説明

バッター状生地を使用したペットフードの製造方法

【課題】嗜好性が最も良い畜肉、魚肉又はこれらのプロテアーゼ分解物を多く使用しても加工適性に問題なく、嗜好性に優れたペットフードの製造方法を提供すること。
【解決手段】原料混合物を水分が35質量%以上50質量%以下のバッター状生地に調製して、該生地をマイクロ波を照射することにより65℃以上100℃以下で加熱凝固させ、これを切断成形し、熱風乾燥で水分を10%以下に調製することを特徴とするペットフードの製造方法である。また、熱風乾燥を150℃以上200℃以下で、10分間以上30分間以下行う前記ペットフードの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッター状生地を使用したペットフードの製造方法。
【背景技術】
【0002】
犬猫のような肉食動物のための総合栄養食(ペットフード)は、高い蛋白質の含量が求められている。
従来のペットフードの製造方法、例えば、エクストルーダーにより加熱と押し出し成形を同時に行いその後乾燥する方法(例えば特許文献1参照)、あるいは原材料混合物をシート状に成形した後加熱乾燥する方法(例えば特許文献2参照)では蛋白質の含有量を確保するため、水分含量の高いフレッシュな畜肉や魚肉そのプロテアーゼ分解物は加工適性上使用量が限定されていた。
したがって嗜好性の最も良い畜肉、魚肉又はこれらのプロテアーゼ分解物に替えてミートミール、フィッシュミール、グルテンミール又は大豆粕などの乾燥粉末状の動植物蛋白源を使用する為、嗜好性を高めるには限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−300849号公報
【特許文献2】特開2005−13079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、嗜好性が最も良い畜肉、魚肉又はこれらのプロテアーゼ分解物を多く使用しても加工適性に問題なく、嗜好性に優れたペットフードの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、原料混合物を水分が35質量%以上50質量%以下のバッター状生地に調製して、該生地にマイクロ波を照射することにより成形可能な物性となるように加熱凝固させ、これを切断成形し、熱風乾燥で水分を10%以下に調製することにより高蛋白で嗜好性に優れたペットフードが製造できることを見出し本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、原料混合物を水分が35質量%以上50質量%以下のバッター状生地に調製して、該生地をマイクロ波を照射することにより65℃以上100℃以下で加熱凝固させ、これを切断成形し、熱風乾燥で水分を10%以下に調製することを特徴とするペットフードの製造方法である。
また、熱風乾燥を150℃以上200℃以下で、10分間以上30分間以下で行う前記ペットフードの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法によれば高蛋白で嗜好性に優れたペットフードが製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるペットフードとは、原料混合物を水分が35質量%以上50質量%以下のバッター状生地に調製して、該生地にマイクロ波を照射することにより成形可能な物性に加熱凝固させ、これを切断成形し、熱風乾燥で水分を10%以下に調製した製品蛋白質含有量が18質量%以上36質量%以下であるペットフードをいう。
使用する原料は、従来のペットフードに使用されている原料であれば特に限定されず、例えば、小麦、コーン、大豆、米粉、大麦、燕麦などの穀物の粉末、畜肉、魚肉、大豆蛋白、畜肉エキス、魚肉エキス、ミートミール、フィッシュミール、牛脂、ラード、鶏脂、水、ビタミン又はミネラルなどを挙げることができる。
本発明におけるペットフードの好ましい原料配合として、小麦粉100質量部に対し、畜肉又は魚肉のプロテアーゼ分解物が50質量部以上200質量部以下、畜肉又は魚肉が120質量部以下、ミートミール又はフィッシュミールが80質量部以下、油脂が5質量部以上30質量部以下である原料配合又は、小麦粉100質量部に対し、畜肉又は魚肉のプロテアーゼ分解物が100質量部以上200質量部以下、畜肉又は魚肉が10質量部以上100質量部以下、ミートミール又はフィッシュミールが80質量部以下、油脂が5質量部以上30質量部以下である原料配合を挙げることができる。
このような原料配合は、優れた嗜好性を示す配合であるが従来のエクストルーダーを使用した製造方法やシート状に成形し加熱する製造方法では水分が多すぎ作業性が悪く製造が困難であった。
しかし、本発明の方法では製造が可能となっている。
【0008】
本発明におけるバッター状生地の調製方法は、原料をバッター状に均一に混合できれば特に限定はなく、従来のペットフードの製造に使用している方法を使用することができ、例えば、縦型ミキサーやニーダーなどを使用することができる。
バッター状生地はマイクロ波による加熱の前にポンプを使った生地の押出機やデポジッ
ターを使用して任意の形に成形することができる。
成形した生地にマイクロ波の照射を行い、生地を熱凝固させる。
マイクロ波の照射は、原料中の蛋白質を熱変性させるために、生地温度が65℃以上100℃以下になるように行う。
生地温度が100℃を超えるとバッター状生地が焦げ又硬くなりすぎるため後の成形が出来なくなる。
生地温度が65℃未満では生地が生で後の切断成形がべたついてうまく行かなくなる。
マイクロ波照射後の生地は、製麺用の切刃、ギロチンカッター、金型などで成形する。
その後 熱風乾燥機により最終水分を10%以下に調整する。
熱風乾燥は最終水分を10%以下に調整できれば特に限定はないが、150℃以上200℃以下で、10分間以上30分間以下となるように行うことが好ましい。
乾燥温度が150℃未満では、所定水分にするのに乾燥時間が長くなりすぎまた好ましいロースト臭が生じない。
乾燥温度が200℃を超えると、所定水分になったとしても部分的に焦げすぎた製品と
なり好ましくない。
乾燥時間が10分間未満では、所定水分にするのに非常に高い温度処理が必要になり、
製品が部分的に焦げてしまう為好ましくない。
乾燥時間が30分間を超えると、所定水分にするには低温での処理が必要になり、
好ましいロースト臭が生じない。
【実施例】
【0009】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1]
小麦粉100g、マグロのプロテアーゼ分解物180g、カツオすり身40g、チキンミール25g、フィッシュミール25g、牛脂20g、ビタミン・ミネラルミックス10g、水20gを縦型ミキサーでミキシングし、水分含量46質量%のバッター状生地を調製した。
該生地をクリーム絞り袋に入れ、トレー上に径10mmの紐状に100gを押出成形した。
マイクロ波の照射時間を100gに対し600W、1分間として照射後直ちに長さ10mm長に切断成形した。
更にこれを180℃の熱風乾燥機に入れ、水分を8.9質量%にしキャットフード(蛋白質含有量29.0質量%)を得た。
該キャットフードを猫に供したところ50gを10時間以内に完食し優れた嗜好性を示した。
[実施例2]
小麦粉100g、マグロのプロテアーゼ分解物60g、カツオすり身40g、チキンミール50g、フィッシュミール25g、油脂20g、ビタミン・ミネラルミックス10g、水40gを縦型ミキサーでミキシングし、水分含量37質量%のバッター状生地を調製した。
該生地をクリーム絞り袋に入れ、トレー上に径10mmの紐状に100gを押出成形した。
マイクロ波の照射時間を100gに対し600W、1分間として照射後直ちに長さ10mm長に切断成形した。
更にこれを180℃の熱風乾燥機に入れ、水分を8.5質量%にしキャットフード(蛋白質含有量29.2質量%)を得た。
該キャットフードを猫に供したところ50gを10時間以内に完食し優れた嗜好性を示した。
[実施例3]
小麦粉100g、ポークのプロテアーゼ分解物54g、鶏肉ミンチ18g、チキンミール12g、ビタミン・ミネラルミックス8g、油脂13g、水50gを縦型ミキサーでミキシングし、水分含量44%のバッター状生地を調製した。
該生地250gを半径140mmのトレーに流し込み厚さ5mmに充填した。
マイクロ波の照射時間を300gに対し600W、3分間として照射後直ちに長さ10mm×10mmに切断成形した。
更にこれを180℃の熱風乾燥機に入れ、水分を8.2質量%にしドッグフード(蛋白質含有量21.5質量%)を得た。
該ドッグフードをビーグル犬に供したところ100gを5分以内に完食し優れた嗜好性を示した。
[実施例1、4〜6、比較例1〜2]バッター状生地の生地温度の影響
実施例1において、マイクロ波の照射時間を30秒間から5分間まで変化させ、生地温度による影響試験を行った。
製品水分は乾燥時間により調整した。
嗜好性は、猫に試験サンプルとコントロールとして実施例2を同時に十分な量与え、10時間自由に摂取させたときの、実施例1の摂取量を100とした摂取比率を10頭の試験の平均値で評価した。
比較例1は凝固が弱く成形作業が出来なかった。
結果を表1に示す。
【0010】
【表1】

【0011】
マイクロ波照射による製品到達温度が65℃未満では製品の凝固が弱く成形作業が出来なかった。
また製品到達温度が110℃を超えると焦げが生じ、硬くなるため成形作業性が悪く、嗜好性も良くなかった。
【0012】
[実施例2、7〜8、比較例3〜4]バッター状生地水分の影響
実施例2において、加水を表2に示すように調整した以外は実施例2と同様にして生地水分の影響試験を行った。
製品水分は乾燥時間により調整した。
比較例4は粘度が低く成形作業が出来なかった。
実施例1において嗜好性の評価基準を実施例7の摂取量を100とした以外は実施例1と同様にして評価を行った。
結果を表2に示す。
【0013】
【表2】

【0014】
生地水分が多いほど嗜好性が良い傾向にあった。
しかし生地水分50質量%を超えると成形時作業性が悪化し製品とならなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料混合物を水分が35質量%以上50質量%以下のバッター状生地に調製して、該生地をマイクロ波を照射することにより65℃以上100℃以下で加熱凝固させ、これを切断成形し、熱風乾燥で水分を10%以下に調製することを特徴とするペットフードの製造方法。
【請求項2】
熱風乾燥を150℃以上200℃以下で、10分間以上30分間以下行う請求項1に記載のペットフードの製造方法。


【公開番号】特開2011−78364(P2011−78364A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234123(P2009−234123)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】