説明

バスバーを備えた風力発電システム

【課題】数個の塔の断片から造られた塔と、塔の頂部の領域に配置された発電機と、塔の頂部から、生成された電力を運搬する電流運搬手段とを備えた交流電流を生成する風力発電システムに関するものであり、ケーブルの形で実現される電流運搬手段は費用がかかる処理である。
【解決手段】風力発電システムのより速く、より単純で、したがってより経済的な建設を可能にするために、電流運搬手段9は、分割されて、塔2の断片にあらかじめ取り付けられ、電力モジュール7は、少なくとも部分的に塔の頂部の領域におよび/または塔の底部から離れて配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塔の頂部の領域に配置された電力を生成する発電機と、電力モジュールと、塔の頂部から生成された電流を運ぶ電流運搬手段と、いくつかの塔の断片から造られる塔とを備えた風力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
既知の風力発電システムでは、変圧器、サービスキャビネット、随意に、整流器、中電圧網、低電圧網などの電気ユニットを含む風力発電システムの電力モジュールは、発電機の高さより下およびしばしば風力発電システムの塔の底部の領域に配置される。これらのコンポーネントの全てまたはいくつかのために、通常は小さくて離れた建物が風力発電システムの外に設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
塔の頂部の領域のゴンドラ内に配置された発電機で生成された電気エネルギーを電力モジュールへ送電するために、大抵の部分が塔内を走り、ケーブルの形で実現される電流運搬手段がある。これらのケーブルは、組み立てられた後に塔の中に取り付けられる。これは費用のかかる処理である。なぜなら、ケーブルは、塔の高さ全てに渡って、別の手順で設置されねばならないからである。さらに、この手順は、既に組み立てられた塔に依存する。
【0004】
しかし、絶対に電力モジュールを(完全に)塔の底部の領域に配置する必要はない。原理上、他の位置もあり得る。したがって、電流運搬手段は、生成された電流を運搬する目的を本質的に満たさねばならず、可能ならば、塔の底部から離れた塔の頂部の領域で予備的処理をされねばならない。

【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、風力発電システムを開示する問題に基づいていて、風力発電システムはより容易に、したがってより経済的に、より速く組み立てることができ、絶対的に電力モジュールが塔の底部の領域にある必要はない。
【0006】
この問題は、電流運搬手段が分割されて塔の断片にあらかじめ取り付けられ、電力モジュールが少なくとも部分的に塔の頂部の領域におよび/または塔の底部から離れて配置される本発明により解決される。
【0007】
したがって、電流運搬手段の断片はプレハブであって、好ましくは個々の塔の断片から塔が組み立てられる前に、塔の断片に取り付けられている。したがって、塔を組み立てた後で、複雑な方法で塔の中にケーブルを引く必要はもうない。本発明にかかる手段により、風力発電システムの全組立時間は縮められ、組立費用は減少し、技術的欠点を考慮に入れる必要はなくなる。
【0008】
塔の底部の領域に電力モジュールを配置するのを避けるために、電力モジュールは、少なくとも部分的に塔の頂部の領域におよび/または塔の底部から離れて配置するようにも提案されている。好ましくは、部分的にまたは完全に、ゴンドラの中または外に電力モジュールが取り付けられる。対照的に、沖合の風力発電システムでは、好ましくは、電力モジュールは、部分的にまたは完全に、陸上、たとえば、地面に最も近い領域または島の近くなどに配置され、水中のケーブルを通って風力発電システムと電力モジュールとを接続する。
【0009】
もう1つの好ましい構成では、電力モジュールが少なくとも2つの電力モジュールユニットを持ち、そのうち1つは塔の頂部の領域に配置され、他は塔の頂部の下、すなわち、塔の底部の領域または塔の底部から離れて配置される。次に、電流運搬手段は、2つの電力モジュールユニットを本質的に接続するために設けられる。
【0010】
本発明にかかる風力発電システムの追加の有利な構成は、従属請求項で与えられている。好ましくは電流運搬手段の断片は、組み立てられた状態で、1つの領域、好ましくは最も上の領域のみで、関連する塔の断片に堅く接続されている。塔の断片への取り付けは、好ましくは塔が組み立てられる前に行われるので、取り付けられた電流運搬手段を含む塔の断片がプレハブである。電流運搬手段の断片が、1点のみで塔に堅く取り付けられているので、堅く静止しているけれども、塔の断片の内壁上をある限度の範囲内で動き、したがって、次の塔の断片の電流運搬手段の次の断片にできるだけしっかりかつ容易に接続できるように1列に配置されてもよい。
【0011】
塔の断片の中に電流運搬手段の断片の追加の取り付けるために、追加の支持部材が塔の内壁に設けられてもよく、それにより、これらの断片をできるだけしっかりと固定するために、塔が組み立てられる前または後に、電流運搬手段の断片が堅く接続される。
【0012】
電流運搬手段がケーブルにより形成されると、塔の内壁から突き出したフランジまたは部品を回避するために、ケーブル部分の長さが、これらの領域を問題なく回避できるように塔の断片に寸法を合わせられる。
【0013】
バスバーを電流運搬手段として使用するために、好ましくは可撓性のある接続バーが、塔の内壁から突き出した部品を回避するため、および/またはバスバーの断片を接続するために、設けられる。これらが互いに直接には接触しないか、バスバーの断片の間の間隔、または他の障害物、例えばタワーのバーの断片のフランジを回避せねばならないと、塔が組み立てられた後、これらが使用されて、バスバーの断片を接続する。
【0014】
一方では、サービス担当者が塔の内部を上るときにバスバーへの接触から保護し、電気的絶縁を保証するために、他方では、電流運搬手段を損傷から保護するために、もう1つの構成では、保護スリーブ、特に保護シートが設けられ、それは、例えば塔の内壁に堅く接続され、電流運搬手段に完全に触れないようにする。この保護スリーブは、個々の断片に分割されてもよく、上記個々の断片は、電流運搬手段の断片のように塔の断片にあらかじめ取り付けられている。この構成は、さらに時間を短縮し、風力発電システムの建設を単純化する。
【0015】
本発明は、風力発電システム用の塔の、塔の断片にも関し、風力発電システムは数個の塔の断片から造られ、塔の頂部の領域に電力を生成する発電機を持つ。上記塔の断片は、塔の頂部から生成された電流を運搬する電流運搬手段の断片が断片の中にあらかじめ取り付けられていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】風力発電システムの図
【図2】2つの塔の断片を持つ風力発電システムの区分の図
【図3】本発明にしたがって設けられるバスバーの斜視図
【図4】本発明にかかる第1の風力発電システムの図
【図5】本発明にかかる第2の風力発電システムの図
【図6】本発明にかかる第3の風力発電システムの図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図を参照して発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1に概略的に示されていて、独国特許第10152557号に説明されている風力発電システム1は、塔の底部の領域、例えば小さな別個のハウジングの中に配置された電力モジュール7だけでなく、基礎3を持つ塔2、塔の頂部の領域で回転可能なように支持されたゴンドラ4も持つ。ゴンドラ4の中に、発電機6だけでなく、水平軸の周りで数枚の回転翼の羽根5とともに回転できるように支持された回転翼もある。回転翼の羽根5の上に作用する風の力により固定して回転させられ、電力を生成するために発電機6を駆動する。
【0019】
電力網に供給されるか消費用に送られる前に、さらに電力を処理するための変圧器または任意で整流器などの数々の電気ユニットを持つ電力モジュール7に、発電機6により生成されたエネルギーを送るために、本発明にしたがって、塔2の内部8に取り付け部材10により壁に取り付けられた好ましくは2つの複数のバスバー9がある。これらは電気的に導体であり、好ましくは基礎3および底土を通って伸びる接続線12によるだけでなく、発電機へのケーブル11により電力モジュール7に電気的に接続される。
【0020】
バスバー9は、例えば図2により詳細に示されるように、固定され、好ましくは個々のバスバーの断片を含む。塔2が好ましく造られた2つの塔の断片21、22が示されている。そのような塔の断片21、22は、例えば、鉄鋼またはコンクリートからできている。
【0021】
これらの塔の断片21、22はプレハブであって、風力発電システムの設置場所で塔に結合される。さらに組立時間を短縮するため、仕事を簡単にするため、それらにより風力発電システム全体の費用を減らすために、塔2が組み立てられるより前に、好ましくはバスバーの断片91、92が、個々の塔の断片21、22の対応する位置に堅く取り付けられている。好ましくは、バスバーの断片91、92は、取り付け部材10により関連する塔の断片21、22の上部の領域のみで取り付けられるけれども、バスバーの断片91、92の残りの部分は、それらに続くバスバーの断片への接続を単純にするためにある限度内で移動可能である。この構造により、例えば異なる膨張率による塔2とバスバーの断片91、92との間の相対的移動も平衡化できる。しかし、全長に渡りバスバーの断片91、92を案内する追加の支持部材14が使用されるようにもできる。この目的のため、バスバーの断片91、92の開口部の断面は、バスバーの断片91、92自体の断面よりも支持部材14の分だけ広く寸法がとられる。この方法で、支持部材14の中へバスバーの断片91、92を相対的に移動可能で、同時に、バスバー91、92は案内され、その移動を制限される。
【0022】
例えば、バスバーの断片91、92を電気的に接続するため、および内部から突き出している任意の部品を回避するために、塔の断片21、22の下端および上端のフランジ、および絶縁性で可撓性のある接続バー13が使用され、上記接続バーの形状は、2つのバスバーの断片91、92の断片に取り付けるとき、手で変えることができる。これらの接続バー13は、例えば温度の変動による材料の膨張と収縮を補うことができる。
【0023】
図3では、2つの平行なバスバーの断片911、912の斜視図が示されている。これらは、ねじ15により支持部材14に堅くねじ止めされている。ここで、支持部材14からバスバーの断片911、912を絶縁するために、絶縁手段が設けられてもよい。代わりに、支持部材14自体も、当然絶縁材料から製造されてもよい。支持部材14自体は塔の断片の内壁に堅くねじ止めされている。
【0024】
風力発電システムが動作中にバスバー911、912を接触から保護するために、保護スリーブ16も設けられ、上記保護スリーブ16は、塔2が組み立てられる前に、ちょうどバスバーの断片911、912のように、個々の塔の断片に既に設置されていてもよい。例えば堅いゴムからなる案内バー17により、一方ではこの保護スリーブ16は固定され、他方では塔の断片から絶縁される。しかし保護スリーブ16を取り付けるために、個々に示されていない他の手段が提供されてもよい。
【0025】
さらに、コンセント、ライトなどの他の装置が、保護スリーブ16の中および/または上に取り付けられてもよく、よって、これらはまた単純な方法であらかじめ取り付けられていてもよい。加えて、保護スリーブ16の中にこれらの装置を作ると、塔の内壁に裸で取り付けられるのを防止し、それによって、塔が組み立てられているときおよび塔が組み立てられた後における、例えば落下物による損傷のリスクの減少につながる。
【0026】
図4は本発明にかかる風力発電システムの第1の構成を示す。ここで、電力モジュール7は、好ましくはゴンドラ4の中に配置され、ケーブル18により発電機6に直接接続されている。生成された電力が電力モジュール7で処理された後に、もう1本のケーブル19を通ってバスバー9に流され、塔を通って塔の底部に案内され、そこから、例えば風力発電システムのそばにあるか風力発電システムから遠く離されたサブステーション40に、接続線12を通って外部に放出される。破線で示される代わりの電力モジュール7’は、ゴンドラ4の外側に取り付けられてもよい。発電機6からバスバー9だけでなく発電機6から電力モジュール7’への接続ケーブルは、明瞭になるために省略されている。
【0027】
図5は本発明にかかる風力発電システムのもう1つの構成を示す。ここでは、電力モジュールが少なくとも2つの電力モジュールユニット71、72を含む。順に、第1の電力モジュールユニット71はゴンドラ4内に配置され、異なる電圧範囲への最初の変換などの生成された電力の最初の処理を実行する。次に生成された電力の更なる処理は、第2の電力モジュールユニット72で実行され、上記第2の電力モジュールユニット72は、例えば塔の底部の領域に示されているように、塔の頂部の下に配置される。しかし、第2の電力モジュールユニット72は、塔2の垂直下の基礎3の上に配置されてもよく、塔の底部から遠く離れて配置されてもよい。同様に、当然、第1の電力モジュールユニット71は、図4に示されているように、ゴンドラ4の外側に配置されてもよい。
【0028】
図6は、本発明にかかる風力発電システムの構成を示し、いわゆる沖合の風力発電システムを形成する。ここで、この風力発電システム1は、海底25にしっかりと固定されたもう1つの基礎3’の上に立っている。確かにそのような沖合の風力発電システムでは、電力モジュールは、塔の頂部の領域または塔の底部の領域内の塔の中に配置されてもよい。しかし、好ましくは、電力モジュール7は陸地30の上に配置され、バスバー9により塔の頂部から放出される電力は、水中のケーブル12’を通って電力モジュール7に送られる。これは、電力モジュールが海水の悪影響からの余分な保護を必要とせず、電力モジュールのメンテナンスが著しく容易である利点がある。
【符号の説明】
【0029】
1 風力発電システム
2 塔
3、3’ 基礎
4 ゴンドラ
5 回転翼の羽根
6 発電機
7、7’ 電力モジュール
8 塔の内部
9 バスバー
10 取り付け部材
11 ケーブル
12 接続線
12’ 水中のケーブル
13 接続バー
14 支持部材
15 ねじ
16 保護スリーブ
17 案内バー
18、19 ケーブル
21、22 塔の断片
25 海底
40 サブステーション
71 第1の電力モジュールユニット
72 第2の電力モジュールユニット
91、92、911、912 バスバーの断片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数個の塔断片(21、22)から造られた塔(2)と、電流を生成するために塔の頂部の領域に配置された発電機(6)と、電力モジュール(7、7’、71、72)と、生成された電流を塔の頂部から運搬する電流運搬手段(9)とを備えた風力発電システムであって、
上記電流運搬手段が、塔断片(21、22)から塔が組み立てられる前に、塔断片(21、22)に、夫々、電流運搬断片(91、92)としてあらかじめ取り付けられると共に、塔断片(21、22)から塔が組み立てられる時に、隣接する電流運搬断片(91、92)が互いに電気的に接続され、
上記電力モジュール(7)が、ゴンドラ(4)の中に配置されるか、又は、上記電力モジュール(7’)が、ゴンドラ(4)の外に配置され、
上記電力モジュール(7、7’)が、上記発電機(6)に直接接続される一方、生成された電流が、電力モジュール(7、7’)で処理されると共に、塔を貫通する上記電流運搬手段(9)によって塔の底部まで送出される風力発電システム。
【請求項2】
数個の塔断片(21、22)から造られた塔(2)と、電流を生成するために塔の頂部の領域に配置された発電機(6)と、電力モジュール(7、7’、71、72)と、生成された電流を塔の頂部から運搬する電流運搬手段(9)とを備えた風力発電システムであって、
上記電流運搬手段が、塔断片(21、22)から塔が組み立てられる前に、塔断片(21、22)に、夫々、電流運搬断片(91、92)としてあらかじめ取り付けられると共に、塔断片(21、22)から塔が組み立てられる時に、隣接する電流運搬断片(91、92)が互いに電気的に接続され、
上記電力モジュールが、少なくとも第1電力モジュールユニット(71)と第2電力モジュールユニット(72)から成り、上記第1電力モジュールユニット(71)が、生成された電流の第1の処理のために、ゴンドラ(4)の中又は外に配置される一方、上記第2電力モジュールユニット(72)が、生成された電流の別の処理のために、塔(2)の底部の領域内又は塔(2)の中に配置され、更に、上記電流運搬手段(9)が、電力を上記第1電力モジュールユニット(71)から上記第2電力モジュールユニット(72)に伝送するように設けられた風力発電システム。
【請求項3】
上記電流運搬手段が、保持部(10、14)により、塔断片(21、22)に取り付けられる請求項1又は2に記載の風力発電システム。
【請求項4】
上記電流運搬手段が、保護スリーブ(16)により、接触から保護される請求項1乃至3のいずれかに記載の風力発電システム。
【請求項5】
上記電流運搬断片(91、92)が、組み立てられた状態で、塔断片(21、22)の上部領域に位置する取り付け部材(10)により、夫々、塔断片(21、22)に止着される請求項1乃至4のいずれかに記載の風力発電システム。
【請求項6】
上記電流運搬手段がケーブル(18)として形成される請求項1乃至5のいずれかに記載の風力発電システム。
【請求項7】
上記電流運搬手段がバスバー(9)として形成され、更に、可撓性のある接続バー(13)が、塔の内壁から外へ突き出した部品を回避するため及び/又はバスバー(9)の断片(91、92)を接続するために、設けられる請求項1乃至5のいずれかに記載の風力発電システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−299689(P2009−299689A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186325(P2009−186325)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【分割の表示】特願2004−568115(P2004−568115)の分割
【原出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【出願人】(500017944)アロイス・ヴォベン (107)
【Fターム(参考)】