説明

バクテリオファージナノ粒子を含む方法および組成物

バクテリオファージを含む組成物および方法を提供する。詳細には、本発明は、抗原および外来粒子を効果的な提示のために独自に設計された、新規なカスタマイズされたT4バクテリオファージを含む。本発明は、カスタマイズされたT4バクテリオファージを作製するためのin vitro手法も提供する。本発明の組成物および方法は、効果的なワクチン送達システム用に使用されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バクテリオファージを含む新規な方法および組成物に関する。詳細には、本発明は、抗原および外来粒子を効果的に提示するように独自に設計された、新規なカスタマイズされたバクテリオファージを含む。本発明の方法および組成物は、効果的なワクチン送達システム用に使用できる。
【背景技術】
【0002】
ファージディスプレイでは、外来ペプチド(ドメインまたはタンパク質)を、構造タンパクに融合させて、ファージキャプシド外表面上に露出させる(Smith、1985年)。線維状ファージ(M13、fd、およびf1)のコートタンパク質であるマイナーコートタンパク質pIII(4〜5コピー)および主要コートタンパク質pVIII(2,700コピー)が、長さ6〜8アミノ酸のペプチドのコンビナトリアルライブラリーを作製するのに広く使用されている(SmithおよびPetrenko、1997年;Manoutcharianら、2001年)。正二十面体ファージであるラムダおよびT7を用いた他のディスプレイシステムも開発されている(Maruyamaら、1994年;DannerおよびBelasco、2001年)。これらのシステムは、標的クローンまたはc−DNAライブラリーに由来する、より大きなペプチドおよびドメイン、そして完全長タンパク質さえ提示することができる(Hoess、2002年)。外側キャプシドタンパク質gpD(420コピー)(SternbergおよびHoess、1995年)、およびファージラムダの尾部タンパク質gpV(Maruyamaら、1994)、およびファージT3/T7の主要キャプシドタンパク質gp10が、外来配列の提示に使用されてきた。特定の生物学的機能を有する希少なペプチドを、「バイオパニング」によって、これらのライブラリーから「釣り出し」て、その後増幅することができる(ScottおよびSmith、1990年;SmithおよびPetrenko、1997年)。表現型と遺伝子型との間の連結、すなわち、ファージの外側に提示されるペプチドと、同一のファージの内部でそれをコードするDNAとの間の物理結合によって、生物学的に興味深いペプチド配列の迅速な記述が可能となる。
【0003】
これらのディスプレイシステムが利用できるのにもかかわらず、これらのシステムの適用にはかなりの制限が存在する。例えば、繊維状ファージでは、融合されたペプチドがファージ集合装置の一部として大腸菌(E.coli)膜を通して分泌されなければならないので、ある種のペプチドの提示が制限されているか、または不可能である。pIIIおよびpVIIIの両方がファージの組み立てに必須であるので、それらの必須な生物学的機能を妨害せずに、大きなドメインまたは完全長タンパク質を提示するのは困難である。大きなペプチドの配列が提示される状況では、ファージキャプシドあたりにおけるそれらのコピー数は、大幅に減少し、かつ予測不能である。大きさおよびコピー数に関する同様の問題は、ファージラムダおよびT3ディスプレイシステムでも直面した。生存可能なファージを生成するために、ヘルパーファージまたはアンバー突然変異体の部分的な遺伝子抑制を用いて、組換え体と共に野生型タンパク質分子を組み込む必要がしばしばある。(Hoess、2002年;Manoutcharianら、2001年;Maruyamaら、1994年)。
【0004】
既存のファージディスプレイシステムの別の重大な制限は、組換え体分子がファージの伝染サイクルの一部としてキャプシド上に集合されるという点でそれらがin vivoベースであることである。これらのシステムでは、細胞環境における多くの変数が、集合過程に影響を与え、その結果、生成されるファージ粒子の質に大きな可変性が生じる。この集合過程には、極めてわずかにしか制御を行使することができず、異なった調製相互では、コピー数の桁が異なる場合があり、それによって、これらのシステムは、極めて予測不能となっている。
【0005】
提示される抗原の大きさおよびコピー数は、ワクチン開発のための特に重要な変数であり、したがって、実用的なワクチンを作製するためにファージディスプレイを用いる試みがかなり制限されてきた。理想的なファージワクチンは、大きさに関する有意な制限なしに完全長抗原または抗原の望ましいエピトープを高密度で提示できるであろう。また、それは、再現性のある質の粒子を生成するために、特定された方法で提示プラットフォームを操作するのを可能にするであろう。必要なのは、ファージT4粒子を用いた、完全長抗原、または標的抗原のエピトープの効率的かつ制御された提示を可能にする最初のファージシステムである。また、特定の免疫応答が得られるようにカスタマイズできるファージシステム、例えば、複数の抗原または外来粒子に対する免疫応答の生成を可能にするファージシステムも望ましい。
【0006】
多成分系ワクチンを開発するために、バクテリオファージT4が探求されてきた。ファージT4のキャプシドは偏長した(細長い)20面体であり(Eiserling、1983年;Blackら、1994)、直径が約86nm、長さが約119.5nmである(Fokineら、2004年;図1)。それは、930コピーの単一の主要キャプシドタンパク質gp23*によって構成されている(46kDa;図1中の青色のこぶ)。キャプシドは、頂点に位置する2種類のマイナーキャプシドタンパク質からもなる。12の頂点のうち11は、約55コピー(各頂点につき1つの五量体)のマイナーキャプシドタンパク質gp24*によって構成されている(42kDa;図1中の深紅色のこぶ)。12番目の頂点は、同一な約12コピー(十二面体)のマイナーキャプシドタンパク質gp20によって構成されている(61kDa;図1中には示していない)。この頂点は、それがT4 DNAの進入点および進出点の両方として機能するので、ポータル頂点(portal vertex)とも呼ばれる。
【0007】
キャプシドの集合が完成した後に2つの追加のタンパク質、すなわちHoc(強い抗原性を有する外側キャプシドタンパク質、40kDa)およびSoc(より小さな外側キャプシドタンパク質、9kDa)、(図1)がキャプシドに添加されることが構造研究によって確立された(Stevenら、1976年;Yanagida、1977年;IshiiおよびYanagida、1975年および1977年;Ishiiら、1978年、Iwasakiら、2000年)。Fokineら(2004)によって報告された最新の構造データによれば、Hocは、キャプシド粒子あたり最大155コピーまで存在し、一方、Socは、キャプシド粒子あたり最大810コピーまで存在する。最も重要なのは、これらのタンパク質が必須ではないということである。これらの遺伝子のいずれかでの変異、あるいはこれらの遺伝子両方での変異は、通常の実験条件下におけるファージ産生にも、ファージ生存率にも、ファージ感染力にも、また、ファージの安定性にも影響を与えない。しかし、極端な環境条件(例えば、pH>10.6、浸透圧ショック)下では、HocおよびSocはキャプシドに追加の安定性を提供する。
【0008】
他の研究者によって最初にHocおよびSocが報告された際、これらのタンパク質は、生活環における細胞外フェーズでウイルスを保護する外側の「ケージ/よろい」を形成する新規かつ興味深いクラスの外側キャプシドタンパク質を代表するものと思われた。しかし、それらが発見されて以来、他のいかなるファージ/ウイルスシステムでも、そのように、必須でなく、コピー数が多く、抗原性が強く、そして、比較的容易に操作可能な外側のキャプシド遺伝子を有することが示されていない。
【0009】
HocおよびSocタンパク質が有する有用な特徴の1つは、T4ファージの機能に影響を与えることなく、外来タンパク質またはタンパク質断片を、HocおよびSocのN末端およびC末端に融合させることができることである。実際、HocおよびSoc融合タンパク質の提示は、ファージの生存率にも感染力にも影響を与えない(Jiangら、1997年;Renら、1996年;ならびに、RenおよびBlack、1998年)。大きなポリペプチド鎖および完全長タンパク質を、HocおよびSocに融合させて、T4キャプシド表面で提示するのに成功している。これらには、Por−Aループ−4ペプチド(4kDa)、HIV−gp120 V3ループ(5kDa)、可溶性CD4受容体(20kDa)、抗卵白リゾチームドメイン(32kDa)、およびポリオウイルスVP1(35kDa)が含まれる(Jiangら、1997年;Renら、1996年;ならびに、RenおよびBlack、1998年)。さらに、外来タンパク質はキャプシド表面に安定的に提示され、4℃、または高塩濃度存在下で数週間保存することができる(Jiangら、1997年;Renら、1996年)。T4組換え体のナノ粒子は、提示された抗原に対する高力価の抗体をマウスで誘発した。
【0010】
以前のストラテジーは、ファージキャプシドへの外来タンパク質の予測不可能なin vivo担持を利用するものであった。これはファージM13、ラムダ、T7、およびT4を用いたファージディスプレイ分野で支配的なパラダイムであった。in vivoストラテジーの1つでは、最初にタンパク質を大腸菌(E.coli)で発現し、その後、hocsoc−ウイルスで感染させた後にT4に担持させる(Jiangら、1997年)。第2のin vivoストラテジーでは、組換え置換によって融合コンストラクトをT4ファージゲノム中に移動させ、この融合タンパク質が、T4感染の過程で発現され、ファージT4上に担持されるが、このストラテジーでは、組換え体遺伝子および遺伝子産物がファージT4生活環の一部となる(Jiangら、1997年;Renら、1996年)。in vivo担持システムの主要な欠点は、提示される抗原のコピー数が可変的なことである。これは主として、ほとんど制御を及ぼすことのできないin vivo抗原集合の変動性による。例えば、感染細胞中での組換え体抗原の発現レベルは、栄養条件および環境条件に応じて大きく変動する。また、集合過程も、非特異的な細胞内タンパク質分解に影響されやすい。さらに、細胞内環境の多数の成分の間での相互作用によって、一貫した質の均質的な粒子を生成するには十分に特定されていない過程となっている。
【0011】
HocおよびSocベースの様々な集合プラットフォームが概念化されている。例えば、Mattsonに発行された米国特許第6,500,611号では、発明者は、レポーター基をウイルスキャプシドに連結するための一般概念について記述しており、それでは、レポーター基がリンカー分子を介して分析物を認識する。しかし、Mattsonは、外来タンパク質をT4ファージキャプシドに担持させる特異的な方法を可能にしていない。また、Mattsonは、大きな完全長キャプシドタンパク質がキャプシド表面に高密度で担持できることを実証しても、示唆してもいない。さらに、Mattsonは、T4ナノ粒子ワクチン組成物またはなんらかのそのような組成物が、免疫原性反応を誘発する多成分系プラットフォームとして使用できることを教示しても、示唆してもいない。
【0012】
Renら、Protein Science、9月;5(9),1833−43(1996年)による研究では、筆者は、ポリヘッドと呼ばれる、キャプシドベースの重合体へのSoc融合タンパク質の結合について論じている。このポリヘッドモデルは、特定された集合プラットフォームおよびワクチン組成物の開発には特に不適当である。第1に、ポリヘッドは特定された粒子ではない。むしろ、これらのポリマーは、ファージT4主要キャプシドタンパク質gp23の無制御な成長の結果生じ、それらが調製された後では、異種混合の粒子混合物として存在する。例えば、HocおよびSocの結合部位を有するためにさえ、HocおよびSocの結合部位を開放するために、ファージT4プレヘッド(prehead)プロテアーゼを含有する粗抽出物の存在下にin vitroで、ポリヘッド重合体を切断しなければならない。また、後者は、「ポリヘッド増殖(polyhead expansion)」も必要とするが、これは、キャプシドタンパク質高分子を再編成して、HocおよびSocの結合部位を生成する劇的な立体配座変化である。この結果得られる、切断され、かつ増殖されたポリヘッドは、異なった構造のものが混合したポリヘッド表面に、ほとんど特定されない数のHocおよびSoc結合部位を有するであろう。そして、それらの長さは、ナノメーターからミリメーターまでのいかなる範囲にも変動しうる。T4ファージ粒子とは異なり、これらのポリヘッドは平板な二次元構造を含み、それらは、大きさおよび寸法の異なるgp23重合体のシート、閉じたシート(管)、および破片などを含む。ポリヘッドモデルのこのような変動性を考えると、粒子上の利用可能な結合部位の数は、不適切な実験により正確に測定することができない。したがって、ポリヘッド上の外来抗原のコピー数を制御することは、もし不可能でないとしても、極めて困難であろう。また、ポリヘッドは、それらの形状のため、DNAを梱包する能力がなく、したがって当技術分野で知られているプライムブーストストラテジーに用いることができない。
【0013】
必要なのは、バクテリオファージをカスタマイズする効果的な組成物および方法である。カスタマイズされたバクテリオファージは、カスタマイズされたファージ粒子を含むワクチンシステムを創製するのに使用できる。そのようなシステムは、1つまたは複数の抗原または外来粒子に対する免疫応答を誘発できる特異的なファージ粒子の設計を可能にするにちがいない。好ましくは、そのようなシステムは、製造および投与が容易なものであるべきである。
【0014】
標的細胞への特定の抗原または粒子の曝露または送達を標的とする、組成物および方法も必要である。
【0015】
抗体を産生するための組成物および改良法に対する一般的な必要性も存在する。これらの組成物および方法は、治療用および診断用の処方に適した方法で容易かつ経済的に産生されるべきである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
(発明の概要)
本発明は、カスタマイズされたファージ粒子を産生する効果的な組成物および方法を含む。そのようなシステムは、1つまたは複数の抗原または外来粒子に対する免疫応答を誘発できる特異的なファージ粒子の設計を可能にし、新規なワクチン送達システムを創製するのに使用できる。加えて、そのようなシステムは製造および投与が容易である。
【0017】
本発明の独自の組成物および方法は、ファージ粒子のカスタマイズを可能にし、それによって、ファージ上に提示された抗原(または複数の抗原)の数または選択の制御が明確にできるようになる。したがって、本明細書に記載の方法に従って構築されたファージは、治療される状態に応じてカスタマイズすることができ、特定の数の抗原および/または特定の抗原(または複数の抗原)の特定のエピトープを含有しうる。特定の実施形態では、ファージに標識を組み込むことができる。他の特定の実施形態では、複数の疾患に関する免疫応答を生成するようにファージをカスタマイズすることができ、そのような疾患は、時間的に近接して顕在化したものでよい(例えば、AIDおよび結核は、しばしば、ほぼ同時に発症するので、ヒト免疫不全症ウイルス感染だけでなく、ミコバクテリア感染も治療するようにファージをカスタマイズしてよい)。
【0018】
本発明のワクチンシステムは、標的細胞への、特定の抗原または粒子の曝露または送達も可能にする。
【0019】
本発明は、抗体を産生する改良された方法も含む。
【0020】
本発明は、カスタマイズされたファージ粒子およびその作製方法を含み、そのような方法は、治療用および診断用の使用に適した方法で、容易かつ経済的に生み出される。
【0021】
本発明は、ファージ粒子の製造に関連した以前のin vivo制限を、予測可能かつ大規模であることを基調とした、特定されたT4バクテリオファージナノ粒子のin vitroでの構築を可能にすることによって克服する。
【0022】
先行のポリヘッドモデルとは対照的に、このin vitro担持システムは、明確に特定されたT4ファージ粒子を利用する。詳細には、本発明は、多数の異なった適用に使用するための様々なT4ファージナノ粒子を創製するために、Hocおよび/またはSoc融合タンパク質を特異的かつ特定された方法でT4ファージ粒子に担持させるのを可能にする。
【0023】
本発明は、T4キャプシド表面の系統的な実験およびカスタマイズを可能にする新規なin vitroシステムを提供する。本明細書に記載のin vitroシステムは、再現性のある生物活性を有する特定された粒子の調製を可能にする。重要なのは、本明細書に記載のファージ構築方法が、遺伝子から、提示されるナノ粒子への移行を短い期間(例えば1から2週間)内で行うのを可能にする能率化された形式で、多成分系ワクチンを構築するという明確な目標を達成する。
【0024】
特定の実施形態では、ファージまたはナノ粒子を、DNAなし(空の粒子)で、あるいは、T4ゲノム中にクローニングされたのと同じ外来DNAを用いて(プライムブーストストラテジー)調製することができる。
【0025】
本発明のin vitro集合システムは、これまで利用できなかった、信頼性があり大規模であることを基調とした、カスタマイズされたT4ファージナノ粒子の産生を可能にする。
【0026】
本発明のin vitro集合システムは、T4ファージの表面に大きな分子を提示できるT4ナノ粒子の産生を可能にする。これらの分子は、体液性および/または細胞性の強い反応を誘発できる。
【0027】
表面抗原を提示する本発明のT4ナノ粒子と、抗原タンパク質をコードするDNAコンストラクトをファージゲノム中に有する本発明のT4ナノ粒子とを併用することによって、本発明のin vitro集合システムは、プライムブースト免疫処置の方法を提供する。
【0028】
したがって、本発明の目的は、新規なカスタマイズされたバクテリオファージのための方法および組成物を提供することである。
【0029】
本発明の別の目的は、カスタマイズされたバクテリオファージを含むワクチン送達システムを提供することである。
【0030】
本発明のさらに別の目的は、バクテリオファージを含むワクチン送達システムを提供することであり、そのようなバクテリオファージは、特異的な抗原、抗原エピトープ、マーカー、標識、タンパク質、外来粒子、および同様のものを用いてカスタマイズされている。
【0031】
本発明の別の目的は、寸法、ならびに融合タンパク質および同様のものなどの実体を担持する容量が明確に特定されたナノ粒子を含むワクチン送達システムを提供することである。
【0032】
本発明のさらに別の目的は、1つまたは複数の特異的な免疫応答を誘発するカスタマイズされたナノ粒子を含むワクチン送達システムを提供することである。
【0033】
本発明の別の目的は、特定の抗原または他の分子を所望の標的に提示、曝露、または送達できるカスタマイズされた送達媒体を提供することである。
【0034】
本発明のさらに別の目的は、筋肉内投与、静脈内投与、経皮投与、経口投与、または皮下投与できる新規なワクチン送達システムを提供することである。
【0035】
本発明の別の目的は、単一または複数の疾患の対する免疫ベースの防御を提供する単一のT4ナノ粒子を提供することである。
【0036】
本発明のさらに別の目的は、複数の異なった疾患に対する免疫ベースの防御を提供する単一のワクチン組成物を提供することである。
【0037】
本発明の別の目的は、大きな抗原性分子を提示して、これらの分子に対する免疫応答を誘発できるT4ナノ粒子組成物を提供することである。
【0038】
本発明のさらに別の態様は、ファージ粒子表面に提示された抗原と、様々な抗原性分子をコードするDNAコンストラクトとの両方をT4ファージ粒子が送達する、プライムブースト免疫処置の方法を提供することである。
【0039】
本発明の別の目的は、複数の分子が相互作用できて、それによって、異なった抗原領域が曝露されるか、あるいは他の抗原性分子が産生されるT4ファージア集合プラットフォームを提供することである。
【0040】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴、および利点は、下記の、開示された実施形態の詳細な説明と、添付した特許請求項の範囲とを吟味した後に明確となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0041】
(詳細な説明)
本発明は、ここに含まれている特定の実施形態に関する以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解されるであろう。本発明は、その特定の実施形態の個別の詳細に関して記載されているが、そのような詳細は、本発明の範囲に関する制限とはみなされないものとする。2003年12月17日出願の米国特許仮出願第60/530,527号を含めた、本明細書で言及した参考文献の全文を、これにより、それらの全体において参照により本明細書に援用する。
【0042】
現在利用可能なファージベースのワクチンシステムは、それらを、提示されている抗原の容積またはアイデンティティに関してカスタマイズできないという点で制限されている。本発明は、ファージT4粒子を用いた、様々な抗原(完全長の組換え体抗原を含める)の効率的で制御された提示を可能にする最初のファージシステムである。本明細書に記載した、カスタマイズされたT4バクテリオファージナノ粒子を産生するための組成物および方法は、独自の特異性を有するワクチンの産生を可能にする。加えて、本発明のT4バクテリオファージナノ粒子は、個々のタンパク質または他の分子が促進しないであろう免疫応答を促進するので、とりわけ望ましい。
【0043】
本発明は、T4ファージナノ粒子をin vitroで作製するための、カスタマイズされたT4バクテリオファージナノ粒子および方法を含む。詳細には、T4ファージナノ粒子を作製する方法は、hocおよび/またはsocT4バクテリオファージ粒子と、別の分子に融合したHocおよび/もしくはSocタンパク質またはその断片とを利用したin vitro集合システムを含む。この分子は、限定されるものではないが、タンパク質、タンパク質断片、アミノ酸、抗原、脂質、抗体、糖質、酵素、サイトカイン、ケモカイン、または他の炎症仲介物質を含めた、化学活性および/または生物活性を有するいかなる分子も含みうる。この分子は、当業者に知られている任意の方法でHocおよび/またはSocに融合させることができる。この分子がHocおよび/もしくはSocタンパク質またはその断片に融合されれば、その結果得られる産物がHocおよび/またはSoc融合分子を含む。本発明の一実施形態では、Hocおよび/またはSocに融合される分子が、外来タンパク質などのタンパク質であり、それによって、Hocおよび/またはSoc融合タンパク質を生成する。図2は、in vitro集合システムの実施形態と、結果として得られるT4ナノ粒子を図示する。図2では、外来抗原(赤色で示す)と、Hocおよび/またはSocタンパク質(青色で示す)とを含むHocおよび/またはSoc融合タンパク質が生成されている。精製した後、これらのHocおよび/またはSoc融合タンパク質を、精製されたhocおよび/またはsocT4ファージ粒子に結合する。その結果得られるT4ナノ粒子は、例えば、Hoc(T4ナノ粒子中に黄色のこぶとして示す)に融合した外来抗原(赤いこぶ)を提示する。この図に図示したT4ナノ粒子は、socT4ファージのクリオ−EM再構成によって得たものである(Purdue大学、Andrei Fokine博士およびMichael Rossmann博士提供)。
【0044】
本発明のHocおよび/またはSoc融合タンパク質実施形態を生成するためには、Hocおよび/もしくはSocタンパク質またはその断片のNまたはC末端を、タンパク質などの、外来の分子または実体に融合する。本発明の特定の実施形態では、Ni−アガロースカラムクロマトグラフィーによる、Hocおよび/またはSoc組換え体タンパク質の単一工程精製が可能となるように、融合タンパク質のN末端にヘキサヒスチジンタグ配列を付加する。限定されるものではないが、グルタチオントランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、FLAG、赤血球凝集素(HA)、および緑色蛍光タンパク質(GFP)を含めた、組換え体タンパク質の精製用に当技術分野で知られている他の多数のタグも、ヘキサヒスチジンタグの代わりに使用できることを当業者ならば認識するであろう。本発明は、外来タンパク質とHocまたはSocタンパク質との間に汎用リンカー配列をさらに含む。特定の実施形態では、リンカーが無構造リンカー(structureless linker)である。以下の理論に拘泥するものではないが、リンカー配列は、HocまたはSocの折りたたみまたはキャプシド表面への集合に対する外来タンパク質ドメインの妨害、およびその逆を最小にすると考えられている。特定の実施形態では、無構造リンカーはポリグリシンリンカー(pro−gly−gly)を含むが、当技術分野で知られている、長さおよび配列の異なる様々なリンカー(有構造および無構造)も本発明と共に使用できる。
【0045】
様々な方法を用いて、本発明のHocおよび/またはSoc融合タンパク質実施形態を構築することができる。Hocおよび/またはSoc融合タンパク質を構築するのに、遺伝子およびタンパク質を操作する複数の方法が利用可能であることを当業者ならば理解するであろう。例えば、所望の融合タンパク質をコードする遺伝子コンストラクトを構築するのに、PCR主導の重複伸長によるスプライシング(Splicing by Overlap Extension,SOE)ストラテジーを用いることができる(KueblerおよびRao、1998年;RaoおよびMitchell、2001年)。このストラテジーは、4つのオリゴヌクレオチド(プライマー1〜4)と、3回の連続したPCRとを必要とし、組換え体構築物を構築する迅速かつ強力なストラテジーである。このストラテジーを用いて、かなり複雑な遺伝子構築物を構築することができ、また、複数の遺伝子融合が1日のうちに終了した。本発明の特定の実施形態によるヘキサヒスチジンタグ配列を含めるために、T7発現ベクターのヘキサヒスチジンタグにインフレームとなるように遺伝子コンストラクトを挿入することができる。
【0046】
本発明のT4ファージ粒子は、直径約70〜140nm、長さ約90〜150nmに特定された偏長な(細長い)20面体を含む。特定の実施形態では、本発明は、直径約86nm、長さ119.5nmに特定された扁長な(細長い)20面体を含むT4ファージ粒子を含む。Hocおよび/またはSocがT4ファージ粒子のキャプシドに結合するのを可能にするために、本発明は、Hocおよび/またはSocタンパク質を発現できないhocおよび/またはsocT4ファージ変異体を利用し、そのため、この変異体は、そのキャプシド表面にHocおよび/またはSocタンパク質を含有していない。hocおよび/またはsocT4ファージ変異体を生成する方法は、当技術分野で知られている様々な方法(Karam,J.D.(編)、「バクテリオファージT4の分子生物学(Molecular Biology of Bacteriophage T4)」、ASM Press社、Washington,D.Cの補遺)によって実行できる。本発明のin vitroシステムで使用するには、hocおよび/またはsocT4ファージ粒子は、単離されている必要があり、実質的に純粋であるべきである。これらのT4ファージ粒子は、当技術分野で知られているいかなる方法で単離してもよいが、適切な単離および精製は、例えば、Aebiら、1976年、および、D.T.Mooneyら(1987年)、J Virol.61,2828−2834に記載のショ糖勾配精製を通して実現されうる。
【0047】
本発明の特定の実施形態によるHocおよび/またはSoc融合タンパク質の精製、ならびにhocおよび/またはsocT4ファージ粒子の単離に続いて、精製されたHocおよび/またはSoc融合タンパク質を、新規なin vitro集合システムによって、精製されたhocおよび/またはsocT4ファージ粒子上に集合させて、あるいは「担持」して、T4ナノ粒子を生成する。担持とは、Hocおよび/またはSocタンパク質がT4バクテリオファージキャプシド表面に結合するように、Hocおよび/またはSoc融合タンパク質をhocおよび/またはsocT4ファージ粒子の近傍に配置することに関する。hocおよび/またはsocT4ファージ粒子へのHocおよび/またはSoc融合タンパク質の担持を促進するために、精製された構成要素を反応緩衝液中で約1〜120分、好ましくは約20〜90分、より好ましくは約40〜70分、そしてさらにより好ましくは約30〜60分、インキュベートする。このインキュベーション時間中、反応緩衝液温度は様々でありうるが、好ましくは約25〜45℃、より好ましくは約32〜42℃さらにより好ましくは約37℃である。反応緩衝液に関しては、当技術分野で知られている様々な緩衝液を本発明と共に使用することができる。例えば、適当な反応緩衝液は、pHが7〜8の間、あるいは、好ましくはpHが7.2〜7.8の間、より好ましくはpHが7.3〜7.5の間、さらにより好ましくはpHが約7.4のトリス緩衝食塩水を含むものである場合がある。他の適当な反応緩衝液には、当業者に知られているもの、例えば、様々な塩濃度、ならびに/または、グリセロール、ショ糖、イオン性および非イオン性界面活性剤などの多数の緩衝成分の存在下における、リン酸緩衝食塩水、ヘペス緩衝液、および同様のものが含まれる。
【0048】
反応緩衝液中でHocおよび/またはSoc融合タンパク質をhocおよび/またはsocT4ファージ粒子と共にインキュベートした後、当業者に知られている方法によって、Hocおよび/またはSoc融合タンパク質−hocおよび/またはsocT4ファージナノ粒子を、反応緩衝液から取り出す。例えば、反応混合物(これは精製されたHocおよび/またはSoc融合タンパク質、精製されたhocおよび/またはsocT4ファージ粒子、反応緩衝液、ならびに新たに形成されたT4ナノ粒子を含有する)を、5,000〜40,000rpmで20〜100分、好ましくは約10,000〜20,000rpmで40〜80分、より好ましくは約13,000〜16,000rpmで、55〜65分遠心することがある。粒子は、カラムクロマトグラフィーまたは勾配遠心によって回収することもできる。遠心または回収段階に続いて、結合していないHocおよび/またはSoc融合タンパク質を含有する上清を廃棄し、新たに形成されたT4ナノ粒子を含有するペレットを、反応緩衝液または他の適当な緩衝液で洗浄して、いかなる結合していない融合タンパク質も除去する。
【0049】
本発明のT4ファージは、HocおよびSocの結合部位を、特定されたコピー数有する(併せて、1粒子あたり合計約965コピー)という利点をもつ。そのように多数の特定された結合部位を有することによって、T4ファージは、それを用いて特定の分子の提示または分子の多重度をカスタマイズすることができる独特のナノプラットフォームを提供する。図4、7、および9に図示するように、in vitro集合反応における成分の比率を操作する(すなわち、T4ファージ粒子に対するHocおよび/またはSoc融合タンパク質の比率を操作する)ことによって、上述したインキュベーションの前または最中に、T4ファージ粒子に結合した融合タンパク質のコピー数を制御することができる。この例は、実施例7に例示する。同様に、in vitro集合システムで2つ以上のHocおよび/またはSoc融合タンパク質を用いることによって、そして、T4ファージ粒子に対する、異なった融合タンパク質のモル比を調整することによって、T4ファージ粒子に結合した融合タンパク質の比率を制御して、特定されたT4ナノ粒子を生成することができる。例えば、所与のT4ナノ粒子が、HIV抗原tatおよびnefの組み合わせを提示でき、他の融合タンパク質も同様である。ファージ粒子に対する、tat−Hoc融合タンパク質およびnef−Hoc融合タンパク質の比率を変えることによって、それに応じて、提示される融合タンパク質の比率を、インキュベーション時間の前または最中に変えることができる。そのようなタンパク質に関するさらなる詳細を実施例8に提供する。
【0050】
in vitroの集合システムを用いて、様々な適用に使用するための多数の異なったT4ナノ粒子組成物を構築することができる。例えば、本発明の特定の実施形態は、体液性および細胞性の免疫反応の両方を生成することができ、したがって、単一成分または多成分系のワクチン製剤として有用である。これら様々なワクチン製剤中で、Hocおよび/またはSoc融合タンパク質の外来タンパク質は、T4ファージ粒子の表面に提示される抗原タンパク質を含みうる。様々な抗原には、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−3(「IL−3」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−5(「IL−5」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−7(「IL−7」)、インターロイキン−8(「IL−8」)、インターロイキン−10(「IL−10」)、インターロイキン−11(「IL−11」)、インターロイキン−12(「IL−12」)、インターロイキン−13(「IL−13」)、リピドA、ホスホリパーゼA2、エンドトキシン、ブドウ状菌エンテロトキシンB、および他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF−αまたはb)、トランスフォーミング成長因子β(「TGF−β」)、リンフォトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮成長因子(「VEGF」)、アンギオゲニン、トランスフォーミング成長因子(「TGF−α」)、熱ショックタンパク質、血液型の糖質部分、Rh因子、線維芽細胞成長因子、ならびに他の炎症および免疫調節タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異的抗原;MART、MAGE、BAGE、熱ショックタンパク質(HSP)など;変異型p53;チロシナーゼ;Muc−1などのムチン、PSA、TSH、自己免疫性抗原;AZTなどの免疫療法薬物;ならびにアンギオスタチン、エンドスタチンなどの血管新生薬および抗血管新生薬、ならびに塩基性線維芽細胞成長因子、ならびに血管内皮成長因子(VEGF)、前立腺特異的抗原、ならびに甲状腺刺激ホルモンまたはその断片が含まれるが、これらに限定されない。また、上述の通り、hocおよび/またはsocT4ファージ粒子に対するHocおよび/またはSoc抗原融合タンパク質のモル比を調整することによって、インキュベーション時間の前または最中に、T4ファージ粒子のキャプシド表面に単一の抗原、多様な抗原、および/または特定された比率の抗原を提示するように、T4ナノ粒子を調製することができる。図9および10を参照のこと。
【0051】
本発明の特定の実施形態では、1つまたはいくつかの感染症に対応する複数の抗原を同時に提示するT4ナノ粒子を生成するために、in vitroの集合システムを用いることができる。より詳細には、本明細書に記載のin vitro集合システムを利用することによって、例えば、同一のキャプシド表面にHIV抗原と炭疽菌抗原との両方を提示することができ、それによって、HIVおよび炭疽菌の両方に対する1つのワクチンを処方することが可能となる。別の実施形態では、同時に、または時間的に近接して発症した疾患および障害用にナノ粒子をカスタマイズすることができる。例えば、多くのAIDS患者が、結核などの様々な別の疾患を患っている。カスタマイズされた、あるナノ粒子は、ヒト免疫不全症ウイルスだけでなく、ミコバクテリアの抗原(または抗原の様々なエピトープ)も含有できるであろう。別の一実施形態では、同一のキャプシド上に、1つまたは複数の抗原の複数のエピトープを同時に提示するT4ナノ粒子に生成するのに、in vitro集合システムを用いることができる。
【0052】
別の実施形態では、Hocおよび/またはSoc遺伝子融合体コンストラクトの構築中に、部位特異的なコンビナトリアル変異を標的配列に導入することができる(コンビナトリアル変異導入ストラテジーに関しては、RaoおよびMitchell(2001年)を参照)。このストラテジーを用いて、一揃いの抗原変異体を発現させて、T4ナノ粒子上または複数のT4ナノ粒子上でそれらを組み合わせて提示することによって、数系統の感染性因子、または宿主の淘汰圧に対して変異体を生成する感染性因子(例えばHIV)に対して効果的であろう多変種ワクチンの構築が可能となるであろう。
【0053】
さらに別の実施形態では、その表面で相互作用する分子を提示するT4ナノ粒子組成物を構築することができる。例えば、当業者に知られている方法を用いて、第1の外来タンパク質に融合したHocおよび/またはSocを含む第1のHocおよび/またはSoc融合タンパク質を構築することができる。同様に、第2の外来タンパク質に融合したHocおよび/またはSocを含む第2のHocおよび/またはSoc融合タンパク質を構築することができる。本明細書に開示されたin vitro集合システムを利用することによって、第1および第2のHocおよび/またはSoc融合タンパク質を、1つのT4ファージ粒子の表面に担持させることができる。特定の実施形態では、第1および第2の外来タンパク質が、個別に様々な免疫エピトープを提示することができる。さらに、第1および第2の外来タンパク質は相互に、直接的に、あるいは、集合反応混合物に添加できる別のタンパク質または分子成分を介して間接的に相互作用しうる。この実施形態のT4ナノ粒子組成物は、本発明の様々なT4ナノ粒子組成物に、例えば、追加の免疫原性を付与しうる。以下の理論に拘泥するものではないが、第1の外来タンパク質と第2の外来タンパク質との間の相互作用によって、例えば、追加のエピトープが曝露されて、それによって、免疫原性反応が促進されることがある。関連した実施形態では、第1の外来タンパク質が酵素活性を有し、一方、第2の外来タンパク質が第1の外来タンパク質の基質またはリガンドとして働くことがある。この実施形態では、第2のタンパク質が切断された結果として、限定されるものではないが、T4ナノ粒子表面での追加のエピトープの提示を含めた様々な生物作用が起こりうる。また、そのような実施形態で切断されたタンパク質は、例えば免疫応答をさらに変調できるサイトカインまたはケモカインであってもよい。上記の実施形態は第1および第2の外来タンパク質に関するものであるが、本発明は、多数の異なった外来タンパク質に依拠する同様の実施形態も企図する。例えば、第3の外来タンパク質および第4の外来タンパク質が、個別に、かつ/または、T4ファージ粒子の表面で相互作用した際に、追加のエピトープを提示してもよい。当業者に知られているタンパク質工学技術によって、これらの実施形態で提示されている分子成分の構造およびそれら相互の距離を、様々な特定の適用のために操作することが可能であろう。これらは、想定されている複合体が、特異的相互作用に続いて起こる立体配座転移を介してin vivoで形成される天然複合体を模擬したものか、または天然複合体(群)と同一のものであるため、特に重要である。そのような複合体は、感染性因子と宿主細胞との間の相互作用(例えば標的宿主細胞のHlV感染)や、致死的な毒性を生み出す多成分毒素の分子間相互作用(例えば炭疽菌の致死毒素および浮腫毒素の形成)を妨害できる特異的な免疫応答を生成する可能性が高い。
【0054】
本発明の別の実施形態では、第1層の、提示されたタンパク質の上に提示された第2層の分子を、T4ナノ粒子が含みうる。この実施形態では、Hocおよび/またはSoc融合タンパク質が第1層を構成し、第2層の分子成分が集合するための連結部として、Hocおよび/またはSoc融合タンパク質の外来タンパク質が機能することがある。したがって、提示されている第1層のタンパク質は、第2層のタンパク質を提示するための結合部位として使用することができ、第2層のタンパク質は、これら第1層の結合部位と相互作用する。例えば、炭疽菌の致死毒素および浮腫毒素(HocにもSocにも融合していない)を捕捉するのに、T4ナノ粒子に結合した炭疽菌PA63、または、LFもしくはEFのN末端PA63結合ドメインに融合した外来タンパク質を用いることができる。さらに別の実施形態では、特定の細胞または組織型を標的としたT4ナノ粒子を設計することができる。詳細には、ある細胞および/または組織型にリガンドが特異的な、Hocおよび/またはSoc−リガンド融合体を提示することによって、本発明のT4ナノ粒子に、特定の細胞または組織への指向性を付与し、それによって、様々な選択的な細胞反応または組織反応を誘発することができる。そのようなHocおよび/またはSocリガンド融合分子は、当業者に知られている任意の方法によって開発することができる。開発されたならば、そのHocおよび/またはSocリガンド融合分子を、本明細書に開示したin vitro集合システムを用いてhocおよび/またはsocT4ファージ粒子に担持して、そのリガンドを提示するT4ナノ粒子を生成することができる。様々なリガンドには、CD4、ケモカイン受容体、GM−1受容体、トール様/病原体認識受容体、DC−SIGN受容体、サイトカイン受容体、Fc受容体、もしくは補体受容体、またはこれらの断片に結合するものが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明の別の実施形態では、組換えDNA技術およびT4遺伝子学を用いて、外来DNAをT4ナノ粒子ゲノムとしてパッケージングすることができる(Raoら、1992年;Clarkら、FEMS Immunology and Medical Microbiology 40(2004年)、21−26;Marchら、Vaccine 22(2004年)、1666−1671)。したがって、T4ナノ粒子表面でのHocおよび/またはSoc融合タンパク質の提示に加えて、抗原またはHocおよび/またはSoc融合タンパク質をコードする外来DNAコンストラクトがT4ナノ粒子中に存在する。特定の実施形態では、そのような独特のT4ナノ粒子プラットフォーム技法を、プライムブースト送達システムとして用いることができる。通常、プラスミドDNAワクチン接種で得られた免疫応答は、貧弱で一貫性がなく、そのため、免疫応答を促進するために、何回もの注射と、多量のDNAおよびタンパク質とが必要である。対照的に、この実施形態のT4ナノ粒子は、タンパク質成分とDNA成分との両方を同一の抗原提示細胞に同時に送達することができ、それによって、潜在的により活発な免疫応答を誘導する。例えば、当技術分野で知られているファージ遺伝子学および分子生物学技術を用いて、HIV抗原nefを含む融合タンパク質を発現するであろうDNAコンストラクトを、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーターなどの強力な哺乳類プロモーターの制御下でT4ファージのゲノム中に挿入することができよう(すなわち、DNAコンストラクトは、nef−Hocが融合タンパク質を発現するであろう)。別法では、専門的なT4パッケージングシステム(Leffers,G.およびRao,V.B.(1996年)、「バクテリオファージT4で全頭部長以下のDNA分子をパッケージするための、不連続な全頭部パッケージモデル(A discontinuous headful packaging model for packaging less than headful length DNA molecules by bacteriophage T4)」J.Mol.Biol.258,839−850)を用いることによって、ファージT4の全ゲノムを、複数コピーのコンカテマー外来DNAコンストラクトで置換することができよう。これらの遺伝子改変T4ファージを、本発明のin vitro集合システムで、例えば、HIV抗原nefに融合したHocを含む融合タンパク質とインキュベートすることによって、内部に、特定の抗原をコードするDNAを含み、外側のキャプシド表面に、対応する抗原を提示する新規なT4ナノ粒子を生成することができよう。当業者ならば理解するであろうが、内部にクローニングされ、かつ、外側に発現される多重遺伝子を含めた、この実施形態の多数の組み合わせが想定できる。
【0056】
さらに別の実施形態では、免疫応答のさらなる変調を実現するために本発明のT4ナノ粒子を用いることができる。例えば、免疫応答を増幅する様々な炎症媒介物質をT4ナノ粒子プラットフォームに組み込むことができる。そのような炎症媒介物質には、インターロイキン、リンフォカイン、腫瘍壊死因子、およびインターフェロンなどの様々なサイトカイン、ならびに、ケモカインなどの他の炎症媒介物質が含まれるが、これらに限定されない。本発明のin vitro集合システムを利用して、これらの炎症媒介物質の完全長、または機能モチーフおよびドメインをT4ナノ粒子の表面に提示することができ、あるいは、他の実施形態では、炎症媒介物質をコードするDNAコンストラクトをT4バクテリオファージゲノムに組み込むことができる。
【0057】
本発明の別の実施形態は、パッケージングされたDNAを欠失したT4ナノ粒子を含む。例えば、当業者に知られている方法を介してT4遺伝子学を操作すること(例えば遺伝子16および17のパッケージング欠損変異)によって、パッケージングされたDNAを欠失したhocおよび/またはsocT4ファージ変異体を産生することができる(RaoおよびBlack、1985年)。その後、本発明のin vitro担持システムを用いて、Hocおよび/またはSoc融合タンパク質をhocおよび/またはsocT4ファージ変異体に担持して、DNAを欠失したT4ナノ粒子を生成することができる。DNAの存在が、生物学的安全性に関する問題となる場合には、DNAを含有するT4ナノ粒子の代替として、この実施形態のT4ナノ粒子を用いることができる。そして、この実施形態はT4ファージキャプシド表面の分子成分に影響を与えないので、本明細書に開示された多くの実施形態と併せて、このストラテジーを用いることができる。
【0058】
本発明の別の実施形態は、様々なT4ナノ粒子の混合物を含む。この実施形態では、本明細書に記載した実施形態のいずれかに従って、T4ナノ粒子を本発明の他の異なったT4ナノ粒子と混合することができる。例えば、炭疽菌およびHIVの両方に対するワクチン組成物は、1セットのT4ナノ粒子上に別々に提示されたHIV抗原と、別の1セットのT4ナノ粒子上に別々に提示された炭疽菌抗原とを含む場合があり、その場合、それぞれのセットのナノ粒子が、本発明のin vitro集合システムを用いて生成されている。このアプローチを用いて、例えば、様々な異なった感染症に対する単一の多成分系ワクチン製剤を生成することができよう。
【0059】
別の実施形態では、特異的な相互作用を介した病原体/成分の検出に、提示された分子を利用することによる、独特の分子診断システムとして、本発明のT4ナノ粒子システムを開発することができる。
【0060】
別の実施形態では、提示された抗原が、抗毒素作用および免疫応答などの追加の(相乗的な)反応を生成できる。例えば、提示された抗原は、効果的なワクチンとしてだけでなく、同時に抗毒素としても働く。炭疽菌胞子攻撃の場合には、ワクチン投与だけでなく、抗生物質治療も必要である。抗生物質を即座に使用すれば、進行中の炭疽菌(B.anthracis)細菌感染の進行が抑制(除去)されるであろう。しかし、胞子の一部は、何週間(または何ヶ月)も体内に残留し、後続の感染を引き起こすことがある。したがって、後の感染を中和するために、ワクチン接種も必要である。抗毒素、例えば、LFおよび/またはEFのPA63結合N末端ドメインを提示するファージT4で免疫処置は、致死毒素および浮腫毒素の形成を妨害することによって、初期感染の毒性効果を直ちに中和することができる。このドメインの高密度(Soc−LFドメイン融合体の場合には1キャプシドあたり810コピー)での提示は、多価の毒素阻害剤として働き、それによって、PA63に結合する親和性を大幅に促進し、毒素形成を中和する(Nourez,M.、Kane,R.S.、Mogridge,J.、Metallo,S.、Deschatelets,P.、Sellman,B.R.、Whitesides,G.M.およびCollier,R.J.(2001年)、「炭疽菌毒素の多価抑制剤の設計(Designing a polyvalent inhibitor of anthrax toxin)」、Nature Biotech.19,958−961)。同じT4粒子が、単独で、あるいは、同時に投与される別のT4ナノ粒子(例えば、PA−Hoc−T4)と併用されて、中和免疫応答を生成するワクチンとしても働き、遅れた胞子発芽の結果起こる感染を排除する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
(製剤)
本発明のワクチン送達システムは、既知の技法を用いて、医薬品に許容される担体中など、生理的に許容される製剤中に調製されることができる。例えば、免疫原性の組成物を形成させるために、カスタマイズされたバクテリオファージ粒子を、医薬品に許容される賦形剤と合体させることができる。
【0062】
別法では、腫瘍または感染など、標的部位に対する特異性を有する媒体中にバクテリオファージ粒子を投与できる。
【0063】
本発明のワクチン送達媒体は、固体、液体、またはエアゾールの形態で投与できる。固体組成物の例には、丸剤、クリーム、および移植可能な投薬ユニットが含まれる。丸剤は経口投与してもよい。治療用クリームは局所的に投与してもよい。移植可能な投薬ユニットは、局部に、例えば腫瘍部位に投与してもよく、あるいは、治療用組成物を系統的に放出するために、例えば、皮下に移植してもよい。液体組成物の例には、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内に注射するのに適した製剤、ならびに、局所投与および眼内投与用の製剤が含まれる。エアゾール製剤の例には、肺に投与するための吸入剤製剤が含まれる。
【0064】
バクテリオファージ組成物は、標準的な投与経路で投与できる。一般には、局所経路、経口経路、直腸経路、経鼻経路、または非経口(例えば、静脈内、皮下、または筋肉内)経路で組成物を投与できる。加えて、生分解性重合体などの持続放出マトリックスに組成物を組み込んで、送達が望まれている場所、例えば腫瘍の部位の近傍にその重合体を移植することができる。その方法には、単回用量の投与、所定の時間間隔での繰返し投与、および所定の期間の持続的な投与が含まれる。
【0065】
本明細書で使用する場合、持続放出マトリックスとは、酵素または酸/塩基加水分解によって、あるいは溶解によって、分解可能な物質、通常は重合体で作製されたマトリックスである。ひとたび体内に挿入されれば、酵素および体液がマトリックスに作用する。持続放出マトリックスは、リポソーム、ポリラクチド(ポリラクチド酸)、ポリグリコリド(グリコール酸の重合体)、ポリラクチド−コ−グリコリド(乳酸およびグリコール酸の共重合体)、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリペプチド、ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、多糖、核酸、ポリアミノ酸、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシンなどのアミノ酸、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドンおよびシリコーンなどの生体適合性物質から選択されることが望ましい。好ましい生分解性マトリックスは、ポリラクチド、ポリグリコリド、またはポリラクチド−コ−グリコリド(乳酸およびグリコール酸の共重合体)のうちの1つのマトリックスである。
【0066】
ワクチン組成物の用量は、治療される状態と、使用される特定の組成物と、患者の体重および状態、ならびに投与経路などの他の臨床上の因子とに依存するであろう。
【0067】
(治療される疾患および状態)
本明細書に記載した方法および組成物は、限定されるものではないが、細菌性疾患、菌類病、リケッチア症、クラミジア症、ウイルス病、寄生虫感染、性行為感染症、類肉腫症、およびプリオン病を含めた、ヒトおよび動物の疾患および過程の治療に有用である。本明細書に記載した方法および組成物は、免疫応答を強制するいかなる疾患または障害の治療にも有用である。
【0068】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態および態様を例示するものであるが、いかなる意味でも、本発明の範囲を制限するものと解釈するべきではない。また、以下の実施例では、Hoc融合コンストラクトを利用するが、本発明は、容易に、Soc融合を提示するように拡張することができる。詳細には、T4ナノ粒子は、キャプシド表面に約810コピーのSoc分子を収容することができ、それらすべてを、in vitro集合システムを用いて、Socに融合した抗原で置換することができる。加えて、主要キャプシドタンパク質自体(930コピー)および主要尾部タンパク質gp18(144コピー)の改変を含むように、T4ナノ粒子テーマを拡張することができ、それによって、これがワクチン開発のための強力な多用途システムとなっている。
【実施例】
【0069】
(実施例1)
(p24−Hocの構築、過剰発現、および精製)
完全長p24ポリペプチド(225アミノ酸、24kDa)に対応するDNA断片を、pro−gly−glyリンカー配列をコードするDNA配列を介して、hoc遺伝子の5’末端に連結した。上述の通り、p24は、2分子のHIVゲノムと、感染に必須な他のタンパク質成分(例えば、逆転写酵素、インテグラーゼ)および核酸成分(例えばトリプトファンtRNAプライマー)とを内部に封入するHIVシェルの主要キャプシドサブユニットである。これは、KueblerおよびRao、1998年に開示されたSOEストラテジーによって行った。このコンストラクトを、T7発現ベクターpET15b(Novagen Inc.社、Madison,ウィスコンシン州(米国))のBamHI部位にインフレームで挿入して、その結果、ヘキサヒスチジンタグからなる26アミノ酸配列が、p24 Hocタンパク質配列のN末端に結合した(図3(A))。IPTG誘導によって、66kDaのヘキサ−His−p24−Hoc融合タンパク質が、E.coli細胞の総タンパク質量の約10%まで発現され(図3b)、発現されたタンパク質の80%が可溶性画分に分配された。このタンパク質をNiアガロースカラムでのクロマトグラフィーによって、純度90%にまで精製した(図3(B))。1リットルの培養から、約8〜10μgの精製されたp24−Hocが得られた。図3(B)では、試料が4〜20%のSDSポリアクリルアミドゲルで電気泳動され、クーマシーブルーで染色されており、レーン1および2は、p24−HocをIPTGで誘導する前(0hr)、または誘導した後(3hr)の大腸菌(E.coli)試料に対応する。IPTGで誘導した際に、66kDaのp24−Hocバンド(矢印)が現れていることに留意されたい。レーン3および4は、Niアガロースカラムクロマトグラフィーの後の精製されたタンパク質画分を示す。
【0070】
(実施例2)
(T4ナノ粒子のin vitro集合)
T4ファージ粒子の表面に組換え体抗原を集合させるため、すなわち「担持する」ため、約2×1010のショ糖勾配精製されたhocsocT4ナノ粒子を、精製されたHIV−p24−Hocと共に、HIV−p24−Hocの量を増大させながら、TMG緩衝液(50mMリン酸水素ナトリウム緩衝液、pH7.0、75mM NaCl、および1mM MgSO)中、37℃で、約60分間インキュベートした。その後、この結果得られたT4ナノ粒子を、60分間、14,000rpmで沈降させ、結合しなかった上清画分を廃棄した。微粒子のペレットを過剰量の緩衝液で2回洗浄して、いかなる非結合のタンパク質も、非特異的に補足されたタンパク質も除去した。すべての試料、すなわち、出発物質、非結合画分、結合画分、および対照を、4〜20%のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)と、クーマシーブルーによる染色とによって分析した。図4に関して、HIV−p24−Hoc対Hoc結合部位の比率が、図の上端に示されている。レーンは以下の通り、すなわち、St、開始p24−Hoc;Su、結合後の上清中のp24−Hoc;Ph、ファージナノ粒子である。図の左側最初のC−Phレーンは、集合前の対照ファージナノ粒子を表す。残り「Ph」レーンは、組換え体抗原を、示されている比率で集合させた後のファージナノ粒子に対応している。ゲルに添加するこの順序は、他の実施例でも維持されている。StおとびSuレーンのバンドが他より薄いのは、各ウェルの容量制限(20μl)により、試料容積の約1/10しかゲルに添加できなかったためである。図4に示す通り、p24−Hocは、in vitroシステムで、hocsoc粒子上に効率的に集合してT4ナノ粒子を形成し、対照のhocsocT4粒子(パネル左側の最初のc−Phレーン)と比較した場合、p24−Hocと共にインキュベーションした際に、p24−Hocポリペプチドに対応する新規なバンド(矢印)が現れる(矢印に対応、比率1:5、1:10、1:25、および1:50の下のPhレーン)。このバンドの強度は、p24−Hoc:Hoc結合部位の比率の増大に従って増大しており、これは、p24−Hoc:Hoc結合部位の比率を制御することによって、担持の程度を制御できることを示す。
【0071】
(実施例3)
(in vitro集合システムの特異性および安定性)
p24−HocとhocsocT4ナノ粒子との間の結合相互作用は、高い特異性を有する。この特異性を図5に図示する。実施例2の実験設計を用いて、T4ナノ粒子を、p24のみ(レーン2〜4)、またはp24とp24−Hocとの混合物(レーン5〜7)とインキュベートした。対照ファージ(レーン1、C−Ph)と比較した際、p24は、Hocに融合された場合には、粒子のみと結合した(レーン5〜7)。p24の有意な結合がなかったことに留意されたい。p24−Hocの位置は矢印で標識されている。これらの結果は、Hocポリペプチドまたはその断片との融合が、T4粒子への結合に必要であることを示す。対照タンパク質であるBSA(66kDa)も、炭疽菌PA(89kDa)も、いずれも、T4粒子への有意な結合を示さなかった(データは示されていない)。
【0072】
提示されたp24−HocとT4ファージ粒子との相互作用の安定性を、p24−T4ナノ粒子をpH2.0の緩衝液または6Mの尿素で処理し、結合した抗原のいずれかが解離したかどうか判定することによって評価した。詳細には、p24−Hocが結合したT4ナノ粒子を、TMG緩衝液(レーン2)またはpH2の緩衝液(レーン3)もしくは3Mの尿素(レーン4)で洗浄した(図6)。粒子のSDS−PAGEは、結合したp24−Hocが両方の処理に対して安定であることを示した。レーンC−Phは、対照hocsocファージを示す。p24−Hocの位置は矢印で示されている。これらの実験でいかなる有意な解離も起こらなかったので、これらのデータは、提示された抗原がT4ファージ粒子に厳密に結合するのを示す(図6)。
【0073】
(実施例4)
(p24を提示するためのHocのN末端またはC末端の使用)
p24を提示するのに、HocのN末端およびC末端の両方が使用できる。例えば、実施例1に記載のN末端融合タンパク質に加えて、逆のC末端融合タンパク質を構築した。C末端融合タンパク質を生成するために、C末端に連結された、pro−gly−glyリンカー配列をコードするDNA配列を介して、完全長p24ポリペプチドに対応するDNAを、hoc遺伝子の3’端にインフレームで連結した。hoc遺伝子の5’末端は、ヘキサヒスチジンタグタンパク質配列をコードする配列に連結した(図7(A))。このヘキサHis−Hoc−p24を、N末端融合体と同じ方法で発現し、精製した(図7B;レーン1および2は、p24−HocのIPTG誘導の前(0hr)または後(3hr)の大腸菌試料にそれぞれ対応する)。IPTGで誘導した際に、66kDaのHoc−p24バンド(矢印)が現れていることに留意されたい。レーン3および4は、Niアガロースカラムクロマトグラフィーの後の精製されたタンパク質画分を示す。
【0074】
in vitro集合実験は、Hoc−p24が効率的にキャプシド表面に集合した(図7(C))ことを示し、これは、N末端融合も、C末端融合も、キャプシドへのHocの結合を損なわなかったことを示唆する。図7(C)に関して、実験の詳細は、結合実験に精製されたHoc−p24が用いられたことを除けば、実施例2と同じである。Hoc−p24対Hoc結合部位の比率が、図の上端に沿って示されている。ナノ粒子中に新たなp24−Hocバンド(矢印)が現れていることに留意されたい。レーンは以下の通り、すなわち、St、開始p24−Hoc;Su、結合後の上清中のp24−Hoc;c−ph、対照ファージナノ粒子、Ph、上端に示された異なる比率のファージナノ粒子である。図(B)および図(C)の試料は、4〜20%のSDSポリアクリルアミドゲルで電気泳動され、クーマシーブルーで染色されている。
【0075】
(実施例5)
(提示された抗原のコピー数)
レーザーデンシトメトリー(Molecular Dynamics Inc社)によって定量されたp24−HocまたはHoc−p24の最大コピー数は、T4ナノ粒子あたり、約900のp24−Hoc分子である。これはゲル濾過実験(データは示されていない)と一致しており、ゲル濾過実験は、過剰発現されたHocタンパク質が六量体として溶液中に存在することを示した。したがって、各gp23六量体あたり、結合した抗原の六量体が1つある可能性が高い。多くのHIV抗原および炭疽菌防御抗原でも、同じ挙動が観測された(下記の実施例を参照)。T4ナノ粒子上で組換え体抗原の提示が高密度であること、そして、in vitro集合反応での成分比率を変えることによってコピー数が制御できる(図4〜7)ことを考慮すると、様々な適用に使用するための多数のT4ナノ粒子を構築することができる。
【0076】
(実施例6)
(T4ナノ粒子上でのtatおよびnefの提示)
抗原提示用in vitroシステムの広範な適用性を、他のHIV抗原との融合体であるtat(10kDa)−Hocおよびnef(30kDa)−Hocを構築することによって評価した。tatおよびnefは、両方とも、HIVに対するワクチンを開発するための重要な標的であると考えられている。実施例2に例示した通り、in vitro集合システムを用いてT4ナノ粒子の集合を行った。図8に関して、レーンは以下の通り、すなわち、st、開始tat/nef−Hoc;Su、結合後の上清中のtat/nef−Hoc;Ph、ファージナノ粒子であり、「c−」は対照を表す。これらのデータは、両抗原がT4ナノ粒子上で、p24−Hocと同じコピー数で効率的に提示されることを明確に実証する(図(A):tat;図(B):nef)。
【0077】
(実施例7)
(炭疽菌防御抗原の提示)
炭疽菌(B.anthracis)の83kDa防御抗原(PA)は、三成分炭疽毒素の重要な成分である。それは、バイオテロリストの潜在的炭疽菌攻撃に対して効果的な組換え体ワクチンを開発するための主要標的である。本明細書に記載のT4ナノ粒子プラットフォームを、125kDaのPA−Hoc融合タンパク質を提示するために適用した。
【0078】
本発明のin vitro集合システムを用いて、PA−Hoc融合タンパク質を、大腸菌の総タンパク質量の最大約15%まで過剰発現させ、Niアガロースクロマトグラフィーで精製した。図9に関して、約1010のhocsocT4ファージ粒子(レーン1)を、ゲルの上端に沿って示した比率で、PA−Hoc(矢印)とインキュベートした。集合の後、試料を4〜20%のSDSポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、クーマシーブルーで染色した。上清(非結合)(レーン5、7、9、11、13、15、17、19、21、23)およびファージ結合(レーン6、8、10、12、14、16、18、20、22、24)のPA−Hocは、T4ナノ粒子へのPA Hocの効率的な担持を示す。レーン1〜3、標準物質;レーン1、hocsocファージ;レーン2、精製されたPA−Hoc;レーン3、精製されたPA。83kDa PAという大きなポリペプチドが、p24と同程度に高密度で提示されたという事実は、T4ナノ粒子上でタンパク質を提示するのに、大きさに関する基本的限界が存在しないことを示唆している。他のいかなるファージディスプレイシステムも、本明細書に記載したin vitroT4システムほど頑強であると示されていない。
【0079】
(実施例8)
(多重抗原の提示)
本発明のin vitro集合システムを、2つの抗原、すなわちtat−Hocおよびp24−Hoc、またはnef−Hocおよびp24−Hoc、あるいは3つの抗原、すなわちp24−Hoc、tat−Hoc、およびnef−Hocの存在下で実行した。図10に関して、レーンは以下の通り、すなわち、st、開始タンパク質;su、結合の後に上清中に残っているタンパク質;ph、ファージ;c−、対照である。矢印は、結合した抗原の位置を示す。これらのデータは、単一抗原で独立して行われた場合と同じ程度に簡単に、多重抗原をキャプシド表面に担持できることを実証する(図10(A)、(B)、および(C))。添加する抗原の比率を変化させたところ、対応するキャプシド表面での抗原のコピー数が変化した(図10(C)および示されていないデータ)。定量的なデータは、試験したすべてのタンパク質が、匹敵した程度の結合親和性を示したことを示唆し、これは、融合した抗原が、Hocのナノ粒子への結合に有意な影響を及ぼさないことを示す。
【0080】
(実施例9)
(p24−Hoc T4ナノ粒子の免疫原性)
T4ナノ粒子の免疫原性を試験するために、BALB/Cマウスに、0、3、および6週目に、ファージT4上に提示された<1μgのp24−Hocで免疫処置した。バキュロウイルスで発現されたp24をコーティング抗原として用いた酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって、個々の血清試料にp24特異的なIgG抗体が存在するかどうか三つ組で分析した。データは、エンドポイント力価で表され、この力価は、バックグランド値の2倍のOD測定値を与える最も高い希釈と定義される。力価は、各血清希釈の抗原を含有する三つ組ウェルの吸収度から、抗原を含まない三つ組ウェルの平均吸収度を減算した後に計算した。図11は、相乗平均エンドポイント抗体価を示し、記号は個々のマウス血清力価を表す。
【0081】
図11が示すように、p24−Hoc−T4ナノ粒子は、マウスで強い免疫原性を有する。10μgの可溶性p24単独で免疫処置されたマウスは、貧弱な抗体反応を誘導した(6週目に800未満の力価、データは示されていない)。しかし、T4ナノ粒子上に提示された際には、提示された抗原<1μgで、p24−特異的抗体力価が100倍増大し、それによって、p24−T4ナノ粒子の強い免疫原性を実証した。図11に示した通り、最大200,000のエンドポイント力価をHoc−p24−T4ナノ粒子で得た。さらに、抗体誘発は持続的であり、免疫処置の37週後でさえ50,000の力価が得られた。p24−Hoc T4粒子(データは示されていない)およびPA−Hoc T4粒子(下記参照)でも同様の結果を得た。組換え体ナノ粒子は、いかなるアジュバントも添加をせずに直接注射されたことに留意することが重要である。したがって、T4ナノ粒子は、ワクチン送達媒体としてのそれらの役割に加えて、明らかに、アジュバント効果を提供し、それによって、提示された抗原に対する高い抗体価を生成したのである。
【0082】
(実施例10)
(PA−Hoc T4ナノ粒子の免疫原性)
提示された炭疽菌PA−Hoc T4ナノ粒子を用いた、独立した免疫原性実験は、T4ナノ粒子が実際に強い抗体反応を誘発することを確認した。図12に関して、この図は、免疫処置8週後のCBA/Jマウス中のPA特異的なIgG血清抗体を示す。棒グラフは、相乗平均力価を表す(注意:エラーバーはデータの範囲を示す、N=10)。PA−Hoc−T4、PA−ミョウバン、およびいくつかの対照をマウスに筋肉内注射した(各グループあたり10匹のマウス)。各ケースにつき、マウス1匹あたり1.2μgと同等な抗原を注射した。T4ナノ粒子上に提示されたPA−Hocが、最高の抗体価を与えた。T4に提示されたPAの相乗平均エンドポイント抗体価は450,000であったが、PAと、アジュバントとして酸化アルミニウム三水和物とを用いて免疫処置したマウスは、相乗平均エンドポイント力価が156,000であった。したがって、添加されるいかなるアジュバントもなく、T4ナノ粒子は、ミョウバンをアジュバントとして用いた場合より3倍大きな抗体価を生成した。これらのデータは、T4ナノ粒子が強い免疫原性を有し、炭疽菌抗原製剤を試験する貴重なプラットフォームとして使用できるであろうことを示す。
【0083】
(実施例11)
(細胞反応)
T4ナノ粒子に対する細胞反応を検査するために、2回目の追加免疫の4週間後に脾臓およびリンパ節の細胞を収集し、単一細胞調製物を作製した。T細胞増殖応答があるかどうか、細胞を三重水素化チミジン(3H−Tdr)取込みによって分析した。様々な濃度のバキュロウイルス発現p24(黒塗りの円)または様々な濃度の無関係の抗原オボアルブミン(中空の円)と共に細胞を72時間インキュベートした。培養時間の最終16時間には、細胞に3H−Tdrでパルス添加した。その後、細胞をガラス繊維フィルターに採取した。このフィルターを処理し、ベータ線プレート計測器で計測した。データは、刺激指数として表し、これは、培地のみをパルス添加されたリンパ球培養中の3H−Tdrに対する、抗原をパルス添加されたリンパ球培養中の3H−Tdrの比率を表す。刺激指数が3以上であったものを、陽性反応とみなした。
【0084】
図13に示す通り、本発明のT4ナノ粒子は、強い細胞反応を誘発した。抗体反応と同様に、p24のみで免疫処置されたマウスは、いかなる増殖反応も誘導しなかった。対照的に、T4上に提示されたp24−HocまたはHoc−p24のいずれかで免疫処置されたマウスから得た脾細胞は、バキュロウイルスで発現されたp24 1〜10μgの存在下で、活発なT細胞応答を誘導した(図13)。80〜100の刺激指標が、10μg/mlの抗原濃度で得られた。リンパ節細胞でも同様の増殖応答が得られた(データは示されていない)。未処置のマウスは、いかなるp24特異的なT細胞増殖反応も誘導せず、それによって、得られた反応が特異的であったことを実証する。すべての場合で、陰性対照抗原(オボアルブミン)は、いかなる増殖反応も誘導しなかった(図13)。IL−4およびIFNγは両方とも、p24−Hoc−T4またはHoc−p24−T4のいずれかで免疫処置されたマウスの脾臓およびリンパ節細胞でのみ誘導された(データは示されていない)。クロム放出アッセイは、p24−Hoc−T4またはHoc−p24−T4で免疫処置されたマウスから得られた脾臓細胞が、約18〜22%の抗原特異的な溶解を示したsocT4ことを実証した(データは示されていない)。上記実施例を総合すると、これらの結果は、ファージT4で提示されたp24は、体液性および細胞性の活発な免疫反応を誘導でき、免疫原性を表すためにいかなる外部アジュバントの添加も必要としないことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】クリオ−EM再構成したファージT4キャプシドの色分けした表面の描写を図式的に示す図である。(a)5倍の軸に対して垂直な視野。gp23は青色、gp24*は深紅色、Socは白、Hocは黄色、そして尾部は緑色で示した。(b)ポータル頂点を観察者に向けた5倍の軸に沿った視野。再構築体の尾部部分を緑色で示す。この図は、Fokineら、2004年[従来の技術]からの複製である。
【図2】本発明のin vitro集合システムと、その結果得られる、組換え体抗原を提示するT4ファージナノ粒子とを模式的に示す図である。
【図3】(A)本文に記載の通り、HIV−p24−Hoc融合コンストラクトの図解を提供する図である。P24は、感染に必須である2分子のHIVゲノム、ならびに他のタンパク質成分(例えば、逆転写酵素、インテグラーゼ)、および核酸成分(例えばトリプトファンtRNAプライマー)を封入したHIVシェルの主要キャプシドサブユニットである。(B)p24−Hocタンパク質の発現および精製を示す図である。
【図4】p24−T4ナノ粒子を生成する、hocsocT4ファージ粒子でのHIV−p24−Hocのin vitro集合を示す図である。
【図5】hocsocT4ナノ粒子へのp24−Hocの結合の特異性を示す図である。
【図6】hocsocT4ナノ粒子上に提示されたp24−Hocの安定性を例示する図である。
【図7】(A)Hoc−p24融合コンストラクトの模式図である。(B)Hoc−p24タンパク質の発現および精製を示す図である。
【図8】(A)HIV tat−Hoc、および(B)HIV nef−Hoc(矢印)の、hocsocファージT4ナノ粒子表面へのin vitro集合を示す図である。
【図9】T4ファージナノ粒子表面への炭疽菌PA−Hocのin vitro集合を示す図である。
【図10】hocsocT4ナノ粒子への多重抗原のin vitro集合を示す図である。(A)tat−Hocおよびp24−Hoc;(B)nef−Hocおよびp24−Hoc;(C)tat−Hoc、nef−Hoc、およびp24−Hoc。
【図11】免疫処置後の様々な時点における、T4ナノ粒子上に提示されたp24の免疫原性を示す図である。
【図12】T4に提示されたPA−Hocの免疫原性を示す図である。
【図13】p24−T4ナノ粒子が活発な細胞反応を誘発することを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)Hocおよび/またはSoc融合タンパク質、
b)Hocおよび/またはSoc陰性のT4バクテリオファージ粒子
を含み、Hocおよび/またはSoc融合タンパク質がHocおよび/またはSoc陰性のT4バクテリオファージ粒子にin vitroで担持されている免疫原性組成物。
【請求項2】
前記融合タンパク質が、インターロイキン、リピドA、ホスホリパーゼA2、エンドトキシン、ブドウ状菌エンテロトキシンB、および他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF−αまたはb)、トランスフォーミング成長因子β(「TGF−β」)、リンフォトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮成長因子(「VEGF」)、アンギオゲニン、トランスフォーミング成長因子(「TGF−α」)、熱ショックタンパク質、血液型の糖質部分、Rh因子、線維芽細胞成長因子、ならびに他の炎症および免疫調節タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異的抗原;MART、MAGE、BAGE、熱ショックタンパク質(HSP)など;変異型p53;チロシナーゼ;Muc−1などのムチン、PSA、TSH、自己免疫性抗原;AZTなどの免疫療法薬物;ならびにアンギオスタチン、エンドスタチンなどの血管新生薬および抗血管新生薬、ならびに塩基性線維芽細胞成長因子、ならびに血管内皮成長因子(VEGF)、前立腺特異的抗原、ならびに甲状腺刺激ホルモンまたはその断片を含むタンパク質に結合したHocおよび/またはSocを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
細菌性疾患、菌類病、リケッチア症、クラミジア症、ウイルス病、寄生虫感染、性行為感染症、類肉腫症、およびプリオン病を治療するのに効果的である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
製薬担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ワクチンを作製する方法であって、
a)Hocおよび/またはSoc融合タンパク質を構築する段階と、
b)Hocおよび/またはSoc陰性のT4バクテリオファージ粒子を単離する段階と、
c)Hocおよび/またはSoc融合タンパク質をin vitroでT4バクテリオファージ粒子に担持させる段階と
を含む方法。
【請求項6】
T4バクテリオファージ粒子へのHocおよび/またはSoc融合タンパク質の担持が、Hocおよび/またはSoc融合タンパク質を反応緩衝液中でT4バクテリオファージ粒子とインキュベートすることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記反応緩衝液が、トリス緩衝食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ヘペス緩衝液を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記融合タンパク質が、HocもしくはSocタンパク質またはその断片に融合した外来タンパク質を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記外来タンパク質が抗原性である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記外来タンパク質が、インターロイキン、リピドA、ホスホリパーゼA2、エンドトキシン、ブドウ状菌エンテロトキシンBおよび他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF−αまたはb)、トランスフォーミング成長因子β(「TGF−β」)、リンフォトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮成長因子(「VEGF」)、アンギオゲニン、トランスフォーミング成長因子(「TGF−α」)、熱ショックタンパク質、血液型の糖質部分、Rh因子、線維芽細胞成長因子、ならびに他の炎症および免疫調節タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異的抗原;MART、MAGE、BAGE、熱ショックタンパク質(HSP)など;変異型p53;チロシナーゼ;Muc−1などのムチン、PSA、TSH、自己免疫性抗原;AZTなどの免疫療法薬物;ならびにアンギオスタチン、エンドスタチンなどの血管新生薬および抗血管新生薬、ならびに塩基性線維芽細胞成長因子、ならびに血管内皮成長因子(VEGF)、前立腺特異的抗原ならびに甲状腺刺激ホルモン、またはその断片群またはその一断片を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ワクチンが多成分系ワクチンである、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記T4バクテリオファージ粒子がDNAを欠失している、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記T4バクテリオファージ粒子がDNAコンストラクトを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
T4バクテリオファージ粒子の表面で多タンパク質複合体を構築する方法であって、
a)第1の外来タンパク質またはその活性断片を有する第1のHocおよび/またはSoc融合タンパク質を構築する段階と、
b)第2の外来タンパク質またはその活性断片を有する第2のHocおよび/またはSoc融合タンパク質を構築する段階と、
c)Hocおよび/またはSoc陰性のT4バクテリオファージ粒子を単離する段階と、
d)第1のHocおよび/またはSoc融合タンパク質ならびに第2のHocおよび/またはSoc融合タンパク質を、in vitroでHocおよび/またはSoc陰性のT4バクテリオファージ粒子に担持させる段階と
を含む方法。
【請求項15】
前記第1の外来タンパク質ドメインが抗原性である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の外来タンパク質ドメインが抗原性である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記Hocおよび/またはSoc陰性のT4バクテリオファージ粒子への前記第1のHocおよび/またはSoc融合タンパク質ならびに前記第2のHocおよび/またはSoc融合タンパク質の担持が前記第1の外来タンパク質ドメインと前記第2の外来タンパク質ドメインとの間の相互作用を促進する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
第1の外来タンパク質ドメインと前記第2の外来タンパク質ドメインとの間の相互作用が、抗体結合部位の提示を促進する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のタンパク質がミコバクテリア抗原を含み、かつ、前記第2のタンパク質がヒト免疫不全症ウイルス抗原を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記第1または第2のタンパク質が、インターロイキン、リピドA、ホスホリパーゼA2、エンドトキシン、ブドウ状菌エンテロトキシンBおよび他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF−αまたはb)、トランスフォーミング成長因子β(「TGF−β」)、リンフォトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮成長因子(「VEGF」)、アンギオゲニン、トランスフォーミング成長因子(「TGF−α」)、熱ショックタンパク質、血液型の糖質部分、Rh因子、線維芽細胞成長因子、ならびに他の炎症および免疫調節タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異的抗原;MART、MAGE、BAGE、熱ショックタンパク質(HSP)など;変異型p53;チロシナーゼ;Muc−1などのムチン、PSA、TSH、自己免疫性抗原;AZTなどの免疫療法薬物;ならびにアンギオスタチン、エンドスタチンなどの血管新生薬および抗血管新生薬、ならびに塩基性線維芽細胞成長因子、ならびに血管内皮成長因子(VEGF)、前立腺特異的抗原、ならびに甲状腺刺激ホルモン、またはその断片群を含む、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−514762(P2007−514762A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545534(P2006−545534)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/042665
【国際公開番号】WO2005/058006
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(507013589)ザ カソリック ユニヴァーシティ オブ アメリカ (1)
【氏名又は名称原語表記】THE CATHOLIC UNIVERSITY OF AMERICA
【Fターム(参考)】