バックライトインバータ及びその駆動方法
【課題】ランプ温度の影響を受けずに、CCFLに安定したランプ電流を流し、LCDの表面輝度をCCFL起動時から安定させるようにした多灯用のバックライトインバータ及びその駆動方法を提供する。
【解決手段】1以上のインバータトランス4と複数の冷陰極ランプCCFL5とを接続してなるバックライトインバータ1であって、インバータトランス4に設けられる複数の一次巻線4pを直列または並列に接続し、インバータトランス4の二次側にリーケージインダクタンスLe2と容量成分C0CCFLを含む共振回路を形成するとともに、共振回路の並列共振周波数と直列共振周波数との間の周波数範囲に含まれ、かつ、インバータトランス4のゲイン特性曲線の第1の変曲点と第2の変曲点との間に対応する周波数範囲に含まれない動作周波数で、インバータトランスを駆動する。
【解決手段】1以上のインバータトランス4と複数の冷陰極ランプCCFL5とを接続してなるバックライトインバータ1であって、インバータトランス4に設けられる複数の一次巻線4pを直列または並列に接続し、インバータトランス4の二次側にリーケージインダクタンスLe2と容量成分C0CCFLを含む共振回路を形成するとともに、共振回路の並列共振周波数と直列共振周波数との間の周波数範囲に含まれ、かつ、インバータトランス4のゲイン特性曲線の第1の変曲点と第2の変曲点との間に対応する周波数範囲に含まれない動作周波数で、インバータトランスを駆動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイの画面照明用光源を点灯するためのバックライトインバータに関し、特に大型液晶TV用の多灯のバックライトインバータ及びその駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ等のディスプレイ装置として液晶ディスプレイ(以下、LCDと記す)が広く使用されるようになってきたが、このLCDはバックライト等の画面照明用の光源を必要とする。また、このようなLCDの画面を高輝度に保つために、上記光源として複数の冷陰極ランプ(以下、CCFLと略記する)を使用し、それらを同時に放電、点灯させている。
【0003】
一般に、バックライト用CCFLの放電、点灯には、24V程度の直流入力電圧からインバータトランスの二次側に、放電開始時に60kHz、1600V程度の高周波電圧を発生させるために、フルブリッジ回路またはロイヤー(ROYER)回路を用いたバックライト駆動用のインバータユニットで構成されたインバータ回路が用いられている。このインバータ回路は、CCFL放電後にはインバータトランスの二次側電圧をCCFLの放電維持に必要な1000V程度の電圧まで下げるように制御している。この電圧制御は、通常、PWM制御で行われている。
【0004】
従来のバックライト用インバータ回路には、トランスの二次側のリーケージインダクタンスと負荷として接続される放電管の持つ寄生容量とで共振回路が形成され、共振回路の共振周波数でトランスの一次側を駆動するものがある。
【0005】
この共振周波数での駆動は、トランスの一次側の電圧と電流とに位相差を伴い、必ずしもトランスの電力効率のよいものではない。また、トランス二次側には高次の共振周波数が存在し、その共振周波数で動作をしてしまう現象や、高次の共振周波数に影響を受けやすい動作になってしまうことがあり、トランスの設計が難しいという問題がある。そして、バックライト用CCFLは、温度、ランプ電流によってランプインピーダンスが大きく変動し、特に、低温起動直後はランプインピーダンスの変化が大きい。また、ランプインピーダンスが大きく変動することは、ランプ電圧も変動することであり、これによりランプに寄生する寄生容量も変動することになる。
【0006】
このため、放電管の持つ寄生容量により共振回路が形成されるトランスと、共振回路の共振周波数未満で、かつトランスの一次側の電圧と電流との位相差θが最小点より予め定めた範囲内にある周波数でトランスの一次側を駆動するHブリッジ回路とを備えた放電管用インバータ回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の放電管用インバータ回路は、この構成により、トランスの電力効率を向上させ、かつ高次の周波数の影響を受けにくくでき、トランスの設計を容易にしている。
【0007】
また、特許文献2には、発振動作を安定させて放電管のちらつきや回路素子の騒音の発生を防止したインバータ回路の駆動方法が開示されている。この方法は、入力巻線に直流電流を供給し、入力巻線電流をスイッチング素子によって断続させて、出力巻線より交番電圧を出力する昇圧トランスを備えたインバータ回路を駆動するもので、インバータ回路の駆動周波数を、昇圧トランスの入出力電圧の位相差が50°〜130°となる周波数範囲から外れた周波数で駆動する。このため、トランスの巻数、エアギャップ、結合度を調整することにより、電力効率は低下するが、負荷インピーダンスの変動による入出力電圧の変動幅を狭くして発振を安定させている。
【0008】
しかし、これらの駆動方法は、1つまたは数本のCCFLを点灯させる場合に用いられる方法であり、1つのバックライトインバータによって、多灯、典型的には8本ないし16本のCCFLを安定した状態で制御することが難しく、個々のCCFLのランプ電圧が変動し、これによりランプに寄生する寄生容量に流れる電流も変動するので、輝度が不安定となり、LCDの表面がちらつくことになる。
【0009】
また、大型TV用のバックライトは、LCDの背面に複数のCCFLを配置した直下型の構造を採用している。そして、低コストのバックライトインバータとするために、1つの制御ICによって複数のFETブリッジを駆動し、それぞれのFETブリッジは、複数のインバータトランスを接続して複数のCCFLを点灯させている。
【0010】
このようなCCFLは、特に多灯式でバックライト用に用いた場合、ランプ電流によってランプインピーダンスが大きく変動し、低温起動直後は、ランプインピーダンスの変化が大きい。また、ランプインピーダンスが大きく変動することは、ランプ電圧も変動することであり、その結果、ランプに寄生する寄生容量に流れる電流が変動する。
【0011】
そこで、例えば特許文献3に開示されるように、ランプ温度の影響を受けずに安定したランプ電流を流し、LCDの表面輝度をCCFL起動時から安定させるようにした多灯用のバックライトインバータ及びその駆動方法が提案されている。
【0012】
特許文献3に開示された方法は、複数のインバータトランスと複数の冷陰極ランプを接続してなるバックライトインバータを構成し、前記インバータトランスのリーケージインダクタンスと前記トランスと冷陰極ランプとの間に並列接続された付加容量及び寄生容量とを含む共振回路における直列共振周波数と並列共振周波数の中間の周波数以下で、かつインバータトランスの一次側から見たインバータトランスの一次側の電圧と電流との位相差を示すフェーズ特性曲線のピークを示す周波数以上の動作周波数で駆動することで、ランプ温度の影響を受けずに安定したランプ電流が流れ、LCDの表面輝度を、低温起動直後より安定なものとすることが図られている。
【0013】
【特許文献1】特開2003−168585号公報
【特許文献2】特開2004−201457号公報
【特許文献3】特開2006−140055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献3に開示された駆動方法には、以下のような問題点がある。図11は、インバータトランスの複数の一次巻線を並列に接続し、擬似U字管タイプのランプを駆動した場合の、バックライトインバータのゲイン特性とフェーズ特性(インバータトランスの一次側の電圧と電流との位相差)を、インピーダンスアナライザにより測定した結果を示すグラフである。
【0015】
図11に示されるように、このゲイン特性曲線には、並列共振周波数Fpと直列共振周波数Fsとの間に、通常想定されるゲイン特性曲線(図11に一点鎖線で示す曲線N)から実際のゲイン特性が外れて急激に変化するピーク波形(周波数FiLと周波数FiUとの間の部分)が出現している。実験によれば、このようなピーク波形は、擬似U字管タイプまたはU字管タイプのCCFLに対してインバータトランスの一次巻線を直列接続した場合には出現しないが、上述したような、擬似U字管タイプのCCFLに対してインバータトランスの一次巻線を並列接続した場合の他、U字管タイプのCCFLに対してインバータトランスの一次巻線を並列接続した場合、シングルエンド駆動される直管タイプのCCFLに対しては、インバータトランスの一次巻線を並列接続した場合、あるいは、フローティング駆動される直管タイプのCCFLに対しては、インバータトランスの一次巻線を直列接続するかまたは並列接続した場合の両方の場合に出現することが確認されている。
【0016】
しかるに、特許文献3に開示された駆動方法では、ゲイン特性曲線に上述したような急激な変位部分が出現するバックライトインバータに対しても、この変位部分に対応する周波数範囲に含まれる周波数を駆動周波数として設定する可能性があり、その場合、ランプ電流のばらつきが大きくなるため、CCFLの輝度が不安定となり、LCDの表面がちらつくことになる。また、環境温度が低温のときにはこの変位部分の尖鋭度が常温のときよりも大きくなるため、ばらつきは顕著に大きくなり、輝度分布に大きなムラが生じてしまう。
【0017】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、インバータトランスの二次側に形成される共振回路の並列共振周波数と直列共振周波数との間の周波数範囲に含まれ、かつ、インバータトランスのゲイン特性曲線において、上記周波数範囲内に出現するピーク波形に対応する周波数範囲に含まれない動作周波数でインバータトランスを駆動することが良いとの測定データに基づき、ランプ温度の影響を受けずに、CCFLに安定したランプ電流を流し、LCDの表面輝度をCCFL起動時から安定させるようにした多灯用のバックライトインバータ及びその駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、さらに他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0019】
本発明において、バックライトインバータのゲイン特性曲線上の、通常想定されるゲイン特性曲線から外れたピーク波形の(低周波数側から掃引したときの)開始点及び終了点を、それぞれ「第1の変曲点」及び「第2の変曲点」という。また、上記ピーク波形は、通常想定されるゲイン特性曲線から増大する方向にピーク値(極大値)をもつ波形、及び、減少する方向にピーク値(極小値)を持つ波形の両方を含むものとする。
【0020】
(1)1以上のインバータトランスと複数の冷陰極ランプとを接続してなるバックライトインバータであって、前記インバータトランスに設けられる複数の一次巻線を直列または並列に接続し、前記インバータトランスの二次側にリーケージインダクタンスと容量成分を含む共振回路を形成するとともに、前記共振回路の並列共振周波数と直列共振周波数との間の周波数範囲に含まれ、かつ、前記インバータトランスのゲイン特性曲線の第1の変曲点と第2の変曲点との間に対応する周波数範囲に含まれない動作周波数で、前記インバータトランスを駆動することを特徴とするバックライトインバータ(請求項1)。
【0021】
(2)(1)項に記載のバックライトインバータにおいて、前記動作周波数は、前記複数の冷陰極ランプのそれぞれに流れるランプ電流の最大値と最小値との差が1mA以内となる周波数とすることを特徴とするバックライトインバータ(請求項2)。
【0022】
(3)(1)又は(2)項に記載のバックライトインバータにおいて、前記動作周波数の下限値は、フローティング駆動方式においては、前記複数の冷陰極ランプの中点のランプ電流の波高率が1.6以下、シングルエンド駆動方式においては、前記複数の冷陰極ランプのグラウンド側のランプ電流の波高率が1.6以下を示す周波数とすることを特徴とするバックライトインバータ(請求項3)。
【0023】
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載のバックライトインバータにおいて、前記動作周波数の上限値は、前記インバータトランスの一次側の電圧と電流との位相差が−45°以上となる範囲の周波数とすることを特徴とするバックライトインバータ(請求項4)。
【0024】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載のバックライトインバータにおいて、前記直列共振周波数は、前記インバータトランスの二次巻線から発生するリーケージインダクタンスと前記容量成分とで決定され、前記並列共振周波数は、前記インバータトランスの相互インダクタンスと、前記リーケージインダクタンスと、前記容量成分とで決定されることを特徴とするバックライトインバータ(請求項5)。
【0025】
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のバックライトインバータにおいて、前記共振回路の前記容量成分は、前記インバータトランスの二次側回路に発生する寄生容量を含むことを特徴とするバックライトインバータ(請求項6)。
【0026】
(7)(1)〜(6)のいずれか1項に記載のバックライトインバータにおいて、前記複数の冷陰極ランプは、1本の直管からなる直管タイプ、2本の直管を直列に接続した擬似U字管タイプ、直管を折り曲げたU字管タイプ、または直管を折り曲げたコ字管タイプのうちのいずれか1種を含むことを特徴とするバックライトインバータ(請求項7)。
【0027】
(8)(1)〜(7)のいずれか1項に記載のバックライトインバータにおいて、前記複数の冷陰極ランプは、ランプ内の気圧が約8kPa未満であり、前記ゲイン特性曲線が前記第1の変曲点を示す周波数よりも低い駆動周波数で前記インバータトランスを駆動することを特徴とするバックライトインバータ(請求項8)。
【0028】
(9)(1)〜(7)のいずれか1項に記載のバックライトインバータにおいて、前記複数の冷陰極ランプは、ランプ内の気圧が約8kPa以上であり、前記ゲイン特性曲線が前記第2の変曲点を示す周波数よりも高い駆動周波数で前記インバータトランスを駆動することを特徴とするバックライトインバータ(請求項9)。
【0029】
(10)1以上のインバータトランスと複数の冷陰極ランプを接続してなるバックライトインバータを構成し、前記インバータトランスの二次側のリーケージインダクタンス及び容量成分を含む共振回路の並列共振周波数と直列共振周波数との間の周波数範囲に含まれ、かつ、前記インバータトランスのゲイン特性曲線の第1の変曲点と第2の変曲点との間に対応する周波数範囲に含まれない動作周波数で、前記インバータトランスを駆動することを特徴とするバックライトインバータの駆動方法(請求項10)。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るバックライトインバータ及びその駆動方法によれば、ランプ温度の影響を受けることなく、複数の冷陰極管に安定したランプ電流が流れ、その結果、LCDの表面輝度が、低温起動直後においても安定なものとなる。
【0031】
また、本発明に係るバックライトインバータ及びその駆動方法によれば、ランプ電流に対する寄生容量の影響を低減することができるため、複数の冷陰極管におけるランプ電流の均一性が向上する。この結果、LCD表面のちらつきも解消される。
【0032】
さらに、本発明に係るバックライトインバータ及びその駆動方法によれば、バックライトインバータの変換効率を向上させることができるため、インバータトランスやインバータトランスを駆動するスイッチング素子の発熱を低減することが可能となる。この結果、例えば、放熱板を用いない複数のFETブリッジで構成されるバックライトインバータにおいては、ブリッジ数を削減できるため、MOSFETおよび、それに伴うゲートドライブ回路、デカップリングコンデンサ等の部品を削減することができる。また、放熱板付きのFETブリッジで構成されるバックライトインバータにおいては、放熱板を小型化するか、あるいは、不要とすることができ、これによって、バックライトインバータの小型化ならびにコストダウンが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態におけるバックライトインバータ1の要部を示す回路構成図である。図1に示すバックライトインバータ1は、例えば大型液晶TV用のバックライトとして好適なものであり、2つのFETブリッジ3と、4つのインバータトランス4と、8本のCCFL5と、1つの制御IC2とを備え、この1つの制御IC2によって複数のFETブリッジ3を作動させ、複数のCCFL5を駆動するものである。
【0034】
各FETブリッジ3は、例えば、PMOSとNMOSの各2つのFETを有する直列回路が並列接続された負荷駆動用のHブリッジ(フルブリッジ)からなり、インバータトランス4の一次側に接続されている。
【0035】
各インバータトランス4は、2入力2出力型のリーケージトランスからなり、互いに並列に接続された2つの一次巻線4pと、2つの一次巻線4pにそれぞれ対応する二次巻線4sが設けられている。また、各二次巻線4sの一端側は、2本のCCFL5、5により構成された擬似U字管の両端にそれぞれ接続され、各二次巻線4sの他端側は、それぞれ抵抗R1を介してグラウンドに接続されている。この抵抗R1は、CCFL5に流れる電流を電圧に変換する電流電圧変換回路として機能する。
【0036】
本実施形態では、2つのFETブリッジ3のそれぞれの出力に、2つのインバータトランス4の4つの一次巻線4pが並列に接続され、1つのFETブリッジ3で2つのインバータトランス4を駆動し、それぞれのインバータトランス4で、2本のCCFL5を駆動する構成となっている。
【0037】
また、インバータトランス4の二次側回路には、寄生容量が存在しており、図1には、CCFL5に寄生する寄生容量CCFL、及び、二次側回路に発生するその他の寄生容量(例えば、二次巻線に発生する寄生容量やその他の配線に発生する寄生容量)C0が、それぞれ等価的なコンデンサとして示されている。
【0038】
FETブリッジ3は、直流電源からの電圧Vinを入力して、制御IC2からの駆動パルス信号により高周波電圧をインバータトランス4の一次側に入力する。そして、インバータトランス4の二次側には昇圧された電圧が出力され、この昇圧された電圧を二次巻線4sに接続された2本のCCFL5に印加することにより、2本のCCFL5を放電、点灯させている。
【0039】
制御IC2は、図2に示すように、三角波回路(発振回路)10、エラーアンプ回路11、PWM回路12、及びロジック回路13を備えている。制御IC2において、エラーアンプ回路11の一方の入力端(例えば、反転入力)には、電流電圧変換回路R1からの電圧が整流回路Dを介して入力され、エラーアンプ回路11の他方の入力端(例えば、非反転入力)には、所定の基準電圧Vrefが入力される。これによって、エラーアンプ回路11は、CCFL5に流れる電流に応じた出力電圧をPWM回路12に出力し、PWM回路12は、三角波回路10からの三角波出力電圧と、エラーアンプ11の出力電圧を比較して、パルス信号をロジック回路13に出力する。ロジック回路13は、三角波回路10の出力パルス信号とPWM回路12からの出力パルス信号に基づいて、FETブリッジ3へ入力するゲート信号を供給する。
【0040】
FETブリッジ3は、ロジック回路13から出力されるゲート信号により動作し、インバータトランス4の一次巻線4pに交流電流を流して、二次巻線4sに昇圧された電圧を誘起させ、CCFL5を駆動するものである。
【0041】
次に、バックライトインバータ1における、インバータトランス4の駆動周波数について説明する。
【0042】
まず、図3を参照して、インバータトランス4の二次側に形成される共振回路の直列共振周波数と並列共振周波数について説明する。図3は、説明のため、本実施形態におけるバックライトインバータ1の回路構成のうち、1つの共振回路構成部分(C部)近傍とその等価回路を示した図である。図3において、C0及びCCFLは上述した寄生容量である。C部の等価回路に示したMは、インバータトランス4の相互インダクタンス、Le2は二次側リーケージインダクタンスであり、又、RはCCFL5のランプインピーダンスである。
【0043】
このバックライトインバータにおいて、インバータトランス4の二次側には、インバータトランス4の二次巻線4sから発生するリーケージインダクタンスLe2と、等価的にインバータトランス4の二次巻線4sに対して並列に接続されたコンデンサとしてみなされる寄生容量C0及びCCFLとを含む共振回路が形成されており、その直列共振周波数Fsは、リーケージインダクタンスLe2、及び、本実施形態における容量成分であるC0とCCFLの合成容量によって与えられ、並列共振周波数Fpは、相互インダクタンスM、リーケージインダクタンスLe2、及び容量成分C0、CCFLによって与えられる。
すなわち、合成容量C=C0+CCFLとした時、
Fs=1/(2π√(Le2×C))
Fp=1/(2π√((Le2+M)×C))
となる。
【0044】
図1に示す構成を備えたバックライトインバータ1に対して、インピーダンスアナライザーにより、ゲインの周波数特性とフェーズの周波数特性を測定した結果を、図4に示す。ここで、ゲインとは、インバータトランス4の一次側の電流と電圧との比を意味し、インバータトランス4の負荷の一次側から見たアドミッタンスに相当する。また、フェーズとは、インバータトランス4の一次側の電圧と電流との位相差を意味する。
【0045】
また、図4に示す周波数特性は、CCFL5として低ガス圧タイプのCCFLを用いて測定されたものである。尚、本発明において、「低ガス圧タイプ」のCCFLとは、ランプ内の気圧が約8kPa(60Torr)未満のCCFLであることを意味し、「通常ガス圧タイプ」とは、ランプ内の気圧が約8kPa(約60Torr)以上であることを意味する。
【0046】
図4に示すように、ゲイン特性曲線の直列共振周波数Fsおよび並列共振周波数Fpとの間に、通常想定されるゲイン特性曲線(図4に一点鎖線で示す曲線N)から実際のゲイン特性が外れて急激に変化するピーク波形(周波数FiLと周波数FiUとの間の部分)が出現している。本発明では、このピーク波形の(低周波数側から掃引したときの)開始点及び終了点を、それぞれ第1の変曲点P1及び第2の変曲点P2という。
そして、本実施形態におけるバックライトインバータ1は、動作周波数として、この第1の変曲点P1と第2の変曲点P2との間に対応する周波数範囲を避け、共振回路の並列共振周波数Fpと直列共振周波数Fsとの間の周波数範囲に含まれ、かつ、インバータトランス4のゲイン特性曲線の第1の変曲点P1と第2の変曲点P2との間に対応する周波数範囲に含まれない動作周波数で、言い換えれば、並列共振周波数Fp以上、かつ、第1の変曲点P1における周波数FiL未満(ΔFpiの範囲)の動作周波数、又は、第2の変曲点P2における周波数FiUより高く、かつ、直列共振周波数Fs以下(ΔFisの範囲)の動作周波数で、インバータトランス4を駆動するものである。
【0047】
一般に、ゲイン特性が、図4に示す第1の変曲点P1と第2変曲点P2との間のようなピーク波形を示す周波数を駆動周波数とすると、CCFL5に流れるランプ電流のばらつきが大きくなるため、CCFL5の輝度が不安定となり、LCDの表面がちらつきが生じる。本発明では、上述した動作周波数でインバータトランスを駆動するようにしたため、ランプ電流のばらつきが小さくなり、輝度が安定し、LCDの表面のちらつきが低減される。
【0048】
また、次に説明するように、周囲温度が大きく変化する使用環境において複数のCCFL5を点灯させる場合には、さらに動作周波数を限定することが望ましい。図5は、特定の動作周波数に対して、複数のCCFL5のそれぞれに流れるランプ電流の差の最大値(ランプ電流の最大値と最小値との差)を実測した結果を示すグラフであり、Aは常温(25℃)の場合、Bは低温(−30℃)の場合の値を示している。
【0049】
図5に示すように、低温環境においては、常温に比べて、第1の変曲点P1と第2の変曲点P2の間の部分に対応する周波数範囲(周波数FiLと周波数FiUの間)はもとより、その周辺の周波数においてもランプ電流のばらつきが急激に大きくなっていることがわかる。一般に、CCFLの輝度のばらつきを小さくするためには、複数のCCFLのそれぞれに流れるランプ電流の差の最大値を1mA以下に抑えることが好ましい。したがって、周囲温度が大きく変化する使用環境において、この条件を満足させるためには、図5に示す周波数FcLとFcUの間の周波数範囲を除く動作周波数、すなわち、並列共振周波数Fp以上かつ周波数FcL以下(図4に示すΔFpcの範囲)の動作周波数、あるいは、周波数FcU以上かつ直列共振周波数Fs以下(図4に示すΔFcsの範囲)の動作周波数で、インバータトランス4を駆動することが望ましい。
【0050】
上記の周波数範囲に含まれる周波数を動作周波数としてインバータトランスを駆動することにより、周囲温度が変化する環境においてもランプ電流のばらつきが抑えられ、輝度分布の均一化が実現できる。
【0051】
さらに、ランプ寿命を長くするためには、電流のひずみをできる限り抑制することが必要であり、そのためには、下限の動作周波数を次のように設定することが好ましい。
【0052】
図6は、ランプ電流ILの波形を示す図であり、図6(a)はひずみの無い理想的な電流波形、図6(b)はひずみを生じた電流波形を示している。ここで、図1に示すバックライトインバータ1のように、フローティング駆動方式でCCFL5を駆動する場合、電流波形の測定ポイントは、2本のCCFL5、5の中点である。
【0053】
図6(b)では、波高率(ピーク電流をIo−p、実効電流をIrmsとした場合、Io−p/Irmsとなる)が1.6の時の電流波形を示しているが、ランプ電流ILのひずみがランプ寿命に出来る限り影響しないようにするためには、ランプ電流ILの波高率を1.6以下にする必要がある。ここで、ランプ電流ILの波高率は、特定の周波数Fpr(図4参照)より低い周波数では1.6よりも大きくなるため、第1の変曲点P1より低い周波数領域でインバータトランスを駆動する場合は、周波数Fpr以上の動作周波数でインバータトランスを駆動するようにすることが望ましい。
【0054】
このように、ランプ電流ILの波高率を1.6以下の動作周波数でインバータトランスを駆動することにより、ランプ寿命を長くすることができる。尚、フローティング駆動方式において、電流波形の測定ポイントをCCFL5、5の中点とすることにより、波高率測定の正確性が向上する。また、CCFL5を、その一端をグラウンドに接続したシングルエンド駆動方式により駆動する場合には、CCFLのグラウンド側で測定することが望ましい。
【0055】
次に、バックライントインバータ1の変換効率を向上させるためには、インバータトランス4の駆動周波数について、上限の動作周波数を次のように設定することが好ましい。
【0056】
動作周波数が直列共振周波数Fsに近づくにしたがい、フェーズの値が小さくなるため、インバータトランスに流れる励磁電流が多くなり、変換効率が悪化する。実験によれば、フェーズの値を−45°以上に設定することにより、変換効率が向上することがわかっており、したがって、位相が−45°を示す周波数Ff(図4参照)以下の動作周波数でインバータトランスを駆動することが望ましい。
【0057】
このように、インバータトランス4のフェーズの値を−45°以上に設定することにより、ランプ電流のばらつきも抑えることが可能となり、輝度分布の均一化が実現できるとともに、インバータトランス4の変換効率を向上させることができる。
【0058】
また、低ガス圧タイプのランプに対しては、第1の変曲点P1における周波数FiLよりも低い動作周波数でインバータトランスを駆動し、通常ガス圧タイプのランプに対しては、第2の変曲点における周波数FiUよりも高い動作周波数でインバータトランスを駆動することが好ましい。このことについて、具体的に説明すれば、次のとおりである。
【0059】
図4に示す測定マークMは、低ガス圧タイプのCCFLに対して、第1の変曲点P1における周波数FiLよりも低い動作周波数でインバータトランスを駆動した場合のゲインとフェーズを測定した測定点である。この測定点において、ゲインの値は−45.7577dB、フェーズの値は−19.1759°を示している。これに対して、図7に示すゲイン特性及びフェーズ特性において、測定マークMは、低ガス圧タイプのCCFLに対して、第2の変曲点P2における周波数FiUよりも高い動作周波数でインバータトランスを駆動した場合のゲインとフェーズを測定した測定点である。この測定点では、フェーズの値が−54.9031°と大きくなっており、これによって、インバータトランスの駆動効率が悪くなり、インバータトランスやFETブリッジを構成するスイッチング素子(MOS FET)の発熱が大きくなる。このため、放熱板が必要となり、コストアップにつながる。
【0060】
図8に示すゲイン特性及びフェーズ特性において、測定マークMは、通常ガス圧タイプのCCFLに対して、第2の変曲点P2における周波数FiUよりも高い動作周波数でインバータトランスを駆動した場合のゲインとフェーズを測定した測定点である。この測定点において、ゲインの値は−47.9630dB、フェーズの値が−38.1203°を示している。これに対して、図9に示すゲイン特性及びフェーズ特性において、測定マークMは、通常ガス圧タイプのCCFLに対して、第1の変曲点P1における周波数FiLよりも低い動作周波数でインバータトランスを駆動した場合のゲインとフェーズを測定した測定点である。この測定点では、フェーズが2.08183°となっており、このことは、インバータとしての動作が不安定であることを意味する。
【0061】
このように、低ガス圧タイプのCCFLに対しては、第1の変曲点P1における周波数よりも低い動作周波数でインバータトランスを駆動し、通常ガス圧タイプのCCFLに対しては、第2の変曲点P2における周波数よりも高い動作周波数でインバータトランスを駆動することにより、インバータトランスの変換効率が良好で、かつ動作を安定にする駆動を実現することができる。
【0062】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態におけるインバータトランス4とCCFL5の接続は、図1に示すように、インバータトランス4の一次巻線を並列接続し、擬似U字管タイプのCCFLを駆動するものとしたが、本発明は、この回路構成に限定されるものではなく、例えば、図10(a)に示すような、2つのインバータトランスT1、T1’のそれぞれの一次巻線を直列接続とし、1本の直管CCFLの両端に、インバータトランスT1の二次巻線の一端及びインバータトランスT1’の二次巻線の一端をそれぞれ接続してフローティング駆動する回路構成、図10(b)に示すような、2つのインバータトランスT1、T1’のそれぞれの一次巻線を並列接続とし、1本の直管CCFLの両端に、インバータトランスT1の二次巻線の一端及びインバータトランスT1’の二次巻線の一端をそれぞれ接続してフローティング駆動する回路構成、図10(c)に示すような、1つのインバータトランスT1の一次巻線を並列接続し、1本の直管CCFLの両端に、インバータトランスT1の二次巻線の一端を接続し、直管CCFLの一端をグラウンドに接続してシングルエンド駆動する回路構成、図10(d)に示すように、1つのインバータトランスT1の一次巻線を並列接続とし、直管を折り曲げたU字管タイプあるいはコ字管タイプ(図ではU字管タイプの例)のCCFLをフローティング駆動する回路構成にも適用できる。
【0063】
さらに、上述した実施形態では、インバータトランスの二次側に形成される共振回路の容量成分は、寄生容量からなるものとしたが、本発明において、インバータトランスの二次側に、適切な容量を有するコンデンサを付加容量として二次巻線に対して並列に接続するものであってもよい。この場合、本発明に係る共振回路の容量成分は、インバータトランスの二次側回路に発生する寄生容量と、上記付加容量との合成容量からなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータの回路構成図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、制御ICの概略構成を示す回路構成図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、インバータトランスの二次側に形成される共振回路の要部を示す回路構成図及びその等価回路図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、低ガス圧タイプのCCFLを駆動した場合のゲイン特性及びフェーズ特性を測定した結果を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、複数のCCFLのそれぞれに流れるランプ電流の差の最大値を測定した結果を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、ランプ電流の葉波形を示したグラフであり、(a)はひずみの無い理想的な電流波形、(b)はひずみを生じた電流波形を示す。
【図7】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、低ガス圧タイプのCCFLを駆動した場合のゲイン特性及びフェーズ特性を測定した結果を示す別のグラフである。
【図8】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、通常ガス圧タイプのCCFLを駆動した場合のゲイン特性及びフェーズ特性を測定した結果を示すグラフである。
【図9】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、通常ガス圧タイプのCCFLを駆動した場合のゲイン特性及びフェーズ特性を測定した結果を示す別のグラフである。
【図10】(a)〜(d)は、それぞれ本発明の別の実施形態におけるバックライトインバータの回路構成図である。
【図11】従来のバックライトインバータのゲイン特性及びフェーズ特性を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
1:バックライトインバータ、2:制御IC、3:FETブリッジ、4:インバータトランス、4p:一次巻線、4s:二次巻線、5:CCFL(冷陰極ランプ)、CCFL:寄生容量(CCFLの寄生容量)、C0:寄生容量(二次巻線、二次側配線等の寄生容量)、P1:第1の変曲点、P2:第2の変曲点、Fp:並列共振周波数、Fs:直列共振周波数
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイの画面照明用光源を点灯するためのバックライトインバータに関し、特に大型液晶TV用の多灯のバックライトインバータ及びその駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ等のディスプレイ装置として液晶ディスプレイ(以下、LCDと記す)が広く使用されるようになってきたが、このLCDはバックライト等の画面照明用の光源を必要とする。また、このようなLCDの画面を高輝度に保つために、上記光源として複数の冷陰極ランプ(以下、CCFLと略記する)を使用し、それらを同時に放電、点灯させている。
【0003】
一般に、バックライト用CCFLの放電、点灯には、24V程度の直流入力電圧からインバータトランスの二次側に、放電開始時に60kHz、1600V程度の高周波電圧を発生させるために、フルブリッジ回路またはロイヤー(ROYER)回路を用いたバックライト駆動用のインバータユニットで構成されたインバータ回路が用いられている。このインバータ回路は、CCFL放電後にはインバータトランスの二次側電圧をCCFLの放電維持に必要な1000V程度の電圧まで下げるように制御している。この電圧制御は、通常、PWM制御で行われている。
【0004】
従来のバックライト用インバータ回路には、トランスの二次側のリーケージインダクタンスと負荷として接続される放電管の持つ寄生容量とで共振回路が形成され、共振回路の共振周波数でトランスの一次側を駆動するものがある。
【0005】
この共振周波数での駆動は、トランスの一次側の電圧と電流とに位相差を伴い、必ずしもトランスの電力効率のよいものではない。また、トランス二次側には高次の共振周波数が存在し、その共振周波数で動作をしてしまう現象や、高次の共振周波数に影響を受けやすい動作になってしまうことがあり、トランスの設計が難しいという問題がある。そして、バックライト用CCFLは、温度、ランプ電流によってランプインピーダンスが大きく変動し、特に、低温起動直後はランプインピーダンスの変化が大きい。また、ランプインピーダンスが大きく変動することは、ランプ電圧も変動することであり、これによりランプに寄生する寄生容量も変動することになる。
【0006】
このため、放電管の持つ寄生容量により共振回路が形成されるトランスと、共振回路の共振周波数未満で、かつトランスの一次側の電圧と電流との位相差θが最小点より予め定めた範囲内にある周波数でトランスの一次側を駆動するHブリッジ回路とを備えた放電管用インバータ回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の放電管用インバータ回路は、この構成により、トランスの電力効率を向上させ、かつ高次の周波数の影響を受けにくくでき、トランスの設計を容易にしている。
【0007】
また、特許文献2には、発振動作を安定させて放電管のちらつきや回路素子の騒音の発生を防止したインバータ回路の駆動方法が開示されている。この方法は、入力巻線に直流電流を供給し、入力巻線電流をスイッチング素子によって断続させて、出力巻線より交番電圧を出力する昇圧トランスを備えたインバータ回路を駆動するもので、インバータ回路の駆動周波数を、昇圧トランスの入出力電圧の位相差が50°〜130°となる周波数範囲から外れた周波数で駆動する。このため、トランスの巻数、エアギャップ、結合度を調整することにより、電力効率は低下するが、負荷インピーダンスの変動による入出力電圧の変動幅を狭くして発振を安定させている。
【0008】
しかし、これらの駆動方法は、1つまたは数本のCCFLを点灯させる場合に用いられる方法であり、1つのバックライトインバータによって、多灯、典型的には8本ないし16本のCCFLを安定した状態で制御することが難しく、個々のCCFLのランプ電圧が変動し、これによりランプに寄生する寄生容量に流れる電流も変動するので、輝度が不安定となり、LCDの表面がちらつくことになる。
【0009】
また、大型TV用のバックライトは、LCDの背面に複数のCCFLを配置した直下型の構造を採用している。そして、低コストのバックライトインバータとするために、1つの制御ICによって複数のFETブリッジを駆動し、それぞれのFETブリッジは、複数のインバータトランスを接続して複数のCCFLを点灯させている。
【0010】
このようなCCFLは、特に多灯式でバックライト用に用いた場合、ランプ電流によってランプインピーダンスが大きく変動し、低温起動直後は、ランプインピーダンスの変化が大きい。また、ランプインピーダンスが大きく変動することは、ランプ電圧も変動することであり、その結果、ランプに寄生する寄生容量に流れる電流が変動する。
【0011】
そこで、例えば特許文献3に開示されるように、ランプ温度の影響を受けずに安定したランプ電流を流し、LCDの表面輝度をCCFL起動時から安定させるようにした多灯用のバックライトインバータ及びその駆動方法が提案されている。
【0012】
特許文献3に開示された方法は、複数のインバータトランスと複数の冷陰極ランプを接続してなるバックライトインバータを構成し、前記インバータトランスのリーケージインダクタンスと前記トランスと冷陰極ランプとの間に並列接続された付加容量及び寄生容量とを含む共振回路における直列共振周波数と並列共振周波数の中間の周波数以下で、かつインバータトランスの一次側から見たインバータトランスの一次側の電圧と電流との位相差を示すフェーズ特性曲線のピークを示す周波数以上の動作周波数で駆動することで、ランプ温度の影響を受けずに安定したランプ電流が流れ、LCDの表面輝度を、低温起動直後より安定なものとすることが図られている。
【0013】
【特許文献1】特開2003−168585号公報
【特許文献2】特開2004−201457号公報
【特許文献3】特開2006−140055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献3に開示された駆動方法には、以下のような問題点がある。図11は、インバータトランスの複数の一次巻線を並列に接続し、擬似U字管タイプのランプを駆動した場合の、バックライトインバータのゲイン特性とフェーズ特性(インバータトランスの一次側の電圧と電流との位相差)を、インピーダンスアナライザにより測定した結果を示すグラフである。
【0015】
図11に示されるように、このゲイン特性曲線には、並列共振周波数Fpと直列共振周波数Fsとの間に、通常想定されるゲイン特性曲線(図11に一点鎖線で示す曲線N)から実際のゲイン特性が外れて急激に変化するピーク波形(周波数FiLと周波数FiUとの間の部分)が出現している。実験によれば、このようなピーク波形は、擬似U字管タイプまたはU字管タイプのCCFLに対してインバータトランスの一次巻線を直列接続した場合には出現しないが、上述したような、擬似U字管タイプのCCFLに対してインバータトランスの一次巻線を並列接続した場合の他、U字管タイプのCCFLに対してインバータトランスの一次巻線を並列接続した場合、シングルエンド駆動される直管タイプのCCFLに対しては、インバータトランスの一次巻線を並列接続した場合、あるいは、フローティング駆動される直管タイプのCCFLに対しては、インバータトランスの一次巻線を直列接続するかまたは並列接続した場合の両方の場合に出現することが確認されている。
【0016】
しかるに、特許文献3に開示された駆動方法では、ゲイン特性曲線に上述したような急激な変位部分が出現するバックライトインバータに対しても、この変位部分に対応する周波数範囲に含まれる周波数を駆動周波数として設定する可能性があり、その場合、ランプ電流のばらつきが大きくなるため、CCFLの輝度が不安定となり、LCDの表面がちらつくことになる。また、環境温度が低温のときにはこの変位部分の尖鋭度が常温のときよりも大きくなるため、ばらつきは顕著に大きくなり、輝度分布に大きなムラが生じてしまう。
【0017】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、インバータトランスの二次側に形成される共振回路の並列共振周波数と直列共振周波数との間の周波数範囲に含まれ、かつ、インバータトランスのゲイン特性曲線において、上記周波数範囲内に出現するピーク波形に対応する周波数範囲に含まれない動作周波数でインバータトランスを駆動することが良いとの測定データに基づき、ランプ温度の影響を受けずに、CCFLに安定したランプ電流を流し、LCDの表面輝度をCCFL起動時から安定させるようにした多灯用のバックライトインバータ及びその駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、さらに他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0019】
本発明において、バックライトインバータのゲイン特性曲線上の、通常想定されるゲイン特性曲線から外れたピーク波形の(低周波数側から掃引したときの)開始点及び終了点を、それぞれ「第1の変曲点」及び「第2の変曲点」という。また、上記ピーク波形は、通常想定されるゲイン特性曲線から増大する方向にピーク値(極大値)をもつ波形、及び、減少する方向にピーク値(極小値)を持つ波形の両方を含むものとする。
【0020】
(1)1以上のインバータトランスと複数の冷陰極ランプとを接続してなるバックライトインバータであって、前記インバータトランスに設けられる複数の一次巻線を直列または並列に接続し、前記インバータトランスの二次側にリーケージインダクタンスと容量成分を含む共振回路を形成するとともに、前記共振回路の並列共振周波数と直列共振周波数との間の周波数範囲に含まれ、かつ、前記インバータトランスのゲイン特性曲線の第1の変曲点と第2の変曲点との間に対応する周波数範囲に含まれない動作周波数で、前記インバータトランスを駆動することを特徴とするバックライトインバータ(請求項1)。
【0021】
(2)(1)項に記載のバックライトインバータにおいて、前記動作周波数は、前記複数の冷陰極ランプのそれぞれに流れるランプ電流の最大値と最小値との差が1mA以内となる周波数とすることを特徴とするバックライトインバータ(請求項2)。
【0022】
(3)(1)又は(2)項に記載のバックライトインバータにおいて、前記動作周波数の下限値は、フローティング駆動方式においては、前記複数の冷陰極ランプの中点のランプ電流の波高率が1.6以下、シングルエンド駆動方式においては、前記複数の冷陰極ランプのグラウンド側のランプ電流の波高率が1.6以下を示す周波数とすることを特徴とするバックライトインバータ(請求項3)。
【0023】
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載のバックライトインバータにおいて、前記動作周波数の上限値は、前記インバータトランスの一次側の電圧と電流との位相差が−45°以上となる範囲の周波数とすることを特徴とするバックライトインバータ(請求項4)。
【0024】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載のバックライトインバータにおいて、前記直列共振周波数は、前記インバータトランスの二次巻線から発生するリーケージインダクタンスと前記容量成分とで決定され、前記並列共振周波数は、前記インバータトランスの相互インダクタンスと、前記リーケージインダクタンスと、前記容量成分とで決定されることを特徴とするバックライトインバータ(請求項5)。
【0025】
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のバックライトインバータにおいて、前記共振回路の前記容量成分は、前記インバータトランスの二次側回路に発生する寄生容量を含むことを特徴とするバックライトインバータ(請求項6)。
【0026】
(7)(1)〜(6)のいずれか1項に記載のバックライトインバータにおいて、前記複数の冷陰極ランプは、1本の直管からなる直管タイプ、2本の直管を直列に接続した擬似U字管タイプ、直管を折り曲げたU字管タイプ、または直管を折り曲げたコ字管タイプのうちのいずれか1種を含むことを特徴とするバックライトインバータ(請求項7)。
【0027】
(8)(1)〜(7)のいずれか1項に記載のバックライトインバータにおいて、前記複数の冷陰極ランプは、ランプ内の気圧が約8kPa未満であり、前記ゲイン特性曲線が前記第1の変曲点を示す周波数よりも低い駆動周波数で前記インバータトランスを駆動することを特徴とするバックライトインバータ(請求項8)。
【0028】
(9)(1)〜(7)のいずれか1項に記載のバックライトインバータにおいて、前記複数の冷陰極ランプは、ランプ内の気圧が約8kPa以上であり、前記ゲイン特性曲線が前記第2の変曲点を示す周波数よりも高い駆動周波数で前記インバータトランスを駆動することを特徴とするバックライトインバータ(請求項9)。
【0029】
(10)1以上のインバータトランスと複数の冷陰極ランプを接続してなるバックライトインバータを構成し、前記インバータトランスの二次側のリーケージインダクタンス及び容量成分を含む共振回路の並列共振周波数と直列共振周波数との間の周波数範囲に含まれ、かつ、前記インバータトランスのゲイン特性曲線の第1の変曲点と第2の変曲点との間に対応する周波数範囲に含まれない動作周波数で、前記インバータトランスを駆動することを特徴とするバックライトインバータの駆動方法(請求項10)。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るバックライトインバータ及びその駆動方法によれば、ランプ温度の影響を受けることなく、複数の冷陰極管に安定したランプ電流が流れ、その結果、LCDの表面輝度が、低温起動直後においても安定なものとなる。
【0031】
また、本発明に係るバックライトインバータ及びその駆動方法によれば、ランプ電流に対する寄生容量の影響を低減することができるため、複数の冷陰極管におけるランプ電流の均一性が向上する。この結果、LCD表面のちらつきも解消される。
【0032】
さらに、本発明に係るバックライトインバータ及びその駆動方法によれば、バックライトインバータの変換効率を向上させることができるため、インバータトランスやインバータトランスを駆動するスイッチング素子の発熱を低減することが可能となる。この結果、例えば、放熱板を用いない複数のFETブリッジで構成されるバックライトインバータにおいては、ブリッジ数を削減できるため、MOSFETおよび、それに伴うゲートドライブ回路、デカップリングコンデンサ等の部品を削減することができる。また、放熱板付きのFETブリッジで構成されるバックライトインバータにおいては、放熱板を小型化するか、あるいは、不要とすることができ、これによって、バックライトインバータの小型化ならびにコストダウンが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態におけるバックライトインバータ1の要部を示す回路構成図である。図1に示すバックライトインバータ1は、例えば大型液晶TV用のバックライトとして好適なものであり、2つのFETブリッジ3と、4つのインバータトランス4と、8本のCCFL5と、1つの制御IC2とを備え、この1つの制御IC2によって複数のFETブリッジ3を作動させ、複数のCCFL5を駆動するものである。
【0034】
各FETブリッジ3は、例えば、PMOSとNMOSの各2つのFETを有する直列回路が並列接続された負荷駆動用のHブリッジ(フルブリッジ)からなり、インバータトランス4の一次側に接続されている。
【0035】
各インバータトランス4は、2入力2出力型のリーケージトランスからなり、互いに並列に接続された2つの一次巻線4pと、2つの一次巻線4pにそれぞれ対応する二次巻線4sが設けられている。また、各二次巻線4sの一端側は、2本のCCFL5、5により構成された擬似U字管の両端にそれぞれ接続され、各二次巻線4sの他端側は、それぞれ抵抗R1を介してグラウンドに接続されている。この抵抗R1は、CCFL5に流れる電流を電圧に変換する電流電圧変換回路として機能する。
【0036】
本実施形態では、2つのFETブリッジ3のそれぞれの出力に、2つのインバータトランス4の4つの一次巻線4pが並列に接続され、1つのFETブリッジ3で2つのインバータトランス4を駆動し、それぞれのインバータトランス4で、2本のCCFL5を駆動する構成となっている。
【0037】
また、インバータトランス4の二次側回路には、寄生容量が存在しており、図1には、CCFL5に寄生する寄生容量CCFL、及び、二次側回路に発生するその他の寄生容量(例えば、二次巻線に発生する寄生容量やその他の配線に発生する寄生容量)C0が、それぞれ等価的なコンデンサとして示されている。
【0038】
FETブリッジ3は、直流電源からの電圧Vinを入力して、制御IC2からの駆動パルス信号により高周波電圧をインバータトランス4の一次側に入力する。そして、インバータトランス4の二次側には昇圧された電圧が出力され、この昇圧された電圧を二次巻線4sに接続された2本のCCFL5に印加することにより、2本のCCFL5を放電、点灯させている。
【0039】
制御IC2は、図2に示すように、三角波回路(発振回路)10、エラーアンプ回路11、PWM回路12、及びロジック回路13を備えている。制御IC2において、エラーアンプ回路11の一方の入力端(例えば、反転入力)には、電流電圧変換回路R1からの電圧が整流回路Dを介して入力され、エラーアンプ回路11の他方の入力端(例えば、非反転入力)には、所定の基準電圧Vrefが入力される。これによって、エラーアンプ回路11は、CCFL5に流れる電流に応じた出力電圧をPWM回路12に出力し、PWM回路12は、三角波回路10からの三角波出力電圧と、エラーアンプ11の出力電圧を比較して、パルス信号をロジック回路13に出力する。ロジック回路13は、三角波回路10の出力パルス信号とPWM回路12からの出力パルス信号に基づいて、FETブリッジ3へ入力するゲート信号を供給する。
【0040】
FETブリッジ3は、ロジック回路13から出力されるゲート信号により動作し、インバータトランス4の一次巻線4pに交流電流を流して、二次巻線4sに昇圧された電圧を誘起させ、CCFL5を駆動するものである。
【0041】
次に、バックライトインバータ1における、インバータトランス4の駆動周波数について説明する。
【0042】
まず、図3を参照して、インバータトランス4の二次側に形成される共振回路の直列共振周波数と並列共振周波数について説明する。図3は、説明のため、本実施形態におけるバックライトインバータ1の回路構成のうち、1つの共振回路構成部分(C部)近傍とその等価回路を示した図である。図3において、C0及びCCFLは上述した寄生容量である。C部の等価回路に示したMは、インバータトランス4の相互インダクタンス、Le2は二次側リーケージインダクタンスであり、又、RはCCFL5のランプインピーダンスである。
【0043】
このバックライトインバータにおいて、インバータトランス4の二次側には、インバータトランス4の二次巻線4sから発生するリーケージインダクタンスLe2と、等価的にインバータトランス4の二次巻線4sに対して並列に接続されたコンデンサとしてみなされる寄生容量C0及びCCFLとを含む共振回路が形成されており、その直列共振周波数Fsは、リーケージインダクタンスLe2、及び、本実施形態における容量成分であるC0とCCFLの合成容量によって与えられ、並列共振周波数Fpは、相互インダクタンスM、リーケージインダクタンスLe2、及び容量成分C0、CCFLによって与えられる。
すなわち、合成容量C=C0+CCFLとした時、
Fs=1/(2π√(Le2×C))
Fp=1/(2π√((Le2+M)×C))
となる。
【0044】
図1に示す構成を備えたバックライトインバータ1に対して、インピーダンスアナライザーにより、ゲインの周波数特性とフェーズの周波数特性を測定した結果を、図4に示す。ここで、ゲインとは、インバータトランス4の一次側の電流と電圧との比を意味し、インバータトランス4の負荷の一次側から見たアドミッタンスに相当する。また、フェーズとは、インバータトランス4の一次側の電圧と電流との位相差を意味する。
【0045】
また、図4に示す周波数特性は、CCFL5として低ガス圧タイプのCCFLを用いて測定されたものである。尚、本発明において、「低ガス圧タイプ」のCCFLとは、ランプ内の気圧が約8kPa(60Torr)未満のCCFLであることを意味し、「通常ガス圧タイプ」とは、ランプ内の気圧が約8kPa(約60Torr)以上であることを意味する。
【0046】
図4に示すように、ゲイン特性曲線の直列共振周波数Fsおよび並列共振周波数Fpとの間に、通常想定されるゲイン特性曲線(図4に一点鎖線で示す曲線N)から実際のゲイン特性が外れて急激に変化するピーク波形(周波数FiLと周波数FiUとの間の部分)が出現している。本発明では、このピーク波形の(低周波数側から掃引したときの)開始点及び終了点を、それぞれ第1の変曲点P1及び第2の変曲点P2という。
そして、本実施形態におけるバックライトインバータ1は、動作周波数として、この第1の変曲点P1と第2の変曲点P2との間に対応する周波数範囲を避け、共振回路の並列共振周波数Fpと直列共振周波数Fsとの間の周波数範囲に含まれ、かつ、インバータトランス4のゲイン特性曲線の第1の変曲点P1と第2の変曲点P2との間に対応する周波数範囲に含まれない動作周波数で、言い換えれば、並列共振周波数Fp以上、かつ、第1の変曲点P1における周波数FiL未満(ΔFpiの範囲)の動作周波数、又は、第2の変曲点P2における周波数FiUより高く、かつ、直列共振周波数Fs以下(ΔFisの範囲)の動作周波数で、インバータトランス4を駆動するものである。
【0047】
一般に、ゲイン特性が、図4に示す第1の変曲点P1と第2変曲点P2との間のようなピーク波形を示す周波数を駆動周波数とすると、CCFL5に流れるランプ電流のばらつきが大きくなるため、CCFL5の輝度が不安定となり、LCDの表面がちらつきが生じる。本発明では、上述した動作周波数でインバータトランスを駆動するようにしたため、ランプ電流のばらつきが小さくなり、輝度が安定し、LCDの表面のちらつきが低減される。
【0048】
また、次に説明するように、周囲温度が大きく変化する使用環境において複数のCCFL5を点灯させる場合には、さらに動作周波数を限定することが望ましい。図5は、特定の動作周波数に対して、複数のCCFL5のそれぞれに流れるランプ電流の差の最大値(ランプ電流の最大値と最小値との差)を実測した結果を示すグラフであり、Aは常温(25℃)の場合、Bは低温(−30℃)の場合の値を示している。
【0049】
図5に示すように、低温環境においては、常温に比べて、第1の変曲点P1と第2の変曲点P2の間の部分に対応する周波数範囲(周波数FiLと周波数FiUの間)はもとより、その周辺の周波数においてもランプ電流のばらつきが急激に大きくなっていることがわかる。一般に、CCFLの輝度のばらつきを小さくするためには、複数のCCFLのそれぞれに流れるランプ電流の差の最大値を1mA以下に抑えることが好ましい。したがって、周囲温度が大きく変化する使用環境において、この条件を満足させるためには、図5に示す周波数FcLとFcUの間の周波数範囲を除く動作周波数、すなわち、並列共振周波数Fp以上かつ周波数FcL以下(図4に示すΔFpcの範囲)の動作周波数、あるいは、周波数FcU以上かつ直列共振周波数Fs以下(図4に示すΔFcsの範囲)の動作周波数で、インバータトランス4を駆動することが望ましい。
【0050】
上記の周波数範囲に含まれる周波数を動作周波数としてインバータトランスを駆動することにより、周囲温度が変化する環境においてもランプ電流のばらつきが抑えられ、輝度分布の均一化が実現できる。
【0051】
さらに、ランプ寿命を長くするためには、電流のひずみをできる限り抑制することが必要であり、そのためには、下限の動作周波数を次のように設定することが好ましい。
【0052】
図6は、ランプ電流ILの波形を示す図であり、図6(a)はひずみの無い理想的な電流波形、図6(b)はひずみを生じた電流波形を示している。ここで、図1に示すバックライトインバータ1のように、フローティング駆動方式でCCFL5を駆動する場合、電流波形の測定ポイントは、2本のCCFL5、5の中点である。
【0053】
図6(b)では、波高率(ピーク電流をIo−p、実効電流をIrmsとした場合、Io−p/Irmsとなる)が1.6の時の電流波形を示しているが、ランプ電流ILのひずみがランプ寿命に出来る限り影響しないようにするためには、ランプ電流ILの波高率を1.6以下にする必要がある。ここで、ランプ電流ILの波高率は、特定の周波数Fpr(図4参照)より低い周波数では1.6よりも大きくなるため、第1の変曲点P1より低い周波数領域でインバータトランスを駆動する場合は、周波数Fpr以上の動作周波数でインバータトランスを駆動するようにすることが望ましい。
【0054】
このように、ランプ電流ILの波高率を1.6以下の動作周波数でインバータトランスを駆動することにより、ランプ寿命を長くすることができる。尚、フローティング駆動方式において、電流波形の測定ポイントをCCFL5、5の中点とすることにより、波高率測定の正確性が向上する。また、CCFL5を、その一端をグラウンドに接続したシングルエンド駆動方式により駆動する場合には、CCFLのグラウンド側で測定することが望ましい。
【0055】
次に、バックライントインバータ1の変換効率を向上させるためには、インバータトランス4の駆動周波数について、上限の動作周波数を次のように設定することが好ましい。
【0056】
動作周波数が直列共振周波数Fsに近づくにしたがい、フェーズの値が小さくなるため、インバータトランスに流れる励磁電流が多くなり、変換効率が悪化する。実験によれば、フェーズの値を−45°以上に設定することにより、変換効率が向上することがわかっており、したがって、位相が−45°を示す周波数Ff(図4参照)以下の動作周波数でインバータトランスを駆動することが望ましい。
【0057】
このように、インバータトランス4のフェーズの値を−45°以上に設定することにより、ランプ電流のばらつきも抑えることが可能となり、輝度分布の均一化が実現できるとともに、インバータトランス4の変換効率を向上させることができる。
【0058】
また、低ガス圧タイプのランプに対しては、第1の変曲点P1における周波数FiLよりも低い動作周波数でインバータトランスを駆動し、通常ガス圧タイプのランプに対しては、第2の変曲点における周波数FiUよりも高い動作周波数でインバータトランスを駆動することが好ましい。このことについて、具体的に説明すれば、次のとおりである。
【0059】
図4に示す測定マークMは、低ガス圧タイプのCCFLに対して、第1の変曲点P1における周波数FiLよりも低い動作周波数でインバータトランスを駆動した場合のゲインとフェーズを測定した測定点である。この測定点において、ゲインの値は−45.7577dB、フェーズの値は−19.1759°を示している。これに対して、図7に示すゲイン特性及びフェーズ特性において、測定マークMは、低ガス圧タイプのCCFLに対して、第2の変曲点P2における周波数FiUよりも高い動作周波数でインバータトランスを駆動した場合のゲインとフェーズを測定した測定点である。この測定点では、フェーズの値が−54.9031°と大きくなっており、これによって、インバータトランスの駆動効率が悪くなり、インバータトランスやFETブリッジを構成するスイッチング素子(MOS FET)の発熱が大きくなる。このため、放熱板が必要となり、コストアップにつながる。
【0060】
図8に示すゲイン特性及びフェーズ特性において、測定マークMは、通常ガス圧タイプのCCFLに対して、第2の変曲点P2における周波数FiUよりも高い動作周波数でインバータトランスを駆動した場合のゲインとフェーズを測定した測定点である。この測定点において、ゲインの値は−47.9630dB、フェーズの値が−38.1203°を示している。これに対して、図9に示すゲイン特性及びフェーズ特性において、測定マークMは、通常ガス圧タイプのCCFLに対して、第1の変曲点P1における周波数FiLよりも低い動作周波数でインバータトランスを駆動した場合のゲインとフェーズを測定した測定点である。この測定点では、フェーズが2.08183°となっており、このことは、インバータとしての動作が不安定であることを意味する。
【0061】
このように、低ガス圧タイプのCCFLに対しては、第1の変曲点P1における周波数よりも低い動作周波数でインバータトランスを駆動し、通常ガス圧タイプのCCFLに対しては、第2の変曲点P2における周波数よりも高い動作周波数でインバータトランスを駆動することにより、インバータトランスの変換効率が良好で、かつ動作を安定にする駆動を実現することができる。
【0062】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態におけるインバータトランス4とCCFL5の接続は、図1に示すように、インバータトランス4の一次巻線を並列接続し、擬似U字管タイプのCCFLを駆動するものとしたが、本発明は、この回路構成に限定されるものではなく、例えば、図10(a)に示すような、2つのインバータトランスT1、T1’のそれぞれの一次巻線を直列接続とし、1本の直管CCFLの両端に、インバータトランスT1の二次巻線の一端及びインバータトランスT1’の二次巻線の一端をそれぞれ接続してフローティング駆動する回路構成、図10(b)に示すような、2つのインバータトランスT1、T1’のそれぞれの一次巻線を並列接続とし、1本の直管CCFLの両端に、インバータトランスT1の二次巻線の一端及びインバータトランスT1’の二次巻線の一端をそれぞれ接続してフローティング駆動する回路構成、図10(c)に示すような、1つのインバータトランスT1の一次巻線を並列接続し、1本の直管CCFLの両端に、インバータトランスT1の二次巻線の一端を接続し、直管CCFLの一端をグラウンドに接続してシングルエンド駆動する回路構成、図10(d)に示すように、1つのインバータトランスT1の一次巻線を並列接続とし、直管を折り曲げたU字管タイプあるいはコ字管タイプ(図ではU字管タイプの例)のCCFLをフローティング駆動する回路構成にも適用できる。
【0063】
さらに、上述した実施形態では、インバータトランスの二次側に形成される共振回路の容量成分は、寄生容量からなるものとしたが、本発明において、インバータトランスの二次側に、適切な容量を有するコンデンサを付加容量として二次巻線に対して並列に接続するものであってもよい。この場合、本発明に係る共振回路の容量成分は、インバータトランスの二次側回路に発生する寄生容量と、上記付加容量との合成容量からなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータの回路構成図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、制御ICの概略構成を示す回路構成図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、インバータトランスの二次側に形成される共振回路の要部を示す回路構成図及びその等価回路図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、低ガス圧タイプのCCFLを駆動した場合のゲイン特性及びフェーズ特性を測定した結果を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、複数のCCFLのそれぞれに流れるランプ電流の差の最大値を測定した結果を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、ランプ電流の葉波形を示したグラフであり、(a)はひずみの無い理想的な電流波形、(b)はひずみを生じた電流波形を示す。
【図7】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、低ガス圧タイプのCCFLを駆動した場合のゲイン特性及びフェーズ特性を測定した結果を示す別のグラフである。
【図8】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、通常ガス圧タイプのCCFLを駆動した場合のゲイン特性及びフェーズ特性を測定した結果を示すグラフである。
【図9】本発明の一実施形態におけるバックライトインバータにおいて、通常ガス圧タイプのCCFLを駆動した場合のゲイン特性及びフェーズ特性を測定した結果を示す別のグラフである。
【図10】(a)〜(d)は、それぞれ本発明の別の実施形態におけるバックライトインバータの回路構成図である。
【図11】従来のバックライトインバータのゲイン特性及びフェーズ特性を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
1:バックライトインバータ、2:制御IC、3:FETブリッジ、4:インバータトランス、4p:一次巻線、4s:二次巻線、5:CCFL(冷陰極ランプ)、CCFL:寄生容量(CCFLの寄生容量)、C0:寄生容量(二次巻線、二次側配線等の寄生容量)、P1:第1の変曲点、P2:第2の変曲点、Fp:並列共振周波数、Fs:直列共振周波数
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のインバータトランスと複数の冷陰極ランプとを接続してなるバックライトインバータであって、前記インバータトランスに設けられる複数の一次巻線を直列または並列に接続し、前記インバータトランスの二次側にリーケージインダクタンスと容量成分を含む共振回路を形成するとともに、前記共振回路の並列共振周波数と直列共振周波数との間の周波数範囲に含まれ、かつ、前記インバータトランスのゲイン特性曲線の第1の変曲点と第2の変曲点との間に対応する周波数範囲に含まれない動作周波数で、前記インバータトランスを駆動することを特徴とするバックライトインバータ。
【請求項2】
前記動作周波数は、前記複数の冷陰極ランプのそれぞれに流れるランプ電流の最大値と最小値との差が1mA以内となる周波数とすることを特徴とする請求項1に記載のバックライトインバータ。
【請求項3】
前記動作周波数の下限値は、フローティング駆動方式においては、前記複数の冷陰極ランプの中点のランプ電流の波高率が1.6以下、シングルエンド駆動方式においては、前記複数の冷陰極ランプのグラウンド側のランプ電流の波高率が1.6以下を示す周波数とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のバックライトインバータ。
【請求項4】
前記動作周波数の上限値は、前記インバータトランスの一次側の電圧と電流との位相差が−45°以上となる範囲の周波数とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のバックライトインバータ。
【請求項5】
前記直列共振周波数は、前記インバータトランスの二次巻線から発生するリーケージインダクタンスと前記容量成分とで決定され、前記並列共振周波数は、前記インバータトランスの相互インダクタンスと、前記リーケージインダクタンスと、前記容量成分とで決定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のバックライトインバータ。
【請求項6】
前記共振回路の前記容量成分は、前記インバータトランスの二次側回路に発生する寄生容量を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のバックライトインバータ。
【請求項7】
前記複数の冷陰極ランプは、1本の直管からなる直管タイプ、2本の直管を直列に接続した擬似U字管タイプ、直管を折り曲げたU字管タイプ、または直管を折り曲げたコ字管タイプのうちのいずれか1種を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のバックライトインバータ。
【請求項8】
前記複数の冷陰極ランプは、ランプ内の気圧が約8kPa未満であり、前記ゲイン特性曲線が前記第1の変曲点を示す周波数よりも低い駆動周波数で前記インバータトランスを駆動することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のバックライトインバータ。
【請求項9】
前記複数の冷陰極ランプは、ランプ内の気圧が約8kPa以上であり、前記ゲイン特性曲線が前記第2の変曲点を示す周波数よりも高い駆動周波数で前記インバータトランスを駆動することを特徴とする請求項項1から7のいずれか1項に記載のバックライトインバータ。
【請求項10】
1以上のインバータトランスと複数の冷陰極ランプを接続してなるバックライトインバータを構成し、前記インバータトランスの二次側のリーケージインダクタンス及び容量成分を含む共振回路の並列共振周波数と直列共振周波数との間の周波数範囲に含まれ、かつ、前記インバータトランスのゲイン特性曲線の第1の変曲点と第2の変曲点との間に対応する周波数範囲に含まれない動作周波数で、前記インバータトランスを駆動することを特徴とするバックライトインバータの駆動方法。
【請求項1】
1以上のインバータトランスと複数の冷陰極ランプとを接続してなるバックライトインバータであって、前記インバータトランスに設けられる複数の一次巻線を直列または並列に接続し、前記インバータトランスの二次側にリーケージインダクタンスと容量成分を含む共振回路を形成するとともに、前記共振回路の並列共振周波数と直列共振周波数との間の周波数範囲に含まれ、かつ、前記インバータトランスのゲイン特性曲線の第1の変曲点と第2の変曲点との間に対応する周波数範囲に含まれない動作周波数で、前記インバータトランスを駆動することを特徴とするバックライトインバータ。
【請求項2】
前記動作周波数は、前記複数の冷陰極ランプのそれぞれに流れるランプ電流の最大値と最小値との差が1mA以内となる周波数とすることを特徴とする請求項1に記載のバックライトインバータ。
【請求項3】
前記動作周波数の下限値は、フローティング駆動方式においては、前記複数の冷陰極ランプの中点のランプ電流の波高率が1.6以下、シングルエンド駆動方式においては、前記複数の冷陰極ランプのグラウンド側のランプ電流の波高率が1.6以下を示す周波数とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のバックライトインバータ。
【請求項4】
前記動作周波数の上限値は、前記インバータトランスの一次側の電圧と電流との位相差が−45°以上となる範囲の周波数とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のバックライトインバータ。
【請求項5】
前記直列共振周波数は、前記インバータトランスの二次巻線から発生するリーケージインダクタンスと前記容量成分とで決定され、前記並列共振周波数は、前記インバータトランスの相互インダクタンスと、前記リーケージインダクタンスと、前記容量成分とで決定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のバックライトインバータ。
【請求項6】
前記共振回路の前記容量成分は、前記インバータトランスの二次側回路に発生する寄生容量を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のバックライトインバータ。
【請求項7】
前記複数の冷陰極ランプは、1本の直管からなる直管タイプ、2本の直管を直列に接続した擬似U字管タイプ、直管を折り曲げたU字管タイプ、または直管を折り曲げたコ字管タイプのうちのいずれか1種を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のバックライトインバータ。
【請求項8】
前記複数の冷陰極ランプは、ランプ内の気圧が約8kPa未満であり、前記ゲイン特性曲線が前記第1の変曲点を示す周波数よりも低い駆動周波数で前記インバータトランスを駆動することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のバックライトインバータ。
【請求項9】
前記複数の冷陰極ランプは、ランプ内の気圧が約8kPa以上であり、前記ゲイン特性曲線が前記第2の変曲点を示す周波数よりも高い駆動周波数で前記インバータトランスを駆動することを特徴とする請求項項1から7のいずれか1項に記載のバックライトインバータ。
【請求項10】
1以上のインバータトランスと複数の冷陰極ランプを接続してなるバックライトインバータを構成し、前記インバータトランスの二次側のリーケージインダクタンス及び容量成分を含む共振回路の並列共振周波数と直列共振周波数との間の周波数範囲に含まれ、かつ、前記インバータトランスのゲイン特性曲線の第1の変曲点と第2の変曲点との間に対応する周波数範囲に含まれない動作周波数で、前記インバータトランスを駆動することを特徴とするバックライトインバータの駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−146699(P2009−146699A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322191(P2007−322191)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】
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