説明

バックボード伝送方法、バックボード伝送装置及び基板ユニット

【課題】高速度のバックボード伝送において、コネクタ部分でのインピーダンス不整合による反射波の影響を除去し、パルスを正確に受信し、ビットを正確に判別可能とするバックボード伝送方法、バックボード伝送装置及び基板ユニットを提供する。
【解決手段】本発明のバックボード伝送方法は、基板ユニット間で受け渡される信号波と同一特性のキャンセル波生成用信号波をモニタし、該信号波に対する反射波の遅延時間及び利得を検出する信号波モニタ工程と、信号波モニタ工程で検出された遅延時間に基づいてキャンセル波生成用信号波の遅延調整を行う遅延調整工程と、信号波モニタ工程で検出された利得に基づいてキャンセル波生成用信号波の利得調整を行う利得調整工程と、遅延調整工程及び利得調整工程によるキャンセル波生成用信号波の波形調整により生成されたキャンセル波を信号波に重畳して反射波をキャンセルする反射波キャンセル工程とを含んだ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路が搭載された基板ユニットを送信側と受信側に配し、これら送信側基板ユニットと受信側基板ユニットとの間でバックボードを介した信号波による通信を行う際に、該基板ユニットを該バックボードに接続するコネクタにおいて発生して該信号波に重畳される反射波をキャンセルするバックボード伝送方法、バックボード伝送装置及び基板ユニットに関し、特に、バックボード伝送における高速通信の信頼性を確保することが可能なバックボード伝送方法、バックボード伝送装置及び基板ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器は、集積回路を含む電子回路を搭載した基板ユニットをバックボードを介して接続することにより構成されることが一般的である。バックボードには、基板ユニットの出力端子ピンを挿入するためのコネクタが配置されている。コネクタに出力端子ピンを挿入することにより、基板ユニットとバックボードとが電気的に接続されることとなる。なお、バックボードを介した基板ユニット間の通信をバックボード伝送という。
【0003】
ところで、電子機器として通信網の中継器を例に取ると、通信量の増大に伴って、該中継器の処理能力の向上が図られてきている。従来は、中継器の処理能力の向上のために、該中継器のチャネルの増加させることにより対応することが一般的であった。しかし、チャネルの増加に伴って中継器の構成部品が多くなり、中継器が大型化してしまうという問題点があった。
【0004】
これに対し、中継器の大型化を招来することなく処理能力を向上させるために、チャネルを増加させずに、1チャネルの処理速度を向上させることが検討されている。しかし、このチャネルの処理速度の向上には、バックボード伝送の高速通信の信頼性がボトルネックとなっていた。
【0005】
基板ユニットとバックボードとの間の接続は、ピンをスルーホールと呼ばれる穴へ嵌合することによりなされるが、ピンとスルーホールとの間で接触する部分と接触しない部分が存在するために、該接触しない部分がスタブと呼ばれる、電気回路的に迂回する部分となってしまう。
【0006】
バックボード伝送における高速通信では、スタブにおいて発生する遅延波が直接波に重ねあわされることによりノイズとなる。また、このノイズによって、直接波により搬送される通信信号の利得が損失を被ることとなる。即ち、このノイズの発生が、バックボード伝送の高速化のネックとなり、高速通信の信頼性を損ねていた。
【0007】
そこで、例えば、非特許文献1には、スタブの発生を回避し、以ってノイズとなる遅延波の発生を抑止することができる基板ユニットとバックボードとの接続コネクタを含むバックボード伝送方法が開示されている。このバックボード伝送方法によれば、10Gbps程度の高速通信において、ノイズの発生や通信信号の利得損失を防止し、高速通信の信頼性を確保することができる。
【0008】
【非特許文献1】三菱電機株式会社、“世界で初めて速度10Gbps、距離50mmの中継器内ボード間伝送を実証”、[online]、2003年10月2日、ニュースリリース、[平成18年2月1日検索]、インターネット<URL:http://www.mitsubishielectric.co.jp/news-data/2003/pdf/1002-b.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記非特許文献1に代表される代表技術では、高々10Gbps程度の高速通信の信頼性を確保するに止まり、近年の更なる速度の高速通信に対応するものではない。具体的には、バックボード伝送における高速通信では、基板ユニットとコネクタ部分とのインピーダンス不整合による反射波の影響が大きな問題となる。
【0010】
低速通信であれば、1タイムスロット時間内に反射波の影響が収まり、1ビットのパルスの波形に影響を与えるのみであるが、高速通信であれば、タイムスロットが短くなるために、複数のタイムスロット時間内の複数ビットのパルスに影響を与えるようになる。このために、パルスのビットを正確に受信することが不可能となってしまっていた。
【0011】
このことから、更なる高速度のバックボード伝送において、コネクタ部分でのインピーダンス不整合による反射波の影響を除去し、パルスを正確に受信し、ビットを正確に判別可能とすることがきわめて重要な課題となっている。
【0012】
本発明は、上記問題点(課題)を解消するためになされたものであって、更なる高速度のバックボード伝送において、コネクタ部分でのインピーダンス不整合による反射波の影響を除去し、パルスを正確に受信し、ビットを正確に判別可能とするバックボード伝送方法、バックボード伝送装置及び基板ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した問題を解決し、目的を達成するため、本発明の一つの態様は、集積回路が搭載された基板ユニットを送信側と受信側に配し、これら送信側基板ユニットと受信側基板ユニットとの間でバックボードを介した信号波による通信を行う際に、該基板ユニットを該バックボードに接続するコネクタにおいて発生して該信号波に重畳される反射波をキャンセルするバックボード伝送方法であって、前記基板ユニット間で受け渡される前記信号波をモニタし、該信号波に対する前記反射波の遅延時間及び利得を検出する信号波モニタ工程と、前記信号波モニタ工程で検出された前記遅延時間に基づいて前記信号波と同一特性のキャンセル波生成用信号波の遅延調整を行う遅延調整工程と、前記信号波モニタ工程で検出された前記利得に基づいて前記キャンセル波生成用信号波の利得調整を行う利得調整工程と、前記遅延調整工程及び前記利得調整工程により波形調整された前記キャンセル波生成用信号波を前記信号波に重畳して前記反射波をキャンセルする反射波キャンセル工程とを含んだことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の他の態様は、上記発明の態様において、前記キャンセル波生成用信号波は、前記送信側基板ユニットに含まれるサンプルパルス発生工程で周期的に発生され、擬似インピーダンスを通過したサンプルパルスであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の他の態様は、集積回路が搭載された基板ユニットを送信側と受信側に配し、これら送信側基板ユニットと受信側基板ユニットとの間でバックボードを介した信号波による通信を行う際に、該基板ユニットを該バックボードに接続するコネクタにおいて発生して該信号波に重畳される反射波をキャンセルするバックボード伝送装置であって、前記基板ユニット間で受け渡される前記信号波をモニタし、該信号波に対する前記反射波の遅延時間及び利得を検出する信号波モニタ手段と、前記信号波モニタ手段により検出された前記遅延時間に基づいて前記信号波と同一特性のキャンセル波生成用信号波の遅延調整を行う遅延調整手段と、前記信号波モニタ手段により検出された前記利得に基づいて前記キャンセル波生成用信号波の利得調整を行う利得調整手段と、前記遅延調整手段及び前記利得調整手段により波形調整された前記キャンセル波生成用信号波を前記信号波に重畳して前記反射波をキャンセルする反射波キャンセル手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の他の態様は、上記発明の態様において、サンプルパルスを周期的に発生するサンプルパルス発生手段をさらに備え、前記キャンセル波生成用信号波は、擬似インピーダンスを通過した前記サンプルパルスであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の他の態様は、集積回路が搭載された基板ユニットを送信側と受信側に配し、これら送信側基板ユニットと受信側基板ユニットとの間でバックボードを介した信号波による通信を行う際に、該基板ユニットを該バックボードに接続するコネクタにおいて発生して該信号波に重畳される反射波をキャンセルするバックボード伝送における前記基板ユニットであって、前記基板ユニット間で受け渡される前記信号波をモニタし、該信号波に対する前記反射波の遅延時間及び利得を検出する信号波モニタ手段と、前記信号波モニタ手段により検出された前記遅延時間に基づいて前記信号波と同一特性のキャンセル波生成用信号波の遅延調整を行う遅延調整手段と、前記信号波モニタ手段により検出された前記利得に基づいて前記キャンセル波生成用信号波の利得調整を行う利得調整手段と、前記遅延調整手段及び前記利得調整手段により波形調整された前記キャンセル波生成用信号波を前記信号波に重畳して前記反射波をキャンセルする反射波キャンセル手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バックボードを介した基板ユニット間の伝送において、バックボードと基板ユニットとを接続するコネクタ部分で発生する反射波をキャンセルすることが可能となるので、かかる伝送の高速通信における反射波の影響を抑止し、通信の信頼性を確保、向上させることができる。
【0019】
また、本発明によれば、キャンセル波生成用信号波が送信側基板ユニットから周期的に発生され送信されるサンプルパルスであるので、周辺環境変化に応じて変化する反射波の特性を迅速に把握して、的確に該反射波をキャンセルすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るバックボード伝送方法、バックボード伝送装置及び基板ユニットの好適な実施例を詳細に説明する。本発明におけるバックボード伝送は、シリアル通信によるデジタル信号を送信するものであるとするが、これに限らず、電源を供給するものであってもよい。なお、以下に示す実施例1では、受信側の基板ユニットにおいて反射波の特性をモニタし、該モニタ結果に基づいて反射波をキャンセルするバックボード伝送方法を示す。また、実施例2では、受信側の基板ユニットにおいて反射波の特性をモニタし、該モニタ結果に基づいて送信側の基板ユニットにおいて反射波をキャンセルするバックボード伝送方法等の種々の変形例を示すこととする。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明に係るバックボード伝送方法の概要を説明する説明図である。同図に示すように、バックボード(BWB、バックワイヤードボード)が有するシートコネクタ(コネクタ)に、バックボードに垂直になるように2枚のドーターボード(基板ユニット)が挿入されている。ドーターボードは、LSIなどの集積回路が搭載されるものである。このようにして、バックボードを介して該2枚のドーターボードが電気回路として接続されることとなる。
【0022】
なお、同図では、説明の簡略化のために、バックボードに2枚のドーターボードが接続されることとしているが、バックボードには2枚以上のドーターボードが接続されることが一般的である。実施例1では、2枚のドーターボード間での通信で発生する反射波のキャンセルについて説明を行うため、このように簡略化して図示している。
【0023】
従来のバックボード伝送方法では、送信側ドーターボードから送信された信号の直接波が、受信側ドーターボードのシートコネクタで反射して反射波が発生する。この反射波は、バックボード上で搬送路を構成する回路のバックボードインピーダンスが、シートコネクタのインピーダンスと一致しないために発生する。これに対し、ドーターボードの集積回路の出力ピンからシートコネクタまでの間は、この距離を短くし、かつバッファを介在させることによってインピーダンスマッチングを行い、反射波の発生を防ぐことができる。前述の反射波は、直接波の搬送路を逆行して伝播し、送信側ドーターボードのシートコネクタでさらに反射してさらなる反射波が発生する。該反射波が直接波に重ね合わされて、直接波の波形を乱すノイズとなる(図1(1))。
【0024】
そこで、本発明のバックボード伝送方法では、第2の反射波を打ち消すことが可能な特性を持つキャンセル波を発生させ、反射波が重ねあわされた直接波に重ね合わせる(図1(2))。すると、反射波がキャンセル波によりキャンセルされ、ノイズ混入の無い直接波が得られる(図1(3))。このようにして、直接波から反射波を除去するところに、本発明の特徴がある。
【0025】
次に、図1に示した直接波への反射波の重ね合わせについて説明する。図2は、直接波に反射波が重畳される状況を説明する図である。なお、同図に示す送信側及び受信側の2つのシートコネクタは、同一特性を持つものであることとする。同図に示すように、送信側ドーターボードから通信信号として、n(ビット番号)及びt(時刻)の関数で表されるパルス波A(n,t)が送信される。シートコネクタでのパルス波の反射率をRとすると、送信されたパルス波A(n,t)のうち直接波として受信側シートコネクタへ到達する直接受信波は、次式で表される。
【0026】
【数1】

【0027】
受信側ドーターボードのシートコネクタで反射した反射波は、送信側ドーターボード及び受信側ドーターボードの間の搬送路を逆行し、さらに送信側ドーターボードのシートコネクタで反射する。受信側ドーターボードのシートコネクタで反射してから送信側ドーターボードのシートコネクタで反射するまでの時間をTとする。この反射波のうち、受信側のシートコネクタにおける反射により利得が損失する。即ち、シートコネクタで2回反射して、さらに受信側シートコネクタで利得が損失した第1の反射波は、時間Tだけ遅延するので、次式で表される。
【0028】
【数2】

【0029】
同様にして、受信側シートコネクタで反射した後に送信側シートコネクタで反射することを1回の反射とすると、第(i−1)番目の反射波が、受信側シートコネクタ及び送信側シートコネクタでさらに1回反射して第i番目に発生する第iの反射波は、次式で表現される。
【0030】
【数3】

【0031】
したがって、第iの反射波(i=0、1、・・・、∞)が全て直接受信波に重畳されることから、反射波の影響を受けた後の送信波は、次式で表現される。なお、直接受信波に重畳され、信号不正を引き起こす原因となる反射波は、その利得がビットオンと認識されうる所定閾値以上である場合に限られる。このため、第iの反射波(i=0、1、・・・、∞)が全て直接受信波に重畳される訳ではなく、所定値以下のiについて第iの反射波が直接受信波に重畳されることとなる。しかし、実施例1では、説明の便宜上、反射波の利得と所定閾値との比較を考慮しないものとする。
【0032】
【数4】

【0033】
次に、本発明の特徴について説明する。図3は、本発明の特徴を説明する図である。同図に示すように、I0=A(n,t)で表される出力波が分岐バッファに入力され、反射波が重畳された送信波I1が2方向へ分岐される。ここでI1は、次式で表される。
【0034】
【数5】

【0035】
一方の送信波I1は、差動増幅回路へ直接入力される。もう一方の送信波I1には、先ず波形遅延処理が行われる。波形遅延処理は、I1の各項をTだけ遅延処理するものである。これにより、波形遅延処理された送信波I2は、次式で表される。
【0036】
【数6】

【0037】
次に、このI2には、反射波抽出処理が行われる。反射波抽出処理では、I2の反射成分I3を、反射率R2を乗じて算出する。これにより、反射波抽出処理された送信波I3は、次式で表される。
【0038】
【数7】

【0039】
次に、送信波I3が差動増幅回路へ入力されて出力反転され、別に入力された送信波I1に重畳される、即ち、I1−I3を計算することにより、直接波の成分であるI4を抽出することができる。なお、I4は、次式で表される。
【0040】
【数8】

【0041】
次に、実施例1の反射波キャンセル回路の構成について説明する。図4は、反射波キャンセル回路の構成を示す図である。同図に示すように、反射波キャンセル回路Uは、受信波形モニタ部100と、遅延調整部150と、利得調整部160と、分岐バッファ200と、差動増幅部300とを有する。なお、反射波キャンセル回路Uは、送信側ドーターボード、バックボード及び受信側ドーターボードに跨って構成されるものであるが、概念的構成では、何れの構成要素が何れのボードに搭載されるかの区別は問わない。
【0042】
分岐バッファ200は、入力された送信側ドーターボードの集積回路からの出力波を2つに分岐させるバッファである。また、分岐させた出力波の利得を上げる増幅器の役割も担う。分岐させられた2つの出力波は、同一特性を持つものである。一方の第1の分岐出力波は差動増幅部300へ入力され、もう一方の第2の分岐出力波は、受信波形モニタ部100及び遅延調整部150へ入力される。
【0043】
受信波形モニタ部100は、第2の分岐出力波に重畳されている遅延波の遅延時間T及び利得の減衰の程度を示す反射率Rを検出するものである。これら遅延時間T及び反射率Rは、遅延調整部150及び利得調整部160へそれぞれ入力される。遅延時間Tの入力を受け、遅延調整部150は、第2の分岐出力波の遅延調整を行う。また、反射率Rの入力を受け、利得調整部160は、第2の分岐出力波の利得調整を行う。
【0044】
差動増幅部300は、第1の分岐出力波及び利得調整部160により利得調整された第2の分岐出力波の入力を受け、第1の分岐出力波に出力反転した第2の分岐出力波を重畳することによって、反射波の成分がキャンセルされた出力波を得ることとなる。
【0045】
次に、図4に示した反射波キャンセル回路Uを実装した場合の構成について説明する。図5は、バックボードを介して接続されたドーターボード間における反射波キャンセル回路の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、反射波キャンセル回路Uは、送信側集積回路510及び分岐バッファ200を有する送信側ドーターボード500と、シートコネクタ610a及び610bを有するバックボード600と、受信波形モニタ部100、遅延調整部150、利得調整部160、差動増幅部300及び受信側集積回路710を有する受信側ドーターボード700とを備える。
【0046】
送信側集積回路510は、LSIなど多数の信号出力端子を有する電子部品である。該信号出力端子からシリアル波で搬送されるデジタル信号が出力される。送信側集積回路510の信号出力端子から出力される信号波は、分岐バッファ200へ入力され、同一特性を持つ第1の分岐出力波及び第2の分岐出力波へ分岐される。第1の分岐出力波及び第2の分岐出力波は、シートコネクタ610aからバックボード600の配線回路をそれぞれ経由して、シートコネクタ610bから受信側ドーターボード700へそれぞれ入力される。
【0047】
受信側ドーターボード700へ入力された第1の分岐出力波は、差動増幅部300へ直接入力されるものである。一方で、受信側ドーターボード700へ入力された第2の分岐出力波は、受信波形モニタ部100及び遅延調整部150へそれぞれ入力される。受信波形モニタ部100から遅延時間Tの入力を受けた遅延調整部150は、第2の分岐出力波の遅延調整を行う。さらに、受信波形モニタ部100から反射率Rの入力を受けた利得調整部160は、遅延調整部150により遅延調整された第2の分岐出力波の利得調整を行う。そして、前述の第1の分岐出力波及び利得調整部160により利得調整された第2の分岐出力波の入力を受け、差動調整部300は、反射波成分がキャンセルされた直接波を抽出する。この反射波成分がキャンセルされた直接波が受信側集積回路710により受信され、所定のデジタル情報が正確に受け渡されることとなる。
【0048】
次に、図4及び5に示した受信波形モニタ部の構成について説明する。図6は、図4及び5に示した受信波形モニタ部の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、受信波形モニタ部100は、信号入力部101と、増幅器102a及び102bと、アドレスカウンタ103a及びカウンタ103bと、コンパレータ104と、DELAY又は論理ゲート105と、ピークホールド回路106と、ADコンバータ107と、メモリ108a及び108bと、遅延時間出力部109aと、振幅ピーク出力部109bとを備える。
【0049】
信号入力部101へ入力された入力信号は、第1の入力信号及び第2の入力信号に分岐される。第1の入力信号は遅延時間を検出するために利用され、第2の入力信号は利得減衰率を算出するための振幅(利得)ピークを検出するために利用される。第1の入力信号は増幅器102aで利得が増幅され、第2の入力信号は増幅器102bで利得が増幅される。
【0050】
増幅器102aで利得が増幅された第1の入力信号は、アドレスカウンタ103aに入力される信号と、メモリ108aに直接入力される信号と、コンパレータ104に入力される信号とDELAY又は論理ゲート105に入力される信号とに分岐される。増幅器102aから信号を受け取ったアドレスカウンタ103aはメモリアドレスをインクリメントし、該信号のパルスの立ち上がりの検出タイミングにおいてカウントされているメモリアドレス(A)をメモリ108a及び108bへ受け渡す。コンパレータ104は、最後にカウンタ103bをクリアしてから最初に到達した最大振幅パルスの到達タイミングでカウンタ103bをクリアする。カウンタ103bはメモリアドレスをインクリメントし、前述のカウンタ103bのクリアタイミングにおいてカウントされているメモリアドレス(B)をメモリ108aへ受け渡す。遅延時間出力部109aは、メモリアドレス(A)及び(B)から反射波の遅延時間Tを算出し、遅延調整部150へ受け渡す。
【0051】
DELAY又は論理ゲート105は、第1の入力信号の遅延波をピークホールド回路106に入力し、入力された第2の入力信号との比較から反射波の最大振幅を検出する。ADコンバータ107は、この最大振幅の情報をデジタル変換してメモリ108bへ受け渡す。振幅ピーク出力部109bは、直接波の最大振幅ピークに対する遅延波の最大振幅ピークの比をとることによって反射率(減衰率)を算出し、利得調整部160へ受け渡す。
【0052】
なお、増幅器102a及び102bは、反射波のモニタ精度を向上させるために設けられるものであって、十分なモニタ精度が得られる場合には省略可能である。
【0053】
次に、図6に示したアドレスカウンタ103a及びカウンタ103bの構成について説明する。図7は、図6に示したアドレスカウンタ103a及びカウンタ103bの概略構成を示す図である。同図に示すように、アドレスカウンタ103a及びカウンタ103bは、周期8Tの発振器120と、時間Tの位相遅延部121b、時間2Tの位相遅延部121c、時間3Tの位相遅延部121d、時間4Tの位相遅延部121e、時間5Tの位相遅延部121f、時間6Tの位相遅延部121g及び時間7Tの位相遅延部121hと、第1カウンタ122a、第2カウンタ122b、第3カウンタ122c、第4カウンタ122d、第5カウンタ122e、第6カウンタ122f、第7カウンタ122g及び第8カウンタ122hと、デコード回路123とを備える。
【0054】
第1カウンタ122a〜第8カウンタ122hは、同一の1ビットカウンタであって、周期8Tで作動するものである。第1カウンタ122aは発振器120と直接接続され、発振器120本来の周期で作動する。第2カウンタ122bは位相遅延部121bを介して発振器120と接続され、発振器120本来の周期からTだけ遅延する周期で作動する。第3カウンタ122cは位相遅延部121cを介して発振器120と接続され、発振器120本来の周期から2Tだけ遅延する周期で作動する。第4カウンタ122dは位相遅延部121dを介して発振器120と接続され、発振器120本来の周期から3Tだけ遅延する周期で作動する。第5カウンタ122eは位相遅延部121eを介して発振器120と接続され、発振器120本来の周期から4Tだけ遅延する周期で作動する。第6カウンタ122fは位相遅延部121fを介して発振器120と接続され、発振器120本来の周期から5Tだけ遅延する周期で作動する。第7カウンタ122gは位相遅延部121gを介して発振器120と接続され、発振器120本来の周期から6Tだけ遅延する周期で作動する。第8カウンタ122hは位相遅延部121hを介して発振器120と接続され、発振器120本来の周期から7Tだけ遅延する周期で作動する。
【0055】
デコード回路123は、第1カウンタ122a〜第8カウンタ122hから入力されたカウンタ計数ビットをデコードするものである。また、各カウンタには、クリア信号の入力線が接続されている。
【0056】
このように、カウンタが動作可能なクロックを分岐させ、位相を遅延させて各カウンタを動作させることにより、1ビットカウンタを単独で使用するよりもより高速なビットレートの出力波に重畳されている反射波の遅延時間を検出することが可能となる。
【実施例2】
【0057】
以上、本発明の実施例1を説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で、更に種々の異なる実施例で実施されてもよいものである。以下に、変形例を示すこととする。
【0058】
図8〜10は、図6に示した受信波形モニタ部100の構成の変形例の一例を示す機能ブロック図である。
【0059】
図8は、図6の受信波形モニタ部100の信号入力部101と増幅器102a及び102bとの間に擬似インピーダンス110を設けた構成である。該擬似インピーダンス110を設けることによって、信号入力部101へ入力する入力信号を、送信側集積回路とは別個のパルス発生装置からサンプル的に送信される周期単パルス信号(サンプルパルス)とすることができる。このように、定期的に送信されるサンプルパルスを使用して遅延波の特性を検出するようにすると、温度等の環境変化によって影響を受けるインピーダンスの変化に迅速に対応することができる。
【0060】
図9は、図6の受信波形モニタ部100の増幅器102aから分岐される分岐信号を入力させるNOTゲート111を追加した構成である。この場合、立ち上がりエッジ位置遅延時間出力部109a−1は、遅延時間出力部109aと同様に、パルスの立ち上がりの遅延時間T1を算出する。算出NOTゲート111は、入力信号を反転させ、該反転信号をアドレスカウンタ103c及びメモリ109cへ受け渡す。
【0061】
アドレスカウンタ103cはアドレスカウンタ103aと同様に、パルスの立ち上がりを検出することができる。入力信号が反転信号であるため、パルスの立ち上がりを検出することによって、反転前の信号のパルスの立ち下がりを検出することになる。このパルスの立ち上がりのタイミングの情報をメモリ108cへ受け渡す。また、メモリ108cには、カウンタ103bから最大振幅パルスの到達タイミングの情報が受け渡されている。立ち下がりエッジ位置遅延時間出力部109a−2は、パルスの立ち上がりのタイミングの情報、最大振幅パルスの到達タイミングの情報及びNOTゲート111から直接入力された入力波から、パルスの立ち下りの遅延時間T2を算出する。
【0062】
そして、パルスの立ち上がりの遅延時間T1及びパルスの立ち下りの遅延時間T2は、共に遅延調整部150へ入力される。該遅延調整部150は、T1及びT2の平均を当該パルスの遅延時間として採用する。
【0063】
図10は、図9の受信波形モニタ部100の信号入力部101と増幅器102a及び102bとの間に擬似インピーダンス110を設けた構成である。この構成を取ることの目的は、図8の受信波形モニタ部100と同様である。
【0064】
図11〜15は、図5に示したバックボードを介して接続されたドーターボード間における反射波キャンセル回路Uの構成の変形例の一例を示す機能ブロック図である。
【0065】
図11は、図5に示した反射波キャンセル回路Uに比べて、遅延調整部150及び利得調整部160を、送信側ドーターボード500に配置した構成である。受信側ドーターボード700の受信波形モニタ部100において検出された反射波の遅延時間及び反射率を、遅延調整部150及び利得調整部160へ入力するために受信側ドーターボード700に遅延情報出力部130a及び利得情報出力部130bが設けられ、送信側ドーターボード500に遅延情報検知部140a及び利得情報検知部140bが設けられる。受信波形モニタ部100が出力した反射波の遅延情報は、遅延情報出力部130aからシートコネクタ610b、バックボード600及びシートコネクタ610aを経由して遅延情報検知部140aへ受け渡された後に遅延調整部150へ入力される。また、受信波形モニタ部100が出力した反射波の反射率に関する利得情報は、利得情報出力部130bからシートコネクタ610b、バックボード600及びシートコネクタ610aを経由して利得情報検知部140bへ受け渡された後に利得調整部160へ入力される。
【0066】
図12は、図11に示した反射波キャンセル回路Uに比べて、送信側集積回路510が、信号出力端子D及び反転信号出力端子xDを有することから、該反転信号出力端子xDから出力される反転信号を利用して反射波のキャンセル波を生成する構成となっている。即ち、反転信号出力端子xDから出力される反転信号をNOTゲート141を通過させさらに反転させた信号は信号出力端子Dから出力される信号と一致するものであることから、この信号波形を受信波形モニタ部100でモニタした結果を遅延調整部150及び利得調整部160で使用して反射波をキャンセルするものである。
【0067】
図13は、図12に示した反射波キャンセル回路Uに比べて、さらに送信側集積回路510が遅延調整部150を有する構成を利用するものである。このように、反転信号出力端子xDや遅延調整部150を有する送信側集積回路510を利用することによって、反射波キャンセル回路をよりコンパクトに構成することが可能となる。
【0068】
図14は、図5に示した反射波キャンセル回路Uに比べて、受信側ドーターボード700が分岐バッファ200を有する構成である。このように、分岐バッファ200は、受信側ドーターボード700又は送信側ドーターボード500の何れが備えてもよい。
【0069】
なお、以上の実施例で説明した送信側ドーターボード500と受信側ドーターボード700との間の搬送路は、1本の搬送路を双方向で共有することとしてもよいし、送信方向に応じて搬送路を分けることとしてもよい。
【0070】
図15は、図14に示した反射波キャンセル回路Uに比べて、送信側ドーターボード500が単パルス生成部530を備える構成である。単パルス生成部530は、送信側集積回路510と同一特性のサンプルパルスを周期的、単発的に発生させるものである。パルス生成部530が発生した単パルスは、シートコネクタ610a、バックボード600及びシートコネクタ610bを経て分岐バッファ200bへ入力される。送信側集積回路510が発生した信号波は、シートコネクタ610a、バックボード600及びシートコネクタ610bを経て分岐バッファ200aへ入力される。分岐バッファ200a及び分岐バッファ200bは同一のインピーダンスを持つ。このように、単パルスを送信する専用の配線を備える場合には、送信側集積回路510が発生した信号波と同一の条件となるように同一のインピーダンスを持つ分岐バッファを通過させるようにしなければならない。なお、図15に示す反射波キャンセル回路Uの受信波形モニタ部100は、図8又は図10に示した構成をとることとなる。このように、定期的に送信されるサンプルパルスを使用して遅延波の特性を検出するようにすると、温度等の環境変化によって影響を受けるインピーダンスの変化に迅速に対応することができる。
【0071】
次に、前述の反射波が複合反射である場合の複合反射波のキャンセル方法及びキャンセル回路の多段構成について説明する。図16は、複合反射波のキャンセル方法を説明する図である。
【0072】
複合反射波は、遅延時間及び反射率が異なる複数の反射波が重畳されたものである。しかし、該重畳は線形加算であるために、異なる反射波キャンセル回路を多段構成にすることでそれぞれの反射波を順次キャンセルすることが可能である。
【0073】
図16に示すように、I10=A(n,t)で表される出力波が分岐バッファに入力され、反射波が複合的に重畳された送信波I11が2方向へ分岐される。ここでI11は、次式で表される。
【0074】
【数9】

【0075】
一方の送信波I11は、差動増幅回路へ直接入力される。もう一方の送信波I11には、先ず波形遅延処理が行われる。波形遅延処理は、I11の各項をT2だけ遅延処理するものである。これにより、波形遅延処理された送信波I12は、次式で表される。
【0076】
【数10】

【0077】
次に、このI12には、反射波抽出処理が行われる。反射波抽出処理では、I12の反射成分I13を、反射率R22を乗じて算出する。これにより、反射波抽出処理された送信波I13は、次式で表される。
【0078】
【数11】

【0079】
次に、送信波I13が差動増幅回路へ入力されて出力反転され、別に入力された送信波I11に重畳される、即ち、I11−I13を計算することにより、遅延時間T2、反射率R2の反射波をキャンセルした送信波であるI14を抽出することができる。なお、I14は、次式で表される。
【0080】
【数12】

【0081】
さらに同様に、I14で表される送信波が分岐バッファに入力され、遅延時間T1、反射率R1の反射波が重畳された送信波I14が2方向へ分岐される。一方の送信波I14は、差動増幅回路へ直接入力される。もう一方の送信波I14には、先ず波形遅延処理が行われる。波形遅延処理は、I14の各項をT1だけ遅延処理するものである。これにより、波形遅延処理された送信波I15は、次式で表される。
【0082】
【数13】

【0083】
次に、このI15には、反射波抽出処理が行われる。反射波抽出処理では、I15の反射成分I15を、反射率R12を乗じて算出する。これにより、反射波抽出処理された送信波I16は、次式で表される。
【0084】
【数14】

【0085】
次に、送信波I16が差動増幅回路へ入力されて出力反転され、別に入力された送信波I14に重畳される、即ち、I14−I16を計算することにより、遅延時間T1、反射率R1の反射波をキャンセルした信号波であるI17を抽出することができる。なお、I17は、次式で表される。
【0086】
【数15】

【0087】
次に、図16に示した複合反射波のキャンセル方法を実現する多段構成のキャンセル回路の構成を説明する。図17は、図16に示した複合反射波のキャンセル方法を実現する多段構成のキャンセル回路の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、キャンセル回路U1、・・・、Unは、各キャンセル回路が備える分岐バッファ200の一方の出力が入力切り替え部800へ接続されている。入力切り替え部800は、キャンセル回路U1、・・・、Unのいずれか一つの回路からの分岐信号を選択的に受信波形モニタ部100へ受け渡す。分岐信号を受信波形モニタ部100へ受け渡されているキャンセル回路が閉じて作動することとなる。
【0088】
分岐信号を受け渡された受信波形モニタ部100は、各キャンセル回路U1、・・・、Unへ受信波形モニタ結果である遅延時間及び反射率をそれぞれの遅延調整部150及び利得調整部160へ受け渡す。このようにして、入力切り替え部800を用い、各キャンセル回路U1、・・・、Unを受信波形モニタ部100に対して並列に接続することによって、複数のキャンセル回路をコンパクトに多段構成することができる。
【0089】
以上の実施例1及び2で、本発明の反射波キャンセル方法及び反射波キャンセル回路について説明したが、送信側ドーターボード500と受信側ドーターボード700との間で授受される信号において、エラー訂正や符号変換を併用することが可能である。特に、単パルスを送信した場合の反射波の到達による影響をより小さくするために、エラー訂正を用いることが効果的である。
【0090】
以上の実施例1及び2では、説明の都合上、送信側ドーターボード500と受信側ドーターボード700とに分けて機能ブロックを説明したが、1枚のドーターボードに送信側及び受信側の各機能が併せて実装されることは言うまでもない。
【0091】
本発明は、電力線ネットワークのような分岐が複数ある搬送路における反射波の影響の除去についても原理的に適用可能である。即ち、電力や電気信号など電気を搬送する搬送路において反射波の影響がある場合に本発明は適用可能である。
【0092】
(付記1)集積回路が搭載された基板ユニットを送信側と受信側に配し、これら送信側基板ユニットと受信側基板ユニットとの間でバックボードを介した信号波による通信を行う際に、該基板ユニットを該バックボードに接続するコネクタにおいて発生して該信号波に重畳される反射波をキャンセルするバックボード伝送方法であって、
前記基板ユニット間で受け渡される前記信号波をモニタし、該信号波に対する前記反射波の遅延時間及び利得を検出する信号波モニタ工程と、
前記信号波モニタ工程で検出された前記遅延時間に基づいて前記信号波と同一特性のキャンセル波生成用信号波の遅延調整を行う遅延調整工程と、
前記信号波モニタ工程で検出された前記利得に基づいて前記キャンセル波生成用信号波の利得調整を行う利得調整工程と、
前記遅延調整工程及び前記利得調整工程により波形調整された前記キャンセル波生成用信号波を前記信号波に重畳して前記反射波をキャンセルする反射波キャンセル工程と
を含んだことを特徴とするバックボード伝送方法。
【0093】
(付記2)前記キャンセル波生成用信号波は、前記送信側基板ユニットに含まれるサンプルパルス発生工程で周期的に発生され、擬似インピーダンスを通過したサンプルパルスであることを特徴とする付記1に記載のバックボード伝送方法。
【0094】
(付記3)前記受信側基板ユニットにおいて前記信号波モニタ工程、前記遅延調整工程、利得調整工程及び前記反射波キャンセル工程を含むことを特徴とする付記1に記載のバックボード伝送方法。
【0095】
(付記4)前記受信側基板ユニットにおいて前記信号波モニタ工程及び前記反射波キャンセル工程を含み、
前記送信側基板ユニットにおいて前記遅延調整工程及び前記利得調整工程を含むことを特徴とする付記1に記載のバックボード伝送方法。
【0096】
(付記5)前記送信側基板ユニットにおいて、出力端子と反転出力端子とを有する前記集積回路の該反転出力端子から出力された信号波をさらに反転出力する反転出力工程を含み、
前記反転出力工程において反転出力された信号波に対して前記遅延調整工程及び前記利得調整工程で波形調整を行って前記キャンセル波を生成することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載のバックボード伝送方法。
【0097】
(付記6)前記集積回路において前記遅延調整工程を含むことを特徴とする付記4に記載のバックボード伝送方法。
【0098】
(付記7)前記送信側基板ユニットは、前記信号波から前記キャンセル波生成用信号波を分岐させる信号波分岐工程をさらに含むことを特徴とする付記1に記載のバックボード伝送方法。
【0099】
(付記8)前記受信側基板ユニットは、前記信号波から前記キャンセル波生成用信号波を分岐させる信号波分岐工程をさらに含むことを特徴とする付記1に記載のバックボード伝送方法。
【0100】
(付記9)前記信号波モニタ工程は、前記反射波のパルスの立ち上がり時刻及び立ち下がり時刻を検出し、
前記遅延調整工程は、前記立ち上がり時刻及び前記立ち下がり時刻の平均を前記遅延時間として前記キャンセル波生成用信号波の遅延調整を行うことを特徴とする付記1に記載のバックボード伝送方法。
【0101】
(付記10)集積回路が搭載された基板ユニットを送信側と受信側に配し、これら送信側基板ユニットと受信側基板ユニットとの間でバックボードを介した信号波による通信を行う際に、該基板ユニットを該バックボードに接続するコネクタにおいて発生して該信号波に重畳される反射波をキャンセルするバックボード伝送装置であって、
前記基板ユニット間で受け渡される前記信号波をモニタし、該信号波に対する前記反射波の遅延時間及び利得を検出する信号波モニタ手段と、
前記信号波モニタ手段により検出された前記遅延時間に基づいて前記信号波と同一特性のキャンセル波生成用信号波の遅延調整を行う遅延調整手段と、
前記信号波モニタ手段により検出された前記利得に基づいて前記キャンセル波生成用信号波の利得調整を行う利得調整手段と、
前記遅延調整手段及び前記利得調整手段により波形調整された前記キャンセル波生成用信号波を前記信号波に重畳して前記反射波をキャンセルする反射波キャンセル手段と
を備えたことを特徴とするバックボード伝送装置。
【0102】
(付記11)サンプルパルスを周期的に発生するサンプルパルス発生手段をさらに備え、
前記キャンセル波生成用信号波は、擬似インピーダンスを通過した前記サンプルパルスであることを特徴とする付記10に記載のバックボード伝送装置。
【0103】
(付記12)前記受信側基板ユニットにおいて前記信号波モニタ手段、前記遅延調整手段、利得調整手段及び前記反射波キャンセル手段を備えたことを特徴とする付記10に記載のバックボード伝送装置。
【0104】
(付記13)前記受信側基板ユニットにおいて前記信号波モニタ手段及び前記反射波キャンセル手段を備え、
前記送信側基板ユニットにおいて前記遅延調整手段及び前記利得調整手段を備えたことを特徴とする付記10に記載のバックボード伝送装置。
【0105】
(付記14)前記送信側基板ユニットにおいて、出力端子と反転出力端子とを有する前記集積回路の該反転出力端子から出力された信号波をさらに反転出力する反転出力手段を備え、
前記反転出力手段により反転出力された信号波に対して前記遅延調整手段及び前記利得調整手段が波形調整を行って前記キャンセル波を生成することを特徴とする付記10〜13のいずれか一つに記載のバックボード伝送装置。
【0106】
(付記15)前記集積回路が前記遅延調整手段を備えたことを特徴とする付記13に記載のバックボード伝送装置。
【0107】
(付記16)前記送信側基板ユニットは、前記信号波から前記キャンセル波生成用信号波を分岐させる信号波分岐手段をさらに備えたことを特徴とする付記10に記載のバックボード伝送装置。
【0108】
(付記17)前記受信側基板ユニットは、前記信号波から前記キャンセル波生成用信号波を分岐させる信号波分岐手段をさらに備えたことを特徴とする付記10に記載のバックボード伝送装置。
【0109】
(付記18)前記信号波モニタ手段は、前記反射波のパルスの立ち上がり時刻及び立ち下がり時刻を検出し、
前記遅延調整手段は、前記立ち上がり時刻及び前記立ち下がり時刻の平均を前記遅延時間として前記キャンセル波生成用信号波の遅延調整を行うことを特徴とする付記10に記載のバックボード伝送装置。
【0110】
(付記19)集積回路が搭載された基板ユニットを送信側と受信側に配し、これら送信側基板ユニットと受信側基板ユニットとの間でバックボードを介した信号波による通信を行う際に、該基板ユニットを該バックボードに接続するコネクタにおいて発生して該信号波に重畳される反射波をキャンセルするバックボード伝送における前記基板ユニットであって、
前記基板ユニット間で受け渡される前記信号波をモニタし、該信号波に対する前記反射波の遅延時間及び利得を検出する信号波モニタ手段と、
前記信号波モニタ手段により検出された前記遅延時間に基づいて前記信号波と同一特性のキャンセル波生成用信号波の遅延調整を行う遅延調整手段と、
前記信号波モニタ手段により検出された前記利得に基づいて前記キャンセル波生成用信号波の利得調整を行う利得調整手段と、
前記遅延調整手段及び前記利得調整手段により波形調整された前記キャンセル波生成用信号波を前記信号波に重畳して前記反射波をキャンセルする反射波キャンセル手段と
を備えたことを特徴とする基板ユニット。
【0111】
(付記20)サンプルパルスを発生するサンプルパルス発生手段をさらに備え、
前記キャンセル波生成用信号波は、擬似インピーダンスを通過した前記サンプルパルスであることを特徴とする付記19に記載の基板ユニット。
【0112】
(付記21)他の基板ユニットへ送信するための前記サンプルパルスを生成するサンプルパルス生成手段をさらに備えたことを特徴とする付記20に記載の基板ユニット。
【0113】
(付記22)出力端子と反転出力端子とを有する前記集積回路の該反転出力端子から他の基板ユニットへ送信するために出力された信号波をさらに反転出力する反転出力手段を備えたことを特徴とする付記19〜21のいずれか一つに記載の基板ユニット。
【0114】
(付記23)前記集積回路が前記遅延調整手段を備えたことを特徴とする付記20に記載の基板ユニット。
【0115】
(付記24)前記信号波から前記キャンセル波生成用信号波を分岐させる信号波分岐手段をさらに備え、該信号波及び該キャンセル波生成用信号波を他の基板ユニットへ送信することを特徴とする付記19に記載の基板ユニット。
【0116】
(付記25)他の基板ユニットから受信した前記信号波から前記キャンセル波生成用信号波を分岐させる信号波分岐手段をさらに備えたことを特徴とする付記19に記載の基板ユニット。
【0117】
(付記26)前記信号波モニタ手段は、前記反射波のパルスの立ち上がり時刻及び立ち下がり時刻を検出し、
前記遅延調整手段は、前記立ち上がり時刻及び前記立ち下がり時刻の平均を前記遅延時間として前記キャンセル波生成用信号波の遅延調整を行うことを特徴とする付記19に記載の基板ユニット。
【0118】
(付記27)前記信号波モニタ手段は、所定時間の所定整数倍の周期を有する発振器に、該所定整数分の個数の1ビットカウンタが並列に接続され、これら複数の1ビットカウンタを該所定時間毎に巡回して作動させることにより、該1ビットカウンタの該所定整数倍の精度で前記遅延時間を検出可能なカウンタを有することを特徴とする付記19に記載の基板ユニット。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、送信側基板ユニットと受信側基板ユニットとの間でバックボードを介した信号波による通信を行う際に、基板ユニットをバックボードに接続するコネクタにおいて発生して信号波に重畳される反射波をキャンセルしたい場合に有用であり、特に、バックボード伝送における高速通信の信頼性を確保したい場合に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の概要を説明する説明図である。
【図2】直接波に反射波が重畳される状況を説明する図である。
【図3】本発明の特徴を説明する図である。
【図4】反射波キャンセル回路の構成を示す図である。
【図5】バックボードを介して接続されたドーターボード間における反射波キャンセル回路の構成を示す機能ブロック図である。
【図6】受信波形モニタ部の構成を示す機能ブロック図である。
【図7】カウンタの概略構成を示す図である。
【図8】受信波形モニタ部の構成の変形例の一例を示す機能ブロック図である。
【図9】受信波形モニタ部の構成の変形例の一例を示す機能ブロック図である。
【図10】受信波形モニタ部の構成の変形例の一例を示す機能ブロック図である。
【図11】バックボードを介して接続されたドーターボード間における反射波キャンセル回路の構成の変形例を示す機能ブロック図である。
【図12】バックボードを介して接続されたドーターボード間における反射波キャンセル回路の構成の変形例を示す機能ブロック図である。
【図13】バックボードを介して接続されたドーターボード間における反射波キャンセル回路の構成の変形例を示す機能ブロック図である。
【図14】バックボードを介して接続されたドーターボード間における反射波キャンセル回路の構成の変形例を示す機能ブロック図である。
【図15】バックボードを介して接続されたドーターボード間における反射波キャンセル回路の構成の変形例を示す機能ブロック図である。
【図16】複合反射波のキャンセル方法を説明する図である。
【図17】複合反射波のキャンセル回路を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0121】
U、U1、・・・、Un 反射波キャンセル回路
100 受信波形モニタ部
101 信号入力部
102a、102b 増幅器
103a アドレスカウンタ
103b カウンタ
104 コンパレータ
105 DELAY又は論理ゲート
106 ピークホールド回路
107 ADコンバータ
108a、108b メモリ
109a 遅延時間出力部
109a−1 立ち上がりエッジ遅延時間出力部
109a−2 立ち下がりエッジ遅延時間出力部
109b 振幅ピーク出力部
110 擬似インピーダンス
111 NOTゲート
120 発振器
121b、121c、121d、121e、121f、121g、121h 位相遅延部
122a 第1カウンタ
122b 第2カウンタ
122c 第3カウンタ
122d 第4カウンタ
122e 第5カウンタ
122f 第6カウンタ
122g 第7カウンタ
122h 第8カウンタ
123 デコード回路
130a 遅延情報出力部
130b 利得情報出力部
140a 遅延情報検地部
140b 利得情報検地部
141 NOTゲート
150 遅延調整部
160 利得調整部
200、200a、200b 分岐バッファ
300 差動増幅部
500 送信側ドーターボード
510 送信側集積回路
530 単パルス生成部
600 バックボード
610a、610b シートコネクタ
700 受信側ドーターボード
710 受信側集積回路
800 入力切り替え部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路が搭載された基板ユニットを送信側と受信側に配し、これら送信側基板ユニットと受信側基板ユニットとの間でバックボードを介した信号波による通信を行う際に、該基板ユニットを該バックボードに接続するコネクタにおいて発生して該信号波に重畳される反射波をキャンセルするバックボード伝送方法であって、
前記基板ユニット間で受け渡される前記信号波をモニタし、該信号波に対する前記反射波の遅延時間及び利得を検出する信号波モニタ工程と、
前記信号波モニタ工程で検出された前記遅延時間に基づいて前記信号波と同一特性のキャンセル波生成用信号波の遅延調整を行う遅延調整工程と、
前記信号波モニタ工程で検出された前記利得に基づいて前記キャンセル波生成用信号波の利得調整を行う利得調整工程と、
前記遅延調整工程及び前記利得調整工程により波形調整された前記キャンセル波生成用信号波を前記信号波に重畳して前記反射波をキャンセルする反射波キャンセル工程と
を含んだことを特徴とするバックボード伝送方法。
【請求項2】
前記キャンセル波生成用信号波は、前記送信側基板ユニットに含まれるサンプルパルス発生工程で周期的に発生され、擬似インピーダンスを通過したサンプルパルスであることを特徴とする請求項1に記載のバックボード伝送方法。
【請求項3】
集積回路が搭載された基板ユニットを送信側と受信側に配し、これら送信側基板ユニットと受信側基板ユニットとの間でバックボードを介した信号波による通信を行う際に、該基板ユニットを該バックボードに接続するコネクタにおいて発生して該信号波に重畳される反射波をキャンセルするバックボード伝送装置であって、
前記基板ユニット間で受け渡される前記信号波をモニタし、該信号波に対する前記反射波の遅延時間及び利得を検出する信号波モニタ手段と、
前記信号波モニタ手段により検出された前記遅延時間に基づいて前記信号波と同一特性のキャンセル波生成用信号波の遅延調整を行う遅延調整手段と、
前記信号波モニタ手段により検出された前記利得に基づいて前記キャンセル波生成用信号波の利得調整を行う利得調整手段と、
前記遅延調整手段及び前記利得調整手段により波形調整された前記キャンセル波生成用信号波を前記信号波に重畳して前記反射波をキャンセルする反射波キャンセル手段と
を備えたことを特徴とするバックボード伝送装置。
【請求項4】
サンプルパルスを周期的に発生するサンプルパルス発生手段をさらに備え、
前記キャンセル波生成用信号波は、擬似インピーダンスを通過した前記サンプルパルスであることを特徴とする請求項3に記載のバックボード伝送装置。
【請求項5】
集積回路が搭載された基板ユニットを送信側と受信側に配し、これら送信側基板ユニットと受信側基板ユニットとの間でバックボードを介した信号波による通信を行う際に、該基板ユニットを該バックボードに接続するコネクタにおいて発生して該信号波に重畳される反射波をキャンセルするバックボード伝送における前記基板ユニットであって、
前記基板ユニット間で受け渡される前記信号波をモニタし、該信号波に対する前記反射波の遅延時間及び利得を検出する信号波モニタ手段と、
前記信号波モニタ手段により検出された前記遅延時間に基づいて前記信号波と同一特性のキャンセル波生成用信号波の遅延調整を行う遅延調整手段と、
前記信号波モニタ手段により検出された前記利得に基づいて前記キャンセル波生成用信号波の利得調整を行う利得調整手段と、
前記遅延調整手段及び前記利得調整手段により波形調整された前記キャンセル波生成用信号波を前記信号波に重畳して前記反射波をキャンセルする反射波キャンセル手段と
を備えたことを特徴とする基板ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−221267(P2007−221267A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37222(P2006−37222)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】