説明

バイオ生成フレーバ成分を含むフレッシュチーズ製品および製造方法

【課題】天然バイオ生成フレーバシステムで向上したチーズ製品の製造法を提供すること。
【解決手段】本明細書に記載した天然フレーバシステムは、様々なタイプのチーズおよび乳製品に使用することができる。一実施形態では、該システムはフレーバ向上フレッシュチーズまたはクリームチーズの製造に使用することができる。別の実施形態では、該システムは低脂肪クリームチーズなどの低脂肪チーズ製品の製造に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、チーズフレーバ組成物、フレッシュチーズ製品、より詳細には、所望のフレーバ特性を有する低脂肪フレッシュチーズ製品に関する。チーズフレーバ組成物を生成および使用する過程も提供される。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルチーズは従来、乳内で酸性を発現させ、乳をレンネットなどの凝固剤で固めることによって、またはタンパク質の等電点に酸性を発現させることによって作成される。固化した乳が切断され、乳清が凝乳から分離される。凝乳を押圧して、チーズブロックを提供することができる。硬化は普通、制御した状態で長時間かけて起こる。チェダーチーズは例えば、所望の完全なフレーバを得るためには、しばしば数ヶ月以上も硬化される。
【0003】
チーズ製品内でチーズのフレーバを発現させる際に重要ないくつかの化合物に関する多くの報告書が発表されている。チーズ内のフレーバの生成に寄与すると考えられる化合物の主な分類としては、アミノ酸、ペプチド、カルボニル化合物、脂肪酸、および硫黄化合物が挙げられる(非特許文献1参照)。脂肪酸、エステル類、アルデヒド類、アルコール類、ケトン類、および硫黄化合物を含むいくつかの揮発性化合物は、様々なチーズの香りを説明するリストに含まれている。これらの香りおよびフレーバ化合物のいくつかの産出は、チーズを熟成させる際に連続して起こる多数の酵素反応および/または化学反応によるものであった。
【0004】
チーズ熟成環境において特定のフレーバを産出することができるように、様々な微生物を確認および選択した。これらのフレーバは、一連の酵素ステップを通して起こる。例えば、チーズ内では、プロテアーゼおよびペプチダーゼによるタンパク質の劣化は、ペプチドおよび遊離アミノ酸の産出につながる。これらの前駆体は、連続した酵素反応により左右に動かされて、フレーバ化合物が形成される。これらの反応の理解は、所望のチーズタイプのフレーバを作り出す際の助けとなる(非特許文献2参照)。
【0005】
チーズの香りおよびフレーバの発生の際のアミノ酸異化作用の役割は、チーズのフレーバの発生の際の律速段階であると特定されている(非特許文献3参照)。αケト酸が普通、アミノ酸の代謝および相互交換の際の重要な媒介として認識されている。乳酸菌で特定される主な経路のいくつかは、アミノトランスフェラーゼによって触媒作用が及ぼされたアミノ基転移反応を含む。これらは、アミノ酸の脱アミノ反応およびケト酸の形成の原因である。アミノトランスフェラーゼ酵素の欠点は、アミノ基受容体の存在が必要であり、それによりチーズ母体において限定され、アミノ基転移を良くするために補う必要がある。文献によると、香り化合物およびチーズフレーバの生成は、αケトグルタレート、アミノ基受容体の追加によりかなり向上する(非特許文献4参照)。
【0006】
例えば、特許文献1には、また、酵素および細胞抽出物の外因性追加、そして、例えば、特許文献2および非特許文献5には、アミノ酸異化作用の媒介でのチーズ母体の補足による、フレーバ化合物の発生の加速が記載されている。
【0007】
少なくとも1つの引用文献によると、D−アミノ酸酸化酵素は、分子酸素の存在下でD−アミノ酸を脱アミノ酸化して、対応するαケト酸、アンモニア、および過酸化水素(H)にするフラビンタンパク質であり、得られた過酸化水素は、カタラーゼにより水および分子酸素に分解され、それによってケト酸が最終生成物として残る(非特許文献6参照)。ケト酸の生成のためにL−アミノ酸と接触するように使用することができる、特定の核酸配列にハイブリッド形成するDNA分子によって符号化されたロドコッカス種(Rohocococcus species)から分離させたL−アミノ酸酸化酵素が記載されている(特許文献3参照)。これら上記最後の2つの引用文献は、いずれも、チーズ微生物、またはこのような生物を含むチーズ製造環境に言及していない。アミノ酸からαケト酸への脱アミノ反応はデヒドロゲナーゼまたは酸化酵素のいずれかによって触媒作用が及ぼされるが、芳香族および分岐鎖アミノ酸およびメチオニンへのこのような活動はチーズ微生物内に以前は検出されなかったことが報告されている(非特許文献7参照)。
【0008】
チーズ製造業者は、商品流通に十分なほど熟成するまであまり貯蔵時間を必要としないチーズ製品の開発に興味を示している。チーズメーカは、チーズ硬化または熟成過程の速度を速めようとして、様々な異なる技術を使用した。ハードブロックチーズの熟成を促進させるのに使用されたこれらの技術のいくつかの要約が記載されている(特許文献4参照)。
【0009】
長期にわたるチーズ熟成期間を避けるために使用される別のアプローチは、より強烈なチーズフレーバを有する培養チーズ濃縮物(「CCC」)を作製し、その後これを別のバルク材内でチーズ着香剤として使用することであった。数ヶ月ではなく数日内に完全なチーズフレーバ発現を達成するCCCが製造された。これらのCCCは、チーズフレーバを与えるまたは強めるように、プロセスチーズまたはスナック食品などの他のバルク食品に添加される。このようなチーズフレーバ濃縮物の製造方法が記載されている(特許文献5参照)。普通は、この過程は様々なプロテアーゼ、ぺプチダーゼ、およびリパーゼの添加の後に乳酸菌培養物と培養される乳製品基質を必要とする。チーズ凝乳の代わりに、または乳清副産物を生成することなく、出発物質として乳から得ることができるチーズフレーバ濃縮物が記載されている(特許文献5参照)。高レベルのタンパク質分解酵素およびペプチド分解酵素を有する生きた培養物を使用して酵素改質培養物(EMC)の苦味を除去することが記載されている(特許文献6参照)。
【0010】
クリームチーズ製造方法が前に出版物に記載されている(非特許文献8参照)。
【0011】
これらの従来の過程は、チーズフレーバの加速された発生または向上を引き起こすことができるが、特定のチーズフレーバ成分を対象とした向上は引き起こさない。より最近では、フレーバ生成のモジュールアプローチを使用した様々なチーズフレーバ特性を対象とした、異なるチーズ製品/派生物を調製するのに使用することができる天然バイオ生成チーズフレーバシステムを製造する技術が開発された(例えば、特許文献7参照)。この特許に記載されたチーズフレーバシステムは異なる成分から得られ、個別の成分は培養したチーズ濃縮物製品内に特定のフレーバ特性を提供するように、異なる割合で組み合わされる。
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,649,199号明細書
【特許文献2】米国特許第6,586,025号明細書
【特許文献3】米国特許第6,461,841号明細書
【特許文献4】米国特許第6,649,200号明細書
【特許文献5】米国特許第4,708,876号明細書
【特許文献6】米国特許第6,214,586号明細書
【特許文献7】米国特許第6,406,724号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1,698,231号明細書
【非特許文献1】Urbach,G.,“Contribution of Lactic Acid Bacteria to Flavor Compound Formation in Dairy Products”,Int’l Dairy J.,1995,3:389−422
【非特許文献2】Fox,P.,Cheese:Chemistry,Physics and Microbiology,pp.389−483,1993
【非特許文献3】Yvon et al.,“Cheese flavour formation by amino acid catabolism”,Int.Dairy J.11(2001),185−201
【非特許文献4】Yvon et al.,“Adding α−Ketoglutarate to Semi−hard Cheese Curd Highly Enhances the Conversion of Amino Acids to Aroma Compounds”,Int.Dairy J.8(1998),889−898
【非特許文献5】Banks et al.,“Enhancement of amino acid catabolism in Cheddar cheese using α−ketoglutarate...”,Int.Dairy J.11(2001),235−243
【非特許文献6】Upadhya et al.,“D−Amino Acid oxidase and catalase of detergent permeabilized Rhodotorula gracilus cells and its potential use for the synthesis of α−keto acids”,Process Biochem.,35(1999),7−13
【非特許文献7】Yvon et al.,“Cheese flavor formation by amino acid catabolism”,Int.Dairy J.11(2001),185−201,189−190
【非特許文献8】Kosikowski and Mistry,“Cheese and Fermented Milk Foods”,3rd Ed.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記発行物に記載された開発にも関わらず、チーズフレーバシステム、特に天然過程を介して製造されるものを作製する代替手段の需要がまだある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は概して、バイオ生成フレーバ化合物、バイオ生成フレーバ化合物を含むクリームチーズ組成物、およびこのような化合物を作製する方法に関する。
【0015】
一実施形態では、15分から24時間までの間の時間60℃から140℃の範囲の温度に乳製品を加熱して、ラクトンをその場で生成させるステップを含む、フレーバ化合物を作製する方法が提供される。より詳細には、加熱温度は約84から約92℃、加熱時間は約55から約65分であってもよく、さらに詳細には加熱時間は約86から約90℃であり、加熱時間は約58から約62分であってもよい。生成されるラクトンは、γ−ヘキサラクトン、γ−オクタラクトン、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、6−ドデセン−γ−ラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−オクタラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン、およびδ−テトラデカラクトンのいずれかであってもよい。一実施形態では、乳製品は濃縮乳脂肪およびクリームを含むクリーム組成物である。加熱ステップの後に、加熱した乳製品をクエン酸塩および窒素源と混合させて、発酵プリミックスを提供する。一実施形態では、クエン酸塩はクエン酸ナトリウムであり、窒素源は酵母エキスである。得られたプリミックスはその後、ラクトース発酵菌およびフレーバ生成菌の存在下で2段階の発酵サイクルで発酵され、段階1は曝気なしで行われ、段階2は曝気させて行われる。ラクトース発酵菌は、ラクトコッカスクレモリス(Lactococcus cremoris)およびラクトコッカスラクティス(Lactococcus lactis)など、ならびにその組合せのいずれかであってもよい。フレーバ生成菌は、ラクトコッカスラクティス属ジアセチラクティス(Lactococcus lactis spp.diacetylactis)およびロイコノストッククレモリス(Leuconostoc cremoris)など、ならびにその組合せのいずれかであってもよい。
【0016】
本発明の別の実施形態では、約2パーセント未満のラクトース濃縮物を含む濃縮乳がまた、クリームチーズ製品を作製する過程の一部として上記で一般的に説明したのと別の方法で発酵プリミックスに添加される。発酵プリミックスの濃縮乳材料は、脱脂粉乳および全乳、または同様の乳基質のいずれかから生成することができる。濃縮乳は、脱脂粉乳または全乳のUF/DF濃縮水であることが好ましい。濃縮乳を含む発酵プリミックスはその後、上記で一般的に説明した方法で、すなわちラクトース発酵菌およびフレーバ生成菌の存在下で、段階1は曝気なしで行われ、段階2は曝気させて行われる2段階の発酵サイクルで発酵される。
【0017】
本発明は加えて、発明の方法を使用して得られる低脂肪クリームチーズ様発酵製品を提供する。方法実施形態の低脂肪クリームチーズ様発酵製品は、すぐに包装するおよび/または使用する準備ができており、フレーバ発現のための別個の硬化または熟成ステップを必要としない。本明細書の実施形態の比較的低脂肪のクリームチーズ製品は、従来のより高脂肪含有フレッシュチーズおよびクリームチーズ製品に匹敵するフレーバ特徴および特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、天然フレーバシステムで向上させたチーズ製品の製造を提供する。本明細書に記載された天然フレーバシステムは、様々なタイプのチーズおよび乳製品で使用することができる。一実施形態では、システムはフレーバを向上させたフレッシュチーズまたはクリームチーズの製造に使用することができる。別の実施形態では、システムは低脂肪クリームチーズなどの低脂肪チーズ製品の製造に使用することができる。脂肪は普通、食品製品内のフレーバの保持を助け、それによって、脂肪含有量を少なくした製品内で、フレーバを少なくすることができる。一実施形態では、低脂肪クリームチーズ製品の潜在的な刺激性の低いまたはマイルドなフレーバを相殺するため、本明細書に記載されたバイオ生成フレーバ組成物を低脂肪クリームチーズベースに添加して、その中のフレーバを向上させることができる。
【0019】
図1を参照すると、脱脂粉乳を組み込んだバイオ生成フレーバ組成物を作製する方法の例示的な略流れ図が提供されている。図1に示すように、ステップ101では、濃縮乳脂肪およびクリームが加熱タンクに添加され、その組合せは乳製品に相当する。加熱タンク内で、濃縮乳脂肪およびクリームは、少なくとも60℃で少なくとも15分間、より詳細には約84から92℃で約55から65分間加熱される。好ましい一実施形態では、乳脂肪およびクリームは、約88℃で約60分間加熱される。このステップは、例えば、様々なラクトン、アセチル、およびフランなどの熱誘導フレーバ化合物を生成するのに有用である。ラクトンは、同じ分子内のアルコール基およびカルボキシル基の濃縮生成物であるあらゆる環状エステルである。ラクトンは普通、クリーム状のフレーバを引き出す。生成することができるラクトンの例としては、これに限らないが、γ−ヘキサラクトン、γ−オクタラクトン、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、6−ドデセン−γ−ラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−オクタラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン、およびδ−テトラデカラクトンが挙げられる。生成することができるアセチルの例としては、これに限らないが、2−アセチルチアゾリンが挙げられる。生成することができるフランの例としては、2−メチル−3−メチルチオールフランが挙げられる。どれだけ多くの熱誘導フレーバ化合物が好ましいかによって、加熱温度および時間を調節することができる。例えば、有用な温度範囲は、約60℃から約140℃までである。有用な加熱温度範囲は、約15分から約24時間までである。また、使用する製造設備のタイプなどの適切な加熱温度および時間、所望の処理時間などを測定する際に考えられる追加の要因があることがある。いずれの場合も、ラクトンなどのフレーバ化合物を生成するのに有用なあらゆる温度または時間が望ましい。このプロセスステップで出発材料として使用される乳製品は、約40から60パーセントの脂肪、30から60パーセントの水分、1から4パーセントのタンパク質、および1から5パーセントのラクトースを含む混合物を提供するように、それぞれの量で組み合わせられた乳脂肪源(例えば、濃縮乳脂肪)および天然クリームを含むクリーム組成物であってもよい。
【0020】
ステップ103では、脱脂粉乳は濃縮水として乳脂肪、タンパク質、および他の大きなバイオ成分を、透過水として水および他のより小さなバイオ成分(例えば、ラクトース、塩)から分離させるように、膜過程、好ましくは限外濾過およびダイアフィルトレーションが行われる。別の実施形態では、全乳はステップ103で使用することができる。さらに別の実施形態では、あらゆるパーセントの脂肪を含んだあらゆるタイプの乳をこのように使用することができる。例えば、2パーセントの乳をステップ103で使用することができる。限外濾過およびダイアフィルトレーションはまた、脱脂粉乳コロイドから分離された小さなバイオ成分の量を調節するのに特に有用である。より詳細には、ラクトース保持率を限外濾過およびダイアフィルトレーション(UF/DF)により調節することができる。濃縮水に保持されたラクトースの量を調節することによって、その後の発酵サイクルを調節することができる。微生物がジアセチルおよびアセトインなどの所望のフレーバ化合物を作製することを対象とするように、発酵を調節することが望ましい。UF/DF膜過程が好ましいが、様々な膜技術および設備を適用して、濃縮水内に所望のレベルの構成成分を提供することができることが分かるだろう。濃縮水は任意選択で乾燥させ、本発明の方法でさらに使用する前に水で戻すことができる。乾燥は、噴霧乾燥などの様々な手段によって行うことができるが、再構成には影響しないことを条件とする。
【0021】
一実施例では、脱脂粉乳中のラクトースの出発濃度は約5パーセントである。濃縮過程は普通、約100から140°F(約37.78から60℃)、より詳細には約120から130°F(約48.89から54.44℃)の温度で行われる。濾過システムのベースライン圧力は一般に、6から60ポンド毎平方インチ(psig)(0.4218から4.218kg/cm)、より典型的には20から30psig(1.406から2.108kg/cm)である。濃縮過程は、処理される乳の量、使用されるフィルタまたは膜の寸法、および濾過システムの設計を含むいくつかのいくつかの要因により一定の期間行われる。調節された限外濾過およびダイアフィルトレーション、または同様の濃縮システムの後に、ラクトース濃度が約1.0から1.5パーセントまで少なくなる。全乳は、上記のように脱脂粉乳と同様に処理することができる。全乳中のラクトースの出発濃度は、約4から6パーセントまでの範囲であり、約1.0から1.5パーセントまで少なくなる。いずれの場合も、限外濾過およびダイアフィルトレーションが行われた乳に含まれる乳脂肪の量(例えば、0パーセント、2パーセント、5パーセントなど)に関わらず、濃縮水に含まれるラクトースの量は約0.5パーセントと約2.0パーセントの間であるべきである。限外濾過およびダイアフィルトレーション時間を決める他の要因としては、マグネシウム、マンガン、および鉄などの様々な無機物およびビタミンの保持率が挙げられる。一実施形態では、脱脂粉乳または他の乳基質が限外濾過およびダイアフィルトレーションによって処理されて、約15から30パーセントの固体、約70から85パーセントの水分、約0.5から4パーセントのラクトース、約0.1から1.0パーセントの乳脂肪、約10から20パーセントのタンパク質、約0.1から2.0パーセントの塩、および約0.1から2.0パーセントの灰を有する濃縮水を提供する。濃縮水のpHは普通、約6.0から約7.0までの範囲であってもよい。一実施形態では、乳基質はUF/DF技術が行われて、約3倍から約8倍(好ましくは、約5倍から6倍)の濃縮乳濃縮水製品を製造する。
【0022】
例えば、乳脂肪、タンパク質、調節した量のラクトース、無機物、およびビタミンを含むステップ103から得られた濃縮水は、ステップ105で混合タンクに向ける。ステップ103からの濃縮水は、ステップ101で処理された濃縮乳脂肪およびクリームと混合される。加えて、いくつかの材料が、一実施例では、クエン酸ナトリウムおよび酵母エキスを含む、ステップ101および103からの製品に添加され、発酵プリミックスを提供する。別の実施例では、塩および水をクエン酸ナトリウムおよび酵母エキスに加えて添加することができる。クエン酸ナトリウムは、微生物がフレーバ化合物に変わるように、基質として添加される。酵母エキスが添加され、分子窒素、アミノ酸、および共同因子源を提供する。塩は、フレーバ材料として添加することができる。水は、混合物のpHおよび/または水分レベルを調節するように添加することができる。脱脂粉乳が利用される一実施形態では、混合物は、クリーム15から35パーセント、水10から30パーセント、塩0.1から2.0パーセント、クエン酸ナトリウム0.1から1.0パーセント、酵母エキス0.01から0.20パーセント、濃縮乳脂肪5から15パーセント、および濃縮脱脂粉乳35から55パーセントを含むことができる。全乳が利用される別の実施形態では、混合物は、クリーム5から25パーセント、水10から30パーセント、塩0.5から2.0パーセント、酵母エキス0.01から0.20パーセント、および濃縮全乳55から75パーセントを含むことができる。
【0023】
様々な量のクエン酸ナトリウム、酵母エキス、塩、および水を、所望の発酵製品によって添加することができる。また、例えば、クエン酸およびその可食塩(例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウムなど)などのクエン酸ナトリウムと交換可能に使用することができる材料がある。同様に、分子窒素および/またはアミノ酸および/または共同因子を含む他の化合物を、例えば、コーンスティープリカーおよびタンパク質加水分解物などの、酵母エキスの代わりに使用することができる。また、フレーバ添加物としての塩は混合物には全く添加することができない。これは、低塩食品の製造の場合に特に当てはまる。一実施例では、材料は全て約5から15分間一緒に混合される。しかし、材料を一緒に混合するのに十分な時間であればあらゆる期間を使用することもできる。チーズ製造技術で知られているまたは有用である他の添加物は任意選択で、所望であれば、特に本明細書に記載した独自のフレーバシステムの発生および保持に悪影響を与えない程度に添加することができる。このような任意の添加物としては、例えば、防腐剤、着色剤、香味料、乳化剤、安定剤、またはその混合物が挙げられる。また、所望であれば、植物性油または他の乳成分を含まない脂肪を添加して、過程によって調製されるクリームチーズ製品の脂肪含有量の一部を形成することができる。機能性乳清タンパク質などの製品質感調整剤を任意選択で含めることもできる。
【0024】
別の実施形態では、ステップ103は過程から除くことができる。この場合、クエン酸ナトリウム、酵母エキス、塩、および水は、ステップ105で混合タンク内でステップ101の製品と直接混合される。この実施形態は、高いフレーバ特性を備えた平均量の脂肪を含むフレッシュチーズ組成物の製造に有用である。ステップ103を組み込んだ過程は、より高いフレーバ特性を備えたより低脂肪のフレッシュチーズ製品の製造に有用である。
【0025】
ステップ107では、混合物は約50℃で約16秒間加熱されて、混合物内に含まれる乳脂肪を溶融させる。しかし、乳脂肪を液化するのに有用な様々な温度および時間を使用することができる。ステップ107からの加熱した混合物は、ステップ109で均質化される。均質化の後、混合物はステップ111で低温殺菌される。一実施例では、混合物を74℃まで加熱し、混合物を74℃で約16秒間保持し、最後にこれを30℃未満に冷却することによって、混合物は低温殺菌される。しかし、あらゆる低温殺菌過程をここで詳述した低温殺菌過程に置き換えることができる。低温殺菌後、混合物はステップ113で発酵装置に案内される。発酵容器は、培養物と基質材料を確実に混合させる能力を含んでいることが好ましい。細菌培養物カクテルは、発酵を開始させるように、容器内の混合物に添加される。培養物カクテルは、ラクトース発酵菌およびフレーバ生成菌の混合物である。これらの培養物は、Direct Vat Set(DVS)として知られる冷凍濃縮形状で、またはBulk Set(BS)として知られる前日に成長させた活性前培養物として提供することができる。好ましい方法は、DVS培養システムを利用することである。ラクトース発酵培養物は普通は、ラクトコッカスクレモリス(Lactococcus cremoris)およびラクトコッカスラクティス(Lactococcus lactis)の種など、ならびにその組合せである。ラクトース発酵培養物は、乳酸と、他の有機酸およびフレーバ化合物を生成して、pHを約6.5から約4.7まで下げる。フレーバ生成菌は普通、ラクトコッカスラクティス属ジアセチラクティス(Lactococcus lactis ssp.diacetylactis)およびロイコノストッククレモリス(Leuconostoc cremoris)の種など、ならびにその組合せである。フレーバ生成培養物は、クエン酸塩、クエン酸、またはその派生物からジアセチル、アセトイン、および他のフレーバ化合物を生成することができる。加えて、発酵過程は、初期加熱ステップで作製されたラクトンの量を30から85パーセントだけ増加させる。これらのタイプのあらゆる適切な培養物を使用することができるが、高レベルのフレーバの生成に基づき予め試験および選択されることが好ましい。アセトラクタートデカルボキシラーゼ用遺伝子内で変異を含むことが最も好ましい。これらの培養物はそれぞれ、約0.1から0.01パーセントで添加される。
【0026】
発酵混合物は、約1から5psig(約0.0703から0.3515kg/cm)の圧力に維持される。発酵温度は、約26℃に調節される。一実施形態では、発酵は2段階に分割することができる。段階1は曝気なしで約12時間、pHが約4.7になるまで行われる。別の実施形態では、段階1は曝気なしで、経過時間に関わらずpHが約5.4以上になるまで行われる。段階2は、約1から5scfm(平方立方フィート毎分)(約0.3から約1.5平方立方メートル毎分)で添加される無菌空気で開始する。別の実施形態では、発酵は混合物が約40時間曝気される単一段階過程である。曝気は化学的または機械的に行うことができる。過酸化水素から酸素を遊離させるカタラーゼを導入することができる。空気または酸素ガスはまた、拡散プレートまたはインライン噴霧器などを介して、反応混合物に導入することができる。溶存酸素量(DO)は、発酵サイクルを全体を通して連続して監視される。DOは普通、発酵サイクルの最初は約100パーセントであるが、フレーバ生成反応が酸素を消費するにつれて減少する。発酵の段階2は、約28時間続く。合計発酵時間は約40時間、またはフレーバ反応が完了するまでである。ソルビン酸またはソルビン酸カリウムを防腐剤として添加することができる。
【0027】
発酵の後、混合物は培養物の非活性化のために、ステップ115で熱交換器に案内される。混合物は最初、74℃などの高温に加熱され、発酵ステップから生存している細菌を非活性化させるように16秒間保持される。非活性化の後、混合物は20℃まで冷却される。非活性化ステップの変形を代わりに使うことができる。普通、混合物は生存している細菌を非活性化させるのに十分な時間だけ十分高温にさらされ、その後妥当な作業温度まで冷却されるべきである。
【0028】
ステップ115での非活性化の後、混合物はステップ117で貯蔵容器に案内されて、例えば約5℃などまでさらに冷却される。最後に、ステップ119では、混合物は約4℃に保持される。図1に示した過程は、一括、半連続的または連続的過程として利用することができる。
【0029】
本明細書に記載されたバイオ生成フレーバ組成物は、フレーバおよび/または感覚受容性を向上させる目的で、あらゆる食品製品に添加することができる。しかし、一実施形態では、バイオ生成フレーバ組成物は、フレッシュチーズまたはクリームチーズ製品に添加することができる。さらに別の実施形態では、バイオ生成フレーバ組成物は、低脂肪フレッシュチーズまたはクリームチーズ製品に添加することができる。別の実施形態では、バイオ生成フレーバ組成物はあらゆる乳製品に添加することができる。
【0030】
上記に記載した処理の後、最終混合物は、以下のクレーバ化合物、すなわちジアセチル、アセトイン、エタノール、2−ヘプタノン、2−ノナノン、2−ペンタノン、アセトン、2−アセチルチアゾリン、2−メチル−3−メチルチオールフラン、γ−ヘキサラクトン、γ−オクタラクトン、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、6−ドデセン−γ−ラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−オクタラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン、およびδ−テトラデカラクトンを含むことができる。
【0031】
クリームチーズ製品のフレーバレベルは感覚的に判断することができ、かつ/あるいはpH、滴定酸度、およびラクトン、遊離脂肪酸、アミノ酸、または所与のチーズフレーバ特性に関連していると知られている他の代謝産物の濃度などの分析測定(例えば、ガスクロマトグラフィなどによる)により評価することができる。
【0032】
次に図2を参照すると、クリームチーズベースを作製し、その中にバイオ生成フレーバ組成物を組み込む1日間の方法の略流れ図が提供されている。このクリームチーズを作製する方法は、培養ステップまたは分離ステップなしで行われる。
【0033】
ステップ201では、混合物は水、乳脂肪、および改質乳清タンパク質または他の乳タンパク質のいずれかを添加することによって調製される。ステップ203では、ステップ201で調製された混合物は4.9のpHで標準化される。その後、ステップ205では、混合物は140°F(60℃)に加熱される。ステップ207では、混合物は5000/500psi(35.15/3.56kg/cm)で均質化される。均質化された混合物はその後、ステップ209で200°F(75.56℃)に加熱され、約10分間保持される。ステップ211では、これに限らないが、塩、ガム、ビタミン、カルシウム、およびマルトデキストリンなどの乾燥材料が、クリームチーズ混合物に添加される。混合物はその後、ステップ213で180°F(82.22℃)に加熱され、10分間保持される。その後、ステップ215では、約1から10パーセント、好ましくは4パーセントのバイオ生成フレーバ組成物がクリームチーズ混合物に添加される。クリームチーズ混合物およびバイオ生成フレーバ組成物は、ステップ217で5000/500psi(35.15/3.56kg/cm)で均質化され、ステップ219で包装され、ステップ221で冷却される。バイオ生成フレーバ組成物を含むクリームチーズ製品の最終脂肪濃度は、約20パーセント未満、詳細には約1から約10パーセント、より詳細には約4パーセントから7パーセントであってもよい。しかし、代替実施形態では、フレーバ組成物は、より高脂肪濃度を生じる全脂肪乳製品ベースに添加することができる。
【0034】
次に図3を参照すると、クリームチーズベースを作製し、その中にバイオ生成フレーバ組成物を組み込む2日間の方法の略流れ図が提供されている。
【0035】
ステップ301では、混合物は特定の脂肪含有量、好ましくは約1.5から2.5パーセントの脂肪に調節された乳およびクリームを添加することによって調製される。その後、混合物はステップ303で均質化され、ステップ305で低温殺菌され、ステップ307で冷却される。ステップ309では、混合物の一部、好ましくは約15パーセントが冷却器内に置かれて、標準化される。残りの混合物は、ステップ311でDVS乳酸培養物が接種される。次に、ステップ313では、混合物は乳酸培養物で約18から24時間の間約70から75°F(約21.11から23.89℃)の温度で、約4.35から4.60のpHに到達するまで発酵する。ステップ315では、ステップ313で調製された発酵混合物は、ステップ309で取って置かれた混合物で約4.70から4.80のpHに標準化される。標準化された混合物はその後、ステップ317で約115°F(約46.11℃)に加熱される。次に、ステップ319では、混合物は濃縮水を約23パーセントの固体に濃縮するように、膜過程、好ましくは限外濾過が行われる。別の実施形態では、遠心分離装置を使用して凝乳を濃縮することができる。分離した凝乳はその後、ステップ321で60°F(15.56℃)未満の温度に冷却される。その後、ステップ323では、バイオ生成フレーバ組成物をクリームチーズ混合物に添加し、ステップ325で均質化することができる。ステップ323の混合物(バイオ生成フレーバ組成物があるかどうかに関わらず)は、ステップ327で改質乳清タンパク質または他の乳タンパク質と組み合わされる。クリームチーズ組成物は、ステップ329で5から10分間125°F(51.67℃)で加熱される。ステップ331では、これに限らないが、塩、ガム、ビタミン、カルシウム、およびマルトデキストリンなどの乾燥材料が、クリームチーズ混合物に添加される。ステップ333では、組成物は次いで30分間125°F(51.67℃)で加熱され、その後ステップ335で155°F(68.33℃)に温度上昇し、5075/725psi(356.81/51.68g/cm)で均質化される。次に、ステップ337では、クリームチーズは180°F(82.22℃)に加熱され、風合いを形成するために30分間再循環される。ステップ339では、バイオ生成フレーバ組成物は、ステップ323でバイオ生成フレーバ組成物が添加されたかどうかによって、クリームチーズ混合物に部分的または全体的に添加することができる。クリームチーズ混合物およびバイオ生成フレーバ組成物はステップ341で包装され、ステップ343で冷却される。バイオ生成フレーバ組成物を含むクリームチーズ製品の最終脂肪濃度は、約20パーセント未満、詳細には約1から約10パーセント、より詳細には約4パーセントから約7パーセントであってもよい。しかし、代替実施形態では、フレーバ組成物は、より高脂肪濃度を生じる全脂肪乳製品ベースに添加することができる。
【0036】
クリームチーズ製品、より詳細には風合いを向上させた低脂肪クリームチーズ製品の製造のさらなる説明は、本明細書に参照として援用した、2005年9月30日の同じ日に提出した同時係属出願(整理番号第77361号)に見ることができる。
【0037】
以下の実施例は、本発明の特定の過程および製品を説明し、例示するものである。これらの実施例は、単に本発明を説明するためだけのものであり、範囲または精神のいずれも限定するものではない。これらの実施例に記載された材料、状態、および過程の変更形態を使用することができる。そうでないと記されていない限り、全てのパーセントは重量によるものである。
【実施例1】
【0038】
1.0−バイオ生成フレーバシステムを使用した低脂肪クリームチーズの調製
1.1−低脂肪クリームチーズベースの調製:7%脂肪のクリームチーズ組成物を、38.96ポンド(17.67kg)のWPC80(Leprinoチーズ)、33.9ポンド(15.38kg)の乾燥乳清、および327.14ポンド(148.39kg)の水(18%濃度のリン酸でpH3.35に酸性化された)を混合することによって作製し、200°F(75.56℃)に加熱し、6分間保持して、乳清混合物を形成した。次に、78.34ポンド(35.53kg)の乳清混合物を18.16ポンド(8.24kg)のクリームと混合し、pHを水酸化ナトリウムを使用して4.9に調節して、クリーチーズ混合物を得た。クリームチーズ混合物を140°F(60℃)に加熱し、5000/500psi(35.15/3.56kg/cm)で均質化した。均質化した混合物は、200°F(75.56℃)に加熱し、10分間保持した。次いで、64.334ポンド(29.18kg)のクリームチーズ混合物を、0.035ポンド(0.0159kg)のソルビン酸、0.049ポンド(0.0222kg)のキサンタンガム、0.267ポンド(0.121kg)のカロブガム、1.469ポンド(0.666kg)のマルトデキストリン、0.629ポンド(0.285kg)のリン酸三カルシウム、および0.417ポンド(0.189kg)の塩と混合した。混合物を180°F(82.22℃)に加熱し、10分間保持した。
【0039】
1.2−ラクトンの調製:194.21ポンド(88.09kg)のクリームと、42.00%の脂肪、53.80%の水分、1.80%のタンパク質、および3.1%のラクトースの組成を有する31.94ポンド(14.49kg)の濃縮乳脂肪とを含むクリーム組成物を、88℃に加熱し、60分間保持した。初期加熱ステップの後、加熱した組成物は以下のフレーバ化合物を有することが分かった。
【0040】
【表1】

【0041】
1.3−バイオ生成フレーバ組成物の別の処理:332.86ポンド(150.98kg)の濃縮脱脂粉乳に限外濾過およびダイアフィルトレーションを行い、それによって得られる濃縮水は、0.20%の脂肪、18.50%のタンパク質、76.65%の水分、0.30%の塩、および1.20%のラクトースを含んでいた。加熱したクリーム組成物および脱脂粉乳濃縮水を、Breddo混合装置の中で、2.25ポンド(1.02kg)のクエン酸ナトリウム、0.75ポンド(0.34kg)の酵母エキス、6.1ポンド(2.77kg)の塩、および140.4ポンド(63.68kg)の水と混合した。混合物を50℃に加熱し、均質化し、低温殺菌した。低温殺菌は、混合物を74℃に加熱するステップと、混合物を74℃で16秒間保持するステップと、30℃に冷却するステップとを含んだ。低温殺菌した混合物は次いで、2段階過程で40時間発酵させた。ラクトコッカスクレモリス(Lactococcus cremoris)、ラクトコッカスラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカスラクティス属ジアセチラクティス(Lactococcus lactis spp.diacetylactis)、ロイコノストッククレモリス(Leuconostoc cremoris)を含んだDVS培養物(Chr Hansen Laboratories)を発酵容器に添加し、この場合DVS培養物の初期濃度は合計混合物量の0.01%であった。発酵の段階1は、曝気なしで12時間行った。段階2は、殺菌空気の曝気で28時間行った。発酵容器の温度を、発酵サイクルの段階1および段階2全体を通して約26℃に保持した。混合物は次いで、熱交換器に向け、74℃で熱処理し、16秒間保持し、20℃に冷却した。混合物は次いで、バレルに向け、さらに5℃まで冷却した。最終製品は、使用するまで4℃で保持した。
【0042】
最終混合物は、以下に示す組成プロフィールを有した。
【0043】
【表2】

【0044】
最終混合物は、以下のフレーバ化合物を含んでいた。
【0045】
【表3】

【0046】
1.4−7%脂肪のクリームチーズへのバイオ生成フレーバの組み込み:最後に、上記ステップ1.2および1.3で作製されたバイオ生成フレーバ2.8ポンド(1.27kg)を、上記ステップ1.1で作製されたクリームチーズと混合した。
【実施例2】
【0047】
2.0−バイオ生成フレーバシステムを使用した低脂肪クリームチーズの調製
2.1−低脂肪クリームチーズベースの調製:7%脂肪のクリームチーズ組成物を、38.96ポンド(17.67kg)のWPC80(Leprinoチーズ)、33.9ポンド(15.38kg)の乾燥乳清、および327.14ポンド(148.39kg)の水(18%濃度のリン酸でpH3.35に酸性化された)を混合することによって作製し、200°F(75.56℃)に加熱し、6分間保持して、乳清混合物を形成した。次に、78.34ポンド(35.53kg)の乳清混合物を18.16ポンド(8.24kg)のクリームと混合し、pHを水酸化ナトリウムを使用して4.9に調節して、クリーチーズ混合物を得た。クリームチーズ混合物を140°F(60℃)に加熱し、5000/500psi(35.15/3.56kg/cm)で均質化した。均質化した混合物は、200°F(75.56℃)に加熱し、10分間保持した。次いで、64.334ポンド(29.18kg)のクリームチーズ混合物を、0.035ポンド(0.0159kg)のソルビン酸、0.049ポンド(0.0222kg)のキサンタンガム、0.267ポンド(0.121kg)のカロブガム、1.469ポンド(0.666kg)のマルトデキストリン、0.629ポンド(0.285kg)のリン酸三カルシウム、および0.417ポンド(0.189kg)の塩と混合した。混合物を180°F(82.22℃)に加熱し、10分間保持した。
【0048】
2.2−バイオ生成フレーバ組成物の調製:42.00%の脂肪、53.80%の水分、1.80%のタンパク質、および3.1%のラクトースを含むクリーム組成物102ポンド(46.27kg)を88℃に加熱し、60分間保持した。482.24ポンド(218.74kg)の全乳に限外濾過およびダイアフィルトレーションを行い、それによって得られる濃縮水は、18.50%の脂肪、13.00%のタンパク質、65.00%の水分、0.30%の塩、および1.20%のラクトースを含んでいた。加熱したクリーム組成物および全乳濃縮水を、Breddo混合装置の中で、2.25ポンド(1.02kg)のクエン酸ナトリウム、0.75ポンド(0.34kg)の酵母エキス、6.75ポンド(3.06kg)の塩、および156ポンド(70.76kg)の水と混合した。混合物を50℃に加熱し、均質化し、低温殺菌した。低温殺菌は、混合物を74℃に加熱するステップと、混合物を74℃で16秒間保持するステップと、30℃に冷却するステップとを含んだ。低温殺菌した混合物は次いで、2段階発酵過程で40時間発酵させた。ラクトコッカスクレモリス(Lactococcus cremoris)、ラクトコッカスラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカスラクティス属ジアセチラクティス(Lactococcus lactis spp.diacetylactis)、ロイコノストッククレモリス(Leuconostoc cremoris)を含んだDVS培養物(Chr Hansen Laboratories)を発酵容器に添加し、この場合DVS培養物の初期濃度は合計混合物量の0.01%であった。発酵の段階1は、曝気なしで12時間行った。段階2は、殺菌空気の曝気で28時間行った。発酵容器の温度を、発酵サイクルの段階1および段階2全体を通して約26℃に保持した。混合物は次いで、熱交換器に向け、74℃で熱処理し、16秒間保持し、20℃に冷却した。混合物は次いで、バレルに向け、さらに5℃まで冷却した。最終製品は、使用するまで4℃で保持した。
【0049】
バイオ生成フレーバ組成物は、以下に示す組成プロフィールを有した。
【0050】
【表4】

【0051】
最終バイオ生成フレーバ組成物は、以下のフレーバ化合物を含んでいた。
【0052】
【表5】

【0053】
2.3−7%脂肪のクリームチーズへのバイオ生成フレーバの組み込み:最後に、上記ステップ2.2で作製されたバイオ生成フレーバ2.8ポンド(1.27kg)を、上記ステップ2.1で作製された7%脂肪のクリームチーズと混合した。
【実施例3】
【0054】
クリームチーズベースの調製:7%脂肪のクリームチーズを、59.5ポンド(26.99kg)のWPC50(First District Association)、10.40ポンド(4.72kg)の乾燥乳清、および330.10ポンド(149.73kg)の水を混合することによって調製し、18%濃度のリン酸でpH3.35に酸性化させ、200°F(75.56℃)に加熱し、6分間保持して、乳清混合物を形成した。加熱後に、62.28ポンド(28.25kg)の乳清混合物を11.11ポンド(5.04kg)のクリームと混合し、pHを水酸化ナトリウムを使用して4.9に調節して、クリームチーズ混合物を得た。クリームチーズ混合物を140°F(60℃)に加熱し、5000/500psi(35.15/3.56kg/cm)で均質化した。均質化した混合物は、200°F(75.56℃)に加熱し、10分間保持した。次いで、64.334ポンド(29.18kg)のクリームチーズ混合物を、0.035ポンド(0.0159kg)のソルビン酸、0.049ポンド(0.0222kg)のキサンタンガム、0.267ポンド(0.121kg)のカロブガム、1.469ポンド(0.666kg)のマルトデキストリン、0.629ポンド(0.285kg)のリン酸三カルシウム、および0.417ポンド(0.189kg)の塩と混合した。混合物を180°F(82.22℃)に加熱し、10分間保持した。最後に、バイオ生成フレーバ2.0ポンド(0.91kg)をクリームチーズ混合物48.0ポンド(21.77kg)に添加した。クリームチーズ混合物は5000/500psi(35.15/3.56kg/cm)で均質化し、包装した。
【実施例4】
【0055】
クリームチーズベースの調製:5%脂肪のクリームチーズを、脱脂粉乳およびクリームを混合することによって調製し、1.7%脂肪の混合物約3000ポンド(約1360.78kg)を得た。混合物は次いで、均質化し、低温殺菌し、冷却した。約400ポンド(約181.44kg)の混合物を2日目のpH標準化のために除外した。直接定置した乳酸培養物を2600ポンド(1179.34kg)の混合物に添加し、70°F(21.11℃)で18時間接種した。接種した混合物のpHは、2日目で4.53であった。pHは、400ポンド(181.44kg)の発酵させていない混合物を添加することによって4.73に標準化した。混合物は次いで、UFを使用して濃縮し、濃縮水は23.1パーセント固体で集めた。次に、48.6ポンド(22.04kg)の濃縮水を40ポンド(18.14kg)の(特許文献8によって作製された)機能性乳清タンパク質、0.8ポンド(0.36kg)の塩、0.45ポンド(0.20kg)のカロブガム、0.15ポンド(0.07kg)のカラゲナンガムと混合して、クリームチーズを形成した。クリームチーズは、131°F(55℃)に加熱し、5000/100psi(35.15/7.03kg/cm)で均質化した。クリームチーズは次いで、183°F(83.89℃)に加熱し、風合いを形成するように45分間再循環させた。10ポンド(4.54kg)のバイオ生成フレーバをクリームチーズに添加した。
【実施例5】
【0056】
クリームチーズベースの調製:5%脂肪のクリームチーズを、脱脂粉乳およびクリームを混合することによって調製し、1.6%脂肪の混合物約1500kgを得た。混合物は次いで、均質化し、低温殺菌し、冷却した。約225kgの混合物を2日目のpH標準化のために除外した。直接定置した乳酸培養物を1275kgの混合物に添加し、24℃で18時間接種した。接種した混合物のpHは、2日目で4.39であった。pHは、225kgの発酵させていない混合物を添加することによって4.62に標準化した。混合物は次いで、UFを使用して濃縮し、濃縮水は23.8パーセント固体で集めた。濃縮水は次いで、9℃に冷却し、400/80バールで均質化した。次に、40kgの(特許文献8によって作製された)機能性乳清タンパク質を390/70バールで均質化し、51.7kgの濃縮水と混合して、クリームチーズを形成した。クリームチーズは、52℃に加熱し、10分間保持した。0.8kgの塩、0.35kgのカロブガム、および0.15kgのカラゲナンガムなどの材料をクリームチーズに添加した。クリームチーズは次いで、52℃で30分間保持し、70℃まで加熱し、350/50バールで均質化し、81℃で約30分間再循環させて質感を形成した。最後に、7kgのバイオ生成フレーバをクリームチーズに添加し、包装した。
【実施例6】
【0057】
クリームチーズベースの調製:7%脂肪のクリームチーズを、10.42ポンド(4.73kg)のMPC70(Fonterra)、1.6ポンド(0.73kg)の乾燥乳清、12.32ポンド(5.59kg)のクリーム、および48.21ポンド(21.87kg)の水をタンク内で混合することによって調製し、pHは乳酸を使用して4.9に調節して、クリームチーズ混合物を得た。クリームチーズ混合物を、140°F(60℃)に加熱し、5000/500psi(35.15/3.56kg/cm)で均質化した。次いで、45.34ポンド(20.57kg)のクリームチーズ混合物を、0.025ポンド(0.011kg)のソルビン酸、0.035ポンド(0.016kg)のキサンタンガム、0.190ポンド(0.086kg)のカロブガム、1.5ポンド(0.680kg)のマルトデキストリン、0.450ポンド(0.204kg)のリン酸三カルシウム、および0.460ポンド(0.209kg)の塩と混合させた。混合物は、180°F(82.22℃)に加熱し、10分間保持した。最後に、バイオ生成フレーバ2.0ポンド(0.91kg)をクリームチーズ混合物に添加した。クリームチーズ混合物は5000/500psi(35.15/3.56kg/cm)で均質化し、包装した。
【0058】
本明細書で引用した全ての引用文献を、参照として援用する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態によるバイオ生成フレーバ組成物を作製する方法の概略フロー図である。
【図2】本発明の一実施形態の、クリームチーズベースを作製し、その中にバイオ生成フレーバ組成物を組み込む1日間の方法の概略フロー図である。
【図3】本発明の一実施形態の、クリームチーズベースを作製し、その中にバイオ生成フレーバ組成物を組み込む2日間の方法の概略フロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーバ組成物を作製する方法であって、
(a)乳製品を60℃から140℃までの範囲の温度で15分から24時間加熱して、熱誘導フレーバ化合物を製造させるステップと、
(b)ステップ(a)からの前記加熱した乳製品をクエン酸塩および窒素源と混合させるステップと、
(c)ステップ(b)からの前記混合物を発酵段階1および発酵段階2を含む2段階発酵サイクルで、ラクトース発酵菌およびフレーバ生成菌の存在下で発酵させるステップであって、段階1は曝気なしで行われ、段階2は曝気させて行われるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記温度は約84から約92℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記時間は約55から約65分であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生成された熱誘導フレーバ化合物は、ラクトン、アセチル、およびフランからなる群のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生成されたラクトンは、γ−ヘキサラクトン、γ−オクタラクトン、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、6−ドデセン−γ−ラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−オクタラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン、およびδ−テトラデカラクトンからなる群のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記クエン酸塩はクエン酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記窒素源は酵母エキスを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ラクトース発酵菌は、ラクトコッカスクレモリス(Lactococcus cremoris)およびラクトコッカスラクティス(Lactococcus lactis)からなる群のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フレーバ生成菌は、ラクトコッカスラクティス属ジアセチラクティス(Lactococcus lactis spp.diacetylactis)およびロイコノストッククレモリス(Leuconostoc cremoris)からなる群のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
フレーバ組成物を作製する方法であって、
(a)乳製品を60℃から140℃までの範囲の温度で15分から24時間加熱して、熱誘導フレーバ化合物を製造させるステップと、
(b)約2パーセント未満のラクトース濃縮物を含む濃縮乳を提供するステップと、
(c)ステップ(a)からの前記加熱した乳製品、ステップ(b)からの前記濃縮乳、クエン酸塩、および窒素源を一緒に混合するステップと、
(d)ステップ(c)からの前記混合物を発酵段階1および発酵段階2を含む2段階発酵サイクルで、ラクトース発酵菌およびフレーバ生成菌の存在下で発酵させるステップであって、段階1は曝気なしで行われ、段階2は曝気させて行われるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記濃縮乳は、脱脂粉乳および全乳からなる群のいずれかから導出されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記温度は約84から約92℃であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記時間は約55から約65分であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記生成された熱誘導フレーバ化合物は、ラクトン、アセチル、およびフランからなる群のいずれかであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記生成されたラクトンは、γ−ヘキサラクトン、γ−オクタラクトン、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、6−ドデセン−γ−ラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−オクタラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン、およびδ−テトラデカラクトンからなる群のいずれかであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記クエン酸塩はクエン酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記窒素源は酵母エキスを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記ラクトース発酵菌は、ラクトコッカスクレモリス(Lactococcus cremoris)およびラクトコッカスラクティス(Lactococcus lactis)からなる群のいずれかであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記フレーバ生成菌は、ラクトコッカスラクティス属ジアセチラクティス(Lactococcus lactis spp.diacetylactis)およびロイコノストッククレモリス(Leuconostoc cremoris)からなる群のいずれかであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項20】
フレーバ化合物を調製することによって作製された低脂肪クリームチーズ様発酵製品であって、その製造方法が、(a)乳製品を60℃から95℃までの範囲の温度で15分から24時間加熱して、熱誘導フレーバ化合物を製造させて、加熱乳製品を提供するステップと、
(b)前記加熱した乳製品を、可食クエン酸塩および/または対応する酸、可食窒素源、および任意選択で約2パーセント未満のラクトース濃縮物を含む濃縮乳と混合させて、乳混合物を提供するステップと、
(c)前記乳混合物を発酵段階1および発酵段階2を含む2段階発酵サイクルで、ラクトース発酵菌およびフレーバ生成菌の存在下で発酵させるステップであって、段階1は曝気なしで行われ、段階2は曝気させて行われるステップと、
(d)ステップ(a)、(b)および(c)で調製された前記フレーバ化合物を低脂肪クリームチーズ様ベースと混合させるステップであって、最終製品は約20パーセント未満の脂肪を含んでいるステップと
を含むことを特徴とする製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−97591(P2007−97591A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265288(P2006−265288)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(501360131)クラフト・フーヅ・ホールディングス・インコーポレイテッド (49)
【氏名又は名称原語表記】KRAFT FOODS HOLDINGS, INC.
【住所又は居所原語表記】Three Lakes Drive, Northfield, Illinois 60093 United States of America
【Fターム(参考)】