説明

バッテリモジュール

【課題】 複数のバッテリセル間を仕切るホルダにサーミスタを取り付けたことによる各バッテリセルの温度のバラツキを抑制するとともに、サーミスタの組付性を高める。
【解決手段】 ホルダ12にサーミスタ22を保持するサーミスタ保持部12iはバッテリセル11の底面11dに対向する位置に設けられるので、バッテリセル11の一対の側面11bの一方側から流入して主冷却面11aに沿って流れた後に一対の側面11bの他方側から流出する冷却媒体は、ホルダ12のサーミスタ保持部11iと干渉し難くなる。これにより、複数のホルダ12が同一形状であっても、サーミスタ22の有無によってサーミスタ保持部12iからの冷却媒体の漏れ量が異なってしまうのを防止し、各バッテリセル11の冷却状態を均一化して寿命の延長を図ることができる。しかもサーミスタ22は、開閉自在な弾性爪とホルダ12のサーミスタ係止部12iとの係合により固定されるので、サーミスタ22を簡単かつ確実に固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頂面、底面、一対の主冷却面および一対の側面を有し、前記主冷却面どうしが対向するように積層状態で配置される複数のバッテリセルと、積層された前記複数のバッテリセルの前記主冷却面間に挟持される複数の同一形状のホルダと、前記複数のバッテリセルの少なくとも一つに接するように前記ホルダのサーミスタ保持部に挿入されて保持されるサーミスタとを備え、前記一対の側面の一方側から流入した冷却媒体が前記一対の主冷却面に沿って流れた後に前記一対の側面の他方側から流出するバッテリモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のバッテリセルを、それらの間にセパレータ(ホルダ)を挟んだ状態で積層し、セパレータに沿って流れる冷却媒体でバッテリセルを冷却するものにおいて、セパレータの頂面に形成した開口窓に温度センサ(サーミスタ)を有するセンサホルダをボルトで固定し、温度センサをバッテリセルに接触させることで温度検出を行うものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−287550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリモジュールを構成する全てのバッテリセルの温度を検出する必要がない場合には、複数のセパレータのうちの一部のセパレータだけに温度センサを設ければ良い。この場合、部品の種類の増加を回避するために全てのセパレータを同一部品で構成すると、上記特許文献1に記載された発明では、温度センサが装着されるセパレータは開口窓が塞がれた状態となり、温度センサが装着されないセパレータは開口窓が開放したままの状態となる。その結果、セパレータに沿って流れる冷却媒体が開放した開口窓から漏れたり、逆に余分な冷却媒体が開放した開口窓からセパレータに沿って吸い込まれたりするため、温度センサが装着されたセパレータに接するバッテリセルと、温度センサが装着されていないセパレータに接するバッテリセルとの間に温度のバラツキが発生し、バッテリセルの寿命を低下させる原因となる可能性があった。
【0005】
また上記特許文献1に記載された発明は、温度センサを有するセンサホルダをボルトでセパレータに固定するため、その固定作業が面倒で組付性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、複数のバッテリセル間を仕切るホルダにサーミスタを取り付けたことによる各バッテリセルの温度のバラツキを抑制するとともに、サーミスタの組付性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、頂面、底面、一対の主冷却面および一対の側面を有し、前記主冷却面どうしが対向するように積層状態で配置される複数のバッテリセルと、積層された前記複数のバッテリセルの前記主冷却面間に挟持される複数の同一形状のホルダと、前記複数のバッテリセルの少なくとも一つに接するように前記ホルダのサーミスタ保持部に挿入されて保持されるサーミスタとを備え、前記一対の側面の一方側から流入した冷却媒体が前記一対の主冷却面に沿って流れた後に前記一対の側面の他方側から流出するバッテリモジュールにおいて、前記サーミスタは、前記少なくとも一つのバッテリセルの温度を検出するセンサ部と、前記センサ部を保持するセンサケースとを備え、前記バッテリセルの前記頂面あるいは前記底面に対向する位置に設けられる前記サーミスタ保持部は、サーミスタ挿入部と、前記サーミスタ挿入部よりも前記サーミスタの挿入方向の前方側に設けられる該サーミスタ挿入部よりも幅広のサーミスタ係止部と、前記バッテリセルの前記頂面あるいは前記底面との間に隙間を形成するように配置されるサーミスタ覆い部とを備え、前記センサケースは、前記サーミスタ覆い部を押圧する反力で前記センサ部を前記バッテリセルの前記頂面あるいは前記底面に押し付ける付勢手段と、自由状態での幅が前記サーミスタ挿入部よりも広い開閉自在な弾性爪とを備えることを特徴とするバッテリモジュールが提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記ホルダは、それに隣接する他の前記ホルダの前記サーミスタ保持部に挿入されて保持された前記サーミスタの前記付勢手段の挿入方向先端部が当接する移動規制部を備え、前記付勢手段が前記移動規制部から受ける反力で前記弾性爪が前記サーミスタ係止部に係合する方向に付勢されることを特徴とするバッテリモジュールが提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、隣接する一対のホルダの一方の前記サーミスタ覆い部および他方の前記サーミスタ覆い部間の前記サーミスタの挿入方向の間隔は、前記サーミスタの前記挿入方向の長さよりも広いことを特徴とするバッテリモジュールが提案される。
【0010】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記サーミスタ保持部は前記バッテリセルの端子が配置されていない前記底面に対向する位置に設けられることを特徴とするバッテリモジュールが提案される。
【0011】
尚、実施の形態のセンサ圧着ばね26は本発明の付勢手段に対応する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の構成によれば、バッテリモジュールは、主冷却面どうしが対向するように積層状態で配置される複数のバッテリセルと、積層された複数のバッテリセルの主冷却面間に挟持される複数の同一形状のホルダと、複数のバッテリセルの少なくとも一つに接するようにホルダのサーミスタ保持部に挿入されて保持されるサーミスタとを備えており、サーミスタ保持部はバッテリセルの頂面あるいは底面に対向する位置に設けられるので、バッテリセルの一対の側面の一方側から流入して一対の主冷却面に沿って流れた後に一対の側面の他方側から流出する冷却媒体は、ホルダのサーミスタ保持部と干渉し難くなる。これにより、複数のホルダが同一形状であっても、サーミスタが装着されているホルダのサーミスタ保持部と、装着されていないホルダのサーミスタ保持部とで冷却媒体の漏れ量が異なってしまうのを防止し、各バッテリセルの冷却状態を均一化して寿命の延長を図ることができる。
【0013】
しかもサーミスタは、センサ部と、センサ部を保持するセンサケースとを備え、サーミスタ保持部は、サーミスタ挿入部と、サーミスタ挿入部よりも幅広のサーミスタ係止部と、サーミスタ覆い部とを備え、センサケースは、サーミスタ覆い部を押圧する反力でセンサ部をバッテリセルに押し付ける付勢手段と、開閉自在な弾性爪とを備えるので、サーミスタをサーミスタ保持部に挿入すると、サーミスタ挿入部を通過した弾性爪が拡開してサーミスタ係止部に係合することで、サーミスタをサーミスタ保持部に簡単かつ確実に固定できるだけでなく、この状態で付勢手段がセンサ部をバッテリセルに押し付けることでサーミスタによる温度測定を精度よく行うことができる。
【0014】
また請求項2の構成によれば、ホルダは、それに隣接する他のホルダのサーミスタ保持部に挿入されて保持されたサーミスタの付勢手段の挿入方向先端部が当接する移動規制部を備え、付勢手段が移動規制部から受ける反力で弾性爪がサーミスタ係止部に係合する方向に付勢されるので、組付け後のサーミスタのガタつきを防止することができる。更に、弾性爪やサーミスタ係止部に生じる寸法誤差を、付勢手段がサーミスタの挿入方向に撓むことで、吸収することができる。
【0015】
また請求項3の構成によれば、隣接する一対のホルダの一方のサーミスタ覆い部および他方のサーミスタ覆い部間のサーミスタの挿入方向の間隔は、サーミスタの挿入方向の長さよりも広いので、バッテリモジュールの組立て後にサーミスタの取付けを行うことが可能になり、バッテリモジュールを組立てる際にサーミスタが邪魔になることがない。
【0016】
また請求項4の構成によれば、サーミスタ保持部はバッテリセルの端子が配置されていない底面に対向する位置に設けられるので、サーミスタ保持部に保持されたサーミスタがバッテリセルの端子に接続される配線と干渉するのが防止され、サーミスタの取付けが容易になって組付性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】バッテリモジュールの分解斜視図。
【図2】図1の2部拡大図。
【図3】ホルダの四面図。
【図4】図1の4方向矢視図。
【図5】図4の5−5線断面図。
【図6】エンドプレートの斜視図。
【図7】図5の7−7線拡大断面図。
【図8】サーミスタの斜視図。
【図9】図5の9−9線拡大断面図。
【図10】図9の10−10線断面図。
【図11】図5に対応する作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜図11に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1に示すように、ハイブリッド車両用のバッテリモジュールMは、例えばリチウムイオンバッテリよりなる複数のバッテリセル11…を備える。直方体状のバッテリセル11は、横長の長方形状の一対の主冷却面11a,11aと、一対の主冷却面11a,11aに挟まれた一対の側面11b,11bと、一対の主冷却面11a,11aに挟まれた頂面11cおよび底面11dとを備えており、頂面11cには一対の端子11e,11eが突設される。複数のバッテリセル11…は、それらの主冷却面11a…の間に合成樹脂製の同一形状のホルダ12…を挟持した状態で積層される。
【0020】
尚、本明細書において、複数のバッテリセル11…が積層される方向を積層方向と定義し、バッテリセル11の長方形の主冷却面11aの長辺の方向を幅方向と定義し、短辺の方向を高さ方向(上下方向)と定義する。
【0021】
交互に積層された複数のバッテリセル11…および複数のホルダ12…のうち、積層方向の両端に位置する一対のホルダ12,12の更に外側に一対のエンドプレート13,13が積層され、これら一対のエンドプレート13,13はバッテリセル11…の側面11b,11bに沿って積層方向に配置された一対のラダーフレーム14,14の両端部にボルト15…で締結される。これにより、バッテリセル11…、ホルダ12…およびエンドプレート13,13は積層状態を維持するように緊縛される。一方のエンドプレート13の外側に、バッテリセル11の電圧を検出するセンサユニット16がボルト17,17で固定される。
【0022】
次に、図2、図3、図9および図10に基づいてホルダ12の構造を説明する。
【0023】
全てのホルダ12…は互換可能な同一形状の部材であって、隣接するバッテリセル11の主冷却面11aに沿う本体部12aを備える。本体部12aは幅方向に沿って延びる複数の折れ線で波板状に折り曲げられており、バッテリセル11の主冷却面11aとの間に冷却風が流れる複数の冷却風通路18…(図7および図9参照)を構成する。
【0024】
本体部12aの上部には、L字状断面に形成されてバッテリセル11の一対の側面11b,11bおよび頂面11c間の角部に係合可能な一対の第1係合部12b,12bと、積層方向一方側に突出してバッテリセル11の頂面11cの幅方向中央部に係合可能な板状の第2係合部12cとが設けられる。本体部12aの一方の側部には、積層方向一方側に突出してバッテリセル11の一方の側面11bの高さ方向中央部に係合可能な板状の第3係合部12dが設けられる。第3係合部12dには、冷却風通路18…を遮らないように、2個の開口12e,12eが形成される。
【0025】
本体部12aに下部には、積層方向両側に突出してバッテリセル11の一対の側面11b,11bの下端部に係合可能な一対の板状の第4係合部12f,12fと、積層方向他方側に突出してバッテリセル11の底面11dの幅方向両端部に当接する一対の板状の上側荷重伝達部12g,12gと、積層方向一方側に突出して前記上側荷重伝達部12g,12gの下面に重なり合う一対の板状の下側荷重伝達部12h,12hと、一対の板状の上側荷重伝達部12g,12gに挟まれる位置から下向きかつ積層方向一方側に突出する一対のサーミスタ保持部12i,12iとが設けられる。
【0026】
本体部12aの下端であって一対の板状の下側荷重伝達部12h,12hの上方に連なる部分に、幅方向に延びる一対の溝状の結露水保持凹部12j,12j(図2および図7参照)が形成される。また一対の第4係合部12f,12fのうち、冷却風通路18…を流れる冷却風の下流側の第4係合部12fには、それを貫通して一方の結露水保持凹部12jに連通する結露水排出孔12k(図2、図5および図7参照)が形成される。
【0027】
図10に最も良く示されるように、一対のサーミスタ保持部12i,12iは、本体部12aの下縁に連なる一対のサーミスタ挿入部a,aと、サーミスタ挿入部a,aから後述するサーミスタ22(図8参照)の挿入方向の奥側に連なる一対のサーミスタ係止部b,bと、サーミスタ係止部b,bからその下面を覆うように板状に張り出す覆い部c,cとを備える、一対の開口部a,a間の幅W1に対して、一対のサーミスタ係止部b,b間の幅は広がっている。ホルダ12の下端には、サーミスタ保持部12i,12iが突出する方向と逆方向に2個の移動規制部12m,12m(図2、図3、図9および図10参照)が突設される。
【0028】
隣接する2個のホルダ12,12どうしは、その本体部12aから延びる第1係合部12b,12b、第4係合部12f,12f、上側荷重伝達部12g,12gおよび下側荷重伝達部12h,12hが相互に噛み合うことで一定に位置関係に結合される。このとき、一方のホルダ12の下側荷重伝達部12h,12hの上面に、他方のホルダ12の上側荷重伝達部12g,12gの下面が重なり合い、両者の間にラビリンス33(図7参照)が形成される。そしてホルダ12の本体部12aがバッテリセル11の主冷却面11aに当接し、ホルダ12の第1係合部12b,12b、第2係合部12c、第3係合部12d、第4係合部12f,12fおよび上側荷重伝達部12g,12gがバッテリセル11の側面11b,11b、頂面11cおよび底面11dに当接することで、ホルダ12の内部にバッテリセル11が安定した姿勢で保持される。
【0029】
次に、図1、図5および図6に基づいてエンドプレート13,13の構造を説明する。一対のエンドプレート13,13は実質的に鏡面対象な形状を有しているため、その代表として一方のエンドプレート13の構造を説明する。
【0030】
エンドプレート13は、積層方向の端部に位置するホルダ12の本体部12aに当接する内壁面13aと、内壁面13aの反対側の外壁面13bとを備えており、内壁面13aおよび外壁面13b間に一対の側面13c,13c、頂面13dおよび底面13eが形成される。
【0031】
エンドプレート13の外壁面13bには、その頂面13dおよび底面13eを超えて上下方向に突出する2本の平行な中空棒状の第1固定部13f,13fが一体に形成されるとともに、その一対の側面13c,13cを超えて幅方向に突出する1本の中空棒状の第2固定部13gが一体に形成される。第1固定部13f,13fの内部を貫通孔13h,13hが貫通し、第2固定部13gの内部を貫通孔13iが貫通する。第1、第2固定部13f,13f,13gは外壁面13bから畝状に膨出しており、よって第1、第2固定部13f,13f,13gはエンドプレート13の剛性を高める補強リブとして機能する。
【0032】
2本のエンドプレート13の頂面から突出する第1固定部13f,13fの先端の高さは、バッテリセル11の頂面11cから突出する一対の端子11e,11eの高さよりも高く設定されている(図5参照)。またエンドプレート13の頂面から突出する2本の第1固定部13f,13fの幅方向の位置は、バッテリセル11の頂面11cから突出する一対の端子11e,11eよりも幅方向外側に位置している(図4および図5参照)。
【0033】
エンドプレート13の一対の側面13c,13cには、ラダーフレーム14の端部を締結する2本のボルト15,15が螺合する2個のボルト孔13j,13jがそれぞれ形成されるとともに、一方のエンドプレート13の外壁面13bにはセンサユニット16を締結する2本のボルト17,17が螺合する2個のボルト孔13k,13kが形成される。このボルト孔13k,13kは、センサユニット16が締結されない側のエンドプレート13には設けられていない。
【0034】
図1、図4および図5から明らかなように、ラダーフレーム14は金属板をプレス加工して構成したもので、各ホルダ12…の本体部12aにより形成される冷却風通路18…(図7および図9参照)に冷却風を供給・排出すべく、その本体部14aに上下方向に延びる複数のスリット14b…が形成される。ラダーフレーム14の上縁および下縁には、そこを幅方向内向きに折り曲げた上部フランジ14cおよび下部フランジ14dが形成されており、下部フランジ14dの上面に断面U字状の板ばね20…が各バッテリセル11…に対応して設けられている。また本体部14aの内壁面には、バッテリセル11…の側面11b…との間をシールする環状のシール部材21が設けられる。
【0035】
従って、一対のラダーフレーム14,14を一対のエンドプレート13,13に締結した状態では、ホルダ12の第1係合部12b,12bがラダーフレーム14,14の上部フランジ14c,14cの下面および本体部14a,14aの上部内面に当接し、ホルダ12の第4係合部12f,12fがラダーフレーム14,14の本体部14a,14aの下部内面に当接し、かつホルダ12の下部フランジ14d,14dの上面に設けた板ばね20,20がホルダ12の下側荷重伝達部12h,12hの下面に当接して上方に付勢することで、一対のラダーフレーム14,14間に各ホルダ12…が安定した状態で支持される。
【0036】
次に、図8〜図10に基づいてサーミスタ22の取付構造を説明する。
【0037】
サーミスタ22はホルダ12のサーミスタ保持部12i,12iに装着されてバッテリセル11の温度を検出するためのもので、バッテリモジュールMを構成する複数のバッテリセル11…に対して少なくとも1個のサーミスタ22が設けられる(図4参照)。
【0038】
サーミスタ22は、バッテリセル11の底面11dに当接するセンサ部23と、センサ部23をハーネス24に接続するコネクタ部25と、センサ部23をバッテリセル11の底面11dに押し付ける一対の断面U字状のセンサ圧着ばね26,26と、センサ部23、コネクタ部25および一対のセンサ圧着ばね26,26を支持する合成樹脂製のセンサケース27とを備える。センサケース27は自己の弾性で開閉可能な一対の弾性爪27a,27aを備えており、自由状態における一対の弾性爪27a,27a間の幅W2は、ホルダ12のサーミスタ保持部12iの一対の開口部a,a間の幅W1に対して、W2>W1の関係にある(図10参照)。また隣接する2個のホルダ12,12のサーミスタ保持部12i,12i間の距離Dは、サーミスタ22の挿入方向の長さLよりも大きく設定されている(図9参照)。サーミスタ22から延びるハーネス24はセンサユニット16に接続され、センサユニット16はサーミスタ22の出力からバッテリセル11の温度を検出する。
【0039】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0040】
空気中の水分がバッテリセル11…の表面に結露して生成した結露水が重力で流下してラダーフレーム14の下部フランジ14dに溶接した板ばね20…を濡らすと、複数のバッテリセル11…が板ばね20…およびラダーフレーム14を介して短絡してしまう可能性がある。また隣接する板ばね20…どうしが結露水によって短絡すると、複数のバッテリセル11…がラダーフレーム14を介さずに板ばね20…だけを介して短絡してしまう場合もある。この短絡を防止するには、バッテリセル11の下部と板ばね20との間の短絡経路を遮断すること、つまりバッテリセル11の下部と板ばね20との間に結露水が連続的に介在しないようにすることが必要である。
【0041】
本実施の形態によれば、バッテリセル11の底面11dと板ばね20との間には、上側荷重伝達部12gおよび下側荷重伝達部12hの当接面に形成される距離の長いラビリンス33(図7参照)が介在するため、前記ラビリンス33の全長の何れか1カ所で結露水が途切れるだけでバッテリセル11の底面11dと板ばね20との間の電気的導通が遮断され、バッテリセル11…どうしの短絡が確実に防止される。しかも2個のバッテリセル11,11間には少なくとも2個のラビリンス33,33が介在するため、2個のバッテリセル11,11が2個のラビリンス33,33を介して短絡する事態は殆ど発生しないと考えられる。
【0042】
それに対し、ホルダ12が上側荷重伝達部12gおよび下側荷重伝達部12hを備えておらず、単に積層方向に突き合わされているだけだと仮定すると、その突き合わせ部に結露水が浸入するだけでバッテリセル11の底面11dと板ばね20とが導通してしまい、バッテリセル11…どうしの短絡が発生する可能性がある。
【0043】
また本実施の形態によれば、ホルダ12の本体部12aが上側荷重伝達部12g,12gに接続する部分に結露水保持凹部12j,12j(図7参照)が形成されているため、この結露水保持凹部12j,12jに結露水を一時的に保持して前記ラビリンス33への流入を阻止することで、短絡の発生を一層確実に防止することができる。
【0044】
また図4に示すように、バッテリモジュールMを冷却すべく一方のラダーフレーム14に沿って流れる冷却風はラダーフレーム14のスリット14b…からホルダ12…の冷却風通路18…に流入し、そこを流れる間にバッテリセル11…の主冷却面11a…との間で熱交換を行った後に、他方のラダーフレーム14のスリット14b…を通過して排出される。冷却風通路18…の下流側に位置する結露水保持凹部12j…に溜まった結露水は、第4係合部12f…に阻止されて排出され難くなるが、冷却風通路18…の下流側に位置する第4係合部12f…に結露水排出孔12k…(図5および図7参照)を形成したことで、結露水保持凹部12j…からの結露水の排出を促進することができる。
【0045】
尚、冷却風通路18…の上流側に位置する結露水保持凹部12j…に溜まった結露水は冷却風に押されてホルダ12…の下面の幅方向中央部に排出されるため、この結露水によって一方のラダーフレーム14の板ばね20…と他方のラダーフレーム14の板ばね20…とが導通してバッテリセル11…間の短絡が発生する可能性がある。しかしながら本実施の形態によれば、ホルダ12…の下面の中央部にサーミスタ保持部12i…が下向きに突出しているため、このサーミスタ保持部12i…で結露水を遮って両ラダーフレーム14,14の板ばね20…どうしが導通するのを阻止することで、バッテリセル11…間の短絡を防止することができる。
【0046】
ところで、図5に示すように、バッテリモジュールMの車体への搭載は、車体に固定される支持板28の上面に一対のエンドプレート13,13を固定することで行われる。バッテリモジュールMの通常の搭載姿勢は、バッテリセル11…の頂面11cが上を向き、底面11dが支持板28に対向する姿勢である。この場合、各エンドプレート13の2個の第1固定部13f,113fを上から下に貫通する2本のボルト29,29を、支持板28の下面に溶接したウエルドナット30,30に螺合して締結することで、バッテリモジュールMが支持板28に固定される。上記固定作業は、合計4本のボルト29…を上から下に挿入して回転させるだけで済むため、作業性が極めて良好である。
【0047】
バッテリモジュールMを図5に示す姿勢で支持板28に固定するとき、冷却風通路18…の下流側に位置する第4係合部12f…の結露水排出孔12k…からの結露水の排出を促進するには、結露水排出孔12k…が形成された左側の第4係合部12f…を、結露水排出孔12k…が形成されていない右側の第4係合部12f…よりも低くすることが望ましい。そこで本実施の形態では、図5における左側の第1固定部13fがエンドプレート13の下面から下側に突出する長さを、右側の第1固定部13fがエンドプレート13の下面から下側に突出する長さよりも短くしている。これにより、水平に配置された支持板28の上面に固定された一対のエンドプレート13,13を左下がりに角度θだけ傾斜させ、結露水排出孔12k…からの結露水の排出を促進することができる。
【0048】
尚、一対のエンドプレート13,13を支持板28に対して平行に固定し、結露水排出孔12k…が形成された左側の第4係合部12f…側が低くなるように、支持板28を水平面に対して傾斜させた状態で車体に固定しても、同様の作用効果を達成することができる。
【0049】
車体側のスペースに制限があり、バッテリモジュールMを上記した通常の姿勢で搭載できない場合には、バッテリモジュールMを90°横倒しにした姿勢で搭載することができる。即ち、図11に示すように、バッテリモジュールMをバッテリセル11…の一方の側面11b…が下向きになるように支持板28に載置し、各エンドプレート13の第2固定部13gを上から下に貫通するボルト31を、支持板28の下面に溶接したウエルドナット32に螺合して締結することで、バッテリモジュールMが支持板28に固定される。この場合も、合計2本のボルト31,31を上から下に挿入して回転させるだけで済むため、作業性が極めて良好である。
【0050】
尚、バッテリモジュールMを90°横倒しにした姿勢で搭載した場合、バッテリセル11…の一方の側面11b…が下を向く姿勢となるが、この場合には板ばね20…は前記側壁11b…の下方に位置することなく側方に位置し、かつ前記側面11b…とその下方に位置するラダーフレーム14との間には充分な隙間が存在するため、短絡が発生する懸念はない。
【0051】
エンドプレート13は、その外壁面13bに沿ってパイプ状の第1固定部13f,13fおよび第2固定部13gが形成されているため、それらが補強リブとして機能することで剛性が高められる。バッテリセル11は、その内部で行われる化学反応で膨らむように変形しようとするが、積層されたバッテリセル11…の両端を剛性の高い一対のエンドプレート13,13で挟持することで、バッテリセル11…の変形を確実に防止することができる。しかも第1固定部13f,13fの貫通孔13h,13hあるいは第2固定部13gの貫通孔13iをボルト15,15あるいはボルト17が貫通するので、それらのボルト15,15,17によってエンドプレート13,13の剛性を更に高めることができる。
【0052】
支持板28に固定する前のバッテリモジュールMは、バッテリセル11…の底面11d…側を下にして床面に置かれるが、何らかの理由でバッテリモジュールMが転倒するとバッテリセル11…の端子11e…が床面に接触して損傷する可能性がある。しかしながら、本実施の形態によれば、エンドプレート13の2本の第1固定部13f,13fはバッテリセル11の一対の端子11e,11eの先端を超えて上方に突出し、かつ2本の第1固定部13f,13fはバッテリセル11の一対の端子11e,11eよりも幅方向外側に位置しているので(図4および図5参照)、バッテリモジュールMが転倒しても第1固定部13f,13fが先に床面に接触することで端子11e,11eが床面に接触することが回避され、端子11e,11eの損傷が効果的に防止される。バッテリモジュールMが転倒した場合に限らず、バッテリモジュールMの上方から異物が落下したような場合でも、第1固定部13f,13fによって端子11e,11eを保護することができる。
【0053】
複数のバッテリセル11…および複数のホルダ12…を交互に積層し、その積層方向両端部を挟持する一対のエンドプレート13,13を一対のラダーフレーム14,14で連結してバッテリモジュールMを組み立てた後、少なくとも1個のホルダ12のサーミスタ保持部12i,12iにサーミスタ22を装着する。
【0054】
即ち、図10に示すように、ホルダ12のサーミスタ保持部12i,12iの一対の開口部a,a間の幅W1と、自由状態における一対の弾性爪27a,27a間の幅W2とは、W2>W1の関係にあるため、図9に示すように、バッテリセル11…の底面11d側から所定のホルダ12のサーミスタ保持部12i,12iにサーミスタ22を矢印A方向に挿入すると、一対の弾性爪27a,27aはサーミスタ挿入部a,aに当接して相互に接近するように弾性変形するが、サーミスタ挿入部a,aを通過した後に自己の弾性で自由状態に拡開してサーミスタ係止部b,bに係合することで、サーミスタ22はサーミスタ保持部12i,12iに脱落不能に保持される。
【0055】
このとき、隣接する2個のホルダ12,12のサーミスタ保持部12i,12i間の距離Dは、サーミスタ22の挿入方向の長さLよりも大きいため、バッテリモジュールMを組み立てた後にサーミスタ22を装着することが可能となる(図9参照)。しかもサーミスタ22を所定のバッテリセル11の底面11dに沿って移動させるだけでホルダ12…のサーミスタ保持部12i,12iに固定することができるので、ボルト等の固定手段を用いる場合に比べて組付性が向上する。
【0056】
そしてセンサケース27に設けた一対のセンサ圧着ばね26,26の一端側がサーミスタ保持部12i,12iの覆い部c,cに当接するため、その反力でセンサ圧着ばね26,26の他端側がセンサケース27を押し上げてセンサ部23をバッテリセル11の底面11dに押し付けることで、センサ部23がバッテリセル11の底面11dに密着して確実な温度検出を可能にすることができる。これと同時に、センサ圧着ばね26,26の先端が隣接するホルダ12の移動規制部12m,12mに当接することで、サーミスタ22の挿入方向の移動端が規制され、弾性爪27a,27aがサーミスタ係止部b,bに係合して挿入方向と逆方向の移動端が規制されることと相まって、サーミスタ22が確実に位置決めされる。更に、弾性爪27a,27aやサーミスタ係止部b,bに生じる寸法誤差を、センサ圧着ばね26,26がサーミスタ22の挿入方向に撓むことにより、吸収することができる。
【0057】
そして本実施の形態によれば、サーミスタ22がバッテリセル11の底面11dに接するようにホルダ12の下部に設けたサーミスタ保持部12i,12iに固定されるので、バッテリセル11の一方の側面11b側から流入して一対の主冷却面11a,11aに沿って流れた後に他方の側面11b側から流出する冷却風はホルダ12の下部のサーミスタ保持部12i,12iと干渉し難くなる。これにより、複数のホルダ12…が同一形状であっても、サーミスタ22が装着されているホルダ12のサーミスタ保持部12i,12iと、装着されていないホルダ12のサーミスタ保持部12i,12iとで冷却風の漏れ量が異なってしまうのを防止し、各バッテリセル11…の冷却状態を均一化して寿命の延長を図ることができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0059】
例えば、実施の形態ではサーミスタ22をバッテリセル11の底面11d側に設けているが、それをバッテリセル11の頂面11c側に設けても良い。但し、サーミスタ22をバッテリセル11の頂面11c側に設けると、サーミスタ22がバッテリセル11の端子11e,11eに接続される配線と干渉する場合があるので、バッテリセル11の底面11d側に設けた方が組付性が向上する。
【符号の説明】
【0060】
11 バッテリセル
11a 主冷却面
11b 側面
11c 頂面
11d 底面
11e 端子
12 ホルダ
12i サーミスタ保持部
12m 移動規制部
22 サーミスタ
23 センサ部
26 センサ圧着ばね(付勢手段)
27 センサケース
27a 弾性爪
a サーミスタ挿入部
b サーミスタ係止部
c サーミスタ覆い部
D サーミスタ覆い部間の間隔
L サーミスタの挿入方向の長さ
W1 サーミスタ挿入部の幅
W2 弾性爪の自由状態での幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂面(11c)、底面(11d)、一対の主冷却面(11a)および一対の側面(11b)を有し、前記主冷却面(11a)どうしが対向するように積層状態で配置される複数のバッテリセル(11)と、
積層された前記複数のバッテリセル(11)の前記主冷却面(11a)間に挟持される複数の同一形状のホルダ(12)と、
前記複数のバッテリセル(11)の少なくとも一つに接するように前記ホルダ(12)のサーミスタ保持部(12i)に挿入されて保持されるサーミスタ(22)とを備え、
前記一対の側面(11b)の一方側から流入した冷却媒体が前記一対の主冷却面(11a)に沿って流れた後に前記一対の側面(11b)の他方側から流出するバッテリモジュールにおいて、
前記サーミスタ(22)は、前記少なくとも一つのバッテリセル(11)の温度を検出するセンサ部(23)と、前記センサ部(23)を保持するセンサケース(27)とを備え、
前記バッテリセル(11)の前記頂面(11c)あるいは前記底面(11d)に対向する位置に設けられる前記サーミスタ保持部(12i)は、サーミスタ挿入部(a)と、前記サーミスタ挿入部(a)よりも前記サーミスタ(22)の挿入方向の前方側に設けられる該サーミスタ挿入部(a)よりも幅広のサーミスタ係止部(b)と、前記バッテリセル(11)の前記頂面(11c)あるいは前記底面(11d)との間に隙間を形成するように配置されるサーミスタ覆い部(c)とを備え、
前記センサケース(27)は、前記サーミスタ覆い部(c)を押圧することによる反力で前記センサ部(23)を前記バッテリセル(11)の前記頂面(11c)あるいは前記底面(11d)に押し付ける付勢手段(26)と、自由状態での幅(W2)が前記サーミスタ挿入部(a)の幅(W1)よりも広い開閉自在な弾性爪(27a)とを備えることを特徴とするバッテリモジュール。
【請求項2】
前記ホルダ(12)は、それに隣接する他の前記ホルダ(12)の前記サーミスタ保持部(12i)に挿入されて保持された前記サーミスタ(22)の前記付勢手段(26)の挿入方向先端部が当接する移動規制部(12m)を備え、前記付勢手段(26)が前記移動規制部(12m)から受ける反力で前記弾性爪(27a)が前記サーミスタ係止部(b)に係合する方向に付勢されることを特徴とする、請求項1に記載のバッテリモジュール。
【請求項3】
隣接する一対のホルダ(12)の一方の前記サーミスタ覆い部(c)および他方の前記サーミスタ覆い部(c)間の前記サーミスタ(22)の挿入方向の間隔(D)は、前記サーミスタ(22)の前記挿入方向の長さ(L)よりも広いことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のバッテリモジュール。
【請求項4】
前記サーミスタ保持部(12i)は前記バッテリセル(11)の端子(11e)が配置されていない前記底面(11d)に対向する位置に設けられることを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のバッテリモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−256467(P2012−256467A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128048(P2011−128048)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】