説明

バイオレメディエーションのための方法及びシステム

【課題】 修復のバラツキを低減又は無くし得る、バイオレメディエーションのための方法及び該方法の実施に適したシステムを提供する。
【解決手段】 撹拌槽内に処理対象を収容し、その収容量を計量するステップと、前記処理対象の計量値に見合う量の微生物を、単位量当たりの処理対象中に必要な予め試験により得られた微生物の適正量と前記計量値とに基づいて、前記撹拌槽内の処理対象に供給するステップと、前記撹拌槽内で前記処理対象を撹拌し、前記供給された微生物を処理対象中に分散させるステップと、を含むこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物によって汚染土壌等の処理対象を修復するバイオレメディエーションのための方法及び該方法の実施に適したシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油、有機溶剤、重金属等の土壌汚染物質を微生物によって分解し、環境汚染を修復する技術として、バイオレメディエーション(bio‐remediation:微生物による環境修復技術)が注目されており、バイオレメディエーションを用いた種々のシステムが提案されており、例えば、汚染物質としてのトリクロロエチレンが含まれた高粘性の汚染土を投入用ハッチから投入するとともにこれを気密状態で収容可能な容器と、該容器内の汚染土を攪拌する攪拌手段と、トリクロロエチレンを分解する分解菌を前記容器内に投入する分解菌投入手段と、前記容器内に対して給排気を行う給排気手段としての給気設備及び排気設備とからなる浄化装置(例えば、特許文献1)や、土壌を再利用するために必要な微生物等の各種材料の添加することのできる汚染土壌処理装置(例えば、特許文献2)等が知られている。
【特許文献1】特開2000−254634号公報
【特許文献2】特開2004−202353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のバイオレメディエーションシステムは、汚染土壌等の処理対象の修復度合いにバラツキが生じるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、修復のバラツキを低減又は無くし得る、バイオレメディエーションのための方法及び該方法の実施に適したシステムを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の問題を解決するため、本発明者等は、鋭意研究の結果、上記従来の問題は、土壌等の処理対象に必要な量の微生物が均一に分散されていないことに起因するものであることを見出した。
【0006】
そこで、上記目的を達成するため、本発明に係るバイオレメディエーションのための方法は、撹拌槽内に処理対象を収容し、その収容量を計量するステップと、前記処理対象の計量値(W)に見合う量の微生物(Y)を、単位量当たりの処理対象中に必要な予め試験により得られた微生物の適正量(A)と前記計量値(W)とに基づいて、前記撹拌槽内の処理対象に供給するステップと、前記撹拌槽内で前記処理対象を撹拌し、前記供給された微生物を処理対象中に分散させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
一実施形態において、前記供給される微生物が処理対象中の土着微生物と同種の微生物であり、前記処理対象の計量値に見合う微生物の量(Y)は、処理対象から予めサンプリングした試料中の単位量当たりの土着微生物量(B)を、単位量当たりの処理対象中に必要な予め試験により得られた土着微生物と同種の微生物量の適正量(A)から差し引いた微生物量(A−B)に、前記計量値(W)を乗算することにより算出される。
【0008】
一実施形態において、前記処理対象の計量値に見合う微生物の量(Y)は、前記撹拌槽での撹拌後の処理対象からサンプリングした試料中の単位量当たりの微生物量であって撹拌により死滅した微生物量(Z)に前記計量値(W)を乗算することにより算出される微生物量(Z×W)が更に加算される。
【0009】
また、一実施形態において、DNA量を定量することにより微生物量が求められる。
【0010】
さらに、一実施形態において、前記処理対象が土壌であり、処理前の処理対象の水分を測定するステップと、前記測定された処理前の処理対象の水分と、単位量当たりの処理対象において微生物に必要な予め試験により得られた水分と、処理対象の前記計量値とから、前記撹拌槽内の処理対象に不足する水の量を算出するステップと、該不足する量の水を前記撹拌槽内の処理対象に供給するステップと、を更に有する。
【0011】
また、一実施形態において、処理対象に供給する水中に、微生物の栄養素が含まれる。
【0012】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るバイオレメディエーションのためのシステムは、微生物を貯蔵する微生物タンクと、処理対象を撹拌槽に受け入れて撹拌する撹拌装置と、前記撹拌装置に供給される処理対象の供給量を計量する計量器と、前記微生物タンクから微生物を前記撹拌装置の撹拌槽に供給する微生物供給手段と、前記微生物供給手段によって前記撹拌装置の撹拌槽に供給される微生物の供給量を制御する第1制御部と、前記計量器による計量値に基づいて前記第1制御部を制御し、該計量値に見合う量の微生物を前記撹拌槽内の処理対象に供給する制御装置と、を有することを特徴とする。
【0013】
前記システムは、一実施形態において、水タンクと、前記水タンクから前記撹拌装置の撹拌槽に水を供給する水供給手段と、前記水供給手段によって前記撹拌装置の撹拌槽に供給される水の供給量を制御する第2制御部と、を更に有し、前記制御装置は、前記計量器による計量値に基づいて前記第2制御部をも制御し、該計量値に見合う量の水を前記撹拌槽内の処理対象に供給するように構成される。
【0014】
また、前記システムは、一実施形態において、処理対象の所定量中のDNA量を定量するDNA抽出装置を更に有し、前記制御装置は、該DNA抽出装置の定量結果に基づいて前記第1制御部を制御するように構成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、処理すべき土壌等の処理対象を撹拌槽に収容するとともに、撹拌槽に収容される処理対象の収容量を計量し、撹拌装置内に収容された処理対象の計量値に見合う量の微生物を供給し、撹拌して均一に分散させることで、バラツキの少ない修復を実現し得る。
【0016】
土着微生物と同種の微生物を撹拌槽内の処理対象に供給する場合、処理対象の計量値に見合う微生物の量は、処理対象から予めサンプリングした試料中の単位量当たりの土着微生物量を、単位量当たりの処理対象中に必要な予め試験により得られた土着微生物と同種の微生物の適正量から差し引いた微生物量に、前記計量値を乗算して算出することで、計量値に見合う微生物量の確度が向上し、より効率の良い修復が可能となる。
【0017】
また、処理対象が土壌である場合、予めサンプリングして水分を測定しておき、撹拌槽内の処理対象に不足する水を補給することにより、修復効果が高まる。また、必要に応じて、補給する水に微生物の栄養素を含めておくことで、処理能力を向上させることができる。
【0018】
また、撹拌によって死滅する微生物量を検出し、死滅する微生物量に相当する量の微生物量を撹拌前に投入することにより、撹拌による微生物の減少に左右されることなく、処理対象の量に見合った微生物量を供給し得る。
【0019】
さらに、微生物量は、DNA量を定量して求めることにより、迅速で精度の高い計測が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、以下に図1〜2を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明に係るバイオレメディエーションのためのシステムの一形態を示すである。図1は、汚染土壌を処理対象として浄化処理するためのシステムの例を示している。
【0022】
図1に示されたシステムは、微生物を貯蔵する微生物タンク1と、処理対象を攪拌槽2aに受け入れて撹拌する撹拌装置2と、撹拌装置2に供給される処理対象の供給量を計量する計量器3と、微生物タンク1から微生物を撹拌装置2に供給する微生物供給手段4と、微生物供給手段4によって撹拌装置2に供給される微生物の供給量を制御する第1制御部5と、を備えている。
【0023】
さらに、図1に示すシステムは、微生物の栄養分となる水を貯える水タンク6と、水タンク6から水を撹拌装置2に供給する水供給手段7と、水供給手段7によって撹拌装置2に供給される水の供給量を制御する第2制御部8と、を備えている。
【0024】
撹拌装置2は、2軸式ミキサーであって、撹拌槽2a内に、撹拌翼2bが取り付けられた一対の回転シャフト2cが回転駆動可能に支持されており、撹拌翼2bは、回転シャフト2cの周面に所定角度ピッチ、例えば45°ピッチ、でスパイラル状に取り付けられている。この種のミキサーは、粘度の高い土壌を撹拌するのに適している。
【0025】
計量器3は、重量計であり、重量計としては撹拌装置2の撹拌槽2a内に収容される処理対象を直接又は間接的に計測できるものであれば特に限定されないが、図示の例では、撹拌装置2を吊り下げ、その吊り下げ荷重を計測するロードセルによって、撹拌装置2に投入された処理対象の重量を算出するようになっている。
【0026】
微生物タンク1には、水中に微生物を高濃度で含有させた微生物含有液が収容されている。微生物タンク1には、微生物供給手段4の構成要素である配管4aが接続され、配管4aは撹拌装置2に向けて延設されている。配管4aには、微生物含有液を送り出すための圧送ポンプ4bが介在させられている。
【0027】
微生物タンク1に収容される微生物含有液中には、処理対象の土壌に含まれる汚染物質等に応じた微生物を含有させてある。例えば、処理対象の土壌が石油によって汚染されている場合、微生物含有液中には、石油成分を分解する炭化水素分解菌を含有させることができる。例えば、石油汚染土壌では、油の長鎖ノルマルアルカン成分に対して高分解能を持つAcinetobacter sp.や、長鎖ノルマルアルカンとシクロアルカンの両成分を分解可能なRhodococcus sp.等である。
【0028】
水タンク6には、微生物の活動に必要な水が貯蔵されている。水タンク6に貯えられた水中には、微生物の栄養素を添加しておくことができる。なお、これらの栄養素も、微生物の種類に応じて適宜決定される。水タンク6内の水を撹拌装置2内の撹拌槽2aに供給する水供給手段7が設けられている。水供給手段7は、一端が水タンク6に接続され他端が撹拌装置2に導かれた配管7aと、微生物含有液を送り出すために配管7aに介在させられた圧送ポンプ7bとを備えている。水供給手段7には、水供給量を制御するための第2制御部8が設けられている。
【0029】
図示例において、第1制御部5は電磁弁5bを備え、第2制御部8は電磁弁8bを備えている。制御装置10は、計量器3から計量値の情報を得て、その計量値に基づき、計量値に見合う量の微生物及び水を供給するように第1制御部及び第2制御部を制御する。図示例では、配管4a、7aの各々に流量計5a、8aが設けられ、制御装置10は、流量計5a、8aから流量情報を得て、微生物及び水の供給量を監視し、所定量が供給された時に電磁源5b、8bを閉じる。なお、流量計を省くことができ、その場合は、例えば、制御装置10は、予め設定された時間が経過すると電磁弁5a、8aを閉じるように構成することができる。
【0030】
計量器3の計量値に見合う微生物量は、例えば、以下に説明するように、試験によって決定され得る。
【0031】
微生物の数は、例えば、処理対象の土壌から採取した試料を水に懸濁させ、その懸濁液のシャーレ上に滴下して顕微鏡を用いて数える方法や、採取した試料中のDNA量を定量することにより、DNA量を指標として推定する方法等により、知ることができる。
【0032】
例えば、図2は、DAPI染色による試料の単位重量当たりの微生物量と、試料の単位重量当たりのDNA量との関係(検量線)の一例を示すグラフである。図2に示された関係を用いると、試料土壌中の単位重量当たりの微生物量(cells/g)は、DNA量(μg/g)×1.7×10(以下、微生物量推定式と言う。)と推定することができる。このような検量線は、種々の微生物について各々作成しデータベース化される。
【0033】
そして、微生物の種類、数量、汚染物質の種類等について、処理対象の量(重量)に対する微生物量の適正量を求める試験が予め行われ、それにより処理対象の単位重量当たりの微生物量の適正量が割り出され、データベース化される。処理対象に重量に対して微生物量が適正量であるか否かの判定は、実験による浄化度合い等の処理度合いを調べることによりなされ得る。あるいは、良好な土壌(即ち汚染されていな健全な土壌)、良好な農地(即ち、農作に適した柔らかく肥沃な農地)、良好な活性汚泥水(即ち、処理能力の高い活性汚泥処理槽中の処理水)等の、汚染等の無い良好な処理対象について単位重量当たりの微生物量を予め測定しておくことによっても、処理に適した単位重量当たりの微生物量の適正量を知ることができる。こうして、単位重量当たりの処理対象中の微生物量の適正量(A)が、予め試験により得られる。
【0034】
土着微生物でない新たな微生物を撹拌槽2a内の処理対象に補給する場合、単位重量当たりの処理対象中の微生物量の適正量(A)に、計量器3によって計量された計量値(重量)を乗算すれば、撹拌槽2a内にある処理対象の重量に見合う量の微生物量を知ることができる。そして、制御装置10は、処理対象の重量に見合う適正量の微生物を供給するように第1制御部5を制御する。なお、制御装置10は、計量値を計量器3から通信手段を介して自動的に取得するように構成されていることが好ましいが、手動入力により取得するように構成されていても良い。さらに、制御装置10は、適正量(A)に関する情報をデータベースから参照し、図示しない演算部において適正量(A)に計量値を乗算する演算を行い、演算結果に基づき、第1制御部5を制御し得る。
【0035】
土着微生物と同種の微生物を撹拌槽2a内の処理対象に補給する場合であって、処理対象となる土壌等の汚染の程度が高く、土着微生物の生息数が低いと考えられる場合は、上記の新規微生物を補給する場合と同様の方法、即ち、単位重量当たりの処理対象中の微生物量の適正量(A)に、計量器3によって計量された計量値(重量)を乗算した量の、土着微生物と同種の微生物を補給することができる。
【0036】
また、土着微生物と同種の微生物を撹拌槽2a内の処理対象に補給する場合であって、処理対象となる土壌等の汚染の程度が低く、かなりの数の土着微生物が生存していると考えられる場合は、処理対象から処理前に予めサンプリングした試料中の微生物量を調べ、不足する量の微生物を補充するようにしても良い。
【0037】
例えば、予め得られた単位重量当たりの処理対象中の微生物量の適正量(A)から、処理対象である土壌から予めサンプリングした試料中の単位重量中の微生物量であって上記微生物量推定式に基づき得られた微生物量(B)を、差し引いて、処理対象である土壌に不足する単位重量当たりの微生物量(C)を算出し、撹拌装置2内に収容された処理されるべき土壌の総重量(W)に前記微生物量(C)をかけ算することにより、撹拌槽2a内に供給された処理対象に不足する微生物量、即ち処理対象の重量に見合う微生物量(Y)が算出される。こうして算出された微生物量(Y)を含む微生物含有液が、制御装置10の制御下に、微生物タンク1から微生物供給手段4及び第1制御部5を通じて、撹拌装置2の撹拌槽2a内に供給される。単位重量中の微生物量は、少ないと汚染物質を十分に分解することができず、また、逆に多いと費用対効果が悪化する等のため、理想的な数の微生物を処理対象中に投与することで、最適処理が図られる。
【0038】
さらに、撹拌槽2a内での撹拌条件等により一部の微生物が死滅する場合があるため、撹拌装置2から排出される処理対象を適宜サンプリングし、当該試料中の単位重量当たりの微生物量を計測し、試料単位重量あたりの撹拌によって死滅した微生物量(撹拌槽投入時に比較して減少した微生物量)を算出し、その算出した値に計量値を乗算することにより、撹拌による死滅する微生物量を、次処理以降、撹拌前の処理対象に予め追加して供給することもできる。
【0039】
水タンク6から撹拌槽2a中の処理対象に供給される水の量についても、単位重量当たりの処理対象中に必要な水の量は、上記微生物量の場合と同様にして、即ち、実験又は健全な土壌等の測定等の試験により予めデータが得られ、データベース化される。予め処理対象からサンプリングした試料中の水分率を測定しておき、前記データベース化されたデータを基に、処理対象に不足する水の量を算出することができる。水分率測定は、公知の水分センサーを使用できる。
【0040】
同様に、水に添加される微生物のための栄養素についても、処理対象の種類、処理目的、微生物の種類等に応じて、単位重量中に必要な栄養素の量が予め試験によって得られ、データベース化される。
【0041】
上記のようにして得られた微生物量、水量、栄養素量、検量線等に関するデータベースに基づき、制御装置10は、上記したように、第1制御部5及び第2制御部8を制御する。制御装置10は、これらのデータベースを内蔵することができる。制御装置10は、計量器3とデータ通信可能に構成することができ、単位重量中の微生物の適正量に関するデータ、及び、計量器3により計量された撹拌槽2a中の処理対象の重量に関する計量データを受け取り、さらに前記データベースから必要なデータを取り出して演算処理し、処理対象に見合う微生物量、水量、栄養素量を算出し、該算出結果に基づいて第1制御部5及び第2制御部8に制御するように構成することができる。
【0042】
こうして撹拌装置2の撹拌槽2a内に収容された処理対象である土壌は、不足する量の微生物、水、栄養素が供給された後、撹拌装置2の駆動下、撹拌される。所定時間撹拌した後、処理対象は撹拌槽から運び出され、養生スペースに積まれて養生に供される。なお、撹拌時間は、土壌の種類にもよるが、長すぎると微生物が死んでしまうことがあるため、30分以下程度であることが好ましい。なお、本システムにより、粘土質土壌のように比較的撹拌されにくい土壌であっても、数分で十分に撹拌できることが確認されている。また、撹拌による物理的ショックにより微生物が死ぬ場合があるため、微生物が出来るだけ耐え得る撹拌速度で撹拌することが望ましい。
【0043】
図3は、他の実施形態の概要を示すシステム構成図である。図3のシステムは、DNA量を定量するためのDNA抽出装置11が配置されている。DNA抽出装置は、公知の装置を使用することができ、例えば、特開2004−337027号に開示された装置を使用することができる。DNA抽出装置11は、制御装置10とデータ通信可能に接続されることができるが、分離した状態、即ち、データ通信不能に配置することもできる。
【0044】
DNA抽出装置11によって得られたDNA定量値に関する情報に基づき、制御装置10は、微生物量処理対象に必要な微生物量を算出し、該算出結果に基づいて第1制御部5を制御するように構成され得る。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、汚染土壌を浄化する例について説明したが、痩せた農地の肥沃な土地への改良、都市ゴミや下水汚泥などを発酵腐熟させた肥料(コンポスト)の製造、活性汚泥処理等にも適用可能である。
【0047】
また、撹拌装置は、処理対象に応じて種々の形式のものを採用することができ、パドル、リボン、スクリュー等の適宜形状を有する撹拌翼を採用したミキサー、ニーダー、アジテーター等の撹拌槽が固定で撹拌翼を回転駆動する形式、或いは、撹拌槽自体が回転する容器回転形の形式、若しくは、それらを組み合わせたものの他、例えば、活性汚泥処理装置の曝気槽でエアレーションにより撹拌するもの等を採用することができる。
【0048】
さらに、微生物タンクには、液体に限らず、システムの用途等に応じて、微生物を高濃度で混入させた土、硅砂に微生物を土着させた製剤のような粉末状のもの、或いは活性汚泥(フロック)等を収容する構成とすることもでき、微生物供給手段は、微生物タンクへの収容対象を適切に搬送し供給し得る、例えばスクリューコンベア等の公知の供給手段を採用することができる。
【0049】
また、処理対象が液状をしている場合には、計量器として重量計に代えて流量計を採用し、処理対象の体積を計量し、体積値に基づいて、供給する微生物量を制御することもできる。
【0050】
また、処理対象の土壌が既に十分な量の水分を含んでいる場合、或いは処理対象が水分を必要としない場合等には、水タンクを省略することもでき、栄養素を既に含んでいる場合や栄養素を必要としない場合等には栄養素の添加を省くこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係るシステムの一実施形態を示す構成図である。
【図2】DAPI法による微生物量とDNA量との関係を示すグラフである。
【図3】本発明に係るシステムの他の実施形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1 微生物タンク
2 撹拌装置
2a 攪拌槽
3 計量器
4 微生物供給手段
5 第1制御部
6 水タンク
7 水供給手段
8 第2制御部
10 制御装置
11 DNA抽出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌槽内に処理対象を収容し、その収容量を計量するステップと、
前記処理対象の計量値に見合う量の微生物を、単位量当たりの処理対象中に必要な予め試験により得られた微生物の適正量と前記計量値とに基づいて、前記撹拌槽内の処理対象に供給するステップと、
前記撹拌槽内で前記処理対象を撹拌し、前記供給された微生物を処理対象中に分散させるステップと、
を含むことを特徴とする、バイオレメディエーションのための方法。
【請求項2】
前記供給される微生物が処理対象中の土着微生物と同種の微生物であり、前記処理対象の計量値に見合う微生物の量は、処理対象から予めサンプリングした試料中の単位量当たりの土着微生物量を、単位量当たりの処理対象中に必要な予め試験により得られた土着微生物と同種の微生物の適正量から差し引いた微生物量に、前記計量値を乗算することにより算出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理対象の計量値に見合う微生物の量は、前記撹拌槽での撹拌後の処理対象からサンプリングした試料中の単位量当たりの微生物量であって撹拌により死滅した微生物量に前記計量値を乗算することにより算出される微生物量が更に加算されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
DNA量を定量することにより微生物量を求めることを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記処理対象が土壌であり、
処理前の処理対象の水分を測定するステップと、
前記測定された処理前の処理対象の水分と、単位量当たりの処理対象において微生物に必要な予め試験により得られた水分と、処理対象の前記計量値とから、前記撹拌槽内の処理対象に不足する水の量を算出するステップと、該不足する量の水を前記撹拌槽内の処理対象に供給するステップと、を更に有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記処理対象に供給する水中に、微生物の栄養素が含まれていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
微生物を貯蔵する微生物タンクと、
処理対象を撹拌槽に受け入れて撹拌する撹拌装置と、
前記撹拌装置に供給される処理対象の供給量を計量する計量器と、
前記微生物タンクから微生物を前記撹拌装置の撹拌槽に供給する微生物供給手段と、
前記微生物供給手段によって前記撹拌装置の撹拌槽に供給される微生物の供給量を制御する第1制御部と、
前記計量器による計量値に基づいて前記第1制御部を制御し、該計量値に見合う量の微生物を前記撹拌槽内の処理対象に供給する制御装置と、
を有することを特徴とする、バイオレメディエーションのためのシステム。
【請求項8】
水タンクと、前記水タンクから前記撹拌装置の撹拌槽に水を供給する水供給手段と、前記水供給手段によって前記撹拌装置の撹拌槽に供給される水の供給量を制御する第2制御部と、を更に有し、前記制御装置は、前記計量器による計量値に基づいて前記第2制御部をも制御し、該計量値に見合う量の水を前記撹拌槽内の処理対象に供給するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
処理対象の所定量中のDNA量を定量するDNA抽出装置を更に有し、前記制御装置は、該DNA抽出装置の定量結果に基づいて前記第1制御部を制御するように構成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−296094(P2008−296094A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142551(P2007−142551)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【Fターム(参考)】