説明

バイオ浄化循環システムトイレ

【課題】 生分解性プラスチック板の補充・交換作業が容易にできるバイオ浄化循環システムトイレを提供する。
【解決手段】 生分解性プラスチック板18が格納された格納ケース11は、一対のレール33を備え、そのレール33が,生物処理槽の仕切壁に設けられた一対のガイドレール60に案内されるので、格納ケース11を略垂直上方に引き上げ可能となる。また、格納ケース11の左側面および右側面には、揺動可能に軸支された掛け止め具35,36が設けられ、それらを略水平方向にした状態で、曝気槽6bの上縁部66に掛け止めできる。よって、格納ケース11を、曝気槽6bの上部に保持したまま、生分解性プラスチック板18の補充・交換ができる。さらに、格納ケース11を汚泥から全て引き出さなくてもよいので、作業者の労力負担を軽減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオ浄化循環システムトイレに関し、詳細には微生物により汚水を浄化するバイオ浄化循環システムトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバイオ浄化循環システムトイレによれば、水洗便器から排出された汚水は、まず生物処理槽で微生物によって有機物分解、硝化および脱窒処理された後、ろ過槽で固液分離される。そして、固液分離されたろ過水は、脱色槽に供給され、オゾンによる脱色処理がおこなわれ、水洗便器の洗浄水として再度使用される。このようなバイオ浄化循環システムトイレでは、し尿の有機物分解ができても、窒素除去は汚水の性状によっては不十分な場合がある。特に窒素分が有機物に比べて過剰である場合は、窒素除去が不十分となりやすく、生物処理槽内での処理に悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、トイレの使用頻度が低くなると、生物処理槽内での微生物活性を保持するために必要な有機物が不足するため、汚水中の窒素除去が不十分となることがある。よって、汚泥中における微生物活性を維持するため、微生物活性に必要な有機物の不足分を汚泥内に適宜添加するのが一般的である。例えば、生物処理槽の内壁面に、微生物により分解される生分解性プラスチック板を格納する格納ケースを固定し、微生物活性を維持するために必要な有機物を常時確保できる汚水浄化装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−105802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の汚水浄化装置では、格納ケース内の生分解性プラスチック板の補充・交換を定期的におこなうが、格納ケースが汚泥中に浸漬しているため、その交換作業の際には、生物処理槽から汚泥を抜いて水位を下げ、格納ケースを露出させてから交換しなければならず、作業に多大の労力が必要となる問題点があった。さらに、大型の槽になると底が深くなるため、汚泥を抜く量が多くなるとともに、ケース内に格納する生分解性プラスチック板の枚数も多くなり、補充・交換作業がさらに困難になるという問題点もあった。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、生分解性プラスチック板の補充・交換作業が容易にできるバイオ浄化循環システムトイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係るバイオ浄化循環システムトイレによれば、水洗便器からの汚水を受け入れ、微生物を用いて当該汚水中の有機物を分解するとともに、硝化および脱窒処理する生物処理槽と、当該生物処理槽内に浸漬され、前記微生物により分解される生分解性プラスチック板を格納するとともに、前記生物処理槽の内壁面に設けられた一対のガイドレールに沿って略垂直方向に引き上げ可能に支持された略直方体状の格納ケースとを備えたバイオ浄化循環システムトイレにおいて、前記格納ケースの上下方向に平行な一対の稜線に沿って設けられ、前記一対のガイドレールに案内される一対のレールと、前記格納ケースの左側面および右側面の上部側に各々設けられるとともに、上下方向に揺動可能に軸支され、下端部が引き上げられると上端部が下方に回動して略水平状態となり、前記格納ケースの引き上げ時に前記生物処理槽の上縁に掛け止めされる一対の掛け止め具と、前記格納ケースの前面および背面に各々突設され、回動する前記掛け止め具の前記上端部が当接して、前記掛け止め具を略水平状態に停止させる一対の係止突起と、前記格納ケースの上部の左右側に各々接続され、前記格納ケースを引き上げるための一対の引き上げ部材とを備え、前記格納ケースの引き上げ時において、一対の前記掛け止め具を略水平状態に各々停止させ、前記掛け止め具の下端部側を、前記生物処理槽の前記上縁に各々掛け渡すことにより、前記格納ケースを引き上げ位置に保持することを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係るバイオ浄化循環システムトイレによれば、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記引き上げ部材は、チェーンで構成され、上下方向に対して段組みがなされた略はしご状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に係るバイオ浄化循環システムトイレによれば、格納ケースに設けられた一対のレールが、生物処理槽の内壁面に設けられた一対のガイドレールに沿って、略垂直上方に案内されるので、格納ケースの引き上げ時に、格納ケースが汚泥内で倒れるのを防止できる。また、掛け止め具の下端部を引き上げて回動させ、略水平状態に保持することにより、生物処理槽の上縁に掛け止め具を掛け止めして、格納ケースを引き上げ位置に保持できるので、生物処理槽から汚泥を抜く必要がなくなる。さらに、格納ケースは、槽内からケース全体を引き上げることなく、汚泥内に一部が浸漬している状態で保持されるため、その浮力により、格納ケースを引き上げる力が少なくてすみ、作業者の労力負担を大幅に軽減することができる。さらに、格納ケースの上部の左右側に設けられた一対の引き上げ部材を引き上げることにより、格納ケースのバランスが保たれるので、格納ケースを安全に引き上げることができる。
【0008】
また、請求項2に係るバイオ浄化循環システムトイレによれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、チェーンで構成された引き上げ部材が略はしご状に形成されているので、格納ケースの引き上げ時において、作業者は、そのはしごの段組みを順に手繰り寄せることにより、格納ケースを容易に引き上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態であるバイオ浄化循環システムトイレ1について、図面に基づいて説明する。図1は、バイオ浄化循環システムトイレ1の構成を示すブロック図であり、図2は、バイオ浄化循環システムトイレ1の構成を示す模式図であり、図3は、格納ケース11の斜視図であり、図4は、格納ケース11の正面図であり、図5は、図4に示すA−A’線矢視方向断面図であり、図6は、格納ケース11が曝気槽6bに浸漬された状態を示す斜視図であり、図7は、格納ケース11が曝気槽6bの引き上げ位置に保持された状態を示す斜視図であり、図8は、図7に示す格納ケース11を正面から見た図であり、図9は、図8に示すB−B’線矢視方向断面図である。なお、図6および図7では、紙面手前側を、曝気槽6bの前面側とする。
【0010】
本実施形態のバイオ浄化循環システムトイレ1は、図1に示す生物処理槽6に浸漬された格納ケース10,11の引き上げを容易にしたことで、ケース内に格納された生分解性プラスチック板18(図3参照)の交換・補充作業にかかる労力負担を軽減できることに特徴を有する。
【0011】
はじめに、バイオ浄化循環システムトイレ1の概略構成について説明する。図1に示すように、バイオ浄化循環システムトイレ1は、水洗便器5と、当該水洗便器5の汚水に含まれる有機物を分解すると共に、硝化および脱窒処理をおこなう生物処理槽6と、当該生物処理槽6で処理された一次処理水(生物処理された処理水、汚泥を含む)の固液分離をおこなうろ過槽7と、当該ろ過槽7で固液分離されたろ過水のオゾンによる酸化・脱色処理をおこなう脱色槽8と、当該脱色槽8で脱色された処理水を、再度洗浄水として水洗便器5に循環させるポンプ12とを主体として構成されている。また、ろ過槽7には、ろ過処理で残存する残留高濃度汚泥を生物処理槽6に返送する汚泥返送管44が配設されている。さらに、脱色槽8には、脱色槽8からオーバーフローする余剰分の処理水を生物処理槽6に返送する余剰水返送管47が配設されている。
【0012】
また、生物処理槽6には、槽内に空気を送給(曝気)するブロワー25,26が設けられ、ろ過槽7にも、ブロワー27が設けられている。さらに、生物処理槽6の槽内には、微生物によって分解される生分解性プラスチック板18(図3参照)を格納する格納ケース10,11が浸漬されている。また、ろ過槽7には、一次処理水のろ過をおこなうろ過装置32と、槽内の一次処理水のpHを検出するpHセンサ28が設けられている。また、脱色槽8には、ろ過水の脱色に利用されるオゾンを生成するオゾン発生装置9が設けられている。さらに、バイオ浄化循環システムトイレ1には、ろ過槽7に貯留された一時処理水のpHの変動に応じて、ブロワー26による生物処理槽6への空気送給量を制御して、生物処理槽6での硝化・脱窒反応のバランスを調整する制御装置15が設けられている。
【0013】
なお、生物処理槽6でおこなわれる硝化・脱窒反応は、好気性菌である硝化菌の活性と、嫌気性菌である脱窒菌の活性とのバランスによって調整される。このバランスが偏ると、汚泥のpHが変動する。例えば、脱窒菌の活性が低くなると、汚泥内に亜硝酸および硝酸が蓄積されるので、汚泥のpHは低下する。それとは反対に、硝化菌の活性が低いと、汚泥内にアンモニアが蓄積されるので、汚泥のpHは上昇する。そこで、本実施形態のバイオ浄化循環システムトイレ1では、ろ過槽7に貯留する一次処理水のpHを検出し、その検出結果に基づいて、制御装置15が曝気槽6b内の汚泥の曝気量を調整する。これにより、硝化菌の活性および脱窒菌の活性とのバランスが調整され、生物処理槽6での硝化・脱窒効果が維持される。
【0014】
次に、生物処理槽6について説明する。生物処理槽6では、汚泥中の微生物によって、汚水中の有機物分解、硝化および脱窒処理がおこなわれ、一次処理水が生成される。図2に示すように、生物処理槽6は、汚水中のアンモニアを硝化処理して硝酸に変換する曝気槽6bと、当該曝気槽6bで硝化処理された硝酸を脱窒処理して窒素ガスに変換する嫌気槽6aとから構成されている。さらに、その槽の間は仕切壁16によって仕切られ、その仕切壁16の下部には、嫌気槽6aと曝気槽6bとを連通させる連通口16a,16a(図7参照)が設けられている。なお、図2に示す仕切壁16が、「内壁面」に相当する。
【0015】
また、嫌気槽6aの汚水が流入する側の内壁面61には、汚水中の異物を除去する除去スクリーン2が設けられている。さらに、嫌気槽6aの底部には、ブロワー25に接続され、槽内に空気を送給する散気管25a,25bが設けられている。一方、曝気槽6bの底部には、ブロワー26に接続された散気管26aが設けられている。さらに、曝気槽6bの底部には、曝気槽6bに貯留された一次処理水を汲み上げ、ろ過槽7に供給する水中ポンプ17が設けられている。
【0016】
そして、仕切壁16の両面には、略直方体の筒状である格納ケース10,11が各々設けられ、嫌気槽6aおよび曝気槽6b内に浸漬された状態となっている。これら格納ケース10,11の内側には、微生物により分解可能な生分解性プラスチック板18(図3参照)が複数枚(例えば、10枚)格納されている。この生分解性プラスチック板18は、微生物が必要とする汚泥中の有機物が不足する場合に、微生物によって分解される。これにより、微生物が資化源として利用できる最低濃度の有機物濃度を汚泥内に確保することができるので、硝化・脱窒効果を低下させることなく維持することができる。このような生分解性プラスチック板18は、微生物によって分解されるため、定期的な補充・交換が必要である。そこで、これら格納ケース10,11は、仕切壁16の両面に各々設けられた一対のガイドレール60,60(図6参照)に沿って、略垂直方向に引き上げることができ、その引き上げ構造が本発明の特徴である。なお、これら格納ケース10,11の引き上げ構造の詳細に関しては後述する。
【0017】
次に、ろ過槽7について説明する。図2に示すように、ろ過槽7には、槽内に貯留された一次処理水のpHを検出するpHセンサ28が設けられている。また、ろ過槽7の底部には、ブロワー27に接続された散気管27aが設けられている。そして、ろ過槽7には、槽内に貯留された一次処理水の固液分離をおこない、ろ過水を脱色槽8に供給するろ過装置32が設けられている。このろ過装置32の内部には、複数のろ過膜が保持され、一次処理水がそれらろ過膜を通過することにより、汚泥や異物等を含まないろ過水が生成される。ここで、ろ過槽7の水位は、脱色槽8の水位よりも高く調整されているので、これら2槽の間には、その水位差に起因する水頭圧差が生じる。よって、ろ過槽7に貯留する一次処理水は、ろ過装置32内に自然に流入し、当該ろ過装置32のろ過膜を通過したろ過水は、脱色槽8に自然に供給される。一方、ろ過装置32によって分離され、槽内に残存する残留高濃度汚泥は、汚泥返送管44を介して、再度生物処理槽6(曝気槽6b)に返送される。
【0018】
次に、脱色槽8について説明する。図2に示すように、脱色槽8の底部には、オゾン発生装置9に接続された散気管9aが設けられている。そして、オゾン発生装置9で生成されたオゾンは、散気管9aから槽内に貯留されたろ過水中に送出されることにより、槽内のろ過水がオゾン曝気される。これにより、ろ過水中の色度成分が、オゾンの酸化作用によって分解され、黄味がかったろ過水が無色透明に脱色される。なお、脱色槽8での脱色処理はオゾンに限らず、例えば、活性炭による吸着効果を利用して脱色してもよい。また、脱色槽8には、槽からオーバーフローする余剰分の処理水(脱色されたろ過水)を、生物処理槽6に返送する余剰水返送管47が接続されている。
【0019】
次に、本発明の特徴である格納ケース10,11の引き上げ構造について説明する。なお、本実施形態のバイオ浄化循環システムトイレ1は、上述したように、2つの格納ケース10,11を備えており、それらのケース構造および引き上げ構造は同じである。そのため、ここでは、格納ケース11の引き上げ構造のみを説明し、格納ケース10については説明を省略する。
【0020】
はじめに、格納ケース11の構造について説明する。図3に示すように、格納ケース11は、略直方体の筒状に形成されている。さらに、筒状の格納ケース11は、前面21、左側面22、右側面23および背面24によって構成され、その上面および底面が開口して互いに上下に挿通している。さらに、格納ケース11の内側には、生分解性プラスチック板18を最大10枚まで格納できる格納部屋14が設けられている。そして、図4に示すように、その格納部屋14において、左側面22および右側面23の各内壁面の下段よりもやや上側には、断面略L字型のアングルである板載せ台19,19が固定され、略水平に延設されている。この板載せ台19,19は、一片が左側面22および右側面23の各内壁面に固定され、他片が格納部屋14の内側に向かって略水平に延設されている。
【0021】
そして、生分解性プラスチック板18は、格納ケース11の上面の開口部から格納部屋14内に差し込まれる。さらに、その生分解性プラスチック板18の下部の両隅が、その板載せ台19,19上に載置されることにより、生分解性プラスチック板18が格納部屋14内に保持される。そして、格納部屋14内では、生分解性プラスチック板18は、前面21および背面24に対して平行に立てられた状態で格納されている。また、格納部屋14内において、生分解性プラスチック板18の下部は、板載せ台19,19上に載置されることにより、曝気槽6bの底部に接触しない。これにより格納部屋14を通過する汚泥の流れが遮断されないようになっている。
【0022】
さらに、図3に示すように、格納ケース11の前面21および背面24の上縁部には、水平梁部40,41が設けられている。そして、これら水平梁部40,41の長手方向両端部近傍には、後述する押さえ板30,31が固定されるための梁部側固定穴(図示外)が各々穿設されている。さらに、水平梁部40,41の長手方向両端部よりもやや中央には、後述するチェーン71,72(図6参照)が各々固定されるリング部43,43が各々設けられている。
【0023】
また、図3乃至図5に示すように、左側面22における背面24側の稜線には、断面略L字型のレール33がその稜線に沿って設けられている。一方、右側面23における背面24側の稜線にも、断面略L字型のレール34が設けられている。そして、図5に示すように、このレール33,34は、背面24よりも後方側の位置に直角の折り返し部があり、それら先端は、各々離反する方向に平行に延設されている。また、図3に示すように、左側面22上部の角部には、略L字型の押さえ板30が被せられ、水平梁部40,41の各端部に掛け渡されて固定されている。一方、右側面23上部の角部にも、略L字型の押さえ板31が被せられ、水平梁部40,41の各端部に掛け渡されて固定されている。
【0024】
なお、これら押さえ板30,31の長手方向両端部には、水平梁部40,41に穿設された梁部側固定穴(図示外)に対応する板側固定穴(図示外)が各々穿設されている。これにより、押さえ板30,31が、水平梁部40,41に掛け渡された状態で、これら固定穴を対向させ、蝶ネジ37をそれぞれ差し込んで締めつけることにより、押さえ板30,31が水平梁部40,41に固定される。この押さえ板30,31は、格納部屋14に格納された生分解性プラスチック板18がケース内から浮いてこないように、上から押さえて保持するものである。
【0025】
また、図3乃至図5に示すように、格納ケース11の左側面22の上部には、格納ケース11の左側に対して、上下に揺動可能に軸支され、曝気槽6bの上縁部66(図6参照)に掛け止めされる略コの字型の掛け止め具35が設けられている。一方、格納ケース11の右側面23の上部には、格納ケース11の右側に対して上下方向に揺動可能に軸支され、曝気槽6bの上縁部66に掛け止めされる略コの字型の掛け止め具36が設けられている。そして、これら一対の掛け止め具35,36により、格納ケース11を、曝気槽6bの上部の引き上げ位置に引き上げて保持することができる。なお、掛け止め具35、36の構造の詳細に関しては後述する。
【0026】
そして、図3に示すように、前面21の下端部の略中央には、曝気槽6b内の汚泥を、格納部屋14内に流通させるための汚泥流通口13が、略長方形状の切り欠き状に設けられている。このため、格納ケース11が、曝気槽6bの底部に密着して載置されても、その汚泥流通口13を通して格納部屋14内に汚泥を流通させることができる。さらに、図3乃至図5に示すように、前面21および背面24において、掛け止め具35,36と同じ高さ位置であって、左側面22側および右側面23側には、回動する掛け止め具35の上端部(後述する当接端部46,56)を係止して、掛け止め具35,36を各々略水平状態に保持するための凸部38,39が各々凸設されている。なお、図3に示す凸部38,39が、「係止突起」に相当する。
【0027】
次に、掛け止め具35,36の構造について説明する。図3に示すように、掛け止め具35は、略コの字型の掛け片35aと、当該掛け片35aの互いに対向する一対の片の長手方向略中間位置に渡設され、掛け片35aが回動する軸心となる軸部35bと、左側面22の上段よりもやや下側に固定され、略水平に軸心が向けられた軸部35bの長手方向両端部近傍を把持することにより、軸部35bの軸受けとなる一対の軸受け片35c,35cとで構成されている。
【0028】
そして、掛け片35aの、略コの字型の開口する側が上方向に向けられると、掛け止め具35が「格納状態」となる。それとは反対に、図4および図5に示すように、掛け片35aが略水平状態に保持されると、掛け止め具35が「引出状態」となる。さらに、掛け止め具35の格納状態において、掛け片35aの下端部となる水平部分が、掛け止め具35を操作する取っ手部45となる。一方、掛け片35aの上下方向に直立する一対の片の各上部が、掛け片35aの回動時に、凸部38,38に当接する当接端部46,46となる。
【0029】
また、図3および図5に示すように、掛け片35aの開口する各端部間の距離は、左側面22の幅よりもやや広くなるように調整されているため、掛け片35aが回動しても、当接端部46,46が左側面22の面に衝突しない。さらに、掛け片35aの回動時に、掛け片35aの背面24側の当接端部46が、レール33に衝突するのを避けるために、レール33における当接端部46の回動する軌道上には、当接端部46の回動穴33aが設けられている。これにより、掛け片35aの回動時には、当接端部46が回動穴33aを通過して、背面24側の凸部38に当接できるようになっている。
【0030】
なお、掛け止め具36の構造については、掛け止め具35の構造と同じである。図4および図5に示すように、掛け止め具36も、略コの字型の掛け片36aと、軸部36bと、一対の軸受け片36c,36cとで構成されている。そして、掛け止め具36の格納状態において、掛け片36aの下端部となる水平部分が、掛け止め具36を操作する取っ手部55となる。一方、掛け片36aの上下方向に直立する一対の片の各上部が、掛け片36aの回動時に、凸部39,39に当接する当接端部56,56となる。
【0031】
次に、上記構成からなる格納ケース11の曝気槽6bへの設置方法について説明する。図6に示すように、仕切壁16の曝気槽6b側の面において、仕切壁16の左右両端部のその上下部分を除く略中段には、一対のガイドレール60,60がその端部に沿って設けられている。このガイドレール60は、平面視略帯状の第1ガイド片60aと、当該第1ガイド片60aの長手方向に直交する方向の一端部から略垂直に立設された第2ガイド片60bと、当該第2ガイド片60bの、第1ガイド片60a側の一端部とは反対の他端部から第1ガイド片60aとは反対方向に延設された第3ガイド片60cとで構成され、長手方向に直交する断面が略Z字形状になっている。
【0032】
この第1ガイド片60aには、その長手方向に沿って5つの固定穴(図示外)が列設されている。そして、この第1ガイド片60aを仕切壁16の面に当接して、これら固定穴を介してボルト64で各々固定することにより、ガイドレール60が仕切壁16に固定される。また、ガイドレール60の第2ガイド片60bおよび第3ガイド片60cと、仕切壁16の面との間にできた隙間には、格納ケース11のレール33,34(図8参照)が案内される案内通路62,62(図8参照)が形成されている。
【0033】
そして、図6に示すように、仕切壁16に固定された一対のガイドレール60,60の案内通路62、62に対して、その上方から、格納ケース11のレール33,34(図8参照)が差し込まれる。すると、格納ケース11は、そのガイドレール60,60に沿って、曝気槽6bの底部まで下降し、曝気槽6b内の汚泥内に浸漬される。また、格納ケース11において、水平梁部40の左側面22側に固定されたリング部43と、水平梁部41の左側面22側に固定されたリング部43とには、略山形に形成されたチェーン71の両端部が各々固定される。また、水平梁部40の右側面23側に固定されたリング部43と、水平梁部41の右側面23側に固定されたリング部43とには、略山形に形成されたチェーン72の両端部が各々固定される。そして、チェーン71,72の頂点部分は、曝気槽6bの前後一対の内壁面の上部に各々固定されたチェーンフック70,70に引っ掛けるようになっている。これにより、チェーン71,72が汚泥内に落下するのを防止できる。さらに、山形に形成されたチェーン71,72の内側には三本の段組み71a,72aが各々渡設され、チェーンフック70,70に引っ掛けられたときの形状が略はしご状となっている。これにより、作業者は、曝気槽6bの上方からチェーン71,72の段組み71a、72aを順に手繰り寄せることにより、格納ケース11を略水平に保持したまま、上方に引き上げることができる。このように、格納ケース11は、曝気槽6b内では、ガイドレール60,60によって引き上げ可能に保持されるととともに、さらにチェーン71,72によって、曝気槽6bの内壁面に繋がれて固定されているので、槽内で格納ケース11が倒れるのを防止できる。なお、図6に示すチェーン71,72が、「引き上げ部材」に相当する。
【0034】
次に、格納ケース11の生分解性プラスチック板18の補充・交換作業について説明する。まず、二人の作業者が、図6に示す曝気槽6bの前側と後ろ側の上部にそれぞれ立つ。そして、各作業者は、手前にあるチェーン71又はチェーン72を、チェーンフック70,70から外し、チェーン71又はチェーン72の段組み71a,72aを順に手繰り寄せる。すると、格納ケース11は、ガイドレール60,60の案内通路62,62によって上方に案内され、曝気槽6bの汚泥面からしだいに表出する。そして、格納ケース11の上半分を、曝気槽6bの上縁部66よりも上側に位置するまで引き上げたら、両側一対の掛け止め具35,36の取っ手部45,55を上方に引き上げ、掛け止め具35,36を略水平の引出状態に保持させる。そして、図7乃至図9に示すように、そのまま平行に格納ケース11を下方に降ろし、掛け止め具35,36を曝気槽6bの上縁部66に載置させる。
【0035】
このとき、図8および図9に示すように、掛け止め具35において、掛け片35aの当接端部46,46が、凸部38,38に各々当接する。一方、掛け止め具36において、掛け片36aの当接端部56,56が、凸部39,39に当接する。これにより、掛け片35a,36aは略水平状態に保持される。したがって、格納ケース11を、曝気槽6bの上部である引出位置に保持することができるので、曝気槽6bから汚泥を抜く必要がなく、その引出位置で生分解性プラスチック板18の補充・交換作業をすることができる。さらに、格納ケース11を汚泥から全て引き出さないので、引出位置に保持された格納ケース11の下部は、汚泥内に浸漬されている。したがって、汚泥による浮力により、格納ケース11を引き上げる力が軽くなるので、作業者の労力負担を軽減することができる。
【0036】
そして、作業者は、引出位置に保持された格納ケース11内の生分解性プラスチック板18の補充又は交換をおこなう。次いで、生分解性プラスチック板18の交換・補充作業が完了したら、格納ケース11を再度、曝気槽6b内に浸漬させる。まず、引き上げ時と同様に、二人の作業者が、チェーン71及びチェーン72をもち、格納ケース11を一度上方に引き上げる。このとき、略水平の引出状態となった掛け止め具35,36の取っ手部45,55は、その重力により自然に下方に回動するため、掛け止め具35,36は自動的に格納状態となる。したがって、作業者は、掛け止め具35,36に手を触れることなく、掛け止め具35,36を自動的に格納することができる。次いで、チェーン71又はチェーン72の段組み71a,72aを順に掴みながら、格納ケース11を曝気槽6bの汚泥内に徐々に下降させる。このとき、格納ケース11のレール33,34が、ガイドレール60,60に沿って下方に案内されることにより、格納ケース11が曝気槽6bの汚泥内に再度浸漬される。そして、最後に、チェーン71,チェーン72を、チェーンフック70,70に各々引っ掛けることにより、図6に示すように、格納ケース11の生分解性プラスチック板18の交換・補充作業が完了する。
【0037】
以上説明したように、本発明の一実施形態であるバイオ浄化循環システムトイレ1は、生物処理槽6に浸漬された格納ケース10,11の取付け構造を改良したことで、ケースの引き上げが容易となり、ケース内に格納された生分解性プラスチック板18の交換・補充作業にかかる労力負担を軽減できる。この格納ケース11は、生物処理槽6の仕切壁16に設けられた一対のガイドレール60,60に案内される一対のレール33,34を備えている。これにより、そのガイドレール60,60に沿って、格納ケース11を略垂直上方に引き上げることができる。また、槽内では、レール33,34が、ガイドレール60,60に保持されているので、槽内で格納ケース11が倒れたり、設置位置がズレたりするのを防止できる。
【0038】
さらに、格納ケース11の左側面22および右側面23の上段よりもやや下側には、掛け止め具35,36が設けられている。そして、これらが左右側に対して上下方向に揺動可能に軸支されており、何れも略水平にされた状態で、曝気槽6bの上縁部66に掛け止めできる。したがって、格納ケース11を、曝気槽6b上部の引出位置に保持した状態で、生分解性プラスチック板18の補充・交換ができるので、補充・交換作業が容易となる。また、格納ケース11を曝気槽6bから全て引き上げなくてもよく、引出位置に保持された格納ケース11の下部は、汚泥に浸漬された状態であるので、格納ケース11を引き上げる力が少なくてすみ、作業者の労力負担を軽減することができる。
【0039】
また、格納ケース11上部には、ケースを引き上げるための一対のチェーン71,72が固定されている。そして、作業者は、このチェーン71,72の段組み71a,72aを、曝気槽6bの上方から順に手繰り寄せることによって、格納ケース11を確実に引き上げることができる。さらに、一対のチェーン71,72で引き上げるので、格納ケース11が傾むくことなくバランスを保ちながら引き上げることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、格納ケースを2つ設けたが、生物処理槽を構成する槽の数、槽の大きさなどによって、格納ケースの設置個数を調整してもよい。さらに、格納ケース11に格納する生分解性プラスチック板18の枚数も、処理水量などに応じて適宜変更すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のバイオ浄化循環システムトイレは、トイレに限らず、生活排水および工業排水などの排水処理にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】バイオ浄化循環システムトイレ1の構成を示すブロック図である。
【図2】バイオ浄化循環システムトイレ1の構成を示す模式図である。
【図3】格納ケース11の斜視図である。
【図4】格納ケース11の正面図である。
【図5】図4に示すA−A’線矢視方向断面図である。
【図6】格納ケース11が曝気槽6bに浸漬された状態を示す斜視図である。
【図7】格納ケース11が曝気槽6bの引き上げ位置に保持された状態を示す斜視図である。
【図8】図7に示す格納ケース11を正面から見た図である。
【図9】図8に示すB−B’線矢視方向断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 バイオ浄化循環システムトイレ
5 水洗便器
6 生物処理槽
10,11 格納ケース
16 仕切壁
18 生分解性プラスチック板
21 前面
22 左側面
23 右側面
24 背面
33,34 レール
35,36 掛け止め具
38,39 凸部
45 取っ手部
46 当接端部
55 取っ手部
56 当接端部
60 ガイドレール
66 上縁部
71 チェーン
71a 段組み
72 チェーン
72a 段組み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器からの汚水を受け入れ、微生物を用いて当該汚水中の有機物を分解するとともに、硝化および脱窒処理する生物処理槽と、当該生物処理槽内に浸漬され、前記微生物により分解される生分解性プラスチック板を格納するとともに、前記生物処理槽の内壁面に設けられた一対のガイドレールに沿って略垂直方向に引き上げ可能に支持された略直方体状の格納ケースとを備えたバイオ浄化循環システムトイレにおいて、
前記格納ケースの上下方向に平行な一対の稜線に沿って設けられ、前記一対のガイドレールに案内される一対のレールと、
前記格納ケースの左側面および右側面の上部側に各々設けられるとともに、上下方向に揺動可能に軸支され、下端部が引き上げられると上端部が下方に回動して略水平状態となり、前記格納ケースの引き上げ時に前記生物処理槽の上縁に掛け止めされる一対の掛け止め具と、
前記格納ケースの前面および背面に各々突設され、回動する前記掛け止め具の前記上端部が当接して、前記掛け止め具を略水平状態に停止させる一対の係止突起と、
前記格納ケースの上部の左右側に各々接続され、前記格納ケースを引き上げるための一対の引き上げ部材と
を備え、
前記格納ケースの引き上げ時において、一対の前記掛け止め具を略水平状態に各々停止させ、前記掛け止め具の下端部側を、前記生物処理槽の前記上縁に各々掛け渡すことにより、前記格納ケースを引き上げ位置に保持することを特徴とするバイオ浄化循環システムトイレ。
【請求項2】
前記引き上げ部材は、チェーンで構成され、上下方向に対して段組みがなされた略はしご状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオ浄化循環システムトイレ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−118271(P2006−118271A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308720(P2004−308720)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】