説明

バタフライ弁用シートリング及びバタフライ弁

【課題】開閉操作を阻害することなく、十分なシール機能を得ることのできるバタフライ弁用シートリングの提供。
【解決手段】シートリング本体18を軟質のゴム状弾性体で形成する。補助リング19をシートリング本体18よりも硬質の素材で形成する。二つの補助リング19を互いに間隔をあけて設ける。補助リング19をシートリング本体18と一体に設けて補強する。シートリング17をバタフライ弁の弁板5の周縁部に装着する。閉弁する際、前側の補助リング19が摩擦力を受け、二つの補助リング19の間隔が狭くなる。ゴムが押し出されて閉弁状態における接触圧を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライ弁の弁板の周縁部に装着されるバタフライ弁用シートリング、及びこれを備えたバタフライ弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスや液体が流れる管路は、バタフライ弁などの弁を介装することによって、適宜開閉できるようになっている。特に、有毒あるいは爆発性のガスや液体が流れる管路においては、その漏洩をより確実に防止する必要があるため、水封バタフライ弁を採用することがある(例えば特許文献1)。
【0003】
図14に特許文献1の水封バタフライ弁を示す。この水封バタフライ弁は、本体101に、操作軸102によって回転する二枚の弁板103を取り付けた構造とされ、二枚の弁板103の間に水をはることにより、水封による完全密封をするようになっている。
【0004】
さらに、図15に示すように、流体の導出入によって膨縮可能なインフラートシートリング104が設けられ、このインフラートシートリング104を膨張させて弁板103に押し付けることにより、弁板103の開閉を阻害することなく、本体101と弁板103との間をシールするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−336643号公報(段落番号0005〜0008、図2、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のように、流体を導入して膨張させたインフラートシートリングは、変形しやすい分、弁板との間の接触圧が不十分になりやすく、弁板との間にダストなどが滞留することにより、シール機能が損なわれるおそれがある。
【0007】
本発明は、弁体の開閉操作を阻害することなく、十分なシール機能を得ることのできるバタフライ弁用シートリング及びバタフライ弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るバタフライ弁用シートリングは、バタフライ弁の弁板の周縁部に装着して、閉弁状態において弁箱側シートに接触させるものであり、ゴム状弾性体からなるシートリング本体と、このシートリング本体と一体に設けた補助リングと、を備え、さらに、その補助リングをシートリング本体よりも硬度の高い素材から形成したものである。
【0009】
上記構成によれば、硬度の高い素材で形成した補助リングによってシートリング本体を補強することができるので、シートリングの寿命を延ばすと共に、シートリングを全体として十分な剛性に設定しつつ、シートリング本体を軟らかい素材で構成することができる。これにより、弁箱側シートとの接触圧を過度に高めることなく、シートリング本体を弁箱側シートに十分に密着させてシールすることができ、しかも、弁箱側シートに付着したダストなどを補助リングによって削ぎ落とすことができるので、接触圧を抑えて開閉操作を阻害するのを防止しつつ、シール機能を高めることができる。
【0010】
さらに、補助リングをシートリング本体の中央穴を貫通する中心軸と平行な方向に間隔をあけて複数設けた構成を採用することもできる。
【0011】
この構成によれば、閉弁する際、複数の補助リングのうち、弁板周縁部の進行方向で前側の補助リングが弁箱側シートに先に接触し、後側の補助リングに向かう方向に摩擦力を受ける。これにより、複数の補助リングの間隔が狭くなって、シートリング本体のうち、両補助リング間に位置する部位が弁箱側シートに向けて押し出されるので、閉弁状態における弁箱側シートとの接触圧を高めて、シール機能をより高めることができる。
【0012】
また、弁板の周縁部に上記のバタフライ弁用シートリングを装着することにより、上記のバタフライ弁用シートリングの構成を採用することによる効果を奏するバタフライ弁を得ることができる。
【0013】
すなわち、本発明は、本発明は、管路に介装される弁箱と、該弁箱の中央穴に収容された弁体とを備え、前記弁体は、弁板と、該弁板を管路の流路方向と直交する方向を回転軸として回転可能に支持する弁棒とからなり、前記弁棒を回転操作することによって前記管路を開閉自在とされたバタフライ弁であって、前記弁箱の内周面に、弁板の周縁部を受けるようリング状に突出する弁箱側シートが設けられ、前記弁板の周縁部に、上記のバタフライ弁用シートリングが装着されたことを特徴とするバタフライ弁を提供する。
【0014】
さらに、管路を有毒あるいは爆発性のガスや液体が流れるような場合には、上記のバタフライ弁として、液封式バタフライ弁を採用することにより、液体の漏洩をより確実に防止するのが好適である。
【0015】
すなわち、本発明は、上記のバタフライ弁において、前記弁体は、二枚の前記弁板が板厚方向に間隔をあけて一体に設けられ、前記弁箱側シートは、二枚の弁板の周縁部をそれぞれ受けるよう二条に設けられ、前記バタフライ弁用シートリングは、二枚の前記弁板の周縁部にそれぞれ装着され、前記弁箱の内周面及び二枚の弁板で囲まれた空間に注排液する注排液部が設けられて液封式とされたことを特徴とするバタフライ弁を提供する。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から明らかな通り、本発明によると、補助リングによってシートリング本体を補強することにより、シートリングの全体としての剛性を高めつつ、シートリング本体を軟らかい素材で構成するようにしている。これにより、弁箱側シートとの接触圧を抑えつつ、シートリング本体を弁箱側シートに密着させると共に、弁箱側シートに付着したダストなどを補助リングによって削ぎ落とすことができ、弁板側のシートリングと弁箱側シートとの接触によって弁体の開閉操作が阻害されるのを防止しつつ、十分なシール機能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る液封バタフライ弁を示す図で、右半分は正面図、左半分は断面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】図2の要部断面図
【図4】弁箱の斜視図
【図5】弁体、シートリング及びシート押付部の斜視図
【図6】シートリング及びその付近の拡大断面図(第1実施形態)
【図7】シートリングを成形する金型の断面図(第1実施形態)
【図8】シートリングの動作を説明する図(第1実施形態)
【図9】閉弁状態のシートリングに作用する力を示す図(第1実施形態)
【図10】シートリング及びその付近の拡大断面図(第2実施形態)
【図11】シートリングを成形する金型の断面図(第2実施形態)
【図12】シートリングの動作を説明する図(第2実施形態)
【図13】閉弁状態のシートリングに作用する力を示す図(第2実施形態)
【図14】従来の液封バタフライ弁を示す図
【図15】従来の液封バタフライ弁のシートリングを示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るバタフライ弁用シートリング及びバタフライ弁の実施形態について図面を用いて説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1〜図3に示すように、液封バタフライ弁1は、例えば有毒あるいは爆発性のガスや液体を流すための管路に介装されるものであり、管路に介装される弁箱2と、弁箱2の中央穴3に収容された弁体4とを備え、その弁体4は、板厚方向に間隔をあけて一体に設けられた二枚の弁板5と、二枚の弁板5を管路の流路方向と直交する方向を回転軸として回転可能に支持する弁棒6、7とからなり、一方の弁棒6を回転操作することによって管路を開閉するようになっている。
【0020】
図1、図2及び図4に示すように、弁箱2は、管路と同じ内径の例えば金属製の筒状とされ、その内周面に、閉弁時において二枚の弁板5の周縁部をそれぞれ受けるようリング状に突出する二条の弁箱側シート8が形成されている。弁箱2の径方向両側には、弁棒支持部9、10が形成されると共に、弁棒支持部9、10を通る方向と直交する方向で径方向両側には、注排液部11が形成されている。
【0021】
図1〜図3に示すように、弁箱2の一方の弁棒支持部9は、弁棒6を貫通させつつ回転自在に支持し、弁箱2の外部から弁体6を回転操作できるようにしている。また、他方の弁棒支持部10は、弁棒7を貫通させることなく回転自在に支持している。
【0022】
図1〜図3及び図5に示すように、弁板5は、円板状とされて、二枚の弁板5が互いに平行な複数の隔壁12を介して一体に形成され、その径方向両側に弁棒6、7の端部を挿入するボス部13、14が形成されている。ボス部13、14は、弁棒6、7の端部を貫通するセットピン15の端面にボルト止めされ、弁板5と弁棒6、7とが一体化されている。
【0023】
図1〜図3、図5及び図6に示すように、弁板5の周縁部には、その外面側に周溝16が形成され、この周溝16に、弁板5の周縁部と弁箱側シート8との間をシールするシートリング17が装着されている。
【0024】
図6に示すように、シートリング17は、例えば硬度がA60〜A80程度のニトリルゴムなどのゴム状弾性体からなるシートリング本体18と、シートリング本体18を補強する補助リング19とからなり、全体として断面略長方形でその外周縁が断面略円形のリング状とされる。このシートリング17は、外周縁を弁板5の周縁部から径方向外向きに突出させつつ、弁板5の周縁部とシート押付部20との間に挟圧保持され、その外周縁が変形して弁箱側シート8に密着するようになっている。
【0025】
補助リング19は、金属金網や炭素繊維ネット、硬度がA80〜A90程度の硬質ゴムなど、シートリング本体18よりも硬度が高く、かつ変形自在な素材からなり、リボン状かつリング状に形成される。この補助リング19は、シートリング本体18の外周縁の断面略円形部分に、当該補助リング19の外周縁を露出させつつ埋設され、シートリング本体18の中央穴を貫通する中心軸と平行な方向に間隔をあけて、二つの補助リング19がシートリング本体18と一体に設けられている。なお、補助リング19の素材は、シートリング本体18よりも硬度が高いものであれば、その硬度を適宜選択することができ、弁箱側シート8にゲル状物質が固着するような場合には、比較的に硬質の素材のものを採用するのがよい。
【0026】
シート押付部20は、その外径が弁板5と同程度で、シートリング17と共に周溝16に嵌る大きさのリング状とされ、シートリング17を介在させつつ、押付ボルト21によって弁板5の周縁部にボルト止めされている。このシート押付部20は、弁板5の周縁部との間でシートリング17を挟圧することにより、シートリング17の一部を外周側に押し出して膨出させるようになっている。これにより、押付ボルト21の締め付け量を調節して、弁板5の周縁部からの膨出量を調節し、シートリング17と弁箱側シート8との接触圧を所望の大きさに設定することができる。
【0027】
注排液部11は、弁箱2の内側で二条の弁箱側シート8の間に開口し、閉弁時に、一方の注排液部11から弁箱2の内周面及び二枚の弁板5で囲まれた空間に注液して、開弁時に、他方の注排液部11から排液するようになっている。
【0028】
次に、シートリング17の形成方法を説明する。まず、シートリング本体18の未加硫ゴムを成型し、その外縁部に二つの補助リング19を互いに間隔をあけて埋設する。補助リング19は、最終形状よりも幅広に形成しておき、埋設部分と同程度の幅分をシートリング本体18から突出させておく。
【0029】
図7に示すように、シートリング本体18の未加硫ゴム及び補助リング19の成型体22を上型23及び下型24に挿入すると共に、両型23、24間にセットしたリングセット型25によって、補助リング19の突出部分を挟持し、さらに、シートリング17に押付ボルト21を挿入するボルト孔を形成するためのピン26をセットする。
【0030】
両型23、24にセットした成型体22を加熱加温して、ガス抜き穴27及びガス抜き兼吹き出し溝28からガス抜き及び余分なゴムの排出をしながら成型体22を加硫成形した後、補助リング19の突出した部位を切除することにより、シートリング17が得られる。
【0031】
次に、液封バタフライ弁1の開閉操作について説明する。液封バタフライ弁1を閉弁する際には、まず、弁棒6を回転操作して弁体4を閉弁状態にする。
【0032】
弁体4を開閉操作することによって、シートリング17の補助リング19がシートリング17と弁箱側シート8との間に滞留したダストを削ぎ落として除去する。これにより、シートリング17と弁箱側シート8との間にダストが滞留することによる漏液を防止し、閉弁時には、管路を確実に遮断する。
【0033】
弁体4を閉弁状態にする際、図8(a)、(b)に示すように、シートリング17が弁箱側シート8にいずれの側から乗り上げる場合であっても、二つの補助リング19のうち、シートリング17の進行方向における前側の補助リング19が弁箱側シート8に先に接触し、後側の補助リング19よりもより強い摩擦力を受ける。これにより、図9に示すように、二つの補助リング19の間隔が狭められ、両者間のゴムが弁箱側シート8に向けて押し出されて、閉弁状態におけるシートリング17と弁箱側シート8との接触圧を高めて、シール性を高める。
【0034】
補助リング19で補強してシートリング17の全体としての剛性を高めている分、シートリング本体18を軟らかい素材で形成しているので、シートリング17と弁箱側シート8とを密着させて十分にシールするのに、その接触圧を過度に高める必要がない。これにより、シートリング17の長寿命化を図ると共に、弁体4を開閉する際、シートリング17と弁箱側シート8との摩擦によって弁体4の開閉操作が過度に阻害されるのを防止することができる。
【0035】
弁体4を閉弁状態にした後、注排液部11から二枚の弁板5の間に注液し、その封液によって管路を完全に遮断する。
【0036】
また、液封バタフライ弁1を開弁する際には、二枚の弁板5の間に封入された液を注排液部11から排液した後、弁棒6を回転操作して開弁する。
【0037】
[第2実施形態]
第2実施形態に係るシートリング29は、第1実施形態にシートリング17とほぼ同じ構成であるが、シートリング本体18に補助リング19を埋設する代わりに、シートリング本体30の外周縁の断面略円形部分のうち、その内周面を除く表裏部分に補助リング31を接着したものである。
【0038】
このシートリング29は、補助リング31をシートリング本体30の表裏部分に設けて露出させている分、弁体4の開閉操作によって、弁箱側シート8に固着したダストを削ぎ落とすという点で、より好適である。
【0039】
シートリング29の形成方法としては、まず、図11(a)に示すように、シートリング本体30の未加硫ゴムを第1実施形態と同様の上型23及び下型24に挿入して基本形状に成型する。その後、図11(b)に示すように、シートリング本体30の所定の位置に補助リング31を配置して、再び上型23及び下型24にセットし、シートリング本体30に補助リング31を加硫接着することにより、シートリング29が得られる。
【0040】
また、シートリング29を備えた液封バタフライ弁の開閉操作は、第1実施形態と同じである。すなわち、弁体4を閉弁状態にする際、図12(a)、(b)に示すように、シートリング29が弁箱側シート8にいずれの側から乗り上げる場合であっても、図13に示すように、二つの補助リング31の間のゴムが弁箱側シート8に向けて押し出されて、シール性を高める。なお、他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0041】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、本発明に係るシートリング17、29を備えたバタフライ弁は、二枚の弁板5を備えた液封式のものに限らず、一枚の弁板を備えたバタフライ弁であってもよい。また、シートリングは、二つの補助リング19、31を設けたシートリング17、29に限らず、一つ又は三つ以上の補助リングを設けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 液封バタフライ弁
2 弁箱
4 弁体
5 弁板
8 弁箱側シート
11 注排液部
17、29 シートリング
18、30 シートリング本体
19、31 補助リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バタフライ弁の弁板の周縁部に装着され、閉弁状態において弁箱側シートに接触するバタフライ弁用シートリングであって、ゴム状弾性体からなるシートリング本体と、該シートリング本体と一体に設けられた補助リングと、を備え、前記補助リングは、シートリング本体よりも硬度の高い素材から形成されたことを特徴とするバタフライ弁用シートリング。
【請求項2】
前記補助リングは、シートリング本体の中央穴を貫通する中心軸と平行な方向に間隔をあけて複数設けられたことを特徴とする請求項1に記載のバタフライ弁用シートリング。
【請求項3】
管路に介装される弁箱と、該弁箱の中央穴に収容された弁体とを備え、前記弁体は、弁板と、該弁板を管路の流路方向と直交する方向を回転軸として回転可能に支持する弁棒とからなり、前記弁棒を回転操作することによって前記管路を開閉自在とされたバタフライ弁であって、前記弁箱の内周面に、弁板の周縁部を受けるようリング状に突出する弁箱側シートが設けられ、前記弁板の周縁部に、請求項1又は2に記載のバタフライ弁用シートリングが装着されたことを特徴とするバタフライ弁。
【請求項4】
前記弁体は、二枚の前記弁板が板厚方向に間隔をあけて一体に設けられ、前記弁箱側シートは、二枚の弁板の周縁部をそれぞれ受けるよう二条に設けられ、前記バタフライ弁用シートリングは、二枚の前記弁板の周縁部にそれぞれ装着され、前記弁箱の内周面及び二枚の弁板で囲まれた空間に注排液する注排液部が設けられて液封式とされたことを特徴とする請求項3に記載のバタフライ弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−220382(P2011−220382A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87423(P2010−87423)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(391060432)株式会社オーケーエム (19)
【Fターム(参考)】