説明

バクテリア及び遷移金属酸化物からなる有機・無機複合体及びその製造方法

【課題】バクテリア及び遷移金属酸化物からなる有機・無機複合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】バクテリア及び遷移金属酸化物からなる有機・無機複合体において、高い陰電荷を帯びるバクテリアをテンプレートとしてバクテリア表面に陽イオンの遷移金属前駆体を付着させ、水素化ホウ素ナトリウム及びバクテリアと遷移金属イオンを室温条件下で還流させて還元・自発酸化反応を誘導することで、優れた高容量の電気化学的特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バクテリア及び遷移金属酸化物からなる有機・無機複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ20年間、マイクロシステム及びナノテクノロジーの急速な発展は、自動車部品から電子製品、医療用機器に至るまで幅広い応用分野に適用され、これによる製品の軽量化及び小型化、高集積化を可能にしている。更に、本格的なナノテクノロジーの時代が到来するに従って、最近はナノワイヤー、ナノベルト、ナノロッド、量子ドットなどのようなナノスケールのレベルからなるナノ構造体物質に関する研究が活発に進められており、ナノロボットを利用して人体内の疾病を直接治療しようという話まで登場している。
【0003】
特に、ナノ構造を有する無機物質の場合、バルク状態では見ることができなった特徴として、バルク状態より優れた電磁気的性質及び光学的性質、向上した触媒としての機能と、ナノ構造が有する最も大きな特徴である広い比表面積などの特性が表れる。この優越な特性を土台に多様な分野での応用が可能であるため、従来からナノ構造の無機物質を合成するための多くの研究が活発に進められてきた。しかし、従来の場合、ナノ構造の無機物質を合成する際、多様な物質とナノ構造の無機物質を合成する方法に比べて、合成された物質の形状は、特定の形態に限定されるという短所があった(非特許文献1〜3)。
【0004】
一般的に、多様な形態のナノ構造無機物質を合成するために試された様々な方法のうち、テンプレートを使用して行われる合成方法は、使用するテンプレートの形状によって、独特で様々な形態のナノ構造物質を容易に得ることができる代表的な方法の一つである。遺伝子塩基序列からなるDNA、ポリスチレンビーズ、陽極酸化されたアルミニウム酸化物の配列からなるものまで多様な材料と構造のものをテンプレートとして使用することで、独特な形状のナノ構造を有する物質を得ることができる(非特許文献4及び5)。
【0005】
特に、近年に入り、タンパク質、ウイルス、バクテリア、酵母、カビなどのような生体物質をテンプレートとして利用したナノ構造の無機物質を合成するケースが増加しており、そのようないくつかの事例が報告されている(非特許文献6〜8、特許文献1〜4)。
【0006】
しかし、これも従来技術では、テンプレートを使用してナノ構造の無機物質を合成した場合、結果的に多様な形状の物質を得ることができたが、合成過程でテンプレートの表面処理または界面活性剤の添加及び除去のような、複雑な中間過程が要求されるだけでなく、高い結晶性を有する無機物質を得るために合成が高温で行われるという短所がある(非特許文献9〜11)。特に、タンパク質やウイルス、バクテリアのような生体材料をテンプレートとして使用する場合、高温で合成する際、無機物質が合成される前にテンプレートが壊れたり除去されて所望する形状の物質を得ることができないという不都合がある。
【0007】
従って、上記のテンプレートを使用してナノ構造の無機物質を製造する場合、合成過程の簡素化及び低温合成という問題解決が必須である。
【0008】
上記で言及したように、ナノ構造を有する物質は、多様な側面で優れた特性を有するので、ナノ電子、光学、触媒、センサー、エネルギー貯蔵分野などの多様な分野で応用が可能である。本発明では前記テンプレート方法を利用してナノ構造の無機物質を製造し、高い陰電荷を帯びるバチルスバクテリアをテンプレートとして使用して、ロッド形状の遷移金属酸化物及びチューブ形状の遷移金属酸化物を製作した。前記テンプレート方法を利用する際、従来の問題点として指摘された複雑な合成過程及び高温(90〜600℃)で行われていた合成過程は、テンプレートに特別な表面処理をすることなく、静電気的引力を通して陰電荷のバクテリア表面に遷移金属陽イオンを直接的に付着させ、還元剤を利用して、常温で表面に付着された遷移金属イオンを還元/自発酸化させることで解決することができた。さらに本発明は、製造されたロッド形状のナノ構造無機物質の焼成過程を行い、テンプレートとして使用されたバクテリアのみを除去することでロッド形状だけでなく、チューブ形状を有する1次元のロッド形態をも得ることができるという長所を有する。更に、これを通して製造されたナノ構造物質を利用してこれをリチウムイオン2次電池電極に応用した。
【0009】
最近の趨勢に副って、ノートパソコン、携帯用電話機、音楽機器などの携帯用電子製品市場では、製品の軽量化及び小型化、高密度、高集積化が活発に進められているだけでなく、環境にやさしいという世界的な関心が論点として台頭しており、電気またはハイブリッド自動車のような環境にやさしい製品開発の研究が活発に行われるなど、産業全般にかけて生産物などの小型化及び軽量化をなそうとする試みが増加している。これらを駆動することのできる電源に使用される電池の、大容量化及び高出力化する技術が持続的に要求されていることに起因して、近年に入り、上述したように生体材料テンプレートを媒介とする合成を利用した研究開発と、これらがリチウム2次電池に応用される事例が報告されており、その開発の必要性が高まっている(特許文献5〜7)。
【0010】
一般的に、2次電池は一回きりの使用の1次電池とは異なり、放電後に再び充電することで複数回の使用が可能である。よく使用される1次電池の場合、アルカリ電池、水銀電池、マンガン電池などのように大容量であるにもかかわらず、1次電池が有する限界として、再活用が不可能であり、環境親和的でない。これに対して、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケルメタルハイブリッド電池、リチウム金属電池、リチウムイオン電池などのように再活用が可能な2次電池は、1次電池より電圧が高いためエネルギー効率的であり、環境にやさしいだけでなく、低エネルギー密度を有し、多くの技術的な制約が存在する燃料電池とは異なり、2次電池は高容量、高エネルギー密度を持ちながら、現在、各種産業分野で商用化されている。
【0011】
このうち、リチウムイオン2次電池は、電解質内のリチウムイオンが電荷伝達媒介体として、正極活物質または負極活物質に移動したときに発生する可逆的挿入脱離反応を利用するものであり、負極活物質としてリチウム金属が最初に利用されたが、充・放電用量の急激な減少と、負極から析出されたリチウム金属デンドライトと、正極の接触が伴う爆発の危険性のため、これ以上の研究開発は行われていない。
【0012】
1991年、ソニーが負極活物質として炭素を、正極活物質としてリチウム酸化物を開発し、リチウムイオン挿入脱離反応を基盤とした負極活物質がリチウム2次電池技術において核心をなしている。
【0013】
陰極活物質としてハードカーボン(難黒鉛化性炭素)、ソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)及び黒鉛などの炭素系物質が最も広く使用されているが、ハードカーボンやソフトカーボンのような非黒鉛系炭素は、層状構造の層間挿入だけでなく、炭素内部の加工によりリチウムイオンの貯蔵が可能であるため、黒鉛系炭素に比べてはるかに大きい容量を持つにもかかわらず、高い非可逆容量という短所を持っている(非特許文献12及び13)。
【0014】
従って、炭素系物質のうち、特に黒鉛が最も広く商用化されているが、これもやはり高価である。複雑な工程により容量が小さい天然黒鉛の場合のように、板状形態による高密度の極板製造が容易ではない、などの短所がある。前述の問題点を解決しようとして、安いコークス系人工黒鉛にホウ素のような元素をドーピングして、ドーピングされた黒鉛を負極活物質として使用する技術が開発されている(特許文献8〜11)。
【0015】
しかし、前記炭素系負極活物質は、基本的に小さい理論容量(372mAh/g)を持ち、商用化された容量はこれよりも小さいことが知られている。また、充・放電過程で負極活物質と電解質溶液との間で発生する副反応によりリチウム2次電池の非可逆性が増加するという短所があり、携帯用電子機器や電気自動車などで基本的に要求される大容量化を充足させるには限界がある。
【0016】
従って、炭素系材料を代替する負極活物質に関する研究が活発に進められており、代表的なリチウムと合金を形成するSi、Ge、Snなどを利用した反応(alloying reaction)や、既存の挿入脱離過程ではない金属/金属酸化物との間の転換反応を通して容量を発現するCuO、CoO、Fe23、NiO、MnO2などのような遷移金属酸化物に対する研究が注目されている(非特許文献14及び15)。
【0017】
このうち、金属/金属酸化物との間の転換反応を通して進められるリチウム2次電池の場合、酸化物金属はMxy+yLi⇔xM+yLi2O(M=遷移金属)のような転換反応により充・放電が起き、従来電気化学的活性がないと思われていたLi2Oが可逆的に反応しながら容量を発現するため、挿入脱離反応に比べて、充・放電容量がはるかに大きいという長所を持っている。しかし、充・放電時、粒子間の凝集現象によりサイクル回数によって容量が急激に減少するという欠点を持っている(非特許文献16)。
【0018】
前記のような欠点を解決するために、低次元ナノ構造体のうち、特にナノワイヤーのような1次元ナノ構造体を負極活物質として使用する試みが報告されていた。これによって前述の問題を解決することができるが、製造する合成過程が複雑で、大量生産が容易ではないという短所がある(非特許文献17〜19)。
【0019】
従って、前述のいくつかの代替活物質を検討した結果、既存の炭素系材料を代替するためには、高容量を発現しながらも、長期間の充・放電時にも高容量で安定的な特性を持つ新しい負極活物質の製造が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許公開第20030068900号
【特許文献2】米国特許公開第20070287174号
【特許文献3】特開第2006−520317号
【特許文献4】特開第2007−517500号
【特許文献5】大韓民国特許公開第2007−0097028号
【特許文献6】米国特許公開第20080220333号
【特許文献7】特開第2008−517070号
【特許文献8】特開平3−165463号
【特許文献9】特開平3−245458号
【特許文献10】特開平5−26680号
【特許文献11】特開平9−63584号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】D. Chen et al., Cryst. Growth Des. 6 (2006) 247
【非特許文献2】U. A. Joshi et al., Inorg. Chem. 46 (2007) 3176
【非特許文献3】S. Nagamine et al., Mater. Lett. 61 (2007) 444
【非特許文献4】M. M. Tomczak et al., J. Am. Chem. Soc. 127 (2005) 12577
【非特許文献5】M. Yang et al., Adv. Funct. Mater. 15 (2005) 1523
【非特許文献6】E. Dujardin et al., Nano Lett. 3 (2003) 413
【非特許文献7】T. Nomura et al., Mater. Lett. 62 (2008) 3727
【非特許文献8】N. C. Bigall et al., Angew. Chem. Int. Edit. 37 (2008) 7876
【非特許文献9】F. Caruso, Top. Curr. Chem. 227 (2003) 145
【非特許文献10】H. Zhou et al., Microporous Mesoporous Mat. 100 (2007) 322
【非特許文献11】Y. Zhang et al., Mater. Lett. 62 (2008) 1435
【非特許文献12】R. Alcantara et al., J. Electrochem. Soc. 149 (2002) A201
【非特許文献13】J. R. Dahn et al., Carbon 37 (1997) 825
【非特許文献14】W. J. Weydanz et al., J. Power Sources 237 (1999) 81
【非特許文献15】P. Poizot et al., Nature 407 (2000) 496
【非特許文献16】R. Yang et al., Electrochem, Solid-State Lett. 7 (2004) A496-A499
【非特許文献17】C. K. Chan et al., Nature Nanotech. 3 (2008) 31
【非特許文献18】C. K. Chan et al., Nano Lett. 8(1) (2008) 307
【非特許文献19】K. M. Shanju et al., Phys. Chem. Chem. Phys. 9 (2007) 1837
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
そこで、本発明の発明者らは上記のような点を勘案して研究した結果、表面に陰電荷を帯びるバクテリアをテンプレートとし、バクテリア表面に遷移金属酸化物を均一に結合させて製造した0次元からなる1次元形態の有機・無機複合体、またはバクテリアテンプレートのみを除去して得たチューブ形態を有する遷移金属酸化物ロッドの粉末を、負極活物質として適用すると、1次元の金属酸化物がより広い比表面積を有する0次元の金属酸化物で構成されているため、これにより優れた高容量の電気化学的特性が達成可能であることに着眼し、静電気的引力を通してバクテリア表面に陽イオンの遷移金属イオンを均等に付着させると共に、還元剤を使用して室温で付着された陽イオンの遷移金属イオンを還元/自発酸化させることで、本発明を完成するに至った。
【0023】
従って、本発明の目的は、金属酸化物ナノ粉末の製造において、その製造過程が単純であるだけでなく、室温(20〜30℃)で合成することでき、大量生産が容易なバクテリアを媒介体として、バクテリア表面に遷移金属酸化物を結合させることで、0次元からなる1次元の有機・無機複合体及びチューブ形状のロッドを製造する方法を提供することにある。
【0024】
更に、本発明のまた別の目的は、陰電荷を帯びるバクテリアと遷移金属の陽イオンが還元・酸化されて、バクテリア及び遷移金属酸化物からなる有機・無機複合体及びその製造方法、チューブ形状の遷移金属酸化物ロッド及びこれらの用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、
1)表面に陰電荷を帯びるバクテリアを培養後、バクテリアの濃度を脱イオン水で調節してバクテリア分散溶液を製造する段階と、
2)遷移金属前駆体を脱イオン水に溶解させた遷移金属前駆体溶液を、前記1)の溶液に添加しながら、20〜30℃で0.5〜2時間攪拌してバクテリアと遷移金属前駆体が均一に分散されるようにする段階と、
3)水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を脱イオン水に溶解させた溶液を、前記2)の溶液に添加しながら還流させて、バクテリア表面に遷移金属酸化物が均一に付着されるように誘導する段階と、
4)前記3)の還流溶液を遠心分離後に洗浄して、析出物を収得する段階と、
5)前記析出物を真空乾燥して、有機・無機複合体を製造する段階と、
からなるバクテリア/遷移金属酸化物の有機・無機複合体の製造方法と、陰電荷を帯びるバクテリアと遷移金属の陽イオンが還元・酸化反応によりバクテリア表面に遷移金属酸化物が付着されたバクテリア及び遷移金属酸化物からなる有機・無機複合体であることをその特徴とする。
【0026】
更に、本発明は、前記有機・無機複合体を空気雰囲気下で焼成してチューブ形状のロッド(rod)を製造する方法と、前記方法から製造されたチューブ形状の遷移金属酸化物ロッド(rod)であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、前記有機・無機複合体またはチューブ形状の遷移金属酸化物ロッドを含む2次電池用負極活物質と、前記負極活物質を含む負極を採用した2次電池も含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明で提示した陰電荷を帯びるバクテリア表面に、陰イオンの遷移金属前駆体を直接的に結合させ、これを還流させることにより製造されたバシラスバクテリア/遷移金属酸化物の有機・無機複合体は、0次元に製造された遷移金属酸化物を1次元の形状を有するロッドまたはチューブ形状に製作することができる。前記方法は、容易に得ることができ、大量生産が可能なバクテリアを媒介体として利用することで、大量生産が容易であるだけでなく、複雑な中間過程を経ず、相反する電荷による静電気的引力からなる合成による過程が単純であるため、経済的であり、時間節約効果を有する。テンプレートとして使用されるバシラスバクテリアは、ロッド形状だけでなく、円形、楕円形のような形態の菌株も存在するため、様々な形態のバクテリアを利用することで多様な1次元形態の有機・無機複合体を得ることができるという長所を持つ。また、電気化学的な側面では、遷移金属酸化物が有する高容量と、リチウムとの反応時に大きな体積の変化がなく、長時間の使用にも高出力が可能であるという特性を有する。このほかにも、本発明の有機・無機複合体は、0次元の繊維金属酸化物ナノ粉末が均一にバシラスバクテリア表面に分布され、これにより1次元の形状を具現するため、広い比表面積を有する。
【0029】
従って、本発明で提示した、表面に陰電荷を帯びるバクテリアを媒介とした有機・無機複合体は、単純な合成過程と、経済的で大量生産が可能であるという長所を基に、リチウム2時電池、電気二重層スーパーキャパシタ、疑似スーパーキャパシタなど、産業全般にかけて多様な応用が可能であると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)は、純粋なバシラスバクテリアの電界放射型走査電子顕微鏡(FESEM)写真であり、(b)は、バシラスバクテリア表面に帯びる陰電荷のゼータ電位測定結果である。
【図2】本発明で使用したバシラスバクテリアテンプレートに適用した濃度範囲を表す光学吸光度の測定結果である。
【図3】本発明の有機物バクテリアと遷移金属酸化物の有機・無機複合体の製造工程を表した模式図である。
【図4】バシラスバクテリア/遷移金属酸化物の有機・無機複合体の形状を表す電界放射型走査電子顕微鏡写真と、バクテリアを使用しない純粋遷移金属酸化物の電界放射型走査電子顕微鏡写真である。(a)実施例5の条件で合成したバシラスバクテリア/コバルト酸化物、(b)実施例8の条件で合成したバシラスバクテリア/コバルト酸化物、(c)実施例9の条件で合成したバシラスバクテリア/コバルト酸化物、(d)実施例10の条件で合成したバシラスバクテリア/コバルト酸化物、(e)実施例11の条件で合成したバシラスバクテリア/コバルト酸化物、(f)実施例3の条件で合成したバシラスバクテリア/コバルト酸化物で、上記(a)から(f)までの電子顕微鏡の倍率は、120,000Xである。(g)実施例12の条件で合成したバシラスバクテリア/鉄酸化物で、電子顕微鏡の倍率は100,000Xである。(h)バクテリアテンプレートを使用しないコバルト酸化物であって、電子顕微鏡の倍率は100,000Xである。
【図5】コバルト、鉄、酸素の元素分析を通して、本発明のバシラスバクテリア/遷移金属酸化物の有機・無機複合体の正確な合成を示す電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)写真である((a)純粋なバシラスバクテリア、(b)バシラスバクテリア・コバルト酸化物、(c)バシラスバクテリア/鉄酸化物)。
【図6】バシラスバクテリア表面に結合されたコバルト酸化物のX線光電子分光法(XPS)の結果である。
【図7】本発明で製造したバシラスバクテリア/遷移金属酸化物の有機・無機複合体及びバクテリアを使用しない純粋遷移金属酸化物と純粋な有機物バクテリアの熱重量分析(TGA)結果である。
【図8】(a)〜(f)本発明の合成法にて製造したバシラスバクテリア/遷移金属酸化物の有機・無機複合体を300℃で焼成した後の形状を表す電界放射型走査電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明のバシラスバクテリア/遷移金属酸化物の有機・無機複合体のうちの一つであるバシラスバクテリア/コバルト酸化物を200℃と300℃で焼成した後に得たX線粉末回折パターン(XRD)である。
【図10】本発明のバシラスバクテリア/コバルト酸化物の有機・無機複合体及び有機物バクテリアの電気化学特性の測定を通して得た電圧変化による電流変化曲線である。
【図11】バシラスバクテリア/コバルト酸化物の有機・無機複合体を300℃で焼成した後、電気化学的特性の測定を通して得た電圧変化による電流変化曲線である。
【図12】本発明で製造したバシラスバクテリア/コバルト酸化物の有機・無機複合体の100回のサイクルテストの容量変化曲線及び有機物バクテリアと市販されているコバルト酸化物の容量変化曲線を比較した結果である。
【図13】バシラスバクテリア/コバルト酸化物の有機・無機複合体を300℃で焼成した後に測定した100回のサイクルテストの容量変化曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
このような本発明を更に詳しく説明すると次の通りである。
【0032】
本発明は、表面に高い陰電荷を帯びるロッド形状のバシラスバクテリアをテンプレートとして利用し、遷移金属前駆体が溶液状で陽イオンの特性を有する点に着眼して、遷移金属前駆体とバクテリア表面間の静電気的引力によって遷移金属前駆体をバクテリア表面に直接的に付着させ、還元剤を使用して遷移金属前駆体を還元/自発酸化させることで、遷移金属酸化物がバクテリア表面に均一で均等に分布されるようにし、効果的な応力緩和効果を発揮させながら、高容量を発現する0次元のナノ粉末からなる1次元形状のバクテリア/遷移金属酸化物の有機・無機複合体、チューブ形状の遷移金属酸化物ロッド及びこれらの製造方法に関する。
【0033】
本発明で使用される遷移金属には、特別に制限はないが、周期律表上で4周期金属が好ましい。例えば、Cu、Co、Fe、Ni、Mn、Tiなどを挙げることができる。前記遷移金属前駆体は、通常使用される硝酸塩、塩化物、酢酸塩などが挙げられる。
【0034】
本発明で提示したバクテリアを媒介体として利用した有機・無機複合体において、バクテリア表面に結合された遷移金属酸化物の合成は、溶液内で静電気的引力を通してバクテリア表面に付着された陽イオンの遷移金属イオンを、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを使用して還元させ、同時に、酸化過程が行われる液状合成法を基盤として得ることができる。金属酸化物粉末の合成法としては、大きく気相合成法、固相合成法、液相合成法に分けることができ、このうち気相合成法は、高い結晶性を得ることができる反面、高費用、複雑な合成過程という短所を持っている。また、固相合成法は経済的である反面、均一な粉末を得づらく、粒子のサイズが大きいという欠点がある。
【0035】
これに対して、液相合成法は、一般的に結晶性は優れていないが、合成方法によっては低温で結晶質物質を得ることができ、均一で小さいサイズの粒子を得ることができるという長所がある。
【0036】
更に、本発明で提示された、表面に陰電荷を帯びるバクテリアをテンプレートとして利用した有機・無機複合体の製造は、その過程が単純であり、室温(20〜30℃)で結晶性を持つ均一なサイズのナノ粉末を得ることができ、大量生産が可能であるという利点を持つ。また、テンプレートとして使用されるバクテリアは、形態が多様な菌株が存在するため、様々な形態のバクテリアをテンプレートとして使用することで、従来の合成では得ることが難しかった多様な1次元形状の有機・無機複合体を具現し、改良することができるという長所がある。
【0037】
前記バクテリア/遷移金属酸化物の有機・無機複合体の製造のために、テンプレートとして使用されたバシラスバクテリアの形状は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真を通して観察が可能であり、バクテリアの表面に帯びている陰電荷の特性は、ゼータ電位を測定することで確認することができる(図1)。図1によると、テンプレートとして使用されたバシラスバクテリアは、ロッドの形状を見せ、−45.84mVの高いゼータ電位を有する表面に陰電荷を帯びていることが分かる。
【0038】
更に、前記有機・無機複合体を製造するために、合成時に適用されたバクテリアテンプレートの濃度は、紫外線分光計を利用した600nm波長で測定された光学吸光度(OD)によって確認することができる(図2)。図2において、本発明で適用されたバクテリアテンプレートの濃度は、600nm波長で光学吸光度が1.0〜2.0の範囲のものを使用することが好ましい。バクテリアテンプレートの適正濃度を調節する過程は、初期バクテリアが培養されたものから一部を採取して、液体培地が入っている三角フラスコに各々継代培養し、バクテリア培養液を遠心分離過程を通して上澄液と分離し、チューブの下部に集まったバクテリアを、脱イオン水を使用して洗浄及び遠心分離過程を経る。その後、脱イオン水を添加した。バクテリアが分散された希釈溶液から一部を採取し、これを紫外線分光計を利用して600nm波長で光学吸光度を測定し、バクテリアが分散された希釈溶液の濃度が適正範囲となるまで脱イオン水の追加的な添加、及びこれに伴う紫外線分光計の測定を繰り返し行う。
【0039】
本発明による0次元からなる1次元形態の有機・無機複合体及びチューブ形状のロッドの負極活物質を製造するために使用された一連の合成方式は、図3に表されており、図3に依拠した具体的な説明は次の通りである。
【0040】
まず、テンプレートとして使用されるバクテリアを準備するために、冷凍保管されているバクテリアの保存液から一部を採取して、10〜12時間の初期培養と液体培地が入っている三角フラスコで継代培養を行う。その後、遠心分離及び洗浄過程を行い、脱イオン水を添加しながら、バクテリアが分散された希釈溶液の適正濃度を調節し、室温で攪拌する。遠心分離によるバクテリアの収集においては、継代培養後、5時間未満の状態で遠心分離を行うと、収集されるバクテリアの量が少なく、これにより最終的に析出される析出物の量が少なくなるため、前記遠心分離は継代培養を終了してから5時間経過後に行うのが好ましい。これは、バクテリアの成長曲線において、成長期の終わり部分付近に到達した時からだと言える。
【0041】
適正濃度範囲に調節したバクテリア分散溶液を室温で攪拌している間、遷移金属前駆体を脱イオン水に入れて1〜100mMの範囲の濃度の塩化金属前駆体を製造し、攪拌工程を行いながら金属前駆体が十分に分散されるように溶解させる。その後、溶解課程を終えた遷移金属前駆体溶液を室温で攪拌する。陽イオンの遷移金属前駆体が均一な分布で付着されない場合が発生し得るだけでなく、その後、水素化ナトリウムの還元剤により還元、水溶液内で自発酸化する過程で、部分的な還流によりバクテリア間の凝集及びはっきりした単一ロッド形状を得られないこともあるため、できるだけビュレットを利用して徐々に添加することが好ましい。
【0042】
次に、陽イオンの遷移金属前駆体と表面に陰電荷を帯びるバクテリアとの間の十分な付着と、均一な分布及び分散が行われるように、20〜30℃で0.5〜2時間の間十分な攪拌を維持させる。
【0043】
本発明の実施例に使用されているバクテリアであるバシラスバクテリア表面に陽イオンの金属前駆体を付着させることができるのは、バシラスバクテリア表面が高い陰電荷の特性を帯びているためである。バシラスバクテリアが高い陰電荷の特性を帯びるのは、バクテリアの細胞膜を構成するペプチドグリカン層及びテイコ酸、タイクロン酸のような高分子鎖において、リン酸基(PO32-)及びカルボン酸基(COO-)のような官能基の存在に起因する。特に、バシラスバクテリアのようなグラム陽性バクテリア(gram−positive bacteria)は、大腸菌のような一般的なグラム陰性バクテリア(gram−negative bacteria)とは異なり、ペプチドグリカン層が厚いだけでなく、最外部の外膜(outer membrane)がないため、ペプチドグリカン層及び高分子鎖が外部に直接的に露出されているので、更に高い陰電荷を帯びる。もちろん、大腸菌(E.coli,−28.69mV)やシュードモナス(−18.76mV)のように、グラム陰性バクテリアの属する種の場合もやはり、グラム陽性であるバシラスバクテリアに比べて表面に相対的に弱い陰電荷を帯びているので、本発明のテンプレートとして使用される十分な可能性がある。従って、本発明では、表面に陰電荷を帯びるバクテリアならば全て使用可能であり、好ましくは、グラム陰性バクテリアまたはグラム陽性バクテリアが適合する。
【0044】
前記バクテリアテンプレートと遷移金属前駆体の混合溶液を20〜30℃で0.5〜2時間攪拌する間に、水素化ホウ素ナトリウムを脱イオン水に入れて5〜500mMの濃度の範囲の水素化ホウ素ナトリウム溶液を製造し、攪拌過程を行いながら十分に分散されるように溶解させる。その後、溶解過程を終えた水素化ホウ素ナトリウム溶液を、室温で攪拌されているバクテリアテンプレートと遷移金属前駆体の混合溶液に、攪拌が維持された状態で徐々に添加する。このとき、前記遷移金属前駆体溶液を添加したときのように、ビュレットを利用して、できるだけ徐々に(1分当り0.5〜3mLの量が添加される速度)添加する。特に、還元剤としての役割を行う水素化ホウ素ナトリウム溶液を急激に添加すると、急激な酸化・還元反応により、バクテリアの表面に均等に付着してる陽イオンの金属前駆体全てと反応を行えず、一部分でのみ反応が進行される可能性があるため、バクテリア表面に金属酸化物の均一な分布がされにくいだけでなく、部分的な還流によりバクテリア間の凝集およびはっきりとした単一ロッド形状を得ることが困難となる。
【0045】
溶液内で水素化ホウ素ナトリウムの均一な分散によって、バクテリア表面に付着した陽イオンの金属前駆体が金属酸化物として均等に分布されるように、十分な攪拌を維持することが好ましい。
【0046】
還元剤である水素化ホウ素ナトリウムが添加された前記混合溶液を、20〜30℃で攪拌し続けながら、10〜15時間還流させ、その後、遠心分離によって上澄液と沈殿物を分離した後、上澄液を除去した。下部の沈殿物は脱イオン水とアセトンを使用して洗浄過程を行った。このとき、析出された沈殿物はバシラスバクテリア表面に遷移金属酸化物が均等に分されて付着している状態であり、色は合成条件によって、ピンク色、黒色、黄緑色、エメラルド色など多様である。前記の色は、実施例の合成条件によって具体的に示される。その後、オーブン内で乾燥過程を行う。
【0047】
本発明で行われた前記真空乾燥は、6〜8時間60〜70℃の温度、10-2〜10-3torrの圧力範囲で行われた。
【0048】
前記真空乾燥後に得た最終有機・無機複合体粉末の形状は、直径が500〜800nmであり、長さが1〜2μmであるバクテリア表面を2〜5nmの遷移金属酸化物ナノ粉末が均等に包んでおり、酸化物ナノ粉末の粒子サイズは非常に均一で微細な粒度分布を持つ。
【0049】
前記製造されたバクテリア/遷移金属酸化物の有機・無機複合体の形状は、電界放射型走査電子顕微鏡写真によって観察が可能である(図4)。図4によると、多様な合成条件により数種の表面形態を表す。更に、製造されたバクテリア/遷移金属酸化物の有機・無機複合体の合成結果は、遷移金属元素及び酸素の元素分析(電子プローブマイクロアナライザー、EPMA)(図5)及びX線光電子分光法(XPS)(図6)によって確認することができ、図7は、熱重量分析(TGA)によって合成条件による付着された遷移金属酸化物の定量的比較を示している。
【0050】
次に、ロッドからチューブを製造するために、前記真空乾燥過程まで終えた析出物の一部を、空気雰囲気下で焼成した。前記焼成は、空気雰囲気下で1分当り1〜10℃の室温速度で150〜300℃に到達した後、10〜15時間維持した。このときの気体雰囲気、温度、時間の条件を満足できなければ、所望するチューブ形状のロッドを得ることができないため、条件に従うことが好ましい。
【0051】
前記焼成過程後に得た最終粉末の形状は、電界放射型走査電子顕微鏡写真によって観察が可能であり、真空乾燥後の有機・無機複合体に比べ、直径が100〜300nm小さくなったことを確認することができる(図8)。また、焼成後に獲得した結果物の相の種類と結晶構造は、X線回折パターン(XRD)を利用して確認する(図9)。図9を見ると、焼成後に得た粉末は、Co34(JCPDSカードNo.42−1467)と同一のX線回折パターンを見せた。
【0052】
一方、このようなバクテリア/遷移金属酸化物の有機・無機複合体及びチューブ形状の遷移金属酸化物ロッド(rod)を、電気化学素子、更に詳しくは、リチウムイオン2次電池、電気二重層スーパーキャパシタなどに使用することができる。
【0053】
従って、本発明の前記有機・無機複合体及びチューブ形状ロッドのナノ粉末の、リチウム2次電池の負極活物質としての使用可能性を判断するために、リチウム電池用電極を別に製作し、半電池を構成して電気化学的な特性を評価した。前記リチウムイオン2次電池は、使用される負極活物質の単位分子量当り反応することができるリチウム電荷の数が大きいほど、充・放電時に粒子凝集現象が制限されるほど更に優れた電気化学的な性能を見せる。
【0054】
まず、前記製造された有機・無機複合体及び燃焼後に得たチューブ形状のロッド粉末、導電性添加剤と結合剤を不活性有機溶媒に溶かした後、超音波処理及び機械的混合(voltexing)を利用して均一に混ざるようにする。その後、スラリー状態の前記混合物を銅集電体に薄く塗布して電極を製造する。
【0055】
リチウム金属を負極に、前記製造された有機・無機複合体及び燃焼後のチューブ形状のロッド粉末の電極を陽極とし、2つの電極の間に電解質と分離膜を入れ、半電池を完成させる。前記製造された電池は、0.01〜3.0Vの電圧領域で流れる電流密度を変えながら、充・放電サイクルの評価を行った。
【0056】
前記製造された有機・無機複合体及び燃焼後のチューブ形状のロッド粉末のうち、バシラスバクテリア/コバルト酸化物及び300℃で焼成した後に得た粉末に限り、電気化学的特性を測定し、対照群として純粋なバシラスバクテリア及び市販されているCo34、そして本発明の実施例10の合成条件と同一するが、バシラスバクテリアテンプレートだけを使用せずに合成された純粋コバルト金属酸化物も電気化学的特性を測定した。
【0057】
上述した順序により電極を製造して特性を測定した結果、本発明で提案された有機・無機複合体及び燃焼後のチューブ形状のロッド粉末の場合、全てにおいて対照群の結果より高い高容量を発現するという高出力特性を表し、100回のサイクルテストが行われる間にも高い容量でより良い安定性を示した(図10及び11)。
【0058】
以下、本発明を実施例に依拠して具体的に説明するが、次の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は次の実施例により限定されない。
【実施例】
【0059】
<実施例1〜3>
冷凍保管されている枯草菌の保存液から5μLを採取した後、LB液体培地(Luria−Bertani broth)5μLが入った試験管に摂取し、37℃で200rpmで回転するインキュベーターで初期培養した。初期培養から5時間が過ぎたバクテリア培養液を12,000rpmで20分間遠心分離し、バクテリアと上澄液を分離した。上澄液と分離されて沈殿したバクテリアは、脱イオン水を利用して2度洗浄して、遠心分離を行った。その後、1L以上の脱イオン水を添加しながら、紫外線分光計を利用して600nm波長で光学吸光度の測定を行い、バクテリアの濃度を1.0(=1×108cells/mL)に調節した。前記バクテリアが分散された溶液を室温で攪拌する間、使用する塩化金属物質のうちの一つであるCoCl2・6H2Oの濃度が各々1、10、100mMとなるように称量して、各々を脱イオン水100、100、200mLに溶かした後、室温で1時間攪拌した。その後、室温で攪拌を維持しつつ、前記溶液をバクテリアが分散された溶液に徐々に(1分当り1mL程度の量が添加される速度)添加した。その後、コバルト前駆体及びバクテリアが均等に分散されるように、室温で1時間攪拌を行った。前記混合物が攪拌されている間に、還元剤として使用するNaBH4の濃度が各々5、10、500mMとなるように称量して、各々を脱イオン水100mLに溶かした後、室温で30分間攪拌した。室温で1時間分散した前記混合物に、前記NaBH4が30分間攪拌された溶液を各々100、50、12mLずつ徐々に入れた。その後、25℃で12時間還流させ、10,000rpmで20分間遠心分離を行って、上澄液と沈殿物を分離した後、上澄液を除去し、下部の沈殿物は脱イオン水とアセトンを使用して3〜4回の洗浄過程を行った。このとき、析出された沈殿物は、バシラスバクテリア表面に遷移金属酸化物が均等に分布されて付着されている状態である。合成条件によって得られたピンク色、黄緑色、黒色の析出物を60℃の温度、10-2torrの圧力条件下で6時間真空乾燥を実施したところ、最終的にバシラスバクテリア/コバルト酸化物の有機・無機複合体を製造した。実施例3の合成で得られた黒色の最終析出物の場合、高いNaBH4還元剤濃度により、コバルト酸化物ではないコバルト金属で過剰還流されて、ロッド形態を維持することも困難であった。
【0060】
<実施例4〜7>
前記実施例1〜3と合成方法は同一であるが、下記表1に示されたバクテリアの濃度及び塩化コバルト前駆体とNaBH4還元剤の濃度を各々1.5と10mMずつに固定し、塩化コバルト前駆体の注入量を100mLに固定した後、NaBH4の注入量の変化によって変わる酸性度を観測しながら、バシラスバクテリア/コバルト酸化物の有機・無機複合体を製造した。また、下記表1には各々の析出物に対する有機・無機複合体の色も同時に示した。
【0061】
<実施例8>
前記実施例4〜7と製造方法は同一であるが、下記表1に示されたバクテリアの濃度を2.0とし、酸性度を8.0に調節するためにNaBH4還元剤の注入量を20mLとして、バシラスバクテリア/コバルト酸化物の有機・無機複合体を製造した。
【0062】
<実施例9〜11>
前記実施例1〜8と同一な合成方法で行ったが、最終析出部の量が上記実施例では少なかったため、下記表1に表されたようにバクテリアの濃度及びコバルト金属前駆体とNaBH4還元剤の濃度を各々2.0と50mMに増やし、コバルト金属前駆体の注入量を400mLに固定させた状態でNaBH4還元剤の注入量を異にしながら、バシラスバクテリア・コバルト酸化物の有機・無機複合体を製造した。以下、最終析出された有機・無機複合体の色は下記表1に示されている。
【0063】
<実施例12>
前記実施例10と同一であるが、下記表1に示された塩化金属前駆体を使用した。また、下記表1の最終的に析出された合成物であるバシラスバクテリア/鉄酸化物の有機・無機複合体の色も同時に示した。
【0064】
<実施例13〜15>
前記実施例10と同一であるが、チューブ形状の製造のために、実施例1で記載したように最終析出物の真空乾燥後に下記表2に示された各々の温度と空気雰囲気で焼成し、詳しくは、1分当り5℃の昇温速度で各々150℃、200℃、300℃に到達した後、12時間維持させてチューブ形状のロッドを製造した。このとき、合成後に形成されたエメラルド色の析出部は、各温度で焼成処理後、下記表2に表されるような色を示した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
<比較例1〜3>
上記実施例10と14を通して製造した0次元で構成された1次元の有機・無機複合体及びチューブ形状に合成されたロッドの2次電池の特性を比較、分析するために、下記表3に示すように、対照群として純粋なバシラスバクテリアを培養した後、真空乾燥して得た粉末と、市販されているCo34粉末及び純粋コバルト金属酸化物のナノ粉末を製造した。
【0068】
【表3】

【0069】
<試験1>
前記実施例10で製造した有機・無機複合体、実施例13で製造したチューブ形状ロッドの負極活物質と、比較例1〜3で製造したナノ粉末及び純粋なバシラスバクテリア粉末と、市販されているCo34粉末を2次電池用負極活物質として評価するために、電極を製造した後に半電池の容量を測定した。
【0070】
(a)電極の製造
前記実施例10で製造した有機・無機複合体、実施例13で製造したチューブ形状ロッドの負極活物質0.5〜1mgと、導電性添加剤である黒鉛(MMM carbon)と結合剤であるKynar 2801(PVdF−HEP)とを、質量比が60:20:20となるように称量した後、不活性の有機溶媒であるN−メチル−ピロリドン(NMP)に溶解させてスラリーを製造した。その後、前記スラリーを集電体である銅ホイルに塗布し、100℃の真空オーブンで4時間乾燥して有機溶媒を揮発させた後、プレスをかけて直径が1cmの円形態にパンチングした。
【0071】
更に、対照群として、前記比較例1で製造した純粋コバルト金属酸化物のナノ粉末、比較例2〜3で製造した純粋なバシラスバクテリア粉末及び市販されているCo34粉末も同様に、負極活物質として0.5〜1mgを、導電性添加剤である黒鉛(MMM carbon)と結合剤であるKynar 2801(PVdF−HEP)と、質量費が60:20:20となるように称量した後、不活性の有機溶媒に溶解させてスラリーを製造した。その後の過程は前記実施例10と実施例13のサンプルを使用した電極の製造過程と同一である。
【0072】
(b)電気化学的特性の評価用半電池の製作及び測定
本発明で紹介した有機・無機複合体及びチューブ形状ロッドの電気化学的特性を調べるために、負極としてリチウム金属イオン、陽極として前記(a)で製造した有機・無機複合体及びチューブ形状ロッドの電極または比較例1〜3の粉末を電極とし、この2つの間に電解質と分離膜(Celgard2400)を入れ、スウェージロック型の半電池を構成した。使用した電解質は、エチレン・カーボネート(EC)とジメチル・カーボネート(DMC)が体積比1:1で混ざり合っている溶液に、LiPF6が溶解された物質を使用した。上述した半電池の全ての製造過程は、不活性気体であるアルゴンで充填されているグローブ・ボックスの中で行った。
【0073】
前記製造したスウェージロック型の半電池は、充・放電サイクラー(WBCS3000、WonA Tech., 韓国)を利用して0.01〜3.0V電圧の間で0.01mV/秒に電圧を変えながら定電圧方式(potentialstatic mode)の測定、及び電流密度を変えながら定電流方式(Galvanostatic mode)で行われ、測定結果で得られた時間または容量による電圧変化グラフを分析して電気化学的特性を評価した。このときの電流密度は、コバルト金属酸化物のうちの一つであるCo34の理論容量から逆換算したものである。 各々C/10は1時間で放電を完了させた時の10分の1の電流で放電を完了させた場合であり、C/5は1時間で放電を完了させた時の5分の1の電流で放電を完了させた場合である。各々の電流密度で100回のサイクル充・放電テストを行った。
【0074】
定電圧方式の測定によるサイクリック・ボルタモグラム(CV)グラフを、図10と図11に示した。図10は、純粋なバシラスバクテリアのみからなる負極活物質と、本発明のバシラスバクテリア/コバルト酸化物の有機・無機複合体を測定した結果である。これによると、純粋なバシラスバクテリアは、リチウム2次電池の中でリチウムとほとんど反応しないことが分かる。また、図12と図13は、前記実施例10と実施例13及び比較例2と比較例3の負極活物質を、C/5の電流密度を流して、100回の充・放電サイクルテストを行った結果のグラフである。これらの比較を通して、本発明の有機・無機複合体及びチューブ形状のロッドに製造された負極活物質は、純粋なバシラスバクテリアまたは市販されているCo34より高容量を発現しながら、サイクルが長時間維持されることが分かる。
【0075】
下記表4と表5は、前記実施例10で製造した有機・無機複合体、実施例13で製造したチューブ形状ロッドと、比較例1〜3で対照群として合成された純粋コバルト金属酸化物のナノ粉末及び純粋なバシラスバクテリア粉末と、市販されているCo34の2次電池の特性評価であって、C/5とC/10の電流密度で100回の充・放電サイクルテストを行った時の放電容量を表したものである。
【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
前記表4と表5によると、本発明の実施例10で製造した有機・無機複合体、実施例13で製造したチューブ形状ロッドの負極活物質が、比較例1で提示した合成法で製造した純粋コバルト金属酸化物ナノ粉末や、比較例2〜3で準備した純粋なバシラスバクテリア粉末及び市販されているCo34粉末に比べ、はるかに優れた高容量の特性を持ち、長時間のサイクルでもより高い高容量を見せることが分かる。従って、本発明の0次元の遷移金属酸化物ナノ粉末からなる1次元形態の有機・無機複合体及びチューブ形状ロッドの物質は、0次元ナノ粉末から高容量を達成することができるだけでなく、リチウムとの反応時に小さい体積変化により、高いサイクルテストでも、より良い高容量特性を維持することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
従来のリチウム2次電池用負極活物質において短所として指摘されてきた低容量、及びリチウムと反応する際の大きい体積変化に起因するサイクルによる容量が大きく減少する特性を、バクテリアをテンプレートとして使用し、高容量のナノ金属酸化物がバクテリア表面と結合して製造される0次元からなる1次元の有機・無機複合体ロッドを製造することで解決できる。特に、前記有機・無機複合体を製造するために、バシラスバクテリアの表面が陰電化を帯びる特徴と陽イオンの特性を示す遷移金属前駆体を直接的にバクテリア表面に付着させ、遷移金属酸化物で還流させる本発明の方法は、その過程が単純であり、経済的で、様々な形を有するバクテリアによって多様な形状を有する合成が可能であり、低温合成及び媒介体となるバクテリアの大量生産が容易であるため、リチウム2次電池だけでなく、電気二重層スーパーキャパシタ分野での実質的応用が可能であると期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)表面に陰電荷を帯びるバクテリアを培養した後、バクテリアの濃度を水で調節してバクテリア分散溶液を製造する段階と、
2)遷移金属前駆体を水に溶解させた遷移金属前駆体溶液を、前記1)の溶液に添加しながら、20〜30℃で0.5〜2時間攪拌してバクテリアと遷移金属前駆体とが均一に分散されるようにする段階と、
3)水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を水に溶解させた溶液を、前記2)の溶液に添加しながら還流させて、バクテリア表面に遷移金属酸化物が均等に付着されるように誘導する段階と、
4)前記3)の還流溶液を遠心分離した後、洗浄して析出物を収得する段階と、
5)前記析出物を真空乾燥して、有機・無機複合体を製造する段階と、
からなることを特徴とするバクテリア及び遷移金属酸化物からなる有機・無機複合体の製造方法。
【請求項2】
前記バクテリアは、バシラスバクテリアを用いる請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記水は、脱イオン水を用いる請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項4】
前記バクテリアの濃度は、紫外線分光計測定において600nm波長で光学吸光度が1.0〜2.0であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
前記遷移金属前駆体溶液は、1〜100mMの濃度を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
前記水素化ホウ素ナトリウム溶液の濃度は、5〜500mMであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
前記還流は、20〜30℃で10〜15時間行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
前記真空乾燥は、60〜70℃の温度、10-2〜10-3torrの圧力下で行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
表面に陰電荷を帯びるバクテリアと遷移金属の陽イオンの還元・酸化反応により、バクテリア表面に遷移金属酸化物が付着されることを特徴とするバクテリア及び遷移金属酸化物からなる有機・無機複合体。
【請求項10】
前記バクテリアはバシラスバクテリアであることを特徴とする請求項9記載のバクテリア及び遷移金属酸化物からなる有機・無機複合体。
【請求項11】
請求項9及び請求項10の有機・無機複合体を空気雰囲気下で焼成して、チューブ形状のロッド(rod)を製造することを特徴とする遷移金属酸化物ロッドの製造方法。
【請求項12】
前記焼成は、1分当り1〜10℃の昇温速度で150〜300℃に到達した後、10〜15時間維持することを特徴とする請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
請求項11または12の方法で製造したチューブ形状の遷移金属酸化物ロッド。
【請求項14】
請求項9及び請求項10の有機・無機複合体または請求項11のロッドを含むことを特徴とする2次電池用負極活物質。
【請求項15】
請求項14の負極活物質を含む負極を採用したことを特徴とする2次電池。


【図3】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−184853(P2010−184853A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222883(P2009−222883)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(304039548)コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー (36)
【Fターム(参考)】