説明

バッテリ端子の取付構造

【課題】簡易な構造で以てバッテリ端子の位置決めを行う。
【解決手段】バッテリ端子20における端子接続部40には、バッテリ10の取付面12に沿って後方に延びる延出板50が形成され、この延出板50の延出端には、取付面12の所定の端縁12Aと整合することでバッテリ端子20の取付位置を目視により確認するべく目印部54,56が形成されている。バッテリ端子20のポスト接続部21をバッテリポスト15に嵌合したのち、端子接続部40の近傍に形成された目印部54,56が取付面12の所定の端縁12Aと整合するようにバッテリポスト15回りに回動することで、バッテリ端子20が正規の取付位置に位置合わせされる。延出板50の延出端には、バッテリ10の側面13に当接する回り止め板51が直角曲げして形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ端子をバッテリポストに取り付ける構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリ端子をバッテリに取り付ける構造の一例として、以下のようなものが知られている。このものはバッテリ端子が、バッテリポストに嵌合される略環状をなしかつ縮径可能なポスト接続部に、相手端子と接続されるスタッドボルトが立てられた端子接続部が一体に設けられた形状である。そして、バッテリ端子のポスト接続部が、バッテリに立設されたバッテリポストに嵌合されたのち、同ポスト接続部に設けられた締め付け具を操作して縮径させることで、ポスト接続部すなわちバッテリ端子がバッテリポストに固定される。そののち、端子接続部のスタッドボルトに対して、電線の端末に接続された相手端子のボルト挿通孔が挿通され、スタッドボルトにナットを螺合して締め付けることで、相手端子がバッテリ端子に対して接続固定されるようになっている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−187696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでバッテリ端子をバッテリポストに固定するに当たっては、相手端子の引き出し位置や、ポスト接続部の締め付け具の締め付け作業をするスペースを確保するために、バッテリ端子を固定する場合の向きを定める必要がある。そのため従来では、バッテリ端子に別部材としての位置決め部材を装着してこれをバッテリの壁に当てて位置決めすることも提案されたが、位置決め部材が別途必要であり、かつその組み付け作業も必要であることから、コスト高に繋がることが懸念され、新たな対策が切望されていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、簡易な構造で以てバッテリ端子の位置決めができるようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のバッテリ端子の取付構造は、バッテリには円形断面をなすバッテリポストが立設されている一方、前記バッテリポストに嵌合される略環状をなすポスト接続部に相手端子と接続される端子接続部が一体に設けられたバッテリ端子が具備され、このバッテリ端子の前記ポスト接続部が前記バッテリポストに嵌合されたのち縮径するように締め付けられることによって、前記バッテリ端子が前記バッテリポストに固定されるものにおいて、前記バッテリ端子における前記端子接続部の近傍には、前記バッテリにおける当該バッテリ端子の取付面の所定の端縁と整合することで同バッテリ端子の取付位置を目視により確認するべく目印部が一体形成されている構成としたところに特徴を有する。
【0006】
バッテリ端子のポスト接続部をバッテリポストに嵌合したのち、端子接続部の近傍に形成された目印部がバッテリの取付面の所定の端縁と整合するようにバッテリポスト回りに回動することで、バッテリ端子が正規の取付位置に位置合わせされる。
目印部を端子接続部の近傍に一体形成した構造であるから、バッテリ端子の僅かな設計変更で簡易に対応することができる。
【0007】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記端子接続部には前記バッテリの前記取付面に沿って延びる延出板が形成され、この延出板の延出端によって前記目印部が形成されている。目印部を設けるのに延出板の延出端を利用したから、きわめて簡単な構造にまとめられる。
【0008】
(2)前記延出板の延出端には、前記バッテリの側面に当接する回り止め板が直角曲げして形成されている。バッテリ端子が正規の取付位置に取り付けられた場合に、回り止め板がバッテリの側面に当てられることで回り止めがなされ、端子接続部に相手端子をボルト締めで接続する場合においてバッテリ端子が連れ回りすることが防がれる。
【0009】
(3)前記延出板は延出端側が幅広となる形状に形成され、その延出端のほぼ全幅に亘って前記回り止め板が形成されているとともに、前記延出板には前記延出端に沿った孔縁を有する貫通孔が形成されて同貫通孔の前記孔縁が前記目印部となっている。
貫通孔の孔縁をバッテリの取付面の所定の端縁と整合させることで、バッテリ端子が正規の取付位置に位置合わせされる。回り止め板が幅広に形成されることで、バッテリ端子の連れ回りをより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構造で以てバッテリ端子の位置決めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係るバッテリポストにバッテリ端子のポスト接続部を嵌合する動作を示す側面図
【図2】バッテリ端子の平面図
【図3】同正面図
【図4】図2のIV−IV線断面図
【図5】バッテリポストにバッテリ端子のポスト接続部が嵌合された状態の平面図
【図6】その側面図
【図7】実施形態2に係るバッテリ端子の平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図6によって説明する。この実施形態では、図1に示すように、自動車等に搭載されるバッテリ10に立設されたバッテリポスト15に対して、バッテリ端子20が接続される場合を例示している。
バッテリ10は、バッテリ本体11の上面12の所定位置にバッテリポスト15が立てられた構造である。バッテリポスト15は、鉛等により上端側が次第に小径となった円錐台状に形成されている。
【0013】
バッテリ端子20は、図2にも示すように、導電性に優れた厚肉の金属板のプレス加工等によって形成されており、バッテリポスト15に接続されるポスト接続部21と、相手端子(図示せず)と接続される端子接続部40とが並んで一体に形成された構造である。
【0014】
ポスト接続部21は、バッテリポスト15に外嵌される3/4円強の環状をなす抱持部22と、同抱持部22の両端から互いに対向するように延出された一対の延出片23とから構成されている。抱持部22は、自然状態ではバッテリポスト15に対してクリアランスを持って嵌合可能な内径寸法を有している。抱持部22の周面には、図4に示すように、食い込み用の縦向きの溝24が複数本凹み形成されている。
【0015】
一対の延出片23にはボルト25が貫通して装着され、ボルト25自身は回り止めされているとともに、同ボルト25の一方の延出片23からの突出端側にナット26が螺合されている。そして、ナット26を締め付けることで両延出片23の間隔が狭まり、ひいては抱持部22が縮径されてバッテリポスト15に固定されるようになっている。
【0016】
端子接続部40は、扁平な箱形をなす基台41の上面に、スタッドボルト42が回り止めされた形態で立ち上がって設けられている。電線の端末等に接続された相手端子は、同相手端子に形成されたボルト挿通孔をスタッドボルト42に挿通して基台41上に載せられ、スタッドボルト42にナット(図示せず)を螺合して締め付けることで、相手端子が基台41に押し付けられて固定されるようになっている。
【0017】
本実施形態では、バッテリ端子20の正規の取付位置は、図5に参照して示すように、端子接続部40側が後方(同図の右側)を向き、かつ同バッテリ端子20の中心線Lがバッテリ本体11の上面12における奥縁12Aと直角をなす姿勢を取る位置であって、バッテリ端子20のポスト接続部21をバッテリポスト15に嵌合しつつバッテリ本体11の上面12に載せた場合に、同バッテリ端子20を上記した正規の取付位置に位置合わせするための手段が講じられている。
【0018】
バッテリ端子20の端子接続部40における基台41の底板43の後縁には、延出板50が後方に向けて所定寸法延出形成されている。延出板50は、その延出端側の大部分の領域が、バッテリ端子20の中心線Lを挟んだ一側に張り出すようにして幅広に形成されている。この延出板50の延出端には、その全幅に亘って下向きに直角曲げされた回り止め板51が形成されている。
【0019】
この延出板50には、バッテリ端子20の中心線L上において、基端から延出端側に向けて所定幅の窓孔53が開口されている。なお、この窓孔53は、基台41内に配されたスタッドボルト42の回り止め用の係止部44(図4参照)を形成するべく抜き孔でもある。
そして、図5に示すように、ポスト接続部21における抱持部22の中心22oから上記の窓孔53の後縁までの寸法aが、バッテリポスト15の中心15oからバッテリ本体11の上面12における奥縁12Aまでの寸法bよりも僅かに大きくなる設定となっている。窓孔53の後縁が目印部54となっている。
【0020】
また、延出板50における張り出した部分の延出端寄りの位置には、上記した窓孔53の後縁の延長線上において長孔55が形成されている。同長孔55の後縁は、窓孔53の後縁よりも僅かに後方に位置しており、この長孔55の後縁も目印部56となっている。
【0021】
本実施形態は上記のような構造であって、バッテリ端子20を取り付けるには、同バッテリ端子20を延出板50が概ね後方に向いた姿勢として、ポスト接続部21をバッテリポスト15に嵌合し、そののちバッテリポスト15を中心に回動させつつ延出板50の延出端に設けられた窓孔53と長孔55とを覗き、両目印部54,56がバッテリ本体11の上面12の奥縁12Aと平行をなす回動姿勢に持ち来すことで、図5及び図6に示すように、バッテリ端子20がその中心線Lがバッテリ本体11の上面12の奥縁12Aと直角をなす正規の取付位置に位置合わせされる。
【0022】
続いて、ポスト接続部21に設けたボルト25・ナット26におけるナット26を締付工具により締め付けると、抱持部22が次第に縮径されることで、溝24を外周面に食い込ませつつ抱持部22がバッテリポスト15に固定され、ひいてはバッテリ端子20がバッテリポスト15に固定される。
【0023】
そののち、相手端子がボルト挿通孔をスタッドボルト42に挿通して基台41上に載せられ、スタッドボルト42にナット(図示せず)を螺合して締め付けることで、相手端子が基台41に押し付けられて固定される。
このとき、バッテリ端子20における延出板50の延出端から下向きに形成された回り止め板51が、バッテリ本体11の奥面13に対して若干の隙間を空けて平行に対向しているから、ナットが相手端子を押さえつつ締め付けられることに伴ってバッテリ端子20がバッテリポスト15を中心として連れ回りしようとするのが、回り止め板51がバッテリ本体11の奥面13に当たることで規制され、ナットによる締め付けがスムーズにかつ正確に行われる。
【0024】
このように本実施形態によれば、バッテリ端子20のポスト接続部21をバッテリポスト15に嵌合したのち、端子接続部40に延出形成された延出板50に設けられた目印部54,56がバッテリ本体11の上面12の奥縁12Aと整合するようにバッテリポスト15回りに回動することで、バッテリ端子20が正規の取付位置に位置合わせされる。
目印部54,56を設けるに当たっては、端子接続部40から延出板50を一体形成して同延出板50の所定位置に窓孔53と長孔55を打ち抜くことで形成できるから、簡単な構造にまとまり、またバッテリ端子20を形成する際のプレス工程を僅かに増やすだけで簡単に対応することができる。
【0025】
バッテリ端子20に設けた延出板50には回り止め板51も併せて形成されているから、端子接続部40に相手端子をナットの締め付けで接続する場合においてバッテリ端子20が連れ回りすることが防がれる。特に回り止め板51が幅広に形成されていることで、連れ回りをより確実に防止できる。
【0026】
<実施形態2>
図7は、本発明の実施形態2を示す。この実施形態2のバッテリ端子20Aでは、延出板60が、端子接続部40の基台41の底板43の後縁から同底板43と同幅で延出形成され、その延出端の幅方向の中央から回り止め板61が下向きに直角曲げされている。このバッテリ端子20Aでは、延出板60における回り止め板61の形成部分の両側の延出端自身が、バッテリ本体11の上面12における奥縁12Aとの位置合わせに利用される目印部63となっている。
目印部63を設けるに当たっての構造がより簡単となる。
【0027】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1のように、延出板に貫通孔を開口してその延出端側の孔縁により目印部を形成する形式のものにおいて、貫通孔の数は1個でもよく、また3個以上であってもよい。
(2)目印部の形成構造は、上記実施形態に例示したものに限らず、バッテリ本体の上面の奥縁と整合する直線形を呈する限り、他の形成構造を採用してもよい。
(3)回り止め板を設けることは割愛してもよく、そのようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
10…バッテリ
11…バッテリ本体
12…(バッテリ本体11の)上面(取付面)
12A…(バッテリ本体11の上面12の)奥縁(所定の端縁)
13…(バッテリ本体11の)奥面(側面)
15…バッテリポスト
20,20A…バッテリ端子
21…ポスト接続部
22…抱持部
40…端子接続部
41…基台
42…スタッドボルト
43…(基台41の)底板
50…延出板
51…回り止め板
53…窓孔(貫通孔)
54…目印部
55…長孔(貫通孔)
56…目印部
60…延出板
61…回り止め板
63…目印部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリには円形断面をなすバッテリポストが立設されている一方、前記バッテリポストに嵌合される略環状をなすポスト接続部に相手端子と接続される端子接続部が一体に設けられたバッテリ端子が具備され、
このバッテリ端子の前記ポスト接続部が前記バッテリポストに嵌合されたのち縮径するように締め付けられることによって、前記バッテリ端子が前記バッテリポストに固定されるものにおいて、
前記バッテリ端子における前記端子接続部の近傍には、前記バッテリにおける当該バッテリ端子の取付面の所定の端縁と整合することで同バッテリ端子の取付位置を目視により確認するべく目印部が一体形成されていることを特徴とするバッテリ端子の取付構造。
【請求項2】
前記端子接続部には前記バッテリの前記取付面に沿って延びる延出板が形成され、この延出板の延出端によって前記目印部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のバッテリ端子の取付構造。
【請求項3】
前記延出板の延出端には、前記バッテリの側面に当接する回り止め板が直角曲げして形成されていることを特徴とする請求項2記載のバッテリ端子の取付構造。
【請求項4】
前記延出板は延出端側が幅広となる形状に形成され、その延出端のほぼ全幅に亘って前記回り止め板が形成されているとともに、前記延出板には前記延出端に沿った孔縁を有する貫通孔が形成されて同貫通孔の前記孔縁が前記目印部となっていることを特徴とする請求項3記載のバッテリ端子の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−26098(P2013−26098A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161513(P2011−161513)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】