説明

バスの床構造

【課題】車内での幼児のつまづきを防止した幼児送迎用バスの床構造を提供すること。また、非常時に安全に車外に脱出できる非常用脱出構造を備えた幼児送迎用バスの床構造を提供すること。
【解決手段】バスの床面中央に該バスの前後方向に延在する通路床面に対し、該通路床面の両側に該通路床面に沿ってシートが取り付けられるシート床面が上方に位置し、車室内に段差部が形成された幼児送迎用バスにおいて、前記通路床面の上部に、前記シート床面とほぼ同一の高さとなるように蓋部材を設けてバスの床構造を構成した。また蓋部材と通路床面の間の空間内に非常用脱出装置を収納した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼児送迎用バスに特に有効な床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
幼児送迎用バスは、通常のバスに改造を加えて使用されている。また幼児送迎用バスには、シートは、床から座面までの高さを250mm以下にするという規制が設けられている。このことから、幼児用のシートを通常のバスの床面に据え付けると、座面が低いことからシートに座った幼児が窓から外が見えない状態になる場合がある。そこで従来の幼児送迎用バス100では、図5に示すように通常のバスの通路床50に、シート52を据え付けるためのシート床54を両側に設け、シート床54の上にシート52を取り付けて、シート52の座面を高くしていた。
【特許文献1】特開2003−237350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって幼児送迎用バスは、車内の中央に形成されたバスの前後方向に延びる通路床50とその両側のシート床54との間に段差56が生じていた。このようにシート床54により段差56が室内に生じていると、車内を歩行しているときや、シート52の乗り降りに際して段差56に幼児がつまづくおそれが考えられる。
【0004】
また、幼児送迎用バスでは、バスの後方に非常口を設けている場合がある。非常口の地上からの高さは700mmを超えており、非常時には非常口から飛び降りることとなっていた。したがって、非常口から出ることに躊躇する幼児がいることも考えられる。
【0005】
本発明は上記課題を解決し、車内での幼児のつまづきを防止した幼児送迎用バスの床構造を提供することを目的とする。また、非常時に安全に車外に脱出できる非常用脱出構造を備えた幼児送迎用バスの床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためを次のように構成した。
【0007】
1、 バスの床面中央に該バスの前後方向に延在する通路床面に対し、該通路床面の両側に該通路床面に沿ってシートが取り付けられるシート床面が上方に位置して、車室内に段差部が形成された幼児送迎用バスにおいて、前記通路床面の上部に、前記シート床面とほぼ同一の高さとなるように蓋部材を設けてバスの床構造を構成した。
【0008】
2、 1に記載のバスの床構造において、前記バスは、該バスの後方に非常口が設けられ、前記蓋部材と通路床面との間に形成された中央空間内に非常用脱出補助装置を収納した。
【0009】
3、 2に記載のバスの床構造において、前記中央空間の後端に、前記非常口に組み付けた前記非常用脱出補助装置が該バスから脱落しないように係合させる係合手段を設けた。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるバスの床構造は、次の効果を有している。
車内の床面に段差がないため、その段差に幼児がつまづくことを防止できる。蓋部材と従来の床面との間に形成された中央空間内から、非常用脱出補助装置を引き出し、バスの後方に設けられた非常口に非常用脱出補助装置をすばやく、かつ容易に設置できる。非常用脱出補助装置をバスの後部に係合させ、非常口の外方に傾斜路を安全に設定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明にかかる幼児送迎用バスの一実施形態について、図を参照して説明する。
図1に、バス10の床構造を示す。バス10は、幼児送迎用バスであり、図1はバス10を斜め後方から示している。バス10には、従来例で説明したように、車室内にシート床12が、通常のバスの床面となる通路床14の両側に設けられている。通常のバスの床面とは、バスの骨格構造を構成する骨格部材上に形成された床面であり、シート床12は、かかる床面に重ねて取り付けられた床である。
【0012】
シート床12には、図5に示したように幼児用のシート52が取り付けられる。シート52は、幼児用に、座面までの高さが規制値に従って一般のシートより低く設定されている。シート床12は、通常のバスの床面と同様、シートを取り付けるための十分な強度、や必要な取付金具等を具えている。
【0013】
左右のシート床12の間には、蓋部材16が、シート床12の上面と同一の高さとなるように取り付けてある。蓋部材16は、シート床12と同様、骨格部材に形成された床面に別途取り付けられた床材であり、蓋部材16を通路床14の上方に取り付けることにより、バス10の車室内は、ほとんど段差がない平坦な床面に形成される。
【0014】
更に、通路床14と蓋部材16との間に形成された中央空間18内には、図2に示すように非常用脱出補助装置であるスロープ20が収納されている。スロープ20は、平板状の部材で、両側縁が若干上方へ屈曲されて、剛性が保持されている。スロープ20は、バス10の後方に設けられている非常口の非常扉22を開くと、中央空間18内からバス10の後方側に引き出し可能に収納されている。
【0015】
スロープ20の前端(バス10の前方側)には、図3に示すように係合具24が設けられている。係合具24は、鉤状の部材で、バス10の後端に設けられた係合部材26に係合する。係合部材26は、円筒状の部材で、通常は非常扉22の直前にあって目立たず、非常扉22を開けると容易にスロープ20の係合具24を掛けることができるようになっている。
【0016】
スロープ20は、係合具24を係合部材26に係合させて、スロープ20の前端をバス10の後端に係合させ、スロープ20後端を地上に降ろした際スロープとして適度な角度となる長さを有している。更にスロープ20には、走行中に中央空間18内でがたつきを生じさせないように、中央空間18の内部に当接するゴム部材等を設けることが好ましい。またスロープ20の前部に車輪(図示せず。)を設け、スロープ20をバス10の後方側に引き出す際の移動を容易にしてもよい。
【0017】
次に、上記床構造の作用、効果について説明する。
【0018】
幼児用のシートは、シート床12に取り付けられ、シート52に座った幼児の顔が窓に届く。蓋部材16がシート床12の間に設けられているので、車室内の床面が平坦に形成され、幼児が段差につまづくなどの問題が解消される。更に、蓋部材16からシート52の座面までの高さが、従来より低くなるので、シート52の乗り降りが容易となる。
【0019】
バス10の後方に設けられた非常扉22を開けてスロープ20を中央空間18から引き出すことにより、図4に示すように非常口23から地上まで連続したスロープを形成することができる。これにより、非常口23を通して幼児を車外に速やかに、かつ安全に連れ出すことができる。またスロープ20は、蓋部材16の下に収納されているので、車内で通行の障害になることはない。
【0020】
スロープ20は、幼児がその上を滑って降りても、あるいは駆け降りるようにしてもよい。またスロープ20をはしご状、あるいは中央空間18の高さが許せば階段状に形成しても良い。スロープ20をバス10の後方に引き出した後、車幅方向にスロープ20の取り付け位置を変更可能としてもよい。すると、中央空間18の位置と非常口23とが車幅方向にずれている場合でも、スロープ20の取り付け位置を変更することによりスロープ20と非常口23と連続させることができる。
【0021】
尚、蓋部材16とシート床12とを分離せず、一体の床として、通常のバスの床面の上方に取り付けてもよい。
【0022】
また、スロープ20は、幼児用バスの非常用脱出補助装置でなく、商用車や、移動図書館バスなど、車両後方から乗り降りするような車両において、後方に引き出すステップに用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる床構造を有するバスの一実施形態を示す部分斜視図。
【図2】バスを示す側面図。
【図3】スロープを示す斜視図。
【図4】バスを示す斜視図。
【図5】従来の床構造の一例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0024】
10…バス
12…シート床
14…通路床
16…蓋部材
18…中央空間
20…スロープ
22…非常扉
23…非常口
24…係合具
26…係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスの床面中央に該バスの前後方向に延在する通路床面に対し、該通路床面の両側に該通路床面に沿ってシートが取り付けられるシート床面が上方に位置して、車室内に段差部が形成された幼児送迎用バスにおいて、
前記通路床面の上部に、前記シート床面とほぼ同一の高さとなるように蓋部材を設けたことを特徴とするバスの床構造。
【請求項2】
前記バスは、該バスの後方に非常口が設けられ、前記蓋部材と前記通路床面との間に形成された中央空間内に非常用脱出補助装置を収納したことを特徴とする請求項1に記載のバスの床構造。
【請求項3】
前記中央空間の後端に、前記非常口に組み付けた前記非常用脱出補助装置が該バスから脱落しないように係合させる係合手段を設けたことを特徴とする請求項2に記載のバスの床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−90679(P2009−90679A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260076(P2007−260076)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】