しかしながら、セルラーゼは、セルロースのアモルファス領域を加水分解する傾向がより大きい。結晶化度と加水分解速度の間には直線関係が存在し、それにより、より高い結晶化度指標はより遅い酵素加水分解速度に対応する。セルロースのアモルファス領域は結晶性領域の2倍の速度で加水分解する。剪断および水蒸気爆砕された繊維材料の加水分解は、任意の加水分解バイオマスプロセスによって行うことができる。
【0249】
バイオマスの水蒸気爆砕は、微生物活性および酵素活性を阻害する副産物、例えば、毒物の形成を時として引き起こす。従って、剪断および水蒸気爆砕された繊維材料を燃料に変換するプロセスは、任意で、毒物の一部を沈殿させるために、発酵に先立ってオーバーライミング工程を含む。例えば、水酸化カルシウム(Ca(OH) 2)を加えることによって、剪断および水蒸気爆砕された繊維材料のpHを上昇させてpH10超にすることができ、続いて、H2SO4を加えることによってpHを約5まで下げる工程を行う。次いで、オーバーライミングされた繊維材料を、沈殿を除去することなく、そのまま用いることができる。図23に示すように、剪断および水蒸気爆砕された繊維材料の加水分解の工程の直前に、任意のオーバーライミング工程が行われるが、加水分解工程の後、発酵工程の前に、オーバーライミング工程が行われることも考えられる。
【0250】
一次プロセス
発酵
一般的に、様々な微生物が、バイオマス材料を操作することによって、例えば、バイオマス材料を発酵させることによって、燃料などの多くの有用な産物を産生することができる。例えば、発酵または他のプロセスによって、アルコール、有機酸、炭化水素、水素、タンパク質、またはこれらのいずれかの材料の混合物を産生することができる。
【0251】
微生物は天然微生物でもよく、操作された微生物でもよい。例えば、微生物は、細菌、例えば、セルロース分解細菌、菌類、例えば、酵母、植物、または原生生物、例えば、藻類、原生動物、もしくは菌類様原生生物、例えば、粘菌でもよい。生物が適合する場合、生物の混合物を利用することができる。
【0252】
セルロースを含む材料の破壊を助けるために、1種類または複数の種類の酵素、例えば、セルロース分解酵素を利用することができる。いくつかの態様では、まず最初に、例えば、セルロースを含む材料と酵素を水溶液中で組み合わせることによって、材料を酵素で処理する。次いで、この材料と微生物を組み合わせることができる。他の態様では、セルロースを含む材料、1種類または複数の種類の酵素、および微生物は、例えば、水溶液中で組み合わせることによって、同時に組み合わされる。
【0253】
また、セルロースを含む材料の破壊を助けるために、放射線照射後に、材料を、熱、化学物質(例えば、鉱酸、塩基、もしくは強力な酸化剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウム)、および/または酵素で処理することもできる。
【0254】
発酵の間に、セルロース分解性加水分解または糖化工程から放出された糖は、酵母などの発酵微生物によって、例えば、エタノールまで発酵される。適切な発酵微生物は、グルコース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、オリゴ糖または多糖などの炭水化物を発酵産物に変換する能力を有する。発酵微生物は、サッカロミセス(Sacchromyces)属の種、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Sacchromyces cerevisiae)(パン酵母)、サッカロミセス・ディスタティカス(Saccharomyces distaticus)、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum);クリベロミセス(Kluyveromyces)属、例えば、クリベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)種、クリベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)種;カンジダ(Candida)属、例えば、カンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)およびカンジダ・ブラシカ(Candida brassicae);クラビスポラ(Clavispora)属、例えば、クラビスポラ・ルシタニエ(Clavispora lusitaniae)種およびクラビスポラ・オプンティアエ(Clavispora opuntiae)種;パキソレン(Pachysolen)属、例えば、パキソレン・タンノフィルス(Pachysolen tannophilus)種;ブレタノミセス(Bretannomyces)属、例えば、ブレタノミセス・クラウセニイ(Bretannomyces clausenii)種の株を含む(Philippidis, G.P., 1996, Cellulose bioconversion technology, in Handbook on Bioethanol: Production and Utilization, Wyman,C.E., ed., Taylor & Francis, Washington, DC, 179-212)。特定の態様では、微生物は、ピキア・スチピティス(Pichia stipitis)(NRRL-7124)でもよい。
【0255】
市販の酵母には、Red Star(登録商標)/Lesaffre Ethanol Red (Red Star/Lesaffre, USAから入手可能) 、FALI(登録商標)(Fleischmann's Yeast, Burns Philip Food Inc., USAの一部門から入手可能), SUPERSTART(登録商標)(Alltechから入手可能)、GERT STRAND(登録商標)(Gert Strand AB, Swedenから入手可能)、およびFERMOL(登録商標)(DSM Specialtiesから入手可能)が含まれる。
【0256】
バイオマスをエタノールおよび他の産物に発酵することができる細菌には、例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)およびクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum) (Philippidis, 1996、上記)が含まれる。Leschine et al. (International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 2002, 52, 1155-1160)は、森林の土壌から嫌気性中温性セルロース分解細菌であるクロストリジウム・フィトファーメンタンス(Clostridium phytofermentans)sp. nov.を単離したが、これは、セルロースをエタノールに変換する。
【0257】
バイオマスからエタノールおよび他の産物への発酵は、T.マスラニイ(mathranii)を含むサーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)種およびピキア(Pichia)種などの酵母種などの、ある種の好熱性微生物または遺伝子操作された微生物を用いて行うことができる。T.マスラニイの株の一例は、Sonne-Hansen et al. (Applied Microbiology and Biotechnology 1993, 38, 537-541)またはAhring et al. (Arch. Microbiol. 1997, 168, 114-119)に記載されたA3M4である。
【0258】
発酵または変換のために、酵母およびザイモモナス細菌を用いることができる。酵母の最適pHは約pH4〜5であり、他方、ザイモモナスの最適pHは約pH5〜6である。典型的な発酵時間は26℃〜40℃の範囲の温度で約24〜96時間であるが、好熱性微生物はさらに高い温度を好む。
【0259】
糖化の間にセルロースなどのバイオマスを分解して、グルコースなどのさらに低分子量の炭水化物含有材料にする酵素をセルロース分解酵素またはセルラーゼという。これらの酵素は、相乗的に作用して結晶性セルロースを分解する酵素の複合体でもよい。セルロース分解酵素の例は、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびセロビアーゼ(○-グルコシダーゼ)を含む。セルロース基質は、まず、ランダムな位置でオリゴマー中間体を生産するエンドグルカナーゼによって加水分解される。次に、これらの中間体は、セルロースポリマーの末端からセロビオースを生じさせるセロビオヒドロラーゼなどのエキソ-開裂グルカナーゼに対する基質となる。セロビオースは、グルコースの水溶性○--1,4-結合二量体である。最後に、セロビアーゼはセロビオースを切断して、グルコースを作製する。
【0260】
セルラーゼはバイオマスを分解することができ、真菌または細菌起源のものであってよい。適切な酵素は、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、フミコラ(Humicola)属、フザリウム(Fusarium)属、チエラビア(Thielavia)属、アクレモニウム(Acremonium)属、クリソスポリウム(Chrysosporium)属、およびトリコデルマ(Trichoderma)属由来のセルラーゼを含み、かつフミコラ属、コプリナス(Coprinus)属、チエラビア属、フザリウム属、ミセリオフトラ(Myceliophthora)属、アクレモニウム属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、シタリジウム(Scytalidium)属、ペニシリウム(Penicillium)属、またはアスペルギルス(Aspergillus)属の種(例えば、EP458162)を含み、特に、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)(シタリジウム・サーモフィルム(Scytalidium thermophilum)として再分類された;例えば、米国特許第4,435,307号を参照されたい)、コプリヌス・シネレウス(Coprinus cinereus)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、メリピウス・ギガンテウス(Meripilus giganteus)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、アクレモニウム(Acremonium)種、アクレモニウム・ペルシシナム(Acremonium persicinum)、アクレモニウム・アクレモニウム(Acremonium acremonium)、アクレモニウム・ブラシペニウム(Acremonium brachypenium)、アクレモニウム・ジクロモスポルム(Acremonium dichromosporum)、アクレモニウム・オブクラバタム(Acremonium obclavatum)、アクレモニウム・ピンケルトニエ(Acremonium pinkertoniae)、アクレモニウム・ロセオグリセウム(Acremonium roseogriseum)、アクレモニウム・インコロラタム(Acremonium incoloratum)、およびアクレモニウム・フラタム(Acremonium furatum)から選択された株;好ましくは、種フミコラ・インソレンスDSM 1800、フザリウム・オキシスポルムDSM 2672、ミセリオフトラ・サーモフィラCBS 117.65、セファロスポリウム属の種RYM-202、アクレモニウム属の種CBS 478.94、アクレモニウム属の種CBS 265.95、アクレモニウム・ペルシシナムCBS 169.65、アクレモニウム・アクレモニウムAHU 9519、セファロスポリウム属の種CBS 535.71、アクレモニウム・ブラシペニウムCBS 866.73、アクレモニウム・ジクロモスポルムCBS 683.73、アクレモニウム・オブクラバタムCBS 311.74、アクレモニウム・ピンケルトニエCBS 157.70、アクレモニウム・ロセオグリセウムCBS 134.56、アクレモニウム・インコロラタムCBS 146.62、およびアクレモニウム・フラタムCBS 299.70Hから選択される株によって生産されたものを含む。セルロース分解酵素は、クリソスポリウム(Chrysosporium)属、好ましくは、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)の株から得ることもできる。さらに、トリコデルマ(Trichoderma)属(特に、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、およびトリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii))、好アルカリ性バチルス属(例えば、米国特許第3,844,890号およびEP458162を参照されたい)、ならびにストレプトマイセス属(Streptomyces)(例えば、EP458162を参照されたい)を用いることができる。
【0261】
嫌気性セルロース分解細菌もまた、土壌、例えば、クロストリジウム(Clostiridium)属の新規セルロース分解種であるクロストリジウム・フィトフェルメンタンス(Clostridium phytofermentans)sp. nov.から単離されている(Leschine et. al, International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (2002), 52, 1155-1160を参照されたい)。
【0262】
組換え技術を用いたセルロース分解酵素を用いることもできる(例えば、WO2007/071818およびWO2006/110891を参照されたい)。
【0263】
使用されるセルロース分解酵素は、当技術分野で公知の手法を用いて、適切な炭素源および窒素源ならびに無機塩を含有する栄養培地上での前記微生物株の発酵によって生産することができる(例えば、Bennett, J.W. and LaSure, L. (eds.), More Gene Manipulations in Fungi, Academic Press, CA 1991を参照されたい)。適切な培地は商業的供給業者から入手可能であるか、あるいは(例えば、American Type Culture Collectionのカタログ中の)公表された組成に従って調製することができる。温度範囲ならびに増殖およびセルラーゼ生産に適した他の条件は当技術分野で公知である(例えば、Bailey, J.E., and Ollis, D.F., Biochemical Engineering Fundamentals, McGraw-Hill Book Company, NY, 1986を参照されたい)。
【0264】
セルラーゼによるセルロースの処理は、通常、30℃〜65℃の間の温度で行う。セルラーゼは約3〜7のpHの範囲にわたって活性がある。糖化工程は最大120時間継続することができる。このセルラーゼ酵素の投与は十分に高レベルのセルロース変換を達成する。例えば、適切なセルラーゼ投与量は、典型的には、セルロース1グラムあたり5.0〜50濾紙単位(Filter Paper Unit)(FPUまたはIU)の間である。FPUは標準尺度であり、Ghoseに従って定義および測定される(1987, Pure and Appl. Chem. 59:257-268)。
【0265】
ガス化
供給材料の前処理のために熱分解を使用することに加えて、熱分解は、前処理された供給材料を加工して有用な材料を抽出するのに使用することもできる。特に、ガス化として知られる一種の熱分解を用いて、様々な他の気体産物、液体産物、および固体産物と一緒に燃料ガスを発生させることができる。ガス化を行うために、前処理された供給材料を熱分解チャンバーに導入し、高温、典型的には、700℃またはそれ以上まで加熱する。使用温度は、供給材料の内容および望ましい産物を含む多くの要因によって決まる。
【0266】
ガス化を容易にするために、多量の酸素(例えば、純酸素ガスおよび/または空気として)ならびに蒸気(例えば、過熱蒸気)も熱分解チャンバーに添加される。これらの化合物は多段階反応で炭素含有供給材料と反応して、合成ガス(または「シンガス(syngas)」)と呼ばれるガス混合物を発生する。本質的には、ガス化の間に、限られた量の酸素が熱分解チャンバーに導入されて、一部の供給材料が燃焼して一酸化炭素を形成し、プロセス熱を発生させる。次いで、プロセス熱を用いて、さらなる供給材料を水素および一酸化炭素に変換する第二の反応を促進することがある。
【0267】
全反応の第一の工程において、供給材料を加熱すると、炭化水素ベースの多種多様な化学種を含み得る木炭が産生される。ある特定の揮発性材料(例えば、ある特定の気体炭化水素材料)が発生して、供給材料の全重量を減らすことができる。次いで、反応の第二の工程では、第一の工程において産生された揮発性材料の一部が燃焼反応において酸素と反応して、一酸化炭素および二酸化炭素が発生する。この燃焼反応によって熱が放出され、反応の第三の工程が促進される。第三の工程では、二酸化炭素および蒸気(例えば、水)が、第一の工程において生じた木炭と反応して、一酸化炭素および水素ガスが形成する。一酸化炭素はまた水性ガスシフト反応において蒸気とも反応して、二酸化炭素、さらに水素ガスが形成することもできる。
【0268】
例えば、後の輸送および/または販売のために、ガス化を一次プロセスとして用いて、前処理された原料から産物を直接、作製することができる。代わりに、またはさらに、全加工システム用の燃料を作製するための補助プロセスとして、ガス化を用いることができる。ガス化プロセスを介して発生する、水素に富むシンガスを燃焼させて、例えば、電気および/またはプロセス熱を生じさせることができ、これを加工システム中の他の位置での使用に向けることができる。その結果、全加工システムを少なくとも部分的に自己持続型とすることができる。ガス化の間におよび/またはガス化の後に熱分解油およびガス状の炭化水素ベース物質を含めた多数の他の産物を得ることもでき;所望であれば、これらを分離し、かつ保管または輸送することができる。
【0269】
本明細書において開示される熱分解チャンバーを含め、種々の異なる熱分解チャンバーが前処理供給材料のガス化に適している。特に、前処理された供給材料が蒸気中および酸素/空気中で液化される流動床リアクターシステムは、産物の比較的高い処理量および直接回収を提供する。その後のガス化反応を促進するためのさらなるプロセス熱を生じさせるために、流動床システムにおいて(または他の熱分解チャンバーにおいて)ガス化後に残存する固体木炭を燃焼させることができる。
【0270】
後処理
蒸留
発酵の後、得られた流体を、例えば、「ビア(beer)カラム」を用いて蒸留して、エタノールおよび他のアルコールを水および残留固体の大部分から単離することができる。ビアカラムから出た蒸気は35重量%エタノールであり得、これを精留塔に供給することができる。精留塔から出た、ほぼ共沸性の(92.5%)エタノールと水の混合物を、蒸気相分子ふるいを用いて純粋な(99.5%)エタノールまで精製することができる。ビアカラムの底を三重効用(three-effect)エバポレーターの第1効用に送ることができる。精留塔の還流冷却器はこの第1効用に対して熱を提供することができる。第1効用の後、遠心機を用いて固体を分離し、回転乾燥器中で乾燥することができる。遠心機流出物の一部(25%)を発酵に再利用し、残りを第2効用および第3効用エバポレーターに送ることができる。低沸点化合物の形成を防ぐ廃水処理に対する分離物の割合が小さな、かなりきれいな凝集物として、エバポレーター凝集物のほとんどをプロセスに戻すことができる。
【0271】
廃水処理
廃水処理を用いて、プラント内で再利用するためのプロセス水を処理することによってプラントの補給水要件を最小化する。廃水処理により、エタノール生産プロセスの全効率を改良するのに使用することができる燃料(例えば、スラッジおよびバイオガス)を作製することもできる。例えば、後にさらに詳細に記載するように、スラッジおよびバイオガスを用いて、種々のプラントプロセスで用いることができる蒸気および電気を発生させることができる。
【0272】
廃水をまず、スクリーン(例えば、棒ぶるい)にポンプで通して大きな粒子を除去し、大きな粒子はホッパーに収集される。いくつかの態様では、大きな粒子はごみ埋め立て地に送られる。さらに、または代わりに、以下にさらに詳細に記載するように、大きな粒子を燃焼させて蒸気および/または電気を発生させる。一般に、棒ぶるい上の間隔は1/4インチ〜1インチ間隔(例えば、1/2インチ間隔)である。
【0273】
次いで、廃水は調整槽まで流れ、ここで、滞留時間の間に廃水の有機濃度を均等化する。一般に、滞留時間は8時間〜36時間(例えば、24時間)である。ミキサーを前記槽内に配置して、前記槽の内容物を攪拌する。いくつかの態様では、前記槽全体に配置された複数のミキサーを用いて、前記槽の内容物を攪拌する。ある態様では、ミキサーは、前記槽全体での条件(例えば、廃水濃度および温度)が均一になるように、調整槽の内容物を実質的に混合する。
【0274】
第一のポンプは、水を調整槽から液液熱交換器を通して移動させる。熱交換器から出る廃水が嫌気性処理のために望ましい温度になるように、(例えば、熱交換器を通る流体の流速を制御することによって)熱交換器は制御される。例えば、嫌気性処理のための望ましい温度は40℃〜60℃でもよい。
【0275】
熱交換器から出た後、廃水は一つまたは複数の嫌気性リアクターに入る。いくつかの態様において、各嫌気性リアクター中のスラッジの濃度は廃水中のスラッジの全濃度と同一である。他の態様において、嫌気性リアクター中のスラッジの濃度はは、廃水中のスラッジの全濃度よりも高い。
【0276】
窒素およびリンを含有する栄養液を、廃水を含有する各嫌気性リアクターに計量しながら供給する。栄養液は嫌気性リアクター中のスラッジと反応して、バイオガスが生じ、これは50%メタンを含有し、1ポンドあたりほぼ12,000英国熱量単位すなわちBtuの発熱量を有することができる。バイオガスはベントを通って各嫌気性リアクターを出て、マニフォールドに流入し、ここで、複数のバイオガスストリームを合わせて一つストリームとする。後にさらに詳細に説明するように、コンプレッサーがバイオガスストリームをボイラーまたは燃焼機関まで移動させる。いくつかの態様において、コンプレッサーはまた、バイオガスの単一ストリームを脱硫化触媒に通して移動させる。さらに、または代わりに、コンプレッサーはバイオガスの単一ストリームを沈殿トラップに通して移動させることができる。
【0277】
第二のポンプは嫌気性流出物を嫌気性リアクターから一つまたは複数の好気性リアクター(例えば、活性化スラッジリアクター)に移動させる。嫌気性流出物、スラッジ、酸素(例えば、空気中に含有される酸素)を混合するために、エアレーターが各好気性リアクター内に設けられる。各好気性リアクター内では、嫌気性流出物中の細胞材料が酸化されて、二酸化炭素、水およびアンモニアが発生する。
【0278】
好気性流出物は(例えば、重力を介して)セパレーターまで移動し、ここで、スラッジが処理水から分離される。スラッジの一部は一つまたは複数の好気性リアクターに戻されて、好気性リアクター中のスラッジ濃度が上昇し、それにより、廃水中の細胞材料の好気性分解が容易になる。コンベアは過剰のスラッジをセパレーターから除去する。後にさらに詳細に記載するように、過剰のスラッジは、蒸気および/または電気を発生させるための燃料として用いられる。
【0279】
処理水はセパレーターから沈殿槽までポンプ送液される。処理水全体に分散した固体は沈殿槽の底まで沈降し、引き続いて除去される。水に残存するさらなる固体も除去するために、沈降期間後に、処理水は沈殿槽からポンプ送液されて微細フィルターに通される。いくつかの態様において、塩素を処理水に加えて、病理学的細菌を殺傷する。いくつかの態様において、一つまたは複数の物理-化学分離技術を用いて処理水をさらに精製する。例えば、処理水を、炭素吸着リアクターにポンプ送液することができる。もう一つの例として、処理水を、逆浸透圧リアクターにポンプ送液することができる。
【0280】
廃棄物の燃焼
バイオマスからアルコールが生産されると、プラントの他の部分で用いられる蒸気および電気を発生させるのに有用な種々の副産物ストリームを生じることができる。例えば、副産物ストリームの燃焼から生じた蒸気を蒸留プロセスで用いることができる。もう一つの例として、副産物ストリームの燃焼から生じた電気を用いて、前処理で用いる電子線発振器および超音波トランスデューサーに動力を与えることができる。
【0281】
蒸気および電気を発生させるのに用いる副産物は、プロセス全体を通じて多数の供給源から得られる。例えば、廃水の嫌気性消化により、メタンの多いバイオガス、および少量の廃棄物バイオマス(スラッジ)が生じる。もう一つの例として、蒸留後固体(例えば、前処理および一次処理から残存している、未変換リグニン、セルロース、およびヘミセルロース)を燃料として用いることができる。
【0282】
バイオガスを、発電機に連結された燃焼機関まで迂回させて、発電する。例えば、バイオガスを、火花点火式天然ガスエンジンのための燃料源として用いることができる。もう一つの例として、バイオガスを直接噴射式天然ガスエンジンのための燃料源として用いることができる。もう一つの例として、バイオガスを燃焼タービンのための燃料源として用いることができる。さらに、または代わりに、燃焼機関は電熱併給配置に配置することができる。例えば、燃焼機関からの廃熱を用いて、プラント全体に温水または蒸気を供給することができる。
【0283】
スラッジおよび蒸留後固体を燃焼して、熱交換器を通って流れる水を加熱する。いくつかの態様において、熱交換器を通って流れる水を蒸発および過熱して蒸気とする。ある態様において、この蒸気を前処理リアクター内で、ならびに蒸留および蒸発プロセスにおける熱交換に用いる。さらに、または代わりに、蒸気が膨張して、発電機に連結された多段階蒸気タービンに動力を与える。蒸気タービンから出た蒸気は冷却水で凝縮され、再加熱して蒸気にするために熱交換器に戻される。いくつかの態様において、熱交換器を通る水の流速を制御して、発電機に連結された蒸気タービンから目標電気出力を得る。例えば、水を熱交換器に加えて、蒸気タービンが閾値条件を超えて動作することを確実にすることができる(例えば、タービンは発電機を回すのに十分な速度で回転する)。
【0284】
特定の態様を説明してきたが、他の態様が可能である。
【0285】
一例として、バイオガスは、発電機に連結された燃焼機関まで迂回させると説明されているが、ある態様においては、バイオガスに燃料改質装置を通過させて水素を発生させることができる。次いで、燃料電池により水素を電気に変換する。
【0286】
もう一つの例として、バイオマスはスラッジおよび蒸留後固体とは別に燃焼されると説明されているが、ある態様においては、廃棄物副産物の全てを一緒に燃焼させて、蒸気を発生させることができる。
【0287】
産物/副産物
アルコール
産生されるアルコールは、モノヒドロキシアルコール、例えば、エタノール、またはポリヒドロキシアルコール、例えば、エチレングリコールまたはグリセリンでもよい。産生することができるアルコールの例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、例えば、n-、sec-、もしくはt-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、またはこれらのアルコールの混合物が含まれる。
【0288】
プラントによって産生されるアルコールにはそれぞれ、産業用供給材料として商業的価値がある。例えば、エタノールは、ワニスおよび香料の製造において使用することができる。別の例として、メタノールは、フロントガラスのワイパー用の液体中の成分として用いられる溶媒として使用することができる。さらに別の例として、可塑剤、樹脂、ラッカー、およびブレーキ液の中にブタノールを使用することができる。
【0289】
プラントによって産生されるバイオエタノールは、食品産業および飲料産業において用いられる成分として価値がある。例えば、プラントによって産生されるエタノールは食品用アルコールまで精製することができ、アルコール飲料中の主成分として使用することができる。
【0290】
プラントによって産生されるバイオエタノールには、輸送燃料としての商業的価値もある。エタノールは、火花点火機関の製造業者および所有者からの資本投資(例えば、噴射タイミングの変化、燃料対空気比(fuel-to-air ratio)、および燃料噴射システムの部品)が比較的少なく、輸送燃料として使用することができる。多くの自動車製造業者は、現在、エタノールを85体積%まで含むエタノール/ガソリンブレンドで運転することができるフレックス燃料車(例えば、Chevy Tahoe 4x4の標準装備)を提供している。
【0291】
このプラントによって産生されるバイオエタノールは、プラントの場所が及ばない環境的および経済的な状況を改善するためのエンジン燃料として使用することができる。例えば、このプラントによって産生され、燃料として用いられるエタノールは、人為的な供給源(例えば、交通供給源)からの温室効果ガスの排出を減らすことができる。別の例として、このプラントによって産生され、機関燃料として用いられるエタノールは、油から精製されるガソリンの消費に取って代わることもできる。
【0292】
バイオエタノールは、従来のガソリンより高いオクタン価を有し、従って、火花点火機関の性能を改善するのに(例えば、圧縮比を高くするのに)使用することができる。例えば、火花点火機関に用いられる燃料のオクタン向上剤として働くように、少量(例えば、10体積%)のエタノールをガソリンとブレンドすることができる。別の例として、燃料オクタン価をさらに高め、多量のガソリンの代わりとなるように、多量(例えば、85体積%)のエタノールをガソリンとブレンドすることができる。
【0293】
バイオエタノール戦略は、例えば、DiPardo, Journal of Outlook for Biomass Ethanol Production and Demand (EIA Forecasts), 2002; Sheehan, Biotechnology Progress, 15:8179, 1999; Martin, Enzyme Microbes Technology, 31 :274, 2002; Greer, BioCycle, 61-65, April 2005; Lynd, Microbiology and Molecular Biology Reviews, 66:3, 506-577, 2002; Ljungdahl et al., 米国特許第4,292,406号;およびBellamy, 米国特許第4,094,742号において議論されている。
【0294】
有機酸
産生される有機酸は、モノカルボン酸またはポリカルボン酸を含んでもよい。有機酸の例には、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、オレイン酸、リノール酸、グリコール酸、乳酸、γ-ヒドロキシ酪酸、またはこれらの酸の混合物が含まれる。
【0295】
備蓄食料(Foodstock)
いくつかの態様において、セルロース材料が完全にエタノールに変換される前に、発酵プロセスの全てまたは一部を中断することができる。中間発酵産物は高濃度の糖および炭水化物を含む。これらの中間発酵産物は、ヒト用または動物用の食品の調製に用いることができる。いくつかの態様において、セルロース材料の放射線照射前処理は中間発酵産物を滅菌する(例えば、ヒトの食用に適合させる)。いくつかの態様において、食品として用いる前に中間発酵産物の後処理が必要である。例えば、乾燥器を用いて中間発酵産物から水分を除去して、保管、取扱いを容易にし、および有効期限を延長することができる。さらに、または代わりに、中間発酵産物をステンレス鋼実験室ミルで微細な粒子サイズまで摩砕して、粉様物質を作製することができる。
【0296】
動物用飼料
蒸留粕を、蒸留-脱水プロセスの価値ある副産物に変換することができる。蒸留-脱水プロセスの後、蒸留粕を乾燥させて、材料を保管し、取り扱う能力を向上させることができる。得られた乾燥蒸留粕(DDGS)には、澱粉が少なく、脂肪が多く、タンパク質が多く、繊維が多く、リンが多い。したがって、例えば、DDGSは動物用飼料の供給源として(例えば、乳牛用の飼料源として)、価値を有し得る。その後に、特定のカテゴリーの動物の特定の食餌要件(例えば、ブタ食餌用の消化可能なリジンとリンのバランス)を満たすように、DDGSを栄養添加剤と組み合わせることができる。
【0297】

前記で議論された前処理プロセスは、薬の特性を持つ植物に適用することができる。いくつかの態様において、超音波処理により、薬の特性を持つ植物の薬成分の生物活性および/または生物学的利用性を促進することができる。さらに、または代わりに、放射線照射は、薬の特性を持つ植物の薬成分の生物活性および/または生物学的利用性を促進する。例えば、柳の樹皮の前処理では超音波処理および放射線照射を組み合わせて、サリシンの生産を促進することができる。
【0298】
栄養補助食品
いくつかの態様において、中間発酵産物(例えば、高濃度の糖および炭水化物を含む産物)に添加物を加えて、栄養補助食品を作り出すことができる。例えば、中間発酵産物にカルシウムを添加すると、エネルギーを供給し、かつ骨の強度を改善または維持するのに役立つ栄養補助食品を作り出すことができる。
【0299】
他の態様は添付の特許請求の範囲の中にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスの個々の断片の一つまたは複数の寸法を縮小する工程と、
バイオマスの分子構造を変える処理方法を用いて、バイオマスを処理する工程と
を含む、バイオマスを加工する方法であって、
該縮小する工程および該処理する工程の少なくとも一つは、バイオマスをスクリュー押出しプロセスによって処理する工程を含む、前記方法。
【請求項2】
バイオマスを一次プロセスに供して、産物を形成する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
処理する工程が、放射線照射、超音波処理、熱分解、および酸化からなる群より選択されるプロセスを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
バイオマスの寸法を縮小するために、およびバイオマスの分子構造を変えるために、スクリュー押出しプロセスが用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
スクリュー押出しプロセス中に、バイオマスが化学反応を受ける、請求項1記載の方法。
【請求項6】
一次プロセスが発酵を含む、請求項2記載の方法。
【請求項7】
スクリュー押出しプロセス後に一次プロセスが行われる、請求項2記載の方法。
【請求項8】
処理方法が、組み合わせて用いられる放射線照射および超音波処理を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
処理方法が、電離放射線による放射線照射を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
処理方法が、2種類またはそれ以上の異なる放射線源を用いた放射線照射を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
バイオマスが空気または酸化ガスに富む空気に曝露されると同時に、バイオマスに対して処理方法が行われる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
処理方法が、電子線を照射する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
電子線照射が約10Mrad〜約150Mradの総線量で適用される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
スクリュー押出しプロセス中に処理方法が行われる、請求項1記載の方法。
【請求項15】
バイオマス供給材料の分子構造の変化が、抵抗性レベルの変化、平均分子量の変化、平均結晶化度の変化、表面積の変化、重合度の変化、多孔度の変化、分枝度の変化、グラフトの程度の変化、バイオマスのドメインサイズの変化、およびバイオマスの分子構成の変化からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
バイオマス供給材料を、放射線照射、超音波処理、熱分解、および/または酸化によって処理する工程を含むプロセスによって産生される炭水化物を含む材料を準備する工程と、
供給材料をスクリュー押出しプロセスに供する工程と、
材料と、材料の少なくとも一部を産物に変換する能力を有する微生物を接触させる工程と
を含む、産物を作る方法。
【請求項17】
産物が可燃性燃料を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
微生物が細菌または酵母を含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
変換が、材料を発酵させる工程を含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
スクリュー押出しプロセス中に、バイオマスと化学物質を接触させる工程をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項21】
凍結粉砕によって材料のサイズを縮小する工程をさらに含む、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2012−509163(P2012−509163A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536492(P2011−536492)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/064307
【国際公開番号】WO2010/056940
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(509284598)キシレコ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】