説明

バイポーラ電極の製造方法及びバイポーラ電極の接合体の製造方法

【課題】製造工程がシンプルで設備コストを抑えることのできるバイポーラ電極及びバイポーラ電極の接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】一の集電体3の一方の板面3aに正極活物質層を形成するとともに、同他方の板面3bに負極活物質層を形成するバイポーラ電極1の製造方法であって、帯状に形成された集電体3の一方の板面3aを一方向に向けて集電体3を一の送出方向Y1に搬送するとともに正極活物質層を形成する正極用スラリー又は負極活物質層を形成する負極用スラリーのいずれかを塗工する工程と、集電体3の送出方向Y1を変えて他の板面3bを前記一方向に向け、一方の板面3aに形成された極と反対の電極活物質層を形成するスラリーを他方の板面3bに塗工する工程とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーラ電極の製造方法及びバイポーラ電極の接合体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一枚の金属板の一方の面に正極活物質層が形成され、同他方の板面に負極活物質層が形成されたバイポーラ(双極)型電極を積層させることで電圧を高められるバイポーラ電池が開発されている(例えば、下記特許文献1)。
このようなバイポーラ電池を構成するバイポーラ電極は、正極活物質層がアルミニウムにより形成された正極集電体の片面に形成され、負極活物質層が銅により形成された負極集電体の片面に形成され、これらの正極集電体及び負極集電体の各活物質層が形成されていない面同士を、導電性を有する接着剤により接合させてバイポーラ電極としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−317468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1のバイポーラ電池の製造方法によれば、正極を製造するラインと負極を製造するラインとをそれぞれ別々に設ける必要があり、かつ正極集電体と負極集電体とを接合する工程が必要となるため製造工程が煩雑となるとともに、製造設備が複雑となり設備コストが嵩むという問題があった。
そこで、本発明は、製造工程がシンプルで設備コストを抑えることのできるバイポーラ電極及びバイポーラ電極の接合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、一の集電体の一方の板面に正極活物質層を形成するとともに、同他方の板面に負極活物質層を形成するバイポーラ電極の製造方法であって、帯状に形成された前記集電体の前記一方の板面を一方向に向けて該集電体を一の送出方向に搬送するとともに正極活物質層を形成する正極用スラリー又は負極活物質層を形成する負極用スラリーのいずれかを塗工する工程と、前記集電体の送出方向を変えて前記他の板面を前記一方向に向け、前記一方の板面に形成された極と反対の電極活物質層を形成するスラリーを前記他方の板面に塗工する工程とを備えていることを特徴とする。
本発明では、正極用スラリー又は負極用スラリーが一方の板面に塗工された集電体を送出方向を変えて、既に塗布された電極用のスラリーと反対の電極用スラリーを他方の板面に塗布するようになっているため、正極活物質層を設ける集電体と負極活物質層を設ける集電体と別々に設けることなく、正極活物質層と負極活物質層を1の集電体に形成することができる。また、正極活物質層を形成する製造ラインと負極活物質層を形成する製造ラインとを1ライン上に統合させることができる。
請求項2の発明は、請求項1に記載のバイポーラ電極の製造方法において、前記一方の板面が上方を向くようにして前記集電体を前記一の送出方向に搬送するとともに、前記一の板面に前記正極用スラリー又は前記負極用スラリーを塗工する工程と、該一の板面を乾燥炉において乾燥させる工程と、前記集電体の送出方向を変えて前記他の板面を上方に向け、前記一方の板面に形成された極と反対の電極活物質層を形成するスラリーを前記他方の板面に塗工する工程と、前記集電体を前記乾燥炉と同一の乾燥炉に送出して前記他の板面を乾燥する工程を有することを特徴とする。
本発明では、正極用スラリー又は負極用スラリーを塗工する集電体の板面を上方に向けて該集電体を搬出するため、正極用スラリー及び負極用スラリーを前記板面上に均質に塗工しやすい。
また、一の板面を乾燥させる乾燥炉と他の板面を乾燥させる乾燥炉とを共通化することができるので、バイポーラ電極の製造設備をコンパクトにすることができるとともに、設備コストを抑えることができる。
請求項3の発明は、請求項2に記載のバイポーラ電極の製造方法において、前記集電体には、前記正極用スラリーを前記負極用スラリーよりも先に塗工することを特徴とする。
本発明では、負極活物質層よりも肉厚に形成される正極活物質層を先に形成し、該正極用スラリーが塗工された集電体を乾燥炉に少なくとも2度通すことができるため、乾燥炉の乾燥強度を抑えて正極活物質層を確実に乾燥させることができる。
請求項4の発明は、バイポーラ電極の接合体の製造方法において、一方の板面が上方を向くようにして集電体を一の送出方向に搬送するとともに、前記一の板面に正極活物質層を形成する正極用スラリー又は負極活物質層を形成する負極用スラリーを塗工する工程と、該一の板面を乾燥炉において乾燥させる工程と、前記集電体の送出方向を変えて前記他の板面を上方に向け、前記一方の板面に形成された極と反対の電極活物質を形成するスラリーを前記他方の板面に塗工する工程と、前記集電体を乾燥炉に送出して前記他の板面を乾燥させる工程と、前記集電体を1単位のバイポーラ電極を形成する寸法に裁断する工程と、前記裁断された1単位のバイポーラ電極をセパレータを介挿させた状態で複数積層する工程とを有することを特徴とする。
本発明では、バイポーラ電極の接合体の製造において、正極用スラリー又は負極用スラリーを塗工する集電体の板面を上方に向けて該集電体を搬出するため、正極用スラリー及び負極用スラリーを前記板面上に均質に塗工しやすい。また、一の板面を乾燥させる乾燥炉と他の板面を乾燥させる乾燥炉とを共通化することができるので、バイポーラ電極の接合体の製造設備をコンパクトにすることができるとともに、設備コストを抑えることができる。
請求項5の発明は、請求項4に記載のバイポーラ電極の接合体の製造方法において、前記セパレータは、前記正極活物質層と前記負極活物質層とが形成された帯状のバイポーラ電極の一方の板面に貼着され、その後、該帯状のバイポーラ電極と共に裁断されて一単位のバイポーラ電極を形成し、該一単位のバイポーラ電極の前記一方の板面が一方向を向くように積層されて形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、正極活物質層を形成する正極用スラリー又は負極活物質層を形成する負極用スラリーが一方の板面に塗工された集電体の送出方向を変えて、既に塗工されたスラリーと反対の電極活物質層を形成するスラリーを他方の板面に塗工するようになっているため、正極活物質層を設ける集電体と負極活物質層を設ける集電体とを別体とすることなく、正極活物質層と負極活物質層を1の集電体に形成することができる。したがって、別々に形成された正極集電体と負極集電体とを貼着させるという工程を省いてバイポーラ電極の製造の工程数を抑えることができるという効果を奏する。
また、正極活物質層を形成する製造ラインと負極活物質層を形成する製造ラインとを1ライン上に統合させることができるため、バイポーラ電極を製造する設備コストを低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】は、本発明の一実施形態として示した製造方法を用いて製造されたバイポーラ電極の接合体を模式的に示した断面図である。
【図2】は、本発明の一実施形態として示した製造方法の製造工程を示した図である。
【図3】は、本発明の一実施形態として示した製造方法の他の例の製造工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の製造方法により製造されたバイポーラ電極1の接合体2を模式的に示した断面図である。
【0009】
図1に示すように、本発明の製造方法により製造されたバイポーラ電極1の接合体2は、集電体3である金属板の一方の板面(表面)3aに正極活物質層4が形成され、同金属板の他方の板面(裏面)に負極活物質層5が形成されたバイポーラ電極1を、正極又は負極をそれぞれ同一方向に向けて積層するとともに、バイポーラ電極1,1同士の間にセパレータ6を介挿させてなるものである。
【0010】
集電体3は、アルミニウム箔や銅板よりなる金属板又は金属以外の導電性を有する部材により形成されたものである。
【0011】
正極活物質層4は、例えば正極活物質、導電助剤及びバインダーを含有する結着剤を溶媒に分散させてなる正極用スラリーを用いて構成されたものであり、集電体3の一方の板面3aに形成されている。
正極活物質としては、例えば一般式LiMxOy(ただし、Mは金属であり、x及びyは金属Mと酸素Oの組成比である)で表される金属酸リチウム化合物が用いられている。具体的には、金属酸リチウム化合物としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等が用いられている。
導電助剤としてはアセチレンブラック等が用いられ、結着剤としてはポリフッ化ビニリデン等が用いられている。
【0012】
負極活物質層5は、例えば炭素粉末や黒鉛粉末等からなる炭素材料と、ポリフッ化ビニリデンのような結着剤とを溶媒に分散させてなる負極用スラリーを用いて構成されたものであり、集電体3の他方の板面3bに形成されている。
【0013】
セパレータ6には、内部に空隙を有する不織布等を基材として電解液が含浸されて形成されたものか、ゲル状又は固体電解質により形成されたものが用いられる。
不織布等の基材により形成される場合のセパレータの材質としては、特に限定されないがポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン等)やポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。
【0014】
ゲル状又は固体電解質によりセパレータとする場合、例えば、高分子マトリックス及び非水電解質液(すなわち、非水溶媒及び電解質塩)からなる電解液から溶媒が除去され、ゲル化されて表面に粘着性を生じるもの、又は、同様の電解液から溶媒が除去されて、固体電解質となるものが用いられる。いずれの電解液であっても、該電解液が正極活物質層4又は負極活物質層5に塗工された際に粘着性を有するものが望ましい。また、電解液は、正極活物質層4又は負極活物質層5の板面から分離しない自立膜を形成するものであることが好ましい。
【0015】
高分子マトリックスとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド等のアルキレンエーテルをはじめ、ポリエステル、ポリアミン、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン等が用いられる。
【0016】
非水溶媒は、γ−ブチロラクトン等のラクトン化合物;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の炭酸エステル化合物;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等のカルボン酸エステル化合物;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;スルホラン等のスルホン化合物、ジメチルホルムアミド等のアミド化合物等、単独または2種類以上を混合して調製される。
【0017】
また、電解液を固体電解質膜にする場合には、アセトニトリル等のニトリル化合物;テトラヒドロフラン等のエーテル化合物:ジメチルホルムアミド等のアミド系化合物を単独または2種類以上を混合して調製される。
電解質塩としては、特に限定されないが六フッ化リン酸リチウム、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム等のリチウム塩等が使用できる。
【0018】
次に、本発明の一実施形態であるバイポーラ電極1の接合体2の製造方法について図 を用いて説明する。
バイポーラ電極1の接合体2は、図2に示すように、(第1工程)集電体3の一方の板面3aが上方を向くようにして集電体3を一の送出方向Y1に搬送するとともに、一の板面3aに正極用スラリーを塗布する工程と、(第2工程)該一の板面3aを乾燥炉7において乾燥させる工程と、(第3工程)集電体3の送出方向を一の送出方向Y1と反対方向Y2に変更し、他の板面3bを上方に向け、負極用スラリーを他方の板面3bに塗布する工程と、(第4工程)集電体3を再び乾燥炉7に通して他の板面3bを乾燥する工程と、(第5工程)集電体3を1単位のバイポーラ電極1を形成する寸法に裁断する工程と、(第6工程)裁断されたバイポーラ電極1をセパレータ6を介挿させた状態で複数積層する工程とを備えている。なお、図2において正極活物質層4及び負極活物質層5の図示は省略する。
【0019】
<正極活物質層を形成する工程>
正極活物質層4は第1工程及び第2工程を経て形成される。
すなわち、(第1工程)において、アルミニウム箔等の金属板又は導電性を有する基板を長尺の帯状に形成し、ロール体にしておいたものを集電体3として用意する。ロール状の集電体3の一端を一方の板面3aを上方に向けて引き出し、集電体3の長手方向を送出方向Y1として該集電体3を水平方向に引き出しながら搬送する。この際、集電体3の送出方向Y1側に設置された正極用スラリー塗工機8によって、ダイコート、スクリーン印刷、インクジェット等の方法によって、一方の板面3aに正極用スラリーを厚みが均質になるように塗工して、正極活物質を塗布する。なお、この際、集電体3上に一定量の正極用スラリーを流した後、一定の間隙寸法に設定された2つのロール間を通過させる等して正極活物質の厚さを均質にするとよい。
【0020】
そして、(第2工程)において、正極活物質が塗布された集電体3を、正極用スラリー塗工機8よりも送出方向Y1側に設置された乾燥炉7内の上側に送り込み、第1回目の正極用スラリーの乾燥を行い、図1に示す正極活物質層4を形成する。乾燥は、赤外線若しくは紫外線の照射又は熱風乾燥等により、正極用スラリーを変成させない程度に高い温度で、かつ使用する材料に応じた時間行う。この際、正極用スラリーは、完全に乾燥させなくてもよく、例えば正極用スラリーが逆さになっても垂れ落ちずかつ流動、変形しない程度に乾燥させておき、後述する負極活物質層5の形成時に完全に乾燥させて、同時に正極活物質層4を形成するようにしてもよい。なお、乾燥後は空冷により冷却する。
このようにして、集電体3の一方の板面3aに正極活物質層4が形成される。
【0021】
<負極活物質層を形成する工程>
負極活物質層5は第3工程及び第4工程を経て形成される。
すなわち、(第3工程)において、乾燥炉7の送出方向Y1側に設置されたロールプレス機9に正極活物質層4が形成された集電体3を送出し、集電体3の送出方向Y1を下方に変え、更にその後送出方向を送出方向Y1と反対方向Y2に変更して水平方向に送出する。このようにして、正極活物質層4が形成されていない他の板面3bを上方に向けるとともに、正極活物質層4の厚みをロールプレス機9によって均一にする。そして、乾燥炉7を挟んで正極用スラリー塗工機8の反対側に設置された負極用スラリー塗工機10に集電体3を搬出し、他の板面3bに負極用スラリーを塗工する。なお、負極用スラリーの塗工方法は、上述した正極用スラリーの塗工方法と同様である。
【0022】
そして、(第4工程)において、負極用スラリーが塗工された集電体3を、第2の工程で正極用スラリーを乾燥させた乾燥炉7に再び送り込み、負極用スラリーの第1回目の乾燥を行い、図1に示す負極活物質層5を形成する。なお、集電体3は、第2の工程で正極用スラリーを乾燥させる通路よりも下方を通過させる。この際、負極活物質層5の裏面に形成された正極活物質層4が再度乾燥炉7を通過するため、正極活物質層4にとっては、第2回目の乾燥となる。
このようにして、集電体3の一方の板面3aに正極活物質層4が形成され、他方の板面3bに負極活物質層5が形成された帯状のバイポーラ電極1ができる。
【0023】
<バイポーラ電極の接合体を形成する工程>
上記のようにして作製されたバイポーラ電極1は、第5工程及び第6工程を経てバイポーラ電極の接合体2となる。
すなわち、(第5工程)において、帯状に形成されたバイポーラ電極1を所定の寸法で裁断又は打ち抜きし、1単位のバイポーラ電極1とし、(第6工程)において、この1単位のバイポーラ電極1よりも大寸法に形成され、かつ電解液を含浸させたセパレータ6を、1単位のバイポーラ電極1,1間に介挿させて複数積層する。
ここで、バイポーラ電極1の接合体2は、必ずしも第5工程と第6工程の順で形成される必要はなく、図2に示すように、帯状のバイポーラ電極1の向きY2をロールプレス機9により更に下方に向けた後、更に送出方向Y1に変え、帯状に形成されたセパレータ6を電解質とともに貼着させ(第6工程)、その後バイポーラ電極1と共に裁断し(第5工程)、一単位にされたバイポーラ電極1を例えば正極を上方に向けて積層してもよい。
【0024】
<バイポーラ電池を製造する工程>
上記の方法で得られたバイポーラ電極1の接合体2は、図1に示すように、一の金属板11の板面に正極活物質層4が形成された正極集電体12と、他の金属板13の板面に負極活物質層5が形成された負極集電体14との間に、直列接続されるように挟み込まれ、正極集電体12と負極集電体14のそれぞれに接続された端子用タブ(不図示)を外方に突出させた状態で、例えばラミネートフィルム等のケースで包装し、外周を封止してバイポーラ電池とすることができる。
【0025】
このように、本発明のバイポーラ電極1の製造方法又はバイポーラ電極1の接合体2の製造方法によれば、正極用スラリーが一方の板面3aに塗工された集電体3の送出方向Y1を変えて集電体3を反転させ、負極用スラリーを他方の板面3bに塗工するようになっている。したがって、正極活物質層4を形成する集電体3と負極活物質層5を形成する集電体3とを別々に形成してこれらを貼り合わせるという工程を省略することができ、バイポーラ電極1の工程数を抑えて製造コストを抑制することができるという効果が得られる。
【0026】
また、正極活物質層4を形成する製造ラインと負極活物質層5を形成する製造ラインとを1ライン上に統合させることができるため、バイポーラ電極1を製造する設備コストを抑制することができるという効果が得られる。
【0027】
また更に、正極用スラリー及び負極用スラリーを共に上方から塗工することができるため、これらをそれぞれ均質に塗ることができ、品質の良いバイポーラ電極1を製造することができるという効果が得られる。
【0028】
また更に、正極用スラリーを塗工して乾燥させる工程において集電体3をその長手方向(すなわち送出方向Y1)に送出させ、その後負極用スラリーを塗工して乾燥させる工程において集電体3を送出方向Y2に送出させて、集電体3を往復させるようにしているため、バイポーラ電極1の製造設備をコンパクトにすることができる。
【0029】
また、正極用スラリー塗工機8と負極用スラリー塗工機10を乾燥炉7を挟んで配置し、第2工程で正極用スラリーを塗工した集電体3を乾燥させる際には乾燥炉7の上側に集電体3を送り込み、第4工程で負極用スラリーの塗工をした集電体3を乾燥させる際には第2工程の集電体3の下方に集電体3を送り込んで乾燥させるため、乾燥炉7を共通化するとともに極力コンパクト形成し、乾燥炉7の設備費用を抑えることができるという効果が得られる。また、バイポーラ電極1の製造設備の設置スペースをコンパクトにすることができるという効果が得られる。
【0030】
また、ロールプレス機9により正極活物質層4及び負極活物質層5の厚さを調整することができるという効果が得られる。
また更に、帯状に形成されたセパレータ6に電解液を含浸させて帯状のバイポーラ電極1に貼着した場合には、セパレータ6の介挿についてもバイポーラ電極の製造ラインと同一のラインで行うことが出来る。
【0031】
また、正極活物質層4は負極活物質層5よりも厚く形成されることが望ましいため、正極用スラリーは負極用スラリーよりも厚く塗工されるが、正極用スラリーを負極用スラリーよりも先に塗工することで乾燥炉7を通過させる回数が負極用スラリーよりも多くなるため、正極用スラリーの乾燥時間を長く設定して確実に正極用スラリーを乾燥させることができるという効果が得られる。また、正極用スラリーの乾燥を複数回に分けて行うことができるため、より均質な正極活物質層4が形成されるという効果が得られる。
【0032】
上記の実施形態において、セパレータ5の介挿に代えて、バイポーラ電極1,1間に固体電解質又はゲル状の電解質を介挿させてもよい。
すなわち、図3に示すように、負極用スラリーを乾燥させて図1に示す負極活物質層5を形成した後、帯状のバイポーラ電極1の向きをロールプレス機9により更に下方に向けて送出方向Y2を再び送出方向Y1に変え、固体電解質又はゲル状電解質を形成する電解液を塗工機15によって図1に示す正極活物質層4上及び負極活物質層5上のいずれか一方又は双方に塗工し、この電解液が塗工されたバイポーラ電極1を、乾燥炉7の最下方に送り込んで電解液を乾燥させ固体化又はゲル化し、バイポーラ電極1を裁断して積層した際にバイポーラ電極1,1間に固体又はゲル状電解質が介在するようにしてもよい。
【0033】
また、集電体3は、正極用スラリーを負極用スラリーよりも先に塗工したが、乾燥炉7において確実に乾燥できるよう乾燥時間を設定すれば、負極用スラリーを正極用スラリーよりも先に塗工してもかまわない。
なお、正極用スラリーを乾燥する乾燥炉7と負極用スラリーを乾燥する乾燥炉7、更には電解液を乾燥する乾燥炉7は、全て共通化されているが、これらは別個に設けられたものであってもよい。
また、集電体3は、正極用スラリーを又は負極用スラリーを塗工する板面を上方に向けて搬送されるようにしたがが、スラリーが均質に塗工できる限りにおいて、スラリーを下方から塗工してもよく、又は、集電体3の板面を起立させた状態で搬送し、該板面に対して直交する側方からスラリーを塗工してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 バイポーラ電極
2 バイポーラ電極の接合体
3 集電体
3a 一方の板面
3b 他方の板面
4 正極活物質層
5 負極活物質層
6 セパレータ
7 乾燥炉
Y1 一方の送出方向
Y2 一方の送出方向と反対の送出方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の集電体の一方の板面に正極活物質層を形成するとともに、同他方の板面に負極活物質層を形成するバイポーラ電極の製造方法であって、
帯状に形成された前記集電体の前記一方の板面を一方向に向けて該集電体を一の送出方向に搬送するとともに正極活物質層を形成する正極用スラリー又は負極活物質層を形成する負極用スラリーのいずれかを塗工する工程と、
前記集電体の送出方向を変えて前記他の板面を前記一方向に向け、前記一方の板面に形成された極と反対の電極活物質層を形成するスラリーを前記他方の板面に塗工する工程とを備えていることを特徴とするバイポーラ電極の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバイポーラ電極の製造方法において、
前記一方の板面が上方を向くようにして前記集電体を前記一の送出方向に搬送するとともに、前記一の板面に前記正極用スラリー又は前記負極用スラリーを塗工する工程と、
該一の板面を乾燥炉において乾燥させる工程と、
前記集電体の送出方向を変えて前記他の板面を上方に向け、前記一方の板面に形成された極と反対の電極活物質層を形成するスラリーを前記他方の板面に塗工する工程と、
前記集電体を前記乾燥炉と同一の乾燥炉に送出して前記他の板面を乾燥する工程を有することを特徴とするバイポーラ電極の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のバイポーラ電極の製造方法において、
前記集電体には、前記正極用スラリーを前記負極用スラリーよりも先に塗工することを特徴とするバイポーラ電極の製造方法。
【請求項4】
バイポーラ電極の接合体の製造方法において、
一方の板面が上方を向くようにして集電体を一の送出方向に搬送するとともに、前記一の板面に正極活物質層を形成する正極用スラリー又は負極活物質層を形成する負極用スラリーを塗工する工程と、
該一の板面を乾燥炉において乾燥させる工程と、
前記集電体の送出方向を変えて前記他の板面を上方に向け、前記一方の板面に形成された極と反対の電極活物質層を形成するスラリーを前記他方の板面に塗工する工程と、
前記集電体を乾燥炉に送出して前記他の板面を乾燥させる工程と、
前記集電体を1単位のバイポーラ電極を形成する寸法に裁断する工程と、
前記裁断された1単位のバイポーラ電極をセパレータを介挿させた状態で複数積層する工程とを有することを特徴とするバイポーラ電極の接合体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のバイポーラ電極の接合体の製造方法において、
前記セパレータは、前記正極活物質層と前記負極活物質層とが形成された帯状のバイポーラ電極の一方の板面に貼着され、その後、該帯状のバイポーラ電極と共に裁断されて一単位のバイポーラ電極を形成し、該一単位のバイポーラ電極の前記一方の板面が一方向を向くように積層されて形成されることを特徴とするバイポーラ電極の接合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−54826(P2013−54826A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190158(P2011−190158)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】