説明

バッテリ異常検出装置

【課題】誤判定回避を図りつつもバッテリの異常発生を迅速に検出できるようにする。
【解決手段】バッテリ電圧VBを検出するバッテリ電圧検出回路22(検出手段)と、内燃機関が始動可能な状態(IGオン)に操作されてから車両が走行を開始するまでの所定期間内に、バッテリ電圧検出回路22により検出されたバッテリ電圧VBを取得し、その取得した電圧に基づき異常判定値TH1を設定する異常判定値作成手段23(設定手段)と、車両の走行中時に検出されたバッテリ電圧VBが異常判定値TH1よりも低い場合に、異常が発生していると判定する走行時異常判定手段24(異常判定手段)異常判定手段と、を備える。そして、走行開始に伴いバッテリへの充電が開始されるとバッテリ電圧は上昇してIGオン時よりも高くなる筈である。よって、走行時にVB<TH1であれば異常と判定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたバッテリの電圧低下異常を検出する、バッテリ異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の回転駆動力により発電する発電機、および発電した電力を充電するバッテリを備えた車両において、バッテリの電圧が異常判定値よりも低い場合に、バッテリが正常に充電されていない異常状態であると判定する装置が従来より知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−370777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、バッテリへの充電や放電のラインに短絡や断線等の異常が生じた場合には、バッテリ電圧は急激に低下する。そのため、異常発生の時点で直ぐにバッテリ電圧が異常判定値よりも低くなるので、異常発生が迅速に検出される。
【0005】
これに対し、発電機の故障による発電不良やバッテリ劣化等、断線/短絡以外の故障が生じた場合には、バッテリ電圧は徐々に低下していくことになる。この場合には、低下していくバッテリ電圧が異常判定値に達するまでに時間がかかるので、その異常を迅速に検出できない。そのため、車両が走行できなくなる程度にまでバッテリ電圧が低下する前に修理場まで車両を走行して運び込む、といった機会が失われてしまう。
【0006】
しかも、バッテリの雰囲気温度や電力消費の状態に応じてバッテリ電圧の正常値は異なってくるので、誤判定を回避するために前記異常判定値は低めに設定せざるを得ない。よって、上記異常を迅速に検出することは困難である。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、誤判定回避を図りつつもバッテリの異常発生を迅速に検出できるようにした、バッテリ異常検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0009】
請求項1記載の発明では、内燃機関の回転駆動力により発電する発電機、および発電した電力を充電するバッテリを備えた車両に適用され、前記バッテリの電圧を検出する検出手段と、前記内燃機関が始動可能な状態に操作されてから車両が走行を開始するまでの所定期間内に、前記検出手段により検出された電圧を取得し、その取得した電圧に基づき異常判定値を設定する設定手段と、車両が走行中である時に前記検出手段により検出された電圧が、前記異常判定値よりも低い場合に、異常が発生していると判定する異常判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、走行開始にともなってバッテリへの充電が開始されると、充電量の増加に伴ってバッテリ電圧は上昇していく。したがって、走行開始後のバッテリ電圧は、走行開始直前のバッテリ電圧よりも高くなっている筈である。
【0011】
この点を鑑みた上記発明では、内燃機関が始動可能な状態に操作(例えばイグニッションスイッチのオン操作やスタータモータのオン操作)されてから車両が走行を開始するまでの所定期間内(つまり走行開始直前)に検出したバッテリ電圧に基づき異常判定値を設定する。そして、バッテリ電圧が充電により上昇している筈の車両走行時に、異常判定値を用いて異常判定する。
【0012】
これによれば、走行開始直前の実際のバッテリ電圧に基づき異常判定値を設定するので、雰囲気温度や電力消費状態等の環境に適した値に異常判定値を設定できる。そのため、雰囲気温度等を鑑みて異常判定値を予め低めに設定しておく従来装置に比べて、異常判定値を必要以上に低く設定することを回避できる。したがって、バッテリ電圧が徐々に低下していく異常発生時において、誤判定回避を図りつつもバッテリの異常発生を迅速に検出できるようになる。
【0013】
請求項2記載の発明では、予め設定しておいた第2判定値を記憶する記憶手段と、車両が走行中であるか否かにかかわらず前記検出手段により検出された電圧が前記第2判定値よりも低い場合に、異常が発生していると判定する第2異常判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
ここで、異常判定値を用いた異常判定は走行時にしか実施できない。これに対し上記発明では、異常判定値TH1を用いた異常判定(図3参照)に加え、予め設定しておいた第2判定値TH2を用いた異常判定(図4参照)も実施するので、走行時以外の時にも異常判定を実施できるようになる。
【0015】
請求項3記載の発明では、前記設定手段は、車両に搭載された電気機器の前記所定期間における消費電力が大きいほど、前記異常判定値を低い値に設定することを特徴とする。
【0016】
空調装置の送風機やヘッドライト等の作動により消費電力が増大すると、その分だけバッテリ電圧は低下する。この低下は、充電不良により徐々に低下していく場合と異なり、充電が正常に為されていても生じる正常な低下である。この点を鑑みた上記発明では、所定期間における消費電力が大きいほど異常判定値を低い値に設定するので、消費電力増大に起因した誤判定を回避しつつも、バッテリの異常発生を迅速に検出できる最適値に異常判定値を精度良く設定できる。
【0017】
請求項4記載の発明では、前記所定期間を、前記内燃機関がアイドル運転している期間としたことを特徴とする。
【0018】
ここで、上記発明に反して、内燃機関の始動前に検出したバッテリ電圧を異常判定値の設定に用いると、異常判定値を設定した後に、空調装置の送風機やヘッドライト等の電気機器を作動させる場合がある。すると、電気機器の消費電力増大に伴いバッテリ電圧は低下するので、設定した異常判定値が最適値よりも高い値になってしまい、走行中にバッテリが正常に充電されているにも拘わらず、誤って異常判定することが懸念される。
【0019】
この点を鑑みた上記発明では、アイドル運転時に検出したバッテリ電圧を用いて異常判定値を設定するので、異常判定値の設定に用いたバッテリ電圧が電気機器作動時の値であることの蓋然性が高くなる。よって、異常判定値の設定後に消費電力が大きく増加する可能性を低くでき、異常判定値が最適値よりも高い値になることによる上記誤判定の懸念を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態にかかるバッテリ異常検出装置の概要を示す図。
【図2】図1の異常判定値作成手段による処理手順を示すフローチャート。
【図3】図1の走行時異常判定手段による処理手順を示すフローチャート。
【図4】図1の常時異常判定手段による処理手順を示すフローチャート。
【図5】図1の異常信号出力手段による処理手順を示すフローチャート。
【図6】異常判定値TH1の設定に用いるIGオン時のバッテリ電圧、およびその後のバッテリ電圧の変化を計測した試験結果。
【図7】走行中にバッテリへの充電不良が生じた場合におけるバッテリ電圧の変化を計測した試験結果。
【図8】図7の横軸を縮小して経過時間の表示範囲を長くした図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかるバッテリ異常検出装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は、本実施形態にかかるバッテリ異常検出装置、および当該装置が搭載された車両の概要を示す図である。当該車両は、内燃機関10の出力を駆動源として走行するものであり、内燃機関10のクランク軸11(出力軸)の回転力によりオルタネータ12(発電機)が駆動して発電し、その発電電力はバッテリ13に充電される。そして、バッテリ13から放電される電力により、空調装置の送風機やヘッドライト等の各種電気機器14が作動する。
【0023】
電子制御装置(ECU20)は、CPUおよびメモリ21から構成されるマイクロコンピュータや入力処理回路、出力処理回路等を備えるとともに、バッテリ13の端子電圧(バッテリ電圧VB)を検出するバッテリ電圧検出回路22(検出手段)を備える。また、ECU20にはイグニッションスイッチ15のオン信号や、クランク角センサ16によるクランク角信号、車速センサ17による車速信号等が入力される。なお、ECU20は、クランク軸11の回転速度であるエンジン回転速度NEを、クランク角信号を用いて算出する。
【0024】
ECU20のマイクロコンピュータは、検出したバッテリ電圧VBに基づき、バッテリ13の蓄電量が不足したバッテリ異常であるか否かを判定する。図1中の各手段23,24,25,26は、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム処理であって、バッテリ異常判定に要する各々の処理を機能別に示すものである。
【0025】
異常判定値作成手段23(設定手段)は、内燃機関10が始動可能な状態に操作されてから車両が走行を開始するまでの所定期間内に、バッテリ電圧検出回路22により検出されたバッテリ電圧VBを取得する。上記「始動可能な状態」とは、イグニッションスイッチ15がオン操作された状態や、スタータモータの始動スイッチがオン操作された状態等が具体例として挙げられる。本実施形態では、イグニッションスイッチ15がオフからオンに切り替わった時のバッテリ電圧VBを取得する。そして、その取得した電圧に基づき異常判定値TH1を設定する。詳細には、取得した電圧から所定のオフセット量を減算した値を異常判定値TH1として設定する。
【0026】
走行時異常判定手段24(異常判定手段)は、車両走行時のバッテリ電圧VBが、異常判定値作成手段23により設定された異常判定値TH1よりも低くなっている場合に、バッテリ電圧異常フラグ1をオンに設定する。なお、車両走行時であるか否かは、クランク角センサ16によるエンジン回転速度NEや車速センサ17による車速SPD等の情報に基づき判別すればよい。
【0027】
常時異常判定手段25(第2異常判定手段)は、予め設定しておいた第2判定値TH2よりもバッテリ電圧VBが低くなっている場合に、バッテリ電圧異常フラグ2をオンに設定する。第2判定値TH2は試験等により予め設定して不揮発性のメモリ21に記憶させておけばよい。
【0028】
異常信号出力手段26は、バッテリ電圧異常フラグ1またはバッテリ電圧異常フラグ2がオンになっている場合に、異常ランプ30(報知手段)へ異常検出信号を出力する。これにより、異常ランプ30が点灯作動して、バッテリ電圧に異常が生じている旨が車両運転者へ報知される。なお、報知手段は異常ランプ等の表示装置であってもよいし、警告音等を出力する装置であってもよい。
【0029】
次に、各手段23,24,25,26により実施される処理の手順を、図2〜図5のフローチャートを用いて説明する。なお、これらのフローチャートは、ECU20のマイクロコンピュータにより所定周期(例えばCPUの演算周期)で繰り返し実行される。
【0030】
図2は、異常判定値作成手段23による処理手順を示しており、先ず、ステップS10において、イグニッションスイッチ15がオフからオンに切り替わったか否かを判定し、次のステップS11では、異常判定値TH1が設定済みであるか否かを判定する。ちなみに、後述するステップS14で設定された異常判定値TH1は、イグニッションスイッチ15をオフ操作した時点でリセットされる。
【0031】
IGオン切換時、かつ異常判定値TH1が未設定と判定されると(S10:YES、S11:NO)、続くステップS12において、バッテリ電圧検出回路22により検出されたバッテリ電圧VBを取得する。要するに、イグニッションスイッチ15をオン操作した時(IGオン時)のバッテリ電圧VBを取得する。
【0032】
続くステップS13では、各種電気機器14の消費電力の合計を推定し、その消費電力に応じて、異常判定値TH1の設定に用いるオフセット量を算出する。詳細には、消費電力が大きいほどオフセット量を大きくする。
【0033】
続くステップS14では、走行時異常判定手段24での異常判定に用いる異常判定値TH1を、ステップS12で取得したIGオン時のバッテリ電圧VB、およびステップS13で算出したオフセット量に基づき設定する。詳細には、バッテリ電圧VBからオフセット量を減算して得られた値を異常判定値TH1として設定する。以上により、IGオン時のバッテリ電圧VBに応じた異常判定値TH1が設定される。
【0034】
図3は、走行時異常判定手段24による処理手順を示しており、先ず、ステップS20にて異常判定値TH1が設定済みであるか否かを判定し、続くステップS21では後述する「バッテリ電圧異常フラグ1」がオンに設定されているか否かを判定する。
【0035】
また、次のステップS22では、オルタネータ12からバッテリ13への充電電力が所定量以上となり得る状態(充電可能状態)であるか否かを判定する。詳細には、車両が走行中(車速SPD>所定値)である場合に前記充電可能状態であると判定する。或いは、エンジン回転速度NEが所定値以上である場合に前記充電可能状態であると判定する。
【0036】
そして、異常判定値TH1が設定済みであり(S20:YES)、バッテリ電圧異常フラグ1がオンに設定されておらず(S21:NO)、車両走行中であると判定(S22:YES)された場合には、次のステップS23に進む。
【0037】
ステップS23では、充電可能状態であるにも拘わらずバッテリ13の充電量が上昇しない、といったバッテリ13の充電異常が生じているか否かを判定する。詳細には、バッテリ電圧検出回路22により検出されるバッテリ電圧を逐次取得し、その取得したバッテリ電圧VBが異常判定値TH1未満である場合に(S23:YES)、次のステップS24に進み、バッテリ異常が発生しているとみなしてバッテリ電圧異常フラグ1をオンに設定する。一方、VB≧TH1と判定された場合には(S23:NO)、次のステップS25にてバッテリ電圧異常フラグ1をオフに設定する。
【0038】
なお、異常判定値TH1が設定されていない場合(S20:NO)や、走行中でない場合(S22:NO)にも、ステップS25にてバッテリ電圧異常フラグ1をオフに設定する。
【0039】
要するに、図3の処理では、車両が走行中(充電可能状態)であることを条件としてバッテリ異常の検出を実施し、VB<TH1であれば十分な充電が為されていないとみなしてバッテリ異常と判定する。
【0040】
図4は、常時異常判定手段25による処理手順を示しており、先ず、ステップS30において、車両が走行中(充電可能状態)であるか否かに拘わらずバッテリ異常の検出を実施する。詳細には、第2判定値TH2をメモリ21(記憶手段)に予め記憶させておく。そして、バッテリ電圧検出回路22により検出されるバッテリ電圧を逐次取得し、その取得したバッテリ電圧VBが第2判定値TH2未満である場合に(S30:YES)、次のステップS31に進み、バッテリ異常が発生しているとみなしてバッテリ電圧異常フラグ2をオンに設定する。一方、VB≧TH2と判定された場合には(S30:NO)、次のステップS32にてバッテリ電圧異常フラグ2をオフに設定する。
【0041】
要するに、図3の処理では走行中(充電可能状態)であることを条件としてバッテリ異常の検出を実施していたのに対し、図4の処理では走行中(充電可能状態)であるか否かに拘わらず、VB<TH2であればバッテリ異常と判定する。
【0042】
なお、IGオン時のバッテリ電圧に基づき異常判定値TH1を設定するにあたり、IGオン時のバッテリ電圧は雰囲気温度に応じて異なる値になるため、バッテリ13が正常に充電される状態であっても、異常判定値TH1はその都度異なる値となる。但し、正常時に想定される異常判定値TH1の最低値(極低温時の値)よりも、第2判定値TH2は低い値に設定されている。
【0043】
図5は、異常信号出力手段26による処理手順を示しており、先ず、ステップS40にてバッテリ電圧異常フラグ1がオンに設定されているか否かを判定し、次のステップS41ではバッテリ電圧異常フラグ2がオンに設定されているか否かを判定する。いずれの異常フラグ1,2もオンに設定されていなければ(S40:NOかつS41:NO)、ステップS42に進みバッテリ電圧異常判定フラグをオフに設定する。
【0044】
一方、両異常フラグ1,2の少なくとも一方がオンに設定されていれば(S40:YESまたはS41:YES)、ステップS43に進みバッテリ電圧異常判定フラグをオンに設定する。そして、次のステップS44にて異常検出信号を異常ランプ30へ出力し、異常ランプ30を点灯作動させる。これにより、車両乗員異対してバッテリ異常が発生した旨が報知され、修理場まで車両を走行して運び込むように促すことができる。
【0045】
図6(a)は、内燃機関10の始動時におけるバッテリ電圧VBの変化を計測した試験結果であり、(b)はその時のエンジン回転速度NEの計測値である。図中のt1時点でイグニッションスイッチ15がオン操作されると、そのt1時点でのバッテリ電圧の値が、一点鎖線に示す異常判定値TH1に設定される。なお、厳密には先述したオフセット量だけTH1を低く設定するが、図6〜図8の試験では電気機器14を作動させていないので、オフセット量は、バッテリ電圧検出回路22の検出誤差を吸収させる程度の値に設定されている。よって、図6(a)のスケールではIGオン時のVB≒TH1であると言える。
【0046】
その後、スタータモータの始動によりクランキングを開始させるt2時点において、バッテリ13からスタータモータへの電力供給に伴いVBは急激に低下し、エンジン回転速度NEが上昇を開始する。その後、t3時点で内燃機関10が燃焼による運転を開始する。図6の例ではt3時点以降、エンジン回転速度NEがアイドル回転速度(例えば800rpm)に維持されている。
【0047】
図7(a)は、車両走行中にバッテリ13への充電不良が生じた場合におけるバッテリ電圧VBの変化を計測した試験結果であり、(b)はその時のエンジン回転速度NEの計測値である。バッテリ13への充電が為されなくなることに伴い、バッテリ電圧VBがt10時点で異常判定値TH1よりも低くなり、バッテリ電圧異常フラグ1がオンに設定される。
【0048】
図8は、図7の横軸を縮小して経過時間の表示範囲を長くした図であり、バッテリ電圧異常フラグ1がオンに設定されたt10時点以降も、バッテリ電圧VBは徐々に低下していく。そして、t20時点でバッテリ電圧VBが第2判定値TH2よりも低くなる。
【0049】
したがって、異常判定値TH1を用いたバッテリ異常判定を実施しない従来装置では、第2判定値TH2までバッテリ電圧VBが低下するt20時点でバッテリ異常が検出されるのに対し、異常判定値TH1を用いたバッテリ異常判定を実施する本実施形態によれば、t10時点でバッテリ異常が検出されるので、バッテリ異常を迅速に検出できる。
【0050】
また、IGオン時の実際のバッテリ電圧VBに基づき異常判定値TH1を設定するので、雰囲気温度や電力消費状態等の環境に応じた値に異常判定値TH1を設定できる。そのため、雰囲気温度等を鑑みて判定値を予め低めに設定しておく場合に比べて、異常判定値TH1を必要以上に低く設定することを回避できる。したがって、バッテリ電圧が徐々に低下していく異常発生時において、誤判定回避を図りつつもバッテリ異常を迅速に検出できるようになる。
【0051】
また、このような異常判定値TH1を用いた異常判定は走行時にしか実施できないが、本実施形態では予め設定しておいた第2判定値TH2を用いた異常判定も実施するので、走行時以外の時にもバッテリ異常を検出できる。
【0052】
ここで、電気機器14による消費電力が増大すると、その分だけバッテリ電圧は低下する。この低下は、充電不良により徐々に低下していく場合と異なり、充電が正常に為されていても生じる正常な低下である。したがって、消費電力増大分を加味して異常判定値TH1を低めに設定しなければ、バッテリ異常が生じていないにも拘わらずバッテリ異常と誤判定することが懸念される。この点を鑑みた本実施形態では、異常判定値TH1を設定する時(IGオン時)の消費電力が大きいほど異常判定値TH1を低い値に設定するので、誤判定回避を図りつつもバッテリ異常を迅速に検出できるような最適値に、異常判定値TH1を精度良く設定できる。
【0053】
(他の実施形態)
上記実施形態では、エンジン始動前のIGオン時のバッテリ電圧VBに基づき異常判定値TH1を設定しているが、本実施形態では、エンジン始動後のアイドル運転時のバッテリ電圧VBに基づいて、異常判定値TH1を設定する。なお、アイドル運転時であるか否かは、エンジン回転速度NEに基づき判定すればよい。また、本実施形態においてオフセット量を加味して異常判定値TH1を設定する場合には、アイドル運転時の消費電力に応じてオフセット量を算出すればよい。
【0054】
本実施形態によれば、アイドル運転時のバッテリ電圧VBに基づき異常判定値TH1を設定するので、異常判定値TH1の設定に用いるバッテリ電圧VBが、ヘッドライトや空調装置等の電気機器14を作動させている時の電圧であることの蓋然性を高めることができる。よって、消費電力によるバッテリ電圧低下を加味した異常判定値TH1に設定することができ、走行時異常判定手段24が誤判定することの懸念を低減できる。
【符号の説明】
【0055】
10…内燃機関、12…オルタネータ(発電機)、13…バッテリ、14…電気機器、21…メモリ(記憶手段)、22…バッテリ電圧検出回路(検出手段)、23…異常判定値作成手段(設定手段)、24…走行時異常判定手段(異常判定手段)、25…常時異常判定手段(第2異常判定手段)、TH1…異常判定値、TH2…第2判定値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の回転駆動力により発電する発電機、および発電した電力を充電するバッテリを備えた車両に適用され、
前記バッテリの電圧を検出する検出手段と、
前記内燃機関が始動可能な状態に操作されてから車両が走行を開始するまでの所定期間内に、前記検出手段により検出された電圧を取得し、その取得した電圧に基づき異常判定値を設定する設定手段と、
車両が走行中である時に前記検出手段により検出された電圧が、前記異常判定値よりも低い場合に、異常が発生していると判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とするバッテリ異常検出装置。
【請求項2】
予め設定しておいた第2判定値を記憶する記憶手段と、
車両が走行中であるか否かにかかわらず前記検出手段により検出された電圧が前記第2判定値よりも低い場合に、異常が発生していると判定する第2異常判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ異常検出装置。
【請求項3】
前記設定手段は、車両に搭載された電気機器の前記所定期間における消費電力が大きいほど、前記異常判定値を低い値に設定することを特徴とする請求項1または2に記載のバッテリ異常検出装置。
【請求項4】
前記所定期間を、前記内燃機関がアイドル運転している期間としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のバッテリ異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−92052(P2013−92052A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232651(P2011−232651)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】