説明

バイナリー発電装置

【課題】潤滑油の循環配管における圧損を少なくすることと、膨張機に送り込む潤滑油を効率よく安定して加熱できるようにすることである。
【解決手段】膨張機2で使用後の潤滑油Lを分離タンク4で作動媒体Mと分離し、発電機3からの放熱を利用して加熱したのち、循環使用するように膨張機2に送り込むことにより、潤滑油Lの循環配管7を短くして圧損を少なくするとともに、膨張機2に送り込む潤滑油Lを効率よく安定して加熱できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低沸点の作動媒体を蒸発させて発電機を駆動するバイナリー発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイナリー発電装置は、低沸点の作動媒体を、蒸発器によって地熱や工場廃熱等の熱源と熱交換して蒸発させ、この作動媒体の蒸気で発電機を駆動するものであり、炭酸ガスを排出しない地球環境にやさしい発電装置として期待されている。このようなバイナリー発電装置には、作動媒体の蒸気を膨張させる膨張機を用いて発電機を駆動するようにしたものがある(例えば、特許文献1、2参照)。この膨張機としては、スクリュ式、ロータリ式、スクロール式、ターボ式、レシプロ式等のものがある。また、低沸点の作動媒体としては、以前はフロンが多く使用されていたが、現在はアンモニア、ブタン、ペンタン等が使用されている。
【0003】
特許文献1に記載されたものは、図4に示すように、工場廃熱の熱源である高温流体を通すパイプ51が設けられた蒸発器52に、低沸点の作動媒体をポンプP1で送給して蒸発させるとともに、潤滑油をポンプP2でパイプ53に送給して加熱し、蒸発させた作動媒体と加熱した潤滑油をスクリュ式の膨張機54に送り込んで、作動媒体による膨張機54の作動で発電機55を駆動するようにしている。膨張機54で使用後の作動媒体と潤滑油は分離タンク56で分離され、分離された作動媒体は凝縮器57で液化されたのち、ポンプP1で再び蒸発器52に送給される。一方、分離された潤滑油はポンプP2で蒸発器52に送給され、再び加熱されて循環使用される。
【0004】
また、特許文献2に記載されたものは、膨張機の駆動軸を保持するシール部から発電機の回転子に至る周囲空間を密閉し、作動媒体の大気中への漏洩を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−56104号公報
【特許文献2】特開平5−98902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された従来のバイナリー発電装置は、工場廃熱の熱源である高温流体、作動媒体および潤滑油を蒸発器に送給しているので、蒸発器が大型で複雑な構造のものとなるのみでなく、潤滑油の循環配管を蒸発器まで延長する必要がある。このため、長い循環配管での潤滑油の圧損が大きくなって、潤滑油ポンプの負荷が大きくなる問題がある。また、膨張機に送り込む潤滑油は、同じく膨張機に送り込む作動媒体と同じ程度の温度に加熱することが望ましいが、蒸発器から膨張機までの潤滑油配管が長くなると、配管からの放熱量が多くなり、送り込む潤滑油の温度が低下する問題もある。このように潤滑油の温度が低下すると、膨張機内の作動媒体の熱が潤滑油に奪われ、作動媒体の熱エネルギを有効活用できなくなる。
【0007】
さらに、従来のバイナリー発電装置は、同じ蒸発器内で高温流体から作動媒体と潤滑油の両方に熱交換しているので、蒸発器への作動媒体の送給量が減ると、潤滑油の加熱温度が必要以上に高くなり、逆に、作動媒体の送給量が増えると、潤滑油の加熱が不十分となる問題もある。潤滑油の加熱温度が必要以上に高くなると、潤滑油の粘度が低下し、膨張機での潤滑性能が不十分となる。
【0008】
そこで、本発明の課題は、潤滑油の循環配管における圧損を少なくすることと、膨張機に送り込む潤滑油を効率よく安定して加熱できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、蒸発器において熱源と作動媒体とを熱交換して、前記作動媒体を蒸発させ、前記蒸発した作動媒体と加熱した潤滑油とを膨張機に送り込んで、前記作動媒体による膨張機の作動によって発電機を駆動し、前記膨張機から排出される前記潤滑油と前記作動媒体とを分離してそれぞれ加熱したのち、前記膨張機で循環使用するバイナリー発電装置において、前記作動媒体と分離した潤滑油を、前記発電機からの放熱を利用して加熱する手段を備える構成を採用した。
【0010】
すなわち、作動媒体と分離した潤滑油を、発電機からの放熱を利用して加熱する手段を備えることにより、循環使用する潤滑油を蒸発器に送給することなく、短い循環配管で循環させて、循環配管での圧損を少なくするとともに、発電機からの放熱を有効活用して、膨張機に送り込む潤滑油を膨張機内の作動媒体と同程度の温度に安定して加熱し、作動媒体から潤滑油への抜熱量を減らして、膨張機に送り込まれる作動媒体の熱エネルギを発電機の駆動に効率よく活用できるようにした。また、このバイナリー発電装置は、蒸発器で作動媒体のみを熱交換するので、蒸発器を小型でシンプルな構造のものにできるとともに、発電機の放熱による潤滑油の加熱で発電機の冷却を促進して、発電機のロータ部の減磁、温度上昇に伴うコイルの抵抗値の増加、および発電機の発熱による発電効率の低下を防止することもできる。
【0011】
前記発電機からの放熱を利用して潤滑油を加熱する手段を、前記潤滑油を通すように、前記発電機のケーシングの外面に沿わせて配設された配管とすることにより、簡単な施工で発電機からの放熱を効率よく利用して潤滑油を加熱することができ、メンテナンスも容易に行うことができる。
【0012】
前記発電機からの放熱を利用して潤滑油を加熱する手段を、前記潤滑油を通すように、前記発電機のケーシングの内面に沿わせて配設された配管とすることにより、周囲の温度に影響されずに、発電機からの放熱をより効率よく利用して、潤滑油をより高い温度まで加熱することができる。
【0013】
前記膨張機を、前記発電機と共通のケーシングに収納することにより、膨張機の駆動軸支持部のシールを不要とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るバイナリー発電装置は、作動媒体と分離した潤滑油を、発電機からの放熱を利用して加熱する手段を備えたので、使用後の潤滑油を短い循環配管で循環させて、循環配管での圧損を少なくできるとともに、発電機からの放熱を有効活用して、膨張機に送り込む潤滑油を安定して加熱し、作動媒体から潤滑油への抜熱量を減らして、膨張機に送り込まれる作動媒体の熱エネルギを発電機の駆動に効率よく活用することができる。また、このバイナリー発電装置は、蒸発器を小型でシンプルな構造のものにできるとともに、発電機の放熱による潤滑油の加熱で発電機の冷却を促進して、発電機のロータ部の減磁、温度上昇に伴うコイルの抵抗値の増加、および発電機の発熱による発電効率の低下を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】バイナリー発電装置の実施形態を示す系統図
【図2】図1の膨張機と発電機を示す縦断面図
【図3】図2の変形例を示す縦断面図
【図4】従来のバイナリー発電装置の系統図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。このバイナリー発電装置は、図1に示すように、低沸点の作動媒体Mを工場廃熱の熱源である温水Hと熱交換させて蒸発させる蒸発器1と、蒸発した作動媒体Mと加熱された潤滑油Lが送り込まれて作動する膨張機2と、膨張機2の作動で駆動される発電機3と、膨張機2で使用後の作動媒体Mと潤滑油Lを分離する分離タンク4と、分離タンク4で分離された作動媒体Mを、冷却水Cと熱交換させて液化させる凝縮器5とで構成され、凝縮器5で液化された作動媒体Mが、ポンプ6aで再び蒸発器1に送給されて、循環使用されるようになっている。また、分離タンク4で分離された潤滑油Lは、ポンプ6bで循環配管7に送り出され、後述するように、発電機3からの放熱を利用して加熱されたのち、循環使用されるように膨張機2に送り込まれる。したがって、短い循環配管7で潤滑油Lを循環使用することができ、循環配管7での圧損を少なくすることができる。
【0017】
図2に示すように、前記膨張機2は発電機3と共通のケーシング8に収容され、分離タンク4で分離された潤滑油Lの循環配管7が、発電機3部分のケーシング8の外周面に沿わされて螺旋状に巻回されている。したがって、簡単な施工とメンテナンスで発電機3からの放熱を効率よく利用して、膨張機2に送り込まれる潤滑油Lを、膨張機2内の作動媒体Mと同程度の温度に安定して加熱することができ、作動媒体Mから潤滑油Lへの抜熱量を減らして、膨張機2に送り込まれる作動媒体Mの熱エネルギを発電機3の駆動に効率よく活用することができる。
【0018】
前記膨張機2は、ケーシング8内に雌雄一対のスクリュ21a、21bを収容し、供給口22から供給される蒸気の作動媒体Mが膨張するときの圧力によってスクリュ21a、21bを回転させ、膨張して圧力が下がった作動媒体Mを排出口23から排出するスクリュ式のものである。また、発電機3は、ケーシング8内に固定子31と回転子32を収容し、回転子32を駆動軸33で膨張機2の一方のスクリュ21aと連結したものであり、回転子32の回転によって、固定子31に巻回したコイル(図示省略)に電力を発生させる。
【0019】
図3は、前記潤滑油Lの循環配管7の巻回形態の変形例を示す。この変形例では、循環配管7が、ケーシング8の発電機3部分の膨張機2側の内周面に沿わされて螺旋状に巻回されている。したがって、周囲の温度に影響されずに、発電機3からの放熱をより効率よく利用して、潤滑油Lをより高い温度まで加熱することができる。
【0020】
なお、上述した実施形態と変形例では、循環配管7をケーシング8の外周面や内周面に沿わせて螺旋状に巻回したが、循環配管7は、ケーシング8の外面や内面に、ジグザグ状等の他の形態で沿わせて配設してもよい。
【0021】
上述した実施形態では、蒸発器で作動媒体を蒸発させる熱源を、工場廃熱で得られる温水としたが、この熱源は工場廃熱で得られる高温蒸気等としてもよく、工場廃熱以外の地熱等で得られる温水等としてもよい。
【0022】
また、上述した実施形態では、膨張機をスクリュ式のものとしたが、膨張機はロータリ式、スクロール式、ターボ式、レシプロ式等の他の形式のものとすることもできる。
【符号の説明】
【0023】
M 作動媒体
L 潤滑油
H 温水
C 冷却水
1 蒸発器
2 膨張機
3 発電機
4 分離タンク
5 凝縮器
6a、6b ポンプ
7 循環配管
8 ケーシング
21a、21b スクリュ
22 供給口
23 排出口
31 固定子
32 回転子
33 駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発器において熱源と作動媒体とを熱交換して、前記作動媒体を蒸発させ、前記蒸発した作動媒体と加熱した潤滑油とを膨張機に送り込んで、前記作動媒体による膨張機の作動によって発電機を駆動し、前記膨張機から排出される前記潤滑油と前記作動媒体とを分離してそれぞれ加熱したのち、前記膨張機で循環使用するバイナリー発電装置において、前記作動媒体と分離した潤滑油を、前記発電機からの放熱を利用して加熱する手段を備えることを特徴とするバイナリー発電装置。
【請求項2】
前記発電機からの放熱を利用して潤滑油を加熱する手段が、前記潤滑油を通すように、前記発電機のケーシングの外面に沿わせて配設された配管である請求項1に記載のバイナリー発電装置。
【請求項3】
前記発電機からの放熱を利用して潤滑油を加熱する手段が、前記潤滑油を通すように、前記発電機のケーシングの内面に沿わせて配設された配管である請求項1に記載のバイナリー発電装置。
【請求項4】
前記膨張機を、前記発電機と共通のケーシングに収納した請求項1乃至3のいずれかに記載のバイナリー発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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