説明

バッテリ搭載車両の構造

【課題】車体に対するバッテリ、シートフレームの組付の自由度が高いバッテリ搭載車両の構造を得る。
【解決手段】車両後部構造10は、フロアパネル14上に配置され、左前側ブラケット30の前側クロス固定部30A、後側ブラケット34のL字ブラケット34Aにおいて車体に固定されたバッテリ26と、バッテリ26に設けられた左前側ブラケット30の脚固定部30B及び後側ブラケット34のセンタブラケット34Bを介して車体に固定されたシートフレーム22とを備えている。シートフレーム22は、リヤシート20のシートクッション20Aを支持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバッテリ搭載車両の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フロアとリヤシートとの間に、バッテリ架台を介してフロアに支持されたバッテリボックスを配置した車両用バッテリの搭載構造が知られている。(例えば、特許文献1、2参照)。また、フロアとフロントシートとの間にバッテリを配置すると共に、該バッテリをフロントシートに保持させた自動車が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−113959号公報
【特許文献2】特開2009−029159号公報
【特許文献3】特開2003−182377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如き従来の技術は、バッテリ、シートフレームの車体への組付性について改善の余地がある。
【0005】
本発明は、車体に対するバッテリ、シートフレームの組付の自由度が高いバッテリ搭載車両の構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係るバッテリ搭載車両の構造は、車両フロア上に配置され、第1の固定部において車体に固定されたバッテリと、車体に対する固定部の少なくとも一部が前記バッテリを介して車体に固定された第2の固定部とされ、前記バッテリに対する車両上下方向の上側に配置されたシートクッションを支持するシートフレームと、を備えている。
【0007】
請求項1記載のバッテリ搭載車両の構造では、バッテリは第1固定部において車体に固定され、バッテリとシートフレームとは第2固定部により互いに固定される。このため、例えばバッテリを第1固定部で車体に固定して単独で車体に組み付けた後にシートフレームを車体に組み付けたり、第2固定部での固定によりサブアセンブリ化されたバッテリとシートフレームとを一体的に車体に組み付けたりすることが可能になる(何れかの組み付け方法を選択可能になる)。
【0008】
このように、請求項1記載のバッテリ搭載車両の構造では、車体に対するバッテリ、シートフレームの組付の自由度が高い。
【0009】
請求項2記載の発明に係るバッテリ搭載車両の構造は、請求項1記載のバッテリ搭載車両の構造において、前記シートフレームは、車両前後方向の前端側に車幅方向に離間して複数設けられた脚部を有し、前記バッテリは、車両前後方向の前端側に設けられた前側ブラケットを有し、前記前側ブラケットには、前記第2の固定部として、前記複数の脚部のうち少なくとも1つの脚部における車両上下方向の下端部が固定された脚固定部が設けられている。
【0010】
請求項2記載のバッテリ搭載車両の構造では、シートフレームの複数の脚部の少なくとも一部の下端部が固定される脚固定部が、バッテリの前下部に位置する前側ブラケットに設けられている。このため、例えばバッテリの前上部に設けたブラケットにシートフレームが固定される構成と比較して、バッテリに対するシートフレームの着脱作業が容易である。
【0011】
請求項3記載の発明に係るバッテリ搭載車両の構造は、請求項2記載のバッテリ搭載車両の構造において、前記シートフレームは、車両前後方向の後端側で車幅方向に延在する後側フレームを有し、前記バッテリは、車両前後方向の後端側に設けられた後側ブラケットを有し、前記後側ブラケットには、前記第2の固定部として、前記後側フレームが固定された後側フレーム固定部が設けられている。
【0012】
請求項3記載のバッテリ搭載車両の構造では、バッテリとシートフレームとは前後のブラケットを介して安定して結合される。
【0013】
請求項4記載の発明に係るバッテリ搭載車両の構造は、請求項3記載のバッテリ搭載車両の構造において、前記バッテリに対する車幅方向の両外側で車両前後方向に延在する車体骨格としての左右一対のサイドメンバと、前記車両フロアに設けられ、車幅方向に延在して前記一対のクロスメンバを架け渡す車体骨格としての第1のクロスメンバと、前記車両フロアに設けられ、前記第1のクロスメンバに対する車両前後方向の後側で、車幅方向に延在して前記一対のクロスメンバを架け渡す車体骨格としての第2のクロスメンバと、を備え、前記前側ブラケットには、前記第1の固定部として、前記第1のクロスメンバに固定された第1クロス固定部が設けられ、前記後側ブラケットには、前記第1の固定部として、前記第2のクロスメンバに固定された第2クロス固定部が設けられている。
【0014】
請求項4記載のバッテリ搭載車両の構造では、バッテリ(の大部分)は、平面視で、前後のクロスメンバ及び左右のサイドメンバより成る矩形枠状の車体骨格にて囲まれて配置されている。このため、車両衝突の際にバッテリは上記した矩形枠状の車体骨格により保護される。特に、車両の側面衝突に対しては、前後のクロスメンバに側突荷重が分散されて車体変形が抑制されるので、バッテリ保護性能が高い。
【0015】
請求項5記載の発明に係るバッテリ搭載車両の構造は、請求項4記載のバッテリ搭載車両の構造において、前記車両フロアに対する車両上下方向の下側に燃料タンクが配置されており、前記燃料タンクは、少なくとも一部が正面視で前記バッテリとオーバラップするように前記第2のクロスメンバに対する車両前後方向の後側に配置された本体部と、少なくとも一部が平面視で前記バッテリにオーバラップするように前記本体部における車両上下方向の下端部から車両前後方向の前側に張り出された張出部と、を有して構成されている。
【0016】
請求項5記載のバッテリ搭載車両の構造では、バッテリは、燃料タンクの本体部に対する前方でかつ張出部に対する上方に位置する。これにより、本バッテリ搭載車両の構造では、単にバッテリと燃料タンクとを上下に重ねて配置した構成と比較して車両上下方向にコンパクトな配置が可能であり、また単にバッテリと燃料タンクとを前後に並べて配置した構成と比較して車両前後方向にコンパクトな配置が可能となる。すなわち、本態様では、バッテリ及び燃料タンクの容量を確保しつつ、これらを全体として前後、上下にコンパクトに配置することができる。
【0017】
請求項6記載の発明に係るバッテリ搭載車両の構造は、請求項1〜請求項5の何れか1項記載のバッテリ搭載車両の構造において、前記シートフレームには、前記バッテリを車両上下方向の上側から覆うパネル部材が固定されている。
【0018】
請求項6記載のバッテリ搭載車両の構造では、パネル部材によってシートクッションの着座荷重を支持してシートフレームに分散することができる。このため、着座の際にシートクッションとバッテリとが干渉することが防止又は効果的に抑制される。
【0019】
請求項7記載の発明に係るバッテリ搭載車両の構造は、請求項6記載のバッテリ搭載車両の構造において、前記シートクッションは、前記パネル部材に設けられた係止部材に係止されている。
【0020】
請求項7記載のバッテリ搭載車両の構造では、シートクッションをシートフレームに容易に組み付けることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明に係るバッテリ搭載車両の構造は、車体に対するバッテリ、シートフレームの組付の自由度が高いという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るバッテリ搭載車両の構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るバッテリ搭載車両の構造を模式的に示す、シートフレームを分離して示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るバッテリ搭載車両の構造の図1の3−3線に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両後部構造を模式的に示す側断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るバッテリ搭載車両の構造を構成するバッテリとシートフレームとがサブアセンブリ化された例を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るバッテリ搭載車両の構造を示す図であって、(A)は後突前の状態を示す側面図、(B)は後突に伴う変形状態を示す側面図である。
【図7】本発明の実施形態との第1比較例に係る車両後部構造を模式的に示す側断面図である。
【図8】本発明の実施形態との第2比較例に係る車両後部構造を模式的に示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係るバッテリ搭載車両の構造が適用されたハイブリッド自動車の車両後部構造10について、図1〜図6に基づいて説明する。先ず、車両後部構造10を構成する車体後部の構造を説明し、次いで、バッテリ26の搭載構造、燃料タンク56の形状、配置について説明することとする。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印LHは車幅方向の一方側である車両左側を、矢印RHは車幅方向の一方側である車両右側をそれぞれ示す。以下の説明で前後、上下の方向を用いるときは、車両の前後方向、上下方向を基準とすることとする。
【0024】
(車体後部の構造)
図1には、車両後部構造10の概略構成が斜視図にて示されており、図2には、車両後部構造10の概略構成が一部構成を分離して示す分解斜視図にて示されている。これらの図に示される如く、車両後部構造10を構成する車体は、左右一対のサイドメンバとしてのリヤサイドメンバ12を備えている。左右のリヤサイドメンバ12は、それぞれ車両前後方向に長手の骨格部材とされている。
【0025】
具体的には、各リヤサイドメンバ12は、上向きに開口する断面ハット形状に形成されており、車両フロアを構成するフロアパネル14(図3参照)に下面側から接合されることで該フロアパネル14とで閉断面の骨格構造を成している。なお、図1及び図2では、フロアパネル14の図示は省略している。また、リヤサイドメンバ12は、上向きに開口する構成には限られず、例えば、車幅方向外向きに開口するインナパネルとアウタパネルとの接合によって閉断面の骨格構造を成す構成としても良い。この場合、例えば、インナパネルの上壁にフロアパネル14を接合する構造とすることができる。
【0026】
また、各リヤサイドメンバ12は、その前部12Fに対し後部12Rが車幅方向の内側でかつ上側に位置している。それぞれ車両前後方向に延びる前部12Fと後部12Rとは、キック部12Kによって滑らかに連結されている。これらリヤサイドメンバ12の前端部は、車幅方向に長手とされた第1のクロスメンバとしてのセンタクロスメンバ16の車幅方向の異なる端部に接続されている。換言すれば、各リヤサイドメンバ12の前端部間は、センタクロスメンバ16にて架け渡されている。
【0027】
図3及び図5に側断面図にて示される如く、センタクロスメンバ16は、それぞれ略「L」字状を成すとクロスメンバアッパ16Uとクロスメンバロア16Lとを接合することで、略矩形の閉断面構造(骨格構造)を成している。各リヤサイドメンバ12の前端部、センタクロスメンバ16の車幅方向両端部は、図示しない車体骨格であるロッカの後端部に連結されている。この実施形態では、フロアパネル14は、センタクロスメンバ16に対し前側に位置するフロントフロアパネル14Fと、センタクロスメンバ16に対し後側に位置するセンタフロアパネル14Cとを含む分割構造とされている。センタフロアパネル14Cの後端(後述する段部14B)の後方には、リヤフロアパネル14Rが連続している。
【0028】
また、車両後部構造10では、図2及び図3に示される如く、各リヤサイドメンバ12におけるキック部12K間は、第2のクロスメンバとしてのリヤクロスメンバ18に架け渡されている。リヤクロスメンバ18は、左右のキック部12Kにおける前後方向の略中間部同士を架け渡している。この実施形態では、リヤクロスメンバ18の車幅方向の両端は、キック部12Kの上面に締結固定されている。
【0029】
図3に示される如く、リヤクロスメンバ18は、フロアパネル14におけるセンタクロスメンバ16の後方部分(センタフロアパネル14C)に形成された段部14Bを跨ぐようにフロアパネル14に上面側からに接合されている。これにより、リヤクロスメンバ18は、フロアパネル14(段部14B)とで閉断面の骨格構造を成している。この実施形態では、リヤクロスメンバ18は、段部14Bに対する後方では上下方向に狭い閉断面を成し、段部14Bに対する前方では上下方向に広い閉断面を成している。そして、リヤクロスメンバ18の上面は、センタクロスメンバ16の上面よりも上側に位置している。
【0030】
図示は省略するが、左右のリヤサイドメンバ12におけるキック部12Kは、リヤサスペンションを構成するトレーリングアームの前端を揺動可能に支持している。これにより、フロアパネル14の下側におけるリヤクロスメンバ18の後方には、左右のトレーリングアームを連結してリヤサスペンションを構成する中間ビーム55(図4参照)の上下動するスペースが確保される構成とされている。この点は、燃料タンク56(図4参照)の構成と共に後述する。
【0031】
さらに、車両後部構造10では、フロアパネル14における段部14A、14Bの上側にリヤシート20が設けられている。リヤシート20は、乗員Pが着座するシートクッション20Aと、該シートクッション20Aの後端に下端が連結されたシートバック20Bとを有する。この実施形態に係るハイブリッド自動車では、シートバック20Bの後方の空間は荷室LR(図4参照)とされている。シートクッション20Aは、前端の位置がセンタクロスメンバ16の前後方向における位置に略一致されると共に、後端の位置がリヤクロスメンバ18よりも後側に位置している。
【0032】
シートクッション20Aは、シートフレーム22を図示しないクッション材(パッド)及び表皮にて覆うことで構成されている。図2及び図3に示される如く、シートフレーム22と、シートクッション20Aとの間には、パネル部材としてのシートプレート24が配置されている。シートフレーム22、シートプレート24の具体的な構造は、後に詳述する。
【0033】
(バッテリの搭載構造)
図1〜図3に示される如く、リヤシート20を構成するシートクッション20Aに対する下方には、バッテリ26が搭載されている。バッテリ26は、ハイブリッド自動車を走行させるための図示しない電動モータの駆動用の電力を蓄える図示しない蓄電池とされている。バッテリ26は、全体として車幅方向に長手の略直方体状に形成されており、バッテリケース内にバッテリ本体(何れも図示省略)を収容して構成されている。
【0034】
この実施形態では、バッテリ26は、シートフレーム22とフロアパネル14との間(フロアパネル14の上側)に配置され、平面視でほぼ全体がシートクッション20Aにオーバラップする(覆われる)配置とされている。より具体的には、バッテリ26は、その前面26Aがセンタクロスメンバ16に対する直上方に配置されると共に、その背面26Bがリヤクロスメンバ18(フロアパネル14の段部14B)に対する直前方に配置されている。
【0035】
これにより、バッテリ26は、図1及び図2に示される如く、平面視で、左右のリヤサイドメンバ12とセンタクロスメンバ16とリヤクロスメンバ18とで形成された矩形状枠RF(の外側壁)によって四方から囲まれた構成とされている。また、図1に示される如く、バッテリ26は、シートフレーム22を構成するフレーム本体28に対する下側(後述するフロントフレーム28Fの直下)に配置されている。
【0036】
以上により、車両後部構造10では、バッテリ26は、車体骨格である矩形状枠RFとシートフレーム22のフレーム本体28とで囲まれたバッテリ収容空間Rb(図3、図4参照)内に配置されている。このバッテリ26は、乗員Pの踵スペース及びシートクッション20Aを構成するクッション材の厚みを確保しつつ、車体におけるできるだけ前方でかつ上方に配置された構成とされている。この点は、本実施形態の作用と共に後述する。
【0037】
以上説明したバッテリ26は、センタクロスメンバ16及びリヤクロスメンバ18のそれぞれに、ボルト・ナットより成る締結手段25により締結固定されている。具体的には、バッテリ26には、その前下端部における車幅方向の一方側(左側)に設けられた左前側ブラケット30と、その前下端部における車幅方向の他方側(右側)に設けられた右前側ブラケット32と、その後上端部における車幅方向の中央部に設けられた後側ブラケット34とが設けられている。
【0038】
そして、バッテリ26は、左前側ブラケット30においてセンタクロスメンバ16の左部に締結手段25にて締結され、右前側ブラケット32においてセンタクロスメンバ16の右部に締結手段25にて締結され、後側ブラケット34(後述するL字ブラケット34A)においてリヤクロスメンバ18の中央部近傍に締結手段25にて締結されている。左前側ブラケット30は、車幅方向に離間した2箇所で締結手段25にて締結固定された第1クロス固定部としての2つの前側クロス固定部30Aと、2つの前側クロス固定部30A間を隆起させて形成された脚固定部30Bとを有する。この脚固定部30Bには、シートフレーム22を構成する後述の脚部38(左側の脚部38)が固定されるようになっている。
【0039】
また、後側ブラケット34は、それぞれ略「L」字状を成し、車幅方向に離間して配置された一対のL字ブラケット34Aと、左右のL字ブラケット34Aを架け渡したセンタブラケット34Bとがスポット溶接等にて接合されて構成されている。後側ブラケット34は、左右のL字ブラケット34Aにおいてバッテリ26(のバッテリケース)にボルト・ナットより成る締結手段36(図3参照)にて締結固定されると共に、これら左右のL字ブラケット34Aにおいてリヤクロスメンバ18に締結手段25にて締結固定されている。この状態で、センタブラケット34BのL字ブラケット34Aとの結合部を除く中央側部分は、リヤクロスメンバ18の上方に該リヤクロスメンバ18から離間して配置されている。
【0040】
以上説明した左前側ブラケット30の2つのクロス固定部前側30A、右前側ブラケット32、後側ブラケット34の2つのL字ブラケット34Aにおける締結手段25によって車体に締結固定された部位が、本発明における第1固定部に相当する。すなわち、脚固定部30Bを有する左前側ブラケット30が本発明における前側ブラケット及び第1クロス固定部に相当し、リヤクロスメンバ18に固定されたL字ブラケット34Aが第2クロス固定部に相当する。
【0041】
そして、シートフレーム22は、車体に対する一部の固定部がバッテリ26を介して車体に接合されると共に、残余の一部が直接的に車体に接合されている。具体的には、シートフレーム22は、車幅方向に延在するフロントフレーム28F、後側フレームとしてのリヤフレーム28Rの車幅方向外端同士が左右一対のサイドフレーム28Sに連結されて構成されたフレーム本体28を有する。この実施形態では、リヤフレーム28Rは、左右に分離された2分割構造とされている。
【0042】
また、フレーム本体28のフロントフレーム28Fからは、車幅方向に離間して左右一対の脚部38が垂下されている。左右の脚部38は、それぞれバッテリ26に対する車幅方向の反対側(両外側)に配置されている。さらに、シートフレーム22は、左右のサイドフレーム28Sとリヤフレーム28Rとの各連結部位から車幅方向外向きに突出された左右一対のフランジ部22Aを有して構成されている。
【0043】
このシートフレーム22は、左側の脚部38の下端が左前側ブラケット30の脚固定部30Bの上面側に、ボルト・ナットより成る締結手段40にて締結固定されている。また、左右のリヤフレーム28Rの各車幅方向内端が、後側ブラケット34を構成するセンタブラケット34Bの上面側における車幅方向に離間した位置で、それぞれ締結手段40にて車両上側から締結固定されている。これら左前側ブラケット30の脚固定部30B、後側ブラケット34のセンタブラケット34Bにおける締結手段40によってバッテリ26に締結固定された部位が、本発明における第2固定部である後側フレーム固定部に相当する。
【0044】
一方、シートフレーム22は、右側の脚部38の下端においてセンタクロスメンバ16におけるバッテリ26に対する右側部分に、ボルト・ナットより成る締結手段42にて締結固定されている。また、シートフレーム22は、左右のフランジ部22Aにおいて、リヤクロスメンバ18の車幅方向端部である左右のリヤサイドメンバ12との連結部位に、締結手段42にて締結固定されている。これら右側の脚部38の下端、左右のフランジ部22Aにおける締結手段42による車体骨格への直接の締結固定部位は、本発明の第1固定部、第2固定部とは異なる第3固定部として捉えることができる。
【0045】
また、シートフレーム22には、上記した通りバッテリ収容空間Rb(バッテリ26)を上方から覆うシートプレート24が設けられている。この実施形態におけるシートプレート24は、車幅方向に複数(3つ)に分割されている。具体的には、シートプレート24は、フロントフレーム28Fの車幅方向中央部と左右のリヤフレーム28Rの車幅方向内端部(センタブラケット34B)とを前後に架け渡したセンタシートプレート24Aと、センタシートプレート24Aの左右両側でフロントフレーム28F、リヤフレーム28R、サイドフレーム28Sに支持された一対の外側シートプレート24Bとで構成されている。シートプレート24は、シートクッション20Aからの着座荷重を支持してシートフレーム22に伝達(分散)するように寸法形状、材質(この実施形態では、鋼材)等が決められている。
【0046】
さらに、左右の外側シートプレート24Bにおける前端近傍には、複数(この実施形態では2つ)の係止部材としてのクリップ部(ラッチ部)46が設けられている。各クリップ部46は、シートクッション20Aに設けられた略「U」字状のストライカ状の係止部48(図3参照)を抜け止め状態で受け入れる構成とされている。各クリップ部46は、図示しない解除突起を弾性変形させると、係止部48の抜き取りを許容する解除状態とされるようになっている。このようなクリップ構造としては、公知の各種構造を採用し得るので、説明は省略する。
【0047】
また、図1及び図2に示される如く、車両後部構造10では、バッテリ26と電動モータ、インバータ等を電気的に接続するための高圧ケーブル(図示省略)を備える。この実施形態における高圧ケーブルは、バッテリ収容空間Rb内におけるバッテリ26に対する右方(車幅方向一方側)で、該バッテリ26に接続されている。高圧ケーブルは、バッテリ収容空間Rbの底面を成すフロアパネル14を貫通してフロア下に導出され、前側に配置された電動モータ、インバータ等に導かれている。
【0048】
さらに、図1及び図2に示される如く、車両後部構造10では、バッテリ26を冷却するための冷却ファンユニット(ファンモータ)54がバッテリ収容空間Rb内に配置されている。冷却ファンユニット54は、前側から流入された空気を車幅方向の内側に位置するバッテリ26に向けて吹き付ける遠心ファン(シロッコファン)とされている。この実施形態では、冷却ファンユニット54は、バッテリ収容空間Rb内におけるバッテリ26に対する左方(高圧ケーブルとは反対側)に配置されている。
【0049】
(燃料タンクの形状、配置)
車両後部構造10では、図4に示される如く、リヤシート20に対する下側でかつフロアパネル14に対する下側に、燃料タンク56が配置されている。燃料タンク56は、例えばガソリンや軽油等の図示しない内燃機関に供給される液体燃料を貯留するようになっている。内燃機関は、ハイブリッド自動車の走行動力発生、バッテリ26の充電の少なくとも一方の機能を果たすようになっている。
【0050】
燃料タンク56は、バッテリ26に対する後側に配置された厚形状の本体部(一般部)56Aと、本体部56Aの下端部から前向きに張り出された薄形状の張出部56Bとを含んで構成され、フロアパネル14に近接して配置されている。すなわち、燃料タンク56は、相対的に車両上下方向の高さが低い張出部56Bと、該張出部56Bに対し車両上下方向の高さが高い本体部56Aとを含んで構成されている。本体部56Aは、その上部が正面視でバッテリ26の背面26Bに(リヤクロスメンバ18に)オーバラップされて配置されている。この実施形態では、図1に示される如く、バッテリ26の背面26Bと、本体部56Aの上部における車両前後方向の前側を向く前面56Afとの間の空間を通して、リヤクロスメンバ18が左右のリヤサイドメンバ12間を架け渡している。
【0051】
一方、張出部56Bは、バッテリ26の下側に配置されている。より具体的には、張出部56Bは、平面視でバッテリ26の下面26Cにオーバラップする配置とされている。また、張出部56Bは、その上部が正面視でセンタクロスメンバ16にオーバラップされて配置されている。
【0052】
この燃料タンク56は、図示しない支持構造を介して車体に支持されている。この支持構造としては、例えば車体への直接的又はブラケット等を介した間接的な締結やタンクバンド等による吊り支持などを採ることができる。この実施形態では、燃料タンク56は、車体との間に防振ゴムを介在させた状態で、該車体に対し締結により支持(固定)されている。また、この実施形態では、燃料タンク56は、平面視で、左右のリヤサイドメンバ12と、センタクロスメンバ16と、リヤクロスメンバ18の後方で左右のリヤサイドメンバ12を架け渡す図示しないクロスメンバとで囲まれて配置されている。
【0053】
図4に示される如く、燃料タンク56の後端は、リヤサスペンションを構成する中間ビーム55の上方にまで至っている。このため、燃料タンク56における本体部56Aの後方には、リヤサスペンションの中間ビーム55の上下動を許容するビーム逃がし部56Cが形成されている。中間ビーム55は、ビーム逃がし部56Cにおいて、図3に実線で示す位置と二点鎖線で示す位置との間で変位(揺動)するようになっている。この実施形態では、燃料タンク56は、ビーム逃がし部56Cの上方、後方に位置する後部56Dを有する。
【0054】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0055】
上記構成の車両後部構造10では、フロアパネル14とシートクッション20Aとの間にバッテリ26が配置されている。このため、荷室LRにバッテリ26を搭載することがないので、荷室容量の確保、ラゲッジスペースの有効利用(シートアレンジなどを含む)を図ることができる。
【0056】
ここで、本車両後部構造10では、バッテリ26が左前側ブラケット30、左右のL字ブラケット34Aにおいて車体に直接的に締結固定されており、シートフレーム22は、車体への固定部のうち、バッテリ26(脚固定部30B、センタブラケット34B)を介して車体に固定されている。このため、車両後部構造10では、バッテリ26とシートフレーム22とを脚固定部30B、センタブラケット34Bにおいて一体化(図5に示すサブアセンブリ化)して車体に組み付ける組み付け形態(方法)と、バッテリ26を車体に固定してからシートフレーム22を車体に固定する組み付け形態(方法)とをとり得る。
【0057】
このように、車両後部構造10では、車体に対するバッテリ26、シートフレーム22の組付の自由度が高い。
【0058】
また、車両後部構造10では、バッテリ26が左前側ブラケット30においてセンタクロスメンバ16に締結固定されると共に、後側ブラケット34においてリヤクロスメンバ18に締結固定されている。換言すれば、バッテリ26は、その前部、後部において車体に直接的に締結固定されている。このため、バッテリ26は、車体に対し安定して支持される。
【0059】
さらに、車両後部構造10では、シートフレーム22は、左側の脚部38の下端、及び左右のリヤフレーム28Rの車幅方向内端のそれぞれにおいて、車両上側から締結されているので、車体に固定されたバッテリ26に対し、独立して車体に着脱することができる。これにより、図2に示される如く、バッテリ26を車体のフロア上に搭載したままリヤシート20すなわちシートクッション20A及びシートフレーム22を取り外して、バッテリ26のメンテナンス等を行うことが可能になる。
【0060】
なお、この場合は、係止部48のクリップ部46による係止状態を解除してシートクッション20Aをシートフレーム22から取り外した後、脚部38、リヤフレーム28Rを締結する各締結手段40の締結を解除すると共に、右側の脚部38、左右のフランジ部22Aを締結する各締結手段42の締結を解除して、シートフレーム22をバッテリ26(とは独立して車体)から取り外すこととなる。
【0061】
また、車両後部構造10では、シートフレーム22がバッテリ26の上方に配置されたフレーム本体28を含んで構成されているので、バッテリ26は、上方からの荷重に対して保護される。したがって例えば、バッテリ26は、リヤシート20の着座乗員Pやリヤシート20上に載置される荷物などの荷重(加速度)に対し保護される。
【0062】
特に、車両後部構造10では、シートフレーム22にバッテリ収容空間Rbを上方から覆うシートプレート24が設けられているので、シートクッション20Aからの着座荷重等の荷重をシートプレート24によって支持しつつシートフレーム22に分散することができる。このため、着座等の際にシートクッション20Aとバッテリ26とが干渉することが防止又は一層良好に抑制される。
【0063】
また、車両後部構造10では、シートプレート24にクリップ部46が設けられているので、係止部48が設けられたシートクッション20Aをシートフレーム22に対し容易に着脱することができる。そして、各クリップ部46はシートプレート24の前端側に配置されているので、シートクッション20Aの着脱作業が容易である。一方、複数のクリップ部46が設けられているので、例えばハイブリッド自動車の衝突の際にシートクッション20Aがシートフレーム22に保持された状態が維持されやすい。
【0064】
またここで、車両後部構造10では、リヤシート20の下方にバッテリ26が配置され、該バッテリ26の後方に燃料タンク56の本体部56A(本体)が配置されると共に、該バッテリ26下方に燃料タンク56の張出部56Bが配置されている。このように、車両後部構造10では、燃料タンク56がバッテリ26の後方に配置された本体部56Aとバッテリ26の下方に配置された張出部56Bとを有するため、適用されたハイブリッド自動車を前後、上下にコンパクトに構成することに寄与する。この点を図7、図8に示す比較例と比較しつつ説明する。
【0065】
図7には、バッテリ102と燃料タンク104とを、フロアパネル106の段部106Aを挟んで前後に並べた第1比較例に係る車両後部構造100が示されている。この車両後部構造100では、リヤクロスメンバ18を有せず、所要の車体剛性、強度を確保するためにセンタクロスメンバ108がセンタクロスメンバ16に対し上下方向に高い断面形状を有する。このため、センタクロスメンバ108後方にフロアパネル106を凹ませたバッテリ収容凹部110を形成し、該バッテリ収容凹部110内すなわちセンタクロスメンバ108の後方にバッテリ102が配置されている。また、張出部56Bに相当する燃料貯留部を有しない燃料タンク104は、所要の容量を確保するため、燃料タンク56の本体部56Aよりも前後長が長く形成されている。バッテリ102は、バッテリ26と同等の寸法形状を有する。この第1比較例に係る車両後部構造100では、バッテリ102と燃料タンク104とがリヤサスペンションにより支持された後輪の前方において前後に配置されるため、適用されるハイブリッド自動車のホイールベースが相対的に長くなってしまう。すなわち、ハイブリッド自動車の車体が前後に長くなってしまう。
【0066】
これに対して本実施形態に係る車両後部構造10では、燃料タンク56の張出部56Bがバッテリ26の下方に配置される。このため、燃料タンク56の所要の容量を確保しつつ該燃料タンク56におけるバッテリ26の後方に配置される本体部56Aの前後長を燃料タンク104よりも短くすることができる。また、車両後部構造10では、リヤクロスメンバ18を設けることで、センタクロスメンバ16の断面を上下に小さく設定することができる。これにより、車両後部構造10では、バッテリ26をセンタクロスメンバ16の直上方に位置させること、すなわちバッテリ26の前端部をセンタクロスメンバ16の前後幅の範囲内に配置することができる。このため、バッテリ26を車両後部構造100のバッテリ102よりも前方に配置することができる。
【0067】
以上により、本実施形態に係る車両後部構造10では、第1比較例に係る車両後部構造100と比較して、ホイールベースを短縮することができ、ハイブリッド自動車の前後方向の小型化に寄与する。
【0068】
図8には、バッテリ152と燃料タンク154とを、フロアパネル156を挟んで上下に並べた第2比較例に係る車両後部構造150が示されている。この車両後部構造150では、リヤクロスメンバ18を有せず、所要の車体剛性、強度を確保するためにセンタクロスメンバ158がセンタクロスメンバ16に対し上下方向に高い断面形状を有する。そして、車両後部構造150では、バッテリ26と同等の寸法形状を有するバッテリ152が、センタクロスメンバ158の後方でフロアパネル156上に配置されている。また、車両後部構造150では、燃料タンク154は、その前後長が燃料タンク56(後部56Dを除く)の前後長と同等とされており、所要の容量を確保するために上下高さが張出部56Bの上下高さよりも大とされている。
【0069】
この第2比較例に係る車両後部構造150では、バッテリ152と燃料タンク154とが上下に並べて配置されるため、リヤシート乗員のヒップポイントHPと燃料タンク154の下面154Aとの間の高さHが相対的に大きくなってしまう。このため、車両後部構造150では、フロア面に対するヒップポイントHPの高さHhpが高くなってしまう。これにより減少したヘッドクリアランスを確保するためにルーフを上方に移動すると、適用されたハイブリッド自動車の車高が高くなる。一方、例えばセンタクロスメンバ158後方のフロアパネル156を下方に移動してヒップポイントHPの高さHhpを低く抑えると、燃料タンク154が相対的に下方に移動される。この構成において、路面Rから燃料タンク154の下面154Aまでの高さ最低地上高LCを確保するためには、結局、ハイブリッド自動車の車高が高くなってしまう。
【0070】
これに対して車両後部構造10では、燃料タンク56における燃料タンク154よりも薄い(偏平の)張出部56Bがバッテリ26の下方に配置される。このため、燃料タンク56の所要の容量を確保しつつ該燃料タンク56の下面56Eからリヤシート20におけるヒップポイントHPまでの高さHを低く抑えることができる。また、車両後部構造10では、センタクロスメンバ16に対し正面視でオーバラップするように張出部56Bが配置されている。すなわち、その上方にバッテリ26(の前部)が配置されたセンタクロスメンバ16後方の空間を利用して、燃料タンク56の張出部56Bが配置されている。これにより、車両後部構造10では、バッテリ26をセンタクロスメンバ16の直上方に位置させる構成において、上記の高さHすなわちリヤシート乗員のヒップポイントHPを低く設定することができる。
【0071】
以上により、本実施形態に係る車両後部構造10では、第2比較例に係る車両後部構造150と比較して、車高を低くすることができ、ハイブリッド自動車の上下方向の小型化に寄与する。
【0072】
そして、車両後部構造10は、上記した前後方向の小型化、及び上下方向の小型化によって、適用されたハイブリッド自動車の軽量化、低燃費化に寄与する。すなわち、車両後部構造10は、比較的車高の低いセダン、ワゴン、ハッチバック等の車種(ハイブリッド自動車)において、燃料タンクの必要容量の確保及び居住性の確保を満足することができる。特に、前後方向の長さも比較的短いコンパクトカーについても、燃料タンクの必要容量の確保及び居住性を確保しつつ実用的なパッケージ(部品等のレイアウト)を実現することができる。
【0073】
さらにここで、車両後部構造10では、バッテリ26が平面視で左右のリヤサイドメンバ12、センタクロスメンバ16、リヤクロスメンバ18より成る矩形状枠RFに囲まれている。このため、車両後部構造10が適用されたハイブリッド自動車に衝突が生じた場合に、バッテリ26に直接的に衝突荷重が作用することが抑制され、該バッテリ26が良好に保護される。
【0074】
特に、バッテリ26の前後にセンタクロスメンバ16、リヤクロスメンバ18が配置されているので、ハイブリッド自動車の側面衝突に対しバッテリ26が良好に保護される。すなわち、例えばリヤシート20近傍にポール等が衝突した場合(局所的に荷重が入力された場合)に、側突荷重が前後のセンタクロスメンバ16、リヤクロスメンバ18に分散される。このようなセンタクロスメンバ16、リヤクロスメンバ18の有効配置に基づく側突荷重の分散(反衝突側への伝達)によって、バッテリ26の前後両側において衝突側のボディ変形が抑制され、上記の通りバッテリ26が良好に保護される。
【0075】
しかも、車両後部構造10では、センタクロスメンバ16及びリヤクロスメンバ18にシートフレーム22が締結固定されている。このため、ハイブリッド自動車の側面衝突に伴う入力荷重がシートフレーム22によって支持され、これによってもバッテリ26が側面衝突に対し保護される。また、側突荷重(矩形状枠RFに入力される荷重、シートフレーム22に入力される荷重を含む)は、バッテリ26に対する車幅方向外側(左右のフランジ部22A、脚部38)でフレーム本体28にも分散されて反衝突側に伝達されるので、上記した荷重分散によるバッテリ26の保護性能も向上する。
【0076】
そして、車両後部構造10では、上記したバッテリ26の側面衝突に対する保護性能の向上に伴って、リヤシート20の着座乗員の側面衝突に対する保護性能も向上される。また、車両後部構造10では、バッテリ26の背面26Bと燃料タンク56における本体部56A前面56Afとの間にリヤクロスメンバ18が配置されているので、図7、図8に示すリヤクロスメンバ18を備えない比較例に係る車両後部構造100、150と比較して、側面衝突に対する燃料タンク56の保護性能が向上する。
【0077】
さらに、車両後部構造10では、バッテリ26がセンタクロスメンバ16及びリヤクロスメンバ18のそれぞれに締結固定されている。このため、ハイブリッド自動車に後面衝突が生じた場合に、バッテリ26は、センタクロスメンバ16及びリヤクロスメンバ18と共に(連動して)車両前方に変位されることとなる。
【0078】
この点を補足すると、後面衝突に伴ってリヤサイドメンバ12(後部12R)の後端に前向きの荷重が入力された場合、車両後部構造10を構成する車体においては、リヤサイドメンバ12の前端部に曲げが生じる。これにより、この車体は、図6(A)に示す後突前の姿勢から、図6(B)に示す如くリヤクロスメンバ18が矢印A方向に持ち上げられる如く変位される。この際、車両後部構造10では、バッテリ26は、矩形状枠RF及びシートフレーム22にて囲まれた状態すなわちバッテリ収容空間Rbが確保された状態が維持されながら、ボディ変形に追従(連動)して変位されることとなる。このため、後面衝突によってバッテリ26自体が破断等されることが防止又は効果的に抑制される。すなわち、車両後部構造10では、バッテリ26は適用されたハイブリッド自動車の後面衝突に対しても良好に保護される。
【0079】
また、車両後部構造10では、上記の通りハイブリッド自動車の後面衝突の際にバッテリ26はボディ変形に伴って前方に変位される。このため、例えば後面衝突に伴う中間ビーム55の前方への変位によって燃料タンク56が車両前方に変位された場合に、図6(B)に示される如く該燃料タンク56がバッテリ26に対し強く干渉することが防止される。これにより、車両後部構造10では、燃料タンク56についても適用されたハイブリッド自動車の後面衝突に対して良好に保護される。なお、図6(B)に想像線にて示すバッテリ26は、後突による前方への変位前のバッテリ26である。
【0080】
なお、上記した実施形態では、シートフレーム22は、バッテリ26に設けられた左前側ブラケット30、後側ブラケット34を介して車体に固定された例を示したが、本発明はこれに限定されず、シートフレーム22におけるバッテリ26を介して車体に固定される部位は、適宜設定することができる。したがって、例えば、脚固定部30Bと前側クロス固定部30Aとが別体のブラケットに設けられても良く、センタブラケット34BとL字ブラケット34Aとが別体のブラケットに設けられても良い。
【0081】
また、上記した実施形態では、左前側ブラケット30、後側ブラケット34がバッテリ26側の部材である捉え方をしたが、これら左前側ブラケット30、後側ブラケット34の一部又は全部がシートフレーム22側の部材であるものと捉えても良い。
【0082】
さらに、上記した実施形態では、バッテリ26の下方及び後方のそれぞれに位置される異形の燃料タンク56を備えた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば一般的な形状の燃料タンクを備えた自動車に、シートフレーム22とバッテリ26との車体への搭載構造を適用しても良い。
【符号の説明】
【0083】
10 車両後部構造
12 リヤサイドメンバ(サイドメンバ)
14 フロアパネル(車両フロア)
16 センタクロスメンバ(第1のクロスメンバ)
18 リヤクロスメンバ(第2のクロスメンバ)
20A シートクッション
22 シートフレーム
24 シートプレート(パネル部材)
26 バッテリ
30 左前側ブラケット(前側ブラケット)
30A 前側クロス固定部(第1固定部、第1クロス固定部)
30B 脚固定部(第2固定部)
34 後側ブラケット
34A L字ブラケット(第1固定部、第2クロス固定部)
34B センタブラケット(第2固定部)
38 脚部
46 クリップ部(係止部材)
56 燃料タンク
56A 本体部
56B 張出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両フロア上に配置され、第1の固定部において車体に固定されたバッテリと、
車体に対する固定部の少なくとも一部が前記バッテリを介して車体に固定された第2の固定部とされ、前記バッテリに対する車両上下方向の上側に配置されたシートクッションを支持するシートフレームと、
を備えたバッテリ搭載車両の構造。
【請求項2】
前記シートフレームは、車両前後方向の前端側に車幅方向に離間して複数設けられた脚部を有し、
前記バッテリは、車両前後方向の前端側に設けられた前側ブラケットを有し、
前記前側ブラケットには、前記第2の固定部として、前記複数の脚部のうち少なくとも1つの脚部における車両上下方向の下端部が固定された脚固定部が設けられている請求項1記載のバッテリ搭載車両の構造。
【請求項3】
前記シートフレームは、車両前後方向の後端側で車幅方向に延在する後側フレームを有し、
前記バッテリは、車両前後方向の後端側に設けられた後側ブラケットを有し、
前記後側ブラケットには、前記第2の固定部として、前記後側フレームが固定された後側フレーム固定部が設けられている請求項2記載のバッテリ搭載車両の構造。
【請求項4】
前記バッテリに対する車幅方向の両外側で車両前後方向に延在する車体骨格としての左右一対のサイドメンバと、
前記車両フロアに設けられ、車幅方向に延在して前記一対のクロスメンバを架け渡す車体骨格としての第1のクロスメンバと、
前記車両フロアに設けられ、前記第1のクロスメンバに対する車両前後方向の後側で、車幅方向に延在して前記一対のクロスメンバを架け渡す車体骨格としての第2のクロスメンバと、
を備え、
前記前側ブラケットには、前記第1の固定部として、前記第1のクロスメンバに固定された第1クロス固定部が設けられ、
前記後側ブラケットには、前記第1の固定部として、前記第2のクロスメンバに固定された第2クロス固定部が設けられている請求項3記載のバッテリ搭載車両の構造。
【請求項5】
前記車両フロアに対する車両上下方向の下側に燃料タンクが配置されており、
前記燃料タンクは、少なくとも一部が正面視で前記バッテリとオーバラップするように前記第2のクロスメンバに対する車両前後方向の後側に配置された本体部と、少なくとも一部が平面視で前記バッテリにオーバラップするように前記本体部における車両上下方向の下端部から車両前後方向の前側に張り出された張出部と、を有して構成されている請求項4記載のバッテリ搭載車両の構造。
【請求項6】
前記シートフレームには、前記バッテリを車両上下方向の上側から覆うパネル部材が固定されている請求項1〜請求項5の何れか1項記載のバッテリ搭載車両の構造。
【請求項7】
前記シートクッションは、前記パネル部材に設けられた係止部材に係止されている請求項6記載のバッテリ搭載車両の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−126439(P2011−126439A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287365(P2009−287365)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】