説明

バインダー組成物

【課題】従来のバインダーの改善をもたらすバインダー組成物を提供する。
【解決手段】エマルジョンコポリマーおよびポリオール架橋剤を含むバインダー組成物。本発明の一つの態様は、(a)40℃から70℃の測定Tg、および40%以上の合計重量固形分を有する、10重量%から25重量%のカルボキシ酸モノマーを含む少なくとも1種のポリカルボキシエマルジョンコポリマー;ならびに(b)第一ヒドロキシ基および少なくとも1つの追加のヒドロキシ基を含み、第一ヒドロキシ基当量のカルボキシ基当量に対する比が0.25から2.0である、700未満の分子量を有する少なくとも1種のポリオール架橋剤を含むバインダー組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な用途の不織繊維を結合させるために有用な組成物である。
【背景技術】
【0002】
フェーシング層間に挟まれた石膏コアから形成されるウォールボードは、ほとんどの現代建築の構造において使用されている。その様々な形態では、材料は、壁および天井などの表面(内装および外装の両方)として用いられる。これは、設置、仕上げ処理、および維持が比較的容易かつ安価であり、かつ好適な形態で、比較的耐火性である。石膏ウォールボードおよび石膏パネルは伝統的に連続プロセスにより製造される。このプロセスにおいては、無水硫酸カルシウム(CaSO)および硫酸カルシウム半水和物(CaSO・1/2HO、焼き石膏とも呼ばれる)の少なくとも1つ、水、および他の物質(硬化促進剤、防水剤、強化材、ガラス繊維などを含み得る)を混合することにより、機械的ミキサー中で石膏スラリーをまず生成させる。石膏スラリーを、通常、連続して前進する下部フェーシングシート上に堆積させる。様々な添加剤、例えば、セルロースおよびガラス繊維をしばしばスラリーに添加して、石膏コアが乾燥または硬化する際に強化されるようにする。石膏コアおよびフェーシング間の接着を改善するために、デンプンをしばしばスラリーに添加する。連続して前進する上部フェーシングシートを石膏上に置き、上部および下部フェーシングシートの端部を好適な接着剤を用いて互いに貼り付ける。シート間に挟まれた未硬化石膏の一体になった連続平坦ストリップを生成させるために、フェーシングシートおよび石膏スラリーを平行な上部および下部形成プレートまたはロール間を通過させる。このような未硬化石膏の平坦なストリップは、フェーシングまたはライナーと呼ばれる。このストリップを、連続して移動するベルトおよびローラーの列の上で数分間輸送し、この間にコアは水和して石膏(CaSO・2HO)に戻る。このプロセスは通常「硬化(setting)」と呼ばれる。その理由は、再水和した石膏は比較的硬いからである。石膏コアが十分に硬化したら、連続ストリップをさらに短い長さ、またはさらには所定の長さの個々のボードもしくはパネルに切断する。
【0003】
切断工程後、石膏ボードを乾燥オーブンまたは釜中へ供給して、過剰の水を蒸発させる。乾燥オーブンの内部で、ボードに乾燥加熱空気を吹き付ける。乾燥石膏ボードをオーブンから取り出した後、ボードの端部を切り落とし、ボードを所望のサイズに切断する。ボードは通常、建築産業に、名目上幅4フィート、長さ8から12フィート以上、名目上厚さ約1/4から1インチのシートの形態で販売され、幅および長さの寸法がボードの2面を規定する。
【0004】
場合によっては、石膏ボードの製造業者は、石膏ボードフェーシングシートを形成するためにクラフト紙などの紙を使用する。紙は低価格のために望ましいが、その使用に関連する欠点がいくつかある。例えば、多くの用途では耐水性が要求されるが、紙フェーシングはこれを提供することができない。液体形体で直接、または高湿度にさらされることにより間接的に水にさらされると、紙は、例えば、剥離などにより非常に劣化しやすくなり、このことにより実質的にその機械的強度が損なわれる。さらに、石膏製品は典型的にはその構造的強度に対する主な一因としてフェーシングの一体性に依存する。その結果、紙で表面仕上げされた製品は、一般に、外装、または湿度条件にさらされることが予想される他の建築用途に適さない。加えて、建物内部におけるカビの増殖および潜在的な健康上の悪影響の問題に関心が高まりつつあり、このような作用は建物の入居者に影響を及ぼし得る。石膏ボードの紙フェーシングは、木材パルプ、および水分または高湿度の存在下でかかる微生物増殖のための栄養物として機能し得る他の有機物質を含む。さらに、紙で仕上げ処理された石膏ボードは耐火性が欠ける。ビル火災の場合、露出した紙フェーシングはすぐに燃え尽きてしまう。石膏それ自体は可燃性でないが、一旦フェーシングがなくなると、ボードの機械的強度は大きく損なわれる。その後のある段階で、ボードは非常に崩れやすく、明らかで重大な影響を伴って下にある枠組み部材および建物の隣接する部分に火が広がってしまう。燃えにくいフェーシングを有するボードは、少なくとも火災でより長く存続し、従って、人および資産の両方を保護するのに非常に望ましい。
【0005】
紙フェーシングシートの使用に関連する欠点を考慮して、他の種類の材料がフェーシングシートとしてしばしば用いられる。このような物質の一つは、例えば、ガラス、ミネラルウールまたはポリエステルなどの繊維状物質で作られた不織マットである。しばしば、マットは、ランダムに配向し、バインダーで互いに固着された不織ガラス繊維で作られる。これらのガラスマットは、フェーシングとして使用される場合、湿分の存在下で増加した寸法安定性、生物学的耐性、ならびに通常の紙フェーシング処理された石膏ボードよりもより高い物理的および機械的特性をもたらす。ボードの表面粗さに関連する問題は、連続コーティングを適用することにより軽減され得る。典型的なコーティング組成物は当該分野において周知である(例えば、米国特許出願公開番号2005/0233657号参照)。不織繊維用の従来のバインダーに関連する欠点は、これらが典型的にはホルムアルデヒド系バインダーであることである。
米国特許第6,299,936号は、(A)フリーラジカル重合により得られる、少なくとも1種のポリマーであって、≦5重量%のα,β−エチレン性不飽和モノ−またはジカルボン酸を共重合形態で含むポリマー;(B)フリーラジカル重合により得られる、少なくとも1種のポリマーであって、≧15重量%のα,β−エチレン性不飽和モノ−またはジカルボン酸を共重合形態で含むポリマー;ならびに(C)少なくとも2つのヒドロキシアルキル基を有する少なくとも1種のアルカノールアミンを含む熱硬化性水性組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開番号2005/0233657号明細書
【特許文献2】米国特許第6,299,936号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のフェーシングシートに関連する前記欠点に対処する代替バインダーが必要とされている。本発明の一つの目的は、次の望ましい特性:耐火性、微生物増殖耐性、ホルムアルデヒドフリーまたは費用効果性の少なくとも1つを、石膏ボードまたは不織繊維を含有する他の物品に提供するバインダー組成物を提供することである。石膏ボードの取り扱い、切断、および設置に必要な、乾燥強度、湿潤強度、および加熱/乾燥強度の少なくとも1つにおいて、または不織繊維を含有する他の物品の性能に関して、従来のバインダーの改善をもたらすバインダー組成物を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様は、(a)40℃から70℃の測定Tg、および40%以上の合計重量固形分を有する、10重量%から25重量%のカルボキシ酸モノマーを含む少なくとも1種のポリカルボキシエマルジョンコポリマー;ならびに(b)第一(primary)ヒドロキシ基および少なくとも1つの追加の(additional)ヒドロキシ基を含み、700未満の分子量を有する少なくとも1種のポリオール架橋剤、ここで第一ヒドロキシ基当量のカルボキシ基当量に対する比が0.25から2.0である;を含むバインダー組成物である。
【0009】
本発明のもう一つ別の態様は、本発明の第一の態様のバインダー組成物により結合された不織繊維を含む不織マットである。
【0010】
本発明のバインダーは、少なくとも1種のポリカルボキシエマルジョンコポリマーおよび少なくとも1種のポリオール架橋剤を含有する。ポリカルボキシエマルジョンコポリマーは、共重合単位として、エマルジョンコポリマー固形分の重量基準で、10重量%から25重量%、好ましくは12重量%から20重量%、最も好ましくは14重量%から17重量%の、カルボン酸基、酸無水物基もしくはその塩、またはヒドロキシル基を有するカルボキシ酸モノマーを含む。好適なカルボキシモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチルマレイン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、a,b−メチレングルタル酸、モノアルキルマレエート、およびモノアルキルフマレート;エチレン性不飽和酸無水物、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アクリル酸、および無水メタクリル酸;ならびにその塩が挙げられる。本発明の好ましい実施形態において、カルボキシモノマーはアクリル酸またはメタクリル酸であってよい。
【0011】
カルボキシ酸(carboxy acid)を任意の好適なモノマーと共重合させることができる。本発明の一つの実施形態において、カルボキシ酸を少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー、例えば、アクリルエステルモノマーと共重合させる。好適なアクリルエステルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、およびヒドロキシプロピルメタクリレート;(メタ)アクリルアミドもしくは置換(メタ)アクリルアミド;スチレンもしくは置換スチレン;ブタジエン;ビニルアセテートもしくは他のビニルエステル;アクリロニトリルもしくはメタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0012】
ポリカルボキシエマルジョンコポリマーは40℃から70℃、好ましくは45℃から65℃、さらに好ましくは50℃から60℃のTgを有し、ここで、TgはASTM3418/82、中点温度;温度およびエンタルピーについてインジウム標準を用いたセル較正で、示差走査熱量分析により測定される。
【0013】
ポリカルボキシエマルジョンコポリマーは、40%以上、好ましくは40%から60%、さらに好ましくは45%から55%の合計重量固形分を有する。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、エマルジョンコポリマーは、5,000から1,000,000、好ましくは20,000から750,000、最も好ましくは30,000から600,000の重量平均分子量を有する。
【0015】
本発明のもう一つ別の実施形態において、エマルジョンコポリマー粒子は、50から300nm、好ましくは75から225nm、さらに好ましくは125から175nmの粒子サイズを有し得る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ポリカルボキシエマルジョンコポリマーは、通常の乳化重合により製造することができ、このエマルジョンプロセスは当業者に周知である。
【0017】
乳化重合プロセスでは、コポリマー組成物の分子量を抑制するために、連鎖移動剤、例えば、メルカプタン、ポリメルカプタン、およびハロゲン化合物を重合混合物において使用できる。一般に、ポリマーバインダーの重量基準で、0重量%から10重量%のC−C20アルキルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、またはメルカプトプロピオン酸のエステルを使用できる。
【0018】
低レベルのプレ架橋をもたらすために、少量の多エチレン性不飽和モノマー、例えば、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどを用いることができる。多エチレン性不飽和モノマーが使用される本発明のこれらの実施形態において、コポリマーの重量基準で0.01重量%から5重量%の量で、これらを使用することが好ましい。
【0019】
本発明のバインダーは、少なくとも1種のポリオール架橋剤をさらに含有する。「ポリオール」とは、本明細書において、少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物を意味する。本発明のバインダーにおいて、第一ヒドロキシル基当量(ポリオールによる寄与)のカルボキシ(−COOH)基当量(エマルジョンコポリマー、可溶性コポリマーおよび多塩基性カルボン酸による寄与)に対する比は0.25から2.0、好ましくは0.4から1.75、さらに好ましくは0.5から1.6である。ポリオールがトリエタノールアミンである本発明のこれらの実施形態において、ヒドロキシ対カルボキシ当量比は、0.25から1.0、さらに好ましくは0.4から0.85、なお一層好ましくは0.5から0.7である。ポリオールがグリセロールである本発明のこれらの実施形態において、ヒドロキシ対カルボキシ当量比は、1.0から2.0、さらに好ましくは1.25から1.75、なお一層好ましくは1.4から1.6であり、この場合、グリセロールは2つの活性ヒドロキシル基を有する。
【0020】
ポリオール架橋剤は、700未満、好ましくは500未満、さらに好ましくは250未満の分子量を有する。
【0021】
好適なポリオールの例としては、例えば、トリエタノールアミン、ヒドロキシアミド基含有ポリオール、グリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、スクロース、グルコース、レゾルシノール、カテコール、ピロガロール、グリコール化尿素、1,4−シクロヘキサンジオール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびある反応性ポリオール、例えば、β−ヒドロキシアルキルアミド、例えば、米国特許第4,076,917号(これによって、参照により本明細書に組み込まれる)の教唆に従って製造されうるようなビス−[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジパミドがあげられるか、または少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する付加ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、部分加水分解ポリビニルアセテート、およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのホモポリマーもしくはコポリマーであってよい。本発明の好ましい実施形態において、ポリオールはトリエタノールアミンまたはグリセロールである。
【0022】
本発明に関して有用なヒドロキシアミドは、Swiftの米国特許第4,076,917号、およびArkensの欧州特許第0,512,732号に記載されているものを包含する。ポリオールがヒドロキシアミドである本発明のこれらの実施形態において、次式(I)の反応性β−ヒドロキシアミド基含有ポリオールであるのが好ましく、これは、ラクトンまたは他の環状エステルとアルカノールアミンと反応生成物である:
【化1】

(式中、RおよびR”は独立して、H、または任意の一価C〜C18直鎖または分岐アルキルを表し、このアルキルは、1または2個のアリールもしくはシクロアルキル基を含むことができるか、または1以上のヒドロキシル、アミン、チオール、アミド、カルボキシルもしくはアルケニル基、またはその組み合わせで置換されていてもよく;R’は、共有結合または二価C〜Cアルキレン基のいずれかを表し、ここで、アルキレン基はアルキル置換基を有していてもよく;yは1または2の整数であり;xは0または1であり、(x+y)=2である)。
【0023】
反応性β−ヒドロキシアミド基含有ポリオールは、1種以上のアルカノールアミンと、1種以上のラクトンまたはラクチドとの反応生成物であり得る。好適なアルカノールアミンは、例えば、モノ−またはジ−エタノールアミン、ならびに任意のC〜C18直鎖または分岐α−アルキルおよび/またはアルケニル(alk(en)yl)置換モノ−またはジ−エタノールアミン(ここで、アルキルおよび/またはアルケニル置換基は、アリール、シクロアルキルおよびアルケニル基を含有し得る)を包含する。置換アルカノールアミンの例は、例えば、モノ−またはジ−イソプロパノールアミンおよび他のモノ−(1−アルキルおよび/またはアルケニル)エタノールアミンまたはジ−(1−アルキルおよび/またはアルケニル)エタノールアミンを包含する。好適なラクトンとしては、例えば、C〜Cヒドロキシカルボン酸のラクチド、グリコリド、およびラクトン、ならびにこれらの二量体およびオリゴマーが挙げられる。好ましいラクトンとしては、例えば、5〜7員環を含むもの、例えば、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトンおよびその任意のα−C〜C18(アルキルおよび/またはアルケニル)一置換形体、例えば、α−メチル−ε−カプロラクトンまたはα−メチル−γ−ブチロラクトンが挙げられる。
【0024】
反応性β−ヒドロキシアミド基含有ポリオール(I)は、ラクトンおよびアルカノール反応物質を単に混合し、必要ならば、例えばラクトンの二量体またはオリゴマーを反応させるときに加熱することにより、製造することができる。好ましくは、反応性β−ヒドロキシアミド基含有ポリオール(I)は、反応物質の「乾燥」または無水混合物で製造される。
【0025】
望ましいβ−ヒドロキシアミドポリオールは、ラクトンまたはラクチドとアルカノールアミンとの反応により製造できる。この反応の具体的な、非制限的例は、カプロラクトンまたはブチロラクトンのいずれかをジエタノールアミンと反応させて、それらの対応するβ−ヒドロキシアミド生成物を形成することである。この反応により、揮発性の高い有機副生成物は形成されない。ラクトンの加水分解により生成される酸(非−無水条件が使用される場合)をはじめとする潜在的な副生成物、および未反応ジエタノールアミンは、硬化して、熱硬化性ネットワークになり得る。従って、本発明の硬化性組成物は、これらで処理された基体からの浸出に抵抗する。
【0026】
ヒドロキシアミドは、好ましくは、バインダー中の合計固形分の1重量%〜30重量%、さらに好ましくは5重量%〜15重量%の量で存在する。
【0027】
本発明の一つの実施形態において、ポリカルボキシエマルジョンコポリマーは、他のポリマーとブレンドされない。本発明の別の実施形態において、バインダー組成物は、10重量%未満、好ましくは6重量%未満しかカルボキシ酸モノマーを含有しないポリマーを含まない。
【0028】
本発明のバインダーは、任意に、可溶性付加(コ)ポリマーであって、少なくとも2つのカルボン酸基、酸無水物基、またはその塩を含有するものを包含し得る。エチレン性不飽和カルボン酸、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチルマレイン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸;エチレン性不飽和酸無水物、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アクリル酸、および無水メタクリル酸;ならびにその塩を、付加(コ)ポリマーの重量基準で、少なくとも70重量%の量で使用できる。さらなるエチレン性不飽和モノマーは、アクリルエステルモノマー、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどを包含しうる。
【0029】
少なくとも2つのカルボン酸基、酸無水物基、またはその塩を含有する可溶性付加(コ)ポリマーは、約1,000〜150,000の分子量を有し得る。
【0030】
少なくとも2つのカルボン酸基、酸無水物基、またはその塩を含有する可溶性付加(コ)ポリマーは、ポリカルボキシエマルジョンコポリマーの合計重量基準で、0重量%〜30重量%の量で使用できる。
【0031】
本発明の一つの実施形態において、バインダー組成物は、1000以下、好ましくは500以下、さらに好ましくは200以下の分子量を有する、少なくとも1種の低分子量多塩基性カルボン酸、酸無水物またはその塩をさらに含有する。「多塩基性」とは、少なくとも2つの反応性酸または酸無水物官能基を有することを意味する。好適な低分子量多塩基性カルボン酸および酸無水物の例としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、無水コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、アジピン酸、クエン酸、グルタル酸、酒石酸、イタコン酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、トリカルバリル酸(tricarballytic acid)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、カルボン酸のオリゴマーなどが挙げられる。好ましくは、低分子量多塩基性カルボン酸、酸無水物またはその塩を、ポリカルボキシエマルジョンコポリマーと混合する前に、反応性条件下で、ポリサッカライドまたは植物性タンパク質を用い下準備する。最も好ましくは、クエン酸を多塩基性酸として使用し、ヒドロキシエチル化コーンスターチをポリサッカライドとして使用する。
【0032】
本発明のバインダーはさらに、従来の処理成分、例えば、乳化剤;顔料;フィラーまたはエキステンダー;移行防止剤(anti−migration aids);硬化剤、造膜助剤;界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤;展着剤;鉱油粉塵抑制剤;殺生物剤;可塑剤;オルガノシラン;消泡剤、例えば、ジメチコン、シリコーン油およびエトキシル化非イオン性物質;腐食防止剤、特にpH<4で有効な腐食防止剤、例えば、チオ尿素、オキサレート、およびクロメート;着色剤;帯電防止剤;潤滑剤;ワックス;酸化防止剤;カップリング剤、例えば、シラン、特にSilquest(商標)A−187(コネチカット州ウィルトンにあるGE Silicones−OSi Specialtiesにより製造);本発明のものでないポリマー;ならびに防水剤、例えば、シリコーンおよびエマルジョンポリマー、特に、エマルジョンポリマー固形分の重量基準で30重量を超える、C5以上のアルキル基を含有するエチレン性不飽和アクリルモノマーを共重合単位として含有する疎水性エマルジョンポリマーを含有し得る。
【0033】
さらに、本発明は、本発明のバインダー組成物により結合された不織繊維を含有する不織マットを包含する。繊維は、個々の繊維、複数の繊維を含有するストランド、およびロービングを包含する多くの形態で用いることができる。ガラス繊維は、溶融したガラスをブッシングまたはオリフィスプレートを通して引き伸ばしてフィラメントにし、潤滑剤、カップリング剤、およびフィルム形成性バインダー樹脂を含有する水性サイジング組成物をフィラメントに適用することにより形成できる。サイジング組成物は、繊維をフィラメント間摩耗から保護し、ガラス繊維と、このガラス繊維がその中で使用されるマトリックスとの間の適合性を促進する。サイジング組成物を適用した後、湿潤繊維をまとめて1以上のストランドにし、切断し、湿潤短繊維(wet chopped fiber)ストランドとして集める。
【0034】
本発明の一つの実施形態において、湿潤または乾燥不織繊維のウェブを形成し、このウェブを、本発明のバインダー組成物がウェブに適用されうるバインダー適用ステーションを通って移動するムービングスクリーンに移し、不織マットを作ることができる。例えば、エアまたはエアレススプレー、パッディング、飽和、ロールコーティング、カーテンコーティング、ビーター堆積、凝集またはディップおよびスクイーズ適用をはじめとする任意の好適な手段により、バインダーをウェブに適用することができる。支持ワイヤまたはスクリーン上の、得られた飽和湿潤バインダー付きウェブを、1以上の真空ボックス上を通過させて、マット中の所望のバインダー含量を達成するのに充分なバインダーを除去することができる。
【0035】
本発明の様々な実施形態において、不織マットは、ウェット・レイド(wet laid)プロセスにより形成することができ、このプロセスにより、湿潤ガラス短繊維を繊維供給システムからコンベアー上に堆積させることができる。様々な界面活性剤、粘度調節剤、消泡剤、および/または他の化学物質を含むパルパーまたは混合槽中に、攪拌しながらガラス短繊維を入れて、ガラス短繊維スラリーを形成することができる。混合槽中の化学物質の集合体は、通常、「白水(white water)」と称する。ガラス繊維スラリーを、機械的チェスト(chest)を通過させ、一定量のチェストは白水中で繊維をさらに分散させることができる。短ガラススラリーを次いで一定量のチェストから移し、ファンポンプによりヘッドボックスへポンプで輸送することができる。ガラス繊維スラリーを次いで移動するスクリーンまたはワイヤ上に堆積させ、ここで、スラリーから、水の実質的な部分をヘッドボックス内のヘッド圧での重力によって除去することができ、ウェブを形成できる。過剰の白水を除去し、サイロ(silo)中に入れることができる。白水を通常の真空または空気吸込システムによりウェブからさらに除去することができる。バインダー組成物を次にバインダーアプリケーター、例えば、カーテンコーターにより、ウェブに適用することができる。過剰のバインダーを、真空または空気吸込装置によりウェブから吸引し、バインダー供給タンク中に入れることができる。
【0036】
不織マット中のバインダー量は、このマットが使用されることが意図される用途に応じて様々に変化させうる。不織マットに適用した後、熱を加えることにより、バインダー組成物を硬化させることができる。
【0037】
バインダーが硬化した後、これを好適な組成物でコーティングして、特定の所望の添加剤を供給するか、または特定の所望の特性、例えば、より良好な触感、滑らかさ、または強度を得ることができる。好適なコーティングは当該分野において周知である。
【0038】
本明細書において用いられる場合、「アルキル」という用語は、1以上の炭素原子を有する脂肪族アルキル基を意味し、このアルキル基は、n−アルキル、s−アルキル、i−アルキル、t−アルキル基または1以上の、5、6もしくは7員環構造を含む環状脂肪族基を包含する。
【0039】
本明細書において用いられる場合、「水性」または「水性溶媒」という用語は、水ならびに水および水混和性溶媒から実質的に構成される混合物を包含する。
【0040】
本明細書において用いられる場合、「バインダー固体の合計重量基準で」という語句は、バインダー中の水以外の全ての成分(例えば、ポリ酸、エマルジョンコポリマー、ポリオールなど)の合計重量に対する所定の成分の重量を意味する。本発明のバインダーは、水性であっても、あるいは乾燥していてもよい(基体への適用前に任意に水を添加する)。
【0041】
本明細書において用いられる場合、特に定めのない限り、「コポリマー」という用語は、独立して、コポリマー、ターポリマー、ブロックコポリマー、セグメント化コポリマー、グラフトコポリマー、およびこれらの任意の混合物または組み合わせを包含する。(コ)ポリマーとは、ホモポリマーまたはコポリマーを意味する。
【0042】
本明細書において用いられる場合、「エマルジョンポリマー」という語句は、乳化重合により製造された水性媒体中に分散されたポリマーを意味する。
【0043】
本明細書において用いられる場合、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート、メタクリレート、およびこれらの混合物を意味し、本明細書において用いられる「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル、メタクリル、およびこれらの混合物を意味する。
【0044】
本明細書において用いられる場合、「(C−C12)−」または「(C−C)−」などの語句は、それぞれ、3から12個の炭素原子および3から6個の炭素原子を含む有機化合物または有機化合物の構造的部分を意味する。
【0045】
本明細書において用いられる場合、特に定めのない限り、「分子量」という語句は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリマーの重量平均分子量を意味する。ゲル透過クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィーとも呼ばれ、そのモル質量ではなく、その流体力学的サイズによりポリマー鎖の分布のメンバーを実際に分離する。このシステムを次に、分子量および組成が既知の標準で較正して、溶出時間と分子量を相関させる。GPCの技術は、Modern Size Exclusion Chromatography、W.W.Yau.J.J Kirkland.D.D.Bly;Wiley−Interscience、1979、およびA Guide to Materials Characterization and Chemical Analysis、J.P.Sibilia;VCH、1988、p81〜84で詳細に議論されている。
【0046】
本発明のバインダーは、不織繊維を結合させるために有用であり、この繊維を、特に不織ウェブに形成することができる。「不織ウェブ」とは、天然および/または合成繊維から作られた物品またはシート様形態を意味し、このウェブにおいては、繊維はランダムまたは半ランダム(即ち、意図的に整列されていない)配列に配列している。ウェブ形成プロセスの間にある配列(主に機械方向で)の形成が生じるが、これは伝統的な機織または編組プロセスから得られる配列と全く異なるものであることは、当業者には理解される。ウェブの形成において使用される好適な繊維としては、これに限定されないが、ガラス繊維、セルロース、修飾セルロース(セルロースアセテート)、綿、ポリエステル、レーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ酢酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリオレフィン、ならびにポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレートなどの2種以上の繊維形成性ポリマーを含む二成分繊維が挙げられる。本発明に関する使用に適した不織ウェブの定義には、化学的または機械的加工の作用により製造される多孔性フィルム(たとえば、開口フィルム)が含まれる。本発明は、任意の重量の不織ウェブに関して有用であり、特定の用途の要件に大きく依存する。不織ウェブを作るための製造プロセスは当該分野において周知である。これらとしては、例えば、ウェット・レイド、エア・レイド(ドライ・レイド)、スパンボンド、スパンレース、メルトブローおよびニードルパンチが挙げられる。ウェブは、その意図される使用に適した任意の基本重量(base weight)(即ち、コーティングまたは処理剤が適用される前のウェブの重量)を有し得る。本発明の一つの実施形態において、ウェブは、1平方メートルあたり100グラム(gsm)未満の基本重量を有する。本発明の異なる実施形態において、ウェブは約20gsm未満の基本重量を有するであろう。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、バインダー組成物はホルムアルデヒドフリーである。「ホルムアルデヒドフリー」とは、本明細書において、添加されたホルムアルデヒドが実質的になく、かつ乾燥および/または硬化の結果として、実質的なホルムアルデヒドを放出しないことを意味する。水性組成物のホルムアルデヒド含量を最小限に抑えるために、ポリカルボキシエマルジョンコポリマーを製造する場合、それ自体ホルムアルデヒドを含まず、重合プロセスの間にホルムアルデヒドを発生させず、耐熱性不織布の処理の間にホルムアルデヒドを生成または放出しない重合補助剤および添加剤、例えば、開始剤、還元剤、連鎖移動剤、硬化剤、殺生物剤、界面活性剤、乳化剤カップリング剤、消泡剤、粉塵抑制剤、フィラーなどを使用することが好ましい。
【0048】
本発明の一つの実施形態において、バインダー組成物は、リン含有促進剤、たとえば、米国特許第6,136,916号に開示されているものをさらに含有する。リン含有促進剤は、リン含有基を有するポリマー、例えば、次亜リン酸ナトリウムの存在下、付加重合により形成されるアクリレートポリマーであってよいが、本発明のバインダー組成物の一部として機能し得る可溶性ポリマーとは異なる化合物である。本発明の好ましい実施形態において、促進剤は、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、またはその混合物であり、エマルジョンポリマーおよび可溶性ポリマー(もし使用されるならば)の合計カルボン酸重量基準で、1重量%から20重量%、好ましくは5重量%から15重量%のリン酸ナトリウムが好ましい。1以上のリン含有促進剤を、バインダー固形分の合計重量基準で、0重量%から40重量%、好ましくは最高25重量%まで、さらに好ましくは最高20重量%まで、なお一層好ましくは最高15重量%まで、またはさらに好ましくは最高12重量%までの量で使用できる。リン含有促進剤は、バインダー固形分の合計重量基準で、0.1重量%以上の量で使用できる。
【0049】
別の実施形態において、バインダー組成物は1種以上の強酸を含むことができ、ここで、強酸は≦3.0のpKaを有する。バインダー組成物は、エマルジョンポリマーおよび場合によって可溶性ポリマーからの合計カルボン酸の当量に対して、最高0.2当量まで、例えば、0.01から0.18当量の強酸を含有し得る。強酸は、鉱酸、例えば、硫酸、または有機酸、例えば、スルホン酸であり得る。鉱酸が好ましい。
【0050】
バインダー組成物の乾燥(水性形態で適用されるならば)および硬化において、加熱時間および温度は、乾燥速度、加工もしくは取り扱いの容易性、およびバインダーを有する物品の特性発揮に影響を及ぼすであろう。100℃以上で、最高400℃までの好適な熱処理を3秒から15分間持続することができる。好ましくは、熱処理温度は150℃以上;さらに好ましくは150℃から225℃;なお一層好ましくは150℃から200℃の範囲である。リン含有促進剤が使用される本発明のこれらの実施形態において、最高150℃までの熱処理温度が好ましい。その上にバインダー組成物が適用される基体が木材を含む場合、100℃から220℃までの温度が好ましい。
【0051】
本発明の一つの実施形態において、バインダー組成物の乾燥および硬化は、所望により、2以上の独立した工程で行うことができる。例えば、バインダー組成物を実質的に乾燥させるが、実質的に硬化させないために十分な温度および時間で、バインダー組成物をまず加熱し、続いて硬化を行うために、さらに高い温度および/またはさらに長い時間で、二度目の加熱をすることができる。「B−ステージング(B−staging)」と称するこのような手順を用いて、バインダー処理された不織物を、例えば、ロール形態で提供することができ、これらは、後に、硬化プロセスと同時に、特定の構造に形成または成形するかどうかに関わらず、硬化させることができる。
【0052】
バインダー組成物は、不織繊維、例えば、ガラス繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、超吸収繊維などを結合させ、これにより不織ウェブまたは不織布を形成するのに適している。
【実施例】
【0053】
これらの実施例は、本発明の特定のバインダー組成物およびかかる組成物と比較したものを説明する。
【0054】
(実施例1および比較例2 エマルジョンコポリマー合成)
(実施例1)
パドルスターラー、熱電対、窒素入口、および還流冷却器を備えた5リットルの丸底フラスコに、876.4グラムの脱イオン水、24.2グラムの次亜リン酸ナトリウム一水和物、28.5グラムのラウリルエーテル硫酸ナトリウム界面活性剤溶液(30%)、3.1グラムの水酸化ナトリウム、および0.058グラムの阻害剤を入れた。混合物を79℃に加熱した。
【0055】
459.7グラムの脱イオン水、89.2グラムのラウリルエーテル硫酸ナトリウム界面活性剤溶液(30%)、553.9グラムのブチルアクリレート、969.7グラムのスチレン、および268.9グラムのアクリル酸を用いて、モノマーエマルジョンを調製した。このモノマーエマルジョンの97.0グラムのアリコートを反応フラスコに添加し、続いて、33.3グラムの脱イオン水中に溶解させた7.4グラムの過硫酸アンモニウムの溶液を添加した。発熱反応および反応温度を86℃に維持した後、モノマーエマルジョンおよび、156.9グラムの脱イオン水中7.4グラムの過硫酸アンモニウムの別の溶液を、合計130分にわたって徐々に添加した。これらの添加が完了した後、397.4グラムの脱イオン水中に溶解させた42.6グラムの水酸化ナトリウムの溶液を添加した。4.8グラムの脱イオン水中の0.022グラムの硫酸第一鉄7水和物の溶液ならびに4.8グラムの脱イオン水中に溶解させた0.022グラムのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩の溶液を反応混合物に添加した。31.2グラムの脱イオン水で希釈した7.9グラムの水性tert−ブチルヒドロペルオキシド(70%)の溶液および62.8グラムの脱イオン水中に溶解させた5.3グラムの重亜硫酸ナトリウムの溶液を、反応混合物に添加した。短時間保持した後、31.2グラムの脱イオン水で希釈した7.9グラムの水性tert−ブチルヒドロペルオキシド(70%)および62.8グラムの脱イオン水中に溶解させた5.3グラムの重亜硫酸ナトリウムの溶液を反応混合物に徐々に添加した。これらの溶液の添加が完了した後、47.6グラムの脱イオン水を添加し、反応混合物を室温に冷却した。反応混合物を冷却したら、殺生物剤を添加し、ラテックスを濾過した。
【0056】
得られたラテックスはおよそ46.0%の固形分を有していた。表Aに示すように、実施例1のコポリマーエマルジョンは55℃のTgを有していた。
【0057】
(比較例2)
スターラー、熱電対、窒素入口、および還流冷却器を備えた5ガロンステンレス鋼リアクターに、3221.7グラムの脱イオン水、109.1グラムの次亜リン酸ナトリウム一水和物、128.4グラムのラウリルエーテル硫酸ナトリウム界面活性剤溶液(30%)、13.9グラムの水酸化ナトリウム、および0.26グラムの阻害剤を添加した。混合物を79℃に加熱した。
【0058】
2257.7グラムの脱イオン水、401.5グラムのラウリルエーテル硫酸ナトリウム界面活性剤溶液(30%)、4220.3グラムのブチルアクリレート、2638.7グラムのスチレン、および1210.4グラムのアクリル酸を用いて、モノマーエマルジョンを調製した。このモノマーエマルジョンの443.1グラムのアリコートを反応フラスコに添加し、続いて、167.6グラムの脱イオン水中に溶解させた33.2グラムの過硫酸アンモニウムの溶液を添加した。発熱反応および反応温度を86℃に維持した後、モノマーエマルジョンおよび、707.4グラムの脱イオン水中33.2グラムの過硫酸アンモニウムの別の溶液を、合計130分にわたって徐々に添加した。これらの添加が完了した後、2164.7グラムの脱イオン水中に溶解させた192.6グラムの水酸化ナトリウムの溶液を添加した。32.4グラムの脱イオン水中の0.097グラムの硫酸第一鉄7水和物の溶液ならびに32.4グラムの脱イオン水中に溶解させた0.098グラムのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩の溶液を反応混合物に添加した。158.8グラムの脱イオン水で希釈した35.6グラムの水性tert−ブチルヒドロペルオキシド(70%)の溶液および301.0グラムの脱イオン水中に溶解させた23.7グラムの重亜硫酸ナトリウムの溶液を、反応混合物に徐々に添加した。短時間保持した後、158.8グラムの脱イオン水で希釈した35.6グラムの水性tert−ブチルヒドロペルオキシド(70%)および301.0グラムの脱イオン水中に溶解させた23.7グラムの重亜硫酸ナトリウムの溶液を反応混合物に徐々に添加した。これらの溶液の添加が完了した後、109.9グラムの脱イオン水を添加し、反応混合物を室温に冷却した。反応混合物を冷却したら、殺生物剤を添加し、ラテックスを濾過した。
【0059】
得られたラテックスはおよそ44.7%の固形分を有していた。表Aに示すように、比較例2のコポリマーエマルジョンは15℃のTgを有していた。
【0060】
【表1】

【0061】
(実施例3 ポリオール架橋剤(β−ヒドロキシアミド#1 ε−カプロラクトンとジエタノールアミンとの反応生成物)の製造
凝縮器、熱電対、およびメカニカルスターラーを備えた1Lフラスコに、157.5グラム(1.5モル)のジエタノールアミン(DEOA)を添加した。室温で1気圧の窒素下、外部加熱なしで開始して、171.2グラム(1.5モル)のε−カプロラクトンを反応フラスコにピペットにより少量ずつ1時間にわたって添加した。反応混合物は若干発熱して31℃を示した。ε−カプロラクトンの添加が完了した後、反応混合物をさらに1時間攪拌した。
【0062】
(実施例4〜10および比較例11〜14:バインダー組成物の製造)
バインダー組成物の成分を表Bに示した量で組み合わせた。連続して攪拌された5リットルフラスコ中、ポリオールをラテックスに添加し、続いて促進剤、次いで水を添加した。
【0063】
【表2】

【0064】
不織繊維マットの製造手順
3/4インチK Fiber湿潤チョップ(オハイオ州トレドに本社があるOwens Corningにより製造)を用い、1シートあたり約7.6グラムのガラス繊維(100平方フィートあたり1.8ポンド)を用いて、ガラス繊維不織ハンドシートを製造した。NALCO7768ポリアクリルアミド粘度調節剤(イリノイ州ネーパービルに本社があるNalco Companyにより製造)、およびNALCO 01NM149分散剤(イリノイ州ネーパービルに本社があるNalco Companyにより製造)を用いて、ガラス繊維を水中に分散させた。Williams Standard Pulp Testing Apparatus(ニューヨーク州ウォータータウンに本社があるWilliams Apparatus Companyにより製造)、ハンドシート型中でハンドシートを形成する。湿潤シートを真空ステーションに移し、ここで、バインダーを湿潤シート上に直接注ぐことにより、本発明のバインダー組成物(実施例6〜13)および比較組成物(実施例14〜16)で飽和させ、次いで真空により脱水した。シートを強制空気オーブン中、30秒間、210℃で乾燥/硬化させた。
【0065】
不織マットの機械的性質試験
ガラス繊維不織ハンドシートを引っ張り試験のために1インチ×5インチストリップに切り出した。Thwing−Albert Intellect 500引っ張り試験機(ニュージャージー州ウェストベルリンに本社があるThwing−Albert Instrument Companyにより製造)を用い、200 lbロードセル、1インチ/分のクロスヘッド速度、20%感度、および3インチギャップで、乾燥および加熱/湿潤試験を各サンプルからの7つのストリップに関して行った。製造したストリップに関して乾燥引っ張り試験を行った。10分間85℃の水中にストリップを浸漬し、次いでストリップを取り出した直後に、ストリップが依然として濡れたままで、加熱/湿潤引っ張り強度試験を行った。1kNロードセルと、−100から400°F(−73℃から204℃)の温度範囲性能を有するジョーを収容したオーブンチャンバーとを備えたInstron4201引っ張り試験機(マサチューセッツ州ノーウッドに本社がある、Instronにより製造)を用いて、製造したストリップに関して加熱/乾燥引っ張り試験を行った。試験前に、引っ張り試験機のオーブンチャンバーを302°F(150℃)に予熱した。予熱したら、ストリップをジョー中に置き、オーブンチャンバーを閉鎖し、302°F(150℃)にもどして平衡化させた。サンプルを次に、3インチギャップで1インチ/分のクロスヘッド速度で引き離した。
試験結果を表Cに示す。
【0066】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)40℃から70℃の測定Tg、および40%以上の合計重量固形分を有する、10重量%から25重量%のカルボキシ酸モノマーを含む少なくとも1種のポリカルボキシエマルジョンコポリマー;ならびに
(b)第一ヒドロキシ基および少なくとも1つの追加のヒドロキシ基を含み、700未満の分子量を有する少なくとも1種のポリオール架橋剤、
ここで、第一ヒドロキシ基当量のカルボキシ基当量に対する比が0.25から2.0である;
を含むバインダー組成物。
【請求項2】
前記カルボン酸モノマーが、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選択される請求項1記載のバインダー組成物。
【請求項3】
前記ポリカルボキシエマルジョンコポリマーが40℃から70℃のTgを有する請求項1記載のバインダー組成物。
【請求項4】
前記ポリカルボキシエマルジョンコポリマーが5,000から1,000,000の重量平均分子量を有する請求項1記載のバインダー組成物。
【請求項5】
前記ポリカルボキシエマルジョンコポリマーが50から300nmの粒子サイズを有する請求項1記載のバインダー組成物。
【請求項6】
1000以下の分子量を有する少なくとも1種の低分子量多塩基性カルボン酸、酸無水物またはその塩をさらに含む請求項1記載のバインダー組成物。
【請求項7】
前記バインダー組成物が不織繊維を結合させるのに適している請求項1記載のバインダー組成物。
【請求項8】
(a)40℃から70℃の測定Tg、および40%以上の合計重量固形分を有する、10重量%から25重量%のカルボキシ酸モノマーを含む少なくとも1種のポリカルボキシエマルジョンコポリマー;ならびに
(b)第一ヒドロキシ基および少なくとも1つの追加のヒドロキシ基を含み、700未満の分子量を有する少なくとも1種のポリオール架橋剤、
ここで、第一ヒドロキシ基当量のカルボキシ基当量に対する比が0.25から2.0である;
を含むバインダー組成物により結合された不織繊維を含む不織マット。

【公開番号】特開2009−144140(P2009−144140A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−283993(P2008−283993)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】