説明

バターを含有する水中油型乳化物及びバター含有飲料

【課題】バター含量が多い場合、乳化物の保存時に生じる、凝集や合一による乳化粒子の劣化、分離、結晶化(固形化)といった現象が抑制され、更には風味に影響のないバター含有水中油型乳化物を提供する。更には、バター風味に優れつつも、保存した際に生じるミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿といった現象が顕著に抑制されたバター含有飲料を提供する。
【解決手段】バターを含有する水中油型乳化物に、HLB10以上のショ糖脂肪酸エステル及び重合度5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、当該乳化物の乳化粒子の平均粒子径が0.05〜3μmの範囲となるようにバター含有水中油型乳化物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバターを含有する水中油型乳化物に関する。特にはバター含量が多い水中油型乳化物であっても、保存における、乳化粒子の変化や凝集による分離、結晶化(固形化)といった現象が顕著に抑制され、更には風味に優れたバター含有水中油型乳化物に関する。また、該乳化物を含有することを特徴とする、バター風味に優れつつも、保存した際に生じる、ミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿といった現象が顕著に抑制されたバター含有密封容器入り飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バターは乳製品の中でも特有の風味を有しており、飲料などの各種飲食品に応用することが期待されている。しかしバターは固体でハンドリングが悪く、且つ水溶液に添加すると油が浮いた状態に分離してしまう為、飲料などに使用し難いといった問題があった。又、バターを水中油型乳化物などに乳化した場合もバター自体が油中水型乳化物である為安定性を保つことが難しく、経時的な乳化粒子の凝集や合一などによる劣化や分離、固形脂の結晶化(固形化)が問題となってくる。
【0003】
こうした観点に鑑み、従来よりバターを含有した水中油型乳化物を調製する際に、種々の乳化剤が検討されてきた。例えば、特許文献1には、リゾリン脂質に加え、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルを油脂に対して0.8〜2質量%含有し、かつポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルの合計量に占める不飽和脂肪酸エステルと飽和脂肪酸エステルの重量比が10/90〜70/30である乳化剤を含有するクリーム状組成物が開示されている。
【0004】
同様にして、ホイップクリーム調製用水中油型乳化物に用いる乳化剤としてレシチンとグリセリン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルの併用が好ましく使用できること(特許文献2)、O/W型乳化物にHLBが5〜16の乳化剤を含み、乳化剤としてソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の単独または2種以上を組み合せて用いることができること(特許文献3)が開示されており、特許文献4には、生乳及び/または乳製品を主原料とする牛乳類にショ糖脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの3種を含有させることが記載されており、乳製品の一例としてバターが挙げられている。また、特許文献5には、ミルクコーヒー飲料に使用される、酸化防止処理の施されたO/W型乳化物が記載されており、乳化剤としてHLBが11〜16の親水性ショ糖脂肪酸エステルが用いられること、ポリグリセリン脂肪酸エステルを併用できることが記載されている。
【0005】
しかし特許文献1〜3に開示されている水中油型乳化物は、調製後に起泡させホイップクリームとして用いることを目的し、ホイップ時の激しい攪拌による解乳化を起こすことを前提にしているため、解乳化を目的としない場合においての乳化安定性には、欠けるものであった。また、特許文献4には乳製品の一例としてバターが開示されているが、牛乳類自体を密封容器に充填した密封容器入り牛乳類については開示があるのみであり、乳化物を調製することについての記載や示唆は行われていない。更には、乳製品の中でも特にバターは融点が高く結晶化しやすい性質を有するため、その保存安定性を維持することが極めて困難であり、経時的な乳化粒子の変化や凝集による分離、結晶化が問題となっている。また、特許文献5記載の発明も、乳化剤とリン酸塩、及び微結晶セルロースといった
素材を併用することを必須要件としており、これら乳化剤以外の素材を併用しない場合は、安定性が著しく低下している旨が開示されている。更に特許文献5に記載の発明は、水相と油相にそれぞれ少なくとも1種類の乳化剤を使用することが記載されており、調製工程上複雑なものであった。また、特許文献1〜5には乳化物の平均粒子径や特定の粒子径に調製する方法についても一切記載や示唆が行われていない。
【0006】
一方、特許文献6には、バターを含有し、脂肪球の平均粒径が1.8μmで、6.0μm以下の脂肪球が95%の範囲にあるクリーム状の乳化調製物が、特許文献7、8には、特定条件にて親水性多孔膜、多孔質ガラス膜からなる乳化手段を用いて油相の粒子径が3μm以下である合成乳等を調製することが開示されている。
【0007】
しかし、特許文献6に記載の発明を、例えば缶コーヒーといった密封容器入り飲料に適用した場合は、レトルト殺菌等の過酷な加熱殺菌時や保存時に生じるミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿等が生じ、商品価値を著しく低下させるものであった。また、特許文献7、8においては、特定の親水性多孔質膜や多孔質ガラス膜を用いて、特定の乳化粒子径を調製する膜乳化の技術を使用することが開示されているが、膜乳化の技術を使用せずに特定の乳化剤を用いてバター含有乳化物を調製することについては一切言及されていない。こうした膜乳化の技術を使用する場合、処理量、処理速度の問題、膜の処理の問題、製造設備の問題など実際の大量生産に不向きな点も多く、食品の安定な生産を行うことは難しいものであった。また特許文献6〜8に係る方法を用いて調製された乳化物は短期間の乳化安定は示すものの、HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステル及び重合度が5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルといった特定の乳化剤を併用しなかった場合は、2週間以上といった長期保存下における乳化粒子の変化や凝集による分離、結晶化が生じてしまうなど、その安定性は低く更なる改良が望まれていた。
【0008】
このように従来の方法においては、バター特有の性質が原因で経時的な乳化粒子の凝集や合一などによる劣化や分離、固形脂の結晶化(固形化)を充分に抑制することができない、また、バターを含有した水中油型乳化物に与える風味や経時変化により発生する臭い(経変臭)が生じることが問題となっていた。更には、バターを含有した水中油型乳化物は、飲料、特にはレトルト殺菌等の過酷な加熱殺菌工程や保存形態を有する、缶コーヒーなどの密封容器入り飲料などの食品に添加することにより、水中油型乳化物中に含まれる乳化粒子の変化・凝集による分離や結晶化などが顕著に発生するといった問題を抱えており、これらの食品に添加した際にも良好な安定性を有する水中油型乳化物が切に望まれていた。
【0009】
【特許文献1】特開平5−23126号公報
【特許文献2】特開平7−108号公報
【特許文献3】特開2006−25690号公報
【特許文献4】特開平6−217687号公報
【特許文献5】特開2004−147526号公報
【特許文献6】特開平8−289730号公報
【特許文献7】特開平4−320643号公報
【特許文献8】特開平7−313056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明らはかかる事情に鑑みて開発されたものであり、バター含有水中油型乳化物に関し、特にバター含量が高い場合、乳化物を保存した際に生じる凝集や合一による乳化粒子の劣化及び分離、結晶化(固形化)といった現象が顕著に抑制され、更にはバター独特の風味に影響のないバター含有水中油型乳化物を提供することを目的とする。更には、バター風味に優れつつも、レトルト殺菌といった過酷な殺菌工程や長期保存下においても、ミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿といった現象が顕著に抑制されたバターを含有する密封容器入り飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記問題を解決するために鋭意検討した結果、(1)バター、(2)HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステル及び(3)重合度が5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する水中油型乳化物であって、当該乳化物の乳化粒子径を0.05〜3μmの範囲内とすることにより、乳化物の保存における凝集や合一による乳化粒子の劣化及び分離、結晶化(固形化)といった現象が顕著に抑制されたバター含有水中油型乳化物となることを見出して本発明に至った。
【0012】
更には、該バター含有水中油型乳化物を含有することにより、バター風味に優れつつも、保存した際に生じるミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿といった現象が顕著に抑制されたバター含有飲料を提供できることも見出した。
【0013】
本発明は、以下の態様を有するバターを含有した水中油型乳化物、及び該水中油型乳化物を含有する密封容器入りバター含有飲料に関する;
項1.バター、HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステル及び重合度が5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する水中油型乳化物であって、当該乳化物の乳化粒子の平均粒子径が0.05〜3μmであることを特徴とする、バター含有水中油型乳化物。
項2.ショ糖脂肪酸エステルの主体構成脂肪酸がステアリン酸もしくはパルミチン酸であり、モノエステル含量が50%以上である、項1に記載のバター含有水中油型乳化物。
項3.ポリグリセリン脂肪酸エステルの主体構成脂肪酸がステアリン酸もしくはオレイン酸であり、HLBが10〜19である、項1又は2に記載のバター含有水中油型乳化物。
項4.バターの含有量が5〜30質量%であることを特徴とする、項1〜3のいずれかに記載のバター含有水中油型乳化物。
項5.HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステルと重合度が5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルの配合比が重量換算で、1:1〜1:5である、項1〜4のいずれかに記載のバター含有水中油型乳化物。
【0014】
項6.水分活性が0.7以下である項1〜5のいずれかに記載のバター含有水中油型乳化物。
項7.飲料に添加される乳化物である、項1〜6のいずれかに記載のバター含有水中油型乳化物。
項8.項1〜7のいずれかに記載のバター含有水中油型乳化物を含有することを特徴とする、密封容器入りバター含有飲料。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、バター含有水中油型乳化物の保存時に生じる、凝集や合一による乳化粒子の劣化や分離、結晶化(固形化)といった現象が顕著に抑制できる。更には、レトルト殺菌等の加熱殺菌や保存した際に生じるミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿といった現象が顕著に抑制されたバター入り飲料の調製が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るバターを含有した水中油型乳化物は、バター、HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステル及び重合度が5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、当該乳化物の乳化粒子の平均粒子径が0.05〜3μmであることを特徴とする。
【0017】
本発明のバター含有水中油型乳化物(以下、「バター含有乳化物」という。)は、バターを含有することを特徴とする。
【0018】
本発明のバター含有乳化物に用いられるバターとしては、特に限定されず種々のバターを用いることができる。ここで、バターとは、牛乳より分離したクリームの脂肪を攪拌操作により塊状に集合させて作ったものであり、具体例としては、有塩バター、無塩バター、低水分バター、発酵バター、甘性バター、ソフトバター、ハードバター、無水バター、ホイップドバター、粉末バター、バラバター、ポンドバター、ポーションバター、シートバター、パティバター等が挙げられるがこれに限るものではなく、バターと呼ばれるものであれば良い。又、他の乳成分(牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、濃縮乳、生クリーム、練乳)が含まれていても良い。
【0019】
本発明のバター含有乳化物のバターの含有量としては、バターが含有されていれば特に限定されないが、バター含有乳化物に対し、5〜30質量%、更には10〜30質量%といった高いバター含有量においても顕著な効果を奏する。従来、バターの含有量が多くなると、乳化物を保存した際に乳化粒子の変化や凝集による分離、結晶化(固形化)といった現象が発生しやすくなったり、該バター含有乳化物をコーヒーや紅茶といった飲料に添加した際に、ミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿といった現象が発生しやすくなるが、本発明では係る問題点を解決できるものである。
【0020】
本発明のバター含有乳化物は、バターが含有されている水中油型乳化物であれば特に限定されず、好ましくはホイップを目的としない水中油型乳化物をいう。ここで、従来のホイップを目的とする水中油型乳化物は、水中油型乳化物の調製後に激しくホイッピングを行い、解乳化を促進し気泡を安定的に取り込むことを目的とするが、一方で本発明の水中油型乳化物は、調製後のホイップを行わない食品に使用するもので、解乳化性能は低く安定な乳化状態を維持するものである。
【0021】
なお、本発明の水中油型乳化物の具体的な例としては、バター含有ペースト、バター含有クリーム、バター含有ミルク、バター含有ホワイトナー等の各種水中油型乳化物を挙げることができ、例えば、バター含有ペースト、バター含有クリームであれば製菓やパン等のフィリング材として、バター含有ミルク、バター含有ホワイトナーであれば飲料用ポーションとして用いることができ、また、バターを含有した飲料を調製する際の中間品として用いることもできる。中でも、好ましくは、飲料に添加されるバター含有水中油型乳化物として用いることができる。
【0022】
本発明におけるHLBが10以上のショ糖脂肪酸エステルとは、ショ糖に脂肪酸がエステル結合したものでHLBが10以上のものであればよく、好ましくはHLBが11〜20、更に好ましくはHLBが15〜19であるショ糖脂肪酸エステルを用いることができる。HLBは計算式から得られた理論値でも、実験的に求めた値でもよい。構成脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、カプリル酸、カプリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸等から選ばれる1種類又は2種類以上のものが好ましく、中でも、主体の構成脂肪酸がステアリン酸もしくはパルミチン酸のショ糖脂肪酸エステルを用いることが好ましい。尚、本願の主体構成脂肪酸とは構成脂肪酸中で最も多い脂肪酸のことである。更に、本発明ではショ糖脂肪酸エステルの中でも、モノエステル含量が50%以上、より好ましくは70〜100%であるショ糖脂肪酸エステルを用いることが好ましい。なお、本発明で用いるショ糖脂肪酸エステルの形状は液体、粘調性のある液体、半固体、ペースト、固体、粉末、ペレット等何れの形状のものでもよい
【0023】
HLB10以上のショ糖脂肪酸エステルの添加量としては、バター含有乳化物に対して、0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜7質量%、更に好ましくは0.1〜3質量%となるよう添加するのが望ましい。ここで、ショ糖脂肪酸エステルの添加量が0.05質量%よりも少ないと充分な効果を得ることができず、10質量%より多いと、更なる効果が望めなく、風味にも影響を及ぼす場合がある。
【0024】
本発明における重合度が5〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリンが5〜10分子重合したポリグリセリン1分子に1分子以上の脂肪酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステルが主要な成分として含まれていればよい。構成脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、カプリル酸、カプリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸等から選ばれる1種類又は2種類以上のものが好ましく、中でも、主体の構成脂肪酸がステアリン酸もしくはオレイン酸のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが好ましい。尚、本願の主体構成脂肪酸とは構成脂肪酸中で最も多い脂肪酸のことである。
【0025】
本発明で用いるポリグリセリン脂肪酸エステルは、HLBが10〜19、より好ましくは13〜15であることが好ましい。更には、上記HLBが10〜19のポリグリセリン脂肪酸エステルの中でも、重合度が5又は10のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが好ましく、またこれらは混合して用いることができる。使用するポリグリセリン脂肪酸エステルの形状は液体、粘調性のある液体、半固体、ペースト、固体、粉末、ペレット等何れの形状のものでもよい。
【0026】
重合度が5〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量としては、バター含有乳化物に対して、0.05〜15質量%、好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.5〜5質量%となるように添加するのが望ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量が0.05質量%よりも少ないと充分な効果を得ることができず、15質量%より多いと、更なる効果が望めなく風味にも影響を及ぼす場合がある。
【0027】
更に、本発明のバター含有乳化物は、HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステルと重合度が5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルの配合比が、重量比で1:1〜1:5、より好ましくは1:1.5〜1:3となるように含有することにより、更なる効果が望める。
【0028】
そして、本発明のバター含有乳化物は、乳化粒子の平均粒子径が0.05〜3μm、好ましくは0.06〜2μm、更に好ましくは0.06〜1.2μmであることを特徴とする。ここで、乳化粒子の平均粒子径が0.05μmよりも小さいものは、製造するのが難しく、特殊な方法をとらないと不安定な状態となってしまい、一方で平均粒子径が3μmを超えると乳化状態が不安定なものとなってしまう。
【0029】
なお、バター含有乳化物を上記粒子径に調製する方法としては、バター、HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステル及び重合度が5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルが共存した状態で後述の乳化機を用いる。具体的な乳化処理方法としては、バルブ式ホモゲナイザー、ホモミキサー、ナノマイザー、マイクロフルイダイザー等のエネルギー効率の高い乳化機を使用することが好ましく、より好ましくはバルブ式ホモゲナイザーを用いて均質化処理を行う。また、バルブ式ホモゲナイザーの場合、1段式ホモゲナイザーでも2段式ホモゲナイザーでもよく、処理圧力が10MPa〜60MPaの性能を持つものが好ましく、処理回数が1〜6回できる装置であれば良い。より好ましくは15MPa〜60MPaの性能を有し、処理回数1〜4回で調製することが望ましい。
【0030】
更に、本発明のバター含有乳化物は、増粘多糖類及び/又はカゼインナトリウムを含有しても良い。本発明における増粘多糖類とは、水中油型乳化物に一般的に用いられている増粘多糖類であればよい。具体的には、カラギナン(イオタ、ラムダ、カッパ)、キサンタンガム、アラビアガム、ガティガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、タラガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、カルボキシルメチルセルロース、微結晶セルロース、発酵セルロース、水溶性大豆多糖類、澱粉等を挙げることができ、これらから選ばれる1種又は2種以上の増粘多糖類を使用することができる。増粘多糖類の添加量としては、用いる増粘多糖類の種類により一概には規定することができないが、一般には、バター含有乳化物に対して、0.001〜30質量%、好ましくは0.005〜5質量%、より好ましくは0.01〜1質量%となるように調整するのが望ましい。0.001重量%よりも少ないと本願発明に係る充分な効果を得ることができず、30重量%より多いとバター含有乳化物の調製における作業効率が悪くなるためである。
【0031】
カゼインナトリウムとは、タンパク質系の水溶性高分子で、脱脂乳に酸を加えて沈殿して得られたカゼインを水酸化ナトリウム、もしくは炭酸水素ナトリウムと反応させて製造したものである。カゼインナトリウムの添加量としては、バター含有乳化物に対して、0.001〜10質量%、好ましくは0.005〜5質量%、より好ましくは0.01〜1質量%となるように調整して添加するのが望ましい。
【0032】
また、本発明のバター含有乳化物には、その効果を妨げない範囲において、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸カリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、塩酸、塩酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、フィチン酸等の有機酸及び/又はその塩類、ショ糖、果糖、ぶどう糖、麦芽糖、デンプン糖化物、水飴、還元水飴、還元デンプン水飴、デキストリン、サイクロデキストリン、トレハロース等の糖類、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール等の糖アルコール類、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム、ソーマチン、サッカリン等の高甘味度甘味料類、グリセリン、プロピレングリゴール、ソルビタン等の多価アルコール等を添加することができる。
【0033】
本発明のバター含有乳化物の調製方法としては、最終的にバター含有乳化物に上記HLB10以上のショ糖脂肪酸エステル及び重合度5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルが含有されていること、乳化物の平均粒子径が0.05〜3μmとなるまで乳化処理を行う以外は、特に限定されず各種方法をとることができる。例えば、糖液と水の混合液に、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステル、必要に応じて前記増粘多糖類等を粉体、及び液状等の形態で添加し、撹拌溶解した後に、撹拌しながらあらかじめ溶解したバターを投入後、前述の均質化処理を行い、必要であれば殺菌処理を行うことによって、乳化粒子の変化や凝集による分離、結晶化(固形化)を抑制し、風味に影響を与えることのない本発明のバター含有乳化物を調製することができる。
【0034】
こうして調製されたバター含有乳化物は、バター含量が高い場合でも、乳化物の保存時の凝集や合一による乳化粒子の劣化や分離、結晶化(固形化)といった現象が顕著に抑制されたバター含有乳化物となる。
【0035】
さらに、本発明のバター含有乳化物は水分活性が0.7以下といった固形分が高い場合も、顕著に乳化粒子の変化や凝集による分離、結晶化を抑制することができる。また、本発明に係る構成をとることにより、粘度が高くなりすぎてうまく乳化が出来ないといった水分含量の低い乳化物であっても、顕著に分離、結晶化が抑制され長期保存における安定なバター含有乳化物が提供可能となる。
【0036】
更に、本発明は、前記バター含有乳化物を含有することを特徴とする、バター含有密封容器入り飲料に関する。ここで、HLB10以上のショ糖脂肪酸エステル及び重合度5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有したバター含有乳化物を用いることにより、バター風味に優れつつも、保存した際に生じるミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿といった現象が顕著に抑制されたバター含有飲料を提供することができる。
【0037】
本発明が対象とするバター含有飲料は、本発明のバター含有乳化物が含有されていれば特に限定されず、各種飲料をいう。具体例としては、バター含有乳化物入りコーヒー、バター含有乳化物入り茶類、バター含有乳化物入りココア、バター含有乳化物入り抹茶飲料、ミルクセーキ、ミルクシェイク類などが挙げられるが、特に本発明では、バター含有乳化物入りコーヒー、バター含有乳化物入り茶類、バター含有乳化物入りココアに関しても、リング、白色浮遊物、沈殿に対する高い抑制効果が得られる。
【0038】
飲料の形態としては、特に限定されず、缶、ビン、ペットボトル、紙パック、ラミネートパック等の商品形態や、チルドや常温、加温などの様々な流通形態を取ることができる。中でも、缶やペットボトルなどの密封容器の形態は高温販売、いわゆるホットベンダー販売される機会が多く、より乳化状態が不安定になる傾向があるが、本発明は、このような缶及び/又はペットボトルの容器形態に対して特に効果を呈する。
【0039】
本発明に係る飲料へのバター含有乳化物の含有方法は、従来公知の方法をとることができる。例えば、湯又は水に密封容器入り飲料用乳化安定剤を粉体及び液状等の形態で投入し、撹拌溶解した後に、糖液、本発明のバター含有乳化物、牛乳または牛乳及び他の乳成分(全脂粉乳、脱脂粉乳、濃縮乳、生クリームを含む)を加え、これに別途抽出したコーヒーエキス、紅茶エキス、果汁成分等を添加し、pH調整した後バルブ式ホモゲナイザーにて処理し、缶、ビン、ペットボトル、紙パック、ラミネートパック等の密封容器に充填された後、殺菌処理を行うことにより、ミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿を抑制し、飲料における風味や経変臭に影響を与えることのない、本発明のバター含有飲料を調製することができる。
【0040】
尚、本発明のバター含有乳化物とバター含有飲料の殺菌処理は、殺菌条件や殺菌装置等によって特に制限されず、一般的に使用される殺菌条件が広く採用できる。通常は、バター乳化物では約120〜125℃で約10〜20分処理するレトルト殺菌、もしくは約110〜145℃で約2秒〜60秒処理するプレート殺菌が用いられる。密封容器入り飲料では約120〜125℃で約20〜40分処理するレトルト殺菌、もしくは約140〜145℃で約30〜70秒が用いられるが、特にこれに限定されず、UHT殺菌(プレート殺菌、チューブラー殺菌、インジェクション殺菌、インフュージョン殺菌等)、オートクレーブ殺菌等、食品に採用される種々の殺菌処理を挙げることができる。そして、本発明に係る構成を取ることにより、例えば約120〜125℃で約20〜40分処理といった過酷な殺菌条件を有するレトルト殺菌を行った場合においでも、顕著にバター含有乳化物や、バター含有飲料のミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿等を抑制することができる。
【0041】
本発明のバター含有乳化物とバター含有乳化物入り飲料には、その効果を妨げない範囲において、乳製品や飲料に一般的に使用される成分、天然香料、合成香料等の香料類、プロテアーゼ等の酵素、カラメル色素等の着色料、調味料、重炭酸ソーダ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、クエン酸ナトリウム、苛性ソーダ等のpH調整剤等を添加することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲内において、前述以外の乳化剤も併用することができ、係る乳化剤として、具体的にはグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル、ユッカ抽出物、サポニン、レシチン、酵素分解レシチン、ポリソルベート等を添加することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明は
これらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは、「質量部
」を意味するものとする。
【0043】
実験例1:バター含有乳化物の調製(1)
表1、表2に示す処方に従い、重合度が5〜10のポリグリセリン脂肪酸エステル及びHLBが10以上のショ糖脂肪酸エステルを用いて、実施例1〜9のバター含有乳化物を調製した。また、比較例1として重合度が3のポリグリセリン脂肪酸エステルとHLBが10以上のショ糖脂肪酸エステルの組み合せ、比較例2として重合度が5のポリグリセリン脂肪酸エステルとHLBが7のショ糖脂肪酸エステルの組み合せを用いて比較例のバター含有乳化物を調製した。同様にして、重合度が5のポリグリセリン脂肪酸エステル単独(比較例3、5)、HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステル単独(比較例4、6)及び重合度が5のポリグリセリン脂肪酸エステル及びHLBが10以上のショ糖脂肪酸エステルの組合せ(比較例7)を用いてバター含有乳化物を調製した。なお、比較例1〜4、比較例7は乳化粒子の平均粒子径を0.05〜3μmに調整することなくバター含有乳化物を調製した。詳細には、各ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを粉体混合したものを、液糖とイオン交換水の混合液に加え、60℃10分間撹拌溶解後、撹拌しながら予め60℃に加熱して溶解したバターを加えて60℃10分間撹拌混合した。これを品温60℃にてバルブ式ホモゲナイザーにて処理(1段10MPa、2段5MPa)を行い、それぞれ、実施例1〜9又は比較例1〜7のバター含有乳化物を調製した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
得られたバター含有乳化物(実施例1〜9、比較例1〜7)を60℃、室温、5℃にて2週間保存後の状態、香味について観察した。あわせて保存後の乳化粒子の平均粒子径を表3に示す。なお、平均粒子径は(株)島津製作所製のレーザ回析式粒度分布測定装置SALD−2200にて測定した。評価基準を表4に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
注1)「とても良い」とは、保存前と全ての保存区で状態、香味共に◎であり、粒子径が0.06〜1.2μmのもの。
注2)「良好」とは、保存前と全ての保存区で状態、香味共に◎であり、粒子径が0.06〜2.0μmのもの。
【0050】
表3に示すように、実施例1〜9のバター含有乳化物においては、比較例1〜7に比べて、乳化粒子の変化や凝集による分離、結晶化(固形化)のいずれに関しても顕著な抑制効果が見られ、且つ香味も良好でバター含有乳化物の風味に影響を及ぼさない結果であった。一方、ショ糖脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合であっても、HLBが10未満のショ糖脂肪酸エステル(比較例2)や、重合度が3であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合(比較例1)、0.05〜3μmに乳化粒子の平均粒子径を調整した場合であってもポリグリセリン脂肪酸エステル単独、ショ糖脂肪酸エステルを単独で用いた場合(比較例3、5、比較例4、6)は、その乳化粒子の平均粒子径を0.05〜3μmに調整するしないに関わらず、保存中の分離や結晶化を抑制することができなかった。更には、HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステル及び重合度が5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合であっても、その乳化粒子の平均粒子径を0.05〜3μmに調整しなかった場合(比較例7)は、5℃といった低温保存した場合であっても、バター含有乳化物の凝集や分離、結晶化を抑制することはできなかった。
【0051】
実験例2:バター含有乳化物の調製(2)
表5、表6に示す処方に従い、実施例10〜19のバター含有乳化物を調製した。詳細には、重合度が5〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルとHLBが10以上のショ糖脂肪酸エステルを粉体混合したものを、果糖ぶどう糖液糖とイオン交換水の混合液に加え、60℃10分間撹拌溶解後、撹拌しながら予め60℃に加熱して溶解したバターを加えて60℃10分間撹拌混合した。これを品温60℃にてバブル式ホモゲナイザーにて所定条件で処理を行い、それぞれ、実施例10〜19バター含有乳化物を調製した。また、比較例として、重合度が3のポリグリセリン脂肪酸エステルとHLBが10以上のショ糖脂肪酸エステルの組み合せを用いて比較例8のバター含有乳化物を調製した。
【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

【0054】
得られたバター含有乳化物(実施例10〜19、比較例8)を実験例1と同様に、60℃、室温、5℃にて2週間保存後の状態、香味について観察した。あわせて保存後の乳化粒子の平均粒子径を表7に示す。
【0055】
【表7】

【0056】
表6に示すように、実施例10〜19のバター含有乳化物は、20〜30質量%といった高いバター含有量を有し、更には糖度が高いバター含有乳化物にも関わらず、乳化粒子の変化や凝集による分離、結晶化(固形化)のいずれに関しても顕著な抑制効果が見られ、且つ香味も良好でバター乳化物の風味に影響を及ぼさないバター含有乳化物を調製することができた。一方、ショ糖脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合であっても、重合度が3であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合は(比較例8)、保存中の分離や結晶化を抑制することができなかった。
【0057】
実験例3:バター含有乳化物入りミルクコーヒー(缶コーヒー)の調製
表8に示す処方に従い、乳飲料用安定剤と、砂糖と粉体混合し、この混合物をイオン交換水に加え、75℃10分間加熱溶解後、室温まで冷却し、牛乳、バター乳化物、重曹溶液を添加した。コーヒー生豆を粉砕し、豆量の7倍量の熱湯を加え、40分間浸漬後ろ過し、20℃まで冷却した抽出液を更に添加し、水にて全量補正後、70℃まで加温し、バルブ式ホモゲナイザーにて1段目15MPa、2段目5MPaの圧力で処理した。ホモゲナイズ後、缶に充填、密封し、その後、レトルト殺菌(123℃ 23分)を行い、それぞれ、実施例20〜21又は比較例9〜10の缶入りバター含有乳化物入りミルクコーヒーを調製した。
【0058】
【表8】

【0059】
注3)実施例10の乳化剤:ポリグリセリン脂肪酸エステル(主体構成脂肪酸はステアリン酸、重合度5、HLB13)0.02%、ショ糖脂肪酸エステル(主体構成脂肪酸はステアリン酸、HLB15、モノエステル70%)0.01%
【0060】
得られたバター含有乳化物入りミルクコーヒーを60℃、室温にて4週間保存した後、2℃1晩保存後開缶し、ミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿について観察した結果を表9に、評価基準を表10に示す。
【0061】
【表9】

【0062】
【表10】

【0063】
表9より、HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステル及び重合度が5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、乳化粒子の平均粒子径が0.05〜3μmであるバター含有乳化物を用いて調製されたミルクコーヒー(実施例20、21)は、比較例9、10に比べてミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿といった現象が顕著に抑制されたことが分かる。一方、バターより取り扱いに優れた牛乳を用いて、同程度の脂肪含有量となるように調製したミルクコーヒー(比較例9)は、乳飲料用安定剤を用いても状態が悪く、実施例よりも劣る結果であった。また、実施例20と同じ乳化剤を用いた場合であっても、いったんバター含有水中油型乳化物を調製することなくバター含有飲料を調製した場合は(比較例10)、HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステル及び重合度が5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合であっても、バター含有飲料のミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿を防止することはできなかった。更に、バター乳化物を使用した実施例20、21は牛乳のみを使用した比較例9や予め乳化物を調製することなくバターを使用している比較例10に比べてバター風味に優れており、ミルク感、濃厚感が強く、風味良好なものであった。
【0064】
実施例22:バター含有乳化物入り茶飲料
表11の処方に従い、乳飲料用安定剤と砂糖を粉体混合し、この粉体混合物をイオン交換水に加え、75℃10分間加熱溶解後、室温まで冷却し、予め70℃10分間加熱溶解した脱脂粉乳溶液、バター乳化物、重曹溶液を添加した。茶葉に茶葉量の35倍量の90〜95℃のお湯を加え、90℃〜95℃で5分間攪拌浸漬した後ろ紙ろ過し、室温まで冷却した抽出液を更に添加し、イオン交換水にて全量補正後、70℃まで加温し、バルブ式ホモゲナイザーにて第1段目10MPa 、第2段目5MPaの圧力で処理した。ホモゲナイズ後容器に充填し、プレート殺菌(130℃ 2秒)を行いバター含有乳化物入り茶飲料を調製した。
【0065】
【表11】

【0066】
得られたバター含有乳化物入り茶飲料を10℃にて2週間保存後、ミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿について観察したが、ミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿とも見られず、風味においてもバター風味に優れており、ミルク感、濃厚感が強く、風味良好なものであり、経変臭もみられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
バター含量が多い水中油型乳化物の場合、乳化物の保存時に生じる、凝集や合一による乳化粒子の劣化、分離、結晶化(固形化)といった現象が抑制され、更には風味に影響のないバター含有水中油型乳化物を提供することができる。更には、該バター含有水中油型乳化物を含有することにより、バター風味に優れつつも、保存した際に生じるミルク浮き、白色浮遊物、オイルオフ、沈殿といった現象が顕著に抑制されたバター含有水中油型乳化物入り飲料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バター、HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステル及び重合度が5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する水中油型乳化物であって、当該乳化物の乳化粒子の平均粒子径が0.05〜3μmであることを特徴とする、バター含有水中油型乳化物。
【請求項2】
ショ糖脂肪酸エステルの主体構成脂肪酸がステアリン酸もしくはパルミチン酸であり、モノエステル含量が50%以上である、請求項1に記載のバター含有水中油型乳化物。
【請求項3】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの主体構成脂肪酸がステアリン酸もしくはオレイン酸であり、HLBが10〜19である、請求項1又は2に記載のバター含有水中油型乳化物。
【請求項4】
バターの含有量が5〜30質量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のバター含有水中油型乳化物。
【請求項5】
HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステルと重合度が5〜10であるポリグリセリン脂肪酸エステルの配合比が重量換算で、1:1〜1:5である、請求項1〜4のいずれかに記載のバター含有水中油型乳化物。
【請求項6】
水分活性が0.7以下である請求項1〜5のいずれかに記載のバター含有水中油型乳化物。
【請求項7】
飲料に添加される乳化物である、請求項1〜6のいずれかに記載のバター含有水中油型乳化物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のバター含有水中油型乳化物を含有することを特徴とする、密封容器入りバター含有飲料。

【公開番号】特開2008−212107(P2008−212107A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57046(P2007−57046)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】