説明

バタフライ弁

【課題】 シートリングだけを容易に交換可能なバタフライ弁を提供する。
【解決手段】 シートリング押さえ3の外周面に、複数の係合爪12が周方向に所定間隔で設けられている。弁箱1に、シートリング押さえ3の着脱時に各係合爪12と重ね合わされることでシートリング押さえ3の弁箱軸方向の移動を許容する係合爪挿入口18と、シートリング押さえ3を装着して所要角度回転させたときに各係合爪12が嵌め合わせられることでシートリング押さえの弁箱軸方向の移動を防止する係合爪嵌入凹所16とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば下水や海水など各種の液体を送るパイプラインの配管中に配設して使用されるバタフライ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のバタフライ弁は、特許文献1などに開示されており、図6および図7に示すように、円形の貫通孔が形成された弁箱(51)と、弁箱(51)の径方向にのびる軸線を有し弁箱(51)に回転可能に支持された弁棒(52)と、弁棒(52)に固定されて弁棒(52)の回転によって弁箱(51)の貫通孔を開閉する円盤状の弁体(53)と、弁箱(51)の貫通孔の内周縁部に装着され閉状態の弁体(53)の外周縁部に密着する環状のシートリング(54)と、シートリング(54)を弁箱(51)に押さえつける環状のシートリング押さえ(55)とを備えている。
【0003】
従来のバタフライ弁では、図7に示すように、シートリング(54)が弁箱(51)のシートリング嵌入用溝(56)に嵌め合わされた状態で、シートリング押さえ(55)は弁箱軸方向(図の上方)に容易に外れるようになっており、使用に際しては、図に点線で示すシートリング(54)と弁箱(51)のシートリング嵌入用溝(56)との間、シートリング押さえ(55)とシートリング(54)との間およびシートリング押さえ(55)と弁箱(51)との間をエポキシ接着することで、シートリング(54)およびシートリング押さえ(55)の弁箱(51)からの脱落を防止している。したがって、弁箱(51)、シートリング(54)およびシートリング押さえ(55)は、1つのユニットして取り扱われており、シートリング(54)が劣化または破損した場合、このユニットごと交換されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−288478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のバタフライ弁におけるシートリングおよびシートリング押さえの脱落防止において、エポキシ接着に手間がかかるとともに、シートリングが劣化または破損した場合、弁箱ごとの交換が必要であり、シートリングだけを容易に交換可能なシートリングの交換構造が求められている。
【0006】
この発明の目的は、シートリングだけを容易に交換可能なバタフライ弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によるバタフライ弁は、円形の貫通孔が形成された弁箱と、弁箱に設けられた環状のシートリング嵌入溝に嵌め入れられ閉状態の弁体の外周縁部に密着する環状のシートリングと、シートリングを弁箱に押さえつける環状のシートリング押さえとを備えているバタフライ弁において、シートリング押さえの外周面に、複数の係合爪が周方向に所定間隔で設けられ、弁箱に、シートリング押さえの着脱時に各係合爪と重ね合わされることでシートリング押さえの弁箱軸方向の移動を許容する係合爪挿入口と、シートリング押さえを装着して所要角度回転させたときに各係合爪が嵌め合わせられることでシートリング押さえの弁箱軸方向の移動を防止する係合爪嵌入凹所とが設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
この発明のバタフライ弁において、シートリング押さえを弁箱に装着するに際しては、まず、シートリング押さえの係合爪と弁箱の係合爪挿入口とを重ね合わせ、次いで、シートリング押さえを弁箱に対して回転させることで、シートリング押さえの係合爪を弁箱の係合爪嵌入凹所に嵌め合わせる。これにより、シートリング押さえは、その弁箱軸方向の移動が防止されて、弁箱に装着される。この逆の作業により、シートリング押さえを弁箱から取り外すことができる。
【0009】
したがって、シートリングおよびシートリング押さえの弁箱からの脱落をエポキシ接着によって防止する作業が不要になる。また、シートリングが劣化または破損した場合、シートリング押さえの係合爪がシートリング押さえ嵌合溝の係合爪挿入口に重なるようにシートリング押さえを回転させて、シートリング押さえを取り外すことで、シートリングだけを容易に交換することができる。
【0010】
弁箱、シートリングおよびシートリング押さえの材料は、特に限定されるものではないが、例えば、弁箱は、PVCまたはGFPP(ガラス繊維強化PP)、シートリングは、EPDMまたはEPM、シートリング押さえはGFPP(ガラス繊維強化PP)などによって形成される。
【0011】
シートリングは、シールゴムを介してシートリング嵌入溝に嵌められていることが好ましい。
【0012】
シールゴムは、例えば、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチロールゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどによって形成される。
【発明の効果】
【0013】
この発明のバタフライ弁によると、シートリング押さえの外周面に、複数の係合爪が周方向に所定間隔で設けられ、弁箱に、シートリング押さえの着脱時に各係合爪と重ね合わされることでシートリング押さえの弁箱軸方向の移動を許容する係合爪挿入口と、シートリング押さえを装着して所要角度回転させたときに各係合爪が嵌め合わせられることでシートリング押さえの弁箱軸方向の移動を防止する係合爪嵌入凹所とが設けられているので、シートリング押さえの係合爪と弁箱の係合爪挿入口とを重ね合わせ、次いで、シートリング押さえを弁箱に対して回転させることで、シートリング押さえの係合爪を弁箱の係合爪嵌入凹所に嵌め合わせることにより、シートリング押さえは、その弁箱軸方向の移動が防止されて、弁箱に装着され、また、この逆の作業により、シートリング押さえを弁箱から取り外すことができる。したがって、シートリングおよびシートリング押さえの弁箱からの脱落をエポキシ接着によって防止する作業が不要になるとともに、シートリングが劣化または破損した場合、シートリングだけを容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、この発明によるバタフライ弁の主要部を示す正面図である。
【図2】図2は、弁箱を示す正面図である。
【図3】図3は、シートリング押さえを示す正面図である。
【図4】図4は、この発明によるバタフライ弁の主要部(シール部)の断面図で、図1のIV-IV線に沿う断面図である。
【図5】図5は、この発明によるバタフライ弁のシートリング押さえを弁箱に嵌め合わせる際の順序を説明する図である。
【図6】図6は、従来のバタフライ弁の主要部を示す正面図である。
【図7】図7は、従来のバタフライ弁のシール部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、この発明のバタフライ弁は、弁箱(1)、シートリング(2)およびシートリング押さえ(3)を備えている。弁箱(1)は、図2に示すように、円形の貫通孔(1a)および1対の弁棒挿通部(1b)を有している。シートリング(2)は、閉状態の弁体(図示略)の外周縁部に密着するように、弁箱(1)の貫通孔(1a)の内周縁部に装着されており、シートリング押さえ(3)によって、弁箱(1)からの脱落が防止されている。。
【0017】
図4および図5に示すように、弁箱(1)の一端側(図の上端側)近くの内周には、シートリング(2)を嵌め入れるためのシートリング嵌入溝(14)が設けられている。弁箱(1)の一端側の内周には、シートリング嵌入溝(14)に連なるように、シートリング押さえ(3)を嵌め合わせるためのシートリング押さえ嵌合溝(15)が設けられている。
【0018】
シートリング(2)は、軸方向長さがシールに寄与する部分よりも大きくてシートリング嵌入溝(14)に嵌め入れられる基部(2a)を有している。シートリング嵌入溝(14)は、シートリング(2)の基部(2a)を嵌め入れ可能な軸方向長さを有しており、その軸方向内方側には、軸方向外方に突出してシートリング(2)の基部(2a)の径方向内方側への抜けを防止する突出縁部(14a)が設けられている。シートリング(2)は、シールゴム(4)を介してシートリング嵌入溝(14)に嵌められている。
【0019】
シートリング押さえ(3)は、環状の本体(11)と、本体(11)の外周面に周方向に所定間隔で(図示は90°間隔で計4つ)設けられた複数の係合爪(12)と、本体(11)の軸方向内方の面に設けられてシートリング(2)に当接する環状の当接部(13)とからなり、後述するように、各係合爪(12)が弁箱(1)に設けられた係合爪嵌入凹所(16)と係合することで、弁箱(1)に固定される。
【0020】
シールゴム(4)は、円筒状で、その内周面には、軸方向に所定間隔をおいて2つの環状突起(4a)が設けられている。シールゴム(4)は、2つの環状突起(4a)を介してシートリング(2)の基部(2a)の外周面に密着しており、シールゴム(4)の外周面は、シートリング嵌入溝(14)の底面に全面で密着している。
【0021】
シートリング(2)およびシールゴム(4)は、弁箱(1)の一端側から軸方向に挿入されることで、シートリング嵌入溝(14)に嵌め入れられ、この後、シートリング押さえ(3)がシートリング押さえ嵌合溝(15)に嵌め合わせられる。
【0022】
シートリング押さえ嵌合溝(15)は、シートリング嵌入溝(14)の軸方向外方に隣接しシートリング嵌入溝(14)の底面よりも深い底面を有する係合爪嵌入凹所(16)と、係合爪嵌入凹所(16)の底面の軸方向外方の端部に設けられて係合爪嵌入凹所(16)内に嵌め入れられた係合爪(12)の軸方向(弁箱軸方向)への移動を規制する係合突起(17)と、係合突起(17)の所要部が切り欠かれることで係合爪(12)の軸方向(弁箱軸方向)への移動を可能とする係合爪挿入口(18)とを有している。
【0023】
係合爪挿入口(18)は、シートリング押さえ(3)に所定間隔で(図示は90°間隔で計4つ)設けられた複数の係合爪(12)に対応するように、所定間隔で(図示は90°間隔で計4つ)設けられており、各係合爪挿入口(18)の時計方向に連なって係合爪嵌入凹所(16)および係合突起(17)がそれぞれ設けられている。
【0024】
したがって、図3に示すシートリング押さえ(3)をその各係合爪(12)が各係合爪挿入口(18)に嵌まり合うように図2に示す弁箱(1)に重ね合わさせ、その後、シートリング押さえ(3)を回転させることで、シートリング押さえ(3)が弁箱(1)に固定される。すなわち、図5に示すように、シートリング押さえ(3)を弁箱(1)のシートリング押さえ嵌合溝(15)に嵌め合わせるに際しては、まず、シートリング押さえ(3)の係合爪(12)がシートリング押さえ嵌合溝(15)の係合爪挿入口(18)(係合突起(17)が無い部分)に軸方向に対向するように位置させて、矢印で示す方向にシートリング押さえ(3)を移動させ、この後、シートリング押さえ(3)を所要角度回転させることで、係合爪(12)が係合爪挿入口(18)を外れて係合突起(17)がある部分に移動し、図4に示すように、シートリング押さえ(3)の係合爪(12)は、係合突起(17)によって軸方向への移動が規制された状態で係合爪嵌入凹所(16)に嵌め入れられ、シートリング押さえ(3)が弁箱(1)に固定される。
【0025】
図4において、シートリング押さえ(3)の回転により、シートリング押さえ(3)の当接部(13)は、シートリング(2)の基部(2a)に当接して、図4に矢印で示す方向にこれを押圧する。この押圧力は、シートリング押さえ(3)を軸方向にだけ移動させた場合の力に比べて大きいものとなり、これにより、シートリング(2)の基部(2a)は、軸方向内方および径方向外方の両方の力を受け、シール性が高められるとともに、シートリング(2)およびシートリング押さえ(3)の軸方向外方への移動(弁箱(1)からの脱落)が確実に防止される。したがって、シートリング(2)およびシートリング押さえ(3)の弁箱(1)からの脱落をエポキシ接着によって防止する作業が不要になる。また、シートリング(2)が劣化または破損した場合、シートリング押さえ(3)の係合爪(12)がシートリング押さえ嵌合溝(15)の係合爪挿入口(18)に重なるようにシートリング押さえ(3)を回転させて、シートリング押さえ(3)を取り外すことで、シートリング(2)だけを容易に交換することができる。
【符号の説明】
【0026】
(1) 弁箱
(1a) 貫通孔
(2) シートリング
(3) シートリング押さえ
(12) 係合爪
(14) シートリング嵌入溝
(16) 係合爪嵌入凹所
(18) 係合爪挿入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の貫通孔が形成された弁箱と、弁箱に設けられた環状のシートリング嵌入溝に嵌め入れられ閉状態の弁体の外周縁部に密着する環状のシートリングと、シートリングを弁箱に押さえつける環状のシートリング押さえとを備えているバタフライ弁において、
シートリング押さえの外周面に、複数の係合爪が周方向に所定間隔で設けられ、弁箱に、シートリング押さえの着脱時に各係合爪と重ね合わされることでシートリング押さえの弁箱軸方向の移動を許容する係合爪挿入口と、シートリング押さえを装着して所要角度回転させたときに各係合爪が嵌め合わせられることでシートリング押さえの弁箱軸方向の移動を防止する係合爪嵌入凹所とが設けられていることを特徴とするバタフライ弁。
【請求項2】
シートリングは、シールゴムを介してシートリング嵌入溝に嵌められている請求項1のバタフライ弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−13159(P2012−13159A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150951(P2010−150951)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】